説明

音声聴取補助装置

【課題】 本発明の課題は、難聴者が気軽に家族や友人との会話を楽しむことができる音声聴取補助装置を提供することにある。
【解決手段】 任意の場所に設置し周囲の音声を集音するマイク3と、マイク3で集音した音声を変調して送信する送信機1と、送信機1からの信号を受信し音声信号に復調して再生する受信機2と、受信機2で受信した音声を出力するスピーカ5とを備え、スピーカ5を使用者の耳元に装着するためのヘッドフォン型としたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、難聴者の聞き取りを補助するための音声聴取補助装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の装置として、特許文献1が知られている。この装置は、テレビの音声出力端子に接続してテレビの音声信号を赤外線信号にて送信する送信部と、使用者の近傍でこの赤外線信号を受信して音声再生する受信部とから構成されており、テレビから離れた位置で鮮明な音声を再生することができることから、高齢者や難聴者を中心に利用されている。
【0003】
こうした使用形態の場合、健聴者と難聴者が共存する空間で、テレビからの音声出力と受信機からの音声出力が混在し、健聴者にとっては耳障りな環境となる。また、受信機からの音声を聞き取る使用者にとっても、場所を動いたり、体勢を変えたりして受信機から少しでも離れると、音が聞き取りにくくなるという問題があった。
【0004】
そこで、周囲音を集音するための集音器も市販されているが、集音器そのものに集音マイクが装備されているため、マイクに衣服が触れることで発生するすれ音や使用者自身の発声が耳障りとなるという問題を有していた。
【特許文献1】登録実用新案第3053680号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明が解決しようとする課題は、難聴者が気軽に家族や友人との会話を楽しむことができる音声聴取補助装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するために、任意の場所に設置し周囲の音声を集音するマイク部と、該マイク部で集音した音声を変調して送信する送信機と、該送信機からの信号を受信し音声信号に復調して再生する受信機と、該受信機で受信した音声を出力するスピーカ部とを備え、前記スピーカ部を使用者の耳元に装着するためのヘッドフォン型としたものである。
【0007】
送信機は、マイク部で集音する領域を切り替える感度調整スイッチを備えたものである。また、受信機は、特に難聴者の聞き取りにくいとされる高域周波数帯を他レベルより増幅する音域強調スイッチを備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の音声聴取補助装置によれば、例えば家の中で健聴者と難聴者が同居する状況で健聴者の近くに送信機をおき、難聴者が受信機を耳元に装着しておけば、難聴者は健聴者の会話や周囲の音が聞き取りやすくなる。また、集音するマイクと聴取するスピーカを分離したので、マイクにすれ音や自己発声が入らず耳障りなノイズがなくなり、送信機周辺の音を自然な音として集音することができる。更に、集音の感度を切り替える機能を備えたことで使用用途が広がり、個人的な会話から複数人の話し声さらには自然界の音や外部機器の音声まで聴取することができる。そして、難聴者の聞き取りにくいとされる高域周波数帯を他レベルより増幅する機能を備えたことで、難聴者であっても全ての音声をより聞きやすい音で聴取することができる。
【実施例】
【0009】
以下、本発明の実施例について図面を基に説明する。図1は実施例の音声聴取補助装置を示す説明図である
本発明に係る音声聴取補助装置は、音声信号を赤外線信号で送信する送信機1と、この送信機1が発信する赤外線信号を受信して音声信号を出力する受信機2とから構成され、送信機1に内蔵されたマイク3から取り込んだ音声信号を赤外線信号に変換して送信し、受信機2でその赤外線信号を受信して内部スピーカ4もしくは外部スピーカ5から音声出力するものである。
【0010】
送信機1は、電源入切及び電流変換を行う電源部6と、マイク3からの音声信号を変調する変調部7と、マイク感度を調整する感度調整スイッチ8と、変調部7で変調した音声信号を赤外線発光する赤外線発光部9を備えている。電源部6は、商用交流電源VをDC電源に変換する機能と、マイク3からの音声が入切するのに合わせて電源を入切する機能を備えている。感度調整スイッチ8は、マイク3から入力される音声信号の感度を段階的(ここでは広域・中域・狭域の3段階)に切り替えて、音声ピックアップ領域を選択するものである。例えば、大勢の人との会話では広域、少数の人との会話では中域、自然界の野鳥の鳴き声や川の流れを聴取する場合は狭域を使用するといった使い方となる。変調部7への入力は、マイク3以外に入力端子10からも可能であり、テレビ等の外部機器と接続して音声信号を送信するといった使い方もできる。
【0011】
受信機2は、送信機1の発光部7からの赤外線信号を受信する赤外線受光部11と、受光部11で受信した赤外線信号を音声信号に復調する復調部12と、復調部12で復調された音声信号を増幅する増幅部13と、復調された音声信号の高音域を強調する高音域増幅部14と、音量ボリューム15とを備えている。増幅部13は、通常の音域周波数帯(300〜4KHz)のレベルを一様に増幅し、高域信号増幅部14は、主に高齢者や難聴者が聞き取りにくいとされる高域周波数帯(2〜4KHz)を他レベルに比べて15dB程度増幅するものであり、音域強調スイッチ16により切り替えられる。各増幅部で増幅された音声信号は、内部スピーカ4以外に出力端子17からも出力可能である。出力端子17には、外部スピーカ5が接続され、接続状態ではこの外部スピーカ5からの出力が優先される。外部スピーカ5は、ヘッドフォン型をなし、使用者の頭部もしくはネックに装着することで、耳元で音声を聴取するためのものである。
【0012】
図2は送信機1及び受信機2の外観を示す説明図である。
送信機1は、側面視縦長で上部にいくにつれて順次前傾する形状をなし、上面にマイク3、前面に発光部9、一側面に感度調整スイッチ8と入力端子10、背面に使用者の胸ポケット等に取り付けることができるクリップ18をそれぞれ備えている。発光部9は、複数の発光素子からなり、この発光光素子が配設された面は半透過性のカバーにより覆われており、送信機1からの赤外線信号を受光しやすくしている。マイク3は、水平に対して背面側、すなわち装着側が低くなるように傾斜させた上面に取り付けられており、送信機1を装着した使用者の発声が受けやすいようになっている。
【0013】
受信機2は、送信機と同様に、側面視縦長で上部にいくにつれて順次前傾する形状をなし、上面に内部スピーカ4、前面に受光部11・音域強調スイッチ16・電源スイッチ19、一側面に音量ボリューム15と出力端子17、背面に使用者の胸ポケット等に取り付けるためのクリップ20をそれぞれ備えている。受光部11は、複数の受光素子からなり、この受光素子が配設された面は半透過性のカバーにより覆われており、送信機1からの赤外線信号を受光しやすくしている。内部スピーカ4は、水平に対して背面側が低くなるように傾斜させた上面に取り付けられており、受信機2を装着した使用者が音声出力を受けやすいようになっている。
【0014】
実施例は以上のように構成されるものであり、使い方としては、まず図3に示すように、難聴者が受信機2を持ち、会話をしたい相手に送信機1を渡す。各人は、クリップ18・20を使って送信機1もしくは受信機2を胸元に装着し、受信機2の電源スイッチ19をONにすると、送信機1を装着した相手の音声が受信機2を通じて鮮明な音声として聴取される。このとき、1対1の会話であれば、送信機1の感度調整スイッチ8でマイク感度を中域に設定しておけばよい。また、受信機2の音域強調スイッチ16を入力することで難聴者が聞き取りにくいとされる高音域部が増調され、音声をさらに聞き取りやすくすることができる。更に、受信機2の出力端子18にヘッドフォン型スピーカ4を接続して耳元に装着すれば、周囲への影響を抑えながら音声の聞き取りが可能になる。
【0015】
また、図4に示すように、送信機1を家族が集まる卓上に設置し、複数人の音声を聴取することも可能である。この場合、クリップ部分を利用して卓上に設置しても良いが、卓上で発生するノイズ(物や手をおいたりする時の打音や振動音)の影響を抑えるため、専用の卓上スタンドを用意しても良い。こうした使い方の場合、送信機1の感度調整スイッチ8でマイク感度を広域に設定しておけば卓上の付近にいる家族・友人の声を一様に聴取することができる。
【0016】
更に、図5に示すように、野鳥のさえずりや川の流れ等の自然音に触れる場合には、使用者が受信機2を持ち、送信機1を集音したい音源に向けることで聴取することができる。この場合、送信機1の感度調整スイッチ8でマイク感度を狭域に設定しておくこと周囲の雑音を低減して聞きたい音源の音を鮮明に聴取することができる。
【0017】
また、送信機1の入力端子10に外部機器(テレビ・ラジオ等)を接続して、番組や音楽を楽しんだりするといった使い方も可能である。
【0018】
尚、本発明は以上の実施態様に限定されるものではない。例えば、送信機1及び受信機2は、図6に示すように、クリップ18・20の代わりに、首掛けストラップ21を備えた構成にしても良い。また、音声信号を赤外線信号に変調して送受信するものについて説明したが、電波信号にFM変調して送受信するものでも良い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施例のブロック図である。
【図2】実施例の送信機1及び受信機2の外観図を示す説明図である。
【図3】実施例の1使用形態を示す説明図である。
【図4】実施例の別の使用形態を示す説明図である。
【図5】実施例の別の使用形態を示す説明図である。
【図6】実施例の応用例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0020】
1 送信機
2 受信機
3 マイク
4 内部スピーカ
5 外部スピーカ(ヘッドフォン)
8 感度調整スイッチ
9 発光部
11 受光部
16 音域強調スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意の場所に設置し周囲の音声を集音するマイク部と、該マイク部で集音した音声を変調して送信する送信機と、該送信機からの信号を受信し音声信号に復調して再生する受信機と、該受信機で受信した音声を出力するスピーカ部とを備え、前記スピーカ部を使用者の耳元に装着するためのヘッドフォン型としたことを特徴とする音声聴取補助装置。
【請求項2】
前記送信機は、マイク部で集音する領域を切り替える感度調整スイッチを備えたことを特徴とする上記請求項1記載の音声聴取補助装置。
【請求項3】
前記受信機は、特に難聴者の聞き取りにくいとされる高域周波数帯を他レベルより増幅する音域強調スイッチを備えたことを特徴とする上記請求項1又は2記載の音声聴取補助装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−284289(P2009−284289A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−135148(P2008−135148)
【出願日】平成20年5月23日(2008.5.23)
【出願人】(000103149)エムケー電子株式会社 (6)
【Fターム(参考)】