説明

音声デマルチプレクサおよび音声デマルチプレクス方法

【課題】信号に間違った音声クロック位相情報データが付けられていても、音声ノイズの発生を防止することができる音声デマルチプレクサを提供する。
【解決手段】判定手段501は、同一のラインに音声のサンプルが2つ多重されているときに、2サンプル目に付けられている音声クロック位相情報データが1サンプル目に付けられている音声クロック位相情報データよりも大きく、かつ、そのラインの1水平期間前に多重されていた最後のサンプルの音声クロック位相情報データに比べて、そのラインにおける1サンプル目に付けられている音声クロック位相情報データが小さいという条件が満たされているか否かを判定する。アラーム出力手段502は、その条件が満たされていると判定された場合にアラームを出力する。クロック出力手段503は、そのアラームを検出したときに、映像から作ったクロックを出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声デマルチプレクサ、音声デマルチプレクス方法、音声マルチプレクサおよび音声マルチプレクス方法に関し、特に、HDTV(High Definition Television)に適用される音声デマルチプレクサ、音声デマルチプレクス方法、音声マルチプレクサおよび音声マルチプレクス方法に関する。
【背景技術】
【0002】
HDTVが規格化される以前の走査線525ライン方式での音声多重は、音声クロック位相情報データを用いていなかった。HDTVにおいても、音声クロック位相情報データを使わない受信方法がある。また、非特許文献1には、音声クロック位相情報データの解説が記載されている。なお、以下の説明において、音声クロック位相情報データをAUCKと記す場合がある。
【0003】
音声クロック位相情報データを信号に付けることで、映像に非同期な音声もそのまま受信できる利点がある。また、設計により、遅延時間を一定にしたり、さらに一時的なエラーがあった後の復旧を早くしたりすることもできる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】“1125/60方式HDTVビット直列インタフェースにおけるデジタル音声規格(Audio Data Format of Bit-serial Digital Interface for 1125/60 HDTV Systems) BTA S−006C 1.0版”、[online]、2009年7月、社団法人電波産業会(Association of Radio Industries and Businesses)、インターネット<URL: http://www.arib.or.jp/english/html/overview/doc/2-BTA_S-006_C1_0.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、間違った音声クロック位相情報データが付いた信号が生じる場合がある。非特許文献1では、規格違反の信号を想定していないため、間違った音声クロック位相情報データが付いた信号に対する対策を講じていない。非特許文献1では、音声クロック位相情報データのジッタについての規定や、音声クロック位相情報データについてのアラームの検出方法について明示されていない。
【0006】
図10は、映像のクロックから作ったクロックで読み出しを行う一般的なデマルチプレクサの例を示すブロック図である。AUD検出部2002は、入力端子2001に供給された10ビットのパラレル映像信号からアンシラリデータフラグ(ADF)とDID(データID)を検出する。そして、AUD検出部2002は、多重されている音声データ等をパラレルデータに変換し音声データをメモリ2003に送るとともに、書き込みパルスをメモリ2003に出力する。この結果、水平ブランキング内に送られてきた時間軸が縮少、拡大された音声データがメモリ2003に書き込まれる。
【0007】
48KHzGEN(48KHzクロックGenerator :48KHzクロック生成部)2005は、映像のクロックから48KHzのクロックを生成する。映像の5フレーム期間における音声48KHzのサンプル数が8008となる関係の音声を、映像に同期した音声と称している。映像の5フレーム期間に書き込まれる音声サンプル数と読み出すサンプル数とが同じで、書き込まれたタイミングから少し遅れたタイミングで読み出せば、時間軸が等間隔である48KHzレートの音声信号に復元される。1H(1水平期間)毎に多重される音声サンプル数は平均1.4サンプル程度であり、1または2サンプルの音声データが水平ブランキング期間に多重される。メモリ2003から出力端子2004に送りだされる音声データは等間隔であり、ジッタのない48KHzの周期のデータとなる。しかし、メモリ2003の読み出しクロックは映像のクロックから作られているので、いわゆる、映像に対して非同期な音声が多重されたときにはメモリ2003出力では、同じデータを繰り返したり、1サンプル欠落が生ずる。
【0008】
次に、図11を参照して説明する。図11は、フレーム毎のサンプル数の変化の例を示す説明図である。ここでは、映像の1フレームの周波数が30/1.001=29.97Hzである場合について説明する。映像の5フレーム期間における音声サンプル数は8008である。従って、フレーム毎の音声サンプル数は例えば、1602,1601,1602,1601,1602となる。しかし、機器に供給される基準信号(ブラックバースト)には5フレーム周期の情報が含まれていないため、5種類の位相が考えられる。(さらに、映像フレームと音声48KHzの位相と48KHzのジッタがあるとこのような規則的な並びになるとはかぎらない。)サンプル数に関して、このような5フレーム周期の位相が合っていない信号を切り替えると、図10に示すメモリ2003に残留するバッファサンプル数は増減する。
【0009】
図11に示す行番号はフレーム番号に該当する。フレーム番号1〜5では書き込み数と読み出し数は同じであり、当初4サンプルバッファだった状態は変化しない。しかし、フレーム番号6、フレーム番号8、フレーム番号10、フレーム番号11での切替でバッファサンプル数は減少し、フレーム番号14での切替でフレ−ム番号16でバッファがマイナスになっている。バッファの破綻が切替直後ではなく後になって起きている。切替直後は無音にミュートしたがミュートから戻ったあとにノイズが出ることが考えられる。切り替ったことをなんらかの方法で検出し、切替のたびにバッファを管理する必要がある。
【0010】
また、音声は、1グループ4chの音声としてまとめられており、8ch音声は2グループを使って送られてくるが、グループ間相互のメモリ位相を合わせる情報は明確にはない。また、全てのラインで多重サンプル数がグループ1と2で一致していることが義務づけられているわけではない。しかし、サラウンド音声を2グループを使って伝送するためにはグループ間位相が一致していることが必要である。グループ間の音声位相の維持に関しては、非特許文献1の第27頁における「2.2 A版規格改訂時(1996年)の審議経過 (3)」の項目に記載されているが、注意喚起に留まっているようである。
【0011】
音声クロック位相情報データを使えるならば、例えば、グループ1の音声クロック位相情報データを復元した48KHzから半分の周期の約10マイクロs遅れたところで2グループを読み直せば、例えば4マイクロs程度ずれていてもエラーを起こさずに同一タイミングに揃えることができる。
【0012】
図12は、音声クロック位相情報データを使用する一般的なデマルチプレクサの例を示すブロック図である。図10と同様の要素に関しては、図10と同一の符号を付し、説明を省略する。Hカウンタ2007は、0から2199までの値を計数し、AUCKDET(AUCK Detector:AUCK検出部)2006に出力する。AUCKDET2006は、映像のクロマ系列のパラレルデータの水平ブランキング期間に送られてくる音声パケットの中の、ユーザデータワードが0(UDW0)と1(UDW1)である音声クロック位相情報データを受ける。また、AUCKDET2006は、Hカウンタ2007が出力する計数値を受ける。映像の1クロック分のジッタが増えているものの、マルチプレックス側の48KHzクロックを忠実に復元している。AUCKDET1006の出力である48KHzの信号でメモリ1003は読み出しを行う。この動作により、映像に非同期な音声に対応できる。つまり、送信側であるマルチプレクサ側の48KHzと音声データとを受信側で忠実に復元できる。
【0013】
非特許文献1に記載された音声クロック位相情報データを使ったデマルチプレクサは、グループ間位相あわせの問題と非同期音声を扱えるようにする問題を解決できる。しかし、間違った音声クロック位相情報データが付けられた信号が生じた場合には、AES(Audio Engineering Society )音声に戻すデマルチプレクサにおいて音声にノイズが生じることもあった。映像と音声とが非同期であることにより音声にノイズが生じることもあるが、間違った音声クロック位相情報データが信号に付加されていることが原因で音声にノイズが生じることもあった。
【0014】
そこで、本発明は、信号に間違った音声クロック位相情報データが付けられていても、音声ノイズの発生を防止することができる音声デマルチプレクサおよび音声デマルチプレクス方法を提供することを目的とする。
【0015】
また、そのような間違った音声クロック位相情報データの発生を防止する音声マルチプレクサおよび音声マルチプレクス方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明による音声デマルチプレクサは、同一のラインに音声のサンプルが2つ多重されているときに、2サンプル目に付けられている音声クロック位相情報データが1サンプル目に付けられている音声クロック位相情報データよりも大きく、かつ、そのラインの1水平期間前に多重されていた最後のサンプルの音声クロック位相情報データに比べて、そのラインにおける1サンプル目に付けられている音声クロック位相情報データが小さいという条件が満たされているか否かを判定する判定手段と、その条件が満たされていると判定された場合にアラームを出力するアラーム出力手段と、アラームを検出したときに、映像から作ったクロックを出力するクロック出力手段とを備えることを特徴とする。
【0017】
また、本発明による音声デマルチプレクス方法は、同一のラインに音声のサンプルが2つ多重されているときに、2サンプル目に付けられている音声クロック位相情報データが1サンプル目に付けられている音声クロック位相情報データよりも大きく、かつ、そのラインの1水平期間前に多重されていた最後のサンプルの音声クロック位相情報データに比べて、そのラインにおける1サンプル目に付けられている音声クロック位相情報データが小さいという条件が満たされているか否かを判定し、その条件が満たされていると判定した場合にアラームを出力し、アラームを検出したときに、映像から作ったクロックを出力することを特徴とする。
【0018】
また、本発明による音声マルチプレクサは、音声のサンプルに音声クロック位相情報データを付加しておき、1つ目のサンプルの音声クロック位相情報データに対して、次のサンプルの音声クロック位相情報データが増加していれば、次のサンプルを2つ目のサンプルとして多重し、1つ目のサンプルの音声クロック位相情報データに対して、次のサンプルの音声クロック位相情報データが減少していれば、次のサンプルを次のラインに多重する多重手段を備えたことを特徴とする。
【0019】
また、本発明による音声マルチプレクス方法は、音声のサンプルに音声クロック位相情報データを付加しておき、1つ目のサンプルの音声クロック位相情報データに対して、次のサンプルの音声クロック位相情報データが増加していれば、次のサンプルを2つ目のサンプルとして多重し、1つ目のサンプルの音声クロック位相情報データに対して、次のサンプルの音声クロック位相情報データが減少していれば、次のサンプルを次のラインに多重することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の音声デマルチプレクサおよび音声デマルチプレクス方法によれば、信号に間違った音声クロック位相情報データが付けられていても、音声ノイズの発生を防止することができる。
【0021】
また、本発明の音声マルチプレクサおよび音声マルチプレクス方法によれば、信号に間違った音声クロック位相情報データが付けられることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の音声デマルチプレクサの例を示すブロック図である。
【図2】本発明の音声デマルチプレクサの詳細な構成例を示す説明図である。
【図3】本発明の音声デマルチプレクサの詳細な構成例を示す説明図である。
【図4】本発明の音声デマルチプレクサの詳細な構成例を示す説明図である。
【図5】音声デマルチプレクサの各部(特に図2および図3に図示した部分)の信号のタイミングチャートである。
【図6】間違いが混入した場合における信号のタイミングチャートである。
【図7】音声デマルチプレクサの各部の信号のタイミングチャートである。
【図8】本発明の音声デマルチプレクサの最小構成の例を示すブロック図である。
【図9】本発明の音声マルチプレクサの最小構成の例を示すブロック図である。
【図10】映像のクロックから作ったクロックで読み出しを行う一般的なデマルチプレクサの例を示すブロック図である。
【図11】フレーム毎のサンプル数の変化の例を示す説明図である。
【図12】音声クロック位相情報データを使用する一般的なデマルチプレクサの例を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態を図面を参照して説明する。
本発明は、HDTV(High Definition Television)に適用される。本実施形態では、映像の1水平期間(1Hと記す。)のクロック数が2200であり、音声のサンプリング周波数48KHzとの関係から、平均で1H当たり約1.4サンプル分の音声データを多重することになる。従って、1H当たり1サンプルを多重するときと、2サンプルを多重するときとがある。本発明では、2サンプル目を多重するときの音声クロック位相情報データは、1サンプル目の音声クロック位相情報データに対して増加していること、かつ、1水平期間を跨ぐときには、音声クロック位相情報データが減少していることを検出したときに、アラームを出力する。
【0024】
すなわち、同一のラインに2サンプルが多重されているときに、2サンプル目に付けられている音声クロック位相情報データが1サンプル目に付けられている音声クロック位相情報データよりも大きく、かつ、その着目しているラインの1H前に多重されていた最後のサンプルの音声クロック位相情報データに比べて、その着目しているラインに多重されている1サンプル目の音声クロック位相情報データが小さいという条件が満たされていることを検出した場合、音声クロック位相情報データについてのアラームを出力する。
【0025】
さらに、本発明では、出力されたアラームを検出したときには、代替の音声クロックを出力する回路(後述の図4におけるセレクタ303)を有する。
【0026】
映像の1水平期間(1H)のクロック数が2200であり、48KHzの1周期が映像の1545クロック期間に対応する。従って、1Hを跨ぐとき、およそ655減じたデータとなる。しかし、非特許文献1ではジッタの規格は明示されていないため、ジッタの厳密な値をアラーム出力の判断に使用することは適当ではない。そこで、本発明では、音声クロック位相情報データの増減に着目して、アラームを出力するか否かを判定している。
【0027】
図1は、本発明の音声デマルチプレクサの例を示すブロック図である。本発明の音声デマルチプレクサは、入力端子1001と、AUD検出部1002と、メモリ1003と、出力端子1004と、48KHzGEN(48KHzクロックGenerator :48KHzクロック生成部)1005と、AUCKDET(AUCK Detector:AUCK検出部)1006と、Hカウンタ1007と、AUCKALM(AUCK Alarm出力部:AUCKアラーム出力部)1008と、SEL(Selector:セレクタ)1009と、アラーム出力端子1010とを備える。
【0028】
入力端子1001、AUD検出部1002、メモリ1003および出力端子1004は、図10および図12に示した入力端子2001、AUD検出部2002、メモリ2003および出力端子2004と同様である。また、48KHzGEN1005は、図10に示した48KHzGEN2005と同様である。また、AUCKDET1006およびHカウンタ1007は、図12に示したAUCKDET2006およびHカウンタ2007と同様である。
【0029】
AUCKALM1008は、音声クロック位相情報データの誤りの有無を検出する回路であり、誤りを検出した場合に、アラームをアラーム出力端子1010とセレクタ1009に出力する。すなわち、AUCKALM1008は、上述の条件が満たされたか否かを監視し、その条件が満たされたことを検出した場合に、アラームをアラーム出力端子1010とセレクタ1009に出力する。
【0030】
セレクタ1009は、AUCKDET1006からのAUCK(音声クロック位相情報データ)を元に生成した48KHzクロックと、映像のクロックから48KHzのクロックを作る48KHzGEN1005から受けるクロックのいずれかを、AUCKALM1008からの制御により選択し、メモリ1003に出力する。セレクタ1009は、音声クロック位相情報データに誤りがあったときは(すなわち、アラームを検出したときは)、映像から作った48KHzに切替えて出力する。
【0031】
図2、図3および図4は、本発明の音声デマルチプレクサの詳細な構成例を示す説明図である。図2でA〜Hの符号を付して示した配線は、図3でA〜Hの符号を付して示した配線に該当する。同様に、図3でI〜Rの符号を付して示した配線は、図4でI〜Rの符号を付して示した配線に該当する。
【0032】
図2に示すラッチ10〜28で構成されるシフトレジスタには、入力端子1から映像信号(色信号成分の系列の10ビット)が供給される。このシフトレジスタは、約74.176MHz(74.25MHz/1.001)のクロックで動作する。
【0033】
また、音声デマルチプレクサには、クロック入力端子2が設けられている。
【0034】
デコーダ35は、アンシラリデータフラグ(ADF)とデータID(DID)を検出し、音声パケットのユーザデータワード0から17(UDW0〜17)が揃ったときにタイミングパルス送り出しラッチ29(以下、単にラッチ29と記す。)に送る。
【0035】
なお、図2に示す例では、デコーダ35の入力端子1側には、ラッチ31〜34が設けられている。また、デコーダ35とラッチ29との間には、パラレルラッチパルス発生部36が設けられている。そして、パラレルラッチパルス発生部36の出力側には、ラッチ45、カウンタ42が設けられている(図2参照)。
【0036】
ラッチ29からは、同時タイミングで、4ch分の音声データや、非特許文献1で規定されたV,U,C,P,Zの各種ビットや、音声クロック位相情報データ(計13ビット)が出力される。音声データ等はメモリ41に送られる。なお、図2に示す例では、メモリ41と出力端子3との間に、ラッチ103が設けられている。
【0037】
カウンタ42は、メモリの書き込みアドレスを計数する。カウンタ42の出力は、後述の図6の(a)に例示するように変化する。
【0038】
TRSデコーダ55(図3参照。)は、ラッチ51〜54の信号を受け、映像の終わり(エンド)と映像の開始(スタート)を示すEAVタイミングパルスとSAVタイミングパルスを出力する。以下の説明において、EAVタイミングパルスを単にEAVと記し、SAVタイミングパルスを単にSAVと記す場合がある。カウンタ61は、EAVタイミングでリセットされ、SAVまでに音声パケットが何サンプルであるか(0、1、2)を計数している。カウンタ61は、音声パケットが0サンプルのときSAVタイミングで2回、1サンプルのとき1回、ラッチ71,72に追加のパルスを出力する。カウンタ61は、音声パケットが1サンプルしかないときの2サンプル目に、音声クロック位相データ(CK0〜11に相当)としては無効な値である4095を付加している。CKについては、非特許文献1に規定されている。
【0039】
カウンタ61の出力側には、デコーダ62が設けられる(図3参照)。デコーダ62は、カウンタ61の出力を受け、デコードして信号を出力する。具体的には、デコーダ62は、“0”が入力されたときには、ロジック“1”を出力し、“1”が入力されたときにはロジック“1”を出力する。そして、デコーダ62の出力側には、ORゲート63が設けられる。また、TRSデコーダ55の出力側には、ラッチ67,68が設けられている。さらに、ORゲート63やTRSデコーダ55の出力側には、図3に示すように、ANDゲート64,65と、ORゲート66が設けられる。
【0040】
また、ORゲート66の出力側にはセレクタ70が設けられている。セレクタ70は、2ビットのセレクタである。Sが“0”のとき入力A0がY0に出力され、入力A1がY1に出力される。Sが“1”のとき入力B0がY0に出力され、入力B1がY1に出力される。
【0041】
ORゲート69からは1Hあたり2回のパルスが出力される。なお、ここでは、説明を簡単にするため、ラッチ217,218がないものとして、図3に示すラッチ217の入力側と出力側とが単に接続されていて、ラッチ218に関しても、入力側と出力側とが単に接続されているものとして説明する。ラッチ73,74で2サンプルが同時タイミングの情報になる。ラッチ73の出力は最初に送られてきたもので、ラッチ74では2番目の情報として並べかえられている。さらに音声クロック位相情報データ(CK0〜11及びCK12)のほかにメモリ41に書き込まれた番地から1減算(0は7に)したアドレス情報もペアにしてラッチ73,74を通している。メモリ41に書き込まれた番地とそのときの音声クロック位相情報データは関連付けられている。この書き込みアドレスを読み出しアドレスに使用することでメモリ41を単なるラッチのように動作させている。図2から図4までに示す音声デマルチプレクサでは、音声クロック位相情報データを使うモードと、映像のクロックから作った48KHzで読み出すモードの2種類の動作を実現できるように構成されている。
【0042】
また、メモリ41を使わずにラッチ29からの音声等のデータをラッチ71〜76を通して、ロードデータセレクタ77に相当するセレクタを設け、ORゲート91の出力に応じてラッチする方法もある。この方法を適用する場合、WADR減算部44(図2参照)等は不要である。
【0043】
映像の特定のラインは音声パケット等の多重が禁止されている。そして、1H遅れて送られていることを示す情報として、音声クロック位相情報データのCK12(多重位置識別フラグ)があり、これもラッチ73,74を通している。ラッチ73,74のラッチイネーブルパルスは1H毎に1回生じるパルスである。ラッチ75,76の出力はラッチ73,74に対してちょうど1H遅延している。CK12が“0”のときはANDゲート85、86から出力され、CK12が“1”のときはANDゲート86、87から出力されるよう仕分けている。なお、図3に示す例では、ANDゲート85の入力側にはインバータ89が設けられ、ANDゲート86の入力側にはインバータ90が設けられている。
【0044】
比較回路81〜84は、ラッチ73〜76からの音声クロック位相情報データ(CK0〜11または無効データ4095)と、0〜2199を計数するHカウンタ78の出力とが一致したときに、“1”を出力する。無効データ4095が入力されたときは一致することはないので“1”は出力されない。
【0045】
ORゲート91からは、復元された48KHzのクロックが出力される。一方、ロードデータセレクタ77は、メモリに書き込んだアドレスから1減算したアドレス情報と、ANDゲート85〜88のから出力されるパルスを受けて、選択し出力する。ANDゲート85〜88の出力は同時に“1”にならない。例えば、ANDゲート85が“1”とき、ロードデータセレクタ77は、ラッチ75からのアドレス情報を出力する。このようにロードデータセレクタ77は4入力に対して選択を行い、出力する。カウンタ制御パルスセレクタ100は2回路の2:1セレクタである。ここでは、音声クロック位相情報データを使うモードであるものとし、そのため、カウンタ制御パルスセレクタ100は、入力“0”側を出力しているものとする。
【0046】
カウンタ43(図2参照)は、ORゲート91からの復元48KHzクロックを受けるとロードデータセレクタ77の出力をカウンタ43の出力とする。つまり、カウンタ43は、カウンタとして計数しているわけではない。なお、カウンタ43の出力側には、ORゲート101が設けられている。
【0047】
出力端子3と出力端子4の出力信号に対しバイフェーズ変調等を行えば、AES/EBU(European Broadcasting Union )デジタルオーディオに変換できる。AES/EBUデジタルオーディオのジッタ規格は±20ns以下となっており、元々のAES/EBUデジタルオーディオのジッタのほかに、少なくとも映像のクロックの刻みのジッタが付加される。そのため、PLL102でジッタを減らすようにしている。ここまで説明した構成は、一般的な音声デマルチプレクサに用いられている構成と同様である。
【0048】
音声デマルチプレクサの各部(ここでは特に図2および図3に図示した部分)の信号について説明する。図5は、音声デマルチプレクサの各部(特に図2および図3に図示した部分)の信号のタイミングチャートである。図5に示す(a)〜(r)は、図2および図3において、同一の符号((a)〜(r))で示した箇所の信号を示す。例えば、図5に示す(a)は、図2に示すメモリ41のWADRの信号である。なお、図5において、各符号(a)〜(r)の右側の記載は、単なるコメントであり、信号名を表しているわけではない。
【0049】
図5(k)に示す例では、1Hあたり2サンプル来ないときに用いる無効データ4095を追加し、1Hあたり2サンプルにして整理している。そして、映像開始タイミング以後には音声が多重されてくるはずがないので、1Hごとに変化する2サンプルのデータを同時に並べ直している。
【0050】
図5(c)に示す例では、“890”と“235”との間には1Hの隙間が出来ている。
【0051】
図5(s)に示す信号は、図2や図3には示していない仮想的な信号である。図5(s)に示す信号は、最終的に使用される音声クロック位相データを寄せ集めたものである。
【0052】
図5(p)は、Hカウンタの情報であり、0〜2199までカウントアップしていることを鋸波状に図示している。
【0053】
図5(r)に示す信号は、メモリ41の読み出しアドレスを指定している。従って、メモリ41に書き込まれてから読み出されるまでの遅延時間はアドレス“7”の例ではおおむね、EAVとSAVの時間差と映像の1H期間と、48KHzの1周期とを加算した値となる。また、アドレス“0”では、EAVとSAVの時間差と、48KHzの1周期とを加算した値となる。48KHzにおける1周期(すなわち、約20.8マイクロ秒)の追加は、WADR減算部44(図2参照)が行う。CK12(多重位置識別フラグ)に応じて1H遅延時間が違っている。このように遅延時間は一定になっている。
【0054】
図6は、音声デマルチプレクサの各部(特に図2および図3に図示した部分)の信号のタイミングチャートである。図6に示す(a)等の各符号の意味は、図4に示す各符号の意味と同様である。音声クロック位相情報データを使うといくつかの利点がある。その一方で、非特許文献1で規定される規格に適合しない機器もあり、むしろ音声クロック位相情報データを使わない方が問題が少ない場合もある。図6に示すタイミングチャートでは、間違いが混入した場合を例示している。図6では、図6(c)に示す信号が“0”のときの多重ライン間違いと、図6(c)に示す信号が“2017”のときにおける多重位置識別フラグ(図6(b)参照)の付け忘れにおける、各部の振る舞いを示している。図6に示す例では、このような間違いが混入した結果、復元した48KHzが正常な等間隔のクロックでなくなったり(図6(q)参照)、ロードデータの順序が1・2・4・3のように逆転してしまっている(図6(r)参照)。
【0055】
本発明では、このように音声クロック位相情報データに誤りがあったときにアラームを出力する機能を有している。本発明において、アラーム検出の遅れるときががあるのでラッチ217およびラッチ218(図3参照)で1H遅延させている。以下の説明では、図3に示すラッチ217,218が設けられているものとして説明する。
【0056】
セレクタ201,203は、1H過去のCK12が“0”のとき、ラッチ75,76からの音声クロック位相情報データ(CK0〜11)を出力する。一方、1H過去のCK12が“1”のときは、無効データ4095を出力する。また、セレクタ201,203は、1サンプル目のCK12だけが“1”のとき、2サンプル目を1サンプル目の出力に入れ替えている。セレクタ202,204は、CK12が同時に“1”のときラッチ217,218からの音声クロック位相情報データ(CK0〜11)を割り込ませて出力している。また、セレクタ202,204は、1サンプル目のCK12だけが“1”のときは比較回路216の結果によって1サンプル目の入力を1サンプル目または2サンプル目に出力している。セレクタ202とセレクタ204の出力は、多重禁止ラインの影響がなくなったCK12の処理を済ませて元の信号に復元したものである。
【0057】
図7は、音声デマルチプレクサの各部の信号のタイミングチャートである。図7に示す符号(t)〜(z)、および(ac),(p),(q),(aa),(ab)は、図2、図3および図4において、同一の符号で示した箇所の信号を示す。符号(s)については、図4に示す符号(s)と同様である。
【0058】
アラームはORゲート215からラッチ220、ORゲート219を経由して、エラー時間を1H広げて出力される。
【0059】
大小比較回路207は1サンプル目より2サンプル目が小さいとき“1”を出力する。比較回路210は1サンプル目が無効な値4095であるとき“1”を出力する。比較回路211は1H過去の2サンプル目が無効な値4095であるとき“1”を出力し、1H前の最後が2サンプル目か1サンプル目か示している。大小比較回路208と、それに続くANDゲート213の出力は、1H過去の1サンプル目よりも大きいとき“1”となる。大小比較回路209に続くANDゲート214の出力は、1H過去の2サンプル目よりも大きいとき“1”となる。つまり、換言すれば、同一ラインの2サンプル目が大きいこと、および、1Hを跨ぐときは減少していることが正常である。
【0060】
なお、図4に示す例では、大小比較回路208の入力側にラッチ205が設けられ、大小比較回路209の入力側にラッチ206が設けられる。また、比較回路211の出力側には、インバータ212が設けられる。
【0061】
ORゲート219の出力は、アラーム出力端子5とカウンタ制御パルスセレクタ100に送出される。カウンタ制御パルスセレクタ100には代替の48KHzのクロックが供給されている。そして、カウンタ制御パルスセレクタ100は、音声クロック位相情報データに誤りがあったときはカウンタ43のロードパルスを止め、代替の48KHzのクロックをカウントイネーブルパルスとして出力する。音声クロック位相情報データに関するアラームが出力されたとき、カウンタ43(図2参照)は、イネーブルパルスを受けてアップカウントする。
【0062】
代替の48KHzのクロックは、カウンタ301とカウンタ304の2つで実現している。カウンタ301は、0から1544(1545周期)と、0から1545(1546周期)の範囲で繰り返し計数している。カウンタ304は、セレクタ303からのリセットパルスを受け、0から90(91周期)を計数している。デコーダ306は、カウンタ304の計数値が3で割り切れるとき(例えば、3、6、9・・90のとき)、セレクタ303に“1”を出力している。カウンタ304の周期は(1545×91+30=140625)クロックとなる。
【0063】
((74.25MHz/1.001)/(140625))×91=48KHzの関係となっていて、セレクタ303の出力は1クロックのジッタを持つが平均は48KHzとなる。
【0064】
なお、カウンタ304の出力側には、デコーダ305が設けられる。デコーダ305は、入力が“90”のとき、“1”を出力する。また、カウンタ301の出力側には、デコーダ302が設けられる。デコーダ302は、入力が“1544”のときに“1”を出力する出力端子と、入力が“1545”のときに“1” を出力する出力端子とを有する。
【0065】
ORゲート307,308には、アラームが出ていないときのリセット信号がカウンタ制御パルスセレクタ100から供給されている。なお、ORゲート307の入力側には、ANDゲート309が設けられている。
【0066】
また、音声マルチプレクサ側で音声サンプル間の増減を監視しながら多重サンプル数を決めれば元々間違いを発生させないで済むことになる。この単純な増減規則を使って、音声データの48KHzごとに音声クロック位相情報データを作っておき、前のサンプルに対して増加しているならば2サンプル目のデータであり、前のサンプルに対して減少しているならば次のラインに多重する等すれば間違わないで多重できる。音声データごとにペアとなる音声クロック位相情報データを作っておき、前のサンプルに対して増加しているならば2サンプル目のデータであり、前のサンプルに対して減少しているならば次のラインに多重するなどすれば単純化できる。
【0067】
次に、本発明の最小構成について説明する。図8は、本発明の音声デマルチプレクサの最小構成の例を示すブロック図である。本発明の音声デマルチプレクサ500は、判定手段501と、アラーム出力手段502と、クロック出力手段503とを備える。
【0068】
判定手段501は、同一のラインに音声のサンプルが2つ多重されているときに、2サンプル目に付けられている音声クロック位相情報データが1サンプル目に付けられている音声クロック位相情報データよりも大きく、かつ、そのラインの1水平期間前に多重されていた最後のサンプルの音声クロック位相情報データに比べて、そのラインにおける1サンプル目に付けられている音声クロック位相情報データが小さいという条件が満たされているか否かを判定する。
【0069】
アラーム出力手段502は、その条件が満たされていると判定された場合にアラームを出力する。クロック出力手段503は、そのアラームを検出したときに、映像から作ったクロックを出力する。
【0070】
そのような構成により、信号に間違った音声クロック位相情報データが付けられていても、音声ノイズの発生を防止することができる。
【0071】
また、図9は、本発明の音声マルチプレクサの最小構成の例を示すブロック図である。本発明の音声マルチプレクサ550は、音声のサンプルに音声クロック位相情報データを付加しておき、1つ目のサンプルの音声クロック位相情報データに対して、次のサンプルの音声クロック位相情報データが増加していれば、次のサンプルを2つ目のサンプルとして多重し、1つ目のサンプルの音声クロック位相情報データに対して、次のサンプルの音声クロック位相情報データが減少していれば、次のサンプルを次のラインに多重する多重手段551を備える。
【0072】
そのような構成により、信号に間違った音声クロック位相情報データが付けられることを防止することができる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、HDTVに好適に適用される。
【符号の説明】
【0074】
1 入力端子
2 クロック入力端子
3 出力端子
5 アラーム出力端子
10〜28 ラッチ
29 ラッチ
31〜34 ラッチ
35 デコーダ
36 パラレルラッチパルス発生部
41 メモリ
42〜43 カウンタ
44 WADR減算部
51〜54 ラッチ
55 TRSデコーダ
61 カウンタ
62 デコーダ
63 ORゲート
64〜65 ANDゲート
66 ORゲート
67〜68 ラッチ
69 ORゲート
70 セレクタ
71〜76 ラッチ
77 ロードデータセレクタ
78 Hカウンタ
81〜84 比較回路
85〜88 ANDゲート
89〜90 インバータ
91 ORゲート
100 カウンタ制御パルスセレクタ
101 ORゲート
102 PLLクロックリジェネ
103 ラッチ
201〜204 セレクタ
205〜206 ラッチ
207〜209 大小比較回路
210〜211:比較回路
212 インバータ
213〜214 ANDゲート
215 ORゲート
216 比較回路
217〜218 ラッチ
219 ORゲート
220 ラッチ
301 カウンタ
302 デコーダ
303 セレクタ
304 カウンタ
307〜308 ORゲート
309 ANDゲート
1001 入力端子
1002 AUD検出部
1003 メモリ
1004 出力端子
1005 48KHzクロック生成部
1006 AUCK検出部
1007 Hカウンタ
1008 AUCKアラーム出力部
1009 セレクタ
1010 アラーム出力端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
HDTVに適用される音声デマルチプレクサであって、
同一のラインに音声のサンプルが2つ多重されているときに、2サンプル目に付けられている音声クロック位相情報データが1サンプル目に付けられている音声クロック位相情報データよりも大きく、かつ、前記ラインの1水平期間前に多重されていた最後のサンプルの音声クロック位相情報データに比べて、前記ラインにおける1サンプル目に付けられている音声クロック位相情報データが小さいという条件が満たされているか否かを判定する判定手段と、
前記条件が満たされていると判定された場合にアラームを出力するアラーム出力手段と、
前記アラームを検出したときに、映像から作ったクロックを出力するクロック出力手段とを備える
ことを特徴とする音声デマルチプレクサ。
【請求項2】
HDTVに適用される音声デマルチプレクス方法であって、
同一のラインに音声のサンプルが2つ多重されているときに、2サンプル目に付けられている音声クロック位相情報データが1サンプル目に付けられている音声クロック位相情報データよりも大きく、かつ、前記ラインの1水平期間前に多重されていた最後のサンプルの音声クロック位相情報データに比べて、前記ラインにおける1サンプル目に付けられている音声クロック位相情報データが小さいという条件が満たされているか否かを判定し、
前記条件が満たされていると判定した場合にアラームを出力し、
前記アラームを検出したときに、映像から作ったクロックを出力する
ことを特徴とする音声デマルチプレクス方法。
【請求項3】
HDTVに適用される音声マルチプレクサであって、
音声のサンプルに音声クロック位相情報データを付加しておき、1つ目のサンプルの音声クロック位相情報データに対して、次のサンプルの音声クロック位相情報データが増加していれば、前記次のサンプルを2つ目のサンプルとして多重し、1つ目のサンプルの音声クロック位相情報データに対して、次のサンプルの音声クロック位相情報データが減少していれば、前記次のサンプルを次のラインに多重する多重手段を備えた
ことを特徴とする音声マルチプレクサ。
【請求項4】
HDTVに適用される音声マルチプレクス方法であって、
音声のサンプルに音声クロック位相情報データを付加しておき、1つ目のサンプルの音声クロック位相情報データに対して、次のサンプルの音声クロック位相情報データが増加していれば、前記次のサンプルを2つ目のサンプルとして多重し、1つ目のサンプルの音声クロック位相情報データに対して、次のサンプルの音声クロック位相情報データが減少していれば、前記次のサンプルを次のラインに多重する
ことを特徴とする音声マルチプレクス方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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