説明

音声信号を再生する装置および方法

【課題】充電状態を監視し、充電状態の低下に基づき低音周波数成分の低減を可能とする装置を提供する。
【解決手段】音声信号の再生を制御する装置1はエネルギー蓄積装置2によって動作し、通常モードを解除してエネルギー節約モードを起動する。これにより音声信号の再生のためのエネルギー蓄積装置2からの電力消費がエネルギー節約モードでは通常モードと比較して減少する。エネルギー節約モードにおいて音声信号の周波数スペクトルの低音周波数成分を減少させ、低音周波数成分が減少した音声信号を出力する。エネルギー蓄積装置2の充電状態を確認する。エネルギー蓄積装置2の充電状態の低下に基づいて低音周波数成分の低減を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は音声信号を再生する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
動力車に関して、いわゆるインフォテインメント(infotainment)システムが知られている。インフォテインメントシステムは音声信号を再生するように構成される。
【0003】
欧州特許第1,024,577号A1により、二次電池および充電回路を有する電力システムが知られている。無線電話用の充電調整器を有する別の回路が米国特許5,771,471号に示されている。米国特許出願第2002/0044637号A1には、化学電池の使用効率を向上させることができる電源回路が示されている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
一態様により、独立請求項1の特徴を有する装置を通じて装置の改善を説明する。有利な発展が従属請求項の主題であり、その説明にも含まれる。
【0005】
これに従い、音声信号を再生するために装置が提供される。本装置は、エネルギー蓄積装置との接続のための第一のインタフェースを有することができる。そのエネルギー蓄積装置は、電池または燃料電池または好ましくは再充電可能電池を備えることができる。第一のインタフェースは、エネルギー供給および/または信号接続のための接続部を有することができる。
【0006】
本装置は、スピーカーとの接続のための第二のインタフェースを有することができる。この第二のインタフェースは、音声信号を出力するための前置増幅器出力および/または最終段増幅器出力であってよい。ケーブルを使用して第二のインタフェースにスピーカーを接続することができる。サブウーファー(subwoofer)など、増幅器を通じて第二のインタフェースにスピーカーを接続することも同じく可能である。
【0007】
本装置は増幅器を有することができる。その増幅器を第二のインタフェースに接続できるとともに、音声信号を増幅するように設計することができる。この増幅器は前置増幅器または電力増幅器であってよい。本装置の増幅器を動作のためにエネルギー蓄積装置と接続可能にすることができる。
【0008】
本装置は制御装置を有することができ、その制御装置を第一のインタフェースおよび増幅器に接続することができる。この制御装置は演算器を有することができ、たとえば、制御プログラム実行用のマイクロコントローラおよび/または信号プロセッサおよび/またはCPUが使用される。その制御プログラムは制御装置の制御機能を提供することができる。
【0009】
制御装置は、通常モードおよびエネルギー節約モードで動作するように構成することができる。エネルギー節約モードでは、通常モードと比較して、音声信号再生のためのエネルギー蓄積装置からの電気エネルギーの電力消費を低減することができる。
【0010】
エネルギー節約モードでは、音声信号の周波数スペクトルの低音周波数成分を減少させるとともに、低音周波数成分が減少した音声信号を第二のインタフェースを介して出力するように制御装置を構成することができる。
【0011】
制御装置は、エネルギー蓄積装置の充電状態を判定するように設計することができる。その充電状態の判定のためにエネルギー蓄積装置から制御装置にデジタルまたはアナログの充電状態信号を送信することができる。
【0012】
制御装置は、エネルギー蓄積装置の充電状態の低下に基づいて低音周波数成分の低減を制御するように設計することができる。また、機能によって充電状態の低下時に低音周波数成分を減少させるように制御装置を設計することができる。低音周波数成分を比例的に、またはLUT(ルックアップテーブル)によって減少させることができる。
【0013】
一態様により、独立請求項7の特徴を有する方法を通じて方法の改善を説明する。この説明には有利な発展が含まれる。
【0014】
これに従い、音声信号の再生を制御するための方法が提供される。エネルギー蓄積装置によって動作される装置によって音声信号を再生することができる。
【0015】
本方法において、通常モードを解除してエネルギー節約モードを起動することができ、エネルギー節約モードでは、通常モードと比較して、音声信号再生のためのエネルギー蓄積装置からの電力消費が減少する。
【0016】
エネルギー節約モードでは、音声信号の周波数スペクトルの低音周波数成分を減少させることができ、低音周波数成分が減少した音声信号を出力することができる。
【0017】
エネルギー節約モードの過程でエネルギー蓄積装置の充電状態を判定することができる。
【0018】
エネルギー蓄積装置の充電状態の低下に基づいて低音周波数成分の低減を制御することができる。
【0019】
後述の発展は、音声信号を再生する装置および方法に関する。
【0020】
一実施形態によれば、制御装置を音声ファイルが格納されたデータベースと接続可能にすることができる。それらの音声ファイルと関連づけられたメタデータをデータベースに格納することができ、目的に応じ、そのメタデータはID3タグおよびその他のデータでありえる。
【0021】
各音声ファイルに関するエネルギー値を上記メタデータの項目として格納することができる。このエネルギー値は、当該音声ファイルの周波数スペクトルの低音周波数成分に基づいて得られる。そのエネルギー値を周波数範囲の変換を用いて決定し、格納することができる。
【0022】
エネルギー蓄積装置の充電状態に基づいてエネルギー閾値を決定するように制御装置を構成することができる。一実施形態では、エネルギー閾値を決定するために少なくとも1つの追加的な入力数量を評価するように制御装置を構成することができる。この追加的な入力数量は、エネルギー蓄積装置の充電状態に影響を及ぼす他の電気装置(電動機または太陽電池など)に依存する可能性がある。エネルギー閾値の決定のために目的地までの距離または電気自動車の残りの走行時間を用いることができる。
【0023】
低音周波数成分の制御に関して、一実施形態では、エネルギー閾値に基づき、かつデータベースからの音声ファイルの関連エネルギー値に基づいて、出力すべき音声ファイルを決定するとともに、その音声ファイルを音声信号として出力するように制御装置を構成することができる。
【0024】
一実施形態によれば、低音周波数成分を減少させる目的で、出力すべき音声信号のフィルタリングにデジタルまたはアナログフィルタを使用するように制御装置を構成することができる。このフィルタは、アナログまたはデジタルの高域通過フィルタまたは帯域通過フィルタであってよい。そのフィルタによるフィルタリングをエネルギー閾値による上述の選択と組み合わせることができる。
【0025】
一実施形態において、フィルタの閾値周波数をエネルギー蓄積装置の充電状態に基づいて決定するように制御装置を構成することができる。充電状態が低下するとともに、音声信号の低周波数に対してフィルタの閾値周波数を増加させることができる。
【0026】
一実施形態において、現在位置および目的地までの経路とともに目的地までの距離を決定するように制御装置を構成することができる。目的地までの距離は、好ましくはGPS(全地球測位システム)によって決定される。それにより、現在位置と目的地の間の距離を決定することができる。この範囲に対して必要とされる充電状態が距離に基づいて決定される。たとえば、現在の充電状態と目的地に到達するために必要とされる充電状態の差を確認することができ、その確認された差によって低音周波数成分の低減を制御することができる。したがって、現在の充電状態および目的地までの距離に基づいて低音周波数成分の低減を制御するように制御装置を構成することが可能である。
【0027】
一実施形態において、入力ユニットを介した入力に基づいてエネルギー節約モードを起動するように制御装置を構成することができる。
【0028】
上述の変形実施形態は、個別または組み合わせのいずれでもとくに有利である。すべての実施形態を互いに組み合わせることができる。図面を参照する中でいくつかの可能な組み合わせを説明している。ただし、そこに示された変形実施形態の組み合わせ可能な例は網羅的でない。
【0029】
例えば、本願発明は以下の項目を提供する。
(項目1)
音声信号(SA)を再生する装置(1)であって、
エネルギー蓄積装置(2)との接続のための第一のインタフェース(101)と、
スピーカー(3)との接続のための第二のインタフェース(102)と、
前記第二のインタフェース(102)に接続可能な増幅器(110)であって、該増幅器(110)は前記音声信号(SA)を増幅するように構成され、かつ動作用に前記エネルギー蓄積装置(2)に接続可能である、増幅器と、
前記第一のインタフェース(101)および前記増幅器(110)に接続された制御装置(120)とを備え、
前記制御装置(120)は、通常モード(MN)およびエネルギー節約モード(MS)で動作するように構成され、該エネルギー節約モード(MS)では、前記音声信号(SA)の再生のための前記エネルギー蓄積装置(2)からの電力消費が通常モード(MN)と比較して低減され、
前記制御装置(120)は、前記音声信号(SA)の周波数スペクトル(X(fSA))の低音周波数成分(B)を減少させるとともに、前記エネルギー節約モード(MS)において前記低音周波数成分(B)を減少させた音声信号(SA)を出力するように構成され、
前記制御装置(120)は、前記エネルギー蓄積装置(2)の充電状態(C)を判定するように構成され、
前記制御装置(120)は、前記エネルギー蓄積装置(2)の充電状態(C)の低下に基づいて前記低音周波数成分(B)の低減を制御するように構成される、装置。
(項目2)
前記制御装置(120)は、音声ファイル(A1、A2、A3)が格納されたデータベース(130)に接続可能であり、
各音声ファイル(A1、A2、A3)についてエネルギー値(E1、E2、E3)が格納され、該エネルギー値(E1、E2、E3)は、前記音声ファイル(A1、A2、A3)の周波数スペクトル(X(fA1)、X(fA2)、X(fA3))の前記低音周波数成分(B)に基づいており、
前記制御装置(120)は、前記エネルギー蓄積装置(2)の充電状態(C)に基づいてエネルギー閾値(thE)を決定するように構成され、
前記制御装置(120)は、前記低音周波数成分(B)の制御という目的のために、前記音声ファイル(A1、A2、A3)の前記関連エネルギー値(E1、E2、E3)に基づき、かつエネルギー閾値(thE)に基づいて前記音声ファイル(A1、A2、A3)が出力されることを確認するとともに、前記音声信号(SA)として前記音声ファイル(A1、A2、A3)を出力するように構成される、上記項目に記載の装置。
(項目3)
前記制御装置(120)は、前記低音周波数成分(B)を減少させるために、前記出力すべき音声信号(SA)をデジタルまたはアナログフィルタ(125)を介してフィルタリングするように構成される、上記項目のいずれか1つに記載の装置。
(項目4)
前記制御装置(120)は、前記エネルギー蓄積装置(2)の充電状態(C)に基づいて前記フィルタ(125)の閾値周波数(fG1、fG2、fG3、fG4)を決定するように構成される上記項目のいずれか1つに記載の装置。
(項目5)
前記制御装置(120)は、前記充電状態(C)およびある目的地までの距離に基づいて前記低音周波数成分(B)の低減を制御するように構成される、上記項目のいずれか1つに記載の装置。
(項目6)
前記制御装置(120)は、入力ユニット(4)を介した入力に基づいて前記エネルギー節約モード(MS)を起動するように構成される、上記項目のいずれか1つに記載の装置。
(項目7)
エネルギー蓄積装置(2)を電源とする装置の音声信号(SA)の再生を制御する方法であって、
通常モード(MN)を解除してエネルギー節約モード(MS)を起動するステップであって、該エネルギー節約モード(MS)では該通常モード(MN)と比較して音声信号(SA)の再生のための前記エネルギー蓄積装置(2)からの電力消費が低減される、ステップと、
前記エネルギー節約モード(MS)において前記音声信号(SA)の周波数スペクトル(X(fSA))の低音周波数成分(B)を減少させ、低音周波数成分(B)が減少した前記音声信号(SA)を出力するステップと、
前記エネルギー蓄積装置(2)の充電状態(C)を確認するステップと、
前記エネルギー蓄積装置(2)の充電状態(C)の低下に基づいて前記低音周波数成分(B)の低減を制御するステップとを含む、方法。
【0030】
(摘要)
音声信号(S)の再生を制御する装置および方法であり、本装置はエネルギー蓄積装置(2)によって動作し、本方法は以下のステップを含む。
− 通常モード(M)を解除してエネルギー節約モード(M)を起動する。これにより音声信号(S)の再生のためのエネルギー蓄積装置(2)からの電力消費がエネルギー節約モード(M)では通常モード(M)と比較して減少する。
− エネルギー節約モード(M)において音声信号(S)の周波数スペクトル(X(fSA))の低音周波数成分(B)を減少させ、低音周波数成分(B)が減少した音声信号(S)を出力する。
− エネルギー蓄積装置(2)の充電状態(C)を確認する。
− エネルギー蓄積装置(2)の充電状態の低下(C)に基づいて低音周波数成分(B)の低減を制御する。
【0031】
図面に対応する実施例を通じて、以下に本発明を詳しく説明する。
【0032】
図面は次の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】等しい音量を曲線で示した概略図である。
【図2】概略ブロック図である。
【図3】実施例を表す概略図である。
【図4】別の実施例を表す別の概略図である。
【図5】音声信号を再生する装置の模式図である。
【図5a】制御装置の模式実施図である。
【図5b】別の制御装置の別の模式実施図である。
【図6】入力ユニットの模式実施図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1に模式的に示すのは、等しい音量(ISO規格226(2003)準拠)を曲線で示した図である。この図は、知覚される音量の周波数依存性が強いことを示す。この周波数依存性がそのまま音圧依存性に転換する。これは異なるレベルに対して異なる周波数依存性が存在することを意味する。したがって、音事象の知覚ということを取り上げる場合には、音の周波数スペクトルX(fSA)を決定しなければならない。さらに、音事象の時間挙動とともに複数の周波数グループ(倍音)にまたがる音事象も音量の知覚に影響を及ぼす。知覚音量を数値化できることを目的として、周波数の関数となる音量レベル(測定単位:ホン)のグラフを図1に示す。具体例として、評価用にAフィルタを使用することが知られており、たとえば20dB(A)のように、個々の場合に使用される周波数フィルタを括弧に入れてdB値(dB=デシベル)に付記することができる。この曲線は、計算によって外挿された領域estを有する。
【0035】
図1に表された知覚音量レベル(例:20ホン)が等しい曲線は、周波数が約200Hzよりも低下すると、低音周波数成分B(低音部分Bとも呼ばれる)を有する音圧dBが急激に上昇することを示している。したがって、低音周波数成分B内の音事象を再生するためには、1kHzの周波数と比較して相当に高い音圧dBを発生させることが必要である。そのため、音事象をスピーカーで再生する際、低音部分Bの高い音圧dBを発生させるには相応に高い電力が必要とされる。たとえば、帯域幅が20Hz〜2kHzの音事象を知覚音量レベル20ホンで再生しようとする場合には、2kHzの周波数に対して約20dBの音圧を発生させなければならない。一方、20Hzの周波数に対しては、90dBの音圧を発生させなければならない。したがって、人間の耳に中音域または高い可聴周波数と同じ音量の知覚を生じさせるためには、低い周波数範囲における低音部分Bに対してより多くの電力を印加しなければならない。
【0036】
さらに、必要とされる電力は、スピーカーの効率および/または指向性に依存する。たとえば、ツイーターはウーファーよりも効率が若干高くなりえる。周波数が高くなるほど音の指向性が高まり、理論上は受聴点におけるパワーが増大する。周波数が低くなるほど、音の無指向性が強まり、受聴点で同一の音圧を生じるためにより多くの電力が必要とされる。さらに、周波数の波長が膜半径より小さい場合、放射出力が低下することがありえる。また、音響空間が周波数依存の形で音圧に影響を及ぼすこともありえる。たとえば、自動車では圧力室効果が生じる。作用するすべての物理的効果を考慮に入れたとき、同じ知覚音量では電力の大部分が低音部分Bのために必要とされる。
【0037】
図2は、音声信号Sを再生する装置1を模式的に示す。装置1は音声信号S用の自動車のインフォテインメントシステムまたは携帯型プレイヤーであってよい。この装置1は、蓄電装置としての再充電可能電池2との接続用の第一のインタフェース101を有することができ、また、スピーカー3との接続用の第二のインタフェース102を有することができる。たとえば、スピーカー3をケーブルで第二のインタフェース102の接続部に直接接続することができる。サブウーファー増幅器(図示せず)を介してスピーカー3を第二のインタフェース102に接続することも可能である。図1に示す実施例の装置1は増幅器110を有することができる。この増幅器110は、第二のインタフェース102に接続できるとともに、音声信号Sを増幅するように設計することができる。動作時には、第一のインタフェース101を介して増幅器110を再充電可能電池2に接続できる。さらに、図1に示す装置1は制御装置120を有することができ、その制御装置120を第一のインタフェース101および増幅器110に接続することができる。
【0038】
図3を参照して一実施形態を詳しく説明する。再充電可能電池2の充電状態Cとして、20%、30%、40%、50%および100%充電を示してある。図3の一実施形態において、50%を超える充電状態Cは装置1の通常モードMと関連づけられ、50%未満の充電状態Cはエネルギー節約モードMと関連づけられる。例として、周波数fに関して音声信号Sの周波数スペクトルX(fSA)も示してある。図2の制御装置120は、エネルギー節約モードMでは通常モードMと比較して音声信号Sの再生のための再充電可能電池2の電力消費を低減するように設計することができる。図3の一実施形態において、音声信号Sに高域フィルタリングを適用することにより、エネルギー節約モードMにおいて音声信号Sの低音部分Bを減少させることができる。図3には、異なる閾値周波数fG1、fG2、fG3、fG4に対するフィルタリングの周波数応答を示す。高域フィルタリング後、低音部分Bが減少した音声信号Sを出力することができる。
【0039】
図2の制御装置120は、充電状態Cを判定するように構成することができる。たとえば、再充電可能電池2の電圧または経時的な挙動など、再充電可能電池2の電気的数量をその目的のために測定することができる。また、再充電可能電池2の充電状態Cの低下に基づいて低音部分Bの低減を制御するように制御装置120を構成することができる。図3の一実施形態において、フィルタリングによって低音部分Bの低減が達成される。図3の一実施形態では、デジタルおよび/またはアナログ高域フィルタリングを制御装置120によって実行することができる。一実施形態において、制御装置120は制御可能なフィルタ機能を有することができる。一実施形態において、充電状態Cに応じて高域フィルタをオンオフすることができる。たとえば、50%を超える充電状態Cで高域フィルタをオフにすることができる。
【0040】
図3の一実施形態において、高域フィルタリングの遮断周波数fG1、fG2、fG3、fG4を変更するという形で、制御装置120によって高域フィルタリングを制御することができる。図3の実施例では、50%を超える充電状態Cで通常モードMにおける高域フィルタリングをオフにすることができる。第一の遮断周波数値fG1は、40%〜50%の充電状態Cと関連づけられる。第二の遮断周波数値fG2は、30%〜40%の充電状態Cと関連づけられる。第三の遮断周波数値fG3は、20%〜30%の充電状態Cと関連づけられる。それに対し、第四の遮断周波数値fG4(たとえば200Hz)は、20%未満の充電状態Cと関連づけられる。図3の一実施形態におけるステップ関数により、充電状態Cに応じて遮断周波数fG1、fG2、fG3、fG4を制御することができる。あるいは、比例的な依存関係を与えることもできる。エネルギー節約モードMにおいてサブウーファー増幅器(図3に図示せず)を停止させることも同じく可能である。充電状態Cだけでなく、図5の説明において詳述するように、低減を制御するために追加的な入力数量を分析することができる。
【0041】
図4のグラフを使用して一実施形態を説明する。制御装置120は、この目的のためにデータベース(図5の130、図4には図示せず)に対する接続部を有することができる。データベースには、音声ファイルA、A、Aおよび各音声ファイルA、A、Aと関連づけられたメタデータを持つことができる。この設計では、このメタデータにエネルギー値Eを含めることができる。図4のグラフは、各音声ファイルA、A、Aに対する1つの周波数スペクトルX(fA1)、X(fA2)、X(fA3)およびデータベースに格納された関連エネルギー値Eを模式的に示したものである。したがって、第一のデータファイルAと関連づけられるエネルギー値はE=10、第二のデータファイルAと関連づけられるエネルギー値はE=1、第三のデータファイルAと関連づけられるエネルギー値はE=4になる。スペクトルX(fA1)、X(fA2)、X(fA3)の低音部分Bにおける電力Pに基づいて当該エネルギー値Eが決定される。その目的で、たとえば音声ファイルA、A、Aの全体長さについての平均として電力Pを取得することができる。
【0042】
図5では、音声信号Sを再生する装置1について詳しく説明する。装置1は制御ユニット120を有することができ、第一のインタフェース101を介して、その制御ユニット120が再充電可能電池2、Accuに接続される。さらに、装置1は増幅器110、AMPを有することができ、第二のインタフェース102を介して、その増幅器110がスピーカー3に接続可能にされる。増幅器110は、複数の増幅器ユニットを有することができ、再充電可能電池2から電流IAudioを供給される。図5に示す実施例において、制御信号SubOffにより、サブウーファー増幅器ユニットをオンオフすることができる。増幅器110は、増幅された音声信号Sをスピーカー3に出力する機能を有することができる。
【0043】
装置1は、音声信号Sを増幅器110に出力するための制御ユニット120を有することができる。制御装置120は、通常モードMおよびエネルギー節約モードMで動作させるように構成することができる。この目的のために、通常モードMおよびエネルギー節約モードMと関連づけられた制御信号を発生するように制御装置120を構成することができる。通常モードMおよびエネルギー節約モードMの起動および終了は、入力ユニット4によるユーザー入力および/またはエネルギー蓄積装置2の監視信号(再充電可能電池の出力電圧など)などの入力信号によって、かつ/あるいはナビゲーションユニットからの位置依存信号(経路の目的地までの距離など)によって達成されうる。上記の入力信号に応じてエネルギー節約モードMを起動および終了することができ、エネルギー節約モードMでは、通常モードMと比較して、音声信号Sの再生のためのエネルギー蓄積装置2からの電力消費を低減することができる。
【0044】
図5に示す一実施形態において、電気自動車で再生される音楽を再充電可能なリチウムイオン電池の充電状態Cとして操作することができ、たとえば、必要に応じて低電力タイトルを再生可能にするか、または再生される音楽の変更/高電力低周波数のフィルタ除去を可能にすることができる。このようにして、装置1による再充電可能電池2のエネルギー節約が自動車の航続距離を伸ばす効果をもたらし、さらに音量調整も可能になる。
【0045】
電気自動車内の音楽システムは電気エネルギーを消費する。そのエネルギーを電気自動車の航続距離のために使用すべきだとすれば、音楽システムを手動で完全に切るという選択肢が存在する。しかし、自動車の乗員が音楽の楽しみを完全に控えることを望まない場合には、利用可能なエネルギーをインテリジェントに分散させなければならない。再充電可能電池が低い充電状態の時には、低電力の音楽のみを装置1によってスピーカー3から出力することができる。低電力の音楽は、音楽作品の分類および/または周波数スペクトルの高電力部分のフィルタ除去によって取得される。これは音響パワーに対して、またそれと同時に電力消費に対して、直接的な作用を及ぼしうる。
【0046】
電気自動車内の音楽システムの電力消費は、主として再生音量および出力される音声信号Sの周波数スペクトルX(fSA)に依存する。スピーカー3を通じて放射される音響パワーは、電力と直接的に関係づけられる。電気自動車の航続距離は再充電可能電池2の充電状態Cに依存するため、エネルギーの消費側である音楽システムが出力音声信号Sの増幅のための電流IAudioを節約すると、航続距離が増大する。
【0047】
図5に示す一実施形態において、制御ユニット120を複数の音声信号源130、140と接続可能にすることができる。インタフェースまたはネットワークを介して接続されたデータベース130、DBによって、音声ファイルの選択および音声信号Sとしての出力が許容される。一方、受信装置140、RXは、音声受信、具体的には無線経由の受信用に設計することができる。受信装置140、RXは、UHF受信器またはDAB受信器などを有することができる。
【0048】
図5aは、分析ユニット121およびデジタルおよび/またはアナログフィルタ125を備える制御装置120の一実施形態を示す。フィルタ125によるフィルタリングによって音声信号Sから電気エネルギーを取ることができる。フィルタ125は、高域フィルタまたは低音帯域通過フィルタを有することができ、そのフィルタが音声信号Sに対して作用する。その音声信号Sは、受信装置140、CDプレイヤーまたはMP3プレイヤーなど、所望の任意の発生源から出力される。図5aに示す一実施形態において、フィルタ125の遮断周波数fを再充電可能電池2の充電状態Cおよび/またはナビゲーションユニット5によって決定された残りの走行時間/距離に応じて調整することができる。その再充電可能電池2およびナビゲーションユニット5を図5に模式的に示してある。
【0049】
分析ユニット121は、入力ユニット4からの信号SINPおよび/または再充電可能電池2からの信号SAccuおよび/またはナビゲーションユニット5からの信号SGPSを分析するように設計することができる。図5aに示す実施例において、入力ユニット4からの信号SINPはタッチスクリーン上のユーザー入力によって発生される。再充電可能電池2からの信号SAccuは、再充電可能電池2の電圧または電流収支に基づいて発生され、再充電可能電池2の充電状態Cに依存する。ナビゲーションユニット5からの信号SGPSは、たとえばナビゲーションユニット5によって決定された残りの走行時間または距離に応じて決定される。
【0050】
分析ユニット121は、入力信号SINP、SAccu、SGPSを使用して、通常モードMおよびエネルギー節約モードMの起動または終了を制御するための信号M/Mを生成することができる。さらに、図5aに示す一実施形態において、フィルタ125の遮断周波数fを調整するために制御信号CfGが出力され、フィルタ125は、入力信号SDB(データベース130による)または入力信号SRX(受信ユニット140による)をフィルタリングして低音部分Bを除去する。その制御は、図3に示す実施例のように、LUT(ルックアップテーブル)によって実行することができる。スペクトルX(fSA)の低音部分Bの低周波数がより多くの電気エネルギーを消費するため、再充電可能電池2の充電状態Cが低下するのに応じて、より高い遮断周波数fを設定することができる。さらに、図5に示す一実施形態では、エネルギー節約モードMおよび/または閾値周波数fに基づき、低周波数について増幅器およびスピーカーがオフされるようになっている。たとえばタイマーによって、かつ/または再充電可能電池2の経時的な充電状態Cに応じて、フィルタ125の遮断周波数fを徐々に時間をかけて変化させることが音響的に有利になりえる。
【0051】
図5bに示す一実施形態により、低電力の音楽タイトルからの選択が可能になる。図5bに示す実施例の制御ユニット120は、分析ユニット122および選択ユニット126を有することができる。データベース130内の各音楽タイトルのエネルギー量を決定することができ、関連エネルギー値Eを当該音楽作品のメタデータとともにデータベース130に格納することができる。たとえば、エネルギー値のスケールでエネルギー量を1〜10に分類することができる。たとえば、E=1は、低音部分Bが小さく非常に低電力であることを意味する。再充電可能電池2の充電状態Cがきわめて低い時は、この音楽タイトルを再生すればよい。エネルギー値E=10は、低音部分Bが大きく非常に高電力であることを意味する。充電状態Cがきわめて低い時は、この音楽タイトルは再生されない。
【0052】
ユーザーがMP3データベース130のコンテンツを再生している場合、データベース130内のタイトルの音声ファイルA、A、Aを出力することが許容されるかどうかは、再充電可能電池2の充電状態Cおよび場合によっては残りの走行時間/距離に応じて決定される。図5bに示す一実施形態において、許容性に関する決定は、エネルギー閾値thに基づいて行われる。たとえば、エネルギー値Eがエネルギー閾値thよりも低いデータベース130内のすべての音声ファイルA、A、AをクエリーQ(E)によって問い合わせすることができる。閾値をth=5とすれば、図4の一実施形態に従い、読み出すことができるのは2番目の音声ファイルAおよび3番目の音声ファイルAだけになる。クエリーQ(E)に依存の出力音声ファイルA(Q)は、制御ユニット120を通ってループさせることができ、任意的に追加のフィルタリングを行い、低音部分Bを減少させた音声信号Sとして出力することができる。良好な利点を与えるものとして、制御ユニット120において図5aおよび図5bの実施形態を互いに組み合わせることができる。
【0053】
図6では、入力ユニット4をタッチスクリーンとして模式的に示してある。図示のタッチスクリーン4は、複数のウィジェットを有するグラフィカルユーザーインタフェースを備える。入力要素としての第一のアイコン41は、低電力の音楽作品のみについて起動を許可することができる。対象となるのは、図2の実施例に従い、エネルギー値Eがエネルギー閾値thよりも低いものに限定される。入力要素としての第二のアイコン42は、フィルタ125によるフィルタリングの適用を許可することができ、これにより低音部分Bを減少させることができる。さらに、消費インジケータ43をウィジェットとして表示することができる、これは、たとえば棒グラフの形でエネルギー消費を表したものである。ウィジェット43に入力機能を与え、ユーザーがバー43のある場所に触れることによって関連のエネルギー消費を直接的に指定できるようにすることも同じく可能である。
【0054】
エネルギー消費の低減を可能にする上述の方法に加えて、さらなる電力消費の低減のために音声信号Sの周波数スペクトルX(fSA)全体について音量を低下させることが可能である。再充電可能電池2の充電状態Cが低下した時に、上限の音量閾値を引き下げることができる。閾値音量を充電状態Cに対して比例的に低下させることができる。エネルギー状況が非常に厳しくなれば、音声再生を完全に中止して、ラジオの交通情報、ニュース、電話、ナビゲーション音声などの所定の音声コンテンツだけが音声信号Sとして出力されるようにしてもよい。エネルギー消費を低減する複数の手段を任意の所望の方法で互いに組み合わることができる。フィルタ設定および/またはエネルギー値Eに応じてエネルギー消費が計算され、それを電気自動車内の中央エネルギー管理システムまたは航続距離情報に入力することができる。
【0055】
本発明は、図1〜図6に示す実施形態の変形に限定されない。たとえば、モバイルの携帯型装置に関するエネルギー消費の低減を実現することが可能であり、その場合、ユーザーは、たとえば所定の消費レベルの入力によって消費を調整することができる。続いて音声ファイルの残りの再生時間がユーザーに表示される。とくに有利な方法では、図5に示す装置1の機能を電気自動車で使用することができる。
参照記号リスト
1 装置
101, 102 インタフェース
110, AMP 増幅器
120 制御ユニット
121, 122 分析ユニット
125 フィルタ
126 選択ユニット
130, DB データベース
140, RX 受信器
2, Accu エネルギー蓄積装置,再充電可能電池
3 スピーカー
4, Inp 入力ユニット,タッチスクリーン
41, 42 入力要素,ウィジェット
43 表示素子
5, GPS 位置判定ユニット,ナビゲーションユニット
, A, A音声ファイル
B 低音周波数成分,低音部分
C 充電状態
E エネルギー値
est 計算された曲線
f 周波数
G1, fG2, fG3, fG4 閾値周波数
Audio 電流
通常モード
エネルギー節約モード
P 電力
音声信号
INP, SAccu, SGPS, SRX, SDB, CfG, Q(E), A(Q)
信号
SubOff 制御信号
thエネルギー閾値
X(fSA), X(fA1), X(fA2), X(fA3
周波数応答,スペクトル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声信号(S)を再生する装置(1)であって、
エネルギー蓄積装置(2)との接続のための第一のインタフェース(101)と、
スピーカー(3)との接続のための第二のインタフェース(102)と、
前記第二のインタフェース(102)に接続可能な増幅器(110)であって、該増幅器(110)は前記音声信号(S)を増幅するように構成され、かつ動作用に前記エネルギー蓄積装置(2)に接続可能である、増幅器と、
前記第一のインタフェース(101)および前記増幅器(110)に接続された制御装置(120)とを備え、
前記制御装置(120)は、通常モード(M)およびエネルギー節約モード(M)で動作するように構成され、該エネルギー節約モード(M)では、前記音声信号(S)の再生のための前記エネルギー蓄積装置(2)からの電力消費が通常モード(M)と比較して低減され、
前記制御装置(120)は、前記音声信号(S)の周波数スペクトル(X(fSA))の低音周波数成分(B)を減少させるとともに、前記エネルギー節約モード(M)において前記低音周波数成分(B)を減少させた音声信号(S)を出力するように構成され、
前記制御装置(120)は、前記エネルギー蓄積装置(2)の充電状態(C)を判定するように構成され、
前記制御装置(120)は、前記エネルギー蓄積装置(2)の充電状態(C)の低下に基づいて前記低音周波数成分(B)の低減を制御するように構成される、装置。
【請求項2】
前記制御装置(120)は、音声ファイル(A、A、A)が格納されたデータベース(130)に接続可能であり、
各音声ファイル(A、A、A)についてエネルギー値(E、E、E)が格納され、該エネルギー値(E、E、E)は、前記音声ファイル(A、A、A)の周波数スペクトル(X(fA1)、X(fA2)、X(fA3))の前記低音周波数成分(B)に基づいており、
前記制御装置(120)は、前記エネルギー蓄積装置(2)の充電状態(C)に基づいてエネルギー閾値(th)を決定するように構成され、
前記制御装置(120)は、前記低音周波数成分(B)の制御という目的のために、前記音声ファイル(A、A、A)の前記関連エネルギー値(E、E、E)に基づき、かつエネルギー閾値(th)に基づいて前記音声ファイル(A、A、A)が出力されることを確認するとともに、前記音声信号(S)として前記音声ファイル(A、A、A)を出力するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記制御装置(120)は、前記低音周波数成分(B)を減少させるために、前記出力すべき音声信号(S)をデジタルまたはアナログフィルタ(125)を介してフィルタリングするように構成される、請求項1〜2のいずれか1つに記載の装置。
【請求項4】
前記制御装置(120)は、前記エネルギー蓄積装置(2)の充電状態(C)に基づいて前記フィルタ(125)の閾値周波数(fG1、fG2、fG3、fG4)を決定するように構成される、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記制御装置(120)は、前記充電状態(C)およびある目的地までの距離に基づいて前記低音周波数成分(B)の低減を制御するように構成される、請求項1〜4のいずれか1つに記載の装置。
【請求項6】
前記制御装置(120)は、入力ユニット(4)を介した入力に基づいて前記エネルギー節約モード(M)を起動するように構成される、請求項1〜5のいずれか1つに記載の装置。
【請求項7】
エネルギー蓄積装置(2)を電源とする装置の音声信号(S)の再生を制御する方法であって、
通常モード(M)を解除してエネルギー節約モード(M)を起動するステップであって、該エネルギー節約モード(M)では該通常モード(M)と比較して音声信号(S)の再生のための前記エネルギー蓄積装置(2)からの電力消費が低減される、ステップと、
前記エネルギー節約モード(M)において前記音声信号(S)の周波数スペクトル(X(fSA))の低音周波数成分(B)を減少させ、低音周波数成分(B)が減少した前記音声信号(S)を出力するステップと、
前記エネルギー蓄積装置(2)の充電状態(C)を確認するステップと、
前記エネルギー蓄積装置(2)の充電状態(C)の低下に基づいて前記低音周波数成分(B)の低減を制御するステップとを含む、方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図5a】
image rotate

【図5b】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−83983(P2013−83983A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−226338(P2012−226338)
【出願日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【出願人】(504147933)ハーマン ベッカー オートモーティブ システムズ ゲーエムベーハー (165)