説明

音波によるアロマ成分配合割合可変装置

【課題】従来の芳香器では不可能であった、音波とアロマ成分配合の変化方法を提案する。
【解決手段】スピーカー4を用いて発生させた音波により、水蒸気を満たした円筒管状容器3内に定常波を発生させると、円筒管状容器3中央の定常波の腹の部分では圧力が大きく、両端では圧力が小さくなるために、貫通穴5から噴霧される水蒸気の噴霧高さは定常波の形状に依存し、山形を描く。各貫通穴5に、それぞれ異なるアロマ成分をアロマ成分貯蔵部6に配置することで、各貫通穴5の噴霧圧力が異なるために各アロマ成分の拡散量が変わるため、アロマ成分の配合割合が音波によって変化することが実現される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音波の周波数変化及び強度に同期してアロマ成分の配合割合及び噴霧強度を適宜に変化させることができる音波によるアロマ成分配合割合可変装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
芳香器は、アロマオイルなどにより水蒸気に香りを付随させるための装置で、噴霧される水蒸気の形状を工夫したものなどがある。例えば下記特許文献1には、アロマオイルの添加された水の充填したタンクと、該アロマオイルの添加された水を気化して霧状にするとともに噴霧する気化噴霧機能の設けられた芳香器本体と、該アロマオイルの添加された水の蒸気吹き出し口の設けられた本体カバーの構成を備えた家庭用電気式芳香器及び家庭用電気式芳香システムの発明が開示されている。
【0003】
また、下記特許文献2には、生活の中で使用する化学物質(香料)を高速に調合し、空気に含有させ利用者に嗅覚刺激又は触覚刺激を与えるように気体を放出する、表示装置と気体放出装置を一体とする構成を備えた香り発生装置及び嗅覚刺激装置の発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−088851号公報
【特許文献2】特開2004−159875号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】George F. Spagna, Jr. 著 「Rubens flame tube demonstration: A closer look at the flames」 American Journal of Physics 1983年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の発明は、一般的な芳香器に見られる芳香機能に加え、超音波振動板55を用いた気化噴霧機構と、ライト機構59による同期したライト機能により、アロマテラピー効果を格段に向上することを目的としている。この機能により、新たなリラクゼヒション機能を有する家庭用電気式芳香器及び家庭用電気式芳香システムを提供する。
【0007】
しかしながら、上記特許文献1の家庭用電気式芳香器及び家庭用電気式芳香システムの発明では、タンク54において水と混ぜ合わせるアロマ成分は同時に複数用いることができず、超音波振動板55の噴霧強度はあらかじめ設定されたものであり適宜変化させることができない。また、噴霧機構とライト機能の同期やライトの点灯パターンはあらかじめプログラムしておく、又は使用者が事前にスイッチ56などを用いて選択する必要があるという問題がある。
【0008】
特許文献2の発明は、生活の中で使用する化学物質(香料)を空気に含有させ、固まりにして利用者に噴出する。この際、香りを高速に切り替えることができるため、映像表示装置と気体放出装置を一体的に構成することで、映像に香りを付加されたような効果を提供する。また、触覚刺激を付与することで情報を多角的に利用者に伝えることができる。
【0009】
しかしながら、特許文献2の気体放出装置は気体放出の機構、香料の混合方法が複雑で精巧に作られており、機構の理解やメンテナンスが難しい。また、映像に同期する香料の種類はあらかじめプログラムされたものを実行するのみである。
【0010】
このように、従来の芳香器は様々な効果を付加するに比例しシステムが複雑化し、メンテナンスが困難になるという問題がある。また、付加される効果はあらかじめ決められたパターンとなっており、繰り返し使用するには単調で新鮮味に欠けるという欠点がある。
【0011】
発明者等はこの改善策として、単純な物理現象を利用した単純な構造で、聴覚刺激と嗅覚刺激、さらに視覚刺激を同期させる新しい気体放出とアロマ成分配合割合の同期方法を実現する装置を開発した。この発明により、装置を複雑化することなく複数の効果を芳香器に付加することが可能となり、なおかつ音波に同期し効果が随時変化するため、恒常的に使用しても飽きのこない芳香器を実現することができる。
【0012】
本発明では、音波と水蒸気噴霧形状の同期手段として、非特許文献1記載のRuben‘s tubeの手法を用いている。Ruben‘s tubeは、音の定常波を可視化する物理実験装置であり、古くから用いられている装置である。
【0013】
Ruben‘s tubeは、数メートルの長さで直径数十センチメートルほどの、上面に直径数ミリメートルの貫通穴が、等間隔に直線状に複数開けられた円筒管を本体とする装置である。円筒管内部に可燃性ガスを一定に送り込みながら、円筒管内部にスピーカーで音波を送り込むことで円筒管内部に定常波が発生する。各貫通穴には、円筒管長手方向において、各貫通穴と同じ位置における定常波の振幅に比例した圧力がかかるため、貫通穴から噴き出す可燃性ガスに着火すれば、その火柱の高さは定常波の形を描く。
本発明では、このRuben‘s tubeにおける可燃性ガスと火柱を、水蒸気とアロマ成分に置き換え芳香器に応用することにより、本発明の音波によるアロマ成分配合割合可変装置を実現する。
【0014】
すなわち、本発明は、音波の周波数変化及び強度に同期してアロマ成分の配合割合及び噴霧強度を使用者の手によらず適宜に変化させることができる、音波によるアロマ成分配合割合可変装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の音波によるアロマ成分配合割合可変装置は、その駆動に水蒸気や煙などの霧状物質、音波、アロマ成分などの被拡散物質を必要とする芳香器であって、音波によるアロマ成分配合割合可変装置は、両端が薄い伸縮性の膜により塞がれ、数十センチメートルから数メートルの長さで、直径数センチメートルから数十センチメートルほどの、上面に直径数ミリメートルの貫通穴が数センチメートルの間隔をもって直線状に複数開けられ、一方の管端の伸縮性の膜に水蒸気流入口が設けられた円筒管状容器を本体とする装置である。
【0016】
円筒管状容器の両端を塞ぐ伸縮性の膜は、円筒管状容器内に入力される音波を、円筒管状容器内でよく反響させ定常波を発生しやすくするために用い、ゴム製の膜などを用いることができる。
【0017】
水蒸気を管端の水蒸気流入口から貫通穴の開いた円筒管状の容器に送り、水蒸気流入口の反対側の管端の伸縮性の膜へ、円筒管状容器に向かって円筒管状容器外部から音波が流れるような方向にスピーカーなどの音響発生器を設置し音波を流すと、円筒管状容器内で定常波が発生する。容器上面の各貫通穴には、円筒管長手方向において、各貫通穴と同じ位置における定常波の振幅に比例した圧力がかかるため、各貫通穴からそれぞれの貫通穴にかかっている圧力で水蒸気が噴霧される。
【0018】
このとき各貫通穴近傍に、貫通穴をふさがないようにして、貫通穴ごとに異なるアロマ成分を含ませた高さ数ミリメートルほどのスポンジ、あるいはアロマ成分を保持し貫通穴から噴霧される水蒸気にアロマ成分を触れさせることができる被拡散物質貯蔵部をあらかじめ設置しておくことで、貫通穴から噴霧される水蒸気がアロマ成分に触れ、アロマ成分が拡散される。アロマ成分の拡散量は水蒸気の噴霧圧力に依存するため、アロマ成分の拡散量は貫通穴ごとに変化し、定常波の形状によりアロマ成分配合割合が変化することを最も主要な特徴とする。
【0019】
例えば、音波によるアロマ成分配合割合可変装置本体である円筒管状容器にスピーカー、又は楽器などの発音体を用いて音波を流すと、音波の周波数や音色により、定常波の腹と節の数と位置が決定される。音楽のように、周波数と音色が時間変化する音波を入力した場合、円筒管状容器に開けられた貫通穴ごとに異なるアロマ成分が配置してあるので、拡散されるアロマ成分の種類、拡散量、拡散タイミングは音楽に同期する。拡散された各アロマ成分は混ざり合うことで使用者に香りを知覚させるが、アロマ成分の配合割合は定常波の形ごとに異なるため、ある曲で実現されたアロマ成分の配合割合は、別の曲とは違うものになり、曲ごとにアロマ成分の配合割合が可変となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、アロマ成分の配合割合を使用者の手によらず、音波に同期して変化させることができる。円筒管状容器に開けられた複数の貫通穴から噴霧される水蒸気は定常波と同様な形を描くため、本発明により従来にない、使用者の手によらない蒸気の噴霧パターンとアロマ成分配合割合の変化を実現することができる。また、音波と水蒸気による音の可視化と、アロマ成分配合割合変化によるアロマテラピー効果を音楽と融合させた、従来にない効用の高い浴環境を作ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施形態のアロマ成分配合割合可変装置の側面図。
【図2】実施形態のアロマ成分配合割合可変装置の上面図および管端面図。
【図3】図2のA−A線に沿った実施形態のアロマ成分配合割合可変装置の断面図。
【図4】容器2内で発生する定常波と水蒸気噴霧例を示す図。
【図5】定常波の波長が1/2になった時の水蒸気噴霧例を示す図。
【図6】特許文献1の発明の家庭用電気式芳香器の一実施例を示す概略分解正面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
音波によるアロマ成分配合割合変化という目的を、電子的な制御によらず、音波を装置に入力するだけで、物理現象のみを利用して実現した。
【0023】
本発明の音波によるアロマ成分配合割合可変装置は、上面に貫通穴5が複数開けられた、長さ数十センチメートルから数メートルの長さで、直径数センチから数十センチメートルで、音波がよく反響するプラスチックや金属材料で作られた円筒管状容器3で構成される。円筒管状容器3の両側の管端は伸縮性の膜7で塞がれ、片方の伸縮性の膜7の外面側には音波を生成するためのスピーカー4が設置され、もう片方の伸縮性の膜7には、円筒管状容器3の直径の半分ほどの大きさの水蒸気流入口8が開けられている。水蒸気流入口8には、水蒸気導入管2を通して水蒸気発生部1が接続されている。また、貫通穴5と同心状に、環状のアロマ成分貯蔵部6が円筒管状容器3の内側に設置される。
【0024】
貫通穴5は円筒管状容器3の上面に一直線状に、等間隔に直径数ミリメートル程度の大きさで複数開けられている。アロマ成分貯蔵部6は液状のアロマ成分を貯蔵し、貫通穴5から噴霧される水蒸気に触れさせるため、環状のスポンジなどの多孔質部材で構成される。環状のスポンジは貫通穴5を塞がないよう同心状に配置し、かつ貫通穴5と内径がなるべく同一となるようにし、音波によるアロマ成分配合割合可変装置の使用にあたって十分な時間アロマ成分を拡散し続けられるだけのアロマ成分を貯蔵できるよう、数センチ程度の外径を設定する。また、環状のスポンジで構成されたアロマ貯蔵部6は、外見を重視する場合には円筒管状容器の内側、アロマ成分補給の簡便さを重視する場合には外側に配置することが可能である。
【0025】
アロマ成分貯蔵部6には、それぞれに異なるアロマ成分をあらかじめ貯蔵しておく。アロマ成分貯蔵部6を円筒管状容器3の外側に配置した場合には、アロマ成分貯蔵部6に直接アロマ成分を滴下する。内側に配置した場合には、水蒸気流入口8からスポイト等でアロマ成分貯蔵部6にアロマ成分を滴下、あるいは円筒管状容器3の外側でアロマ成分貯蔵部6にアロマ成分を滴下し、滴下後にアロマ成分貯蔵部6を円筒管状容器3に、水蒸気流入口8から設置してもよい。貫通穴5から水蒸気が噴霧される際、アロマ成分は水蒸気によって円筒管状容器3外部へ拡散される。
【0026】
円筒管状容器3へスピーカー4から入力された音波は円筒管状容器3内で定常波を生じる。各貫通穴5には、円筒管状容器3長手方向において、貫通穴5のそれぞれの位置での定常波の振幅に比例した圧力がかかるため、各貫通穴5から噴霧される水蒸気の量も、円筒管状容器3長手方向において、貫通穴5それぞれの位置での定常波の振幅に依存する。
【0027】
このとき、円筒管状容器3外部へ拡散される、各アロマ成分貯蔵部6に蓄えられたアロマ成分の量は、各アロマ成分貯蔵部6と同心状な位置関係に存在する貫通穴5から噴霧される水蒸気の量に比例するため、各アロマ成分貯蔵部6それぞれに異なるアロマ成分を貯蔵しておくことで、定常波の形により円筒管状容器3から拡散されるアロマ成分の配合割合が変化する。
【0028】
例えば、図4のような形の定常波が円筒管状容器3内で発生したとする。この例では、円筒管状容器3の中央付近が腹、両端が節となっている定常波の例が示されている。この場合、円筒管状容器3内の中央付近の圧力が高くなり、端に行くほど圧力が小さくなっているため、水蒸気の噴霧高さは図4に図示されたような山形を描く。図5は定常波の波長が図4の半分になったときの例である。この例では、円筒管状容器3の中央付近と両端の3箇所が節、両端から円筒管状容器3の長さの4分の1の長さの2箇所が腹、となっている定常波の例が示されている。この例でも、腹の部分の圧力が大きく、節に至るまでに圧力が減少していくため、水蒸気の噴霧高さは図5に図示されたような2つの山形を描く。
【符号の説明】
【0029】
1…水蒸気発生部、2…水蒸気導入管、3…円筒管状容器、4…スピーカー、5…貫通穴、6…アロマ成分貯蔵部、7…伸縮性の膜、8…水蒸気流入口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体と、前記容器本体に形成されたそれぞれ被拡散物質を貯蔵する複数の被拡散物質貯蔵部と、前記複数の被拡散物質貯蔵部に貯蔵された被拡散物質をそれぞれ拡散させるための拡散手段と、を備えた芳香器において、
前記容器本体は、両端が伸縮性の膜で閉鎖された筒状体と、前記筒状体の周囲壁に形成された複数の貫通穴とを備え、
前記複数の被拡散物質貯蔵部は、前記容器本体に形成された前記複数の貫通穴のそれぞれに配置された前記被拡散物質が含浸される多孔質部材からなり、
前記拡散手段は、前記容器本体の少なくとも一方の伸縮性の膜に隣接配置された音響発生器からなり、
前記音響発生器によって発生された音波によって前記筒状の容器本体内に定常波を形成させ、前記定常波によって前記複数の貫通穴のそれぞれに配置された多孔質部材に含浸されている被拡散物質を任意に選択し、任意の量を拡散させることを特徴とする芳香器。
【請求項2】
前記被拡散物質はアロマ成分からなることを特徴とする請求項1に記載の芳香器。
【請求項3】
前記複数の多孔質部材はそれぞれ環状体からなり、前記環状体のそれぞれは、前記筒状体の内部側又は外部側に、前記筒状体の周囲壁に形成された前記複数の貫通穴と同心状に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の芳香器。
【請求項4】
前記多孔質部材はスポンジからなることを特徴とする請求項1又は3に記載の芳香器。
【請求項5】
前記音響発生器は、スピーカー、超音波振動子、圧電素子、楽器の何れかからなることを特徴とする請求項1に記載の芳香器。
【請求項6】
前記伸縮性の膜はゴム膜からなることを特徴とする請求項1に記載の芳香器。
【請求項7】
更に水蒸気発生部と、前記水蒸気発生部で発生された水蒸気を前記容器本体内に導入するための導入管を備えていることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の芳香器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2012−249818(P2012−249818A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−124692(P2011−124692)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(711003004)
【出願人】(511135776)
【Fターム(参考)】