説明

音源検出装置

【課題】誤検出を低減させ、検出性能を向上させることが可能な接近車両検出装置を提供する。
【解決手段】集音器13,14,15,16により集音された音に基づいて所定の音源を検出する音源検出装置であって、集音された音信号から雑音を抽出する雑音抽出部21と、集音された音信号から雑音抽出部21により抽出された雑音の信号成分を抑制する雑音抑制部22とを備え、音源検出部24が雑音抑制後の音の情報を用いて接近車両等、所定の音源の位置を検出する。このように、音源検出装置は、雑音の信号成分を抑制した音を基に必要な所定の音源の位置を検出するため、雑音の影響を予め排除し、必要な音源のみを検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の集音器で集音された音に基づいて音源を検出する音源検出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
音源検出装置では、複数の集音器が周囲の音をそれぞれ集音し、その各音の到達時間差に基づいて音源(特に、車両の走行音)の位置を特定する。実開平5−92767号公報に記載の装置では、所定の間隔で配設された複数のマイクロホンが出力する電気信号から帯域通過フィルタで低周波領域と高周波領域の周波数成分をそれぞれ除去して補正電気信号に変換し、その補正電気信号から車両の走行音の特徴の現れる所定の周波数帯域のパワーを算出し、そのパワーレベルが所定値より大きい場合に接近車両有りと判定するとともに、その補正電気信号により不要な雑音成分を除去して雑音抑制信号に変換し、複数のマイクロホンの雑音抑制信号間の相互相関を演算し、相関が最大となる到達時間差から接近車両の接近方向を演算する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−92767号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような技術にあっては、接近車両の方向を検出できるものの、例えばエンジンや、クーリングファン等といった自車両が発する音や工事現場等、検出不要な他の雑音も検出する。これらの雑音は、接近車両等、必要な音源の検出を行うにあたりノイズとなるため、誤検出が多く検出精度の向上が図れないという課題がある。
【0005】
そこで、本発明の課題は、誤検出を低減させ、検出精度を向上させることが可能な音源検出装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明に係る音源検出装置は、複数の集音器で集音された音の情報に基づいて所定の音源を検出する音源検出装置であって、複数の集音器により集音された音信号から所定の音源以外から発せられた雑音を抽出する雑音抽出部と、複数の集音器により集音された音信号から雑音抽出部により抽出された雑音の信号成分を抑制する雑音抑制部と、雑音抑制部により雑音の信号成分が抑制された音の情報を用いて所定の音源の位置を検出する音源検出部と、を備える。
【0007】
この音源検出装置では、集音器により集音された音信号から雑音を抽出し、この抽出された雑音の信号成分を抑制し、この抑制後の音の情報を用いて所定の音源の位置を検出する。従って、雑音の影響を受けることなく、必要な音源のみを精度良く検出することができ、誤検出を低減させ、音源の検出精度を向上させることができる。
【0008】
また、音源検出装置は、移動体に搭載されており、雑音抽出部は、該移動体内部の雑音源に向けて雑音強調処理を実行するようにしてもよい。この場合、集音器に対する雑音源の方向や距離が既知であるときに、抑制対象の雑音の信号成分をより精度良く抽出することが可能となるため、好適な条件で音源検出処理を実行することができる。
【0009】
この音源検出装置において、雑音抽出部による雑音の抽出と、雑音抑制部による雑音の信号成分の抑制は、交互に行われるようにしてもよい。この場合、雑音抽出処理と雑音抑制処理とを交互に行うため、ECU等の処理の負荷を低減させることができる。
【0010】
また、この音源検出装置において、雑音抽出部による雑音の抽出と、雑音抑制部による雑音の信号成分の抑制は、並行して行われるようにしてもよい。この場合、雑音抽出処理と雑音抑制処理を並行に行うため、処理時間を短縮できる。そして、雑音抽出後直ちに雑音抑制処理を行うため、雑音抑制の性能を向上させることができる。
【0011】
この音源検出装置において、音源検出装置は、車両に搭載され、車両は、車両の車両状態を検出する車両状態検出部を備え、雑音抽出部による雑音の抽出と、雑音抑制部による雑音の信号成分の抑制は、車両状態検出部により検出された車両状態に応じて実行されるようにしてもよい。この場合、車両の状態に応じて雑音抽出処理と雑音抑制処理が実行されるため、不要な場合にはこれらの処理を中止し必要な場合にのみこれらの処理を実行することが可能となり、ECU等の処理の負荷を低減させることができ、更に好適な条件で音源検出処理を実行することができる。
【0012】
この音源検出装置において、音源検出装置は、車両に搭載され、車両は、車両の周辺環境を検出する周辺環境検出部を備え、雑音抽出部は、周辺環境検出部により検出された周辺環境中に雑音源があるときに、雑音源から発せられた雑音を抽出するようにしてもよい。この場合、周辺の雑音源からの雑音の信号成分も抑制できるため、より好適な条件で音源検出処理を実行することができる。
【0013】
また、この音源検出処理において、音源検出装置は、車両に搭載され、車両は、車両の周辺の固定音源を検出する固定音源検出部を備え、雑音抽出部は、固定音源検出部により検出された固定音源から発せられた雑音を抽出するようにしてもよい。この場合、固定音源検出部が、固定音源を検出しここから発せられる音も雑音として抽出し抑制することが可能となるため、より一層好適な条件で音源検出処理を実行することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、誤検出を低減させ、検出精度を向上させることが可能な音源検出装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1及び第2実施形態に係る音源検出装置の概略構成図である。
【図2】第1実施形態に係る音源検出装置の音源検出処理を示すフローチャートである。
【図3】第2実施形態に係る音源検出装置の音源検出処理を示すフローチャートである。
【図4】本発明の第3実施形態に係る音源検出装置の概略構成図である。
【図5】第3実施形態に係る音源検出装置の音源検出処理を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第4実施形態に係る音源検出装置の概略構成図である。
【図7】第4実施形態に係る音源検出装置の音源検出処理を示すフローチャートである。
【図8】本発明の第5実施形態に係る音源検出装置の概略構成図である。
【図9】第5実施形態に係る音源検出装置の音源検出処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明に係る音源検出装置の実施形態について説明する。なお、各図において同一又は相当する要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0017】
本実施形態に係る音源検出装置は、車両に搭載され、接近車両の方位を検出するものである。具体的には、本実施形態に係る音源検出装置は、複数の集音器(マイクロホン)で集音された各音に基づいて接近車両を検出し(つまり、周辺車両の走行音の音源の移動方向を特定し)、検出した接近車両の情報を運転支援装置に提供する。本実施形態は、音源検出装置の各構成要素及びその処理態様が異なる第1〜第5の実施形態からなる。
【0018】
なお、車両の走行音としては、主として、ロードノイズ(タイヤ表面と路面との摩擦音)とパターンノイズ(タイヤ溝における空気の渦(圧縮/開放))が挙げられる。この車両の走行音の周波数成分の範囲は、実験等によって予め測定しておいてもよい。
【0019】
まずは、図1を参照して、第1実施形態に係る音源検出装置1について説明する。図1は、第1実施形態に係る音源検出装置の構成図である。
【0020】
音源検出装置1は、4個の集音器を有しており、2個の集音器(集音器対)からなる集音器ユニットが車幅方向の左側と右側に配置されている。音源検出装置1では、各集音器ユニットにおける2個の集音器の間隔を利用して音源の検出を行う。音源検出装置1は、集音器アレイ10(左側集音器ユニット11(第1集音器13及び第2集音器14)、右側集音器ユニット12(第3集音器15及び第4集音器16))と、ECU[Electronic Control Unit]20(雑音抽出部21、雑音抑制部22、マイクロホンアレー処理部23及び音源検出部24)とを備えている。
【0021】
集音器アレイ10は、左側集音器ユニット11と右側集音器ユニット12を有している。また、左側集音器ユニット11は、第1集音器13と第2集音器14を有している。第1集音器13は、車幅方向の左側の外側に配置される。第2集音器14は、第1集音器13から所定の間隔を空けて車両中心側に配置される。右側集音器ユニット12は、第3集音器15と第4集音器16を有している。第4集音器16は、車幅方向の右側の外側に配置される。第3集音器15は、第4集音器16から所定の間隔を空けて車両中心側に配置される。耐ノイズ性能を向上させるべく、各集音器ユニット11,12内の集音器の間隔は狭い間隔で配置されている。
【0022】
また、各集音器13,14,15,16は、音響電気変換器としての機能を有し、集音した音を電気信号に変換し、その電気信号をECU20に送信する。なお、各集音器13,14,15,16は、好適には、無指向性の集音器が用いられる。
【0023】
ECU20は、CPU[CentralProcessing Unit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]等からなる電子制御ユニットであり、音源検出装置1を統括制御する。ECU20では、ROMに記憶されている接近車両用のアプリケーションをRAMにロードしてCPUで実行する。ECU20は、図1に示すように、雑音抽出部21、雑音抑制部22、マイクロホンアレー処理部23及び音源検出部24を有し、これらの雑音抽出部21、雑音抑制部22、マイクロホンアレー処理部23及び音源検出部24は、上記の各アプリケーションに相当する。
【0024】
雑音抽出部21は、接近車両等、音源の検出対象である所定の音源以外から発せられた雑音を抽出する。すなわち、雑音抽出部21は、集音器アレイ10により集音された音信号から自車両のエンジンやファン等の既知の雑音源から発せられた雑音を抽出する機能を有し、自車両内部の雑音源に向けて雑音強調処理を実行する。雑音抽出部21が行う雑音抽出処理としては、例えばビームフォーミング技術を用いることができる。ビームフォーミング技術においては、エンジン等の雑音源の方向や距離が既知であるときに、音の抽出方向に指向性を持たせ、抽出方向の中心を雑音源に向けて雑音源から発せられた音を積極的に抽出することにより雑音強調処理を行う。このように雑音抽出部21が雑音強調処理を行うことにより、抑制対象の雑音の信号成分をより精度良く抽出することが可能となるため、好適な条件で音源検出処理を実行することができる。
【0025】
雑音抑制部22は、集音器アレイ10により集音された音信号から雑音抽出部21により抽出された雑音の信号成分を抑制する機能を有する。雑音抑制部22が行う雑音抑制処理としては、例えばスペクトルサブトラクション法を用いることができる。スペクトルサブトラクション法は、エンジン等の雑音のパワースペクトルの平均値を推定し、雑音を含んだ集音器アレイ10からの電気信号のパワースペクトルから、雑音のパワースペクトルを差し引くことにより、雑音成分を抑制するものである。雑音抑制部22が上記のような雑音抑制処理を行うことにより、集音器アレイ10から出力された電気信号から雑音成分が抑制された電気信号を得ることができる。
【0026】
マイクロホンアレー処理部23は、各集音器対(左側集音器ユニット11及び右側集音器ユニット12)毎に、雑音抑制部22により雑音成分が抑制された電気信号の相互相関値を計算する。具体的には、集音器対の電気信号がどの程度似ているか(波形が近いか)を示す相関値を計算する。ここでは、左側集音器ユニット11の第1集音器13と第2集音器14との電気信号間の相互相関値、右側集音器ユニット12の第3集音器15と第4集音器16との電気信号間の相互相関値が計算される。また、マイクロホンアレー処理部23は、左側集音器ユニット11及び右側集音器ユニット12内における2個の電気信号間の位相差を計算する。更に、マイクロホンアレー処理部23では、一定時間毎に計算される位相差を用いて、位相差の分散(ばらつき)を計算する。なお、相互相関値や位相差を計算する場合、相互相関関数やフーリエ変換によって得ることができる周波数情報を用いて計算する。
【0027】
音源検出部24では、各集音器対毎に、相互相関値と位相差分散に基づいて継続的に存在する音源を検出する。ここでは、相互相関値が閾値(相互相関判定用)以上か否かを判定し、集音器対でそれぞれ集音した音が似た音か否かを判定する。この閾値(相互相関判定用)は、相互相関値から電気信号の波形が似ているか否か判定するための閾値であり、実験等によって予め設定される。また、位相差分散が閾値(位相差分散判定用)以下か否かを判定し、集音器対でそれぞれ集音した音がある位置に継続的に存在するか否かを判定する。この閾値(位相差分散判定用)は、位相差分散から音源がある位置に継続的に存在しているか否かを判定するための閾値であり、実験等によって予め設定される。そして、相互相関値が閾値(相互相関値判定用)以上かつ位相差分散が閾値(位相差分散判定用)以下の場合には音源が継続的に存在していると判定し、この条件を満たさない場合には音源が存在しないと判定する。
【0028】
また、運転支援装置30は、運転者に対して各種運転支援する装置である。特に、運転支援装置30は、音源検出装置1から接近車両情報を受信し、このとき接近車両に関する運転支援を実施する。例えば、自車両への接近車両が存在する場合、自車両に対する接近車両の衝突の可能性を判定し、衝突の可能性があると判定したときには運転者に対して警報を出力したり、接近車両の情報を提供し、さらに、衝突の可能性が高まった場合には自動ブレーキ等の車両制御を行う。
【0029】
次に、図2を参照して、音源検出装置1の動作について説明する。図2は、第1実施形態に係る音源検出装置1のECU20における処理の流れを示すフローチャートである。図2のフローチャートに示される一連の処理は、ECU20によって予め定められた周期で繰り返し実行される。この一連の処理は、集音器ユニット11,12毎に行われ、具体的には、第1集音器13が集音した音と第2集音器14が集音した音の比較、及び第3集音器15が集音した音と第4集音器16が集音した音の比較により所定の音源の方位を検出する。以下では、第1集音器13が集音した音と第2集音器14が集音した音の比較により音源検出を行う動作について説明する。なお、このフローチャートの一連の処理とは別に、各集音器13,14,15,16では、車外の音を集音し、その集音した音を電気信号に変換してECU20に送信している。
【0030】
このフローチャートの制御処理は、例えば車両のイグニッションオンによって開始され、まずステップS10(以下、「S10」という。他のステップにおいても同様とする。)にて、ECU20において各集音器13,14,15,16からの電気信号が入力される。また、このときECU20内のフィルタ(不図示)によりフィルタリング処理が行われ、このとき、当該電気信号から高周波数帯域の成分と低周波数帯域の成分が除去される。
【0031】
そして、S12において、雑音抽出部21により、エンジン等の雑音源に向けて雑音を強調させる雑音抽出処理が行われ、その後S14において、雑音抑制部22により、雑音抽出部21が強調した雑音を含む電気信号から、この雑音成分が抑制される。
【0032】
その後、S16において、マイクロホンアレー処理部23により、雑音成分が抑制された信号を用いて、相互相関値及び位相差分散の計算が行われ、この相互相関値及び位相差分散の値を用いて音源検出部24により、音源の存在有無及び音源の方位が判定されて一連の処理が終了する。
【0033】
以上のように、第1実施形態における音源検出装置1においては、集音器アレイ10で集音された音信号からエンジン等から発せられる雑音を抽出する雑音抽出部21と、集音器アレイ10で集音された音信号から雑音抽出部21により抽出された雑音の信号成分を抑制する雑音抑制部22とを備え、マイクロホンアレー処理部23及び音源検出部24は、雑音の信号成分が抑制された電気信号を用いて、接近車両等の音源の位置を検出する。よって、予め雑音の影響を排除できるため、接近車両等、車外の検出音の検出精度を高めることができ、誤検出を低減させ、検出性能を向上させることができる。
【0034】
また、第1実施形態における音源検出装置1においては、雑音抽出部21による雑音の抽出を行った後に、雑音抑制部22による雑音の信号成分の抑制を行い、雑音抽出と雑音抑制を交互に行っているため、雑音抽出処理と雑音抑制処理を同時に行った場合と比較して処理負担を抑えることも可能となっている。なお、雑音抽出処理と雑音抑制処理の順序は、上記に限定されず、雑音抑制処理をした後に雑音抽出処理を行うようにしてもよい。
【0035】
次に、第2実施形態における音源検出装置について図3を参照しながら説明する。第2実施形態は、第1実施形態の音源検出装置1と同一構成であるが、雑音抽出部21による雑音の抽出と雑音抑制部22による雑音の信号成分の抑制を並行して行う点が第1実施形態と異なる。
【0036】
第2実施形態では、図3に示すように、S20において、各集音器13,14,15,16からの電気信号が入力されフィルタリング処理が行われた後は、S22及びS24において、雑音抽出部21による雑音抽出と雑音抑制部22による雑音抑制が並行して行われる。その後、S26において、マイクロホンアレー処理部23により、雑音成分が抑制された信号を用いて、相互相関値及び位相差分散の計算が行われ、この相互相関値及び位相差分散の値を用いて音源検出部24により、音源の存在有無及び音源の方位が判定され、一連の処理が終了する。なお、図3におけるS20〜S26の個々の処理の内容自体は、図2におけるS10及びS16の個々の処理の内容と同一である。
【0037】
以上のように、第2実施形態では、雑音抽出部21による雑音抽出と雑音抑制部22による雑音抑制を並行して行うため、処理時間を短縮することが可能となる。また、雑音抽出と雑音抑制を同時に行っており、雑音抽出された直後の電気信号に対して雑音抑制することになるため、雑音抑制の精度を高めることができる。
【0038】
次に、第3実施形態における音源検出装置51について図4及び図5を参照しながら説明する。第3実施形態は、自車両の車両状態を検出する車両状態検出部40を備え、この車両状態検出部40が検出した自車両の車両状態を用いて、雑音抽出及び雑音抑制(以下、雑音処理と称する)を行う点に特徴を有する。
【0039】
ここで、車両状態検出部40としては、例えば、車速センサや加速度センサを用いることができる。以下では、車両状態検出部40として、車速センサを用いた場合について説明する。
【0040】
第3実施形態では、図5に示すように、S30において各集音器13,14,15,16からの電気信号が入力されフィルタリング処理が行われた後は、S32において、車両状態検出部40による自車両の車速の検出が行われる。このとき、検出された車速がECU20に入力される。そして、S34において、ECU20により、入力された車速の値が予め定めた閾値Aより大きいか否かが判定され、A以下である場合は音源検出が不要として一連の処理を終了する。
【0041】
一方、S34において車両状態検出部40により検出された車速の値が閾値Aより大きい場合はS36に移行し、雑音抽出部21による雑音抽出が行われる。このとき、例えば雑音抽出部21は、稼動しているエンジンやタイヤに対して雑音抽出を行い、エンジンやタイヤから発せられた音を雑音として強調処理を行う。
【0042】
その後S38において雑音抑制部22による雑音抑制が行われ、更にS40において、マイクロホンアレー処理部23により、雑音成分が抑制された信号を用いて、相互相関値及び位相差分散の計算が行われ、この相互相関値及び位相差分散の値を用いて音源検出部24により、音源の存在有無及び音源の方位が判定され、一連の処理が終了する。なお、図5におけるS30、S38及びS40の処理は、それぞれ、図2におけるS10、S14及びS16の処理と同一である。
【0043】
以上のように、第3実施形態では、車両状態検出部40により自車両の車両状態を検出し、その検出結果に応じて雑音処理を行う。従って、自車両の車両状態に合わせて必要な場合にのみ雑音処理が行われるため、処理負担をより低減できるとともに、最適な条件で音源検出を実行することができる。
【0044】
なお、上記では、車両状態検出部40が車速を検出し、検出した車速が閾値Aを超えるか否かに基づいて雑音処理を行う例について説明したが、検出する車両状態としては車速に限られず、例えば、エンジンの稼動状態やエアコンの使用状況等を車両状態として検出し、これらの検出結果に応じて、雑音処理を行うか否かを判定するようにしてもよい。また、上記では、雑音抽出後に雑音抑制を行う例について説明したが、第2実施形態と同様、雑音抽出と雑音抑制を並行して行うようにしてもよい。
【0045】
次に、第4実施形態における音源検出装置71について図6及び図7を参照しながら説明する。第4実施形態は、自車両の周辺環境を検出する周辺環境検出部60を備え、この周辺環境検出部60が検出した周辺環境から工事現場等の雑音源が存在するか否かを判断して、この判断結果に応じて異なる態様の雑音抽出を行う点に特徴を有する。
【0046】
ここで、周辺環境検出部60としては、例えばカーナビゲーションシステムによって得られる地図情報等を用いることができる。第4実施形態では、図7に示すように、S50において、各集音器13,14,15,16からの電気信号が入力されフィルタリング処理が行われた後は、S52において、周辺環境検出部60による周辺環境の検出が行われる。このとき、検出された周辺環境の情報がECU20に入力される。そして、S54において、ECU20により、入力された周辺環境の中に工事現場等の雑音源が存在するか否かが判定される。
【0047】
S54において雑音源が存在すると判定された場合はS56に移行し、雑音抽出部21による雑音抽出が行われる。このとき、雑音抽出部21は、自車両の雑音源だけでなく周辺環境の雑音源である工事現場等に対しても雑音抽出を行い、これらの雑音源から発せられた雑音の強調処理を行う。一方、S54において周辺に雑音源が存在しないと判定された場合は、S12等と同様、自車両の雑音源に対して雑音抽出を行う。
【0048】
その後S60において雑音抑制部22により雑音抑制が行われ、更にS62においてマイクロホンアレー処理部23により、雑音成分が抑制された信号を用いて、相互相関値及び位相差分散の計算が行われ、この相互相関値及び位相差分散の値を用いて音源検出部24により、音源の存在有無及び音源の方位が判定され、一連の処理が終了する。なお、図7におけるS50、S60及びS62の処理は、それぞれ、図2におけるS10、S14及びS16の処理と同一である。
【0049】
以上のように、第4実施形態では、周辺環境検出部60により周辺環境を検出し、周辺に雑音源が存在するか否かに応じて異なる態様の雑音抽出処理を行う。従って、周辺環境における雑音源の影響を効果的に除去することが可能となり、音源検出の精度をより向上させることができる。なお、上記では、雑音抽出後に雑音抑制を行う例について説明したが、第2実施形態と同様、雑音抽出と雑音抑制を並行して行うようにしてもよい。
【0050】
次に、第5実施形態における音源検出装置91について図8及び図9を参照しながら説明する。第5実施形態は、自車両の周辺に存在する工事現場等の固定音源を検出する固定音源検出部80を備え、この固定音源検出部80が固定音源を検出したか否かに応じて異なる態様の雑音抽出を行う点に特徴を有する。
【0051】
第5実施形態では、図9に示すように、S70において各集音器13,14,15,16からの電気信号が入力されフィルタリング処理が行われた後は、S72において、固定音源検出部80による固定音源の検出が行われる。このとき、固定音源を検出したか否かがECU20に入力される。そして、S74において、自車両の周辺に固定音源が存在するか否かが判定される。
【0052】
S74において、固定音源検出部80により固定音源が存在すると判定された場合はS76に移行し、雑音抽出部21による雑音抽出が行われる。このとき、雑音抽出部21は、自車両の雑音源だけでなく検出された工事現場等の固定音源に対しても雑音抽出を行い、これらの雑音源から発せられた雑音の強調処理を行う。一方、S74において、周辺に固定音源が存在しないと判定された場合は、S12等と同様、自車両の雑音源に対して雑音抽出を行う。
【0053】
その後、S80において雑音抑制部22により雑音抑制が行われ、更にS82においてマイクロホンアレー処理部23により、雑音成分が抑制された信号を用いて、相互相関値及び位相差分散の計算が行われ、この相互相関値及び位相差分散の値を用いて音源検出部24により、音源の存在有無及び音源の方位が判定され、一連の処理が終了する。なお、図9におけるS70、S80及びS82の処理は、それぞれ、図2におけるS10、S14及びS16の処理と同一である。
【0054】
以上のように、第5実施形態では、固定音源検出部80により自車両の周辺に固定音源が存在するか否かを検出し、その検出結果に応じて異なる態様の雑音抽出処理を行う。従って、自車両にとって検出不要な固定音源から発せられる音の影響も事前に排除することが可能となり、音源の検出精度が向上するという効果が得られる。また、上述した第4実施形態同様の効果も得られる。
【0055】
なお、上記では、雑音抽出後に雑音抑制を行う例について説明したが、第2実施形態と同様、雑音抽出と雑音抑制を並行して行うようにしてもよい。また、第5実施形態では、固定音源検出部80が固定音源を検出し、その固定音源から発せられる雑音を抽出する例について説明したが、固定音源検出部80の代わりに、自車両から離れていく車両等、自車に接近しない非接近雑音源を検出する非接近音源検出部を設け、この非接近音源検出部が非接近雑音源を検出したときに、雑音抽出部21が非接近雑音源に対して雑音抽出処理を行うようにしてもよい。
【0056】
以上、本発明に係る第1〜第5実施形態について説明したが、本発明は第1〜第5実施形態に限定されることなく、様々な変形が可能である。
【0057】
例えば、上記実施形態では、車両に搭載され、検出した接近車両情報を運転支援装置30に提供する音源検出装置1,51,71,91に適用したが、音源検出装置1,51,71,91の構成としては他の構成でもよい。例えば、運転支援装置の中に接近車両検出機能として組み込まれるものでもよいし、音源検出装置の中に警報機能等を有するものであってもよい。また、接近車両以外の音源を検出する音源検出装置に適用してもよく、更に、ロボット等車両以外の移動体に搭載される音源検出装置に適用してもよい。
【0058】
また、上記実施形態では、左側集音器ユニット11及び右側集音器ユニット12がそれぞれ集音器を2個ずつ有する構成について説明したが、集音器の個数や各集音器を配置する位置について他の様々なバリエーションが適用可能である。
【符号の説明】
【0059】
1,51,71,91…音源検出装置、10…集音器アレイ、11…左側集音器ユニット、12…右側集音器ユニット、13…第1集音器、14…第2集音器、15…第3集音器、16…第4集音器、20…ECU、21…雑音抽出部、22…雑音抑制部、23…マイクロホンアレー処理部、24…音源検出部、30…運転支援装置、40…車両状態検出部、60…周辺環境検出部、80…固定音源検出部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の集音器で集音された音の情報に基づいて所定の音源を検出する音源検出装置であって、
前記複数の集音器により集音された音信号から前記所定の音源以外から発せられた雑音を抽出する雑音抽出部と、
前記複数の集音器により集音された音信号から前記雑音抽出部により抽出された雑音の信号成分を抑制する雑音抑制部と、
前記雑音抑制部により雑音の信号成分が抑制された音の情報を用いて前記所定の音源の位置を検出する音源検出部と、
を備えたことを特徴とする音源検出装置。
【請求項2】
前記音源検出装置は、移動体に搭載されており、
前記雑音抽出部は、該移動体内部の雑音源に向けて雑音強調処理を実行する、
請求項1に記載の音源検出装置。
【請求項3】
前記雑音抽出部による雑音の抽出と、前記雑音抑制部による雑音の信号成分の抑制は、交互に行われる、
請求項1又は2に記載の音源検出装置。
【請求項4】
前記雑音抽出部による雑音の抽出と、前記雑音抑制部による雑音の信号成分の抑制は、並行して行われる、
請求項1又は2に記載の音源検出装置。
【請求項5】
前記音源検出装置は、車両に搭載され、
前記車両は、前記車両の車両状態を検出する車両状態検出部を備え、
前記雑音抽出部による雑音の抽出と、前記雑音抑制部による雑音の信号成分の抑制は、前記車両状態検出部により検出された車両状態に応じて実行される、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の音源検出装置。
【請求項6】
前記音源検出装置は、車両に搭載され、
前記車両は、前記車両の周辺環境を検出する周辺環境検出部を備え、
前記雑音抽出部は、前記周辺環境検出部により検出された周辺環境中に雑音源があるときに、前記雑音源から発せられた雑音を抽出する、
請求項1〜5のいずれか1項に記載の音源検出装置。
【請求項7】
前記音源検出装置は、車両に搭載され、
前記車両は、前記車両の周辺の固定音源を検出する固定音源検出部を備え、
前記雑音抽出部は、前記固定音源検出部により検出された固定音源から発せられた雑音を抽出する、
請求項1〜6のいずれか1項に記載の音源検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−68434(P2013−68434A)
【公開日】平成25年4月18日(2013.4.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−205322(P2011−205322)
【出願日】平成23年9月20日(2011.9.20)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(599002043)学校法人 名城大学 (142)
【出願人】(000003609)株式会社豊田中央研究所 (4,200)
【Fターム(参考)】