説明

音叉型圧電振動デバイス

【課題】音叉型圧電振動デバイスを落下させるなどして外力が音叉型圧電振動デバイスに働いた場合であっても、音叉型圧電振動片が蓋に接触したり、ベースから音叉型圧電振動片が剥がれるのを抑制する。
【解決手段】水晶振動子1には水晶振動片2とベース3と蓋とが設けられている。水晶振動片2には、第1脚部21および第2脚部22と、第1支持腕部23および第2支持腕部24とを突出して設けた基部25が設けられている。水晶振動片2は、第1支持腕部23および第2支持腕部24においてそれぞれ6点のスタッドバンプ5を介してベース3に接合され、第1支持腕部23および第2支持腕部24それぞれにおける6点のスタッドバンプ5の接合位置は、第1支持腕部23および第2支持腕部24の全長Lに対して、それらの基端面232,242から0.41L〜0.79Lの範囲内とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音叉型圧電振動デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
圧電振動デバイスの一つとして、基部とこの基部から突出された2つの脚部を有する振動部とからなる音叉型水晶振動片を用いた音叉型水晶振動子がある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
上記したような音叉型水晶振動子では、その本体筐体がベースと蓋とから構成され、本体筐体の内部には、ベース上に導電性バンプ(具体的にスタッドバンプ)により音叉型水晶振動片が電気機械的に接合され、この接合された音叉型水晶振動片が本体筐体の内部に気密封止される。
【特許文献1】特開2004−289478号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記した特許文献1に記載の音叉型水晶振動子では、ベース上に一対の合計2点のスタッドバンプを吐出形成し、これら形成したスタッドバンプを介して音叉型圧電振動片をベースに接合する。
【0005】
ベース上へ音叉型水晶振動片を接合する際に2点のスタッドバンプのみを用いるため、音叉型水晶振動子を落下させるなどして外力が音叉型水晶振動子に働いた場合、脚部や基部が蓋に接触する不具合が生じる。
【0006】
また、外力が当該音叉型水晶振動子に働いた場合、2点のスタッドバンプでベース上へ音叉型水晶振動片を接合するためにスタッドバンプにクラックが生じてベースから音叉型水晶振動片が剥がれる不具合が生じる。
【0007】
また、上記した不具合から、音叉型水晶振動子の特性(例えばDLD特性など)が悪化する。
【0008】
そこで、上記課題を解決するために、本発明は、音叉型圧電振動デバイスを落下させるなどして外力が音叉型圧電振動デバイスに働いた場合であっても、音叉型圧電振動片が蓋に接触したり、ベースから音叉型圧電振動片が剥がれるのを抑制する音叉型圧電振動デバイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明にかかる音叉型圧電振動デバイスは、音叉型圧電振動片と、前記音叉型圧電振動片を複数点のバンプを介して搭載するベースと、前記ベースに搭載した前記音叉型圧電振動片を気密封止するための蓋と、が設けられ、前記圧電振動片は、振動部である複数本の脚部と、外部と接合する複数本の支持腕部と、これら前記脚部および前記支持腕部を突出して設けた基部とから構成され、前記圧電振動片は、前記複数の支持腕部においてそれぞれ前記複数点のバンプを介して前記ベースに接合され、前記複数の支持腕部それぞれにおける前記複数点のバンプの接合位置は、前記支持腕部の全長Lに対して、支持腕部の基側から0.41L〜0.79Lの範囲内とされたことを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、当該音叉型圧電振動デバイスを落下させるなどして外力が当該音叉型圧電振動デバイスに働いた場合であっても、前記音叉型圧電振動片が前記蓋に接触したり、前記ベースから前記音叉型圧電振動片が剥がれるのを抑制することが可能となる。
【0011】
具体的に、本発明によれば、前記音叉型圧電振動片と前記ベースと前記蓋とが設けられ、前記音叉型圧電振動片は前記複数本の脚部と前記複数本の支持腕部と前記基部とから構成され、前記複数の支持腕部においてそれぞれ前記複数点のバンプを介して前記ベースに接合され、前記複数の支持腕部それぞれにおける前記複数点のバンプの接合位置は、前記支持腕部の全長Lに対して、支持腕部の基側から0.41L〜0.79Lの範囲内とされるので、前記ベースへの前記音叉型圧電振動片の接合強度を高めるとともに、発振周波数の変動など前記音叉型圧電振動片を前記ベースへ接合することによる前記音叉型圧電振動子の特性劣化を抑制することが可能となる。
【0012】
前記構成において、前記バンプは、前記複数の支持腕部に対してそれぞれ3点用いられ、これら3点のバンプは、前記複数の支持腕部それぞれの0.41L〜0.79Lの範囲内においてその全長L方向に沿って形成され、前記3点のバンプのうち全長L方向の先端側に形成された前記バンプと中央に形成された前記バンプとの間隔は、その全長L方向の基端側に形成された前記バンプと中央に形成された前記バンプとの間隔よりも狭くてもよい。
【0013】
特に、本発明では、前記バンプは、前記複数の支持腕部に対してそれぞれ3点用いられ、これら3点のバンプは、前記複数の支持腕部それぞれの0.41L〜0.79Lの範囲内においてその全長L方向(アームの長手方向)に沿って形成され、前記3点のバンプのうち全長L方向(アームの長手方向)の先端側に形成された前記バンプと中央に形成された前記バンプとの間隔は、その全長L方向(アームの長手方向)の基端側に形成された前記バンプと中央に形成された前記バンプとの間隔よりも狭いことを特徴とすることが好適である(本実施の形態の図2参照)。
【0014】
前記構成において、前記脚部の先端部は、当該脚部の他の部位と比べて幅広に成形され、前記支持腕部の先端部の突出方向が、前記脚部の突出方向と同じ方向であり、前記支持腕部の先端部の突出方向端面は、前記脚部の突出方向の前記先端部手前に位置してもよい。
【0015】
この場合、前記脚部の先端部は当該脚部の他の部位と比べて幅広に成形され、前記支持腕部の先端部の突出方向が、前記脚部の突出方向と同じ方向であり、前記支持腕部の先端部の突出方向端面は、前記脚部の突出方向の前記先端部手前に位置するので、前記音叉型圧電振動片の小型化を図りながら、低周波数化に対応することが可能となる。
【0016】
前記構成において、前記バンプは、メッキバンプであってもよい。
【0017】
この場合、前記バンプにメッキバンプを用いるので、前記音叉型圧電振動片を外部(前記ベース)に搭載する前に、前記音叉型圧電振動片に前記メッキバンプを形成することが可能となる。その結果、常に前記音叉型圧電振動片の所望の形成位置に前記メッキバンプを形成しているので、例えば、前記音叉型圧電振動片の外部(前記ベース)への搭載位置が所望位置からずれた場合であっても、前記音叉型圧電振動片が外部(前記ベース)に前記バンプがずれた状態で搭載されることを防止することが可能となり、安定した前記ベースへの前記音叉型圧電振動片の搭載を行うことが可能となる。また、本発明によれば、多点メッキバンプを前記支持腕部に形成するので、例えば、1つの前記メッキバンプが剥がれる等の不具合が生じた場合であっても、他の前記メッキバンプで安定した接合強度を保持することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明にかかる音叉型圧電振動デバイスによれば、音叉型圧電振動デバイスを落下させるなどして外力が音叉型圧電振動デバイスに働いた場合であっても、音叉型圧電振動片が蓋に接触したり、ベースから音叉型圧電振動片が剥がれるのを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。なお、以下に示す実施例では、音叉型圧電振動デバイスとして音叉型水晶振動子に本発明を適用した場合を示す。しかしながら、これは好適な例であり、本発明は、音叉型水晶振動子に限定されるものではなく、圧電材料を用いた音叉型圧電振動片を搭載した音叉型圧電振動デバイスであればよい。
【0020】
本実施例にかかる音叉型水晶振動子1(以下、水晶振動子という)は、図1に示すように、フォトリソグラフィ法で成形された音叉型水晶振動片2(本発明でいう圧電振動片であり、以下、水晶振動片という)と、この水晶振動片2を搭載する(保持する)ベース3と、ベース3に搭載した(保持した)水晶振動片2を気密封止するための蓋(図示省略)と、が設けられて構成されている。
【0021】
この水晶振動子1では、ベース3と蓋とが接合されて本体筐体が構成されている。これらベース3と蓋とが接合材(図示省略)を介して接合され、この接合により本体筐体の内部空間11が形成されている。そして、この本体筐体の内部空間11内のベース3上に、スタッドバンプ5を介して水晶振動片2が保持接合されているとともに、本体筐体の内部空間11が気密封止されている。この際、ベース3に水晶振動片2がスタッドバンプ5を用いてFCB法により超音波接合されるとともに電気機械的に接合されている。
【0022】
次に、この水晶振動子1の各構成について説明する。
【0023】
ベース3は、図1に示すように、底部31と、この底部31から上方に延出した堤部32とから構成される箱状体に形成されている。このベース3は、セラミック材料からなる平面視矩形状の一枚板上に、セラミック材料の直方体が積層して凹状に一体的に焼成されている。また、堤部32は、図1に示す底部31の平面視外周に沿って成形されている。この堤部32の上面には、蓋と接合するためのメタライズ層33が設けられている。なお、メタライズ層33は、例えば、タングステン層、あるいはモリブデン層上にニッケル,金の順でメッキした構成からなる。また、セラミック材料が積層して凹状に一体的に焼成されたベース3の内部空間11における長手方向の側壁の中央近傍に、図1に示すように、一対の電極パッド34が形成され、これら電極パッド34上に水晶振動片2が搭載保持されている。これら電極パッド34は、それぞれに対応した引回電極(図示省略)を介して、ベース3の裏面に形成される端子電極(図示省略)に電気的に接続され、これら端子電極が外部部品や外部機器の外部電極に接続される。なお、これら電極パッド34、引回電極、端子電極は、タングステン、モリブデン等のメタライズ材料を印刷した後にベース3と一体的に焼成して形成される。そして、これら電極パッド34、引回電極、端子電極のうち一部のものについては、メタライズ上部にニッケルメッキが形成され、その上部に金メッキが形成されて構成される。
【0024】
蓋は、金属材料からなり、平面視矩形状の一枚板に成形されている。この蓋の下面には、接合材の一部が形成されている。この蓋は、シーム溶接やビーム溶接、加熱溶融接合等の手法により接合材を介してベース3に接合されて、蓋とベース3とによる水晶振動子1の本体筐体が構成される。
【0025】
次に、内部空間11に配された水晶振動片2の各構成について説明する。
【0026】
水晶振動片2は、異方性材料の水晶片である水晶素板(図示省略)から、ウエットエッチング形成された水晶Z板である。そのため、この水晶振動片2は量産に好適である。
【0027】
この水晶振動片2は、図1に示すように、振動部である2本の第1脚部21(本発明でいう脚部)および第2脚部22(本発明でいう脚部)と、外部(本実施例ではベース3の電極パッド34)と接合する一対の支持腕部(2本の第1支持腕部23および第2支持腕部24)と、基部25とから構成された外形からなる。
【0028】
基部25は、図1に示すように、振動部(第1脚部21,第2脚部22)より幅広に形成されている。
【0029】
2本の第1脚部21および第2脚部22は、図1に示すように、基部25の一端面251から突出して設けられている。これら第1脚部21および第2脚部22の先端部211,221は、第1脚部21および第2脚部22の他の部位と比べて突出方向に対して直交する方向に幅広に成形されている。このように先端部211,221を幅広に成形することで、先端部211,221(先端領域)を有効に利用することができ、水晶振動片2の小型化に有用であり、低周波数化にも有用である。
【0030】
また、2つの第1脚部21および第2脚部22の両主面26(表側主面,裏側主面)には、水晶振動片2の小型化により劣化する直列共振抵抗値(本実施例ではCI値、以下同様)を改善させるために、溝部27がそれぞれ形成されている。また、水晶振動片2の外形のうち側面28は両主面26に対して傾斜して成形されている。これは、水晶振動片2を湿式でエッチング成形する際に基板材料の結晶方向(X,Y方向)へのエッチングスピードが異なることに起因している。
【0031】
一対の支持腕部は、図1に示すように、下記する引出電極293を外部電極(本発明でいう外部であり、本実施例ではベース3の電極パッド34)と電気機械的に接合するための2本の第1支持腕部23および第2支持腕部24である。具体的に、第1支持腕部23および第2支持腕部24は、2本の第1脚部21および第2脚部22が突出した基部25の一端面251と対向する他端面252の幅方向中央(中央領域)から突出形成されている。これら第1支持腕部23および第2支持腕部24の先端部231,241は、第1脚部21および第2脚部22の突出方向の先端部211,221手前(具体的に、第1脚部21および第2脚部22の幅広に形成された先端部211,221手前)まで突出形成されている。
【0032】
具体的に、第1支持腕部23および第2支持腕部24は、基部25の他端面252から突出して、基部25の他端面252から両側面28に沿ってT字状に2股に分かれて延出して成形され、第1支持腕部23および第2支持腕部24の先端部231,241が基部25の一端面251から突出形成された2本の第1脚部21および第2脚部22と同一方向に向くように屈折形成されている。なお、本実施例でいう第1支持腕部23および第2支持腕部24の全長(アーム長)Lを、屈折形成された位置(具体的に基端面232,242)から第1支持腕部23および第2支持腕部24の先端部231,241(具体的に先端面233,243)までの、2本の第1脚部21および第2脚部22と同一方向に向いている領域の寸法とする。
【0033】
また、第1支持腕部23および第2支持腕部24は、図1に示すように、基部25の幅方向の両側面28および他端面252に同一間隙を有して隣接して成形されるとともに、第1脚部21および第2脚部22に対して同一間隙を有して隣接して成形されている。そして、第1脚部21と第2脚部22に形成された第1励振電極291と第2励振電極292から引き出された引出電極293は、第1支持腕部23および第2支持腕部24の先端部231,241まで形成されている。
【0034】
また、第1支持腕部23および第2支持腕部24の片主面26(図1では裏側主面)には、ベース3との接合の際にそれぞれ対となる複数(本実施例では合計6点)のスタッドバンプ5が形成される。具体的に、スタッドバンプ5は、第1支持腕部23および第2支持腕部24それぞれに3点ずつ形成される。具体的に、これらスタッドバンプ5は、第1支持腕部23および第2支持腕部24の全長(アーム長)Lに対して、第1支持腕部23および第2支持腕部24の基側(基端面232,242)からそれぞれ0.41L〜0.79Lの範囲内に形成されている(形成方法は下記参照)。
【0035】
本実施例では、第1支持腕部23および第2支持腕部24におけるスタッドバンプ5は、先端側に偏位した間隔をもって形成されている。すなわち、第1支持腕部23および第2支持腕部24におけるそれぞれ3点のスタッドバンプ5は、第1支持腕部23および第2支持腕部24それぞれにおける0.41L〜0.79Lの範囲内においてその全長L方向(アームの長手方向)に沿って並んで形成され、具体的に、第1支持腕部23および第2支持腕部24の基側(基端面232,242)から0.54L,0.66L,0.78Lに形成されている。このように、本実施例では、第1支持腕部23および第2支持腕部24それぞれにおける3点のスタッドバンプ5のうち全長L方向(アームの長手方向)の先端側に形成されたスタッドバンプ5(0.78L)と中央に形成されたスタッドバンプ5(0.66L)との間隔は、その全長L方向(アームの長手方向)の基端側に形成されたスタッドバンプ5(0.54L)と中央に形成されたスタッドバンプ5(0.66L)との間隔よりも狭い。
【0036】
また、本実施例にかかる水晶振動片2には、異電位で構成された2つの第1励振電極291および第2励振電極292と、これら第1励振電極291および第2励振電極292を電極パッド34に電気的に接続させるためにこれら第1励振電極291および第2励振電極292から引き出された引出電極293とが設けられている。なお、本実施例でいう引出電極293は、2つのこれら第1励振電極291および第2励振電極292から引き出された電極パターンのことをいう。
【0037】
また、2つの第1励振電極291および第2励振電極292の一部は、溝部27の内部に形成されている。このため、水晶振動片2を小型化しても第1脚部21および第2脚部22の振動損失が抑制され、CI値を低く抑えることができる。
【0038】
第1励振電極291は、第1脚部21の両主面26(表側主面,裏側主面)と第2脚部22の両側面28に形成されている。同様に、第2励振電極292は、第2脚部22の両主面26(表側主面,裏側主面)と第1脚部21の両側面28に形成されている。
【0039】
上記した水晶振動片2の第1励振電極291および第2励振電極292や引出電極293は、金属蒸着によって各第1脚部21および第2脚部22上にクロム層が形成され、このクロム層上に金属が形成されて構成される薄膜である。この薄膜は、真空蒸着法等の手法により基板全面に形成された後、フォトリソグラフィ法によりメタルエッチングして所望の形状に形成される。なお、第1励振電極291,第2励振電極292および引出電極293がクロム,金の順に形成されているが、例えば、クロム,銀の順や,クロム,金,クロムの順や,クロム,銀,クロムの順等であってもよい。
【0040】
また、各第1脚部21および第2脚部22の先端部211,221には、周波数調整用錘としての金属膜294がそれぞれ形成されている。具体的に、金属膜294と第1励振電極291と引出電極293とが一体形成され、金属膜294と第2励振電極292と引出電極293とが一体形成されている。
【0041】
次に、上記した構成からなる当該水晶振動子1の製造方法について概略説明する。
【0042】
水晶振動片2の引出電極293と、ベース3の電極パッド34とを、スタッドバンプ5を介してFCB法により超音波接合して、スタッドバンプ5によりこれら引出電極293と電極パッド34とを電気機械的に接合し、この接合により水晶振動片2をベース3に搭載する。
【0043】
そして、ベース3に水晶振動片2を搭載した後に、水晶振動片2の周波数調整を行う。具体的に、第1脚部21および第2脚部22の先端部211,221に形成された金属膜294に対してイオンミーリング法や金属蒸着などにより金属量の増減を行う。そのため、このベース3に搭載された水晶振動片2の重心は、周波数調整が行なわれることで変位する。
【0044】
ベース3に搭載した水晶振動片2への周波数調整を終えた後に、ベース3に蓋を接合材を介して接合して水晶振動片2を内部空間11に気密封止し、水晶振動子1を製造する。なお、上記したようにベース3に搭載した状態の水晶振動片2に対して周波数の最終調整を行うので、製造された水晶振動子1に搭載された水晶振動片2の重心は、製造毎に全て異なる。
【0045】
上記したように、本実施例にかかる水晶振動子1によれば、当該水晶振動子1を落下させるなどして外力が当該水晶振動子1に働いた場合であっても、水晶振動片2が蓋に接触したり、ベース3から水晶振動片2が剥がれるのを抑制することができる。
【0046】
具体的に、本実施例によれば、水晶振動片2とベース3と蓋とが設けられ、水晶振動片2は2本の第1脚部21および第2脚部22と2本の第1支持腕部23および第2支持腕部24と基部25とから構成され、2本の第1支持腕部23および第2支持腕部24においてそれぞれ3点のスタッドバンプ5を介してベース3に接合され、2本の第1支持腕部23および第2支持腕部24それぞれにおける3点のスタッドバンプ5の接合位置は、2本の第1支持腕部23および第2支持腕部24の全長Lに対して、第1支持腕部23および第2支持腕部24の基側(基端面232,242)から0.41L〜0.79Lの範囲内とされるので、ベース3への水晶振動片2の接合強度を高めるとともに、発振周波数の変動など水晶振動片2をベース3へ接合することによる水晶振動子1の特性劣化を抑制することができる。
【0047】
特に、本実施例では、スタッドバンプ5は、2本の第1支持腕部23および第2支持腕部24に対してそれぞれ3点用いられ、これら3点のスタッドバンプ5は、2本の第1支持腕部23および第2支持腕部24それぞれの0.41L〜0.79Lの範囲内においてその全長L方向(長手方向)に沿って並んで形成され、3点のスタッドバンプ5のうち全長L方向(長手方向)の先端側に形成されたスタッドバンプ5と中央に形成されたスタッドバンプ5との間隔は、その全長L方向(長手方向)の基端側に形成されたスタッドバンプ5と中央に形成されたスタッドバンプ5との間隔よりも狭いことを特徴とすることが好適である。このことは、図2に示すデータからも明らかである。
【0048】
なお、図2は、本実施例と、本実施例と異なる位置にスタッドバンプ5を形成した比較例との比較を行なった実験データである。具体的に、比較例として、本発明の0.41L〜0.79Lの範囲未満を含む位置にスタッドバンプ5を形成した形態(具体的に、0.24L,0.41L,0.66L)を挙げる。
【0049】
図2に示すように、比較例を示す四角マークは、励振レベルを10μWまで出力した際に、発振周波数の変動量の良否基準となる±1ppmを超えているために、NGとされる。これに対して、本実施例を示す丸マークは、励振レベルを10μWまで出力した場合であっても±1ppm範囲内であるため良品とされる。このことから、上記した本発明の0.41L〜0.79Lの範囲内という構成は、DLD特性において有効であることは明らかである。
【0050】
また、第1脚部21および第2脚部22の先端部211,221は、当該第1脚部21および第2脚部22の他の部位と比べて幅広に成形され、第1支持腕部23および第2支持腕部24の先端部231,241の突出方向が、第1脚部21および第2脚部22の突出方向と同じ方向であり、第1支持腕部23および第2支持腕部24の先端部231,241の突出方向端面(先端面233,243)は、第1脚部21および第2脚部22の突出方向の先端部211,221手前に位置するので、水晶振動片2の小型化を図りながら、低周波数化に対応することができる。
【0051】
なお、本実施例では、圧電材料として水晶を用いているが、これは好適な例でありこれに限定されるものではなく、水晶以外の圧電材料、例えば、タンタル酸リチウムやニオブ酸リチウム等であってもよい。
【0052】
また、本実施例では、スタッドバンプ5を、具体的に、第1支持腕部23および第2支持腕部24の全長(アーム長)Lに対して、それぞれ第1支持腕部23および第2支持腕部24の基側(基端面232,242)から0.54L,0.66L,0.78Lに形成しているが、これは好適な例でありこれに限定されるものではなく、複数点のスタッドバンプ5が、第1支持腕部23および第2支持腕部24の基側(基端面232,242)から、0.41L〜0.79Lの範囲内に形成されていればよい。
【0053】
また、本実施例でいう溝部27は、図1に示すような断面凹形状としているが、これに限定されるものではなく、窪み部であってもよい。
【0054】
また、本実施例では、第1脚部21および第2脚部22に溝部27を形成しているが、これは好適な例でありこれに限定されるものではなく、例えば、第1脚部21および第2脚部22に溝部が形成されていない水晶振動片2にも本発明を適用することができる。
【0055】
また、本実施例では、バンプとしてスタッドバンプ5を用いているが、これに限定されるものではなく、メッキバンプを用いてもよい。ここでいうメッキバンプは、金属材料(例えば金)からなり、水晶振動片2の第1支持腕部23および第2支持腕部24にメッキバンプを電解メッキ法などの手法によりメッキ形成し、メッキ形成したメッキバンプをフォトリソグラフィ法によりメタルエッチングして所望の形状(平面視円形や平面視楕円形などの円形や、平面視長方形や平面視正方形などの多角形)に形成してアニール処理を施す。具体的に、第1支持腕部23および第2支持腕部24に対して6点のメッキバンプを形成し、その後6点のメッキバンプにアニール処理を施す。
【0056】
この場合、安定してベース3上に水晶振動片2をメッキバンプを介して電気機械的に接合することができる。
【0057】
具体的に、バンプにメッキバンプを用いるので、水晶振動片2を外部(ベース3)に搭載する前に、水晶振動片2にメッキバンプを形成することができる。その結果、常に水晶振動片2の所望の形成位置にメッキバンプを形成しているので、例えば、水晶振動片2の外部(ベース3)への搭載位置が所望位置からずれた場合であっても、水晶振動片2が外部(ベース3)にバンプがずれた状態で搭載されることを防止することができ、安定したベース3への水晶振動片2の搭載を行うことができる。
【0058】
また、6点のメッキバンプを第1支持腕部23および第2支持腕部24それぞれに形成する、すなわち、多点メッキバンプを第1支持腕部23および第2支持腕部24に形成するので、例えば、1つのメッキバンプが剥がれる等の不具合が生じた場合であっても、他のメッキバンプで安定した接合強度を保持することができる。
【0059】
また、6点のメッキバンプを第1支持腕部23および第2支持腕部24それぞれに形成した後に、6点のメッキバンプにアニール処理を施すので、6点のメッキバンプがなまされて、第1支持腕部23および第2支持腕部24への6点のメッキバンプを形成する際に発生する応力(残留応力)が無くなる。
【0060】
また、この場合、メッキバンプは、フォトリソグラフィ法により形成するので、メッキバンプそれぞれにおいてメッキバンプの大きさや形状や数量を任意に設定することができる。
【0061】
なお、本発明は、その精神や主旨または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、音叉型圧電振動片、音叉型圧電振動デバイスに適用でき、特に音叉型水晶振動子に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1は、本実施例にかかる水晶振動子の内部を公開した概略平面図である。
【図2】図2は、本実施例と、本実施例と異なる位置にスタッドバンプを形成した比較例との比較を行なった実験データである。
【符号の説明】
【0064】
1 音叉型水晶振動子(音叉型圧電振動デバイス)
2 音叉型水晶振動片(音叉型圧電振動片)
21 第1脚部(脚部)
211 第1脚部の先端部(脚部の先端部)
22 第2脚部(脚部)
221 第2脚部の先端部(脚部の先端部)
23 第1支持腕部(支持腕部)
231 第1支持腕部の先端部(支持腕部の先端部)
232 第1支持腕部の基端面
233 第1支持腕部の先端面
24 第2支持腕部(支持腕部)
241 第2支持腕部の先端部(支持腕部の先端部)
242 第2支持腕部の基端面
243 第2支持腕部の先端面
25 基部
251 一端面
252 他端面
26 主面
27 溝部
28 側面
291 第1励振電極
292 第2励振電極
293 引出電極
294 金属膜
3 ベース
31 底部
32 堤部
33 メタライズ層
34 電極パッド
5 スタッドバンプ(バンプ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音叉型圧電振動デバイスにおいて、
音叉型圧電振動片と、前記音叉型圧電振動片を複数点のバンプを介して搭載するベースと、前記ベースに搭載した前記音叉型圧電振動片を気密封止するための蓋と、が設けられ、
前記圧電振動片は、振動部である複数本の脚部と、外部と接合する複数本の支持腕部と、これら前記脚部および前記支持腕部を突出して設けた基部とから構成され、
前記圧電振動片は、前記複数の支持腕部においてそれぞれ前記複数点のバンプを介して前記ベースに接合され、
前記複数の支持腕部それぞれにおける前記複数点のバンプの接合位置は、前記支持腕部の全長Lに対して、支持腕部の基側から0.41L〜0.79Lの範囲内とされたことを特徴とする音叉型圧電振動デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の音叉型圧電振動デバイスにおいて、
前記バンプは、前記複数の支持腕部に対してそれぞれ3点用いられ、
これら3点のバンプは、前記複数の支持腕部それぞれの0.41L〜0.79Lの範囲内においてその全長L方向に沿って形成され、
前記3点のバンプのうち全長L方向の先端側に形成された前記バンプと中央に形成された前記バンプとの間隔は、その全長L方向の基端側に形成された前記バンプと中央に形成された前記バンプとの間隔よりも狭いことを特徴とする音叉型圧電振動デバイス。
【請求項3】
請求項1または2に記載の音叉型圧電振動デバイスにおいて、
前記脚部の先端部は、当該脚部の他の部位と比べて幅広に成形され、
前記支持腕部の先端部の突出方向が、前記脚部の突出方向と同じ方向であり、
前記支持腕部の先端部の突出方向端面は、前記脚部の突出方向の前記先端部手前に位置することを特徴とする音叉型圧電振動デバイス。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちいずれか1つに記載の音叉型圧電振動デバイスにおいて、
前記バンプは、メッキバンプであることを特徴とする音叉型圧電振動デバイス。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−284073(P2009−284073A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−131977(P2008−131977)
【出願日】平成20年5月20日(2008.5.20)
【出願人】(000149734)株式会社大真空 (312)
【Fターム(参考)】