説明

音波を用いた探知方法、非接触音響探知システム、そのシステムで用いるプログラム、およびそのプログラムを記録した記録媒体

【課題】探知対象物の位置を正確に把握することができる探知方法およびその探知方法を行うことができる非接触音響探知システムの提供。
【解決手段】探知対象物を内部に含む被照射体の表面に音波を照射し、その表面の複数の測定個所において振動速度を測定し、得られた振動速度分布図から前記探知対象物の位置を特定する音波を用いた探知方法であって、音波発信源から音波を照射し、前記被照射体の表面を振動させる工程と、前記被照射体の表面のn箇所(n≧2)の測定個所を、各々、P1、P2・・・Px・・Pn(xは1〜nの整数)とし、それらの測定箇所の各々において、照射した音波の周波数がωである場合の前記被照射体の表面の振動速度を測定し、Pxにおける前記振動速度をEx(ω)とする工程と、特定の情報処理を行う工程とを備える探知方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音波を用いた探知方法、非接触音響探知システム、そのシステムで用いるプログラム、およびそのプログラムを記録した記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
音波を照射し、それによる物体の表面の振動等を検出して、その内部の構造を把握する方法等が、従来、いくつか提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、スピーカー等を用いて音を照射してコンクリート構造物にたわみ振動を励起し、レーザ変位計やレーザドップラー振動計を用いてたわみ振動を検出し、たわみ振動の振動数と振幅から、コンクリート構造物の内部の空洞の位置を特定する検査方法が記載されている。また、これに関連する方法および装置が、特許文献2〜6および非特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−69301号公報
【特許文献2】特開2001−264302号公報
【特許文献3】特開2002−168841号公報
【特許文献4】特開2002−228642号公報
【特許文献5】特開平8−248006号公報
【特許文献6】特開平4−83156号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】James M.Sabatier、Ning Xiang、「An Investigation ofAcoustic-to-Seismic Coupling to Detect Buried Antitank Landmines」,IEEE TRANSACTIONS ON GEOSCIENCE AND REMOTE SENSING,VOL.39,NO.6,JUNE2001,p.1146-1154
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来法では、コンクリート構造物の内部の空洞等の探知対象物の位置を正確に把握することができなかった。
本発明は、探知対象物を内部に含む被照射体の表面に音波を照射し、その表面の複数の測定個所において振動速度を測定し、得られた振動速度分布図から前記探知対象物の位置を特定する音波を用いた探知方法であって、探知対象物の位置を正確に把握することができる探知方法を提供することを目的とする。また、その探知方法を行うことができるシステムを提供することを目的とする。また、そのシステムで用いるプログラムを提供することを目的とする。また、そのプログラムを記録した記録媒体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は鋭意検討し、上記課題を解決する方法を見出し、本発明を完成させた。
本発明は次の(i)〜(xiii)である。
(i)探知対象物を内部に含む被照射体の表面に音波を照射し、その表面の複数の測定個所において振動速度を測定し、得られた振動速度分布図から前記探知対象物の位置を特定する音波を用いた探知方法であって、
音波発信源から音波を照射し、前記被照射体の表面を振動させる工程と、
前記被照射体の表面のn箇所(n≧2)の測定個所を、各々、P1、P2・・・Px・・Pn(xは1〜nの整数)とし、それらの測定箇所の各々において、照射した音波の周波数がωである場合の前記被照射体の表面の振動速度を測定し、Pxにおける前記振動速度をEx(ω)とする工程と、
前記照射した音波の周波数がωである場合のP1〜Pnにおける振動速度であるE1(ω)〜En(ω)の平均値をA(ω)とし、Pxにおける振動速度差の規格値であるDx(ω)をDx(ω)=(Ex(ω)−A(ω))/Ex(ω)と定義し、周波数(ω)とDx(ω)との関係をω−Dx(ω)図に示す工程と、
n個作成された前記ω−Dx(ω)図の各々について、同一の周波数区間で複数個に区切り、さらに、各図においてDx(ω)の最大値の30〜70%における任意の値を閾値として設定し、n個の前記ω−Dx(ω)図の少なくとも1つにおいてDx(ω)の値が前記閾値以上である部分を含む周波数区間を抜き出し、抜き出した周波数区間の各々について、初めの周波数(ω)をfy-1、終りの周波数(ω)をfy(yは1〜mの整数である。)とし、次式(1)によってGx(ωy)を求める工程と、
【数1】

周波数(ω)がfy-1〜fyである場合の、測定箇所PxにおけるGx(ωy)を、実際のP1、P2・・・PX・・Pnの位置と相似関係の位置に配置して示す振動速度分布図yを作製する工程と、
振動速度分布図y(yは1〜mの整数)の各々を構成するG1(ωy)〜Gn(ωy)について、G1(ωy)〜Gn(ωy)の平均値であるGave(ωy)を求め、G1(ωy)〜Gn(ωy)についてGave(ωy)の2倍以上のものの個数をQyとし、2倍以上のものの平均をGr(ωy)とし、さらにQyとGr(ωy)との積を求め、この積が大きい振動速度分布図s(1≦s≦m)を選択し、その振動速度分布図sの周波数区間であるfs-1〜fsを特定する工程と、
1(ωs)〜Gn(ωs)の各々がGave(ωs)の2倍以上となる測定箇所の振動速度の平均をB(ω)[ωはfs-1〜fs]とし、このB(ω)と周波数区間がfs-1〜fsの場合の前記A(ω)とから、相対的な振動速度差の規格値であるC(ω)をC(ω)=(B(ω)−A(ω))/B(ω)[ωはfs-1〜fs]と定義し、周波数(ω)とC(ω)との関係をω−C(ω)図に示す工程と、
前記ω−C(ω)図において、C(ω)の最大値の30〜70%における任意の値を閾値とし、C(ω)における前記閾値以上の部分を構成する周波数区間の各々においてC(ω)をωについて積分し、得られた積分値が最も大きい周波数区間を選択し、その周波数区間であるft〜fuを最適応答周波数帯とする工程と、
を備える探知方法。
(ii)n個作成された前記ω−Dx(ω)図の各々について、同一の周波数区間で複数個に区切り、さらに、各図においてDx(ω)の最大値の30〜70%における任意の値を閾値として設定し、n個の前記ω−Dx(ω)図の少なくとも1つにおいてDx(ω)の値が前記閾値以上である部分を含む周波数区間を抜き出し、抜き出した周波数区間の各々について、初めの周波数(ω)をfy-1、終りの周波数(ω)をfy(yは1〜mの整数である。)とし、前記式(1)によってGx(ωy)を求める工程を、
n個作成された前記ω−Dx(ω)図の各々において、Dx(ω)の最大値の30〜70%における任意の値を閾値として設定し、Dx(ω)における前記閾値以上の部分の面積を求め、さらにn個作成された前記ω−Dx(ω)図の各々について、同一の周波数区間でm個に区切り、周波数(ω)がfy-1〜fy(yは1〜mの整数であり、f0=0である。)の各周波数区間における前記面積をGx(ωy)とする工程
に変えた、上記(i)に記載の探知方法。
(iii)前記音波がホワイトノイズである、上記(i)または(ii)に記載の探知方法。
(iv)前記被照射体の表面の振動速度をレーザ振動計またはレーザ変位計を用いて測定する、上記(i)〜(iii)のいずれかに記載の探知方法。
(v)上記(i)〜(iv)のいずれかに記載の探知方法によって求められた最適応答周波数帯から、次式(2)によってGx(ωz)を求め、さらに、周波数(ω)が最適応答周波数帯(ft〜fu)である場合の、測定箇所PxにおけるGx(ωz)を実際のP1、P2・・・PX・・Pnの位置と相似関係の位置に配置した、振動速度分布図zを作製し、前記物体における前記探知対象物の位置を特定する工程を備える探知方法。
【数2】

(vi)周波数がft〜fuに含まれるバースト波を照射して、測定箇所PxにおけるGx(ωz)を実際のP1、P2・・・PX・・Pnの位置と相似関係の位置に配置した、振動速度分布図zを作製し、前記物体における前記探知対象物の位置を特定する工程である、上記(v)に記載の探知方法。
(vii)探知対象物を内部に含む被照射体の表面の複数個所に音波を照射し、その表面における振動速度分布から、前記探知対象物の位置を特定する非接触音響探知システムであって、
前記被照射体の表面を振動させ得る音波を発生させる音響発信源と、
前記被照射体の表面の振動速度を測定する計測器と、
前記被照射体の表面における振動速度分布から前記被照射体における前記探知対象物の位置を特定するために用いる解析装置とを有し、
上記(i)〜(vi)のいずれかに記載の探知方法を行うことができる、非接触音響探知システム。
(viii)被照射体の表面を振動させ得る音波を発生させる音響発信源と、
前記被照射体の表面のn箇所(n≧2)の測定個所であるP1、P2・・・Px・・Pn(xは1〜nの整数)の各々に、周波数がωの音波を照射し、Pxにおける前記振動速度であるEx(ω)を計測して、E1(ω)〜En(ω)を出力する計測器と、
前記計測器から出力されたE1(ω)〜En(ω)を入力し、前記被照射体の表面における振動速度分布から前記被照射体における前記探知対象物の位置を特定する解析装置とを有し、
前記解析装置が、
入力されたE1(ω)〜En(ω)の平均値をA(ω)とし、Pxにおける振動速度差の規格値であるDx(ω)をDx(ω)=(Ex(ω)−A(ω))/Ex(ω)と定義し、周波数(ω)とDx(ω)との関係をω−Dx(ω)図として表示部に表示する処理と、
n個作成された前記ω−Dx(ω)図の各々について、同一の周波数区間で複数個に区切り、さらに、各図においてDx(ω)の最大値の30〜70%における任意の値を閾値として設定し、n個の前記ω−Dx(ω)図の少なくとも1つにおいてDx(ω)の値が前記閾値以上である部分を含む周波数区間を抜き出し、抜き出した周波数区間の各々について、初めの周波数(ω)をfy-1、終りの周波数(ω)をfy(yは1〜mの整数である。)とし、前記式(1)によってGx(ωy)を求める処理と、
周波数(ω)がfy-1〜fyである場合の、測定箇所PxにおけるGx(ωy)を、実際のP1、P2・・・PX・・Pnの位置と相似関係の位置に配置して示す振動速度分布図yを作製し表示部に表示する処理と、
振動速度分布図y(yは1〜mの整数)の各々を構成するG1(ωy)〜Gn(ωy)について、G1(ωy)〜Gn(ωy)の平均値であるGave(ωy)を求め、G1(ωy)〜Gn(ωy)についてGave(ωy)の2倍以上のものの個数をQyとし、2倍以上のものの平均をGr(ωy)とし、さらにQyとGr(ωy)との積を求め、この積が大きい振動速度分布図s(1≦s≦m)を選択し、その振動速度分布図sの周波数区間であるfs-1〜fsを特定する処理と、
1(ωs)〜Gn(ωs)の各々がGave(ωs)の2倍以上となる測定箇所の振動速度の平均をB(ω)[ωはfs-1〜fs]とし、このB(ω)と周波数区間がfs-1〜fsの場合の前記A(ω)とから、相対的な振動速度差の規格値であるC(ω)をC(ω)=(B(ω)−A(ω))/B(ω)[ωはfs-1〜fs]と定義し、周波数(ω)とC(ω)との関係をω−C(ω)図として表示部に表示する処理と、
前記ω−C(ω)図において、C(ω)の最大値の30〜70%における任意の値を閾値とし、C(ω)における前記閾値以上の部分を構成する周波数区間の各々においてC(ω)をωについて積分し、得られた積分値が最も大きい周波数区間を選択し、その周波数区間であるft〜fuを最適応答周波数帯とする処理とを行う、
上記(vii)に記載の非接触音響探知システム。
(ix)前記式(2)によってGx(ωz)を求め、さらに、周波数(ω)が最適応答周波数帯(ft〜fu)である場合の、測定箇所PxにおけるGx(ωz)を実際のP1、P2・・・PX・・Pnの位置と相似関係の位置に配置した、振動速度分布図zを作製し、表示部に表示し、前記物体における前記探知対象物の位置を特定する処理を前記解析装置がさらに行う、上記(vii)または(viii)に記載の非接触音響探知システム。
(x)前記音響発信源から発生させ被照射体の表面を振動させ得る音波が、周波数がft〜fuに含まれるバースト波である、上記(vii)〜(ix)のいずれかに記載の非接触音響探知システム。
(xi)探知対象物を内部に含む被照射体の表面に音波を照射し、その表面の複数の測定個所において振動速度を測定し、得られた振動速度分布図から前記探知対象物の位置を特定する処理を、コンピュータを含む非接触音響探知システムに行わせるためのプログラムであって、
音波発信源から音波を照射し、前記被照射体の表面を振動させ、前記被照射体の表面のn箇所(n≧2)の測定個所を、各々、P1、P2・・・Px・・Pn(xは1〜nの整数)とし、それらの測定箇所の各々において、照射した音波の周波数がωである場合の前記被照射体の表面の振動速度を測定し、Pxにおける前記振動速度をEx(ω)とし、Ex(ω)を計測した計測器から与えられたE1(ω)〜En(ω)の平均値をA(ω)とし、Pxにおける振動速度差の規格値であるDx(ω)をDx(ω)=(Ex(ω)−A(ω))/Ex(ω)と定義し、周波数(ω)とDx(ω)との関係をω−Dx(ω)図として表示部に表示する処理と、
n個作成された前記ω−Dx(ω)図の各々について、同一の周波数区間で複数個に区切り、さらに、各図においてDx(ω)の最大値の30〜70%における任意の値を閾値として設定し、n個の前記ω−Dx(ω)図の少なくとも1つにおいてDx(ω)の値が前記閾値以上である部分を含む周波数区間を抜き出し、抜き出した周波数区間の各々について、初めの周波数(ω)をfy-1、終りの周波数(ω)をfy(yは1〜mの整数である。)とし、前記式(1)によってGx(ωy)を求める処理と、
周波数(ω)がfy-1〜fyである場合の、測定箇所PxにおけるGx(ωy)を、実際のP1、P2・・・PX・・Pnの位置と相似関係の位置に配置して示す振動速度分布図yを作製し表示部に表示する処理と、
振動速度分布図y(yは1〜mの整数)の各々を構成するG1(ωy)〜Gn(ωy)について、G1(ωy)〜Gn(ωy)の平均値であるGave(ωy)を求め、G1(ωy)〜Gn(ωy)についてGave(ωy)の2倍以上のものの個数をQyとし、2倍以上のものの平均をGr(ωy)とし、さらにQyとGr(ωy)との積を求め、この積が大きい振動速度分布図s(1≦s≦m)を選択し、その振動速度分布図sの周波数区間であるfs-1〜fsを特定する処理と、
1(ωs)〜Gn(ωs)の各々がGave(ωs)の2倍以上となる測定箇所の振動速度の平均をB(ω)[ωはfs-1〜fs]とし、このB(ω)と周波数区間がfs-1〜fsの場合の前記A(ω)とから、相対的な振動速度差の規格値であるC(ω)をC(ω)=(B(ω)−A(ω))/B(ω)[ωはfs-1〜fs]と定義し、周波数(ω)とC(ω)との関係をω−C(ω)図として表示部に表示する処理と、
前記ω−C(ω)図において、C(ω)の最大値の30〜70%における任意の値を閾値とし、C(ω)における前記閾値以上の部分を構成する周波数区間の各々においてC(ω)をωについて積分し、得られた積分値が最も大きい周波数区間を選択し、その周波数区間であるft〜fuを最適応答周波数帯とする処理とを、コンピュータを含む非接触音響探知システムに行わせるためのプログラム。
(xii)前記式(2)によってGx(ωz)を求め、さらに、周波数(ω)が最適応答周波数帯(ft〜fu)である場合の、測定箇所PxにおけるGx(ωz)を実際のP1、P2・・・PX・・Pnの位置と相似関係の位置に配置した、振動速度分布図zを作製し、表示部に表示し、前記物体における前記探知対象物の位置を特定する処理を、コンピュータを含む非接触音響探知システムに行わせるための、上記(xi)に記載のプログラム。
(xiii)上記(xi)または(xii)に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、探知対象物を内部に含む被照射体の表面に音波を照射し、その表面の複数の測定個所において振動速度を測定し、得られた振動速度分布図から前記探知対象物の位置を特定する音波を用いた探知方法であって、探知対象物の位置を正確に把握することができる探知方法を提供することができる。また、その探知方法を行うことができる非接触音響探知システムを提供することができる。また、そのシステムで用いるプログラムを提供することができる。また、そのプログラムを記録した記録媒体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の非接触音響探知システムの好適態様を示す概略図である。
【図2】図1における被照射体1の表面および2つの音響発信源11を上側から見た概略図である。
【図3】図3(a)はPkにおけるωと振動速度Ek(ω)との関係図(実例)であり、図3(b)はω−Dk(ω)の関係図(実例)である。
【図4】図3(b)の実例を、概略概念図として示した図である。
【図5】Gx(ωy)の配置図のy=1の場合の例である。
【図6】ω−C(ω)の関係の概略概念図である。
【図7】実施例における実験セットアップ図である。
【図8】実施例で用いた埋設物(探知対象物)を示す図である。
【図9】中空プラスチック容器埋設時の、200Hz刻みの範囲内で0から800Hzまで映像化した結果の図である。
【図10】実施例における輝度映像例である。
【図11】実施例における最適周波数範囲での映像化結果である。
【図12】埋設物(探知対象物)が中空プラスチック容器の場合の輝度映像化結果、埋設位置、最適周波数帯の映像化結果である。
【図13】埋設物(探知対象物)が砂糖を詰めたプラスチック容器の場合の輝度映像化結果、埋設位置、最適周波数帯の映像化結果である。
【図14】埋設物(探知対象物)が素焼き鉢の場合の輝度映像化結果、埋設位置、最適周波数帯の映像化結果である。
【図15】埋設物(探知対象物)が石の場合の輝度映像化結果、埋設位置、最適周波数帯の映像化結果である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明について説明する。
本発明は探知方法、非接触音響探知システム、そのシステムで用いるプログラム、およびそのプログラムを記録した記録媒体(コンパクトディスク(CD)やフレキシブルディスク(FD)など)であり、本発明の探知方法および本発明の非接触音響探知システムによれば、被照射体の内部の探知対象物の位置を正確に把握することができる。被照射体としては、例えば、コンクリート構造物、地面(土、砂、石、アスファルト等)、木、液体、人体が挙げられる。具体的には、本発明の探知方法および本発明の非接触音響探知システムによれば、例えば、地面に埋められている地雷の位置を正確に把握することができる。この場合、地雷が探知対象物である。また、コンクリート構造物の内部の欠陥部の位置を正確に把握することができる。この場合、欠陥部が探知対象物である。また、人体の内部に存在する腫瘍等の位置を正確に把握することができる。この場合、腫瘍等が探知対象物である。また、各種製品等の内部の欠陥部の位置を正確に把握することができる(すなわち、非破壊検査することができる)。この場合、欠陥部が探知対象物である。また、池、海、湖等の液面の近くに位置する探知対象物(周囲の液体と音響インピーダンスが異なる物体)の位置を正確に把握することができる。
【0011】
本発明の探知方法は、探知対象物を内部に含む被照射体の表面に音波を照射し、その表面における振動速度分布から、前記探知対象物の位置を特定する非接触音響探知システムである本発明の非接触音響探知システムによって実現することが好ましい。本発明の非接触音響探知システムは、前記被照射体の表面を振動させ得る音波を発生させる音響発信源と、前記被照射体の表面の振動速度を測定する計測器と、前記被照射体の表面における振動速度分布から、前記被照射体における前記探知対象物の位置を特定する解析装置とを有し、前記解析装置によって特定の情報処理を行うことができる。本発明の非接触音響探知システムとして、具体的には、例えば図1に示す装置が挙げられる。
【0012】
図1は、被照射体1の表面を振動させ得る音波を発生させる2つの音響発信源11、11と、被照射体1の表面の振動速度を測定する計測器13と、被照射体1の表面における振動速度分布から被照射体1の内部の探知対象物3の位置を特定するために用いる解析装置151を含むコンピュータ15とを有する装置10を示す概略図である。図1に示す装置10は、さらに、任意波形発生装置17およびアンプ19を有しており、加えて、コンピュータ15は制御装置152および表示部153を含んでおり、制御装置152によって任意波形発生装置17を制御して、所望の周波数の音波を2つの音響発信源11、11から発生することができる。任意波形発生装置17が発生するトリガ信号に制御装置152を同期させて計測することもできる。表示部153には、後に説明するω−Dx(ω)図、振動速度分布図y、ω−C(ω)図、振動速度分布図zを表示することができる。なお、表示部153は複数存在していて、各図を表示するものであってもよい。また、複数の図を1つの表示部153に表示してもよい。表示部とはディスプレイ画面等を意味する。
【0013】
図1に示す本発明の非接触音響探知システム(装置10)において、音響発信源11はフラットスピーカであり、図1に示すように2つのフラットスピーカを向い合せ、被照射体1の表面に対して20°傾けて(フラットスピーカ面と被照射体1の表面とのなす角度が70°となるように)配置している。このように傾けて配置するとフラットスピーカから発生する空中放射音波から地中内への第2種縦波に変換される割合が大きくなるので好ましい。第2種縦波は、被照射体の表面が砂や土からなる多孔質な面の場合、その表面を好ましく振動させることができる。
なお、本発明の非接触音響探知システムにおいて音響発信源の数やスピーカの角度等は特に限定されない。
【0014】
音響発信源はフラットスピーカの他、パラメトリックスピーカも好ましく用いることができ、また、具体的に、アメリカンテクノロジー社製のLRAD(登録商標)を好ましく用いることができる。また、ラウドスピーカを用いることもできるが、この場合は、音響発信源と被照射体との距離を比較的近くする。その他に用いることができる音響発信源としては、パルスレーザ、高圧ガスガン、衝撃波管が挙げられる。
【0015】
また、音響発信源から被照射体へ照射される音波は、所望の周波数(ω)に調整することができ、かつ、被照射体の表面をその振動速度が計測器によって測定できる程度に、表面に平行方向ではない方向(好ましくは、表面に垂直方向)へ振動させることができる音波であればよく、空気中で振動振幅が減衰し難い可聴帯域の音波(音響波)が好ましい。なお、超音波は用い難い。超音波は空気中で振動振幅の減衰が大きいからである。
また、被照射体の共振周波数帯が不明な場合には、音響発信源から被照射体へ照射される音波は、ホワイトノイズであることが好ましい。全ての周波数を含んでいるからである。
【0016】
図1に示す本発明の非接触音響探知システム(装置10)において、計測器13はレーザドップラー振動計であり、レーザ131を被照射体1に照射して、その表面の振動速度を測定することができる。得られた振動速度のデータは解析装置151で解析するために用いられる。
なお、本発明の非接触音響探知システムにおいて計測器は、被照射体の表面の振動速度を非接触で測定できるものであれば特に限定されず、例えばレーザ変位計を用いることができ、レーザドップラー振動計であることが好ましい。被照射体と計測器とが比較的離れていても、被照射体の表面の振動を正確に測定することができるからである。
また、1度に1点の振動計測が可能なシングルレーザタイプのレーザ振動計を用いることは可能であるが、スキャニングレーザタイプのレーザ振動計を用いることが好ましい。スキャニング振動計であるレーザドップラー振動計としては、具体的に、ポリテックジャパン社製のPSV400−H8が挙げられる。このレーザドップラー振動計は解析装置の一部および制御装置を含むものである。
【0017】
図1に示す本発明の非接触音響探知システム(装置10)において、解析装置151は、被照射体1における探知対象物3の位置を特定するための特定の情報処理を行うことができるものであれば特に限定されない。この特定の情報処理は本発明の探知方法および本発明のプログラムが備えるものであり、後に詳細に説明する。例えば、この解析装置自体に対象面上でスキャンされた周波数毎の速度振幅データが蓄積されていき、後の解析時に利用される。
【0018】
図1に示す本発明の非接触音響探知システム(装置10)において、任意波形発生装置17は、制御装置152の指令によって所望の周波数の音波を音響発信源11から発生させることができる装置である。例えば、ノイズ波やバースト波を発生可能な市販のファンクションジェネレータ等を用いることができる。送信する音波の波形は通常この任意波形発生装置により制御することができる。通常は簡単のために手動で制御するが、解析装置側から制御するようにシステムを構成することも可能である。任意波形発生装置17が発生するトリガ信号に制御装置152を同期させて計測することもできる。
また、アンプ19は特に限定されず、例えば、市販オーディオアンプ等を用いることができる。
【0019】
次に、本発明の探知方法について説明する。
なお、本発明のプログラムは、本発明の探知方法と同様の内容であるので、以下では主に本発明の探知方法について説明する。
本発明の探知方法は、探知対象物を内部に含む被照射体の表面に音波を照射し、その表面の複数の測定個所において振動速度を測定し、得られた振動速度分布図から前記探知対象物の位置を特定する音波を用いた探知方法であって、音波発信源から音波を照射し、前記被照射体の表面を振動させる工程を備える。この工程は、例えば前述の本発明の非接触音響探知システムを用い、音響発信源から被照射体へホワイトノイズを照射して行うことができる。本発明の非接触音響探知システムはコンピュータに本発明のプログラムをインストールしたものを含むことが好ましい。
また、本発明の探知方法は、さらに、以下に説明する特定の情報処理を行う各工程を備える。
【0020】
本発明の探知方法は、特定の情報処理を行う工程として、前記被照射体の表面のn箇所(n≧2)の測定個所を、各々、P1、P2・・・Px・・Pn(xは1〜nの整数)とし、それらの測定箇所の各々において、照射した音波の周波数がωである場合の前記被照射体の表面の振動速度を測定し、Pxにおける前記振動速度をEx(ω)とする工程を備える。
【0021】
この工程について、図2を用いて具体的に説明する。
図2は、図1における被照射体1の表面および2つの音響発信源11を上側(計測器13が存在する側)から見た図である。
図2においてn箇所の測定箇所は碁盤の目状に配置されており、図2に示すように、左下から右上へ向かってP1、P2、P3・・・・Px-1、Px、Px+1・・・Pn-2、Pn-1、Pnと付されている。ただし、本発明の探知方法において測定箇所の配置は特に限定されず、例えばランダムに配置されていてもよい。
そして、n箇所の測定箇所の各々において、音響発信源11から照射した音波の周波数がωである場合の被照射体1の表面の振動速度を測定する。ここで、照射した音波の周波数がωである場合のPx(xは1〜nの整数)における前記振動速度をEx(ω)とする。すなわち、各測定箇所におけるωと振動速度Ex(ω)との関係を把握する。ωと振動速度Ex(ω)との関係を図に表すと、例えば図3(a)のようになる。図3(a)は、ある測定箇所であるPk(ここでkは1〜nの中のいずれか特定の整数)におけるωと振動速度Ek(ω)との関係図である。なお、図3(a)には振動速度E1(ω)〜En(ω)の平均値であるA(ω)も示されている。
振動速度の測定は、例えば前述の本発明の非接触音響探知システムを用い、レーザドップラー振動計などのレーザ変位計によって行うことができる。
【0022】
次に、本発明の探知方法は、特定の情報処理を行う工程として、前記照射した音波の周波数がωである場合のP1〜Pnにおける振動速度であるE1(ω)〜En(ω)の平均値をA(ω)とし、Pxにおける振動速度差の規格値であるDx(ω)をDx(ω)=(Ex(ω)−A(ω))/Ex(ω)と定義し、周波数(ω)とDx(ω)との関係をω−Dx(ω)図に示す工程を備える。
なお、本発明の非接触音響探知システムでは、ω−Dx(ω)図を表示部(ディスプレイ等)に表示することができる。また、本発明のプログラムでは、ω−Dx(ω)図を表示部(ディスプレイ等)に表示する。
【0023】
この工程について、図3を用いて具体的に説明する。
図3(a)には、上記のEk(ω)の他に、各測定箇所P1〜Pnにおける振動速度E1(ω)〜En(ω)の平均であるA(ω)の実例が示されている。
そして、振動速度E1(ω)〜En(ω)およびA(ω)を用いて、Dx(ω)=(Ex(ω)−A(ω))/Ex(ω)を求める。Dx(ω)は、Pxにおける振動速度差の規格値である。周波数によっては、振動速度の値自体は小さくても平均値との差が大きい場合があり、周波数毎に各測定箇所の振動速度の値で割り算を行って、平均値との相対的な差が明確になるように規格化を行う。規格化により求められた規格値であるDx(ω)は、1を最大値とし、平均振動速度A(ω)との相対的な振動速度差を意味する。
図3(b)は、ある測定箇所であるPk(ここでkは1〜nの中のいずれか特定の整数)におけるωとDk(ω)との関係図の実例である。ω−Dx(ω)図は、測定箇所の数だけ(すなわちn個)作成することができる。
なお、図3(b)における直線20は、次の工程の説明において詳細に述べる閾値を示す直線である。
【0024】
次に、本発明の探知方法は、特定の情報処理を行う工程として、n個作成された前記ω−Dx(ω)図の各々について、同一の周波数区間で複数個に区切り、さらに、各図においてDx(ω)の最大値の30〜70%における任意の値を閾値として設定し、n個の前記ω−Dx(ω)図の少なくとも1つにおいてDx(ω)の値が前記閾値以上である部分を含む周波数区間を抜き出し、抜き出した周波数区間の各々について、初めの周波数(ω)をfy-1、終りの周波数(ω)をfy(yは1〜mの整数である。)とし、後述する式(1)によってGx(ωy)を求める工程を備える。
【0025】
この工程について、図4を用いて具体的に説明する。
図4は、図3(b)の実例を、概略概念図として示した図である。すなわち、ある測定箇所であるPk(ここでkは1〜nの中のいずれか特定の整数)におけるωとDk(ω)との関係図である。
この工程では、n個作成された図4に示すようなω−Dx(ω)図の各々について、同一の周波数区間で複数個に区切る。例えば、200〜400Hzの周波数区間と、400〜600Hzの周波数区間と、600〜800Hzの周波数区間とで、n個の全てのω−Dx(ω)図を区切る。
そして、各図においてDx(ω)の最大値の30〜70%における任意の値を閾値として設定する。図4においてDk(ω)の最大値は0.9程度であるので、その30〜70%(好ましくは40〜60%、より好ましくは0.5程度)の間に含まれる値(Dk(ω)=0.5)を閾値として設定した。この閾値を図4中に直線20として示す。
【0026】
次に、n個のω−Dx(ω)図の少なくとも1つにおいてDx(ω)の値が閾値(ここでは0.5)以上である部分を含む周波数区間を抜き出す。図4では、200〜400Hzの周波数区間、400〜600Hzの周波数区間、および600〜800Hzの周波数区間の全てが、Dx(ω)の値が閾値以上である部分を含んでいるので、これらの全ての周波数区間を抜き出すが、n個のω−Dx(ω)図の少なくとも1つにおいてDx(ω)の値が閾値以上である部分を含む周波数区間を抜き出す。n個のω−Dx(ω)図の少なくとも1つにおいてDx(ω)の値が閾値以上である部分を含む周波数区間を全て抜き出すことが好ましいが、一部の周波数区間のみを抜き出してもよい。抜き出した周波数区間の数をm個とする。
なお、図4では200Hzの同一間隔で区間を区切ったが、200Hzでなくてよく、また、同一間隔で区切る必要もない。例えば、1つの目の周波数区間を100Hzの幅で区切り、2つの目の周波数区間を300Hzの幅で区切ってもよい。ただし、200Hz程度の同一間隔で区間を区切ることが好ましい。
【0027】
次に、抜き出した周波数区間の各々について、初めの周波数(ω)をfy-1、終りの周波数(ω)をfy(yは1〜mの整数である。)とする。例えば、200〜400Hzの周波数区間、400〜600Hzの周波数区間、および600〜800Hzの周波数区間を抜き出した場合、200〜400Hzの周波数区間の初めの周波数(ω)はf0=200Hz、終りの周波数(ω)はf1=400Hzであり、400〜600Hzの周波数区間の初めの周波数(ω)はf1=400Hz、終りの周波数(ω)はf2=600Hzであり、600〜800Hzの周波数区間の初めの周波数(ω)はf2=600Hz、終りの周波数(ω)はf3=800Hzである。
そして、次式(1)によってGx(ωy)を求める。
【0028】
【数3】

【0029】
つまり、図4において、Gx(ω1)は周波数が200〜400Hzの区間におけるDx(ω)の積分値を意味し、Gx(ω2)は周波数が400〜600Hzの区間におけるDx(ω)の積分値を意味し、Gx(ω3)は周波数が600〜800Hzの区間におけるDx(ω)の積分値を意味する。
【0030】
なお、この工程は、n個作成された前記ω−Dx(ω)図の各々において、Dx(ω)の最大値の30〜70%における任意の値を閾値として設定し、Dx(ω)における前記閾値以上の部分の面積を求め、さらにn個作成された前記ω−Dx(ω)図の各々について、同一の周波数区間でm個に区切り、周波数(ω)がfy-1〜fy(yは1〜mの整数であり、f0=0である。)の各周波数区間における前記面積をGx(ωy)とする工程に入れ替えてもよい。この工程においてGx(ωy)は、Dx(ω)における閾値以上の部分の積分値(面積)を意味することとなる。
【0031】
次に、本発明の探知方法は、特定の情報処理を行う工程として、周波数(ω)がfy-1〜fyである場合の、測定箇所PxにおけるGx(ωy)を、実際のP1、P2・・・PX・・Pnの位置と相似関係の位置に配置して示す振動速度分布図yを作製する工程を備える。
なお、本発明の非接触音響探知システムでは、振動速度分布図yを表示部(ディスプレイ等)に表示することができる。また、本発明のプログラムでは、振動速度分布図yを表示部(ディスプレイ等)に表示する。
【0032】
この工程について、図5を用いて具体的に説明する。
図5に示すように、この工程では、測定箇所PxにおけるGx(ωy)(yは1〜mの整数である。)を、図2に示したような実際のP1、P2・・・PX・・Pnの位置と相似関係の位置に配置して示す。図5は、y=1の場合、すなわち、周波数(ω)がf0〜f1(図4で示した例に当てはめると200〜400Hzの場合)の、測定箇所PxにおけるGx(ω1)を、図2に示した実際のP1、P2・・・PX・・Pnの位置と相似関係の位置に配置した振動速度分布図1である。図5に示す振動速度分布図1のG1(ω1)〜Gn(ω1)の位置に、G1(ω1)〜Gn(ω1)の実際の数値を示してもよいし、その数値の大きさを色で示してもよい。例えば、後に説明する図9はG1(ωy)〜Gn(ωy)の数値を色で示した振動速度分布図の実例である。図9(a)〜(d)では、白色に近いほどGx(ωy)の値が大きく、黒色に近いほどGx(ωy)の値が小さいが小さいことを示している。すなわち、白色部分を構成する測定箇所のGx(ωy)が大きいことを示している。
【0033】
次に、本発明の探知方法は、特定の情報処理を行う工程として、振動速度分布図y(yは1〜mの整数)の各々を構成するG1(ωy)〜Gn(ωy)について、G1(ωy)〜Gn(ωy)の平均値であるGave(ωy)を求め、G1(ωy)〜Gn(ωy)についてGave(ωy)の2倍以上(好ましくは4倍以上、より好ましくは6倍以上、より好ましくは8倍以上、さらに好ましくは10倍以上)のものの個数をQyとし、2倍以上(好ましくは4倍以上、より好ましくは6倍以上、より好ましくは8倍以上、さらに好ましくは10倍以上)のものの平均をGr(ωy)とし、さらにQyとGr(ωy)との積を求め、この積が大きい振動速度分布図s(1≦s≦m)を選択し、その振動速度分布図sの周波数区間であるfs-1〜fsを特定する工程を備える。
【0034】
この工程について具体的に説明する。
この工程では、例えば図5に示すような振動速度分布図1を構成するG1(ω1)〜Gn(ω1)について、G1(ω1)〜Gn(ω1)の単純平均値であるGave(ω1)を求める。そして、G1(ω1)〜Gn(ω1)についてGave(ω1)の2倍以上のものの個数をQ1とし、2倍以上のものの平均をGr(ω1)とし、さらにQ1とGr(ω1)との積を求める。
次に、ここで示した振動速度分布図1についての作業を、振動速度分布図2〜mについて同様に行い、Q2とGr(ω2)との積、Q3とGr(ω3)との積・・・QmとGr(ωm)との積を求める。
そして、Q1とGr(ω1)との積、Q2とGr(ω2)との積、Q3とGr(ω3)との積・・・QmとGr(ωm)との積の中から、最も値が大きいものを選び出し、それに対応する振動速度分布図s(sは1〜mの中の整数)を選び出す。例えば、Q1とGr(ω1)との積、Q2とGr(ω2)との積、Q3とGr(ω3)との積・・・QmとGr(ωm)との積の中で、最も値が大きいものがQ1とGr(ω1)との積であった場合、これに対応する振動速度分布図1を選び出す。
そして、この振動速度分布図sの周波数区間であるfs-1〜fsを特定する。例えば積が最も大きいものとして振動速度分布図1を選び出した場合、周波数区間f0〜f1を特定する。
なお、ここでは理解に容易にするために、QyとGr(ωy)との積が最も大きい振動速度分布図s(1≦s≦m)を選択する旨を記したが、1つの振動速度分布図の中に複数の探知対象物が存在する場合(特に複数の種類が異なる探知対象物が存在する場合)、QyとGr(ωy)との積が大きい複数の周波数区間を選び出す。
【0035】
次に、本発明の探知方法は、特定の情報処理を行う工程として、 G1(ωs)〜Gn(ωs)の各々がGave(ωs)の2倍以上(好ましくは4倍以上、より好ましくは6倍以上、より好ましくは8倍以上、さらに好ましくは10倍以上)となる測定箇所の振動速度の平均をB(ω)[ωはfs-1〜fs]とし、このB(ω)と周波数区間がfs-1〜fsの場合の前記A(ω)とから、相対的な振動速度差の規格値であるC(ω)をC(ω)=(B(ω)−A(ω))/B(ω)[ωはfs-1〜fs]と定義し、周波数(ω)とC(ω)との関係をω−C(ω)図に示す工程を備える。
なお、本発明の非接触音響探知システムでは、ω−C(ω)図を表示部(ディスプレイ等)に表示することができる。また、本発明のプログラムでは、ω−C(ω)図を表示部(ディスプレイ等)に表示する。
【0036】
この工程について具体的に説明する。
例えば、前工程で、積が最も大きいものとして振動速度分布図1を選び出し、周波数区間f0〜f1を特定した場合(つまり、s=1とした場合)、G1(ω1)〜Gn(ω1)の中から、これらの平均値であるGave(ω1)の2倍以上となるものを選び出し、選び出したものに対応する測定箇所を特定する。例えば、G1(ω1)〜Gn(ω1)の中でGave(ω1)の2倍以上となるものがG5(ω1)およびG6(ω1)であったならば、これに対応する測定箇所であるP5およびP6を特定する。そして、P5およびP6の振動速度であるE5(ω)およびE6(ω)の平均をB(ω)[ωはfs-1〜fs]とする。さらに、周波数区間がf0〜f1である場合の、P1〜Pnにおける振動速度であるE1(ω)〜En(ω)の平均値をA(ω)[ωはfs-1〜fs]とし、C(ω)をC(ω)=(B(ω)−A(ω))/B(ω)[ωはfs-1〜fs]の式から求め、周波数(ω)[ωはfs-1〜fs]とC(ω)との関係をω−C(ω)図に示す。この図が次に説明する図6である。
【0037】
次に、本発明の探知方法は、特定の情報処理を行う工程として、前記ω−C(ω)図において、C(ω)の最大値の30〜70%における任意の値を閾値とし、C(ω)における前記閾値以上の部分を構成する周波数区間の各々においてC(ω)をωについて積分し、得られた積分値が最も大きい周波数区間を選択し、その周波数区間であるft〜fuを最適応答周波数帯とする工程を備える。
【0038】
この工程について図6を用いて具体的に説明する。
図6は、ωとC(ω)との関係図(概念図)である。このような図において、C(ω)の最大値の30〜70%における任意の値を閾値として設定する。図6においてC(ω)の最大値は0.95程度であるので、その30〜70%の間に含まれるC(ω)=0.5を閾値とし、図6中に直線30として示した。
次に、C(ω)における前記閾値以上の部分を構成する周波数区間の各々においてC(ω)をωについて積分する。図6では、閾値以上の部分を構成する周波数区間は、fα1〜fα2とfβ1〜fβ2との2つであるので、各々においてC(ω)をωについて積分する。例えばfα1〜fα2の周波数区間であれば、次の式で積分値αを得ることができる。
【0039】
【数4】

【0040】
次に、得られた積分値が最も大きい周波数区間を選択し、その部分を構成する周波数区間であるft〜fuを最適応答周波数帯とする。図6に示す場合は、fβ1〜fβ2の周波数区間よりも、fα1〜fα2の周波数区間の方が得られた積分値が大きいので、この周波数区間を最適応答周波数帯とし、この周波数区間をft〜fuとする。すなわち、fα1をftとし、fα2をfuとする。
【0041】
本発明の探知方法は以上に説明した各工程を備える方法であるが、次に説明する工程をさらに備えることが好ましい。
【0042】
本発明の探知方法は、特定の情報処理を行う工程として、前記最適応答周波数帯から、次式(2)によってGx(ωz)を求め、さらに、周波数(ω)が最適応答周波数帯(ft〜fu)である場合の、測定箇所PxにおけるGx(ωz)を実際のP1、P2・・・Px・・Pnの位置と相似関係の位置に配置した、振動速度分布図zを作製し、前記物体における前記探知対象物の位置を特定する工程を備えることが好ましい。
なお、本発明の非接触音響探知システムでは、振動速度分布図zを表示部(ディスプレイ等)に表示することが好ましい。また、本発明のプログラムでは、振動速度分布図zを表示部(ディスプレイ等)に表示することが好ましい。
【0043】
【数5】

【0044】
この工程について具体的に説明する。
例えば、前工程で求めた最適応答周波数帯が150〜200Hzであった場合(つまり、ft=150Hz、fu=200Hzであった場合)、この区間におけるDx(ω)の積分値であるGx(ωz)を、式(2)によって求める。
そして、周波数(ω)が150〜200Hzである場合の、測定箇所PxにおけるGx(ωz)を実際のP1、P2・・・PX・・Pnの位置と相似関係の位置に配置した、振動速度分布図zを、図5を用いて説明した方法と同様に作製する。図11は作成した振動速度分布図の実例である。この図では、Gx(ωz)の大きさを色によって示している。例えば図11の左上の白色に近い部分は、Gx(ωz)が大きいことを示している。これによって、前記物体における前記探知対象物の位置を特定することができる。
【0045】
なお、この工程では、周波数がft〜fuに含まれるバースト波を照射して、測定箇所PxにおけるGx(ωz)を実際のP1、P2・・・PX・・Pnの位置と相似関係の位置に配置した、振動速度分布図zを作製し、前記物体における前記探知対象物の位置を特定することが好ましい。
具体的には、例えば最適応答周波数帯が150〜200Hzである場合、175Hz程度のバースト波を照射すると、探知対象物の位置を正確に特定しやすい。
【実施例】
【0046】
本発明の実施例を説明する。
【0047】
1.探知方法
図1に示した装置を用い、音波発信源から照射した音波によって励起した地表面の振動をレーザドップラー振動計(ポリテック社製、PSV400−H8)によって取得した。このレーザ振動計が取得する振動は地表面の垂直方向振動である。もし地表面付近に埋設物が存在すると、その埋設物と周囲の土壌の振動特性に差が生じる。音波発信源としては、平面スピーカ(FPS Corp, 2030M3P1R)を2個使用し、図1に示すように互いに向い合う位置に配置にした。第二種縦波を発生させるため、平面スピーカを約20度傾けた状態で実験を行った。
【0048】
2.実験セットアップ
粒径300μm前後に粒径を揃えた砂を用いた研究室内の砂槽(110cm×135cm×50cm)にて実験を行った。実験セットアップ図を図7に示す。埋設物(探知対象物)には中空プラスチック容器(11cm×11cm×6cm、85g)、砂糖詰めプラスチック容器(11cm×11cm×6cm、540g)、皿状の素焼き鉢(直径11cm×4.5cm、225g)および石(5.5cm×6.5cm×2.7cm、210g)の計4種類を用いた。プラスチック容器に砂糖を詰めた理由は、地雷に使用されているTNT火薬に比較的比重が近いためである。なお素焼き鉢の底面中央には1.5cmの穴が開いており、形状から裏面を上にして埋設した。図8に各埋設物を示す。埋設深度は全て2cmとし、送振波形は1秒間出力のnoise波(white noise)を用いた。noise波を用いた理由は、様々な周波数成分を含むためである。
【0049】
3.応答周波数帯を用いた最適周波数帯の検出方法
3.1 応答の規格化
周波数に応じた振動速度を、各スキャンポイント(「測定箇所」を以下では「スキャンポイント」ともいう。)における振動速度であるEx(ω)と、全スキャンポイントの振動速度の平均であるA(ω)を用いて、Dx(ω)=(Ex(ω)−A(ω))/Ex(ω)から、周波数毎に規格化した。図3(a)に1ポイントと全ポイント平均の周波数に応じた振動速度のグラフの実例を示す。また、図3(b)に規格化結果の実例を示す。D(ω)の値を全て映像化に用いるとノイズ応答が多くなる。そのためここでは簡単のため、D(ω)の値が最大値である1の半値(0.5)以上の値を示した場合のみを抽出し、ノイズ応答の除去を行った。
【0050】
3.2 最適周波数帯の検出
任意の周波数範囲内で、抽出された半値以上の応答を式(1)より積分する。この作業を各ポイントで行い、積分値を用いてGx(ωy)の映像(振動速度分布図)を作成する。実際の中空プラスチック容器埋設時の、200Hz刻みの範囲内で0から800Hzまで映像化した結果を図9(a)〜(d)に示す。図9(a)〜(d)の結果を見ると、(a)の0〜200Hzがもっとも良く映像化できている。図9(a)〜(d)の振動速度分布図の各々を構成するG1(ωy)〜Gn(ωy)について、G1(ωy)〜Gn(ωy)の平均値であるGave(ωy)を求め、G1(ωy)〜Gn(ωy)についてGave(ωy)の2倍以上のものの個数をQyとし、2倍以上のものの平均をGr(ωy)とし、さらにQyとGr(ωy)との積を求めたところ、図9(a)の振動速度分布図の積が最も大きかった。この振動速度分布図の周波数区間であるfs-1〜fsを0〜200Hzと特定した。
【0051】
次に応答の確認できた数ポイントの平均(B(ω))と、全ポイント平均(A(ω))の周波数応答を、C(ω)=(B(ω)−A(ω))/B(ω)の式から規格化し、埋設物の最適応答周波数帯を調べた。最適応答周波数帯の確認は規格化結果の、0.5以上の値を示した周波数の値のみを輝度映像化することで行った。図10に輝度映像例を示す。輝度映像化の結果を見ると、およそ150から200Hzの間で高い応答を示していることが見て取れる。周波数(ω)とC(ω)との関係をω−C(ω)図に示し(ωはfs-1〜fs)、ω−C(ω)図において、C(ω)=0.5を閾値とし、C(ω)における閾値以上の部分を構成する周波数区間の各々においてC(ω)をωについて積分し、得られた積分値がが最も大きい部分を選択したところ、その部分を構成する周波数区間は150〜200Hzであった。したがって、ft=150Hz、fu=200Hzとした。
【0052】
そこで再度その周波数帯で計算を行い、最適周波数範囲にてスキャンエリアの映像化を行った。図11に最適周波数範囲での映像化結果を示す。図11を見るとノイズ応答のほとんど見られない、クリアな映像化が行えていることが見て取れる。このようにして埋設物の応答周波数帯から映像化を行うのに最適な周波数帯を調べ、埋設物の検出を行った。
【0053】
4.各埋設物の検出結果
4.1 中空プラスチック容器
図12に中空プラスチック容器埋設時の輝度映像化結果、埋設位置、最適周波数帯の映像化結果を示す。応答周波数帯を詳細に見ると110Hzから180Hzにて高い応答を示していることが分かる。そこでその範囲内で映像化を行った結果、より鮮明な映像化が行えた。
【0054】
4.2 砂糖を詰めたプラスチック容器
図13の砂糖を詰めたプラスチック容器の結果では、200Hzから225Hzに掛けて応答が見られる。砂糖が内部に詰まっているため、中空のものから応答周波数帯が変化したのではないかと考えられる。(c)の最適周波数範囲の映像化結果では、埋設物の大きさに対して若干ではあるが小さく映像化されている。これは埋設物上ではあるが、応答が微弱であったポイントがあったためと思われる。
【0055】
4.3 素焼き鉢
図14の素焼き鉢の応答周波数帯は950Hzから1225Hzに掛けて見られ、プラスチック容器の応答周波数帯よりも高い周波数帯で応答していることが分かる。1100Hzの辺りで一度応答が途切れるものの、幅広い範囲で応答していることが見て取れる。特に1050Hz近辺と1175Hz近辺の二箇所で高く応答している。(c)の最適周波数帯での映像化結果を見ると、若干ノイズ応答が見られるが、埋設位置に応答があることが確認できる。
【0056】
4.3 石
図15の石の応答周波数帯は素焼き鉢のものとほとんど変わらないことが見て取れる。素焼き鉢の応答周波数帯に対し、石の応答周波数帯は990Hzから1075Hzに掛けて、また1100Hzから1200Hzに見られる。
また1100Hz近辺の応答の途切れが素焼き鉢の結果よりも顕著に見られるという違いがある。素焼き鉢と同様に、1050Hz近辺と1175Hz近辺で高く応答していることが分かる。(c)の最適周波数範囲の映像化結果では、素焼き鉢と同じようにノイズ応答が見られるものの、埋設物を確認することができた。
【0057】
5.まとめ
埋設物の応答周波数帯を用い、スキャンエリア中からの埋設物の検出、識別が行えるか検討した。結果として各埋設物の映像化が行え、本手法が有効であることを確認した。プラスチック容器の応答周波数帯が砂糖を詰めることによって微妙に変化することが分かった。またプラスチック容器と比較して素焼き鉢と石の応答周波数帯は高い周波数帯にあることが分かった。これは密度による影響であると考えられる。今回の実験結果からプラスチック容器のように内部に空洞を持つ物体の応答周波数帯は低くなり、素焼き鉢や石など内部まで密に詰まっている物体の応答周波数帯は高くなることが明らかになった。このことから、探査ターゲットの選択的探査が可能だと思われる。また探査結果から、掘り返すことなく埋設物を識別することも不可能ではないと考えられる。
【符号の説明】
【0058】
1 被照射体
3 探知対象物
10 本発明の非接触音響探知システム
11 音響発信源
13 計測器
131 レーザ
15 コンピュータ
151 解析装置
152 制御装置
153 表示部
17 任意波形発生装置
19 アンプ
20 閾値
30 閾値


【特許請求の範囲】
【請求項1】
探知対象物を内部に含む被照射体の表面に音波を照射し、その表面の複数の測定個所において振動速度を測定し、得られた振動速度分布図から前記探知対象物の位置を特定する音波を用いた探知方法であって、
音波発信源から音波を照射し、前記被照射体の表面を振動させる工程と、
前記被照射体の表面のn箇所(n≧2)の測定個所を、各々、P1、P2・・・Px・・Pn(xは1〜nの整数)とし、それらの測定箇所の各々において、照射した音波の周波数がωである場合の前記被照射体の表面の振動速度を測定し、Pxにおける前記振動速度をEx(ω)とする工程と、
前記照射した音波の周波数がωである場合のP1〜Pnにおける振動速度であるE1(ω)〜En(ω)の平均値をA(ω)とし、Pxにおける振動速度差の規格値であるDx(ω)をDx(ω)=(Ex(ω)−A(ω))/Ex(ω)と定義し、周波数(ω)とDx(ω)との関係をω−Dx(ω)図に示す工程と、
n個作成された前記ω−Dx(ω)図の各々について、同一の周波数区間で複数個に区切り、さらに、各図においてDx(ω)の最大値の30〜70%における任意の値を閾値として設定し、n個の前記ω−Dx(ω)図の少なくとも1つにおいてDx(ω)の値が前記閾値以上である部分を含む周波数区間を抜き出し、抜き出した周波数区間の各々について、初めの周波数(ω)をfy-1、終りの周波数(ω)をfy(yは1〜mの整数である。)とし、次式(1)によってGx(ωy)を求める工程と、
【数1】

周波数(ω)がfy-1〜fyである場合の、測定箇所PxにおけるGx(ωy)を、実際のP1、P2・・・PX・・Pnの位置と相似関係の位置に配置して示す振動速度分布図yを作製する工程と、
振動速度分布図y(yは1〜mの整数)の各々を構成するG1(ωy)〜Gn(ωy)について、G1(ωy)〜Gn(ωy)の平均値であるGave(ωy)を求め、G1(ωy)〜Gn(ωy)についてGave(ωy)の2倍以上のものの個数をQyとし、2倍以上のものの平均をGr(ωy)とし、さらにQyとGr(ωy)との積を求め、この積が大きい振動速度分布図s(1≦s≦m)を選択し、その振動速度分布図sの周波数区間であるfs-1〜fsを特定する工程と、
1(ωs)〜Gn(ωs)の各々がGave(ωs)の2倍以上となる測定箇所の振動速度の平均をB(ω)[ωはfs-1〜fs]とし、このB(ω)と周波数区間がfs-1〜fsの場合の前記A(ω)とから、相対的な振動速度差の規格値であるC(ω)をC(ω)=(B(ω)−A(ω))/B(ω)[ωはfs-1〜fs]と定義し、周波数(ω)とC(ω)との関係をω−C(ω)図に示す工程と、
前記ω−C(ω)図において、C(ω)の最大値の30〜70%における任意の値を閾値とし、C(ω)における前記閾値以上の部分を構成する周波数区間の各々においてC(ω)をωについて積分し、得られた積分値が最も大きい周波数区間を選択し、その周波数区間であるft〜fuを最適応答周波数帯とする工程と、
を備える探知方法。
【請求項2】
n個作成された前記ω−Dx(ω)図の各々について、同一の周波数区間で複数個に区切り、さらに、各図においてDx(ω)の最大値の30〜70%における任意の値を閾値として設定し、n個の前記ω−Dx(ω)図の少なくとも1つにおいてDx(ω)の値が前記閾値以上である部分を含む周波数区間を抜き出し、抜き出した周波数区間の各々について、初めの周波数(ω)をfy-1、終りの周波数(ω)をfy(yは1〜mの整数である。)とし、前記式(1)によってGx(ωy)を求める工程を、
n個作成された前記ω−Dx(ω)図の各々において、Dx(ω)の最大値の30〜70%における任意の値を閾値として設定し、Dx(ω)における前記閾値以上の部分の面積を求め、さらにn個作成された前記ω−Dx(ω)図の各々について、同一の周波数区間でm個に区切り、周波数(ω)がfy-1〜fy(yは1〜mの整数であり、f0=0である。)の各周波数区間における前記面積をGx(ωy)とする工程
に変えた、請求項1に記載の探知方法。
【請求項3】
前記音波がホワイトノイズである、請求項1または2に記載の探知方法。
【請求項4】
前記被照射体の表面の振動速度をレーザ振動計またはレーザ変位計を用いて測定する、請求項1〜3のいずれかに記載の探知方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の探知方法によって求められた最適応答周波数帯から、次式(2)によってGx(ωz)を求め、さらに、周波数(ω)が最適応答周波数帯(ft〜fu)である場合の、測定箇所PxにおけるGx(ωz)を実際のP1、P2・・・PX・・Pnの位置と相似関係の位置に配置した、振動速度分布図zを作製し、前記物体における前記探知対象物の位置を特定する工程を備える探知方法。
【数2】

【請求項6】
周波数がft〜fuに含まれるバースト波を照射して、測定箇所PxにおけるGx(ωz)を実際のP1、P2・・・PX・・Pnの位置と相似関係の位置に配置した、振動速度分布図zを作製し、前記物体における前記探知対象物の位置を特定する工程である、請求項5に記載の探知方法。
【請求項7】
探知対象物を内部に含む被照射体の表面の複数個所に音波を照射し、その表面における振動速度分布から、前記探知対象物の位置を特定する非接触音響探知システムであって、
前記被照射体の表面を振動させ得る音波を発生させる音響発信源と、
前記被照射体の表面の振動速度を測定する計測器と、
前記被照射体の表面における振動速度分布から前記被照射体における前記探知対象物の位置を特定するために用いる解析装置とを有し、
請求項1〜6のいずれかに記載の探知方法を行うことができる、非接触音響探知システム。
【請求項8】
被照射体の表面を振動させ得る音波を発生させる音響発信源と、
前記被照射体の表面のn箇所(n≧2)の測定個所であるP1、P2・・・Px・・Pn(xは1〜nの整数)の各々に、周波数がωの音波を照射し、Pxにおける前記振動速度であるEx(ω)を計測して、E1(ω)〜En(ω)を出力する計測器と、
前記計測器から出力されたE1(ω)〜En(ω)を入力し、前記被照射体の表面における振動速度分布から前記被照射体における前記探知対象物の位置を特定する解析装置とを有し、
前記解析装置が、
入力されたE1(ω)〜En(ω)の平均値をA(ω)とし、Pxにおける振動速度差の規格値であるDx(ω)をDx(ω)=(Ex(ω)−A(ω))/Ex(ω)と定義し、周波数(ω)とDx(ω)との関係をω−Dx(ω)図として表示部に表示する処理と、
n個作成された前記ω−Dx(ω)図の各々について、同一の周波数区間で複数個に区切り、さらに、各図においてDx(ω)の最大値の30〜70%における任意の値を閾値として設定し、n個の前記ω−Dx(ω)図の少なくとも1つにおいてDx(ω)の値が前記閾値以上である部分を含む周波数区間を抜き出し、抜き出した周波数区間の各々について、初めの周波数(ω)をfy-1、終りの周波数(ω)をfy(yは1〜mの整数である。)とし、前記式(1)によってGx(ωy)を求める処理と、
周波数(ω)がfy-1〜fyである場合の、測定箇所PxにおけるGx(ωy)を、実際のP1、P2・・・PX・・Pnの位置と相似関係の位置に配置して示す振動速度分布図yを作製し表示部に表示する処理と、
振動速度分布図y(yは1〜mの整数)の各々を構成するG1(ωy)〜Gn(ωy)について、G1(ωy)〜Gn(ωy)の平均値であるGave(ωy)を求め、G1(ωy)〜Gn(ωy)についてGave(ωy)の2倍以上のものの個数をQyとし、2倍以上のものの平均をGr(ωy)とし、さらにQyとGr(ωy)との積を求め、この積が大きい振動速度分布図s(1≦s≦m)を選択し、その振動速度分布図sの周波数区間であるfs-1〜fsを特定する処理と、
1(ωs)〜Gn(ωs)の各々がGave(ωs)の2倍以上となる測定箇所の振動速度の平均をB(ω)[ωはfs-1〜fs]とし、このB(ω)と周波数区間がfs-1〜fsの場合の前記A(ω)とから、相対的な振動速度差の規格値であるC(ω)をC(ω)=(B(ω)−A(ω))/B(ω)[ωはfs-1〜fs]と定義し、周波数(ω)とC(ω)との関係をω−C(ω)図として表示部に表示する処理と、
前記ω−C(ω)図において、C(ω)の最大値の30〜70%における任意の値を閾値とし、C(ω)における前記閾値以上の部分を構成する周波数区間の各々においてC(ω)をωについて積分し、得られた積分値が最も大きい周波数区間を選択し、その周波数区間であるft〜fuを最適応答周波数帯とする処理とを行う、
請求項7に記載の非接触音響探知システム。
【請求項9】
前記式(2)によってGx(ωz)を求め、さらに、周波数(ω)が最適応答周波数帯(ft〜fu)である場合の、測定箇所PxにおけるGx(ωz)を実際のP1、P2・・・PX・・Pnの位置と相似関係の位置に配置した、振動速度分布図zを作製し、表示部に表示し、前記物体における前記探知対象物の位置を特定する処理を前記解析装置がさらに行う、請求項7または8に記載の非接触音響探知システム。
【請求項10】
前記音響発信源から発生させ被照射体の表面を振動させ得る音波が、周波数がft〜fuに含まれるバースト波である、請求項7〜9のいずれかに記載の非接触音響探知システム。
【請求項11】
探知対象物を内部に含む被照射体の表面に音波を照射し、その表面の複数の測定個所において振動速度を測定し、得られた振動速度分布図から前記探知対象物の位置を特定する処理を、コンピュータを含む非接触音響探知システムに行わせるためのプログラムであって、
音波発信源から音波を照射し、前記被照射体の表面を振動させ、前記被照射体の表面のn箇所(n≧2)の測定個所を、各々、P1、P2・・・Px・・Pn(xは1〜nの整数)とし、それらの測定箇所の各々において、照射した音波の周波数がωである場合の前記被照射体の表面の振動速度を測定し、Pxにおける前記振動速度をEx(ω)とし、Ex(ω)を計測した計測器から与えられたE1(ω)〜En(ω)の平均値をA(ω)とし、Pxにおける振動速度差の規格値であるDx(ω)をDx(ω)=(Ex(ω)−A(ω))/Ex(ω)と定義し、周波数(ω)とDx(ω)との関係をω−Dx(ω)図として表示部に表示する処理と、
n個作成された前記ω−Dx(ω)図の各々について、同一の周波数区間で複数個に区切り、さらに、各図においてDx(ω)の最大値の30〜70%における任意の値を閾値として設定し、n個の前記ω−Dx(ω)図の少なくとも1つにおいてDx(ω)の値が前記閾値以上である部分を含む周波数区間を抜き出し、抜き出した周波数区間の各々について、初めの周波数(ω)をfy-1、終りの周波数(ω)をfy(yは1〜mの整数である。)とし、前記式(1)によってGx(ωy)を求める処理と、
周波数(ω)がfy-1〜fyである場合の、測定箇所PxにおけるGx(ωy)を、実際のP1、P2・・・PX・・Pnの位置と相似関係の位置に配置して示す振動速度分布図yを作製し表示部に表示する処理と、
振動速度分布図y(yは1〜mの整数)の各々を構成するG1(ωy)〜Gn(ωy)について、G1(ωy)〜Gn(ωy)の平均値であるGave(ωy)を求め、G1(ωy)〜Gn(ωy)についてGave(ωy)の2倍以上のものの個数をQyとし、2倍以上のものの平均をGr(ωy)とし、さらにQyとGr(ωy)との積を求め、この積が大きい振動速度分布図s(1≦s≦m)を選択し、その振動速度分布図sの周波数区間であるfs-1〜fsを特定する処理と、
1(ωs)〜Gn(ωs)の各々がGave(ωs)の2倍以上となる測定箇所の振動速度の平均をB(ω)[ωはfs-1〜fs]とし、このB(ω)と周波数区間がfs-1〜fsの場合の前記A(ω)とから、相対的な振動速度差の規格値であるC(ω)をC(ω)=(B(ω)−A(ω))/B(ω)[ωはfs-1〜fs]と定義し、周波数(ω)とC(ω)との関係をω−C(ω)図として表示部に表示する処理と、
前記ω−C(ω)図において、C(ω)の最大値の30〜70%における任意の値を閾値とし、C(ω)における前記閾値以上の部分を構成する周波数区間の各々においてC(ω)をωについて積分し、得られた積分値が最も大きい周波数区間を選択し、その周波数区間であるft〜fuを最適応答周波数帯とする処理とを、コンピュータを含む非接触音響探知システムに行わせるためのプログラム。
【請求項12】
前記式(2)によってGx(ωz)を求め、さらに、周波数(ω)が最適応答周波数帯(ft〜fu)である場合の、測定箇所PxにおけるGx(ωz)を実際のP1、P2・・・PX・・Pnの位置と相似関係の位置に配置した、振動速度分布図zを作製し、表示部に表示し、前記物体における前記探知対象物の位置を特定する処理を、コンピュータを含む非接触音響探知システムに行わせるための、請求項11に記載のプログラム。
【請求項13】
請求項11または12に記載のプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体。


【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図3】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−247737(P2011−247737A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120901(P2010−120901)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 発行者:社団法人電子情報通信学会、刊行物名:電子情報通信学会技術研究報告 信学技報 Vol.109 No.425、発行日:2010年2月17日 発行者:社団法人日本音響学会、刊行物名:日本音響学会2010年春季研究発表会講演論文集、発行日:2010年3月1日
【出願人】(593232206)学校法人桐蔭学園 (33)
【出願人】(000172813)佐藤工業株式会社 (73)
【Fターム(参考)】