説明

音楽作成装置、方法およびプログラム

【課題】簡単に音楽を創作することが可能な音楽作成装置を提供する。
【解決手段】12面体、7面体、5面体などの立体が運動する作用の加速度や速度などの第1物理量を検出し、前記第1物理量の時系列に基づいて音楽要素の音高などの時系列を特定し、前記特定された音楽要素の時系列を示す音楽データを作成し、演奏する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音楽作成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、音を発生させるための技術として各種の技術が知られている。例えば、人間の動作に応じて様々なサウンドを発生させる技術(例えば、特許文献1参照)や、サイコロを振ったときに出た目の数に対応する音を発生させる技術(例えば、特許文献2参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−100689号公報
【特許文献2】特開2001−241906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術では、簡単に音楽を創作することができなかった。
すなわち、特許文献1において人間の動作に対応した音楽を演奏することは可能である。しかし、音楽を作成しながら演奏するためには作曲センスが要求され、作曲経験の少ない一般的なユーザにとって従来の技術を利用して作曲を行うことは極めて困難である。
【0005】
さらに、特許文献2においては単にサイコロの出た目に対応した音を発生させているのみである。従って、音の時系列的変化によって表現される音楽を作成することはできず、新たな音楽を創作することはできない。
【0006】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたもので、簡単に音楽を創作することが可能な音楽作成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的の少なくとも一つを解決するため、運動する立体に作用する物理量(第1物理量と呼ぶ)の時系列に基づいて音楽要素の時系列を特定し、特定された音楽要素の内容を示す音楽データを作成する。すなわち、利用者が立体に何らかの運動を行わせると、当該立体の運動に応じて立体に何らかの第1物理量が作用する。
【0008】
そこで、運動する立体に作用する第1物理量を検出すれば、運動する立体に作用する第1物理量の時系列を特定することができ、当該第1物理量の時系列に基づいて音楽要素の時系列を特定すれば、音楽を作成することができる。ここで、立体には形状があるため、当該立体にはその形状に応じた第1物理量が作用する。従って、第1物理量の時系列は全くのランダムにならず、立体の形状や利用者が立体に行わせた運動に対応した時系列となる。このため、当該時系列に基づいて音楽要素の時系列を特定すればその時系列は音楽を構成し、単なるランダムな音の羅列ではない「音楽」を極めて簡単に創作することが可能である。
【0009】
ここで、第1物理量検出手段は、運動する立体に作用する第1物理量を検出することができれば良い。第1物理量は、時間変化し得る物理量であればよく、立体の位置や速度、加速度など、利用者の意図によって時間的に変化させることが可能な物理量を第1物理量とすることができる。また、立体の運動(継続的な動作)は、立体において瞬時に終了する動作ではなく一定以上の期間(所望の数の音楽要素に対応した第1物理量を取得可能な期間)において継続して現れる動作によって構成される運動である。例えば、投げるなどの行為によって立体が落下する、他の物体に衝突する、など各種の動作を含む運動が当該運動に対応する。
【0010】
なお、立体は、物理量を作用させることが可能な特定の形状を持った物体であれば良く形状は限定されないが、形状の特徴や対称性が第1物理量の時系列の現れ方に影響を与える立体であることが好ましい。立体は、多面体、多角柱、球、円柱、錐体や各種の回転体(例えば、楕円を回転させることによって構成される立体)によって構成することができる。
【0011】
さらに、音楽要素特定手段は、第1物理量の時系列に基づいて音楽要素の時系列を特定すれば良く、例えば、予め決められた規則に従って第1物理量の時系列を特定の音楽要素の時系列に変換する構成等を採用可能である。なお、音楽を構成する各種の要素を音楽要素としてその時系列を特定する構成とすることができるが、ここでは、音楽要素の時系列を特定する構成を採用しているため、対象となる音楽要素は時間的に変化し得る音楽要素である。すなわち、時間的に変化し得る音楽要素の内容の経時的な変化を時系列として取得することができればよい。
【0012】
音楽要素は音楽を構成する要素であればよいので、音高、リズム、コード進行、楽器の種類、音色、曲調、など種々の要素を時系列の特定対象となる音楽要素として採用可能である。音楽要素特定手段においては、各音楽要素の中の少なくとも一つについてその内容を示す時系列を特定することができればよい。また、特定の音楽要素について時系列を特定した後に他の音楽要素の時系列を立体に作用する第1物理量に基づいて特定しても良いし、デフォルトで特定しておいても良く、種々の構成を採用可能である。
【0013】
さらに、音楽データ作成手段は、特定された音楽要素の時系列を示す音楽データ、すなわち、当該時系列に対応した音楽を演奏するためのデータを作成することができればよい。この結果、当該音楽データに基づいて作成した音楽を演奏することが可能になる。むろん、当該音楽データに基づいて演奏を行う演奏手段も備える音楽作成装置を構成してもよい。
【0014】
さらに、音楽を構成する音楽要素には時間変化しない(時系列にて表現することが好ましくない)要素もあるため、このような音楽要素も立体に作用する物理量で特定するように構成してもよい。例えば、立体において上述のような運動が行われる前あるいは後の所定期間において時間的に変化しない音楽要素を特定することとし、当該所定期間において立体に作用する物理量(第2物理量と呼ぶ)に基づいて時間変化しない音楽要素を特定するように構成してもよい。
【0015】
なお、時間変化しない音楽要素は、一曲の中のある期間内(例えば、全曲の演奏期間や特定の小節数に対応した期間)にて変化しなくても音楽を構成することが可能な要素である。例えば、ある期間内において時系列的に変化する音高等を一定の種類の楽器、音色、曲調、テンポ等で演奏する場合、これらの楽器、音色、曲調、テンポ等の音楽要素は当該ある期間内で変化しない。従って、これらの音楽要素は時間変化しない音楽要素となる。
【0016】
また、これらの時間変化しない音楽要素を特定するための所定期間は、立体の運動の前、あるいは後の所定期間内で決定されればよい。すなわち、音楽要素の時系列を特定する前、あるいは、後に、時間変化しない音楽要素が決定されればよい。さらに、ここでは、時間変化しない音楽要素を決定するため、所定期間として長期の時間間隔を必要とせず、立体に対してパルス的に作用する物理量を検出するための時間間隔など、きわめて短い時間を所定期間とすることが可能である。
【0017】
さらに、時間変化しない音楽要素を他の構成によって特定してもよい。例えば、立体の外面に操作子を構成し、当該操作子に対する操作に基づいて時間変化しない音楽要素を特定する構成を採用可能である。この構成によれば、押しボタンなどの操作子を操作することによって極めて容易に時間変化しない音楽要素を特定可能である。
【0018】
さらに、立体における特定の運動に対応する物理量に基づいて音楽要素の時系列を特定する構成としてもよい。例えば、第1物理量に基づいて運動している立体の姿勢を特定し、当該第1物理量の時系列に対応する立体の姿勢の時系列に基づいて音楽要素の時系列を特定してもよい。この構成によれば、例えば、立体を台などに向かって放り投げる「サイコロを振る」様な動作に応じた立体の運動によって時系列的に変化する立体の姿勢の時系列(例えば、鉛直上方を向く面の時系列)に対応する音楽を作成することが可能である。
【0019】
さらに、立体を12面体とする構成を採用してもよい。この構成によれば、1オクターブに含まれる12個の音のそれぞれを各面に対応させることができ、各面に対応した第1物理量(例えば、各面が鉛直上方を向いている状態のそれぞれにおいて立体に作用する加速度)によって1オクターブに含まれる12個の全音高を表現し得る音楽を作成することが可能になる。同様に、7面体や5面体によって立体を構成すれば、1オクターブに含まれる7個の音(例えば、ピアノの白鍵で発音する音高に対応する音)や5個の音(例えば、ピアノの黒鍵で発音する音高に対応する音)の時系列を特定することが可能になる。むろん、これらの立体は各面が合同な立体でもよいし、各面が非合同でもよい。各面が合同であれば、音高等の音楽要素が現れる確率を均等にすることができ、各面が非合同であれば確率を不均等にすることができる。
【0020】
さらに、上述のように、立体に作用する第1物理量の時系列に基づいて音楽を作成する手法は、方法やプログラムとしても適用可能である。また、以上のような装置、方法、プログラムは、単独の装置として実現される場合もあれば、他の機器と共有の部品を利用して実現される場合もあり、各種の態様を含むものである。例えば、以上のような装置を備えた電子楽器を提供することが可能である。また、一部がソフトウェアであり一部がハードウェアであったりするなど、適宜、変更可能である。さらに、装置を制御するプログラムの記録媒体としても発明は成立する。むろん、そのソフトウェアの記録媒体は、磁気記録媒体であってもよいし光磁気記録媒体であってもよいし、今後開発されるいかなる記録媒体においても全く同様に考えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】音楽作成装置を示すブロック図である。
【図2】音楽作成処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
ここでは、下記の順序に従って本発明の実施の形態について説明する。
(1)音楽作成装置の構成:
(2)音楽作成処理:
(3)他の実施形態:
【0023】
(1)音楽作成装置の構成:
図1は、本発明の一実施形態にかかる音楽作成装置を示すブロック図である。同図1に示す音楽作成装置10は、作用する物理量を検出するためのセンサユニット20が組み込まれた立体21を利用して音楽を作成する装置である。本実施形態において立体21は正12面体であり、利用者は当該立体21を叩く動作および立体21を放り投げて転がす動作によって音楽を作成する。
【0024】
本実施形態においては、これらの動作に対応して立体21に作用する加速度を検出するために立体21内にセンサユニット20が組み込まれており、当該センサユニット20の内部には無線通信部20aと加速度センサ20bとが備えられている。加速度センサ20bは、当該加速度センサ20bに加わる加速度ベクトルを互いに直交する3つの検出軸x,y,z(図1にて立体21内に破線で示す直交軸)に沿った方向の加速度成分a,a,aとして検出する。また、これらの加速度成分a,a,aを示すアナログ信号を出力する。
【0025】
無線通信部20aは、当該アナログ信号が示す情報を外部に対して無線送信するための回路を備えている。すなわち、一定時間長(例えば5ms)のサンプリング周期毎に加速度センサ20bから出力される3種類のアナログ信号をサンプリングしてデジタル化することにより、加速度成分a,a,aを示すデータを生成する。そして、音楽作成装置10に接続された後述する無線通信部11と通信を行って加速度成分a,a,aを示すデータを含むパケットを送信する。
【0026】
以上の立体21は、人間の手で持つことが可能な大きさおよび重さで構成されているため、立体21をサイコロのように放り投げると立体21はしばらく転がり続け、やがて止まる。このとき、当該立体21の形状に対応した物理量である加速度が加速度成分a,a,aとして取得され、音楽作成装置10に送信される。また、立体21を持ち上げた状態で叩くと、立体21に加速度が作用し、当該加速度を示す加速度成分a,a,aは音楽作成装置10に送信される。
【0027】
音楽作成装置10は、図示しないインタフェースを介して無線通信部11、サウンドシステム12と接続されている。無線通信部11は、一定時間長(例えば5ms)のサンプリング周期ごとに、無線通信部20aから送信されたパケットを受信し、そのパケットから加速度成分a,a,aを示すデータを取り出し、取り出したデータを後述する制御部14に引き渡す。
【0028】
音楽作成装置10は、記憶媒体13と、図示しないCPU,ROM,RAMを含む制御部14とを備え、当該制御部14にて記憶媒体13に記憶されたデータを参照しながら各種プログラムを実行することができる。また、制御部14は、各種プログラムによって作成されたデータを記憶媒体13に記憶させることができる。本実施形態においては、立体21に作用する物理量に基づいて音楽を作成するため、物理量検出部14aと音楽要素特定部14bと音楽データ作成部14cとの各プログラムモジュールを制御部14にて実行することができる。
【0029】
本実施形態において、物理量検出部14aは、無線通信部11が出力するデータに基づいて立体21に作用する物理量を検出する機能を、制御部14に実現させるプログラムモジュールである。本実施形態においては、無線通信部11から受け渡される加速度成分a,a,aを立体21に作用する物理量として検出する。当該物理量は上述の一定時間長毎に逐次特定されるため、立体21に作用する加速度の時間変化、すなわち、加速度の時系列が特定される。
【0030】
音楽要素特定部14bは、加速度の時系列に基づいて音楽要素の時系列を特定する機能を制御部14に実現させるプログラムモジュールである。本実施形態においては、物理量検出部14aによって検出された加速度が立体21における特定の運動に対応した加速度であるときに、その加速度の時系列に基づいて音楽要素の時系列を特定する。また、立体21を運動させる前に利用者が立体21に対して行う動作に対応した加速度に基づいて時間変化しない音楽要素を特定する。より具体的には、本実施形態においては、立体21を放り投げて転がす前に利用者が立体21を叩くことによって立体21に作用する加速度(第2物理量)によって音楽の音色を決定する。また、利用者が立体21を放り投げて立体21を転がしたときに当該立体21に作用する加速度(第1物理量)によって音高を決定することとしている。
【0031】
このため、記憶媒体13には、利用者が立体21を叩くことによって立体21に作用する加速度を立体21の姿勢毎に定義し、各姿勢に対応した加速度と音色とを対応づけたデータが物理量データ13aとして記憶されている。すなわち、本実施形態においては、立体21の外周を構成する各面に予め音色を対応づけており、ある面が鉛直上方に向いた状態でその面を叩いたときに当該立体21に作用する加速度成分a,a,aを示す情報が予め特定されて物理量データ13aとして記憶媒体13に記憶されている。すなわち、立体21を特定の姿勢とした状態で立体21を叩くことによって音色を指定するように構成している。
【0032】
そこで、制御部14は、音楽要素特定部14bの処理により、所定期間において立体21に作用する加速度成分a,a,a(第2物理量)を検出し、当該加速度成分a,a,aの特徴が物理量データ13aとして記録されている加速度の特徴と一致するか否か否かを判別する。そして、特徴が一致する物理量データ13aが記憶媒体13に記憶されている場合にはその物理量データ13aに対応づけられた音色で音楽を作成することとする。すなわち、作成対象となる音楽データにおいて音色を示すデータ(例えば、ピアノの音,木琴の音,オルゴールの音などを示すデータ)を含めることとする。
【0033】
さらに、記憶媒体13には、立体21の任意の面が鉛直上方を向いているときに立体21に作用する加速度成分a,a,aの組み合わせ(パターン)を各面について定義し、各面が鉛直上方を向いているときの成分a,a,aの組み合わせと音高とを対応づけたデータが物理量データ13aとして記憶されている。すなわち、本実施形態において立体21の外周を構成する各面は12個であるため、1オクターブを構成する12個の音高(ピアノにおける7個の白鍵と5個の黒鍵が示す音高に相当)を各面に対応づけている。そして、立体21の各面が鉛直上方を向いている状態において当該立体21に作用する加速度成分a,a,aを示す情報が予め特定されて物理量データ13aとして記憶媒体13に記憶されている。
【0034】
そこで、制御部14は、音楽要素特定部14bの処理により、立体21が放り投げられた後に当該立体21に作用する物理量(第1物理量)の時系列を取得し、取得した加速度成分の特徴に一致する加速度成分が物理量データ13aとして記録されているか否かを判別する(すなわち、立体21の姿勢が物理量データ13aに記録されている特定の姿勢であるか否かを判別する)。そして、一致する物理量データ13aが記憶されていると判別される度に当該物理量データ13aが示す音高を取得することによって音高の時系列を特定する。
【0035】
以上のように、音色および音高の時系列が特定されると、制御部14は、音楽データ作成部14cの処理により、当該音色および音高の時系列によって音楽を演奏するための音楽データを作成して記憶媒体13に記憶させる(図1に示す音楽データ13b)。また、サウンドシステム12に対して音楽データ13bを出力する。サウンドシステム12は、図示しないスピーカーおよび制御部を備え、音楽作成装置10から出力される音楽データを作成すると、制御部が当該音楽データに基づく処理を行い、当該音楽データに対応する音をスピーカーから発音させる。
【0036】
以上の構成によれば、利用者は単に立体21を叩き、また、放り投げるのみで音楽を作成することができるため、極めて簡単に音楽を創作することが可能である。さらに、作成される音楽の時系列は立体21の形状に関連する時系列ではあるものの、放り投げるときの力加減や立体21の向き等に依存する。従って、利用者の意志や音楽性に左右されずに時系列を特定することが可能である。このため、音楽の時系列を作成する上での娯楽性が高く、本実施形態をゲームなどの娯楽に応用することが可能である。なお、立体21の各面には、上述の音色や音高を示す情報が記入されていることが好ましい。また、本実施形態においては、音色および音高の時系列を立体21に作用する物理量に基づいて決定しているが、他の音楽要素を決定する必要がある場合にはデフォルトに従って決定しても良いし、利用者の指示に基づいて決定しても良いし、立体21に作用する物理量に基づいて決定しても良い。
【0037】
(2)音楽作成処理:
次に、上述の構成における音楽作成処理を詳細に説明する。図2は、本実施形態にかかる音楽作成処理を示すフローチャートである。この処理は利用者の指示に従って開始され、まず、制御部14は、物理量検出部14aの処理により第2物理量の検出を行う(ステップS100)。すなわち、利用者は立体21の所望の面を鉛直上方に向けて持ち上げた状態で当該立体の所望の面を叩くことによって音色を指定するため、制御部14は、所定期間に立体21に作用する加速度成分a,a,aを検出することによって当該叩く動作に対応した加速度成分を取得する。
【0038】
次に、制御部14は、音楽要素特定部14bの処理により、当該検出した加速度成分a,a,aの特徴が、記憶媒体13に記憶された物理量データ13aが示す加速度成分の特徴と一致するか否かを判別し(ステップS110)、当該ステップS110にて物理量データ13aが示す加速度成分の特徴と一致すると判別されるまでステップS100以降の処理を繰り返す。また、ステップS110にて物理量データ13aが示す加速度成分の特徴とステップS100にて検出した第2物理量とが一致すると判別されたとき(S110のY)、制御部14は、音楽要素特定部14bの処理により、当該物理量データ13aを参照して当該物理量データ13aに対応づけられた音色を特定する(ステップS120)。
【0039】
なお、叩く動作に対応した加速度成分を解析するにあたり、立体21に作用する加速度から重力加速度成分を減じた状態で物理量データ13aを定義しても良い。この構成においては、立体21に作用する加速度から重力加速度成分を減じた状態の加速度成分と物理量データ13aとを比較することによって、任意の面が鉛直上方に向いているか否かに限らず、任意の面を叩く動作を検出することができる。そこで、当該叩かれた面に対応する音色で音楽を作成する構成等にすることが可能である。
【0040】
次に、制御部14は、物理量検出部14aの処理により第1物理量の検出を行う(ステップS130)。すなわち、立体21が放り投げられた後に当該立体21に作用する加速度成分a,a,aを検出する。次に、制御部14は、音楽要素特定部14bの処理により、当該検出した加速度成分a,a,aから所定時間T内で検出された加速度成分を抽出し、当該加速度成分が記憶媒体13に記憶された物理量データ13aが示す加速度成分の特徴と一致するか否かを判別する(ステップS140)。
【0041】
すなわち、制御部14は、物理量データ13aとして記録された加速度成分を検索することによって、立体21を構成する任意の面が鉛直上方を向いているときに現れる加速度の特徴が検出されたか否かを判別する。また、所定時間T内に当該加速度の特徴が検出されたか否かを判別する処理を繰り返すことによって、立体21が放り投げられて台等の上を転がる過程において鉛直上方を向いた面の履歴(時系列)を特定する。
【0042】
ステップS140にて、所定時間T内で検出された加速度成分と物理量データ13aが示す加速度成分の特徴とが一致すると判別されたとき(S140のY)、制御部14は、音楽要素特定部14bの処理により、当該一致する物理量データ13aに対応づけられた音高を特定する(ステップS150)。そして、制御部14は、音楽データ作成部14cの処理により、ステップS120にて特定された音色においてステップS150にて特定された音高の音を発音させるための音楽データを作成する(ステップS160)。
【0043】
ステップS140にて、所定時間T内で検出された加速度成分と物理量データ13aが示す加速度成分の特徴とが一致すると判別されないとき(S140のN)およびS160の後、制御部14は、物理量検出部14aの処理により、立体21が静止しているか否かを判別する(ステップS170)。すなわち、所定期間以上の間、加速度成分a,a,aから算出される加速度の絶対値が略一定の値(1G)で維持されているか否かに基づいて静止しているか否かを判別する。
【0044】
そして、ステップS170にて、立体21が静止していると判別されるまでステップS130以降の処理を繰り返す。一方、ステップS170にて、立体が静止していると判別されたとき(S170のY)には、作成した音楽データをサウンドシステム12に対して出力し(ステップS180)、作成した音楽を演奏させる。以上の処理により、所望の音色において、立体21の形状に起因した特徴的な音高の時系列となっている音楽を作曲することができる。すなわち、第1物理量は、正12面体である立体21の運動に対応した物理量であり、当該物理量は立体21の形状や重量等を反映した特徴的な時系列となる。従って、作成される音楽は、立体21の形状や重量等に応じた独特の時系列の音高で構成される独特の音楽となる。
【0045】
(3)他の実施形態:
本発明においては、立体に作用する物理量の時系列に基づいて音楽を作成することができれば良く、この限りにおいて他にも種々の実施形態を採用可能である。例えば、検出対象となる物理量は加速度に限定されない。すなわち、音楽要素の時系列を特定するための物理量は時間変化し得る物理量であればよい。例えば、立体21の位置や速度、加速度など、立体21を扱うときの動作を利用者自らが変化させることにより、利用者の意図によって時間的に変化させることが可能な物理量であることが好ましい。
【0046】
むろん、物理量の解析手法としては種々の手法を採用可能であり、例えば、加速度等の物理量の時間軸上での変化を特定し、そのピークの鋭さやピークの大きさ、ピークの連続度合い等と音楽要素とを対応づけても良い。また、特定の速度や加速度が立体21に作用している時間やその変化の様子によって音楽要素の時系列を特定しても良い。例えば、立体21を上方に放り投げて再び受け取るまでの時間やその回転の様子に基づいて音楽要素の時系列を特定する構成等を採用可能である。
【0047】
さらに、立体21は、物理量を作用させることが可能な特定の形状を持った物体であれば良く形状は正12面体に限定されず、正12面体以外の多面体、多角柱、球、円柱、錐体や各種の回転体(例えば、楕円を回転させることによって構成される立体)によって構成することができる。すなわち、立体の形状の特徴や対称性が物理量の時系列の現れ方に影響を与える立体を利用して音楽要素の時系列を特定することができればよい。
【0048】
多面体は、正多面体や半正多面体(外面が2種類以上の正多面体で構成される多面体)であってもよいし、非正多面体や非半正多面体であってもよい。例えば、正多面体においては、各面が鉛直上方を向く確率が同等であるため、各面に音高を割り当てる構成において、各音高の出現頻度を均等にすることが可能である。半正多面体においては、多角形の面積や形状に応じて各面が鉛直上方を向く確率が異なってくるため、例えば、各面に音高を割り当てる構成において、各音高の出現頻度を調整することが可能である。音高の出現確率など音楽要素が時系列的に出現する確率を変動させたい場合には非正多面体や非半正多面体を採用すればよい。
【0049】
多角柱においては、任意の多角形の柱状体を構成することによって、所望の数の選択肢の中から所望の選択肢を選択して容易に時系列を特定する構成とすることが可能である。例えば、7角柱によって7個の音高についての時系列を決定し、また、5角柱によって5個の音高についての時系列を決定する構成等を実現することができる。
【0050】
球や円柱においては、音楽要素の時系列を球や円柱の姿勢等に基づいて決定する構成とすることで、音楽要素を連続的に変化させるときにその時系列を容易に決定することが可能である。また、錐体や各種の回転体によれば、その形状に起因する独特な運動に対応した物理量に基づいて音楽要素の時系列を特定することで、独特な音楽を作成することが可能である。
【0051】
さらに、立体21を複数回放り投げるなどして異なる音楽要素のそれぞれについて時系列を特定しても良いし、立体21を複数個用意してそれぞれの立体21において測定した物理量の時系列に基づいて音楽要素の時系列を特定しても良い。むろん、複数個の立体21を用意するときには、立体21の形状が同じであっても良いし異なっていても良い。
【0052】
さらに、立体21に作用する物理量を検出するためのセンサは加速度センサに限定されず、各種のセンサを採用可能である。例えば、地磁気センサやジャイロセンサ、傾斜センサ等を利用しても良いし、各センサを併用しても良い。また、センサが立体21内に組み込まれる構成に限定されず、例えば、立体21を撮影した画像に基づいて当該立体21に作用する物理量を検出する構成であっても良い。
【0053】
さらに、音楽作成装置を立体21内に構成してもよい。例えば、図1に示す記憶媒体13と制御部14を立体21内に構成し、作成した音楽データを有線通信あるいは無線通信によって外部に出力する構成や、立体21に内蔵するスピーカーから音楽を出力させる構成等を採用可能である。また、音楽作成装置10を他の機器、例えば、携帯電話等の一部の機能として実現する構成としても良い。
【0054】
さらに、上述の実施形態においては、立体21の各面に対応づけられた音高が予め特定されている構成であったが、各面に対応づけられる音楽要素を変えられるように構成してもよい。例えば、利用者の指示に応じて変更できるように構成してもよいし、立体21の各面を叩く動作によって変更できるように構成してもよく、種々の構成を採用可能である。
【0055】
さらに、物理量に基づいて時間変化しない音楽要素あるいは音楽要素の時系列を決定する構成として、他にも種々の構成を採用可能である。例えば、立体21を運動させる前に曲調を決定し、決定された曲調に基づいて立体21の各面に割り当てる音階を変更した後に音高を特定する構成としてもよい。
【0056】
より具体的な例として、立体21を叩く面で主音を決定し、面の叩き方で長調あるいは短調を決定する構成を採用可能である。例えば、立体21の各面が鉛直上方に向いた状態で主音に対応した各面を叩き、立体21を一回叩くことによって長調、二回叩くことによって短調を指定する構成を想定する。この場合、各面を叩いたときに当該立体21に作用する加速度成分a,a,aを示す情報を予め特定して、物理量データ13aとして記憶媒体13に記憶させる。さらに、立体21が任意の姿勢となっている状態で一回叩かれた場合に当該立体21に作用する加速度成分a,a,aを示す情報が予め特定される。また、立体21が任意の姿勢となっている状態で二回叩かれた場合に当該立体21に作用する加速度成分a,a,aを示す情報が予め特定される。そして、各情報が物理量データ13aとして記憶媒体13に記憶される。
【0057】
この構成において、制御部14は、所定期間において立体21に作用する加速度成分a,a,a(第2物理量)を検出し、所定期間に検出した加速度成分a,a,aが、主音特定するための叩き方に対応した加速度成分の特徴と一致し、その後の加速度成分が長調あるいは短調を特定するための叩き方に対応した加速度成分に一致するか否かを判別する。そして、特徴が一致する物理量データ13aが記憶媒体13に記憶されている場合にはその物理量データ13aに対応づけられた主音および曲調で音楽を作成することとする。
【0058】
この構成においても運動する立体21に作用する加速度に基づいて音高を特定することとしているが、上述のように曲調が決定された後には、決定された各曲調での全音階(例えば、長音階や短音階)に相当する音高を発音可能な音高とし、他の音高を発音不可能な音高とする。このため、上述のように、立体21の任意の面が鉛直上方を向いているときに立体21に作用する加速度成分a,a,aの組み合わせと音高とを対応づけたデータが物理量データ13aとして記憶されている状態で、曲調に対応した音高を発音可能な音高として特定する。例えば、立体21を運動させる前に曲調がハ長調と特定された場合、C,D,E,F,G,A,Bの7音を発音可能な音高とし、他の音高を発音不可能な音高とする。
【0059】
立体21を運動させる前には、以上のようにして曲調と発音可能な音高とが特定される。この状態において立体21が放り投げられると、制御部14は、当該立体21に作用する第1物理量の時系列を取得し、取得した加速度成分の特徴に一致する加速度成分が物理量データ13aとして記録されているか否かを判別する。そして、一致する物理量データ13aが記憶されていると判別される度に当該物理量データ13aが示す音高を取得し、当該音高が発音可能な音高である場合にその音高を音楽の時系列として採用する。
【0060】
以上の構成によれば、所望の曲調であるとともに各曲調に対応した音階の音によって構成された音楽を極めて容易に作成することが可能である。なお、以上の構成において、複数個の立体21によって音楽を作成する構成としてもよい。この構成において、立体21を運動させる前に各立体21において同じ曲調を指定すれば、各立体21の運動によって音楽を作成する際に、同じ曲調の音楽を作成することが可能であるとともに、自然に重なり合う音によって構成された音楽を作成することができる。このため、より高度かつ複雑な音楽を作成することが可能である。
【0061】
さらに、立体21の各面に対応する音高を発音可能あるいは発音不可能にする構成は、他にも種々の構成を採用可能である。例えば、発音可能とする音高の数を、立体21を運動させる前における利用者の動作によって特定する構成としてもよい。より具体的には、立体21を叩く回数などにより、12音の音高から西洋音楽の音階に対応した7音音階や各種の民族音楽等で利用される音階に対応した5音音階等を特定する構成を採用してもよい。
【0062】
さらに、立体21の各面に対する音高の割り当てを変更可能に構成してもよい。例えば、各面に対応する音高を、立体21を運動させる前における利用者の動作によって変更する構成としてもよい。例えば、立体21を叩く回数などにより、各面に対応する音高の割り当てを変更する。特に、非正多面体や非半正多面体で立体21を構成する場合、各面の出現確率が不均一になるため、利用者の動作によって立体21の各面に対応した音高の割り当てを変動させる構成とすれば、所望の音高の出現確率を変動させることができて好ましい。
【0063】
さらに、立体21を他の部材で包むことによって立体21に作用する衝撃を緩和する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0064】
10…音楽作成装置、11…無線通信部、12…サウンドシステム、13…記憶媒体、13a…物理量データ、13b…音楽データ、14…制御部、14a…物理量検出部、14b…音楽要素特定部、14c…音楽データ作成部、20…センサユニット、20a…無線通信部、20b…加速度センサ、21…立体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運動する立体に作用する第1物理量を検出する物理量検出手段と、
前記第1物理量の時系列に基づいて音楽要素の時系列を特定する音楽要素特定手段と、
前記特定された音楽要素の時系列を示す音楽データを作成する音楽データ作成手段と、
を備える音楽作成装置。
【請求項2】
前記音楽要素特定手段は、前記第1物理量に基づいて音高の時系列を特定する、
請求項1に記載の音楽作成装置。
【請求項3】
前記物理量検出手段は、前記立体が運動する前あるいは後の所定期間内にて前記立体に作用する第2物理量を検出し、
前記音楽要素特定手段は、前記第2物理量に基づいて時間変化しない音楽要素を特定する、
請求項2に記載の音楽作成装置。
【請求項4】
前記立体は、当該立体の外面に操作子を備え、
前記音楽要素特定手段は、前記操作子に対する操作に基づいて時間変化しない音楽要素を特定する、
請求項1または請求項2のいずれかに記載の音楽作成装置。
【請求項5】
前記音楽要素特定手段は、前記第1物理量に基づいて前記立体の姿勢を特定し、当該立体の姿勢の時系列に基づいて前記音楽要素の時系列を特定する、
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の音楽作成装置。
【請求項6】
前記立体は12面体と7面体と5面体とのいずれかである、
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の音楽作成装置。
【請求項7】
前記音楽データに基づいて演奏を行う演奏手段を備える、
請求項1〜請求項6のいずれかに記載の音楽作成装置。
【請求項8】
運動する立体に作用する第1物理量を検出する物理量検出工程と、
前記第1物理量の時系列に基づいて音楽要素の時系列を特定する音楽要素特定工程と、
前記特定された音楽要素の時系列を示す音楽データを作成する音楽データ作成工程と、
を含む音楽作成方法。
【請求項9】
運動する立体に作用する第1物理量を検出する物理量検出機能と、
前記第1物理量の時系列に基づいて音楽要素の時系列を特定する音楽要素特定機能と、
前記特定された音楽要素の時系列を示す音楽データを作成する音楽データ作成機能と、
をコンピュータに実現させる音楽作成プログラム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−191323(P2010−191323A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−37469(P2009−37469)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【Fターム(参考)】