説明

音声ICカード、それに対応する端末機器、およびそのシステム

【課題】端末機器と通信インターフェースを介してデータの入出力が行われるICカードであって、利用者に、より容易に確実に指示を音声によって伝達できるICカード、端末機器、およびそれを利用したICカードシステムを提供する。
【解決手段】ICカード1は、音声データ生成用のデータ要素が記録された記憶手段3と、端末機器により出力する音声に必要な仕様のデータを通信インターフェースを介して入力する入力手段2と、記録されたデータ要素を用い端末機器より入力された仕様のデータに対応する音声データを作成する音声データ生成手段5と、作成された音声データを端末機器に通信インターフェースを介して出力する出力手段6とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音声案内を有する音声ICカード、それに対応する端末機器、およびそのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
ICカードは、薄板状のプラスチック材料に薄型のICチップ(半導体集積回路)を組込み、そのICチップには所定の情報処理を行うプログラムが記録されており、またICチップでの情報の記録や読み出しが可能である、クレジットカード大のカードを総称するものである。また、インターフェース手段の違いによって「接触ICカード」(外部端子付きICカード)と「非接触ICカード」(外部端子なしICカード)の各方式、或いは2つの方式を組み合わせたICカード(一般に複合ICカード、ハイブリッドICカード、コンビネーションICカード或いはデュアルインターフェースカードと称される)とに分けられる。
【0003】
ICカードは、その利用時に、ATM、ゲーム装置、等の端末機器との間で通信を行う。従来、ICカードを利用する場合に、利用者がICカードを端末機器に挿入し、あるいは端末機器にかざすなどして介在させ、利用する内容を指示に従い、入力する。その場合の指示は、端末機器の画面に表示され、それに従い、該当するボタンを押したり、金額等のデータを入力したりして実行する。この指示方法を、利用者に容易に、確実に伝達する方法として、音声にて行うことがなされるようになった。
【0004】
初期の音声サービスは、特定の言語で、かつ決まったメッセージ音声データが流れるだけである。しかしさらに、高年齢者等でゆっくりと大きい声で、外国の人は自国の言語でサービスを受けたいと言う要望がある。さらには、好みの声質・方言で案内サービスを受けたいと言う要望もある。
【0005】
これに対し、音声案内の言語を選択できるシステムとして、特許文献1に開示されているようなシステムが知られている。この特許文献は、音声データそのものをICカード内に格納し、カードの所有者を認定する識別子等で指定することで、端末機器で言語指定を実行、音声データの再生を可能としている。しかし、ICカード内に格納されていない音声データ以外、例えば音量等を端末機器等でその都度指定して実行することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−101355号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような要望に応えるもので、ICカードと端末機器を利用したICカードシステムで、より利用者の要望に適合し、容易に確実に指示を音声によって伝達できるICカード、端末機器、およびそれを利用したICカードシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以上の課題に鑑みなされたもので、請求項1に記載の本発明は、
端末機器と通信インターフェースを介してデータの入出力が行われるICカードであっ
て、
音声データ生成用のデータ要素が記録された記憶手段と、
端末機器により出力する音声に必要な仕様のデータを、通信インターフェースを介して入力する、入力手段と、
記録されたデータ要素を用い、端末機器より入力された仕様のデータに対応する音声データを作成する、音声データ生成手段と、
作成された音声データを端末機器に通信インターフェースを介して出力する出力手段と
を有することを特徴とするICカードとしたものである。
【0009】
本発明の請求項2に記載の発明は、
ICカードと通信インターフェースを介してデータの入出力が行われる端末機器であって、
利用者に、出力する音声に必要な仕様のデータの入力を促す、入力手段と、
仕様データをICカードに通信インターフェースを介して出力する出力手段と、
ICカードから出力された音声データを、通信インターフェースを介して入力する入力手段と、
音声データから音声信号を生成する音声信号生成手段と、
音声信号から音声を出力する音声出力手段と
を有することを特徴とする端末機器としたものである。
【0010】
本発明の請求項3に記載の発明は、
端末機器とICカードとを通信インターフェースを介してデータの入出力が行われ、端末機器から音声を出力するICカードシステムであって、
利用者に、端末機器にICカードを挿入またはかざし、出力する音声に必要な仕様のデータの入力を促す、入力手段と、
仕様データをICカードに通信インターフェースを介して出力する出力手段と、
ICカードに設けた、音声データ生成用のデータ要素が記録された記憶手段と、
端末機器により出力する音声に必要な仕様のデータを、通信インターフェースを介してICカードに入力する、入力手段と、
記録されたデータ要素を用い、端末機器より入力された仕様のデータに対応する音声データを作成する、音声データ生成手段と、
作成された音声データを端末機器に通信インターフェースを介して出力する出力手段と、ICカードから出力された音声データを、通信インターフェースを介して入力する入力手段と、
音声データから音声信号を生成する音声信号生成手段と、
音声信号から音声を出力する音声出力手段と
を有することを特徴とするICカードシステムとしたものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、以上のような構成であるので、ICカードと端末機器を利用したICカードシステムで、より利用者の要望に適合し、容易に確実に指示を音声によって伝達できるICカード、端末機器、およびそれを利用したICカードシステムとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のICカードの例を示した構成図である。
【図2】本発明の端末機器の例を示した構成図である。
【図3】本発明のICカードシステムの一例の構成を示したフロー図である。
【図4】図1のICカードのハードの構成例である。
【図5】図2の端末機器のハードの構成例である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施する形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0014】
図1は、本発明のICカードの例を示した構成図である。図の矢印は、データの大まかな動きを示している。本ICカード1は、端末機器と通信インターフェースを介してデータの入出力が行われる。図で、本ICカード1は、音声データ生成用のデータ要素が記録された記憶手段3と、端末機器により出力する音声に必要な仕様のデータを、通信インターフェースを介して入力する、入力手段2と、記録されたデータ要素を用い、端末機器より入力されたデータに対応する音声データを作成する、音声データ生成手段5と、作成された音声データを端末機器に通信インターフェースを介して出力する出力手段6とを有している。
【0015】
図2は、本発明の端末機器の例を示した構成図である。図の矢印は、データの大まかな動きを示している。本端末機器11は、利用者に、出力する音声に必要な仕様のデータの入力を促す、入力手段19と、仕様データをICカードに通信インターフェースを介して出力する出力手段16と、ICカードから出力された音声データを、通信インターフェースを介して入力する入力手段12と、音声データから音声信号を生成する音声信号生成手段17と、音声信号から音声を出力する音声出力手段18とを有している。
【0016】
図3は、本発明の、ICカード及び端末機器を利用したICカードシステムの、一例の構成を示したフロー図である。
端末機器11で、入力手段19により利用者がICカード1の挿入、またはかざすことでシステムを開始する(S0)。
【0017】
まず、音声の仕様の一部であるアプリケーションがICカード1の記憶手段3に複数備えられているか否かをチェックする(S1)。ここで、アプリケーションとは、音声の声色や声質、さらには言語などの基本的な特徴を意味する。例えば、良く知られている俳優や、タレント、声優、アナウンサ等の音声の特徴を基本にしたプログラムで、これらが複数備えられているかをチェックする。このため、ICカードには、アプリケーションリストを記憶手段3に、記憶しておくのが良い。
例えば、複数の場合、
アプリケーションリスト
(1)アプリケーションA
(2)アプリケーションB
(3)アプリケーションC
(4)アプリケーションD
・・・
単数の場合、
アプリケーションリスト
(1)アプリケーションA
さらに、入力手段19により、音声に関する仕様を利用者が入力する(S2)。あるいは、この仕様をICカードの記憶手段3に記憶させておき、読み出すようにしても良い。この仕様は、上記(S1)で指定したパラメータで、アプリケーションのほかに、音声データ生成用のデータで、言語の種類、方言の種類、音量、発声の速度等である。
【0018】
利用者が指定されたアプリケーションを選択し、他の仕様(音声データ生成用のデータ)と共にICカード1に通信インターフェイス出力手段16で送信する(S3)。
【0019】
仕様については、図4の(a)、(b)に示したように、アプリケーションと音声データ生成用のデータとで構成され、アプリケーション毎に音声データ生成用のデータを有する。
【0020】
ICカード1の記憶手段3に記憶されている音声データ作成に必要なデータ要素を、以下に具体的に例示する。
(1)単語/単音
(2)音素(長音/母音/半母音/有声摩擦/無声音/促音)/フォルマント
(3)音程
(4)リズム/ブレス
(5)音量
(6)アクセント(ベロシティ)
(7)区切り
(8)声色/声質
(9)言語
(10)出力ファイル形式
(11)アプリケーション
ICカード1の通信インターフェイス入力手段2で受信した、指定されたアプリケーションと他の仕様とに対し、音声データの指定に必要な情報の要求をICカード1から端末機器11に通信インターフェイス出力手段6で送信する(S4)。必要な情報とは、データ処理上のフォーマットや、出力ファイル形式などである。
【0021】
また、ICカード1にアプリケーションが複数ない場合、S3のユーザーがアプリケーションを選択する行為がスキップされる。すなわち、端末機器11に準備された対象アプリケーションを選択し(S21)、音声データの指定に必要な情報の要求をICカード1から端末機器11に送信する(S4)。また、複数ない場合、音声合成データは1セットに限定される。
【0022】
端末機器11で、文章フォーマット、音声データ生成用のデータ、の中からいずれを今回使用するか判別し、ICカード1へ通知の送信を行う(S5)。
【0023】
端末に、今回の文章フォーマットやデータ要素がサポートされていない場合は、エラー表示する(S51)。
【0024】
つぎに、ICカード1で、端末機器11から送信された今回用いる指定フォーマットで設定し、設定完了の通知を端末機器11に送信する(S6)。
【0025】
本処理で、今回の音声合成に必要な環境が整えられたことになる。以下、利用者の処理内容にしたがって、文章のデータを作成し、音声を出力する。
【0026】
通信機器11で、利用者に、次の処理を入力させ、それにより指定された、出力したい文章を端末機器11で作成し、ICカード1に送信する(S7)。
【0027】
ここで言う処理を例示すれば、入金処理、出勤処理、銀行振り込み、通帳記入等である。
【0028】
ICカード1で、指定された文章のフォーマットに問題ないか、チェックする(S8)

【0029】
問題があれば、エラーを表示する(S81)。
【0030】
問題が無ければ、端末機器11へ受信完了の通知を行い、文章のデータは内部の記憶手段3に保存する(S9)。
【0031】
端末機器11で、指定フォーマットでパラメータを設定し、ICカード1に送信する(S10)。
【0032】
ICカード1に保存した文章のデータと、受信したデータ要素の指定されたパラメータを基に、音声データ生成手段5で、音声元データを作成する(S11)。
【0033】
音声元データを出力ファイル形式にし、端末機器11に送信する(S12)。
【0034】
端末機器11では、このファイルから音声信号を音声信号生成手段17で生成し、音声出力手段18に出力し、音声を出力する。入力処理が全て終了した場合(S13)、
終了とし(S14)、
終了していない場合、端末機器11により、利用者に次の処理の入力を促し、次の出力したい文章を作成する(S7)。
【0035】
なお以上の処理で、各チェック処理は、音声データ生成手段でチェックするようにしてもよいし、別途チェック手段を設けても良い。
【0036】
図4は、本例のICカードのハードの構成例である。CPU23は、通常の中央演算処理で、全体の制御を行う。メモリ24は、記憶手段のハードで、上記の音声のデータ要素の他に、入力手段や出力手段や音声データ生成手段等のプログラムを記憶しておいても良い。通信制御部21は、端末機器との間でデータの通信の制御を行う電子回路などのハード部分で、通信インターフェイスのハード部分である。I/Oユニット22は、その入出力のハード部分である。
【0037】
図5は、本例の端末機器のハードの構成例である。CPU31は、通常の中央演算処理で、全体の制御を行う。メモリ34は、記憶手段のハードで、処理中のワーキングデータや、入力手段や出力手段等のアプリケーションを記憶しておいても良い。通信制御部32は、ICカードとの間でデータの通信の制御を行う電子回路などのハード部分で、通信インターフェイスのハード部分である。I/Oユニット33は、その入出力のハード部分である。データ読取手段37は、端末機器とICカードとの電気的接続部分、あるいは非接触ICカードとの送受信用のアンテナなどで形成される。このような機能を持つデータ読み取り手段は、それに準じたものがICカードにも備えられる。音声出力部は、ICカードから送信された音声データのファイルから音声信号を生成し、音声を出力する。
【0038】
本発明は、このような例で示される作用を有するから、ICカードと端末機器を利用したICカードシステムで、より利用者の要望に適合し、容易に確実に指示を音声によって伝達できるICカード、端末機器、およびそれを利用したICカードシステムとすることができる。
【符号の説明】
【0039】
1・・・ICカード
2・・・通信インターフェースによる入力手段
3・・・記憶手段
5・・・音声データ生成手段
6・・・通信インターフェースによる出力手段
11・・・端末機器
12・・・通信インターフェースによる入力手段
13・・・記憶手段
16・・・通信インターフェースによる出力手段
17・・・音声信号生成手段
18・・・音声出力手段
19・・・入力手段
20・・・ICカード
21・・・通信制御部
22・・・I/Oユニット
23・・・CPU
24・・・メモリ
30・・・端末機器
31・・・CPU
32・・・通信制御部
33・・・I/Oユニット
34・・・メモリ
35・・・音声出力部
36・・・入力手段
37・・・データ読取手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
端末機器と通信インターフェースを介してデータの入出力が行われるICカードであって、
音声データ生成用のデータ要素が記録された記憶手段と、
端末機器により出力する音声に必要な仕様のデータを、通信インターフェースを介して入力する、入力手段と、
記録されたデータ要素を用い、端末機器より入力された仕様のデータに対応する音声データを作成する、音声データ生成手段と、
作成された音声データを端末機器に通信インターフェースを介して出力する出力手段と
を有することを特徴とするICカード。
【請求項2】
ICカードと通信インターフェースを介してデータの入出力が行われる端末機器であって、
利用者に、出力する音声に必要な仕様のデータの入力を促す、入力手段と、
仕様データをICカードに通信インターフェースを介して出力する出力手段と、
ICカードから出力された音声データを、通信インターフェースを介して入力する入力手段と、
音声データから音声信号を生成する音声信号生成手段と、
音声信号から音声を出力する音声出力手段と
を有することを特徴とする端末機器。
【請求項3】
端末機器とICカードとを通信インターフェースを介してデータの入出力が行われ、端末機器から音声を出力するICカードシステムであって、
利用者に、端末機器にICカードを挿入またはかざし、出力する音声に必要な仕様のデータの入力を促す、入力手段と、
仕様データをICカードに通信インターフェースを介して出力する出力手段と、
ICカードに設けた、音声データ生成用のデータ要素が記録された記憶手段と、
端末機器により出力する音声に必要な仕様のデータを、通信インターフェースを介してICカードに入力する、入力手段と、
記録されたデータ要素を用い、端末機器より入力された仕様のデータに対応する音声データを作成する、音声データ生成手段と、
作成された音声データを端末機器に通信インターフェースを介して出力する出力手段と、ICカードから出力された音声データを、通信インターフェースを介して入力する入力手段と、
音声データから音声信号を生成する音声信号生成手段と、
音声信号から音声を出力する音声出力手段と
を有することを特徴とするICカードシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−69032(P2013−69032A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205854(P2011−205854)
【出願日】平成23年9月21日(2011.9.21)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】