説明

音声デジタルSTL装置及びAES信号伝送方法

【課題】、シングルキャリア方式の音声デジタルSTL装置において、AES信号へ文字多重放送用の情報を簡易な手段により多重化することを可能にする音声デジタルSTL装置を提供する。
【解決手段】音声デジタルSTL装置1は、情報多重化処理部101と送信処理部102とを備える。情報多重化処理部101は、デジタルオーディオインターフェースフォーマットで規定されるAES信号と、文字多重放送用の情報とを受け取り、AES信号の予備領域に文字多重放送用の情報を多重化する。送信処理部102は、多重化されたAES信号を送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声デジタルSTL(Studio to Transmitter Link)装置に関し、特に、AES(Audio Engineering Society)信号に文字多重放送用の情報を多重化して伝送する、シングルキャリア方式の音声デジタルSTL装置及びAES信号伝送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、音声アナログSTL装置では、アナログ音声信号をFM変調して伝送していた。これに対して、音声デジタルSTL装置の場合、演奏所側から送信所側にデジタル音声信号を伝送した後に、当該デジタル音声信号をFM変調する送信所変調になる。その際、デジタル音声信号でFM変調器に受け渡しすることで、デジタル化された情報の利点である、本線の音源を損なうことなく受け渡しが可能になる。
加えて、従来の音声アナログSTL装置を用いる方式では、アナログ音声信号の伝送であったり、見えるラジオなどに利用される文字多重放送用の情報は、本線のチャンネルとは別の空きチャンネルを使用して伝送したり、ステレオ放送に用いる副搬送波の高域部分を使用して伝送していた。一方、音声デジタルSTL装置では、AES信号にフォーマットされたデジタル音声信号の伝送が可能になる。従って、音声デジタルSTL装置を用いる場合、デジタル化された文字多重放送用の情報を、本線を用いて伝送されるAES信号に多重化して伝送できることが好ましい。
例えば、特許文献1には、映像・音声を転送する伝送路を用いて、データ放送等に用いられるデータ(TSパケットのデータ)を伝送する技術が開示されている。この技術は、TSパケットのデータをデータバースト化し、このデータバーストを、ノンオーディオモードでAES/EBU(European Broadcasting Union)フォーマットにおける複数のオーディオフレームの音声データ領域にマッピングする。これにより、TSパケットのデータを伝送する伝送路を別途用意する必要がなくなる。
【0003】
また、AES信号は、32ビットのデジタルオーディオインターフェースフォーマットで規定されたデータ形式を用いる。このAES音声信号のフォーマットを有効に活用する技術として、例えば、特許文献2の技術が開示されている。特許文献2では、AES音声信号から例えば32ビット以上の纏まった単位で時間情報を取り出すことができるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−238006号公報
【特許文献2】特開2008−257059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1は、使用されていないAES/EBU領域にTSパケットをマッピングして、使用していない領域の有効活用を図るものである。従って、使用していない領域を検出する処理が必要となっていた。また、特許文献2は、AES音声信号のフォーマットを変更するものであり、送信側では、フォーマットを変換する処理が必要となっていた。特許文献1,2の技術では、このような処理を実施するため、音声デジタルSTL装置へ負荷かかっていた。
本発明は、シングルキャリア方式の音声デジタルSTL装置において、AES信号へ文字多重放送用の情報を簡易な手段により多重化することを可能にする装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る音声デジタルSTL装置の一態様は、情報多重化処理部と、送信処理部とから構成される。情報多重化処理部は、デジタルオーディオインターフェースフォーマットで規定されるAES(Audio Engineering Society)信号と、文字多重放送用の情報とを受け取り、前記AES信号の予備領域に前記文字多重放送用の情報を多重化する。送信処理部は、多重化されたAES信号を送信する。
【0007】
また、本発明に係るAES信号伝送方法の一態様は、音声デジタルSTL装置における、デジタルオーディオインターフェースフォーマットで規定されるAES信号伝送方法であって、前記AES信号と、文字多重放送用の情報とを受け取り、前記AES信号の予備領域に前記文字多重放送用の情報を多重化し、多重化されたAES信号を送信する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、シングルキャリア方式の音声デジタルSTL装置において、AES信号へ文字多重放送用の情報を簡易な手段により多重化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る音声デジタルSTL装置の構成例を示すブロック図である。
【図2】情報多重化処理部の詳細を示すブロック図である。
【図3】AES信号に適用される32ビットのデジタルオーディオインターフェースフォーマットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。各図面において同一の構成または機能を有する構成要素および相当部分には、同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0011】
本発明は、シングルキャリア方式のデジタル変調方式を用いた音声デジタルSTL装置の無線伝送システムにおいて、AES信号の伝送およびAES信号内部に文字多重放送用の情報を多重化して伝送する方式を提案する。以下、図面を参照して実施形態を説明する。
【0012】
実施形態1.
図1は、本発明に係る音声デジタルSTL装置の構成例を示すブロック図である。図1に示す通り本発明による音声デジタルSTL装置1は、送信部100と受信部200とを備える。送信部100は、AES信号処理部11、情報多重部12、誤り訂正部13、フレーミング14、変調部15、及び、送信変換部16から構成される。受信部200は、受信変換部21、復調部22、デフレーミング23、誤り訂正部24、及び、AES信号出力部25から構成される。送信部100において、AES信号処理部11、及び、情報多重部12を、AES信号へ文字多重放送用の情報を多重化する処理を実施する情報多重化処理部101と称することもある。また、誤り訂正部13、フレーミング14、変調部15、及び、送信変換部16を、多重化したAES信号を処理して送信する送信処理部102と称することもある。
【0013】
送信部100では、情報多重化処理部101(AES信号処理部11と情報多重部12)によって、AES信号に文字多重放送用の情報を多重化する。
図2は、情報多重化処理部101の詳細を示すブロック図である。図2に示す通り、情報多重化処理部101の詳細な構成は、AES信号処理部11、PLL(Phase-locked loop)回路17、及び、情報多重部12からなる。
音声デジタルSTL装置1に入力されるAES信号は、外部機器で生成されるため、非同期で入力される。そのため、AES信号処理部11は、AES信号から外部クロックを再生する。そして、PLL回路17は、再生された外部クロックを基準に内部クロックを生成する。情報多重部12及び送信処理部102の各構成要素は、生成された内部クロックに基づいて処理を実施する。
AES信号処理部11は、AES信号を、情報多重部12が処理可能なAESデータとして出力する。
情報多重部12は、AESデータに文字多重放送用の情報を多重化したAESデータを誤り訂正部13へ出力する。
【0014】
図3は、AES信号に適用される32ビットのデジタルオーディオインターフェースフォーマットを示す図である。図3に示すようにAES信号は、32ビットのデジタルオーディオインターフェースフォーマットで規定されている。この内、音声データの領域の一部(音声データ領域は、最大20ビット)と予備領域(最大4ビット)を利用して、文字多重放送用の情報を多重化する。例えば、図3にように、音声データを16ビットとした場合、文字多重放送用の情報は最大8ビット伝送することができる。具体的には、例えば、音声データとして16ビットの領域を使用する場合、4ビットは空き領域となる。従って、予備領域4ビット(領域A1)と空き領域4ビット(領域A2)とによって、8ビットの領域を使用することが可能となる。
【0015】
文字多重放送用の情報をAES信号に多重化する場合、情報多重部12は、文字多重放送用の情報を圧縮等の加工を実施することなく、AESデータの空き領域に多重化する。また、文字多重放送用の情報の大きさが、一つのフレームの空き領域を超える場合、情報多重部12は、文字多重放送用の情報を分割して、次のフレームの空き領域に多重化する。
加えて、情報多重部12は、予備領域の先頭の1ビットを、文字多重放送用の情報をAES信号に挿入しているか否かを示すフラグとして用いてもよい。あるいは、複数のフレーム(伝送される単位)に付加されるヘッダ情報へ、文字多重放送用の情報を付加しているか否かを示すフラグを保持するようにしてもよい。
【0016】
上述したようなフラグを設定することによって、受信側では、AES信号に文字多重放送用の情報が多重されているか否かを把握することが可能になる。例えば、受信部200のAES信号出力部25は、フラグが文字多重放送用の情報を多重化していることを示している場合、AES信号から文字多重放送用の情報を抽出して送出するとともに、AES信号に文字多重用の情報が多重化されていた領域のビットをクリア(デフォルト値)に設定して、AES信号を送出することができる。
なお、図1に示した構成要素のうち、特に説明していない構成要素については、周知技術と同様の機能を実施するものであるため、説明を省略している。
【0017】
本実施形態によれば、次の有利な効果を奏することができる。
音声アナログSTL装置では、アナログ音声信号の伝送であり、見えるラジオなどに利用される文字多重放送用の情報は、本線のチャンネルとは別の空きチャンネルを使用して伝送したり、ステレオ放送に用いる副搬送波の高域部分を使用して伝送していた。これに対して、本実施形態の音声デジタルSTL装置では、AES信号にファーマットされたデジタル音声を伝送するとともに、AES信号のフォーマットのデータ部分(予備領域及び音声データ領域)の自由度を利用して、文字多重放送用の情報を当該データ部分へ多重化して伝送することが可能である。これにより、AES信号を伝送する本線を用いて文字多重放送用の情報を伝送することができるため、本線と別の回線を用意する必要がなくなる。
【0018】
加えて、文字多重放送用の情報として、非圧縮でデジタル変調方式を用いるため、演奏所側の音声デジタルSTL装置では、受信したAES信号および文字多重放送用の情報を加工したりすることなく、オリジナルの状態で次段のFM変調器へ渡すことができる。具体的には、文字多重放送用の情報を、アナログ/デジタル変換や圧縮等の加工を必要とせず、受信した文字多重放送用の情報をそのまま後続の処理に受け渡すことが可能になる。その結果、デジタル化された情報の利点である、音源を損なうことなく受け渡しをすることができる。
上述したような有利な効果を奏するため、本実施形態の音声デジタルSTL装置及びAES信号伝送方法ででは、非圧縮でデジタル音声信号を伝送することと、見えるラジオなどに利用される文字多重放送用の情報を伝送することとを、本線以外の部分もしくは別回線を使用することなく、受信側の装置へ提供することが可能になる。
【0019】
その他の実施形態.
実施形態1では、AES信号の予備領域と音声データの一部領域とに文字多重放送用の情報を多重化することを説明したが、AES信号の予備領域と音声データの一部領域とのいずれか一方にのみ文字多重放送用の情報を多重化する場合であってもよい。また、本発明の音声デジタルSTL装置は、上述したデータ領域を利用することに限定されるものではなく、利用していない(空いている)領域であって、文字多重放送用の情報を圧縮することなく多重化できる領域であれば、他の領域を利用してもよい。
【0020】
なお、本発明は上記に示す実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲において、上記実施形態の各要素を、当業者であれば容易に考えうる内容に変更、追加、変換することが可能である。
【符号の説明】
【0021】
1 音声デジタルSTL装置
11 AES信号処理部
12 情報多重部
13 誤り訂正部
14 フレーミング
15 変調部
16 送信変換部
17 PPL回路
21 受信変換部
22 復調部
23 デフレーミング
24 誤り訂正部
25 AES信号出力部
100 送信部
101 情報多重化処理部
102 送信処理部
200 受信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
デジタルオーディオインターフェースフォーマットで規定されるAES(Audio Engineering Society)信号と、文字多重放送用の情報とを受け取り、前記AES信号の予備領域に前記文字多重放送用の情報を多重化する情報多重化処理手段と、
前記多重化されたAES信号を送信する送信処理手段と、を備える音声デジタルSTL(Studio to Transmitter Link)装置。
【請求項2】
前記情報多重化処理手段は、前記予備領域に加え、音声データ領域の一部に前記文字多重放送用の情報を多重化することを特徴とする請求項1記載の音声デジタルSTL装置。
【請求項3】
音声デジタルSTL装置の、デジタルオーディオインターフェースフォーマットで規定されるAES信号伝送方法であって、
前記AES信号と、文字多重放送用の情報とを受け取り、
前記AES信号の予備領域に前記文字多重放送用の情報を多重化し、
多重化されたAES信号を送信するAES信号伝送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−253535(P2012−253535A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124106(P2011−124106)
【出願日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】