説明

音楽再生装置

【課題】 利用者による演奏を録音してその録音された演奏録音を好適に再生し得る音楽再生装置を提供する。
【解決手段】 利用者による演奏を録音する録音部60と、その演奏の録音時にその録音部60の入力増幅率Vdを変更する入力増幅率変更手段68と、演奏録音の再生時に前記録音部60の出力増幅率Veを変更する出力増幅率変更手段70とを、含むことから、煩雑な手動の音量調節を行うことなく、録音された演奏録音を録音時と同じ音量で聞くことができる。すなわち、利用者による演奏を録音してその録音された演奏録音を好適に再生し得るカラオケ装置10を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、利用者による演奏を録音してその録音された演奏録音を再生し得る音楽再生装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の演奏曲のうちから選択された所望の演奏曲を出力させる音楽再生装置が知られている。例えば、カラオケボックス等で使用されるカラオケ装置がそれである。斯かるカラオケ装置によれば、予め記憶装置に記憶された複数の演奏曲から選択された所望の演奏曲の音楽情報を出力させると共に、その演奏曲の歌詞情報を含む映像をその出力に同期して画面に表示させることで、所望の歌のカラオケ演奏を楽しむことができる。
【0003】
一般的なカラオケ装置では、シンセサイザ等の音源により生成される演奏音の音量と、マイクロフォン等の音声入力装置から入力される利用者の音声の音量とがそれぞれ個別の音量調節つまみ等により手動で調節される。それらの音量調節を自動的に行う技術が提案されている。例えば、特許文献1に記載されたカラオケ装置がそれである。このカラオケ装置によれば、曲の演奏が終了する毎に演奏音の音量を予め定められた所定値に戻すと共に、マイクロフォンから入力される利用者の音声の出力レベルが所定値を超えた場合に自動的にマイクアンプのゲインを低下させることにより、煩雑な手動の音量調節を行うことなく好適に演奏を楽しむことができる。
【0004】
【特許文献1】特開平5−19777号公報
【0005】
ところで、利用者による演奏を録音してその録音された演奏録音を再生し得るカラオケ装置が知られている。斯かるカラオケ装置では、音源により生成される演奏音と、音声入力装置から入力される利用者の音声とが合成(ミキシング)された演奏がハードディスク等の記憶装置に録音されるように構成されており、所望に応じてその録音された演奏録音の再生が可能とされている。
【0006】
上記カラオケ装置では、通常、録音された演奏録音を再生する際にその演奏録音の音量を調節する演奏録音音量調節部として、音源により生成される演奏音の音量を調節する演奏音音量調節部及び音声入力装置から入力される音声の音量を調節する音声音量調節部の何れか一方が適用される。このため、録音された演奏録音を録音時と同じ音量で聞くためには、その何れかの音量調節部に対応する音量調節つまみを手動操作する必要があり煩雑であるという弊害があった。また、前記従来の技術では、斯かる音量調節を自動的に行うことはできなかった。すなわち、利用者による演奏を録音してその録音された演奏録音を好適に再生し得る音楽再生装置は、未だ提供されていないのが現状である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の事情を背景として為されたものであり、その目的とするところは、利用者による演奏を録音してその録音された演奏録音を好適に再生し得る音楽再生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
斯かる目的を達成するために、本発明の要旨とするところは、複数の演奏曲のうちから選択された所望の演奏曲を出力させると共に、利用者による演奏を録音してその録音された演奏録音を再生し得る音楽再生装置であって、前記演奏を録音する録音部と、前記演奏の録音時にその録音部の入力増幅率を変更する入力増幅率変更手段及び/又は前記演奏録音の再生時に前記録音部の出力増幅率を変更する出力増幅率変更手段とを、含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
このようにすれば、前記演奏を録音する録音部と、その演奏の録音時にその録音部の入力増幅率を変更する入力増幅率変更手段及び/又は前記演奏録音の再生時に前記録音部の出力増幅率を変更する出力増幅率変更手段とを、含むことから、煩雑な手動の音量調節を行うことなく、録音された演奏録音を録音時と同じ音量で聞くことができる。すなわち、利用者による演奏を録音してその録音された演奏録音を好適に再生し得る音楽再生装置を提供することができる。
【0010】
ここで、好適には、音源により生成される前記演奏音の音量を調節する演奏音音量調節部と、音声入力装置から入力される音声の音量を調節する音声音量調節部と、前記演奏音音量調節部により音量が調節された演奏音と音声音量調節部により音量が調節された音声とを合成する合成部とを、備え、前記録音部は、前記合成部により合成された合成音を前記演奏として録音するものである。このようにすれば、利用者による演奏を録音してその録音された演奏録音を好適に再生し得る実用的な態様の音楽再生装置を提供することができるという利点がある。
【0011】
また、好適には、前記演奏録音の再生時において前記録音部から出力される再生信号を前記演奏音音量調節部及び音声音量調節部の何れか一方へ入力させるための切換装置を含み、その演奏音音量調節部及び音声音量調節部の何れか一方は、前記演奏録音の再生時にその演奏録音の音量を調節する演奏録音音量調節部として機能するものである。このようにすれば、前記音楽再生装置の構成を簡単にすることができるという利点がある。
【0012】
また、好適には、前記入力増幅率変更手段は、前記演奏録音音量調節部の音量設定値に応じて前記演奏の入力増幅率を変更するものである。このようにすれば、実用的な態様で前記演奏の入力増幅率を設定でき、前記演奏録音を録音時と同じ音量で聞くことができるという利点がある。
【0013】
また、好適には、前記出力増幅率変更手段は、前記演奏の録音時における前記演奏録音音量調節部の音量設定値に応じてその演奏録音の出力増幅率を変更するものである。このようにすれば、実用的な態様で前記演奏録音の出力増幅率を設定でき、その演奏録音を録音時と同じ音量で聞くことができるという利点がある。
【0014】
また、好適には、前記入力増幅率変更手段及び出力増幅率変更手段は、前記入力増幅率と出力増幅率との積が前記演奏音音量調節部の増幅率の逆数と等しくなるように前記演奏の入力増幅率及び前記演奏録音の出力増幅率を制御するものである。このようにすれば、実用的な態様で前記演奏の入力増幅率及び前記演奏録音の出力増幅率を設定でき、その演奏録音を録音時と同じ音量で聞くことができるという利点がある。
【実施例】
【0015】
以下、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【0016】
図1は、本発明の音楽再生装置の一実施例であるカラオケ装置10の構成を説明するブロック線図である。このカラオケ装置10は、CRT等の映像表示装置12と、ディスクプレーヤ14と、ビデオミキサ16と、アンプミキサ18と、スピーカ20と、音声入力装置であるマイクロフォン22と、操作パネル24と、中央演算処理装置であるCPU26と、ROM28と、RAM30と、記憶装置であるハードディスク32と、モデム34と、CRTコントローラ36と、上記操作パネル24等からの入力信号を処理する入出力インターフェイス38と、音源であるシンセサイザ40と、リモコン44等の入力装置からのリモコン信号を受信するためのリモコン受信部42とを、備えて構成されている。
【0017】
上記CPU26は、上記RAM30の一時記憶機能を利用しつつ上記ROM28に予め記憶された所定のプログラムに基づいて電子情報を処理・制御する所謂コンピュータであり、所定のカラオケ演奏曲が選曲された場合、上記ハードディスク32から上記RAM30に選曲されたカラオケ演奏曲の演奏情報及び歌詞情報等を読み出したり、カラオケ演奏曲の演奏が進行するのに応じてそのRAM30から上記シンセサイザ40へ演奏情報を送信したり、歌詞情報に基づいて歌詞文字映像を生成して上記CRTコントローラ36へ送ったり、選曲時には曲名文字映像を生成して上記CRTコントローラ36へ送ったり、上記ディスクプレーヤ14を制御して所定の背景映像を再生させる等の基本的な制御に加えて、後述する演奏録音・再生制御を実行する。
【0018】
前記操作パネル24は、前記カラオケ装置10の利用者が歌いたいカラオケ演奏曲を選択したり、演奏曲の音程を調整したり、演奏と歌との音量バランスを調整したり、その他、エコー、音量、トーン等の各種調整を行うための操作釦(スイッチ)或いはつまみを備えた入力装置である。また、前記カラオケ装置10には、前記操作パネル24の一部機能を遠隔で実行するための入力装置として機能するリモコン44が備えられており、前記リモコン受信部42は、そのリモコン44から送信されるリモコン信号を受信して前記CPU26へ供給する。
【0019】
前記ディスクプレーヤ14は、利用者が歌詞を参照しながら歌を歌う際に前記映像表示装置12に表示される背景映像を記憶したCDやDVDを再生する背景映像再生装置である。また、前記CRTコントローラ36は、前記CPU26において生成された歌詞文字映像等の文字映像(テロップ)を出力する文字映像出力装置であり、前記ビデオミキサ16は、前記CPU26において生成され且つ前記CRTコントローラ36から出力される文字映像と、前記ディスクプレーヤ14により再生される背景映像とを合成して前記映像表示装置12に表示させる映像合成装置である。
【0020】
前記シンセサイザ40は、前記ハードディスク32から読み出されて送られて来るカラオケ演奏曲の演奏情報に基づいて楽器の演奏信号等の音楽信号を生成する音源である。この演奏情報は、例えば、MIDI(Musical Instrument Digital Interface)形式で圧縮されたMIDIデータであり、そのMIDIデータに応じて前記シンセサイザ40により生成された音楽信号は、アナログ信号に変換されて前記アンプミキサ18へ送られる。そのアンプミキサ18では、送られてきた音楽信号と前記マイクロフォン22を介して入力される利用者の歌声とがミキシングされ、それらの信号が電気的に増幅されて前記スピーカ20から出力される。
【0021】
前記ハードディスク32には、選曲番号により識別される複数のカラオケ演奏曲それぞれのタイトル情報、演奏情報、及び歌詞情報等を記憶するカラオケデータベースが設けられている。前記モデム34は、前記カラオケ装置10を公衆電話回線、有線放送用ケーブル、又は光ファイバ等による通信回線46に接続するための装置である。カラオケボックス等の店舗にそれぞれ備えられた複数のカラオケ装置10は、上記通信回線46を介して図示しないカラオケサービス提供会社のホストサーバに接続されており、それら複数のカラオケ装置10によって常に新しい曲が演奏可能とされるように、随時新曲のカラオケ情報等が上記通信回線46を介してダウンロードされ、前記ハードディスク32のカラオケデータベース等に記憶されるようになっている。すなわち、前記カラオケ装置10は、電気通信回線を通じて各種情報の送受信を実行し得る通信カラオケ装置である。
【0022】
図2は、前記アンプミキサ18の構成を詳しく説明する図である。この図2に示すように、前記アンプミキサ18は、音源である前記シンセサイザ40により生成される前記演奏音の音量を調節する演奏音音量調節部48と、音声入力装置である前記マイクロフォン22から入力される音声を増幅するマイクアンプ50と、そのマイクアンプ50により増幅された音声の音量を調節する音声音量調節部52と、上記演奏音音量調節部48により音量が調節された演奏音と音声音量調節部52により音量が調節された音声とを合成する合成部54と、その合成部54により合成された合成音の音量を調節する合成音音量調節部56と、その合成音音量調節部56により音量が調節された合成音を増幅して前記スピーカ20から出力するパワーアンプ58と、を備えて構成されている。上記演奏音音量調節部48、音声音量調節部50、及び合成音音量調節部56それぞれの音量設定値は、例えば、前記操作パネル24に設けられた図示しないミュージックボリュームつまみ、マイクボリュームつまみ、及びメインボリュームつまみにより調節可能とされている。
【0023】
以上のように構成されたアンプミキサ18では、前記シンセサイザ40により生成される前記演奏音が上記演奏音音量調節部48においてミュージックボリュームに対応する音量となるように制御された後、前記合成部54に供給される。また、前記マイクロフォン22から入力される音声が上記マイクアンプ50により一般的な信号レベルに変換され、上記音声音量調節部52においてマイクボリュームに対応する音量となるように制御された後、前記合成部54に供給される。そして、上記演奏音音量調節部48から供給される演奏音と音声音量調節部52から供給される音声とが上記合成部54により合成され、上記合成音音量調節部56においてメインボリュームに対応する音量となるように制御された後、上記パワーアンプ58を介して前記スピーカ20から出力される。ここで、上記マイクアンプ50からの出力レベルをA、前記シンセサイザ40からの出力レベルをB、上記音声音量調節部52の増幅率をVa、上記演奏音音量調節部48の増幅率をVb、上記合成音音量調節部56の増幅率をVc、上記パワーアンプ58の増幅率をPAとすると、前記スピーカ20からの出力レベルは、次の(1)式のように表される。このように、所定の曲の演奏音とそれに合わせて入力される音声とが合成されて出力されることで、利用者が所望の歌のカラオケ演奏を楽しむことができる。
【0024】
(A×Va+B×Vb)×Vc×PA ・・・(1)
【0025】
図3は、利用者による演奏を録音すると共にその録音された演奏録音を再生するための従来の構成を説明する図である。なお、この図3において、前述した図2と共通する部分に関しては、同一の符号を付してその説明を省略する。この図3に示すように、前記ハードディスク32には、前記合成部54により合成された前記演奏音及び音声の合成音すなわち利用者による演奏を録音するための録音部60が形成されている。また、前記合成部54により合成された合成音をその録音部60に入力するための入力インターフェイス62と、その録音部60に記憶された演奏録音を前記演奏音音量調節部48に出力するための出力インターフェイス64とが設けられている。また、前記アンプミキサ18は、前記シンセサイザ40により生成される前記演奏音が前記演奏音音量調節部48に供給される第1の回路と、上記録音部60から出力される上記演奏録音が前記演奏音音量調節部48に供給される第2の回路とを選択的に成立させる切換装置であるスイッチ66を備えて構成されている。すなわち、前記演奏音音量調節部48は、上記演奏録音の再生時にその演奏録音の音量を調節する演奏録音音量調節部として機能するものである。前記演奏音音量調節部48により前記演奏録音の音量を調節する構成では、その演奏録音に前記マイクロフォン22から入力される音声を合成することができ、例えば、曲の演奏音に合わせてハーモニーパートを歌った演奏を録音しておいて再生時にその演奏録音に合わせてメインパートを歌うカラオケ演奏や、逆に曲の演奏音に合わせてメインパートを歌った演奏を録音しておいて再生時にその演奏録音に合わせてハーモニーパートを歌うカラオケ演奏等が可能とされる。また、再生される演奏録音に合わせて前記マイクロフォン22から音声を入力し、それを再度録音する態様も考えられる。
【0026】
前記シンセサイザ40により生成される前記演奏音が前記演奏音音量調節部48に供給される第1の回路が成立させられている状態を考えると、例えば、前述した(1)式において、状態(イ):Va=Vb=Vc=0.5である場合には、前記スピーカ20からの出力レベルは、(0.5A+0.5B)×0.5PA=0.25(A+B)PAとなる。また、状態(ロ):Va=Vb=0.25、Vc=1である場合には、前記スピーカ20からの出力レベルは、(0.25A+0.25B)×PA=0.25(A+B)PAとなる。すなわち、利用者の聴感上は何れも同じ音量として聞こえる。しかし、上記入力インターフェイス62へ入力される音声レベルをCとすると、状態(イ)である場合には、C=0.5(A+B)となる一方、状態(ロ)である場合には、C=0.25(A+B)となり、聴感上の音量とは異なる音量で前記録音部60に録音されることになる。また、前記録音部60から出力される上記演奏録音が前記演奏音音量調節部48に供給される第2の回路が成立させられている状態を考えると、前記スピーカ20からの出力レベルは、前記出力インターフェイス64における出力レベルをDとして、次の(2)式のように表される。ここで、前記マイクロフォン22から音声の入力がない(利用者が歌わない)場合では、A=0であることから、前記スピーカ20からの出力レベルは、D×Vb×Vc×PAとなる。そして、状態(イ)の演奏録音を録音時と同じ条件(音量設定)のまま再生すると、D×0.25×0.25×PA=0.5(A+B)×0.25×0.25×PA=0.125PAとなり、録音時の半分の出力レベルとなってしまう。また、状態(ロ)の演奏録音を録音時と同じ条件(音量設定)のまま再生すると、D×0.25×1×PA=0.25(A+B)×0.25×1×PA=0.0675PAとなり、更に小さな出力レベルになってしまう。すなわち、図3に示すような従来の構成では、演奏録音を録音時と同じ音量で出力させるためには、その演奏録音の再生に際して前記演奏音音量調節部48又は合成音音量調節部56の音量設定値を変更する必要があった。
【0027】
(A×Va+D×Vb)×Vc×PA ・・・(2)
【0028】
図4は、利用者による演奏を録音すると共にその録音された演奏録音を再生するために本実施例のカラオケ装置10に備えられた構成を説明する図である。なお、この図4において、前述した図2、図3と共通する部分に関しては、同一の符号を付してその説明を省略する。この図4に示すように、本実施例のカラオケ装置10は、前記CPU26の制御機能として、前記演奏の録音時に前記録音部60の入力増幅率を変更する入力増幅率変更手段68と、前記演奏録音の再生時に前記録音部60の出力増幅率を変更する出力増幅率変更手段70とを、備えて構成されている。ここで、上記入力増幅率変更手段68における入力増幅率をVd、上記出力増幅率変更手段70における出力増幅率をVeとすると、前記録音部60への入力レベルC’は、次の(3)式のように表される。また、前記出力インターフェイス64における出力レベルD’は、次の(4)式のように表される。そして、上記入力増幅率変更手段68及び出力増幅率変更手段70によりレベル制御された演奏録音の前記スピーカ20からの出力レベルは、次の(5)式のように表される。
【0029】
(A×Va+D×Vb)×Vd ・・・(3)
【0030】
D×Ve=C’×Ve
=(A×Va+D×Vb)×Vd×Ve ・・・(4)
【0031】
D’×Vb×Vc×PA
=(A×Va+B×Vb)×Vd×Ve×Vb×Vc×PA ・・・(5)
【0032】
前記入力増幅率変更手段68及び出力増幅率変更手段70は、前記演奏録音の再生出力レベルがが録音時の出力レベルと等しくなるように前記入力増幅率Vd及び出力増幅率Veを制御する。好適には、前記演奏の録音時における前記演奏録音音量調節部48の音量設定値に応じてそれら入力増幅率Vd及び出力増幅率Veを制御する。更に好適には、次の(6)式に表されるように、前記入力増幅率Vdと出力増幅率Veとの積が前記演奏録音音量調節部48の増幅率Vbの逆数と等しくなるようにそれら入力増幅率Vd及び出力増幅率Veを制御する。このようにすれば、前記スピーカ20からの出力レベルは、次の(7)式のように表される。これはすなわち録音時の出力レベルと同一のものとなり、前記演奏録音を録音時と同じ音量で出力させることができる。ここで、(6)式の計算で用いられる増幅率Vbは、前記演奏の録音に際しての値を用いる必要があり、好適には、前記演奏の録音時にその録音と共に前記録音部60に記憶される。例えば、次の(8)式から前記演奏音音量調節部48の増幅率Vb及び入力増幅率Vdに応じて算出される出力増幅率Veの理想値がVe用増幅率記録として時間情報と共に前記録音部60に記憶される。また、好適には、演奏途中における音量設定値の変更も時間情報と共に前記録音部60に記憶されることで、途中のボリューム変更にも対応することができる。
【0033】
Vd×Ve=1/Vb ・・・(6)
【0034】
(A×Va+B×Vb)×(1/Vb)×Vb×Vc×PA
=(A×Va+B×Vb)×Vc×PA ・・・(7)
【0035】
Ve=1(Vb×Vd) ・・・(8)
【0036】
前述の制御では、録音時にVd=1/Vbとしてレベル制御を行い、再生時には常にVe=1とするのが最も簡単であるが、VdはVbの減少に伴い増加させられるため、Vdが所定値以上となる場合すなわちVbが所定値以下である場合には、歪みが発生して正常な演奏が録音できなくなる可能性がある。例えば、図5に示す時間範囲t2乃至t3のように、Vb=0.3すなわち1/Vb≒3.33となる場合には、Vd=1/Vbとすると、図6に示す歪限界Vd=2.50よりも大きくなる。また、録音時にVdを所定値としてレベル制御を行い、再生時にVbの逆数を用いてVeを制御することも考えられるが、Vdが所定値未満となる場合すなわちVbが所定値より大きい場合には、ノイズも増幅されて信号雑音比S/Nが悪化する可能性がある。例えば、図5に示す時間範囲0乃至t1のように、Vb=0.8すなわち1/Vb=1.25となる場合には、Vd=1/Vbとすると、図6に示すS/N限界Vd=1.50よりも小さくなる。前記入力増幅率変更手段68及び出力増幅率変更手段70は、好適には、Vbが所定の数値範囲内である場合には、Vd=1/Vbとしてレベル制御を行うと共に再生時にはVe=1とするが、Vbが斯かる数値範囲外である場合には、Vdを予め定められた値とするレベル制御を行うと共に再生時にはVbの逆数を用いてVeを制御する。例えば、前記演奏の録音時に前記演奏音音量調節部48の増幅率Vb及びそれに応じて設定された入力増幅率Vdに基づいて出力増幅率Veの理想値が算出され、図7に示すようなVe用増幅率記録としてその演奏と共に前記録音部60に記憶される。そして、前記演奏録音の再生時には、斯かるVe用増幅率記録に応じて図8に示すように出力増幅率Veが制御される。
【0037】
図9は、前記カラオケ装置10のCPU26による演奏録音・再生制御の要部を説明するフローチャートであり、所定の周期で繰り返し実行されるものである。
【0038】
先ず、ステップ(以下、ステップを省略する)S1において、所定の演奏録音操作が行われたか否かが判断される。このS1の判断が否定される場合には、S4以下の処理が実行されるが、S1の判断が肯定される場合には、前記入力増幅率変更手段68の動作に対応するS2において、ミュージックボリュームすなわち前記演奏録音音量調節部48の音量設定値に応じて前記演奏の入力増幅率Vdが設定される。次に、S3において、前記シンセサイザ40により生成される演奏音及び前記マイクロフォン22から入力される音声が前記合成部54により合成され、前記入力増幅率変更手段68によりレベル制御されて前記録音部60に録音される。また、Ve用増幅率記録がその演奏と共に前記録音部60に記憶される。次に、S4において、所定の演奏録音再生操作が行われたか否かが判断される。このS4の判断が否定される場合には、それをもって本ルーチンが終了させられるが、S4の判断が肯定される場合には、S5において、前記スイッチ66が切り換えられて前記録音部60から出力される前記演奏録音が前記演奏音音量調節部48に供給される第2の回路が成立させられる。次に、前記出力増幅率変更手段70の動作に対応するS6において、前記録音部60に記憶されたVe用増幅率記録が読み出されて前記演奏録音の出力増幅率Veが設定される。次に、S7において、前記録音部60に記憶された演奏録音が読み出され、前記出力増幅率変更手段70によりレベル制御されて出力された後、本ルーチンが終了させられる。
【0039】
このように、本実施例によれば、前記演奏を録音する録音部60と、その演奏の録音時にその録音部60の入力増幅率Vdを変更する入力増幅率変更手段68(S2)と、前記演奏録音の再生時に前記録音部60の出力増幅率Veを変更する出力増幅率変更手段70(S6)とを、含むことから、煩雑な手動の音量調節を行うことなく、録音された演奏録音を録音時と同じ音量で聞くことができる。すなわち、利用者による演奏を録音してその録音された演奏録音を好適に再生し得るカラオケ装置10を提供することができる。
【0040】
また、音源であるシンセサイザ40により生成される前記演奏音の音量を調節する演奏音音量調節部48と、音声入力装置であるマイクロフォン22から入力される音声の音量を調節する音声音量調節部52と、前記演奏音音量調節部48により音量が調節された演奏音と音声音量調節部52により音量が調節された音声とを合成する合成部54とを、備え、前記録音部60は、前記合成部54により合成された合成音を前記演奏として録音するものであるため、利用者による演奏を録音してその録音された演奏録音を好適に再生し得る実用的な態様のカラオケ装置10を提供することができるという利点がある。
【0041】
また、前記演奏録音の再生時において前記録音部60から出力される再生信号を前記演奏音音量調節部48へ入力させるための回路を成立させる切換装置であるスイッチ66を含み、その演奏音音量調節部48は、前記演奏録音の再生時にその演奏録音の音量を調節する演奏録音音量調節部として機能するものであるため、前記カラオケ装置10の構成を簡単にすることができるという利点がある。
【0042】
また、前記入力増幅率変更手段68は、前記演奏録音音量調節部48の音量設定値に対応する増幅率Vbに応じて前記演奏の入力増幅率Vdを変更するものであるため、実用的な態様で前記演奏の入力増幅率Vdを設定でき、前記演奏録音を録音時と同じ音量で聞くことができるという利点がある。
【0043】
また、前記出力増幅率変更手段70は、前記演奏の録音時における前記演奏録音音量調節部48の音量設定値に対応する増幅率Vbに応じてその演奏録音の出力増幅率Veを変更するものであるため、実用的な態様で前記演奏録音の出力増幅率Veを設定でき、その演奏録音を録音時と同じ音量で聞くことができるという利点がある。
【0044】
また、前記入力増幅率変更手段68及び出力増幅率変更手段70は、前記入力増幅率Vdと出力増幅率Veとの積が前記演奏音音量調節部48の増幅率Vbの逆数と等しくなるように前記演奏の入力増幅率Vd及び前記演奏録音の出力増幅率Veを制御するものであるため、実用的な態様で前記演奏の入力増幅率Vd及び前記演奏録音の出力増幅率Veを設定でき、その演奏録音を録音時と同じ音量で聞くことができるという利点がある。
【0045】
以上、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、更に別の態様においても実施される。
【0046】
例えば、前述の実施例において、前記演奏音音量調節部48、音声音量調節部52、合成部54、合成音音量調節部56、及びスイッチ66等は、何れも前記アンプミキサ18に含まれる構成であったが、これらはそれぞれ個別の装置として備えられるものであっても構わない。
【0047】
また、前述の実施例において、前記録音部60は、カラオケデータベースを含むハードディスク32に形成されたものであったが、斯かる録音部60として専用のハードディスクが設けられたものであってもよい。また、前記RAM30やフラッシュROM等の記憶装置が用いられても構わない。更には、前記カラオケ装置10に内蔵された装置ではなく、外付けの記憶装置が着脱可能に設けられる態様も考えられる。
【0048】
また、前述の実施例では、前記入力増幅率変更手段68及び出力増幅率変更手段70による制御に関して、Vbが所定の数値範囲内である場合には、Vd=1/Vbとしてレベル制御を行うと共に再生時にはVeを1とするが、Vbが斯かる数値範囲外である場合には、Vdを予め定められた値とするレベル制御を行うと共に再生時にはVbの逆数を用いてVeを制御する態様を説明したが、前記出力増幅率Veを所定値2とすることで、前記入力増幅率Vdを1/Vb/2として規定値に収める制御を行ってもよい。
【0049】
また、前述の実施例では、前記演奏音音量調節部48が前記演奏録音の再生時にその演奏録音の音量を調節する演奏録音音量調節部として機能するものであったが、前記音声音量調節部52が斯かる演奏録音音量調節部として機能する態様も考えられる。
【0050】
また、前述の実施例では特に言及していないが、前記録音部60に録音された演奏録音は、所定時間後に自動的に削除されるものであってもよいし、所定の操作が行われるまで記憶され続けるものであっても構わない。例えば、斯かる演奏録音が演奏パートの練習等に用いられることが想定される場合には、利用者が入れ替わる毎に前記録音部60の内容が初期化されることが好ましい。また、前記演奏録音がオーディション等に用いられる場合には、所定期間記憶され続けることが好ましく、更には、前記通信回線46を介して図示しないホストサーバ等へ送信される態様も考えられる。
【0051】
また、前述の実施例では特に言及していないが、前記演奏音音量調節部48、音声音量調節部52、合成部54、合成音音量調節部56、及びスイッチ66は、図4等において理解を容易にするためにアナログ記号で表されていたが、好適には専らディジタル処理により前記制御を行うものであり、機械的な構成であると機能的な構成であるとを問わない。また、前記入力増幅率変更手段68による前記演奏の入力増幅率Vdのレベル制御及び出力増幅率変更手段70による前記演奏録音の出力増幅率Veのレベル制御は、ディジタル処理による制御であるとアナログ処理による制御であるとを問わない。
【0052】
その他、一々例示はしないが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が加えられて実施されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の音楽再生装置の一実施例であるカラオケ装置の構成を説明するブロック線図である。
【図2】図1のカラオケ装置におけるアンプミキサの構成を詳しく説明する図である。
【図3】利用者による演奏を録音すると共にその録音された演奏録音を再生するための従来の構成を説明する図である。
【図4】利用者による演奏を録音すると共にその録音された演奏録音を再生するために図1のカラオケ装置に備えられた構成を説明する図である。
【図5】図4の演奏音音量調節部48における演奏音の増幅率の時間変化を例示する図である。
【図6】図5の演奏音の増幅率の時間変化に応じて設定される入力増幅率変更手段における入力増幅率の時間変化を例示する図である。
【図7】図5の演奏音の増幅率の時間変化及び図6の入力増幅率の時間変化に応じて算出される出力増幅率の理想値である増幅率記録を例示する図である。
【図8】図5の演奏音の増幅率の時間変化及び図6の入力増幅率の時間変化に応じて設定される出力増幅率の時間変化を例示する図である。
【図9】図1のカラオケ装置のCPUによる演奏録音・再生制御の要部を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0054】
10:カラオケ装置(音楽再生装置)
22:マイクロフォン(音声入力装置)
40:シンセサイザ(音源)
48:演奏音音量調節部(演奏録音音量調節部)
52:音声音量調節部
54:合成部
60:録音部
66:スイッチ(切換装置)
68:入力増幅率変更手段
70:出力増幅率変更手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の演奏曲のうちから選択された所望の演奏曲を出力させると共に、利用者による演奏を録音してその録音された演奏録音を再生し得る音楽再生装置であって、
前記演奏を録音する録音部と、
該演奏の録音時に該録音部の入力増幅率を変更する入力増幅率変更手段及び/又は前記演奏録音の再生時に前記録音部の出力増幅率を変更する出力増幅率変更手段と
を、含むことを特徴とする音楽再生装置。
【請求項2】
音源により生成される前記演奏音の音量を調節する演奏音音量調節部と、
音声入力装置から入力される音声の音量を調節する音声音量調節部と、
前記演奏音音量調節部により音量が調節された演奏音と音声音量調節部により音量が調節された音声とを合成する合成部と
を、備え、
前記録音部は、前記合成部により合成された合成音を前記演奏として録音するものである請求項1の音楽再生装置。
【請求項3】
前記演奏録音の再生時において前記録音部から出力される再生信号を前記演奏音音量調節部及び音声音量調節部の何れか一方へ入力させるための切換装置を含み、該演奏音音量調節部及び音声音量調節部の何れか一方は、前記演奏録音の再生時に該演奏録音の音量を調節する演奏録音音量調節部として機能するものである請求項2の音楽再生装置。
【請求項4】
前記入力増幅率変更手段は、前記演奏録音音量調節部の音量設定値に応じて前記演奏の入力増幅率を変更するものである請求項3の音楽再生装置。
【請求項5】
前記出力増幅率変更手段は、前記演奏の録音時における前記演奏録音音量調節部の音量設定値に応じて該演奏録音の出力増幅率を変更するものである請求項3又は4の音楽再生装置。
【請求項6】
前記入力増幅率変更手段及び出力増幅率変更手段は、前記入力増幅率と出力増幅率との積が前記演奏音音量調節部の増幅率の逆数と等しくなるように前記演奏の入力増幅率及び前記演奏録音の出力増幅率を制御するものである請求項5の音楽再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−184684(P2006−184684A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−379259(P2004−379259)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(396004833)株式会社エクシング (394)
【Fターム(参考)】