説明

音程変換装置

【課題】歌唱者の音声のピッチと楽曲のピッチのずれを算出し、歌唱者の音声のピッチを楽曲のピッチに合わせるように変換する音程変換装置を提供する。
【解決手段】マイクロホン10から入力された音声信号のピッチを逐次抽出する第1のピッチ抽出装置60と、旋律データ41を有する楽曲データ40の旋律データ41が入力され、旋律データ41のピッチを逐次抽出する第2のピッチ抽出装置50と、音声信号のピッチと旋律データ41のピッチから音声信号のピッチを旋律データ41のピッチに変換するためのピッチ変換量を演算するピッチ変換量演算装置70と、ピッチ変換量演算装置70から出力される信号により、音声信号のピッチを旋律データ41のピッチに変換するピッチ変換装置30と、を具備することを特徴とする音程変換装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音程変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
音声の音程(ピッチ)を変換する装置および方法はすでに数多く提案されている。従来の音程変換装置としては、マイクロホンから入力された音声をA/D変換器でディジタル信号に変換し、このディジタル音声信号を所定の周期でメモリに書き込み、メモリに書き込まれたディジタル音声信号を書き込みの周期とは異なる周期で読み出し、D/A変換器でアナログ音声信号に戻して、増幅器で増幅し、スピーカーから出力する音程変換装置が知られている。(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特許第3270869号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の音程変換装置は予め決められたメモリ読み出し周波数で音声のピッチを変換しているので、カラオケなどで歌唱者が歌う場合、歌唱者の音声のピッチと楽曲のピッチずれを認識して、歌唱者の音声のピッチを楽曲のピッチに合わせることができないという問題があった。それ故、歌唱者が音痴な場合には、聞き手は苦痛を感じることがしばしばあった。また、一般的に音痴な歌唱者は自分で音痴であると自覚しているので歌うことを憚り、それ故カラオケを十分楽しむことができない場合がほとんどである。さらに、本来カラオケの目的の一つは歌うことによる歌唱者のストレス発散であるが、音痴な歌唱者にとってカラオケは苦痛の場に過ぎない。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、歌唱者の音声のピッチと楽曲のピッチのずれを算出し、歌唱者の音声のピッチを楽曲のピッチに合わせるように変換する音程変換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための請求項1に記載の音程変換装置は、マイクロホンから入力された音声信号のピッチを逐次抽出する第1のピッチ抽出装置と、旋律データを有する楽曲データの旋律データが入力され、旋律データのピッチを逐次抽出する第2のピッチ抽出装置と、音声信号のピッチと旋律データのピッチから音声信号のピッチを旋律データのピッチに変換するためのピッチ変換量を特定するピッチ変換量特定装置と、ピッチ変換量演算装置から出力される信号により、音声信号のピッチを旋律データのピッチに変換するピッチ変換装置と、を具備することを特徴とする。
【0007】
また、本発明の請求項2に記載の音程変換装置は、請求項1の記載を具備し、ピッチ変換装置は、メモリと、このメモリに音声信号を第1の周期で書き込む書き込み装置と、このメモリに書き込まれた音声信号を第2の周期で読み出す読み出し装置と、を具備することを特徴とする。
【0008】
さらに、本発明の請求項3に記載の音程変換装置は、請求項1および請求項2の記載を具備し、ピッチ変換量演算装置は、演算結果からピッチ変換量を特定する1あるいは複数のテーブルを具備することを特徴とする。並びに、テーブルのピッチ変換量は任意の値に設定することも可能である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の音程変換装置によれば、カラオケなどで歌唱者の音声のピッチが楽曲のピッチからずれていても、歌唱者の音声のピッチを楽曲のピッチに合わせることが可能である。そのため、歌唱者が音痴である場合でも、歌唱者は楽曲のメロディーラインに沿って自動的に歌うことになるので聞き手が苦痛を感じることはなくなる、あるいは軽減される。また、音痴な歌唱者でもカラオケを楽しむことができ、ストレス発散、さらには歌唱者の音痴克服の補助的役割を果たすことが可能である。並びに、楽曲のメロディーラインに沿って歌うことは誰でも非常に気持ちが良いことなので、次回も歌いたいという気持ちが駆り立てられる。それ故に、本発明を備えたカラオケ店の評判も上がる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1は本発明の音程変換装置の実施例構成図を示している。図1に示した音程変換装置は、歌唱者の音声を入力するマイクロホン10、マイクロホン10から出力される歌唱者のアナログ音声信号S10を歌唱者のディジタル音声信号S20に変換するA/D変換器20、歌唱者のディジタル音声信号S20について周波数変換するピッチ変換装置30、旋律データ41と伴奏データ42を有する楽曲データを保持するメモリ40、旋律データ41のディジタル信号S30からピッチを抽出する楽曲ピッチ抽出装置50、歌唱者のディジタル音声信号S20からピッチを抽出する音声ピッチ抽出装置60、楽曲ピッチ抽出装置50から出力される旋律データ41のピッチ信号S40と音声ピッチ抽出装置60から出力される歌唱者のピッチ信号S50により歌唱者のディジタル音声信号S20のピッチ変換量を演算するピッチ変換量演算装置70、伴奏データ42のディジタル信号S110から各種楽器の楽音を再生して出力するMIDI音源110、ピッチ変換装置30から出力されるピッチ変換後のディジタル音声信号S100とMIDI音源110から出力されるMIDI音源の出力信号S120を設定された音量バランスに基づいて混合するオーディオミキサー120、オーディオミキサー120によって合成されたディジタル信号S130をアナログ信号S140に変換するD/A変換器130、およびスピーカー140を有する。
【0011】
次にこのような音程変換装置の動作について説明する。
【0012】
図1に示すように、マイクロホン10から出力される歌唱者のアナログ音声信号S10は、A/D変換器20を介して歌唱者のディジタル音声信号S20に変換される。その歌唱者のディジタル音声信号20は、ピッチ変換装置30と音声ピッチ抽出装置60に入力される。
【0013】
ここで、ピッチ変換装置30は、メモリ書き込み装置80、メモリ90、および、メモリ読み出し装置100で構成されている。メモリ90はリングバッファ構成の半導体メモリ、例えばSRAMである。メモリ書き込み装置80はこのメモリ90に第1の周期として12kHzの一定の周期でA/D変換器20から出力された音声信号S20を書き込む。メモリ読み出し装置100は、例えば、6〜24kHzの範囲で変化する周波数でメモリ90に書き込まれた音声信号S90を読み出し、読み出し周波数で規定された周期でピッチ変換後のディジタル音声信号S100として出力する。上記6〜24kHzの範囲で変化する周期は、書き込み周期12kHzに対して、1/2から2倍のオクターブでピッチを変換可能な範囲を示す。例えば、1/2のオクターブにピッチ変換する場合は、読み出し周期は6kHzに設定される。2倍のオクターブにピッチ変換する場合は、読み出し周期は24kHzに設定される。
【0014】
また、音声ピッチ抽出装置60は、歌唱者のディジタル音声信号S20からピッチを逐次抽出し、歌唱者のピッチ信号S50を出力する。
【0015】
一方、メモリ90に保持されている楽曲データ40のうち旋律データ41は読み出されて旋律データ41のディジタル信号S30となり、楽曲ピッチ抽出装置50に入力される。楽曲ピッチ抽出装置50では、旋律データ41のディジタル信号30からピッチを逐次抽出し、旋律データ41のピッチ信号S40を出力する。
【0016】
旋律データ41のピッチ信号S40と歌唱者のピッチ信号S50はピッチ変換量演算装置70に同時に入力される。ピッチ変換量演算装置70では、まず旋律データ41のピッチ信号S40から歌唱者のピッチ信号S50を差分する処理が行われる。その差分値から、特定の周波数に変換するための信号S60を出力する。
【0017】
図2は旋律データ41のピッチ信号S40と歌唱者のピッチ信号S50の差分値から歌唱者のディジタル音声信号S20のピッチ変換量を特定するためのテーブル例である。例えば、差分値が+3ならば、歌唱者のディジタル音声信号S20のピッチ変換量は+30Hzという具合である。ただし、旋律データ41のピッチの高低に応じて複数のテーブルを用意することも可能である。つまり、旋律データ41のピッチが100Hzのときは図2のテーブルを、旋律データ41のピッチが1000Hzのときは図3のテーブルを使用するという具合である。これにより、歌唱者の音声をより人間の感性に合ったものにすることが可能である。
【0018】
特定の周波数に変換するための信号S60は、メモリ読み出し装置100に入力され、メモリ読み出し装置100の読み出し周波数を旋律データ41のピッチに変換する。これにより、歌唱者の音声のピッチを楽曲のピッチに合わすことが可能である。
【0019】
一方、伴奏データ42から出力される伴奏データ42のディジタル信号S110はMIDI音源110へ入力される。MIDI音源110は、シンセサイザーなどで構成されている。伴奏データ42のディジタル信号S110から各種楽器の楽音を再生してMIDI音源の出力信号S120を出力する。
【0020】
MIDI音源の出力信号S120とピッチ変換後の音声信号S100はオーディオミキサー120に入力される。オーディオミキサー120は、ピッチ変換後の音声信号S100とMIDI音源110から出力されるMIDI音源の出力信号S120を設定された音量バランスに基づいて混合し、合成信号S130を出力する。
【0021】
合成信号S130はD/A変換器130を介してアナログ信号S140に変換される。そして、アナログ信号S140がスピーカー140から音響出力される。
【0022】
本発明の実施に際しては、上述した実施例に限定されず、その他の種々の態様をとることができる。たとえば、上述した書き込み周期と読み出し周期、ピッチ変換量を特定するためのテーブルの値は例示に過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の音程変換装置の実施例構成図を示している。
【図2】旋律データ41のピッチ信号S40と歌唱者のピッチ信号S50の差分値からピッチ変換量を特定するためのテーブル例
【図3】旋律データ41のピッチ信号S40と歌唱者のピッチ信号S50の差分値からピッチ変換量を特定するためのテーブル例2
【符号の説明】
【0024】
10・・マイクロホン
20・・A/D変換器
30・・ピッチ変換装置
40・・楽曲データを保持するメモリ
41・・旋律データ
42・・伴奏データ
50・・楽曲ピッチ抽出装置
60・・音声ピッチ抽出装置
70・・ピッチ変換量変換装置
80・・メモリ書き込み装置
90・・メモリ
100・・メモリ読み出し装置
110・・MIDI音源
120・・オーディオミキサー
130・・D/A変換器
140・・スピーカー
S10・・歌唱者のアナログ音声信号
S20・・歌唱者のディジタル音声信号
S30・・旋律データのディジタル信号
S40・・旋律データのピッチ信号
S50・・歌唱者のピッチ信号
S60・・特定の周波数に変換するための信号
S80・・書き込み用歌唱者のディジタル音声信号
S90・・読み出しディジタル音声信号
S100・・ピッチ変換後の音声信号S10
S110・・伴奏データのディジタル信号S11
S120・・MIDI音源の出力信号
S130・・合成信号
S140・・アナログ信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロホンから入力された音声信号のピッチを逐次抽出する第1のピッチ抽出装置と、
旋律データを有する楽曲データの前記旋律データが入力され、前記旋律データのピッチを逐次抽出する第2のピッチ抽出装置と、
前記音声信号のピッチと前記旋律データのピッチから前記音声信号のピッチを前記旋律データのピッチに変換するためのピッチ変換量を演算するピッチ変換量演算装置と、
前記ピッチ変換量演算装置から出力される信号により、前記音声信号のピッチを前記旋律データのピッチに変換するピッチ変換装置と、
を具備することを特徴とする音程変換装置。
【請求項2】
前記ピッチ変換装置は、
メモリと、
このメモリに前記音声信号を第1の周期で書き込む書き込み装置と、
このメモリに書き込まれた音声信号を第2の周期で読み出す読み出し装置と、
を具備することを特徴とする請求項1記載の音程変換装置。
【請求項3】
前記ピッチ変換量演算装置は、
前記演算結果からピッチ変換量を特定する1あるいは複数のテーブル
を具備することを特徴とする請求項1または請求項2記載の音程変換装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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