説明

音波発生制御装置

【課題】移動体の発進前に、移動体の内部や周囲から小動物や虫などを追い払う。
【解決手段】電気自動車1に設けられている音波発生制御システム11の音波発生制御部23は、始動検出部21により電気自動車1の始動が検出されたとき、音波発生部25a,25bからの駆除音波の発生を開始させ、電気自動車1の始動が検出されてから規定時間が経過したとき、または、発進検出部22により電気自動車1の発進が検出されたとき、音波発生部25からの駆除音波の発生を停止させる。本発明は、例えば、電気自動車の内部や周囲から小動物や虫などを追い払うシステムに適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音波発生制御装置に関し、特に、移動体の内部や周囲から小動物や虫などを追い払う場合に用いて好適な音波発生制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電気自動車の充電時に虫や獣を忌避させるノイズ波を発生させて、虫や獣が電気自動車に近寄るのを防ぐことが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、従来、フォークリフトの充電器に高周波発生回路を接続して、充電中に高周波を発生することにより、ネズミ等の有害動物を駆除することが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
しかしながら、特許文献1または2に記載の発明では、充電が停止すると音波(ノイズ波、高周波等を含む)の発生が停止するため、小動物や昆虫などが車両に近寄ってくるのを防止することができない。従って、例えば、充電停止後しばらくしてから車両を発進させたり、充電せずに車両を発進させたりする場合に、車両の下や内部に潜り込んだ小動物や虫などを巻き込む事故が発生する恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−289432号公報
【特許文献2】特開平7−144894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、移動体の発進前に、移動体の内部や周囲から小動物や虫などを追い払うことができるようにするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面の音波発生制御装置は、移動体の始動が検出されたとき、移動体の周囲または内部に向けて所定の周波数を含む音波の発生を開始させ、移動体の発進が検出されたとき、音波の発生を停止させる音波発生制御部を備える。
【0008】
本発明の一側面の音波発生制御装置においては、移動体の始動が検出されたとき、移動体の周囲または内部に向けて所定の周波数を含む音波の発生が開始され、移動体の発進が検出されたとき、音波の発生が停止される。
【0009】
従って、移動体の発進前に、移動体の内部や周囲から小動物や虫などを追い払うことができる。
【0010】
この音波発生制御装置は、例えば、ECU(Electrical Control Unit)等により構成される。
【0011】
この音波発生制御部には、さらに、音波の発生が開始されてから規定時間が経過したとき、音波の発生を停止させることができる。
【0012】
これにより、移動体を始動した後、移動体を発進させなくても、音波の発生が自動的に停止する。
【0013】
この音波発生制御装置には、移動体の始動を検出する始動検出部と、移動体の発進を検出する発進検出部とをさらに設けることができる。
【0014】
この発進検出部には、移動体のパーキングブレーキが解除されたとき、または、移動体の速度の絶対値が所定の閾値以上になったとき、移動体が発進したと判定させることができる。
【0015】
この音波発生制御装置には、音波を発生する音波発生部をさらに設けることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の一側面によれば、移動体の発進前に、移動体の内部や周囲から小動物や虫などを追い払うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明を適用した音波発生制御システムの一実施の形態を示す模式図である。
【図2】音波発生制御処理について説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本技術を実施するための形態(以下、実施の形態という)について説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態
2.変形例
【0019】
<1.実施の形態>
[1−1.音波発生制御システム11の構成例]
図1は、本発明を適用した音波発生制御システム11の一実施の形態を示す模式図である。
【0020】
音波発生制御システム11は、例えば、図1に示されるように、電気自動車1に設けられる。なお、電気自動車1の駆動機構はモータであるため、エンジンを駆動機構とする自動車に比べて、発進時、走行中とも音や振動の発生が小さい。従って、電気自動車1の停車中に、小動物や虫などが電気自動車1の周囲や床下等にいても、それらの小動物や虫などが音や振動を感じないまま、電気自動車1が発進してしまう可能性が高い。その結果、それらの小動物や虫などが電気自動車1にぶつかったり、轢かれたりする危険性が高くなる。
【0021】
これに対して、音波発生制御システム11は、電気自動車1の発進前に、電気自動車の内部や周囲から小動物や虫など(以下、駆除対象と称する)を追い払うための音波(以下、駆除音波とも称する)の発生を制御するシステムである。
【0022】
音波発生制御システム11は、始動検出部21、発進検出部22、音波発生制御部23、タイマ24、および、音波発生部25a,25bを含むように構成される。
【0023】
始動検出部21は、電気自動車1の始動を検出し、検出結果を音波発生制御部23に供給する。ここで、電気自動車1の始動の検出には、任意の方法を採用することができる。例えば、電気自動車1の運転者がモータ(不図示)の駆動回路へ電力供給を開始させるためのスイッチ操作をしたことの検出、電気自動車1に搭載されたバッテリ(不図示)から車内のアクセサリの一部または全部に電力を供給させるためのスイッチ操作をしたことの検出、運転者が運転席に着座したことの検出などが挙げられる。
【0024】
発進検出部22は、電気自動車1の発進を検出し、検出結果を示す信号を音波発生制御部23に供給する。なお、電気自動車1の発進を検出する方法には、任意の方法を採用することができる。例えば、電気自動車1のパーキングブレーキが解除されたとき、電気自動車1の速度が0でなくなったとき、または、電気自動車1の速度の絶対値が所定の閾値以上になったとき等の条件により、電気自動車1の発進を検出するようにすることができる。
【0025】
音波発生制御部23は、例えば、ECU(Electrical Control Unit)等により構成され、音波発生部25a,25bからの駆除音波の発生を制御する。また、音波発生制御部23は、タイマ24を内蔵している。
【0026】
音波発生部25a,25bは、例えば、超音波発生器、音源、スピーカ等により構成され、所定の周波数を含む音波を発生する。また、音波発生部25a,25bは、音波発生制御部23から、音波発生開始の指示を受けてから音波発生停止の指示を受けるまでの間、継続して音波を発生する。
【0027】
なお、駆除音波の周波数は、特に限定されるものではなく、例えば、駆除対象の種類に基づいて設定される。例えば、上述した特許文献1には、蚊を駆除するのに適した音波の周波数の範囲は約6kHz〜9kHzであり、猫を駆除するのに適した音波の周波数の範囲は約18kHz〜23kHzであり、ネズミを駆除するのに適した音波の周波数の範囲は約30kHz〜50kHzであることが示されている。
【0028】
また、駆除対象の種類の数は任意である。そして、複数の種類の駆除対象を想定する場合、例えば、各駆除対象を駆除するのに適した周波数を全て含むように、駆除音波の周波数を設定するようにすればよい。
【0029】
さらに、季節や時間帯等により駆除対象が異なる場合(例えば、夏場と冬場で現れる動物が異なる場合等)には、駆除対象の変化に応じて、駆除音波の周波数を変動させるようにしてもよい。
【0030】
また、可能であれば、騒音問題が発生しないように、人間に聞こえにくい超音波域(20kHz以上)に駆除音波の周波数を設定するようにすることが望ましい。
【0031】
また、音波発生部25a,25bを設置する位置は、電気自動車1の構造等により異なるが、例えば、電気自動車1の床下やボンネットの中など、電気自動車1の周囲や車室内から見えにくく、駆除対象が留まりやすい場所付近に向けて駆除音波を発生できる位置に設置することが望ましい。例えば、音波発生部25aは、電気自動車1の床下に向けて音波を発生する位置に設置され、音波発生部25bは、ボンネットの中など、外部から駆除対象が侵入しやすい場所に向けて音波を発生する位置に設置される。
【0032】
なお、音波発生部を設置する数は任意であり、必要に応じて増減させることが可能である。
【0033】
また、以下、音波発生部25a,25bを個々に区別する必要がない場合、単に音波発生部25と称する。
【0034】
[1−2.音波発生制御システム11の処理]
次に、図2のフローチャートを参照して、音波発生制御システム11により実行される音波発生制御処理について説明する。
【0035】
ステップS1において、音波発生制御部23は、始動検出部21による検出結果に基づいて、電気自動車1が始動したか否かを判定する。ステップS1の判定処理は、電気自動車1が始動したと判定されるまで定期的に行われ、電気自動車1が始動したと判定された場合、処理はステップS2に進む。
【0036】
ステップS2において、音波発生制御部23は、タイマ24をスタートする。
【0037】
ステップS3において、音波発生部25は、音波発生制御部23の制御の下に、音波(駆除音波)の発生を開始する。
【0038】
ステップS4において、タイマ24がスタートしてから規定時間が経過したか否かを判定する。まだ規定時間が経過していないと判定された場合、処理はステップS5に進む。
【0039】
ステップS5において、音波発生制御部23は、発進検出部22による検出結果に基づいて、電気自動車1が発進したか否かを判定する。電気自動車1が発進していないと判定された場合、処理はステップS4に戻る。
【0040】
その後、ステップS4において、規定時間が経過したと判定されるか、ステップS5において、電気自動車1が発進したと判定されるまで、ステップS4およびS5の処理が繰り返し実行される。
【0041】
一方、ステップS4において、規定時間が経過したと判定されるか、ステップS5において、電気自動車1が発進したと判定された場合、処理はステップS6に進む。
【0042】
ステップS6において、音波発生部25は、音波発生制御部23の制御の下に、音波(駆除音波)の発生を停止する。
【0043】
このように、電気自動車1の始動が検出されてから、規定時間が経過するか、または、電気自動車1が発進するまでの間、駆除音波が連続して発生される。従って、電気自動車1の床下等にいる駆除対象を移動前に追い払うことができ、駆除対象が電気自動車1にぶつかったり、轢かれたりすることを防止することができる。
【0044】
なお、この規定時間は、電気自動車1の内部や周囲から駆除対象を追い払うのに十分な時間に設定される。
【0045】
また、電気自動車1の発進後は、駆除対象を追い払う必要がなくなるため、駆除音波の発生が自動的に停止される。
<2.変形例>
以下、本発明の実施の形態の変形例について説明する。
【0046】
以上の説明では、本発明を電気自動車に適用する例を示したが、本発明は、電動であるか否かに関わらず移動体全般に適用することができる。従って、もちろん、電気自動車以外のエンジン駆動の自動車にも適用できる。なお、移動体の駆動機構の違いに応じて、移動体の始動の検出方法、移動体の発進の検出方法を変更させる必要がある。
【0047】
また、例えば、図2のステップS4の処理を省略して、移動体の始動が検出されてから、移動体が発進するか、あるいは、移動体が停止するまで、駆除音波を発生するようにしてもよい。
【0048】
なお、本明細書において、システムとは、複数の構成要素(装置、モジュール(部品)等)の集合を意味し、すべての構成要素が同一筐体中にあるか否かは問わない。したがって、別個の筐体に収納され、ネットワークを介して接続されている複数の装置、及び、1つの筐体の中に複数のモジュールが収納されている1つの装置は、いずれも、システムである。
【0049】
また、本発明の実施の形態は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 電気自動車
11 音波発生制御システム
21 始動検出部
22 発進検出部
23 音波発生制御部
24 タイマ
25a,25b 音波発生部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の始動が検出されたとき、前記移動体の周囲または内部に向けて所定の周波数を含む音波の発生を開始させ、前記移動体の発進が検出されたとき、前記音波の発生を停止させる音波発生制御部を
備えることを特徴とする音波発生制御装置。
【請求項2】
前記音波発生制御部は、さらに、前記音波の発生が開始されてから規定時間が経過したとき、前記音波の発生を停止させる
ことを特徴とする請求項1に記載の音波発生制御装置。
【請求項3】
前記移動体の始動を検出する始動検出部と、
前記移動体の発進を検出する発進検出部と
をさらに備えることを特徴とする請求項1または2に記載の音波発生制御装置。
【請求項4】
前記発進検出部は、前記移動体のパーキングブレーキが解除されたとき、または、前記移動体の速度の絶対値が所定の閾値以上になったとき、前記移動体が発進したと判定する
ことを特徴とする請求項3に記載の音波発生制御装置。
【請求項5】
前記音波を発生する音波発生部を
さらに備えることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の音波発生制御装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−106573(P2013−106573A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−254863(P2011−254863)
【出願日】平成23年11月22日(2011.11.22)
【出願人】(510123839)オムロンオートモーティブエレクトロニクス株式会社 (110)
【Fターム(参考)】