説明

音声IP電話方法と装置。

【課題】従来のボタン電話システムの主装置においては可能であった各種の付加サービス機能を音声IP電話において実現すること。
【解決手段】インターネットに接続してインターネット・プロトコル(IP)に準拠して音声通信を可能とするためのVoIP電話装置が、発信者側において、発信者および宛先である受信者側に関する発信情報に、付加すべきサービスの内容を付加情報として作成添付し、受信者側において、発信者側から送られてきた発信情報に付加された付加情報を解析してサービスの内容を得るための発信・付加情報作成解析部12を含むようにした。発信・付加情報作成解析部12では、着信に対する応答種別を判別し、着信が指示している通話種別を判別し、発信においては、受信者側の応答種別と、通話種別とを発信情報として作成するための発信情報作成をするようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターネット・プロトコル(IP)による音声IP電話方法と装置に関する。具体的には、インターネット・プロトコル(IP)に準拠した音声IP電話に、従来のボタン電話システムの主装置に組み込まれていた付加サービス機能を実現する、新規な電話方法と装置を提供せんとするものである。
【背景技術】
【0002】
従来の主装置を用いたボタン電話システムにおいては、収容した電話端末や周辺機器に対して、一元的に主装置が制御している。主装置は、独自のインタフェースを具備しており、主装置内に収容している電話端末や周辺機器の呼制御に関わる動作状況、たとえば、通話路の決定、表示部およびランプ制御などを常時、一元管理している。そのため、ページング(構内放送)、音声呼出し、音声メール(通話録音)サービス等の付加サービスを容易に実現することができた。しかしながら、主装置に収容されてはいない装置に対しては、管理の対象外であるため、付加サービスを実現することはできなかった。
【0003】
一方、音声IP電話においては、各装置間がIP網で接続され、様々なプロトコルを用いて呼制御を実現しているが、各装置の制御はそれぞれの装置において分散して行われている。そのために、従来のボタン電話システムの主装置においては可能であった付加サービス機能を、音声IP電話において実現することはできないという問題があった。
【0004】
特許文献1には、以下の手段が開示されている(要約)。インターネット・プロトコルに準拠した複数の電話端末がLANネットワークに接続されてIPネットワークが形成され、IPネットワークの最小構成単位毎に、複数の電話端末の制御機能として、インタラクティブ通信のセッションの開始、終了および変更を制御するプロトコルによるSIPサーバ機能と、複数の電話端末の端末状態データベースを管理、記憶および配信するリソース管理サーバ機能と、複数の電話端末に対して必要なサービスを提供するアプリケーション・サーバ機能とが、前記LANネットワークに接続され、各サーバ機能間の情報伝送がパケット単位で行われるように構成されている。
【0005】
この構成により、特許文献1の発明は、その課題を以下のように解決している。簡易な構成で各端末相互間の電話情報の相互伝達を効率よく実行し、かつ、収容端末数の増減に対しても高い融通性をもって柔軟に対応することができる電話通信システムを提供している。
【0006】
しかしながら、特許文献1の発明は、各種の付加サービス機能、たとえば、通常着信または自動着信の選択、着信応答時の片通話または双方向通話、ページング(構内放送)、音声呼出し、音声メール(通話録音)、ドアホン機能などを装備するには端末を各付加サービス機能限定で動作させる必要があり、容易に付加サービス機能を提供できないという問題点を有していた。また、サーバなどを用いて各音声IP電話端末を制御する付加サービスを提供する場合には、付加サービス機能毎にサーバの機能追加が必要となり、個々のユーザの嗜好にあったサービスを容易に提供することができなできないという問題点があった。
【0007】
特許文献2には、以下の手段が開示されている(段落0020)。インターネット・プロトコル(IP)に基づき動作するIP電話端末によるボイスメールであり、着呼側ネットワークに、電話端末番号に対応して、無鳴動により着呼させるための従来とは別のIPアドレス名を、無鳴動着信メールアドレスとして登録しておき、発呼者からの前記無鳴動着信メールアドレスによる接続要求の際に、対応する着呼先電話端末に内蔵される記録領域を無鳴動で呼び出して発呼者のボイスメッセージを前記記録領域に記録し保存するようにしている。
【0008】
この構成により、特許文献2の発明は、その課題を以下のように解決している(段落0064)。発呼元のユーザは着呼先の応答を待たずにボイスメールを送信できるだけでなく、着呼先のユーザも受けたボイスメールは直ちに開くことができる。
【0009】
しかしながら、特許文献2の発明では、1ユーザにつき2個のメールアドレス、すなわち、従来のIPアドレスと、無鳴動着信メールアドレスとを登録しておく必要があった。そのために、格納すべきメールアドレスの数が増加してアドレス・サーバの負担が大きくなり、コストアップの原因ともなっていた。ユーザにとっても、2個のメールアドレスを使い分けしなければならないという煩わしさがあった。
【特許文献1】特開2002-152224
【特許文献2】特開2003-110742
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来のボタン電話システムの主装置においては可能であった各種の付加サービス機能、たとえば、通常着信または自動着信の選択、着信応答時の片通話または双方向通話、ページング(構内放送)、音声呼出し、音声メール(通話録音)、ドアホン機能を装備するには端末を各付加サービス機能限定で動作させる必要があり、容易に付加サービス機能を提供できないという問題点があり、解決されなければならない課題であった。また、サーバなどを用いて各音声IP電話端末を制御する付加サービスを提供する場合にも、付加サービス機能毎にサーバの機能追加が必要となり、個々のユーザの嗜好にあったサービスを容易に提供できないという解決されなければならない課題があった。従来のボタン電話システム主装置において可能であった各種付加サービス機能が提供されないことがユーザにとっては音声IP電話の導入に対して障害となっており、音声IP電話にも各種付加サービス機能を具備することが望まれていた。
【0011】
従来は、あるユーザにとっては必要となっても、他のユーザにとっては不要となるサービス機能までも、各端末および主装置内に実装され、操作面での煩雑さを招来するばかりでなく、コストの上昇原因にもなるという解決されなければならない課題があった。さらに、サービス機能を追加することにより、1ユーザが複数個のメールアドレス、すなわち、従来のIPアドレスと、サービス機能に対応したアドレスとを登録しておく必要がなく、アドレス・サーバの負担が小さく、コストアップの原因ともならず、ユーザにとっても、複数個のメールアドレスを使い分けしなければならないという煩わしさのない音声IP電話が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0012】
インターネットに接続しインターネット・プロトコルに準拠して音声通信を可能とするための音声IP電話手段が、発信者側において、発信者および宛先である受信者側に関する発信情報に、付加すべきサービスの内容を付加情報として作成し、受信者側において、発信者側から送られてきた発信情報に付加された付加情報を解析してサービスの内容を得るための発信・付加情報作成解析手段を含むようにした。
【0013】
この発信・付加情報作成解析手段は、
発信者および宛先である受信者側に関する発信情報を作成するための発信情報作成手段と、
宛先である受信者側が通常応答および自動応答のいずれの応答種別で応答すべきかを指示する応答種別と、片通話および双方向通話のうちのいずれかを指示する通話種別とを付加情報として発信情報に付加するべく作成するための付加情報作成手段と、
受信者側において、発信者側から送られてきた発信情報を解析して、解析した発信情報を得るための発信情報解析手段と、
解析した発信情報に付加された、受信者側が通常応答および自動応答のいずれの応答種別で応答すべきかを指示する応答種別と、片通話および双方向通話のうちのいずれかを指示する通話種別とを解析し、解析した付加情報を得るための付加情報解析手段とを含むように構成した。
【0014】
付加情報には、たとえば、ドアホン機能を実行するための情報、録音再生機能を実行するための情報、ページング機能を実行するための情報など、多くのサービス機能を含ませることができる。このような音声IP電話機能を、端末(VoIP装置)およびアプリケーション・サーバに持たせた。
【発明の効果】
【0015】
従来のボタン電話システムの主装置においては可能であった各種の付加サービス機能、たとえば、通常着信または自動着信の選択、着信応答時の片通話または双方向通話、ページング(構内放送)、音声呼出し、音声メール(通話録音)、ドアホン機能などを、音声IP電話の特徴を損なうことなく実現することができた。このような音声IP電話機能のうち、必要とされる機能を、必要とする端末(VoIP装置)に装備し、また、アプリケーション・サーバにも付加して装備可能にした。
【0016】
従来のボタン電話システムのように、あるユーザにとっては必要となっても、他のユーザにとっては不要となるサービス機能までも各端末や主装置に装備することもなくなり、操作面での煩雑さを解消した。サービス毎に端末(VoIP装置)を変更する必要が無くなった。端末(VoIP装置)とアプリケーション・サーバにおいて基本的に同じ構成にし、同じアルゴリズムを使用することができる。各種のサービスを付加しても、それによるシステム全体への負担は極めて小さい。したがって、製造時間の短縮およびコストの削減をすることが可能となった。ユーザが従来から使用しているメール・アドレスは、変更あるいは追加することなく、サービスの付加をすることができるから、ユーザへの負担は生じない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
インターネットに接続しインターネット・プロトコル(IP)に準拠して音声通信を可能とするための音声IP電話手段が、発信者側において、発信者および宛先である受信者側に関する発信情報に、付加すべきサービスの内容を付加情報として作成添付し、受信者側において、発信者側から送られてきた発信情報に付加された付加情報を解析してサービスの内容を得るための発信・付加情報作成解析手段を含むようにした。
【0018】
この発信・付加情報作成解析手段は、
発信者および宛先である受信者側に関する発信情報を作成するための発信情報作成手段と、
宛先である受信者側が通常応答および自動応答のいずれの応答種別で応答すべきかを指示する応答種別と、片通話および双方向通話のうちのいずれかを指示する通話種別とを付加情報として発信情報に付加するべく作成するための付加情報作成手段と、
受信者側において、発信者側から送られてきた発信情報を解析して、解析した発信情報を得るための発信情報解析手段と、
解析した発信情報に付加された、受信者側が通常応答および自動応答のいずれの応答種別で応答すべきかを指示する応答種別と、片通話および双方向通話のうちのいずれかを指示する通話種別とを解析して、解析した付加情報を得るための付加情報解析手段とを含むように構成した。
【0019】
付加情報には、たとえば、ドアホン機能を実行するための情報、録音再生機能を実行するための情報、ページング機能を実行するための情報など、多くのサービス機能を含ませることができる。このような音声IP電話機能を、端末(VoIP装置)およびアプリケーション・サーバに持たせた。
【実施例1】
【0020】
図1は、本願発明の実施例1の機能を示した機能ブロック構成図である。インターネット・プロトコル(IP)による音声IP電話の端末であるVoIP(Voice over Internet Protocol)装置3は、LAN(構内情報通信網)を介して、あるいは、IP網に直接に、通信路8によって接続されている。このVoIP装置3は、音声IPプロトコルを使用している。このような音声IPプロトコルとしては、たとえば、SIP(Session Initiation Protocol)や、これに関連して規定されたH.323と呼ばれるものがある。通信路8は、LANインタフェース(I/F)11を介して、発信・付加情報作成解析部12および音声部13に、それぞれ情報信号21および音声符号信号22により接続されている。
【0021】
装置制御部14は、発信・付加情報作成解析部12と音声部13およびデバイス制御部15との間を、それぞれ情報制御信号23および音声デバイス制御信号25によって接続されている。デバイス制御部15は、音声部13との間を音声情報制御信号24で接続されている。デバイス制御部15は音声部13の他に、ハンドセット、ヘッドセット、スピーカなどを制御している。
【0022】
発信・付加情報作成解析部12は、宛先への発信情報および付加情報の作成をし、または先方から送られてきた発信情報および付加情報に対する解析をしている。IP網1から直接に、またはLAN経由で通信路8、LANインタフェース(I/F)11および情報信号21を介して着信した先方からの発信情報および付加情報を解析し、情報制御信号23により装置制御部14に伝える。装置制御部14からの指示により発信情報および付加情報を作成し、情報信号21、LANインタフェース(I/F)11、通信路8およびIP網1を介して通話の相手へ送出する。
【0023】
装置制御部14は、VoIP装置3の呼制御および発信・付加情報作成解析部12と音声部13およびデバイス制御部15の制御をしている。デバイス制御部15は、ハード・ディスクなどの記憶装置、ハンドセット、ヘッドセット、スピーカまたはマイクなどの制御をしている。音声部13は、コーデックを含んでおり、音声をRTP(Realtime Transport Protocol)変換または逆変換により符号化または復号化している。
【0024】
図2は、図1の重要な構成要素である発信・付加情報作成解析部12の内部の詳細を示す機能ブロック構成図である。そこには、発信情報作成器31、付加情報作成器32、発信情報解析器33および付加情報解析器34が含まれている。発信情報作成器31は情報制御信号23を受けて、自己および宛先のアドレスである発信情報を作成して発信情報作成信号45として出力している。付加情報作成器32は、宛先における通常応答あるいは自動応答の応答種別、宛先における双方向通話あるいは片方向通話、その片方向通話が着信側のみか、発信側のみかの通話種別を指示する付加情報を作成して、情報信号21として送出している。ここで、発信情報作成器31および発信情報解析器33は従来から公知のものである。
【0025】
発信情報解析器33は情報信号21を受けると、発信情報を解析し、付加情報を添付された発信情報解析信号46を付加情報解析器34に渡す。付加情報解析器34は添付された付加情報を解析して、通常応答あるいは自動応答の応答種別、双方向通話をすべきかあるいは片方向通話をすべきか、その片方向通話が着信側のみか、発信側のみかの通話種別を解析し、情報制御信号23として出力している。
【0026】
図3は、本願発明をインターネット・プロトコル(IP)に準拠するIP網に適用した場合の接続概念図である。IP網1には、VoIP装置3A,3B,3C,3D,3Eおよび多くのアプリケーション・サーバ5A,5B,5P,5Vを含むアプリケーション・サーバ群5が直接に、あるいは、図示してはいないLANを介して接続されている。VoIP装置3Dは、たとえば、ドアホン機能を有している。アプリケーション・サーバ5Pは、たとえば、ページング機能を有している。アプリケーション・サーバ5Vは、たとえば、音声メール機能を有している。
【0027】
図4は、たとえば、アプリケーション・サーバ5Aの内部の詳細を示す機能ブロック構成図である。基本的には、図1に示したVoIP装置3に同じ構成要素を含んでいる。異なる点は、LANインタフェース(I/F)11Aを介して、サーバ通信路9Aに接続されている点と、アプリケーション・サーバ5Aは音響出力の必要性がないから、デバイス制御部15Aは、ハード・ディスクなどの記憶装置の制御はするが、ハンドセット、ヘッドセット、スピーカまたはマイクなどの制御をしていない点である。その他については、アプリケーション・サーバ5Aは、VoIP装置3と同じ動作をする。
【0028】
図5は、アプリケーション・サーバ5A含まれた発信・付加情報作成解析部12Aの内部の詳細を示す機能ブロック構成図である。図2に示したVoIP装置3の発信・付加情報作成解析部12と同じ構成要素を含んでいる。異なる点は、アプリケーション・サーバ5Aは、たとえば、VoIP装置3AとVoIP装置3Bとの間で交信する場合に、交信に先立って、発信情報および付加情報をVoIP装置3AとVoIP装置3Bとの間で中継する点である。あるいは、VoIP装置3AとVoIP装置3Bとの間での交信中においても、VoIP装置3AとVoIP装置3Bとの間の交信を中継することも、図示されてはいない通話中継器により可能となる点である(後述する図9とその説明を参照)。その他については、アプリケーション・サーバ5Aの発信・付加情報作成解析部12Aの各要素は、VoIP装置3の発信・付加情報作成解析部12の各要素と同じ動作をする。
【0029】
図6は、付加情報作成器32(または、32A)の動作の流れを示すフローチャートである。付加情報作成器32(または、32A)が動作を開始すると、発信情報作成器31(または、31A)から発信情報作成信号45(または、45A)を受信し(S101)、宛先である着信側の動作を指定する(S102)。通常応答すべきか、自動応答すべきかの応答種別の指定をする(S103)。通常応答を指定した場合は(S103通常応答)、応答種別の指定処理をすることなく(S104)、ステップS106へ進む。自動応答を指定した場合は(S103自動応答)、宛先である着信側が自動応答するべく付加情報の追加処理をする(S105)。
【0030】
そこで、双方向通話とするか、あるいは片方向通話とするか、その片方向通話が着信側のみか、発信側のみかの通話種別を指定する(S106)。双方向通話が指定されると(S106片方向通話)、通話種別の指定処理をすることなく(S107)、ステップS110へ進む。片方向通話が着信側のみの場合は(S106片着)、着信側のみの片方向通話の指定処理をして(S108)、ステップS110へ進む。発信側のみの片方向通話の場合は(S106片発)、発信側のみの片方向通話の指定処理をして(S109)、LANインタフェース(I/F)11(または、11A)へ通知して付加情報作成器32(または、32A)の動作を終了する(S110)。
【0031】
図7は、付加情報解析器34(または、34A)の動作の流れを示すフローチャートである。付加情報解析器34(または、34A)が動作を開始すると、発信情報解析器33(または、33A)から発信情報解析信号46(または、46A)を受信する(S121)。発信情報解析信号46(または、46A)に付加されている付加情報の解析に入る(S122)。付加情報ありの場合には(S122付加情報あり)、応答種別の解析をする(S123)。応答種別が通常応答を指示している場合は(S123通常応答)、通常処理をして(S124)、ステップS126へ進む。応答種別が自動応答を指示している場合は(S123自動応答)、自動応答処理をして(S125)、通話種別の解析に入る(S126)。
【0032】
通話種別が双方向通話を指示している場合は(S126双方向通話)、通常処理をして(S127)、ステップS131へ進む。通話種別が着信側のみ片通話を指示している場合は(S128片着)、着信側のみ片通話処理をし(S128)、ステップS131へ進む。通話種別が発信側のみ片通話を指示している場合は(S128片発)、発信側のみ片通話処理をし(S129)、装置制御部14(または、14A)へ通知して付加情報解析動作を終了する(S131)。ステップS122において、付加情報なしと解析された場合は(S122付加情報なし)、通常着信であるとして(S130)、装置制御部14(または、14A)へ通知して付加情報解析動作を終了する(S131)。
【0033】
図8は、2つのVoIP装置3Aと3Bのみの間で通話をする場合の動作の遷移(シーケンス)を示す動作遷移図である。VoIP装置3Aが発信情報に、通常着信、双方向通話の付加情報を付けて発信する(S1)。これを受けたVoIP装置3Bは、着信種別により自動着信であるか通常着信であるかの判別をし、たとえば通常着信であることを検出する。同時に、片通話か双方向通話か通話方式を判別し、双方向通話であることを検出する(S2)。通常着信、双方向通話の付加情報を読み取ると、これに応答して(S3)、VoIP装置3Aと3Bとの間で、IP網1あるいはLANを介して通話が始まる(S4)。
【0034】
図9は、アプリケーション・サーバ5Aを介して2つのVoIP装置3Aと3Bの間で通話をする場合の動作の遷移を示す動作遷移図である。VoIP装置3Aがアプリケーション・サーバ5Aに対して、相手先であるVoIP装置3Bおよび経由先であるアプリケーション・サーバ5Aのアドレスを発信情報とし、自動着信であるか通常着信であるかの着信応答種別と、片通話か双方向通話かの通話種別を付加情報として送信する(S11)。アプリケーション・サーバ5Aは、VoIP装置3Aから受けた付加情報を付してVoIP装置3Bに発信する(S12)。
【0035】
これを受けたVoIP装置3Bは応答種別から、たとえば通常着信であることを、通話種別から双方向通話であることを判別し、判別結果に従ってアプリケーション・サーバ5Aに対して応答する(S14)。この応答をアプリケーション・サーバ5Aは中継してVoIP装置3Aに渡す(S15)。そこで、アプリケーション・サーバ5Aを介してVoIP装置3AとVoIP装置3Bの間でアプリケーション・サーバ5Aの中継により通話が開始される(S16、S17)。または、シーケンスS11におけるVoIP装置3Aの発信情報に、VoIP装置3AとVoIP装置3Bの間の通話は、アプリケーション・サーバ5Aを介さずに直接に行う旨の指示をしておけば、通話は直接行われる(S18)。
【0036】
図10は、2つのVoIP装置間3Aと3Bの間の通話を音声メール機能を有するアプリケーション・サーバ5Vに通話録音する場合の動作の遷移を示す動作遷移図である。VoIP装置3AとVoIP装置3Bの間で通話が続けられている(S21)。その通話の最中、あるいは、通話の冒頭において、VoIP装置3Bから発信情報として音声メール機能を有するアプリケーション・サーバ5Vのアドレスを含め、その付加情報により通話録音を指示する(S22)。この付加情報による通話録音の指示においては、アプリケーション・サーバ5Vからの自動応答とVoIP装置3Bからの片通話が選択されている。
【0037】
この指示を受けたアプリケーション・サーバ5Vは、指示の内容を判別すると(S23)、通話録音に応じる旨の応答をVoIP装置3Bに対して送る(S24)。アプリケーション・サーバ5Vからの応答を受けたVoIP装置3Bは、通話中の音声をアプリケーション・サーバ5Vに送り(S25)、アプリケーション・サーバ5Vにおいて通話録音が実行される(S26)。
【0038】
図11は、VoIP装置3Bが音声メール機能を有する音声メール・アプリケーション・サーバ5Vから録音再生する場合の動作の遷移を示す動作遷移図である。音声メール・アプリケーション・サーバ5Vは、すでに通話(留守番電話)内容を録音して、音声データとして収納することも必要に応じて可能である。VoIP装置3Bは音声メール・アプリケーション・サーバ5Vに対して、宛先アドレスを示す発信情報に付加情報を付与して発信する(S31)。この付加情報には、自動応答の音声メールで音声メール・アプリケーション・サーバ5Vからの片通話を指示する内容が含まれている。
【0039】
音声メール・アプリケーション・サーバ5Vは、VoIP装置3Bから付加情報の付いた発信情報を受け取ると(S31)、付加情報から自動応答と音声メール・アプリケーション・サーバ5Vからの片通話を選択して(S32)、その旨をVoIP装置3Aに応答し(S33)、同時に録音内容を再生して(S34)、その再生音をVoIP装置3Bに対して送る(S35)。
【0040】
図12は、VoIP装置3Aとドアホン機能を有するドアホンVoIP装置3Dとの間で通話をする場合の動作の遷移を示す動作遷移図である。ドアホンVoIP装置3Dの、図1には図示されてはいない送受話器とボタンからなるドアホンのボタンを押すと、ドアホンVoIP装置3Dは、自動応答で片通話、ユーザの応答後は双方向通話を指示する付加情報の付いた発信情報をVoIP装置3Aに対して発信する(S41)。
【0041】
ドアホンVoIP装置3Dからの発信情報を受け取ったVoIP装置3Aは、付加情報(自動応答で片通話、ユーザの応答後は双方向通話)を判別して(S42)、ドアホンVoIP装置3Dに対して自動応答でドアホンVoIP装置3Dからの片通話を可能とする応答を出す(S43)。そこでドアホンVoIP装置3Dのドアホンから通話がなされる(S44)。この通話に対してVoIP装置3Aのユーザが応答すると、その後は双方向通話となり、VoIP装置3AとドアホンVoIP装置3Dのドアホンとの間での通話が可能となる(S46)。
【0042】
図13は、ページング機能を有するページング・アプリケーション・サーバ5Pを用いてVoIP装置3Aから多くのVoIP装置3B、3C、3Eに構内放送する場合の動作の遷移を示す動作遷移図である。VoIP装置3Aは、ページング・アプリケーション・サーバ5Pに対して、そのアドレスを示す発信情報に、構内放送あるいは一斉放送であるページングを示す付加情報を付けて発信する(S51)。
【0043】
ページング・アプリケーション・サーバ5Pには、ページング時の送信先アドレス(3B、3C、3E)と送信先アドレスへの付加情報(自動応答、片通話)があらかじめ登録されている。ページングの要求を受けたページング・アプリケーション・サーバ5Pは、発信情報として送信先アドレス(3B、3C、3E)を、付加情報として自動応答、片通話を指示内容として発信する(S52B、S52C、S52E)。
【0044】
ページング・アプリケーション・サーバ5Pからの指示をVoIP装置3B、3C、3Eが受け取ると、その付加情報(自動応答、片通話)を判別し(S53)、自動応答してページング・アプリケーション・サーバ5Pに応答する(S54B、S54C、S54E)。そこでページング・アプリケーション・サーバ5Pは、VoIP装置3B、3C、3Eの受信準備完了に応答して、VoIP装置3Aからの通話を認める(S55)。
【0045】
VoIP装置3Aからの通話(放送)が開始され(S56)、ページング・アプリケーション・サーバ5Pは、VoIP装置3B、3C、3Eに対して一斉に(フォーキング)通話を伝送する(S57B、S57C、S57E)。このステップS57B、S57C、S57Eの動作からも明らかなように、それぞれのステップは、ページング・アプリケーション・サーバ5Pと各VoIP装置3B、3C、3Eとの間での1対1(Peer to Peer)の通信である。
【0046】
以上の説明においては、説明の都合上、VoIP装置3やアプリケーション・サーバ5の数およびそれらの種類はこれに限定されるものではなく、システムの用途や規模に応じて設定され得ることは、明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本願発明の実施例を示した機能ブロック構成図である。(実施例1)
【図2】図1の重要な構成要素である発信・付加情報作成解析部の内部の詳細を示す機能ブロック構成図である。
【図3】本願発明をIP網に適用した場合の接続概念図である。
【図4】図3の重要な構成要素であるアプリケーション・サーバの内部の詳細を示す機能ブロック構成図である。
【図5】図4の重要な構成要素であるアプリケーション・サーバの発信・付加情報作成解析部の内部の詳細を示す機能ブロック構成図である。
【図6】図2の重要な構成要素である付加情報作成器の動作の流れを示すフローチャートである。
【図7】図2の重要な構成要素である付加情報解析器の動作の流れを示すフローチャートである。
【図8】2つのVoIP装置のみの間で通話をする場合の動作の遷移を示す動作遷移図である。
【図9】アプリケーション・サーバを介して2つのVoIP装置の間で通話をする場合の動作の遷移を示す動作遷移図である。
【図10】2つのVoIP装置間の通話を音声メール機能を有するアプリケーション・サーバに通話録音する場合の動作の遷移を示す動作遷移図である。
【図11】VoIP装置が音声メール機能を有するアプリケーション・サーバから録音再生する場合の動作の遷移を示す動作遷移図である。
【図12】VoIP装置とドアホン機能を有するVoIP装置との間で通話をする場合の動作の遷移を示す動作遷移図である。
【図13】ページング機能を有するアプリケーション・サーバを用いて多くのVoIP装置に構内放送する場合の動作の遷移を示す動作遷移図である。
【符号の説明】
【0048】
1 IP網
3,3A,3B,3C,3E VoIP装置
3D ドアホンVoIP装置
5 アプリケーション・サーバ群
5A,5B, アプリケーション・サーバ
5P ページング・アプリケーション・サーバ
5V 音声メール・アプリケーション・サーバ
8,8A,8B,8C,8D,8E 通信路
9 サーバ通信路
11,11A LANインタフェース(I/F)
12,12A 発信・付加情報作成解析部
13,13A 音声部
14,14A 装置制御部
15,15A デバイス制御部
21,21A 情報信号
22,22A 音声符号信号
23,23A 情報制御信号
24,24A 音声情報制御信号
25,25A 音声デバイス制御信号
31,31A 発信情報作成器
32,32A 付加情報作成器
33,33A 発信情報解析器
34,34A 付加情報解析器
45,45A 発信情報作成信号
46,46A 発信情報解析信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インターネットに接続しインターネット・プロトコルに準拠して音声通信を可能とするための音声IP電話処理(3,5)が、
発信者側において、前記発信者および宛先である受信者側に関する発信情報に、付加すべきサービスの内容を付加情報として作成し、受信者側において、発信者側から送られてきた発信情報に付加された付加情報を解析してサービスの内容を得るための発信・付加情報作成解析処理(12)を含んでいる
音声IP電話方法。
【請求項2】
前記発信・付加情報作成解析処理(12)が、
前記発信者および宛先である受信者側に関する発信情報を作成するための発信情報作成処理(31)と、
前記宛先である受信者側が通常応答および自動応答のいずれの応答種別で応答すべきかを指示する応答種別と、片通話および双方向通話のうちのいずれかを指示する通話種別とを付加情報として前記発信情報に付加するべく作成するための付加情報作成処理(32)と、
前記受信者側において、前記発信者側から送られてきた発信情報を解析して、解析した発信情報を得るための発信情報解析処理(33)と、
前記解析した発信情報に付加された、前記受信者側が通常応答および自動応答のいずれの応答種別で応答すべきかを指示する応答種別と、片通話および双方向通話のうちのいずれかを指示する通話種別とを解析して前記解析した発信情報に付加された解析した付加情報を得るための付加情報解析処理(34)とを含んでいる
請求項1の音声IP電話方法。
【請求項3】
前記音声IP電話処理(3)をすることにより、ドアホン機能(3D)を実行する
請求項1の音声IP電話方法。
【請求項4】
前記インターネットに接続されてサービス機能を提供するためのアプリケーション・サーバ(5)において、前記音声IP電話処理(3,5)をすることにより録音再生機能(5V)を実行する
請求項1の音声IP電話方法。
【請求項5】
前記インターネットに接続されてサービス機能を提供するためのアプリケーション・サーバ(5)において、前記音声IP電話処理(3,5)をすることによりページング機能(5P)を実行する
請求項1の音声IP電話方法。
【請求項6】
インターネットに接続しインターネット・プロトコルに準拠して音声通信を可能とするための音声IP電話手段(3,5)が、
発信者側において、前記発信者および宛先である受信者側に関する発信情報に、付加すべきサービスの内容を付加情報として作成し、受信者側において、発信者側から送られてきた発信情報に付加された付加情報を解析してサービスの内容を得るための発信・付加情報作成解析手段(12)を含んでいる
音声IP電話装置。
【請求項7】
前記発信・付加情報作成解析手段(12)が、
前記発信者および宛先である受信者側に関する発信情報を作成するための発信情報作成手段(31)と、
前記宛先である受信者側が通常応答および自動応答のいずれの応答種別で応答すべきかを指示する応答種別と、片通話および双方向通話のうちのいずれかを指示する通話種別とを付加情報として前記発信情報に付加するべく作成するための付加情報作成手段(32)と、
前記受信者側において、前記発信者側から送られてきた発信情報を解析して、解析した発信情報を得るための発信情報解析手段(33)と、
前記解析した発信情報に付加された、前記受信者側が通常応答および自動応答のいずれの応答種別で応答すべきかを指示する応答種別と、片通話および双方向通話のうちのいずれかを指示する通話種別とを解析して前記解析した発信情報に付加された解析した付加情報を得るための付加情報解析手段(34)とを含んでいる
請求項6の音声IP電話装置。
【請求項8】
前記音声IP電話手段(3)において、ドアホン機能(3D)を実行する
請求項6の音声IP電話装置。
【請求項9】
前記インターネットに接続されてサービス機能を提供するためのアプリケーション・サーバ(5)において、前記音声IP電話手段(5)が録音再生機能(5V)を実行する
請求項6の音声IP電話装置。
【請求項10】
前記インターネットに接続されてサービス機能を提供するためのアプリケーション・サーバ(5)において、前記音声IP電話手段(3,5)がページング機能(5P)を実行する
請求項6の音声IP電話装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−6047(P2007−6047A)
【公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−182723(P2005−182723)
【出願日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(000000181)岩崎通信機株式会社 (133)
【Fターム(参考)】