説明

音叉型屈曲水晶振動素子

【課題】交番電圧が印加されて屈曲振動させる場合、厚み方向に平行な振動を抑えクリスタルインピーダンスが小さく電気的特性が向上された水晶振動素子を提供する。
【解決手段】略四角形状の平板状の基部と基部の所定の一つの側面から同一方向に延設されて基部と一体化されている二つ一対の振動腕部と振動腕部の表面に形成されている励振用電極と基部の表面に形成されている接続用電極と励振用電極間又は励振用電極と接続用電極との間を電気的に接続している配線部とを備えている音叉型屈曲水晶振動素子であって、基部の両主面に開口部が矩形形状の溝部が設けられており、溝部の開口部を見た場合、振動腕部が延設する方向に平行な溝部の開口部の辺が振動腕部の延設する方向に垂直な方向に平行な溝部の開口部の辺より長く、基部の一方の主面に設けられた溝部の開口部が基部の他方の主面に設けられた溝部の開口部に対向する位置に設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器に用いられる音叉型屈曲水晶振動素子に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンピュータ、携帯電話又は小型情報機器等の電子機器には、電子部品の一つとして水晶振動子や水晶発振器が搭載されている。この水晶振動子又は水晶発振器は、基準信号源やクロック信号源として用いられる。又、水晶振動子や水晶発振器は、その内部に水晶からなる水晶振動素子が搭載されている。
【0003】
ここで、水晶振動子は、例えば、音叉型屈曲水晶振動素子が一方の主面に凹部空間を有する素子搭載部材の凹部空間の底面に設けられている素子搭載パッドに搭載された後、素子搭載部材の凹部空間が蓋体により気密封止された構成となっている。
また、水晶発振器は、例えば、少なくとも発振回路を備えた集積回路素子を水晶振動子の水晶振動素子に電気的に接続させた構成となっている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
以下、圧電材料である水晶部材を用いた音叉型屈曲水晶振動素子について説明する。
音叉型屈曲水晶振動素子400は、例えば、図5(a)及び図5(b)に示すように、基部411及び振動腕部412からなる水晶片と、溝部420(421,422)と、励振用電極430(431,432,433,434)と、接続用電極440(441,442)と、配線部Hと、周波数調整用金属膜450と、から主に構成されている。
【0005】
水晶片は、水晶部材からなり、溝部420が設けられている基部411と二つ一対の振動腕部412とから構成されている。
【0006】
基部411は、例えば、図5(a)及び図5(b)に示すように、両主面が平面視略四角形の平板状に設けられている。
【0007】
振動腕部412は、例えば、図5(a)及び図5(b)に示すように、二つ一対で設けられている。
また、振動腕部412は、例えば、図5(a)及び図5(b)に示すように、基部411の所定の一辺から同一方向に延設されている。つまり、振動腕部412は、基部411の所定の一つの側面から同一方向に延設されている。
【0008】
以下、振動腕部412は、二つ一対となっているので、一方の振動腕部412を第一の振動腕部412aとし、他方の振動腕部412を第二の振動腕部412bとする。
【0009】
溝部420(421a,421b)は、基部411の両主面に設けられている。
【0010】
溝部421は、図5(a)に示すように、基部411の一方の主面に複数、設けられており、基部の所定の一辺に沿って並んで配置されている。このとき、溝部421は、後述する配線部H及び接続用電極440に接触しない位置に配置されている。
また、溝部421の開口部は、図5(a)に示すように、略矩形形状となっており、基部411の所定の一辺に平行な開口部の辺の長さが、基部411の所定の一辺に垂直な開口部の辺の長さより短くなっている。つまり、溝部421は、振動腕部412の延設する方向に長く形成されている。
また、溝部421は、図5(c)に示すように、その深さが基部411の板厚の50%より長く基部411の板厚の90%より短くなっている。ここで、基部411の板厚とは、基部411の一方の主面から基部411の他方の主面までの長さである。
【0011】
基部411の他方の主面に設けられている溝部422は、図5(b)に示すように、複数設けられており、基部の所定の一辺に沿って並んで配置されている。このとき、溝部422は、後述する配線部H及び接続用電極440に接触しない位置に配置されている。
また、溝部422の開口部は、図5(b)に示すように、略矩形形状となっており、基部411の所定の一辺に平行な開口部の辺の長さが、基部411の所定の一辺に垂直な開口部の辺の長さより短くなっている。つまり、溝部422は、振動腕部412の延設する方向に長く形成されている。
また、溝部422は、図5(c)に示すように、その深さが基部411の板厚の50%より長く基部411の板厚の90%より短くなっている。
また、溝部422は、図5(c)に示すように、その開口部が基部411の一方の主面に配置されている溝部421の開口部と対向しない位置に配置されている。
【0012】
溝部420は、基部411の両主面に所定の間隔をあけて基部411の所定の一辺に沿って配置されている。このとき、基部411の一方の主面に設けられている溝部421の開口部は基部411の他方の主面に設けられている溝部422の開口部と対向しない位置に設けられている。
従って、溝部420が設けられている基部411は、基部411の一方の主面と基部411の他方の主面とが基部411の板厚の中心を通過する面を基準としたとき対称となっていない。
【0013】
つまり、水晶片は、溝部420が設けられている基部411と第一の振動腕部412aと第二の振動腕部412bとから一体で構成されて音叉形状となっており、基部411の両主面に複数の溝部420が設けられている。なお、振動腕部412a,412bの基部411側を固定端、先端側を自由端とする。
また、水晶片は、例えば、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術により形成されている。
【0014】
励振用電極430(431,432,433,434)は、図4(a)及び図4(b)に示すように、それぞれの振動腕部412に設けられている。
【0015】
励振用電極431は、図5(a)に示すように、基部411の一方の主面と同一平面となっている振動腕部412の面に設けられている。
励振用電極432は、図5(b)に示すように、基部411の他方の主面と同一平面となっている振動腕部412の面に設けられており、励振用電極431と対向する位置に設けられている。
励振用電極433は、図5(a)及び図5(b)に示すように、隣接する振動腕部412側を向く振動腕部412の面に設けられている。
励振用電極434は、図5(a)及び図5(b)に示すように、隣接する振動腕部421側を向く面に対向する振動腕部412の面に設けられており、励振用電極433と対向する位置に設けられている。また、励振用電極434は、図5(b)に示すように、同一振動腕部412の対向する面に設けられている励振用電極433と後述する配線部Hによって電気的に接続されている。
【0016】
このとき、図5(a)に示すように、第一の振動腕部412aの励振用電極431は、後述する配線部Hによって第二の振動腕部412bの励振用電極433と電気的に接続されている。
また、図5(b)に示すように、第二の励振用電極412bの励振用電極431は、後述する配線部Hによって第一の振動腕部412aの励振用電極433と電気的に接続されている。
【0017】
接続用電極440(441,442)は、図5(a)及び図5(b)に示すように、二つ一対で設けられている。
【0018】
一方の接続用電極441は、基部411の一方の主面から基部411の他方の主面にわたって設けられつつ、図5(a)に示すように、振動腕部412に接している基部411の辺に対向する基部411の辺の一方の角端部に位置するように設けられている。
また、一方の接続用電極441は、図5(a)及び図4(b)に示すように、後述する配線部Hによって、第一の振動腕部412aの励振用電極431,432及び第二の振動腕部412bの励振用電極433,434に電気的に接続されている。
【0019】
他方の接続用電極442は、基部411の一方の主面から基部411の他方の主面にわたって設けられつつ、図5(a)に示すように基部411の一方の主面側に着目すると、振動腕部412に接している基部411の辺に対向する基部411の辺の他方の角端部に位置するように設けられている。
また、他方の接続用電極442は、図5(a)及び図5(b)に示すように、後述する配線部Hによって、第一の振動腕部412aの励振用電極433,434及び第二の振動腕部412bの励振用電極431,432と電気的に接続されている。
【0020】
配線部Hは、励振用電極430間、又は、励振用電極430と接続用電極440との間を電気的に接続させる役割を果たす。
第一の振動腕部412aに着目した場合、配線部Hは、図5(a)及び図5(b)に示すように、振動腕部412aの両主面に設けられている励振用電極431,432と一方の接続用電極441とを電気的に接続しており、隣接する第二の振動腕部412b側を向く面に設けられている励振用電極433とこの隣接する第二の振動腕部412b側を向く面に対向する面に設けられている励振用電極434とを電気的に接続し、励振用電極433と他方の接続用電極442とを電気的に接続している。
第二の振動腕部412bに着目した場合、配線部Hは、図5(a)及び図5(b)に示すように、振動腕部412bの両主面に設けられている励振用電極431、432と他方の接続用電極442とを電気的に接続しており、隣接する第一の振動腕部412a側を向く面に設けられている励振用電極433とこの隣接する第一の振動腕部412a側を向く面に対向する面に設けられている励振用電極434とを電気的に接続し、励振用電極433と一方の接続用電極441とを電気的に接続している。
【0021】
周波数調整用金属膜450は、図5(a)及び図5(b)に示すように、それぞれの振動腕部412の両主面であって先端側に設けられている。
【0022】
従って、このような音叉型屈曲水晶振動素子400は、図5(a)及び図5(b)に示すように、一方の接続用電極441が、配線部Hを介して第一の振動腕部412aの励振用電極431,432と第二の振動腕部412bの励振用電極433,434とに電気的に接続される構成となっている。
また、このような音叉型屈曲水晶振動素子400は、図5(a)及び図5(b)に示すように、他方の接続用電極442が配線部Hを介して第一の振動腕部412aの励振用電極433,434と第二の振動腕部412bの励振用電極431,432とに電気的に接続される構成となっている。
【0023】
また、このような音叉型屈曲水晶振動素子400は、例えば、励振用電極130、接続用電極140、配線部H、周波数調整用金属膜450がクロム層の上に金層が設けられた金属の積層構造となっており、フォトリソグラフィ技術とエッチング技術により形成されている。
【0024】
また、このような音叉型屈曲水晶振動素子400は、二つ一対の接続用電極440に電圧を印加させることで、二つ一対の振動腕部412を屈曲振動させる構造となっている。
【0025】
また、このような音叉型屈曲水晶振動素子400で振動腕部412が振動しているときの電気的状態を瞬間的にとらえると、第一の振動腕部412aでは、励振用電極431,432がプラス電位となり、励振用電極433,433がマイナス電位となり、プラス電位の励振用電極431,432からマイナス電位の励振用電極433,434に向かう向きに電界が生じている。
このとき、第二の振動腕部421bでは、励振用電極431,432がマイナス電位となり、励振用電極433,434がプラス電位となり、プラス電位の励振用電極433,434からマイナス電位の励振用電極433,434に向かう向きに電界が生じている。
【0026】
このような音叉型屈曲水晶振動素子400は、電圧が接続用電極440に接続され、それぞれの振動腕部412に電界が生じることによってそれぞれの振動腕部412に伸縮現象が生じる。このとき、音叉型屈曲水晶振動素子400は、所定の共振周波数でそれぞれの振動腕部412を振動させることができる。
また、このような音叉型屈曲水晶振動素子400は、それぞれの振動腕部412に設けられている周波数調整用金属膜450を構成する金属の量を増減させることで共振周波数を調整することができる構成となっている。
【0027】
また、このような音叉型屈曲水晶振動素子400は、複数の溝部420が基部411の所定の一辺に沿って並ぶように配置されているので、振動腕部412の屈曲振動が音叉型屈曲水晶振動素子400の固定する接続用電極420まで伝播することを防ぐことができる構成となっている。
ここで、このような音叉型屈曲水晶振動素子400は、例えば、接続用電極440が導電性接着材によって固定され搭載される(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0028】
【特許文献1】特開2008−301297号公報
【特許文献2】特開2011−151562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
しかしながら、従来の音叉型屈曲水晶振動素子は、両主面に溝部が設けられている基部の所定の一つの側面から二つ一対の振動腕部が同一方向に延設されており、基部の両主面に設けられた溝部の開口部が基部の厚みの中心を通過しつつ基部の主面に平行な面を基準として対称となっていないので、基部の表面に設けられた接続用電極に電圧を印加した場合、それぞれの振動腕部で固定端側を軸にして自由端側が厚み方向に振れる振動が生じ屈曲振動に混在してしまう恐れがある。
このため、従来の音叉型屈曲水晶振動素子は、クリスタルインピーダンスが大きくなり電気的特性が低下してしまう恐れがある。
【0030】
そこで、本発明は、電圧が印加されて屈曲振動させる場合、振動腕部から固定されている接続用電極への振動伝播を抑制しつつ、振動腕部に生じる固定端側を軸にして自由端側が厚み方向に振れる振動を抑え、クリスタルインピーダンスが小さく電気的特性が向上された音叉型屈曲水晶振動素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0031】
前記課題を解決するために、 両主面が略四角形状となっている平板状の基部と、前記基部の所定の一つの側面から同一方向に延設されて前記基部と一体化されている二つ一対の振動腕部と、前記振動腕部の表面に所望のパターンで形成されている複数の励振用電極と、前記基部の表面に所望のパターンで形成されている二つ一対の接続用電極と、前記励振用電極間又は前記励振用電極と前記接続用電極との間を電気的に接続している配線部と、を備えている音叉型屈曲水晶振動素子であって、前記基部の両主面に開口部が矩形形状の複数の溝部が設けられており、前記溝部が前記基部の所定の一つの側面に平行な方向に並び、かつ、前記振動腕部の延設する方向に長く形成され、前記基部の一方の主面に設けられた溝部の開口部が前記基部の他方の主面に設けられた溝部の開口部に対向する位置に設けられていることを特徴とする。
【0032】
また、前記課題を解決するために、前記基部に設けられている複数の溝部が、前記基部の所定の一つの側面と平行な方向に設けられつつ、前記振動腕部が延設される方向に平行な方向に設けられていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0033】
このような音叉型屈曲水晶振動素子は、両主面に複数の溝部が設けられている基部の所定の一つの側面から二つ一対の振動腕部が同一方向に延設されており、基部の両主面に設けられた溝部の開口部が基部の厚みの中心を通過しつつ基部の主面に平行な面を基準として対称となっている。
そのため、このような音叉型屈曲水晶振動素子は、基部の表面に設けられた接続用電極に電圧を印加した場合、振動腕部から接続用電極への振動伝播を抑制しつつ、それぞれの振動腕部で生じる振動であって、固定端側を軸にして自由端側が厚み方向に振れる振動を従来の音叉型屈曲水晶振動素子と比較して抑えることができる構造となっている。
従って、このような音叉型屈曲水晶振動素子によれば、固定端側を軸にして自由端側が厚み方向に振れる振動を抑えることができるので、従来の音叉型屈曲水晶振動素子と比較しクリスタルインピーダンスを小さくすることができ、電気的特性を向上させることができる。
【0034】
また、このような音叉型屈曲水晶振動素子によれば、前記基部に設けられている複数の溝部が、前記基部の所定の一つの側面と平行な方向に設けられつつ、前記振動腕部が延設される方向に平行な方向に設けられているので、基部の表面に設けられている接続用電極に電圧が印加された場合、それぞれの振動腕部の振動が接続用電極にまで伝播する量をより抑えることができる。
このため、このような音叉型屈曲水晶振動素子によれば、クリスタルインピーダンスが大きくなることを防ぐことができ、より電気的特性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】(a)は、本発明の第一の実施形態に係る音叉型屈曲水晶振動素子の一方の主面の一例を示す平面図であり、(b)は、本発明の第一の実施形態に係る音叉型屈曲水晶振動素子の他方の主面の一例を示す平面図であり、(c)は、図1(a)のA−A断面図である。
【図2】(a)は、本発明の第二の実施形態に係る音叉型屈曲水晶振動素子の一方の主面の一例を示す平面図であり、(b)は、本発明の第二の実施形態に係る音叉型屈曲水晶振動素子の他方の主面の一例を示す平面図であり、(c)は、図2(a)のB−B断面図であり、(d)は、図2(a)のC−C断面図である。
【図3】(a)は、本発明の第三の実施形態に係る音叉型屈曲水晶振動素子の一方の主面の一例を示す平面図であり、(b)は、本発明の第三の実施形態に係る音叉型屈曲水晶振動素子の他方の主面の一例を示す平面図であり、(c)は、図3(a)のD−D断面図であり、(d)は、図3(a)のE−E断面図である。
【図4】本発明の実施例における基部の板厚に対する溝部の深さ割合とクリスタルインピーダンスの値との関係の一例を示すグラフである。
【図5】(a)は、従来の音叉型屈曲水晶振動素子の一方の主面の一例を示す平面図であり、(b)は、従来の音叉型屈曲水晶振動素子の他方の主面の一例を示す平面図であり、(c)は、図4(a)のF−F断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
次に、本発明を実施するための最良の形態について説明する。なお、各図面において各構成要素の状態を分かりやすくするために誇張して図示している。
【0037】
(第一の実施形態)
本発明の第一の実施形態に係る音叉型屈曲水晶振動素子は、素子搭載部材(図示せず)に備えた搭載パッド(図示せず)に電気的に接続されつつ固定されることで素子搭載部材に搭載され、素子搭載部材と蓋部材(図示せず)とで形成される空間内に気密封止された状態で、電子部品として用いられる。
【0038】
本発明の第一の実施形態に係る音叉型屈曲水晶振動素子100は、図1(a)及び図1(b)に示すように、溝部120(121,122)が設けられている基部111及び振動腕部112(112a,112b)からなる水晶片と、励振用電極130(131,132,133,134)と、接続用電極140(141,142)と、配線部Hと、周波数調整用金属膜150と、から主に構成されている。
【0039】
水晶片は、例えば、水晶部材が用いられ、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術により形成されている。
また、水晶片は、基部111と振動腕部112とから構成されている。
【0040】
基部111は、例えば、図1(a)及び図1(b)に示すように、両主面が平面視四角形の平板状に設けられている。
なお、ここで、基部111の両主面が平面視四角形の平板状となっている場合について説明しているが、平面視略四角形の平板状となっていてもよい。
【0041】
振動腕部112(112a,112b)は、例えば、図1(a)及び図1(b)に示すように、二つ一対で設けられている。
また、振動腕部112は、例えば、図1(a)及び図1(b)に示すように、基部111の主面側を見た場合、基部111の所定の一辺から同一方向に延設されている。つまり、振動腕部112は、基部111の所定の一つの側面から同一方向に延設されている。
【0042】
以下、振動腕部112は、二つ一対となっているので、一方の振動腕部112を第一の振動腕部112aとし、他方の振動腕部112を第二の振動腕部112bとする。
また、振動腕部112の基部111側を固定端、先端側を自由端とする。
【0043】
溝部120(121,122)は、基部111の両主面に複数、設けられている。
【0044】
また、溝部120の開口部は、図1(a)及び図1(b)に示すように、略矩形形状となっており、振動腕部112が延設する方向に平行な辺の長さが振動腕部112の延設する方向に直交する方向に平行な辺の長さより長くなっている。つまり、溝部120は、振動腕部112の延設する方向に長く形成されている。
溝部120が振動腕部112の延設する方向に短く形成されている場合、基部111の強度が低下してしまう。基部111の強度が低下すると、例えば、基部111をピンセットで挟み持ち上げるときに溝部120を基点に破損してしまう恐れがある。
このため、溝部120の開口部は、振動腕部112の延設する方向に平行な辺の長さが
振動腕部112の延設する方向に直交する辺の長さより長くなっている。
【0045】
ここで、振動腕部112が延設する方向に平行な方向とは、基部111の所定の一辺と直交する方向である。
また、振動腕部112が延設する方向に直交する方向とは、基部111の所定の一辺と平行な方向である。
【0046】
また、溝部120の深さは、基部111の板厚を100%としたとき、基部111の板厚の10%の長さより深く、基部111の板厚の40%より短い長さより浅くなっている。
溝部120の深さが基部111の板厚の10%の長さより浅い場合、後述する接続用電極140が素子搭載部材の搭載パッドに電気的に接続されつつ固定され音叉型屈曲水晶振動素子100が素子搭載部材に搭載された状態で接続用電極140に電圧が印加されそれぞれの振動腕部112が振動されるとき、それぞれの振動腕部112から固定される接続用電極140への振動伝播を抑制することができない。このため、音叉型屈曲水晶振動素子100のクリスタルインピーダンスが大きくなり電気的特性が低下してしまう。
溝部120の深さが基部111の板厚の40%の長さより深い場合、基部111の強度が低下してしまい、例えば、素子搭載部材に音叉型屈曲水晶振動素子を搭載するときに溝部112を基点に破損してしまう恐れがある。
このため、溝部120の深さは、基部111の板厚の10%の長さより深く、基部111の板厚の40%の長さより浅くなっている。
【0047】
ここで、基部111の一方の主面に設けられている溝部120を第一の溝部121とし、基部111の他方の主面に設けられている溝部120を第二の溝部122とする。
【0048】
第一の溝部121は、図1(a)に示すように、基部111の一方の主面に複数、設けられており、振動腕部112が設けられている基部111の所定の一辺に平行となるように並んで設けられている。このとき、第一の溝部121は、図1(a)に示すように、後述する接続用電極140及び配線部Hに接触しない位置に設けられている。
【0049】
第二の溝部122は、図1(b)に示すように、基部111の他方の主面に複数、設けられており、振動腕部112が設けられている基部111の所定の一辺に平行となるように並んで設けられている。このとき、第二の溝部122は、図1(b)に示すように、後述する接続用電極140及び配線部Hに接触しない位置に設けられている。
【0050】
また、第二の溝部122は、図1(c)に示すように、第二の溝部122の開口部が第一の溝部122の開口部に対向する位置に設けられている。つまり、第一の溝部121と第二の溝部122とは、基部111の板厚の中心を通過しつつ基部111の主面に平行な面を基準として面対称となっている。
【0051】
従って、このような水晶片は、第一の溝部121と第二の溝部122とが基部111の板厚の中心を通過しつつ基部111の主面に平行な面を基準として面対称となっているので、第一の振動腕部112aと第一の溝部121の開口部との距離が第一の振動腕部112aと第二の溝部122の開口部との距離と同じとなっている。このため、このような水晶片は、第一の振動腕部112aで生じる振動であって、固定端側を軸にして自由端側が厚み方向に振れる振動を抑えることができる構造となっている。
また、このような水晶片は、第二の振動腕部112bと第一の溝部121の開口部との距離が第二の振動腕部112bと第二の溝部122の開口部との距離と同じとなっている。このため、このような水晶片は、第二の振動腕部112bで生じる振動であって、固定端側を軸にして自由端側が厚み方向に振れる振動を抑えることができる構造となっている。
つまり、このような水晶片は、基部111の板厚の中心を通過しつつ基部111の主面に平行な面を基準として面対称となっているので、振動腕部112を屈曲振動させた場合、固定端側を軸にして自由端側が厚み方向に振れる振動を抑えることができる構造となっている。
【0052】
また、このような水晶片は、溝部120が設けられている基部111と基部111の所定の一つの側面から同一方向に延設されている二つ一対の振動腕部113とから一体で構成されて音叉形状となっており、基部111の両主面に設けられている複数の溝部120が基部111の板厚の中心を通過しつつ基部111の主面に平行な面を基準として対称となるように設けられている。
【0053】
励振用電極130(131,132,133,134)は、図1(a)及び図1(b)に示すように、それぞれ振動腕部112に設けられている。
【0054】
励振用電極131は、図1(a)に示すように、基部111の一方の主面と同一平面となっている振動腕部112の面に設けられている。
励振用電極132は、図1(b)に示すように、基部111の他方の主面と同一平面となっている振動腕部112の面に設けられており、励振用電極131と対向する位置に設けられている。
励振用電極133は、図1(a)及び図1(b)に示すように、隣接する振動腕部112側を向く振動腕部112の面に設けられている。
励振用電極134は、図1(a)及び図1(b)に示すように、隣接する振動腕部112側を向く面に対向する同一の振動腕部112の面に設けられており、励振用電極133と対向する位置に設けられている。このとき、励振用電極134は、図1(b)に示すように、隣接する振動腕部112側を向く面に設けられている励振用電極133と後述する配線部Hによって電気的に接続されている。
【0055】
第一の振動腕部112aの励振用電極131は、図1(a)に示すように、後述する配線部Hによって第二の振動腕部112bの励振用電極133と電気的に接続されている。
また、第二の振動腕部112bの励振用電極131は、図1(b)に示すように、後述する配線部Hによって第一の振動腕部112aの励振用電極133と電気的に接続されている。
【0056】
接続用電極140(141,142)は、図1(a)及び図1(b)に示すように、二つ一対で設けられている。
また、接続用電極140は、本発明の第一の実施形態に係る音叉型屈曲水晶振動素子100が電子部品に用いられるとき、素子搭載部材の搭載パッドに電気的に接続されつつ固定される。これにより、音叉型屈曲水晶振動素子100が素子搭載部材に搭載される。
【0057】
一方の接続用電極141は、基部111の一方の主面から基部111の他方の主面にわたって設けられている。
また、一方の接続用電極141は、図1(a)に示すように、振動腕部112に接している基部111の所定の一辺に対向する基部111の辺の一方の角端部に位置するように設けられている。
また、一方の接続用電極141は、図1(a)及び図1(b)に示すように、後述する配線部Hによって、第一の振動腕部112aの励振用電極131,132及び第二の振動腕部112bの励振用電極133,134に電気的に接続されている。
【0058】
他方の接続用電極142は、基部111の一方の主面から基部111の他方の主面にわたって設けられている。
また、他方の接続用電極142は、図1(a)に示すように、振動腕部112に接している基部111の所定の一辺に対向する基部111の辺の他方の角端部に位置するように設けられている。
また、他方の接続用電極142は、図1(a)及び図1(b)に示すように、後述する配線部Hによって、第一の振動腕部112aの励振用電極133,134及び第二の振動腕部112bの励振用電極131,132に電気的に接続されている。
【0059】
配線部Hは、励振用電極130間、又、励振用電極130と接続用電極140との間を電気的に接続させる役割を果たす。
【0060】
配線部Hは、図1(a)及び図1(b)に示すように、第一の振動腕部112aの両主面に設けられている励振用電極131,132と基部111に設けられている一方の接続用電極141とを電気的に接続している。
また、配線部Hは、図1(a)及び図1(b)に示すように、第二の振動腕部112b側を向く第一の振動腕部112aの面及びこの面に対向する面に設けられている励振用電極133,134間を電気的に接続しつつ、励振用電極133,134と基部111に設けられている他方の接続用電極142とを電気的に接続している。
【0061】
また、配線部Hは、図1(a)及び図1(b)に示すように、第二の振動腕部112bの両主面に設けられている励振用電極131,132と基部111に設けられている他方の接続用電極142とを電気的に接続している。
また、配線部Hは、図1(a)及び図1(b)に示すように、第一の振動腕部112a側を向く第二の振動腕部112bの面及びこの面に対向する面に設けられている励振用電極133,134間を電気的に接続しつつ、励振用電極133,134と基部111に設けられている一方の接続用電極141とを電気的に接続している。
【0062】
周波数調整用金属膜150は、図1(a)及び図1(b)に示すように、それぞれの振動腕部112の両主面であって先端側に設けられている。
【0063】
従って、このような本発明の第一の実施形態に係る音叉型屈曲水晶振動素子100は、両主面に溝部120が設けられている基部111と基部111の所定の一つの側面から同一方向に延設されている二つ一対の振動腕部112とから構成され音叉形状となっている水晶片に励振用電極130、接続用電極140、周波数調整用金属膜150、配線部Hが設けられている。
また、このような本発明の第一の実施形態に係る音叉型屈曲水晶振動素子100は、図1(a)及び図1(b)に示すように、一方の接続用電極141が配線部Hを介して第一の振動腕部112aの励振用電極131、132と第二の振動腕部112bの励振用電極133,134とに電気的に接続される構成となっている。
また、このような本発明の第一の実施形態に係る音叉型屈曲水晶振動素子100は、図1(a)及び図1(b)に示すように、他方の接続用電極142が配線部Hを介して第一の振動腕部112aの励振用電極133,134と第二の振動腕部112bの励振用電極131,132とに電気的に接続される構成となっている。
【0064】
また、このような本発明の第一の実施形態に係る音叉型屈曲水晶振動素子100は、例えば、励振用電極130、接続用電極140、配線部H、周波数調整用金属膜150がクロム層の上に金層が設けられた金属の積層構造となっており、フォトリソグラフィ技術とエッチング技術により形成されている。
【0065】
また、このような本発明の第一の実施形態に係る音叉型屈曲水晶振動素子100は、二つ一対の接続用電極140に電圧を印加すると、二つ一対の振動腕部112を屈曲振動させる構造となっている。
【0066】
振動腕部112が振動しているときの電気的状態を瞬間的にとらえると、第一の振動腕部112aでは、励振用電極131、132がプラス電位となり、励振用電極133,134がマイナス電位となり、プラス電位の励振用電極131,132からマイナス電位の励振用電極133,134に向かう向きに電界が生じている。
このとき、第二の振動腕部112bでは、励振用電極133,134がマイナス電位となり、励振用電極131,132がプラス電位となり、プラス電位の励振用電極133,134からマイナス電位の励振用電極131,132に向かう向きに電界が生じている。
【0067】
このような本発明の第一の実施形態に係る音叉型屈曲水晶振動素子100は、電圧が接続用電極140に印加されると、それぞれの振動杖部112に電界が生じ、それぞれの振動腕部112に伸縮現象が生じる。このとき、このような音叉型屈曲水晶振動素子100は、それぞれの振動腕部112を所定の共振周波数で振動する。
また、このような本発明の第一の実施形態に係る音叉型屈曲水晶振動素子100は、それぞれの振動腕部112に設けられている周波数調整用金属膜150を構成する金属の量を増減させることで共振周波数を調整することができる構成となっている。
【0068】
このような本発明の第一の実施形態に係る音叉型屈曲水晶振動素子100は、両主面に複数の溝部120が設けられている基部111の所定の一つの側面から二つ一対の振動腕部112が同一方向に延設されており、基部111の両主面に設けられた溝部120の開口部が基部111の厚みの中心を通過しつつ基部111の主面に平行な面を基準として対称となっている。
このため、このような本発明の第一の実施形態に係る音叉型屈曲水晶振動素子100は、基部111の表面に設けられた接続用電極140に電圧を印加した場合、振動腕部112から接続用電極140への振動伝播を抑制しつつ、それぞれの振動腕部112に生じる振動であって、固定端側を軸として自由端側が厚み方向に振れる振動を抑えることができる構造となっている。
従って、このような本発明の第一の実施形態に係る音叉型屈曲水晶振動素子100によれば、固定端側を軸にして自由端側が厚み方向に振れる振動を抑えることができるので、従来の音叉型屈曲水晶振動素子400と比較しクリスタルインピーダンスを小さくすることができ、電気的特性を向上させることができる。
【0069】
また、このような本発明の第一の実施形態に係る音叉型屈曲水晶振動素子100によれば、複数の溝部120が基部111の所定の一辺に平行に並ぶように配置されているので、例えば、接続用電極140が導電性接着材によって固定され搭載される場合、電圧が印加され振動腕部112が振動しているとき、それぞれの振動腕部112から本発明の第一の実施形態に係る音叉型屈曲水晶振動素子100を固定する接続用電極120への振動伝播を抑制することができる。
【0070】
また、このような本発明の第一の実施形態に係る音叉型屈曲水晶振動素子100によれば、溝部120の開口部が振動腕部112の延設する方向に平行な辺の長さが振動腕部112の延設する方向に直交する辺の長さより長くなるように設けられているので、振動腕部112が延設する方向に平行な溝部120の開口部の辺の長さが振動腕部112の延設する方向に直交する方向に平行な溝部120の開口部の辺の長さより短い場合と比較し基部111の強度を向上させることができる。
言い換えると、このような本発明の第一の実施形態に係る音叉型屈曲水晶振動素子100によれば、溝部120が振動腕部112の延設する方向に長く形成されているので、溝部120が振動腕部112の延設する方向に短く形成されている場合と比較し基部111の強度を向上させることができる。
【0071】
(第二の実施形態)
本発明の第二の実施形態に係る音叉型屈曲水晶振動素子200は、図2(a)及び図2(b)に示すように、基部211の所定の一辺に平行となるように設けられている溝部220を一行としたとき、基部211に設けられている複数の溝部220が振動腕部212の延設される方向に複数設けられている点で第一の実施形態と異なる。
従って、本発明の第二の実施形態に係る音叉型屈曲水晶振動素子200は、溝部220が設けられている基部211と二つ一対の振動腕部212とから構成されている水晶片が第一の実施形態と異なる。
【0072】
水晶片は、例えば、水晶部材が用いられ、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術により形成されている。
また、水晶片は、基部211と振動腕部212とから構成されている。
【0073】
基部211は、例えば、図2(a)及び図2(b)に示すように、両主面が平面視四角形状の平板状に設けられている。
【0074】
振動腕部212(212a,212b)は、例えば、図2(a)及び図2(b)に示すように、二つ一対で設けられている。
また、振動腕部212は、例えば、図2(a)及び図2(b)に示すように、基基部211の所定の一辺から同一方向に延設されている。つまり、振動腕部212は、基部211の所定の一つの側面から同一方向に延設されている。
【0075】
ここで、一方の振動腕部212を第一の振動腕部212aとし、他方の振動腕部212を第二の振動腕部212bとする。
【0076】
溝部220(221,222)は、基部211の両主面に複数、設けられている。
【0077】
溝部220の開口部は、図2(a)及び図2(b)に示すように、略矩形形状となっており、振動腕部212の延設する方向に平行な辺の長さが振動腕部212の延設する方向に直交する方向に平行な辺の長さより長くなっている。
つまり、溝部220は、振動腕部212の延設する方向に長く形成されている。
【0078】
また、溝部220の深さは、基部211の板厚100%としたとき、基部211の板厚の10%より深く、基部211の板厚の40%より短い長さより浅くなっている。
【0079】
ここで、基部211の一方の主面に設けられている溝部220を第一の溝部221とし、基部211の他方の主面に設けられている溝部220を第二の溝部222とする。
【0080】
第一の溝部221は、図2(a)に示すように、基部211の一方の主面に複数、設けられており、基部211の所定の一辺に平行に並んでいる溝部220を一行としたとき、振動腕部221が延設する方向に平行となるように複数行設けられている。
また、第一の溝部221は、図2(a)に示すように、接続用電極240及び配線部Hに接触しない位置に設けられている。
【0081】
第二の溝部122は、図2(b)に示すように、基部211の他方の主面に、複数、設けられており、基部211の所定の一辺に平行に並んでいる溝部220を一行としたとき、振動腕部221が延設する方向に平行となるように複数行設けられている。
また、第二の溝部221は、図2(b)に示すように、接続用電極240及び配線部Hに接触しない位置に設けられている。
【0082】
また、第二の溝部222は、図2(c)及び図2(d)に示すように、第二の溝部222の開口部が第一の溝部221の開口部に対向する位置に設けられている。つまり、第一の溝部221と第二の溝部222とは、基部211の板厚の中心を通過しつつ基部211の主面に平行な面を基準として面対称となっている。
【0083】
従って、このような水晶片は、第一の溝部221と第二の溝部222とが基部211の板厚の中心を通過しつつ基部211の主面に平行な面を基準として面対称となっているので、第一の振動腕部212aと第一の溝部221の開口部との距離が第一の振動腕部212aと第二の溝部222の開口部との距離と同じとなっている。このため、このような水晶片は、第一の振動腕部212aで生じる振動であって、固定端側を軸にして自由端側が厚み方向に振れる振動を抑えることができる構造となっている。
また、このような水晶片は、第二の振動腕部212bと第一の溝部221の開口部との距離が第二の振動腕部212bと第二の溝部222の開口部との距離と同じとなっている。このため、このような水晶片は、第二の振動腕部212bで生じる振動であって、固定端側を軸にして自由端側が厚み方向に振れる振動を抑えることができる構造となっている。
つまり、このような水晶片は、基部211の板厚の中心を通過しつつ基部211の主面に平行な面を基準として面対称となっているので、振動腕部212を屈曲振動させた場合、固定端側を軸にして自由端側が厚み方向に振れる振動を抑えることができる構造となっている。
【0084】
また、このような水晶片は、溝部220が設けられている基部211と基部211の所定の一つの側面から同一方向に延設されている二つ一対の振動腕部213とから一体で構成されて音叉形状となっており、基部211の両主面に設けられている複数の溝部220が基部211の板厚の中心を通過しつつ基部211の主面に平行な面を基準として対称となるように設けられている。
【0085】
このような本発明の第二の実施形態に係る音叉型屈曲水晶振動素子200は、図2(a)及び図2(b)に示すように、前述した水晶片の表面に励振用電極230(231,232,233,234)と接続用電極240(241,242)と配線部Hと周波数調整用金属膜250とが設けられて形成されている。
【0086】
このような本発明の第二の実施形態に係る音叉型屈曲水晶振動素子200によれば、
両主面に溝部220が設けられている基部211の所定の一つの側面から二つ一対の振動腕部212が同一方向に延設されており、基部211の両主面に設けられた溝部220の開口部が基部211の厚みの中心を通過しつつ基部211の主面に平行な面を基準として対称となっているので、第一の実施形態と同様の効果を奏する。
【0087】
また、このような第二の実施形態に係る音叉型屈曲水晶振動素子200によれば、前記基部に設けられている複数の溝部220が、前記基部211の所定の一つの側面と平行な方向に設けられつつ、前記振動腕部212が延設される方向に平行な方向に設けられているので、基部211の表面に設けられている接続用電極240に電圧が印加された場合、それぞれの振動腕部212の振動が接続用電極240にまで伝播する量をより抑えることができる。
このため、このような本発明の第二の実施形態に係る音叉型屈曲水晶振動素子200によれば、クリスタルインピーダンスが大きくなることを防ぐことができ、より電気的特性を向上させることが可能となる。
【0088】
(第三の実施形態)
本発明の第三の実施形態に係る音叉型屈曲水晶振動素子300は、図3(a)及び図3(b)に示すように、振動腕部312の延設する方向に複数行設けられている溝部320が互い違いとなるように設けられている点で第二の実施形態と異なる。
【0089】
溝部320(321,322)は、基部311の両主面に複数、設けられている。
【0090】
溝部320の開口部は、図3(a)及び図3(b)に示すように、振動腕部312の延設する方向に平行な辺の長さが振動腕部312の延設する方向に直交する方向に平行な辺の長さより長くなっている。
つまり、溝部320は、振動腕部312の延設する方向に長く形成されている。
【0091】
また、溝部320の深さは、基部311の板厚100%としたとき、基部311の板厚の10%より深く、基部311の板厚の40%より短い長さより浅くなっている。
【0092】
ここで、基部311の一方の主面に設けられている溝部320を第一の溝部321とし、基部311の他方の主面に設けられている溝部320を第二の溝部322とする。
【0093】
第一の溝部321は、図3(a)に示すように、基部311の一方の主面に複数、設けられており、基部311の所定の一辺に平行に並んでいる溝部320を一行としたとき、振動腕部321が延設する方向に複数行設けられている。このとき、図3(a)に示すように、基部311の所定の一辺側に最も近い行の溝部321の開口部とこの行に隣接する行の溝部321の開口部とが互い違いとなるように配置されている。
また、第一の溝部321は、図3(a)に示すように、接続用電極340及び配線部Hに接触しない位置に設けられている。
【0094】
第二の溝部322は、図3(b)に示すように、基部311の他方の主面に、複数、設けられており、基部311の所定の一辺に平行に並んでいる溝部320を一行としたとき、振動腕部321が延設する方向に複数行設けられている。このとき、図3(b)に示すように、基部311の所定の一辺側に最も近い行の溝部321の開口部とこの行に隣接する行の溝部321の開口部とが互い違いとなるように配置されている。
また、第二の溝部321は、図3(b)に示すように、接続用電極340及び配線部Hに接触しない位置に設けられている。
【0095】
また、第二の溝部322は、図3(c)及び図3(d)に示すように、第二の溝部322の開口部が第一の溝部321の開口部に対向する位置に設けられている。つまり、第一の溝部321と第二の溝部322とは、基部311の板厚の中心を通過しつつ基部311の主面に平行な面を基準として面対称となっている。
【0096】
従って、このような水晶片は、第一の溝部321と第二の溝部322とが基部311の板厚の中心を通過しつつ基部311の主面に平行な面を基準として面対称となっているので、第一の振動腕部312aと第一の溝部321の開口部との距離が第一の振動腕部312aと第二の溝部322の開口部との距離と同じとなっている。このため、このような水晶片は、第一の振動腕部312aで生じる振動であって、固定端側を軸にして自由端側が厚み方向に振れる振動を抑えることができる構造となっている。
また、このような水晶片は、第二の振動腕部312bと第一の溝部321の開口部との距離が第二の振動腕部312bと第二の溝部322の開口部との距離と同じとなっている。このため、このような水晶片は、第二の振動腕部312bで生じる振動であって、固定端側を軸にして自由端側が厚み方向に振れる振動を抑えることができる構造となっている。
つまり、このような水晶片は、基部311の板厚の中心を通過しつつ基部311の主面に平行な面を基準として面対称となっているので、振動腕部312を屈曲振動させた場合、固定端側を軸にして自由端側が厚み方向に振れる振動を抑えることができる構造となっている。
【0097】
このような本発明の第三の実施形態に係る音叉型屈曲水晶振動素子300は、図3(a)及び図3(b)に示すように、前述した水晶片の表面に励振用電極330(331,332,333,334)と接続用電極340(341,342)と配線部Hと周波数調整用金属膜350とが設けられて形成されている。
【0098】
また、このような第三の実施形態に係る音叉型屈曲水晶振動素子300によれば、前記基部に設けられている複数の溝部320が、前記基部311の所定の一つの側面と平行な方向に設けられつつ、前記振動腕部312が延設される方向に平行な方向に設けられているので、第二の実施形態と同様の効果を奏する。
【0099】
(実施例)
次に、本発明の第一の実施形態に係る音叉型屈曲水晶振動素子100の実施例について説明する。
【0100】
本発明の第一の実施形態に係る音叉型屈曲水晶振動素子100は、前述したように、二つ一対の振動腕部112及び溝部120が設けられている基部111からなる水晶片と、励振用電極130と、接続用電極140と、配線部Hと、周波数調整用金属膜150と、から主に構成されている。
【0101】
水晶片は、例えば、全長が1.45mm、幅が0.35mm、厚みが0.1mmとなっている。
ここで、水晶片の全長とは、振動腕部112と基部111とが接する辺に対向する基部111の辺から振動腕部112と基部1111とが接する辺に対向する振動腕部112の辺までの長さとする。また、水晶片の幅とは、振動腕部112が延設する方向に平行な基部111の辺間の長さとする。また、水晶片の厚みとは、基部111の両主面間の長さとする。
【0102】
振動腕部112は、長さが1.20mm、幅が0.06mm、厚みが0.1mmとなっている。
ここで、振動腕部112の長さとは、振動腕部112と基部111とが接する辺からこの辺に対向する振動腕部112の辺までの長さとする。また、振動腕部112の幅とは、隣接する振動腕部112側を向く面からこの面に対向する同一振動腕部112内の面までの長さとする。また、振動腕部112の厚みとは、振動腕部112の両主面間の長さとする。
【0103】
溝部120は、基部111の両主面に複数、設けられており、基部111の所定の一辺に平行に並んで設けられている。
溝部120の開口部は、振動腕部112の延設されている方向に平行な辺の長さが0.040mmとなっており、振動腕部112の延設されている方向に直交する辺の長さが0.015mmとなっている。
【0104】
溝部120の深さは、基部111の板厚の5%の長さより深く、基部111の板厚の40%の長さより浅くなっている。
ここでは、溝部120の深さは、例えば、基部111の板厚に対し25%の深さとなっている。従って、溝部120の深さは、0.025mmとなっている。
【0105】
ここで、基部111の板厚に対する溝部120の深さ割合とクリスタルインピーダンスの値の関係を図4に示す。
図4に示すように、基部111の板厚に対する溝部120の深さ割合が10%より小さい場合、クリスタルインピーダンスの値が小さくなりにくいことが分かる。
従って、溝部120の深さは、基部111の板厚の10%の長さより深い場合に、接続用電極140に電圧が印加されそれぞれの振動腕部112が振動されるときにそれぞれの振動が後述する接続用電極140まで伝播を抑制することが可能となり、電気的特性を向上させることが可能となる。
【0106】
なお、溝部の断面形状について特に図示も記載もしないが、例えば、U字型、V字型、傾斜角度が異なるように壁面が形成された断面形状などの形に形成してもよい。このとき、基部の両主面に形成されている溝部の開口部が対向している。
【0107】
また、振動腕部の両主面に腕溝部が設けられていない場合について説明しているが、例えば、振動腕部の両主面に腕溝部が設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0108】
100,200,300.400 音叉型屈曲水晶振動素子
111,211,311,411 基部
112,212,312,412 振動腕部
120,220,320,420 溝部
130,230,330,430 励振用電極
140,240,340,440 接続用電極
150,250,350,450 周波数調整用金属膜
H 配線部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両主面が略四角形状となっている平板状の基部と、
前記基部の所定の一つの側面から同一方向に延設されて前記基部と一体化されている二つ一対の振動腕部と、
前記振動腕部の表面に所望のパターンで形成されている複数の励振用電極と、
前記基部の表面に所望のパターンで形成されている二つ一対の接続用電極と、
前記励振用電極間又は前記励振用電極と前記接続用電極との間を電気的に接続している配線部と、
を備えている音叉型屈曲水晶振動素子であって、
前記基部の両主面に開口部が矩形形状の複数の溝部が設けられており、
前記溝部が前記基部の所定の一つの側面に平行な方向に並び、かつ、前記振動腕部の延設する方向に長く形成され、
前記基部の一方の主面に設けられた溝部の開口部が前記基部の他方の主面に設けられた溝部の開口部に対向する位置に設けられている
ことを特徴とする音叉型屈曲水晶振動素子。
【請求項2】
請求項1に記載の音叉型屈曲水晶振動素子であって、
前記基部に設けられている複数の溝部が、前記基部の所定の一つの側面と平行な方向に設けられつつ、前記振動腕部が延設される方向に平行な方向に設けられている
ことを特徴とする音叉型屈曲水晶振動素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−78007(P2013−78007A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217101(P2011−217101)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000104722)京セラクリスタルデバイス株式会社 (870)
【Fターム(参考)】