説明

音声信号出力装置及び記録再生装置

【課題】 副音声の合成タイミングをいずれか1系統の主音声のタイミングによって制御しつつ複数系統の主音声に同一の副音声を合成して出力する場合に、各系統の主音声の間のジッタの影響を排除する。
【解決手段】 入力する複数系統の主音声S1〜S3のうちの1系統の主音声S1の入力タイミングに応じて副音声S4の入力を指示する入力指示手段31と、入力指示手段31の指示によって入力された副音声信号S4を主音声S1に合成する合成手段32とを有する第1の合成系と、入力指示手段31の指示によって入力された副音声S4を蓄積する蓄積手段34,37と、残りの主音声S2,S3の入力タイミングに応じて蓄積手段34,37からの副音声S4の取出しを指示する取出し指示手段33,36と、取出し指示手段33,36の指示によって蓄積手段34,37から取り出された副音声を主音声S2,S3に合成する合成手段35,38とを有する第2の合成系とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数系統の主音声信号に同一の副音声信号を合成して出力する音声信号出力装置や、そうした音声信号出力装置を搭載した記録再生装置に関し、特に、副音声信号の合成タイミングをいずれか1系統の主音声信号のタイミングによって制御する場合に、各系統の主音声信号の間に存在するジッタの影響を排除したものに関する。
【背景技術】
【0002】
複数系統の主音声信号に同一の副音声信号を合成して出力することが、オーディオ機器やAV(オーディオ・ビジュアル)機器で従来から行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
従来、こうした機器では、主音声信号に副音声信号を合成する際に、各系統の主音声信号の間に生じるジッタに対しては特に考慮は払われていなかった。
【特許文献1】特開平11−331991号公報(段落番号0002〜0006、図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、テレビジョン番組を録画する装置として、HDD(ハードディスクドライブ)及びDVD(Digital Versatile Disc)ドライブを搭載した録画装置(以下HDD搭載DVDレコーダーと呼ぶ)が普及するに至っている。こうしたHDD搭載DVDレコーダーでは、例えば次の(a)や(b)のような態様で複数系統の音声信号(主音声信号)を出力できるようになっている。
【0005】
(a)・内蔵チューナーで現在選局している番組
・HDDから再生している録画済の番組
・DVDドライブから再生している録画済の番組
という互いに異なる3つの番組の音声信号を、
・ステレオ音声出力端子
・イヤホン用音声出力端子
・デジタル光音声出力端子
という3つの音声出力端子から同時に出力する。
【0006】
(b)上記チューナー,HDD,DVDドライブのうちのいずれか1つからの音声信号(すなわち同じ番組の音声信号)を、上記3つの音声出力端子から同時に出力する。
【0007】
こうしたHDD搭載DVDレコーダーにおいて、例えば、リモートコントローラが操作されたときに内蔵メモリから電子的な操作音のデータを読み出してその操作音データを各系統の主音声信号に副音声信号として合成したり、あるいは、チューナーで緊急警報信号を受信したときに内蔵メモリから電子的な警報音のデータを読み出してその警報音データを各系統の主音声信号に副音声信号として合成する方法としては、副音声信号の入力タイミングをいずれか1系統の主音声信号のタイミングによって制御するという方法が考えられる。
【0008】
図5は、この方法を実現するための音声信号出力装置の回路構成例を示すブロック図である。この音声信号出力装置には、3系統の主音声信号(同一のサンプリング周波数のデジタル音声信号)S1,S2,S3が入力する。主音声信号S1は、ready信号生成回路51に送られる。主音声信号S2,S3は、加算器53,54にそれぞれ送られる。
【0009】
ready信号生成回路51は、供給された主音声信号S1をそのままスルーして加算器52に送るとともに、上位コントローラ(図示略)の制御のもとで、副音声信号を合成すべきとき(例えば前述のようなリモートコントローラの操作時や緊急警報信号の受信時)に、主音声信号S1中の所定のサンプル数n(副音声信号と同じサンプル数)のデータのタイミングで、1サンプル分ずつの副音声信号の入力を指示するready信号を生成する。このready信号は、副音声信号のデータを記憶しているメモリ(図示略)に、その副音声信号の読出し制御信号として供給される。
【0010】
このready信号に応じてメモリから読み出された副音声信号S4は、この音声信号出力装置に入力して加算器52,53及び54に送られる。加算器52,53,54でそれぞれ主音声信号S1,S2,S3に副音声信号S4を合成された音声信号は、この音声信号出力装置から出力して、それぞれ別々の音声出力端子(図示略)に送られる。
【0011】
このように、この音声信号出力装置では、主音声信号S1,S2,S3のうちの主音声信号S1のタイミングによって副音声信号S4の合成タイミングを制御するようになっており、ready信号生成回路51及び加算器52がこの制御を行う側の合成系(「タイミングマスター」と呼ぶことにする)を構成するとともに、加算器53,54がそれぞれこの制御を受ける側の合成系(「タイミングスレーブ」と呼ぶことにする)を構成している。
【0012】
図6は、図5の音声信号出力装置による副音声信号の合成タイミングを例示するタイミングチャートである。タイミングマスターの側では、主音声信号S1中の或る1サンプル分のデータS1(1)の入力タイミングT1で、ready信号生成回路51(図5)からready信号が生成される。そして、その直後のタイミングT1’に、メモリから副音声信号S4中の最初の1サンプル分のデータS4(1)が読み出されて入力し、そのデータS4(1)が加算器52(図5)で主音声信号S1中のデータS1(1)に合成される。
【0013】
また、タイミングスレーブの側では、そのデータS4(1)が、加算器53,54(図5)でそれぞれ主音声信号S2,S3中の1サンプル分のデータS2(1),S3(1)に合成される。
【0014】
主音声信号S1中のデータS1(1)に続く1サンプル分ずつのデータS1(2)〜S1(n)の入力タイミングT2〜Tnでも、タイミングマスターの側では、ready信号生成回路1からready信号が順次生成される。それにより、それぞれその直後のタイミングT2’〜Tn’にメモリから副音声信号S4中の残りの1サンプル分ずつのデータS4(2)〜S4(n)が順次読み出されて入力し、それらのデータS4(2)〜S4(n)が加算器2で主音声信号S1中の1サンプル分ずつのデータS1(2)〜S1(n)に順次合成される。
【0015】
また、タイミングスレーブの側では、それらのデータS4(2)〜S4(n)が、加算器3,4でそれぞれ主音声信号S2,S3中の1サンプル分ずつのデータS2(2)〜S2(n),S3(2)〜S3(n)に順次合成される。
【0016】
このようにして、主音声信号S1中のサンプリング数nのデータS1(1)〜S1(n)に1対1に対応してサンプリング数nの副音声信号S4が合成されるとともに、主音声信号S2,S3中のサンプリング数nのデータS2(1)〜S2(n),S3(1)〜S3(n)に1対1に対応してサンプリング数nの副音声信号S4が合成される。
【0017】
ところが、この図6に示した合成タイミングは、3系統の主音声信号S1,S2,S3の間にジッタが存在しないと想定した場合のものである。
【0018】
しかし、これらの3系統の主音声信号S1,S2,S3が、前述の(a)のようにチューナー,HDD,DVDドライブという互いに異なる回路からの音声信号である場合には、主音声信号S1,S2,S3の間には通常はジッタが生じる。
【0019】
また、これらの3系統の主音声信号S1,S2,S3が、前述の(b)のようにチューナー,HDD,DVDドライブのうちの同じ1つの回路からの音声信号であっても、その回路からバスを経由して主音声信号S1,S2,S3を図5の音声信号出力装置に入力させるような場合には、バスが非常に込み合っているときにデータの転送速度が遅くなることを原因として、音声信号出力装置に入力する主音声信号S1,S2,S3の間にジッタが生じることがある。
【0020】
図7は、このようにジッタが存在する場合の副音声信号の合成タイミングを、主音声信号S2を例にとって図6と関連付けて示すタイミングチャートである。主音声信号S1中のデータS1(2)の入力タイミングT2が遅れたことにより、副音声信号S4中のデータS4(2)の入力タイミングT2’が遅れている。そのため、データS4(2)は、図6に示したように主音声信号S2中のデータS2(2)に合成されるのではなく、データS2(3)に合成されている。
【0021】
その後、主音声信号S1中のデータS1(3)の入力タイミングT3は逆に早くなったことにより、副音声信号S4中のデータS4(3)の入力タイミングT3’は早くなっている。そのため、副音声信号S4中のデータS4(3)は、図6に示したのと同じく、主音声信号S2中のデータS2(3)に合成されている。
【0022】
その結果、主音声信号S2中のサンプリング数nのデータS2(1)〜S2(n)とサンプリング数nの副音声信号S4とが1対1に対応しなくなり、データS2(2)では副音声信号S4が欠落し(1サンプル分も合成されず)、データS2(3)では副音声信号S4が重複して合成される(2サンプル分合成される)という現象が生じている。
【0023】
このような現象が生じると、副音声信号S4を合成された主音声信号S2を聴いたときに、副音声信号S4の欠落部分や重複部分がノイズとして聴こえてしまうことがあるので、音質を低下させる可能性がある。
【0024】
本発明は、上述の点に鑑み、副音声信号の合成タイミングをいずれか1系統の主音声信号のタイミングによって制御しつつ複数系統の主音声信号に同一の副音声信号を合成して出力する場合に、各系統の主音声信号の間に存在するジッタの影響を排除して、副音声信号が欠落したり重複して合成される現象を防止することを課題としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
この課題を解決するために、本発明に係る音声信号出力装置は、入力する複数系統の主音声信号のうちの1系統の主音声信号の入力タイミングに応じて副音声信号の入力を指示する入力指示手段と、この入力指示手段の指示によって入力された副音声信号をこの1系統の主音声信号に合成する合成手段とを有する第1の合成系と、この入力指示手段の指示によって入力された副音声信号を蓄積する蓄積手段と、複数系統の主音声信号のうちの残りの系統の主音声信号の入力タイミングに応じてこの蓄積手段からの副音声信号の取出しを指示する取出し指示手段と、この取出し指示手段の指示によって蓄積手段から取り出された副音声信号をこの残りの系統の主音声信号に合成する合成手段とを有する第2の合成系とを備え、これらの第1の合成系,第2の合成系によって副音声信号を合成した複数系統の主音声信号を出力することを特徴とする。
【0026】
この音声信号出力装置は、複数系統の主音声信号に同一の副音声信号を合成して出力するにあたって、副音声信号の合成タイミングをいずれか1系統の主音声信号のタイミングによって制御するものであり、第1の合成系がこの制御を行う側の合成系(前述のタイミングマスター)に該当するとともに、第2の合成系がこの制御を受ける側の合成系(前述のタイミングスレーブ)に該当する。
【0027】
そして、この音声信号出力装置では、タイミングマスター(第1の合成系)が1系統の主音声信号の入力タイミングに応じて入力させた副音声信号が、タイミングスレーブ(第2の合成系)内で、蓄積手段に一時的に蓄積された後、残りの系統の主音声信号の入力タイミングに応じて蓄積手段から取り出されて残りの系統の主音声信号に合成される。
【0028】
これにより、タイミングマスター側の1系統の主音声信号とタイミングスレーブ側の残りの系統の主音声信号の間に存在するジッタをこの蓄積手段で吸収することができるので、各系統の主音声信号の間に存在するジッタの影響を排除して、副音声信号が欠落したり重複して合成される現象を防止することができる。
【0029】
なお、この音声信号出力装置において、一例として、蓄積手段は、取出し指示手段によって一度に取出しを指示される量よりも多い量の副音声信号を蓄積するまでは、取出し指示手段から指示があっても副音声信号を出力しないことが好適である。
【0030】
それにより、蓄積手段から一度副音声信号を取り出してタイミングスレーブ側の主音声信号への合成を開始した後も、ジッタを吸収して連続して蓄積手段から副音声信号を取り出すこと(蓄積手段内の副音声信号が枯渇するまでに次の副音声信号が入力して蓄積手段に蓄積されるようにすること)ができるので、タイミングスレーブ側の主音声信号に副音声信号を連続して(欠落することなく)合成することができるようになる。したがって、各系統の主音声信号の間に存在するジッタの影響を一層確実に排除することができるようになる。
【0031】
次に、本発明は、テレビジョン放送用のチューナーと、チューナーで選局された番組を記録する少なくとも1つの記録手段と、チューナーで選局している番組の音声信号及び/または記録手段から再生している番組の音声信号を複数系統の主音声信号として同時に出力するための複数の音声出力端子とを有する記録再生装置において、複数系統の主音声信号のうちの1系統の主音声信号の入力タイミングに応じて副音声信号の入力を指示する入力指示手段と、この入力指示手段の指示によって入力された副音声信号をこの1系統の主音声信号に合成する合成手段とを有する第1の合成系と、この入力指示手段の指示によって入力された副音声信号を蓄積する蓄積手段と、複数系統の主音声信号のうちの残りの系統の主音声信号の入力タイミングに応じてこの蓄積手段からの副音声信号の取出しを指示する取出し指示手段と、この取出し指示手段の指示によってこの蓄積手段から取り出された副音声信号をこの残りの系統の主音声信号に合成する合成手段とを有する第2の合成系とを備え、これらの第1の合成系,前記第2の合成系によって副音声信号を合成された複数系統の主音声信号が複数の音声出力端子から出力されることを特徴とする。
【0032】
この記録再生装置は、チューナーで選局している番組の音声信号や記録手段から再生している番組の音声信号を複数の音声出力端子から複数系統の主音声信号として出力することのできる記録再生装置に、前述の本発明に係る音声信号出力装置を搭載したものである。
【0033】
これにより、副音声信号の合成タイミングをいずれか1系統の主音声信号の入力タイミングによって制御しつつ複数系統の主音声信号(チューナーで選局している番組の音声信号や記録手段から再生している番組の音声信号)に同一の副音声信号を合成して出力する場合に、各系統の主音声信号の間に存在するジッタの影響を排除して、副音声信号が欠落したり重複して合成される現象を防止することができる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、例えばHDD搭載DVDレコーダーのような記録再生装置等において、副音声信号の合成タイミングをいずれか1系統の主音声信号の入力タイミングによって制御しつつ複数系統の主音声信号に同一の副音声信号を合成して出力する場合に、各系統の主音声信号の間に存在するジッタの影響を排除して、副音声信号が欠落したり重複して合成される現象を防止できるという効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下、デジタルチューナーを内蔵したHDD搭載DVDレコーダーに本発明を適用した例について、図面を用いて具体的に説明する。図1は、本発明を適用したHDD搭載DVDレコーダーの回路構成例を示すブロック図である。このHDD搭載DVDレコーダーでは、デジタルチューナー1,復調器2,デスクランブラ3,多重分離器4が順に接続されている。多重分離器4には、映像デコーダ5及び音声デコーダ6〜8が接続されている。
【0036】
映像デコーダ5は映像信号処理回路9に接続されており、映像信号処理回路9は映像出力端子14に接続されている。音声デコーダ6は、音声信号出力部10及びD/A変換器11を介してステレオ音声出力端子15に接続されている。音声デコーダ7は、音声信号出力部10及びD/A変換器12を介してイヤホン用音声出力端子16に接続に接続されている。音声デコーダ8は、音声信号出力部10及び赤外線発光ユニット13を介してデジタル光音声出力端子17に接続されている。
【0037】
また、これらのチューナー1〜音声信号出力部10と、CPU18と、ROM19と、RAM20と、HDD用のインターフェース21と、DVDドライブ用のインターフェース22と、リモートコントローラ用のインターフェース23とが、システムバス24に接続されている。インターフェース21,22には、それぞれ番組を録画するためのHDD25,DVDドライブ26が接続されている。
【0038】
このHDD搭載DVDレコーダーに入力したデジタル放送信号は、リモートコントローラ27での選局操作に基づいてチューナー1で周波数帯を選択された後、復調器2で復調され、デスクランブラ3でスクランブルを解かれた後、多重分離器4で映像・音声データのパケット等に分離される。
【0039】
番組の視聴時には、この映像データが映像デコーダ5に送られて復号されるとともに、この音声データがリモートコントローラ27での音声出力端子の選択操作に応じて音声デコーダ6〜8のうちの少なくとも1つに送られて復号される。
【0040】
他方、番組の録画時には、この映像・音声データが、システムバス24及びインターフェース21を経由してHDD25で記録されたり,システムバス24及びインターフェース22を経由してDVDドライブ26で記録される。
【0041】
そして、HDD25で録画した番組の再生時には、HDD25から再生された映像データがインターフェース21及びシステムバス24を経由して映像デコーダ5に送られて復号されるとともに、HDD25から再生された音声データがリモートコントローラ27での音声出力端子の選択操作に応じてインターフェース21及びシステムバス24を経由して音声デコーダ6〜8のうちの少なくとも1つに送られて復号される。
【0042】
また、DVDドライブ26で録画した番組の再生時には、DVDドライブ26から再生された映像データがインターフェース22及びシステムバス24を経由して映像デコーダ5に送られて復号されるとともに、DVDドライブ26から再生された音声データがリモートコントローラ27での音声出力端子の選択操作に応じてインターフェース21及びシステムバス24を経由して音声デコーダ6〜8のうちの少なくとも1つに送られて復号される。
【0043】
映像デコーダ5で復号された映像信号は、映像信号処理回路9で各種の映像信号処理を施された後、映像出力端子14から出力される。音声デコーダ6で復号された音声信号は、音声信号出力部10を経てD/A変換器11でアナログ信号に変換されて、ステレオ音声出力端子15から出力される。音声デコーダ7で復号された音声信号は、音声信号出力部10を経てD/A変換器12でアナログ信号に変換されて、イヤホン用音声出力端子16から出力される。音声デコーダ8で復号された音声信号は、音声信号出力部10を経て赤外線発光ユニット13で光信号に変換されて、デジタル光音声出力端子17から出力される。
【0044】
このHDD搭載DVDレコーダーでは、リモートコントローラ27の操作により、次の(1)や(2)のような態様で2または3系統の音声信号(主音声信号)をステレオ音声出力端子15,イヤホン用音声出力端子16,デジタル光音声出力端子17から同時に出力できるようになっている。
【0045】
(1)・チューナー1で現在選局している番組
・HDD25から再生している録画済の番組
・DVDドライブ26から再生している録画済の番組
という互いに異なる3つの番組のうちの2以上の番組の音声信号を、ステレオ音声出力端子15,イヤホン用音声出力端子16,デジタル光音声出力端子17のうちの2以上の音声出力端子から同時に出力する。
【0046】
(2)チューナー1,HDD25,DVDドライブ26のうちのいずれか1つからの音声信号(すなわち同じ番組の音声信号)を、ステレオ音声出力端子15,イヤホン用音声出力端子16,デジタル光音声出力端子17のうちの2以上の音声出力端子から同時に出力する。
【0047】
例えばこの(1)の態様の一つとして、チューナー1,HDD25,DVDドライブ26からの音声信号をそれぞれステレオ音声出力端子15,イヤホン用音声出力端子16,デジタル光音声出力端子17から出力する場合には、音声デコーダ6にはチューナー1からの音声信号が送られ、音声デコーダ7にはHDD25からの音声信号が送られ、音声デコーダ8ではDVDドライブ26からの音声信号が送られる。
【0048】
例えばこの(2)の態様の一つとして、DVDドライブ26からの音声信号をステレオ音声出力端子15,イヤホン用音声出力端子16及びデジタル光音声出力端子17から出力する場合には、音声デコーダ6〜8には全てDVDドライブ26からの音声信号が送られる。
【0049】
また、このHDD搭載DVDレコーダーでは、リモートコントローラ27が操作されたときにROM19から電子的な操作音のデータを読み出してその操作音データを音声信号出力部10で各系統の主音声信号に副音声信号として合成したり、チューナー1で緊急警報信号を受信したときにROM19から電子的な警報音のデータを読み出してその警報音データを音声信号出力部10で各系統の主音声信号に副音声信号として合成することができるようになっている。
【0050】
図2は、音声信号出力部10の回路構成を示すブロック図である。図1の音声デコーダ6で復号された音声信号は、主音声信号S1としてこの音声信号出力部10に入力してready信号生成回路31に送られる。図1の音声デコーダ7で復号された音声信号は、主音声信号S2としてこの音声信号出力部10に入力してready信号生成回路33に送られる。図1の音声デコーダ8で復号された音声信号は、主音声信号S3としてこの音声信号出力部10に入力してready信号生成回路36に送られる。
【0051】
ready信号生成回路31は、供給された主音声信号S1をそのままスルーして加算器32に送るとともに、CPU18(図1)の制御のもとで、副音声信号を合成すべきとき(前述のようなリモートコントローラ27の操作時や緊急警報信号の受信時)に、主音声信号S1中の所定のサンプリング数n(副音声信号と同じサンプリング数)のデータのタイミングで、1サンプル分ずつの副音声信号の入力を指示するready信号を生成する。このready信号は、システムバス24(図1)経由で、ROM19(図1)にその副音声信号の読出し制御信号として供給される。
【0052】
このready信号に応じてROM19から読み出された副音声信号S4は、システムバス24経由で音声信号出力部10に入力して加算器32,バッファレジスタ34及び37に送られる。バッファレジスタ34,37は、それぞれ3サンプル分の副音声信号S4を蓄積する容量を有している。
【0053】
加算器32で主音声信号S1に副音声信号S4が合成された音声信号は、音声信号回路10から出力され、D/A変換器11(図1)を経てステレオ音声出力端子15(図1)に送られる。
【0054】
ready信号生成回路33は、供給された主音声信号S2をそのままスルーして加算器35に送るとともに、CPU18の制御のもとで、副音声信号を合成すべきときに、主音声信号S2中のサンプリング数n(副音声信号と同じサンプリング数)のデータのタイミングで、バッファレジスタ34からの1サンプル分ずつの副音声信号の取り出しを指示するready信号を生成してバッファレジスタ34に供給する。
【0055】
ready信号生成回路36は、供給された主音声信号S3をそのままスルーして加算器38に送るとともに、CPU18の制御のもとで、副音声信号を合成すべきときに、主音声信号S3中のサンプリング数n(副音声信号と同じサンプリング数)のデータのタイミングで、バッファレジスタ37からの1サンプル分ずつの副音声信号の取り出しを指示するready信号を生成してバッファレジスタ37に供給する。
【0056】
バッファレジスタ34,37は、それぞれready信号生成回路33,36からready信号が供給される毎に、1サンプル分の副音声信号S4を出力する。但し、最初に2サンプル分の副音声信号S4を蓄積するまでは、ready信号生成回路33,36からready信号が供給されても副音声信号S4を出力しない。なお、この2サンプル分という量や、バッファレジスタ34,37の3サンプル分という容量は、主音声信号S1,S2,S3の間のジッタを吸収するのに十分な量として決定した量であるが、あくまで一例であり、別の例として、最初に1サンプル分の副音声信号S4を蓄積した後は副音声信号S4を出力するようにしたり、バッファレジスタ34,37の容量を2サンプル分以下または4サンプル分以上にしてもよい。
【0057】
バッファレジスタ34から取り出された副音声信号S4は、加算器35に送られる。加算器35で主音声信号S2に副音声信号S4が合成された音声信号は、音声信号回路10から出力され、D/A変換器12(図1)を経てイヤホン用音声出力端子16(図1)に送られる。
【0058】
バッファレジスタ37から取り出された副音声信号S4は、加算器38に送られる。加算器38で主音声信号S3に副音声信号S4が合成された音声信号は、音声信号回路10から出力され、赤外線発光ユニット13(図1)を経てデジタル光音声出力端子17(図1)に送られる。
【0059】
この音声信号出力部10では、主音声信号S1,S2,S3のうちの主音声信号S1のタイミングによって副音声信号S4の合成タイミングを制御するようになっており、ready信号生成回路31及び加算器32がこの制御を行う側の合成系(タイミングマスター)を構成するとともに、ready信号生成回路33,バッファレジスタ34及び加算器35とready信号生成回路36,バッファレジスタ37及び加算器38とがそれぞれこの制御を受ける側の合成系(タイミングスレーブ)を構成している。
【0060】
図3は、主音声信号S1,S2,S3の間にジッタが存在しないと想定した場合の音声信号出力部10による副音声信号S4の合成タイミングを、前出の図6と関連付けて例示するタイミングチャートである。タイミングマスターの側では、主音声信号S1中の或る1サンプル分のデータS1(1)の入力タイミングT1で、ready信号生成回路31(図2)からready信号が生成される。そして、その直後のタイミングT1’に、ROM19(図1)から副音声信号S4中の最初の1サンプル分のデータS4(1)が読み出されて入力し、そのデータS4(1)が加算器32(図2)で主音声信号S1中のデータS1(1)に合成される。
【0061】
また、タイミングスレーブの側では、そのデータS4(1)がバッファレジスタ34,37に蓄積される。このとき、バッファレジスタ34,37にはまだ1サンプル分の副音声信号S4しか蓄積されない。したがって、ready信号生成回路33,36(図2)からそれぞれ主音声信号S2,S3中の1サンプル分ずつのデータS2(1)〜S2(2),S3(1)〜S3(2)の入力タイミングでready信号が供給されても、バッファレジスタ34,37は副音声信号S4を出力しない。
【0062】
主音声信号S1中のデータS1(1)に続く各1サンプル分のデータS1(2)の入力タイミングT2でも、タイミングマスターの側では、ready信号生成回路31からready信号が生成される。それにより、その直後のタイミングT2’にROM19から副音声信号S4中の次に1サンプル分のデータS4(2)が読み出されて入力し、そのデータS4(2)が加算器32で主音声信号S1中のデータS1(2)に合成される。
【0063】
また、タイミングスレーブの側では、そのデータS4(2)がバッファレジスタ34,37に蓄積される。これにより、バッファレジスタ34,37にはデータS4(1),S4(2)という2サンプル分の副音声信号S4が蓄積される。したがって、ready信号生成回路33,36からそれぞれ主音声信号S2,S3中の1サンプル分のデータS2(3),S3(3)の入力タイミングでready信号が供給されると、バッファレジスタ34,37からデータS4(1)が取り出されて、そのデータS4(1)がそれぞれ加算器35,38(図2)でデータS2(3),S3(3)に合成される。
【0064】
主音声信号S1中のデータS1(2)に続く1サンプル分ずつのデータS1(3)〜S1(n)の入力タイミングT3〜Tnでも、タイミングマスターの側では、ready信号生成回路31からready信号が順次生成される。それにより、それぞれその直後のタイミングT3’〜Tn’にROM19から副音声信号S4中の残りの1サンプル分ずつのデータS4(3)〜S4(n)が順次読み出されて入力し、それらのデータS4(3)〜S4(n)が加算器32で主音声信号S1中の1サンプル分ずつのデータS1(3)〜S1(n)に順次合成される。
【0065】
また、タイミングスレーブの側では、それらのデータS4(3)〜S4(n)をバッファレジスタ34,37に順次蓄積する動作と、ready信号生成回路33,36からのready信号によりバッファレジスタ34,37からデータS4(2)〜S4(n)を順次取り出して加算器35,38で主音声信号S2,S3中の1サンプル分ずつのデータS2(4)〜S2(n+2),S3(4)〜S3(n+2)に順次合成する動作とが並行して行われる。
【0066】
このようにして、主音声信号S1中のサンプリング数nのデータS1(1)〜S1(n)に1対1に対応してサンプリング数nの副音声信号S4が合成されるとともに、主音声信号S2,S3中のサンプリング数nのデータS2(3)〜S2(n+2),S3(3)〜S3(n+2)に1対1に対応してサンプリング数nの副音声信号S4が合成される。
【0067】
図3に示した合成タイミングは、3系統の主音声信号S1,S2,S3の間にジッタが存在しないと想定した場合のものであるが、これらの3系統の主音声信号S1,S2,S3が、前述の(1)のようにチューナー1,HDD25,DVDドライブ26という互いに異なる回路からの音声信号である場合には、主音声信号S1,S2,S3の間には通常はジッタが生じる。
【0068】
また、これらの3系統の主音声信号S1,S2,S3が、前述の(2)の一態様としてHDD25,DVDドライブ26のうちの同じ1つの回路からの音声信号である場合にも、その回路からシステムバス24を経由して主音声信号S1,S2,S3を音声信号出力部10に入力させるので、システムバス24が非常に込み合っているときにデータの転送速度が遅くなることを原因として、音声信号出力部10に入力する主音声信号S1,S2,S3の間にジッタが生じることがある。
【0069】
図4は、このようにジッタが存在する場合の副音声信号の合成タイミングを、主音声信号S2を例にとって図3及び前出の図7と関連付けて示すタイミングチャートである。主音声信号S1中のデータS1(2)の入力タイミングT2が遅れたことにより、副音声信号S4中のデータS4(2)の入力タイミングT2’が遅れている。
【0070】
そのため、バッファレジスタ34にデータS4(1),S4(2)という2サンプル分の副音声信号S4が蓄積されるタイミングが遅れるので、ready信号生成回路33から主音声信号S2中の1サンプル分ずつのデータS2(1)〜S2(3)の入力タイミングでready信号が供給されても、バッファレジスタ34,37は副音声信号S4を出力しない。しかし、ready信号生成回路33から主音声信号S2中の1サンプル分のデータS2(4)の入力タイミングでready信号が供給されると、バッファレジスタ34からデータS4(1)が取り出されて、そのデータS4(1)が加算器35でデータS2(4)に合成される。
【0071】
その後、主音声信号S1中のデータS1(3)の入力タイミングT3は逆に早くなったことにより、副音声信号S4中のデータS4(3)の入力タイミングT3’は早くなっている。
【0072】
そのため、バッファレジスタ34にデータS4(3)が蓄積されるタイミングは早くなるが、それとは無関係に、ready信号生成回路33から主音声信号S2中の1サンプル分のデータS2(5)の入力タイミングでready信号が供給されると、バッファレジスタ34からデータS4(2)が取り出されて、そのデータS4(2)が加算器35でデータS2(5)に合成される。
【0073】
その後、主音声信号S1中のデータS1(4)〜S1(n)の入力タイミングが2サンプル分(ジッタを吸収するのに十分な量として決定した量)の範囲内で遅くなったり早くなることによって副音声信号S4中のデータS4(4)〜S4(n)の入力タイミングが遅くなったり早くなっても、やはりそれとは無関係に、ready信号生成回路33からのready信号によりバッファレジスタ34からデータS4(3)〜S4(n)が順次取り出されて加算器35で主音声信号S2中の1サンプル分ずつのデータS2(6)〜S2(n+3)に順次合成されていく。
【0074】
このように、この音声信号出力部10では、タイミングマスターが主音声信号S1の入力タイミングに応じて入力させた副音声信号S4が、タイミングスレーブ内で、バッファレジスタ34,37に一時的に蓄積された後、主音声信号S2,S3の入力タイミングに応じてバッファレジスタ34,37から取り出されて主音声信号S2,S3に合成される。
【0075】
これにより、タイミングマスター側の主音声信号S1とタイミングスレーブ側の主音声信号S2,S3の間に存在するジッタをバッファレジスタ34,37で吸収することができるので、各系統の主音声信号S1,S2,S3の間に存在するジッタの影響を排除して、副音声信号S4が欠落したり重複して合成される現象を防止することができる。
【0076】
また、バッファレジスタ34,37は、最初に2サンプル分(ジッタを吸収するのに十分な量として決定した量)の副音声信号S4を蓄積するまでは、ready信号生成回路33,36からready信号が供給されても副音声信号S4を出力しない。
【0077】
これにより、バッファレジスタ34,37から一度副音声信号S4を取り出して主音声信号S2,S3への合成を開始した後も、ジッタを吸収して連続してバッファレジスタ34,37から副音声信号S4を取り出すこと(バッファレジスタ34,37内の副音声信号S4が枯渇するまでに次の副音声信号S4が入力してバッファレジスタ34,37に蓄積されるようにすること)ができるので、主音声信号S2,S3に副音声信号S4を連続して(欠落することなく)合成することができる。したがって、各系統の主音声信号S1,S2,S3の間に存在するジッタの影響を一層確実に排除することができる。
【0078】
なお、以上の例では、3系統の主音声信号を出力するHDD搭載DVDレコーダーに本発明を適用している。しかし、これに限らず、複数系統の主音声信号を出力するあらゆる記録再生装置に本発明を適用してよい。
【0079】
また、以上の例では、HDD搭載DVDレコーダー内に音声信号出力部10を搭載している。しかし、本発明に係る音声信号出力装置は、他の装置に接続または装着可能な単体の装置または回路として構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】本発明を適用したHDD搭載DVDレコーダーの回路構成例を示すブロック図である。
【図2】図1の音声信号出力部の回路構成を示すブロック図である。
【図3】図1の音声信号出力部による副音声信号の合成タイミングを例示するタイミングチャートである。
【図4】図1の音声信号出力部による副音声信号の合成タイミングを例示するタイミングチャートである。
【図5】複数系統の主音声信号に同一の副音声信号を合成して出力する音声信号出力装置の回路構成例を示すブロック図である。
【図6】図5の音声信号出力装置による副音声信号の合成タイミングを例示するタイミングチャートである。
【図7】図5の音声信号出力装置による副音声信号の合成タイミングを例示するタイミングチャートである。
【符号の説明】
【0081】
1 チューナー、 10 音声信号出力装置、 15 ステレオ音声出力端子、 16 イヤホン用音声出力端子、 17 デジタル光音声出力端子、 25 HDD、 26 DVDドライブ、 31,33,36 ready信号生成回路、 32,35,38 加算器、 34,37 バッファレジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力する複数系統の主音声信号のうちの1系統の主音声信号の入力タイミングに応じて副音声信号の入力を指示する入力指示手段と、前記入力指示手段の指示によって入力された前記副音声信号を前記1系統の主音声信号に合成する合成手段とを有する第1の合成系と、
前記入力指示手段の指示によって入力された前記副音声信号を蓄積する蓄積手段と、前記複数系統の主音声信号のうちの残りの系統の主音声信号の入力タイミングに応じて前記蓄積手段からの前記副音声信号の取出しを指示する取出し指示手段と、前記取出し指示手段の指示によって前記蓄積手段から取り出された前記副音声信号を前記残りの系統の主音声信号に合成する合成手段とを有する第2の合成系と
を備え、前記第1の合成系,前記第2の合成系によって前記副音声信号を合成した前記複数系統の主音声信号を出力することを特徴とする音声信号出力装置。
【請求項2】
請求項1に記載の音声信号出力装置において、
前記蓄積手段は、前記取出し指示手段によって一度に取出しを指示される量よりも多い量の前記副音声信号を蓄積するまでは、前記取出し指示手段から指示があっても前記副音声信号を出力しないことを特徴とする音声信号出力装置。
【請求項3】
テレビジョン放送用のチューナーと、
前記チューナーで選局された番組を記録する少なくとも1つの記録手段と、
前記チューナーで選局している番組の音声信号及び/または前記記録手段から再生している番組の音声信号を複数系統の主音声信号として同時に出力するための複数の音声出力端子と
を有する記録再生装置において、
前記複数系統の主音声信号のうちの1系統の主音声信号の入力タイミングに応じて副音声信号の入力を指示する入力指示手段と、前記入力指示手段の指示によって入力された前記副音声信号を前記1系統の主音声信号に合成する合成手段とを有する第1の合成系と、
前記入力指示手段の指示によって入力された前記副音声信号を蓄積する蓄積手段と、前記複数系統の主音声信号のうちの残りの系統の主音声信号の入力タイミングに応じて前記蓄積手段からの前記副音声信号の取出しを指示する取出し指示手段と、前記取出し指示手段の指示によって前記蓄積手段から取り出された前記副音声信号を前記残りの系統の主音声信号に合成する合成手段とを有する第2の合成系と
を備え、前記第1の合成系,前記第2の合成系によって前記副音声信号を合成された前記複数系統の主音声信号が前記複数の音声出力端子から出力されることを特徴とする記録再生装置。
【請求項4】
請求項3に記載の記録再生装置において、
前記第2の合成系内の前記蓄積手段は、前記取出し指示手段によって一度に取出しを指示される量よりも多い量の前記副音声信号を蓄積するまでは、前記取出し指示手段から指示があっても前記副音声信号を出力しないことを特徴とする音声信号出力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−33278(P2006−33278A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−207558(P2004−207558)
【出願日】平成16年7月14日(2004.7.14)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】