説明

音声データ処理装置

【課題】音声再生の準備が適切に行われない場合であっても、ユーザに与える不快感を抑制することが可能な音声データ処理装置を提供する。
【解決手段】制御部33は、予め設定された判定タイミングで、DMA転送要求が解除されていないと判断した場合、音声データ蓄積部32における入力バッファ(321又は322)の更新(音声データ書込部31からの音声データの書き込み)は行われないものとして、直後のバッファ切替タイミングで、データ切替部35を、DAC36へのデータの入力が音声データ側(音声データ蓄積部32側)から補助データ側(補助データ生成部34側)に切り替わるように設定する。また、その後、入力バッファ(321又は322)の更新が行われた場合、制御部33は、その直後のバッファ切替タイミングで、データ切替部35を音声データ側に切り替わるように設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタル音声データからアナログ音声信号を生成する音声データ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車載ナビゲーションシステム等にて用いられ、メモリ等に記憶されているデジタル音声データ(以下、単に音声データという)から、スピーカ等に供給するアナログ音声信号(以下、単に音声信号という)を生成する処理を実行する音声データ処理装置が知られている。
【0003】
この種の音声データ処理装置には、一般的に、メモリから断続的に読み出される音声データの入力速度と、一定の速度で連続的に生成する必要のある音声信号の出力速度との違いを吸収するためのバッファが設けられている。
【0004】
そして、音声データ処理装置では、ナビゲーションシステム全体の制御を司るCPU(以下、ナビCPUと呼ぶ)の処理負担を軽減するために、このバッファへの音声データの転送にDMA(Direct Memory Access)転送を用いたり、バッファに対するデータの入出力を効率よく実行するために、このバッファとしていわゆるダブルバッファを採用したりすることが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
なお、ダブルバッファとは、予め設定された規定量のデータを蓄積可能な二つのバッファを有し、蓄積されたデータの出力を一方のバッファが行う間に、他方のバッファがデータの入力(更新)を行い、データの出力と入力を行うバッファを交互に切り替えて動作させるものである。また、DMA転送とは、CPUが接続されたバスを介して、そのバスに接続された機器やメモリ間のデータ転送を、DMAコントローラ(以下、DMACという)を用いて、CPUの処理を介することなく実行するものである。但し、DMA転送は、DMACがバスの使用を調停するバス調停部からバスの使用許諾(使用権)を取得した際に、実行されるものである。
【0006】
ここで、図7(a)は、DMA転送を用いて、メモリからダブルバッファにデータを転送する際の動作を示すタイミング図である。なお、ここでは、ダブルバッファを構成する二つのバッファには、それぞれ規定個(図では8個)のデータを格納できるものとする。また、ダブルバッファのうち、入力に用いられている側を入力バッファ、出力に用いられている側を出力バッファと呼ぶものとする。更に、出力バッファに格納されたデータは、一定の速度で連続的に一つずつD/Aコンバータに供給されて音声信号に変換されるものとする。
【0007】
図7(a)に示すように、音声データ処理装置は、出力バッファが規定個の音声データの出力を完了した(即ち、ダブルバッファの入力バッファと出力バッファとが入れ替わる)時点(時刻T1)で、DMACに対するDMA転送要求を設定(DREQ=H)する。すると、DMACは、バス調停部に対してバス開放要求を設定(BUSREQ=H)する。このとき、バス調停部は、現在実行中の処理が終了した時点で、DMA転送要求より緊急度の高い処理の要求がなければ、DMACにバスの使用権を譲り渡してDMA転送を開始させる(時刻T2)。これにより入力バッファの音声データの更新が開始される。
【0008】
そして、規定個のデータが転送されDMA転送が完了すると(時刻T3)、音声データ処理装置(又はDMAC)は、DMA転送要求を解除(DREQ=L)する。すると、CPUはバス調停部を介してバスの使用権を獲得し、処理を再開する。以下同様の動作を繰り返し、二つのバッファが音声データの出力と更新を交互に行うことにより、連続的に音声信号が生成され、ひいては連続した音声が再生されることになる。
【特許文献1】特開2005−182967号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、近年では、車両の機能の向上に伴い、車載システムが実現すべき機能が増加し続けている。
特に、ナビゲーションシステムでは、CD・DVDの再生、TV・FM/AMラジオの受信といったAV機能とナビゲーション機能を一体化した従来のナビゲーション装置の機能に加えて、車載カメラやレーダ装置等の他の車載装置から出力される安全性に関する画像データ等をディスプレイに表示させる等の機能を実現することが要求され、ナビCPUの処理負担は著しく増大している。
【0010】
このため、ナビゲーションシステムにて、音声の再生より緊急度の高い処理(例えば、安全性に関する画像処理等)を実行すべき状況が生じた場合に、バス調停部は、DMACにバスの使用権を譲り渡すことなく、緊急度の高い処理を優先させるため、音声データ処理装置にダブルバッファやDMAC等が実装されていたとしても、音声データの転送が遅れてしまい音声の再生に悪影響を与えてしまう問題があった。
【0011】
具体的には、図7(b)に示すように、音声データ処理装置がDMACにDMA転送要求の設定(DREQ=H)を行ってから(時刻T1)、DMACがバス調停部よりバスの使用権を譲り受けてDMA転送を開始するまで(時刻T2)の時間の長さは、ナビCPUの処理状態によって変化する。このため、ナビCPUの処理負荷が大きい場合、ひいてはバス負荷が大きい場合に、DMA転送の開始が遅れて、バッファの切替タイミングまでに、DMA転送(ひいては入力バッファの更新)を完了できない場合があった。
【0012】
この結果、データの更新が行われていない入力バッファが出力バッファに切り替わってしまうことにより、その切り替わった出力バッファから更新前のデータが出力され、直前の音声とのつながりをもたない音声、つまりユーザにとっては不快な音(ノイズ)を再生してしまうことがあった。
【0013】
本発明は、上記問題点を解決するために、音声再生の準備が適切に行われない場合であっても、ユーザに与える不快感を抑制することが可能な音声データ処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載の音声データ処理装置においては、音声データ蓄積手段が、音声の再生に用いるデジタル値で表された音声データを予め設定された規定量だけ蓄積可能な二つのバッファからなるダブルバッファを有する。
【0015】
また、音声データ蓄積手段は、このダブルバッファのうち一方のバッファを、蓄積された音声データの出力を行う出力バッファとして、また、他方のバッファを、音声データの蓄積を行う入力バッファとして動作させ、且つ、予め設定された一定間隔を有する切替タイミング毎に出力バッファと入力バッファとを交互に切り替えて動作を行わせる。例えば、前回蓄積した規定量の音声データが一方の出力バッファから出力される間に、規定量の音声データが他方の入力バッファに蓄積(即ち、前々回蓄積した音声データから更新)される。
【0016】
そして、音声データ蓄積手段が有するダブルバッファのうち入力バッファの方に、音声データ書込手段が、外部より断続的に供給される音声データの書き込みを行う。
ここで、書込判定手段が、音声データ書込手段による入力バッファへの音声データの書き込みがバッファの切替タイミング以前に設定された判定タイミングの時点で完了しているか否かを判定する。
【0017】
このとき、供給データ切替手段は、書込判定手段にて書き込みが完了していると判定された場合には音声データを、書き込みが未完了であると判定された場合には出力バッファから出力されるはずの音声データに代えて予め設定された補助音声データを、音声信号生成手段に供給する。
【0018】
音声信号生成手段は、供給された音声データ又は補助音声データからなる入力データをデジタル/アナログ変換して音声信号を生成する。
つまり、本発明の音声データ処理装置では、入力バッファへの音声データの書き込みが完了していると判定された場合には、音声信号生成手段に補助音声データが供給され、補助音声データに基づく音声が再生される。このため、入力バッファに蓄積された更新前の音声データに基づく音声(即ち、ノイズ)が再生されてしまうのを防止することができ、ひいてはユーザに与える不快感を抑制することができる。
【0019】
また、本発明の音声データ処理装置では、一方のバッファに蓄積された音声データが全て出力される(即ち、バッファの切り替え)前に、他方のバッファへの書き込みが完了しているか否かを判定するため、書き込みが未完了である時にはバッファの切替タイミングで補助音声データを遅延なく確実に出力することができる。この結果、ノイズが再生されてしまうことを確実に防止することができる。
【0020】
なお、音声データの代わりに音声信号生成手段に供給される補助音声データは、例えば、請求項2に記載のように無音の再生に用いる無音データ、又は、請求項3に記載のように報知音の再生に用いる報知音データであることが望ましい。
【0021】
前者の場合、ノイズを再生する代わりに無音を再生することができ、ユーザに与える不快感を抑制することが可能となり、後者の場合、ノイズを再生する代わりに報知音を再生することができ、音声データ処理におけるエラーをユーザに認識させることができる。
【0022】
ところで、音声データ書込手段は、請求項4に記載のように、規定量の音声データを一括して入力バッファに書き込むことが望ましい。
この場合、入力バッファには切替タイミングで一定量の音声データが入力されるため、出力バッファが行う音声データを順次出力するタイミングを一定に保つことができる。この結果、音声データ処理装置における制御負担を軽減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1は、本発明が適用された車載ナビゲーション装置(以下では、単にナビゲーション装置という)1の構成を示したブロック図である。
<ナビゲーション装置の構成>
図1に示すように、ナビゲーション装置1は、ハードディスク,CD,DVD等の外部記憶媒体から各種データを入力するための外部データ入力部40と、車載LANに接続された他の車載装置との間でデータを入出力するためのLANI/F部50と、圧縮された画像データの供給を受け、これをデコードする等して映像信号を生成する画像処理部20と、音声データの供給を受け、これをデジタル/アナログ変換して音声信号を生成する音声処理部30と、外部データ入力部40やLANI/F部50を介して入力されるデータに基づいて、経路案内に用いる画像データや音声データを生成して、各処理部20,30に供給するナビゲーション処理部10と、各部10〜50からの要求に基づいて、バス5の使用権を調停するバス調停部80を備えている。
【0024】
なお、これらナビゲーション装置1を構成する各部10〜50は、いずれもバス5に接続されており、このバス5を介して互いにデータの入出力を行う。但し、各部10〜50は、バス調停部80に対してバス開放要求を設定(BUSREQ=H)し、このバス調停部80から、バス開放要求に含まれた優先順位に基づいて選択され、バス5の使用許諾を取得した場合に、データの出力を行う。
【0025】
また、ナビゲーション装置1は、画像処理部20が生成した映像信号に従って画像を表示する画像表示部60と、音声処理部30が生成した音声信号に従って音声を再生する音声再生部70を備えている。
【0026】
また、外部データ入力部40を介して外部記憶媒体から入力されるデータには、経路案内の際に用いる地図を表示するための画像データ,その画像データに付随した案内用の音声データや、映画や音楽等に関する映像データおよび音楽データが少なくとも含まれている。
【0027】
また、LANI/F部50を介して入力されるデータには、駐車支援装置やオートクルーズ装置等の他の車載装置にて、車両周辺の障害物警告や走行中の車間距離状態等の安全性に関する情報を乗員に報知するために生成された画像データや音声データの他、GPS(Global Positioning System)用の人工衛星からの電波を受信するGPS受信機や車両各部に搭載された各種センサからの検出信号が少なくとも含まれている。
【0028】
<ナビゲーション処理部の構成>
ここで、ナビゲーション処理部10は、ナビゲーション装置1全体の制御を司るCPU11と、CPU11が実行する各種プログラムを記憶するROM14と、各種のデータを一時記憶するRAM12と、バス5に接続された各部(RAM12を含む)間のデータ転送をCPU11を介することなく実行(即ち、DMA転送)するDMAコントローラ(以下、DMACという)13等からなる周知のマイクロコンピュータにより構成されている。
【0029】
このうち、CPU11は、LANI/F部50を介してGPS受信機や各種センサから入力される検出信号に基づいて、車両の現在位置や、方位、速度等を算出し、その算出結果に基づいて、外部データ入力部40から各種データを読み込み、現在位置周辺の地図を車両の現在位置等の情報と共に表示するための画像データや音声案内用の音声データを生成し、画像処理部20,音声処理部30を介して画像表示部60,音声再生部70に画像や音声を再生させることで乗員に対する案内を行う周知のナビゲーション処理を少なくとも実行するように構成されている。
【0030】
また、CPU11は、LANI/F部50を介して他の車載機器から入力される画像データや音声データ(安全性に関する報知を行うためのデータ)を、画像処理部20,音声処理部30を介して画像表示部60,音声再生部70に画像や音声を再生させる処理も実行するように構成されている。
【0031】
なお、これらの処理において、生成された再生すべき音声データは、RAM12に設けられた再生用音声データ格納エリアに一時記憶されるように設定されている。
また、DMAC13は、外部よりDMA転送要求が設定(DREQ=H)されると、バス調停部80に対してバス開放要求を設定(BUSREQ=H)し、これに応答したバス調停部80からバス5の使用許諾を取得すると、DMA転送を開始し、そのDMA転送が終了すると、バス開放要求の解除(BUSREQ=L)を行う周知のものである。なお、本実施形態においてDMAC13によるDMA転送は、RAM13の再生用音声データ格納エリアに記憶された音声データを音声処理部30へ転送する際に少なくとも用いられる。
【0032】
<音声処理部の構成>
ここで、図2は、音声処理部30の構成を示したブロック図である。
音声処理部30は、断続的に書き込まれる音声データを蓄積し、その蓄積した音声データを一定速度で順次出力する音声データ蓄積部32と、バス5を介してDMA転送されてくる音声データを受信し、その受信した音声データを一定量毎に一括して音声データ蓄積部32に書き込む音声データ書込部31と、無音を再生するための無音データ、又は報知音を再生するための報知音データ等からなる補助データを繰り返し出力する補助データ生成部34と、音声データ蓄積部32からの音声データ、及び補助データ生成部34からの補助データのうち、いずれか一方を選択して出力するデータ切替部35と、データ切替部35から出力される音声データ又は補助データをデジタル/アナログ変換して音声信号を生成し、その音声信号を音声再生部70に出力するD/Aコンバータ(以下、DACという)36と、音声データ書込部31から供給されるバッファフル信号(後述する)や音声データ蓄積部32から供給されるバッファ切替信号(後述する)等に基づいて、音声データ書込部31による音声データ蓄積部32へのデータの書き込みや、データ切替部35でのデータの選択(切替)を制御するデータ切替制御処理およびDMAC13に対するDMA転送要求(DREQ)を制御するDMA転送制御処理を実行する制御部33とを備えている。
【0033】
<音声データ書込部,音声データ蓄積部の詳細>
このうち、音声データ書込部31及び音声データ蓄積部32を図3に示すブロック図を用いて詳しく説明する。
【0034】
まず、音声データ書込部31は、DMA転送されてきた音声データを格納するバッファを備えており、そのバッファは、規定サイズ(本実施形態では32ビット)の音声データを規定個数(本実施形態では8個)格納するように構成されている。
【0035】
また、音声データ書込部31は、バッファに規定個の音声データが書き込まれると、そのことを制御部33に通知するために、バッファフル信号を設定(BFUL=H)するように構成されている。
【0036】
次に、音声データ蓄積部32は、音声データを蓄積する二つのバッファ321,322と、バッファ321,322への音声データの書き込み、バッファ321,322からの音声データの読み出しを制御するバッファ制御部323とを備えている。
【0037】
そして、バッファ321,322は、いずれも、音声データ書込部31のバッファと同様に、規定サイズの音声データを規定個数格納するように構成されている。
また、バッファ制御部323は、バッファ321,322のうち、音声データの読み出しが行われている一方の側を出力バッファ、他方の側を入力バッファとして、出力バッファと入力バッファとが入れ替わるタイミング(以下、バッファ切替タイミングという)を表すバッファ切替信号を制御部33に対して出力するように構成されている。
【0038】
更に、バッファ制御部323は、制御部33からの書込指令を受けた場合には、音声データ書込部31のバッファに書き込まれた規定個の音声データを、その時点での入力バッファに一括して書き込むように構成されている。
【0039】
<制御部の処理>
次に、制御部33が実行するDMA転送制御処理、及びデータ切替制御処理について説明する。
【0040】
なお、両処理は、いずれもナビゲーション処理部10のCPU11が起動すると開始され、並列的に実行される。
また、データ切替制御処理およびDMA転送制御処理は、論理回路の組み合わせによって実現してもよいし、制御部33を周知のマイクロコンピュータを用いて構成することにより、そのマイクロコンピュータのCPUが実行する処理によって実現してもよい。
【0041】
<DMA転送制御処理>
まず、DMA転送制御処理を、図4に示すフローチャートに沿って説明する。
本処理では、まずS110にて、バッファ制御部323からのバッファ切替信号に基づいてバッファ切替タイミングであるか否かを判断し、バッファ切替タイミングであると判断された場合は、S120に進み、DMAC13に対してDMA転送要求を設定(DREQ=H)後、S110に戻る。
【0042】
なお、DMAC13は、DMA転送要求が設定(DREQ=H)されると、バス調停部80に対してバス開放要求を設定(BUSREQ=H)し、これに応答して、バス調停部80がバス5の使用を許可すると、RAM12の再生用音声データ格納部から音声データ書込部31へ音声データをDMA転送する。その後、規定個の音声データのDMA転送が終了すると、バス調停部80に対するバス開放要求を解除(BUSREQ=L)することでバス5を開放する。
【0043】
先のS110にて、バッファ切替タイミングではないと判断された場合は、S130に進み、音声データ書込部31からのバッファフル信号が設定されている(BFUL=H)か否かを判断する。
【0044】
そして、バッファフル信号が設定されていない(BFUL=L)と判断された場合は、そのままS110に戻り、バッファフル信号が設定されている(BFUL=H)と判断された場合は、DMA転送が終了した(即ち、音声データ書込部31に規定個の音声データが書き込まれている)ものとして、S140に進み、DMAC13に対するDMA転送要求を解除(DREQ=L)して、S110に戻る。
【0045】
<データ切替制御処理>
次に、データ切替制御処理を、図5に示すフローチャートに沿って説明する。
本処理では、まずS210にて、予め設定された判定タイミングであるか否かを判断し、判定タイミングであれば、S220に進み、判定タイミングでなければそのまま待機する。
【0046】
なお、判定タイミングは、バッファ切替タイミングより予め設定された書込時間以上早いタイミングであり、バッファ制御部323からのバッファ切替信号に基づいて設定される。但し、書込時間とは、音声データ書込部31から入力バッファへの規定個の音声データの書き込みに要する時間のことを言う。
【0047】
S220では、DMAC13に対するDMA転送要求が解除(DREQ=L)されているか否かを判断し、解除されていれば、音声データ書込部31のバッファに規定個の音声データが格納されているものとして、S230に進み、バッファ制御部323に書込指令を出力することにより、バッファ制御部323に、音声データ書込部31のバッファに格納された規定個の音声データの入力バッファへの一括書き込みを行わせる。
【0048】
この時、バッファ制御部323は、入力バッファへの音声データの書き込みを終了すると、音声データ書込部31にバッファフル信号を解除(BFUL=L)させる。
続く、S240では、データ切替部35がDAC36へ出力するデータの供給元として音声データ側を選択する設定になっているか否かを判断し、音声データ側を選択する設定になっていると判断された場合は、そのままの状態を維持してS210に戻る。
【0049】
一方、S240にて、音声データ側を選択する設定ではない(即ち、補助データ側を選択する設定である)と判断された場合は、S250に進み、バッファ制御部323からのバッファ切替信号に基づいて、バッファ切替タイミングであるか否かを判断する。
【0050】
そして、バッファ切替タイミングでなければそのまま待機し、バッファ切替タイミングであれば、S260に進む。
S260では、データ切替部35がDAC36へ出力するデータの供給元として音声データ側を選択する設定となるように切り替えて、S210に戻る。
【0051】
一方、先のS220にてDMA転送要求が解除されていない(DREQ=H)と判断された場合は、入力バッファの更新(音声データ書込部31からの音声データの書き込み)は行われないものとして、S270に進む。
【0052】
S270では、データ切替部35がDAC36へ出力するデータの供給元として補助データ側を選択する設定になっているか否かを判断し、補助データ側を選択する設定になっていると判断された場合は、そのままの状態を維持してS210に戻る。
【0053】
一方、S270にて、補助データ側を選択する設定ではない(即ち、音声データ側を選択する設定である)と判断された場合は、S280に進み、バッファ制御部323からのバッファ切替信号に基づいて、バッファ切替タイミングであるか否かを判断する。
【0054】
そして、バッファ切替タイミングでなければそのまま待機し、バッファ切替タイミングであれば、S290に進む。
S290では、データ切替部35がDAC36へ出力するデータの供給元として補助データ側を選択する設定となるように切り替えて、S210に戻る。
【0055】
つまり、本処理では、判定タイミングで音声データ書込部31のバッファに、入力バッファに書き込むべき音声データが用意されているか否かを判断し、用意されていれば、その音声データで入力バッファの更新を行うと共に、データ切替部35を音声データ側に設定し、また、判定タイミングで音声データが用意されていなければ、入力バッファの更新が行われないため、データ切替部35を補助データ側に設定するようにされている。
【0056】
<音声処理部の動作>
ここで、図6は、データ切替制御処理とDMA転送制御処理とを並列的に実行することで実現される音声処理部30の動作を表すタイミング図である。
【0057】
図6に示すように、音声処理部30から出力されるDMA転送要求(DREQ)は、バッファ切替信号の信号レベルが切り替わるタイミング、即ち、音声データ蓄積部32の入力バッファと出力バッファとが入れ替わるバッファ切替タイミング(時刻T1)で設定(L→H)され、そのDMA転送要求によって実行されたDMA転送によって、規定個の音声データが音声データ書込部31のバッファに格納されたタイミング(時刻T3)で解除(H→L)される。
【0058】
そして、判定タイミング(時刻T4)の時点でDMA転送が完了している場合(BFUL=H,DREQ=L)には、音声データ書込部31のバッファに格納された音声データは、その判定タイミングで入力バッファに書き込まれ、その直後のバッファ切替タイミング(時刻T1:但し図中で左側のT1を参照)から順次DAC36に出力されることになる。
【0059】
一方、判定タイミング(時刻T4)の時点でDMA転送が完了していない場合(BFUL=L,DREQ=H)には、音声データ書込部31から入力バッファへ音声データを書き込むことができないため、その直後のバッファ切替タイミング(時刻T1:但し図中で右側のT1を参照)でデータ切替部35の設定が補助データ側に切り替わり、補助データがDAC36に出力されることになる。
【0060】
このような、判定タイミング(時刻T4)までにDMA転送が完了していないという事態は、例えば、駐車支援装置やオートクルーズ装置等の他の車載装置から入力される画像データ等に基づいて、音声の再生よりも緊急度の高い処理をCPU11が実行している場合等、バス調停部80が、DMAC13からのバス開放要求に直ちに応じることができない時に生じる。
【0061】
なお、本実施形態において、音声データ蓄積部32が音声データ蓄積手段、音声データ書込部31が音声データ書込手段、DAC36が音声信号生成手段、S210及びS220が書込判定手段、S240ないしS290が供給データ切替手段に相当する。
【0062】
<効果>
以上説明したように、本実施形態の音声データ処理装置では、判定タイミングまでに音声データのDMA転送が完了していない場合、即ち入力バッファの更新を行うことができない場合は、直後のバッファ切替タイミングで、データ切替部35を、DAC36へのデータの入力が音声データ側から補助データ側に切り替わるように設定することにより、そのバッファ切替タイミング後は、補助データに基づく無音または報知音等を再生するように構成されている。
【0063】
したがって、本実施形態の音声データ処理装置によれば、出力バッファとして使用されるバッファ(バッファ321又は322)に残存する前回出力済みの音声データに基づく音声(即ち、ノイズ)が再生されてしまうことを防止することができ、ひいてはユーザに与える不快感を抑制することができる。
【0064】
また、本実施形態の音声データ処理装置では、データ切替部35の設定が補助データ側に切り替わった場合、その後、音声データのDMA転送が完了し、入力バッファへの書き込みが行われたのであれば、その直後のバッファ切替タイミングで、直ちにデータ切替部35の設定を音声データ側に切り替わるようにされている。
【0065】
したがって、本実施形態の音声データ処理装置によれば、速やかに通常の音声再生に復帰することができ、ひいてはユーザに与える不快感を抑制することができる。
[他の実施形態]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、様々な態様にて実施することが可能である。
【0066】
例えば、上記実施形態では、本発明の音声データ処理装置を、ナビゲーション装置に適用した例を示したが、これに限らず、音声の再生を行い、且つ、音声データ蓄積部32の入力バッファの更新が間に合わない可能性のある装置であれば、どのような装置に適用してもよい。
【0067】
また、バス調停部80は、論理回路の組み合わせによって構成されてもよいし、バス調停部80の代わりに、CPU11がバス5の使用権を選択する処理を実行してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】ナビゲーション装置の構成を示すブロック図。
【図2】音声処理部の構成を示すブロック図。
【図3】音声データ書込部および音声データ蓄積部の詳細を示すブロック図。
【図4】制御部が実行するDMA転送制御処理の内容を示すフローチャート。
【図5】制御部が実行するデータ切替制御処理の内容を示すフローチャート。
【図6】データ切替制御処理とDMA制御処理とを並列的に実行することで実現される音声処理部の動作を示すタイミング図。
【図7】DMA転送およびダブルバッファを用いた従来の音声データ処理装置の動作を示すタイミング図。
【符号の説明】
【0069】
1…ナビゲーション装置、5…バス、10…ナビゲーション部、12…メモリ、
20…画像処理部、30…音声処理部、31…音声データ書込部、32…音声データ蓄積部、323…バッファ制御部、33…制御部、34…補助データ生成部、35…データ切替部、70…音声再生部、80…バス調停部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声の再生に用いるデジタル値で表された音声データを予め設定された規定量だけ蓄積可能な二つのバッファを有し、該二つのバッファのうち一方を、蓄積された音声データの出力を行う出力バッファ、他方を、音声データの蓄積を行う入力バッファとして動作させ、且つ、予め設定された一定時間間隔を有する切替タイミング毎に前記出力バッファと前記入力バッファとを交互に入れ替えて動作させる音声データ蓄積手段と、
外部より断続的に供給される音声データを、前記入力バッファに書き込む音声データ書込手段と、
供給された入力データを、デジタル/アナログ変換して音声信号を生成する音声信号生成手段と、
前記音声データ書込手段による前記入力バッファへの音声データの書き込みが、前記切替タイミング以前に設定された判定タイミングの時点で完了しているか否かを判定する書込判定手段と、
前記書込判定手段にて書き込みが完了していると判定された場合には、前記出力バッファから出力される音声データを、書き込みが未完了であると判定された場合には、予め設定された補助音声データを、前記入力データとして前記音声信号生成手段に供給する供給データ切替手段と、
を備えることを特徴とする音声データ処理装置。
【請求項2】
前記供給データ切替手段では、前記補助音声データとして、無音の再生に用いる無音データを用いることを特徴とする請求項1に記載の音声データ処理装置。
【請求項3】
前記供給データ切替手段では、前記補助音声データとして、報知音の再生に用いる報知音データを用いることを特徴とする請求項1に記載の音声データ処理装置。
【請求項4】
前記音声データ書込手段は、前記規定量の音声データを、一括して前記入力バッファに書き込むことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の音声データ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−292755(P2008−292755A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−138050(P2007−138050)
【出願日】平成19年5月24日(2007.5.24)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】