説明

音響システム

【課題】移動体内で提供されている音響環境の状態を、視覚を通して認識することができるインターフェースを提供する。
【解決手段】個別空間または複数の前記個別空間で構成される全体空間に音声を出力する音声出力手段を制御する音響制御手段と、前記個別空間または前記全体空間に出力されている音声に関する音声情報を表示する表示手段と、前記音響制御手段は、前記個別空間ごとに異なる音声が出力されていることを示す音声情報または前記全体空間に同一音声が出力されていることを示す音声情報を前記表示手段に表示させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、飛行機、電車、自動車等の移動体において提供される音響システムに関する。
【背景技術】
【0002】
飛行機、電車、自動車等の移動体において、所定空間内に音声を提供する音響システムがある。この音響システムは、ナビゲーションのAV(Audio Visual)機能の一つとしてユーザに提供されている。例えば、特許文献1には、空間内に複数配置されたスピーカーより出力される音を制御することにより音響空間を形成する技術が開示されている。また、特許文献2には、ナビゲーション動作中の画面上に表示されるマークをアイコンとして選択することにより各種のナビゲーションの機能の入力を行う技術が開示されている。
【特許文献1】特開2007−116363号公報
【特許文献2】特開平10−122876号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
飛行機、電車、自動車等の移動体内で音声を提供する音響システムにおいて、移動体内の全座席に同一音声を提供する場合や移動体内の各座席に異なる音声を提供する場合には以下のような課題がある。例えば、移動体内の全座席に音声aが出力されている状況において、聴取者aが音声bを聴取することを所望した場合、聴取者aは、音声bを自席に出力するように移動体内の音響環境の設定を変更する。移動体内の音響環境の設定が変更されることにより、聴取者aは、自席において音声bを聴取することが可能となる。この場合、他席の聴取者bは、聴取者bの座席に出力されている音声については変更がないため、聴取者aの座席に音声bが出力されていることを認識していない。聴取者bが聴取者aの座席に音声bが出力されていることを認識するためには、聴取者aの座席に出力されている音声を耳で確認する必要がある。
【0004】
また、例えば、移動体内の座席ごとに異なる音声が出力されている状況において、聴取者aが、他席の聴取者bが聴取している音声を認識するためには、聴取者bの座席に出力されている音声を耳で確認する必要がある。そして、聴取者aが、聴取者bの座席に出力されている音声の聴取を所望する場合、聴取者aは、聴取者bの座席に出力されている音声を全座席に出力するように移動体内の音響環境の設定を変更する。聴取者aは、全座席に同一音声が出力されていることを認識している。しかし、聴取者bは、聴取者bの座席に出力されている音声については変更がないため、全座席に同一音声が出力されていることを認識していない。聴取者bが全座席に同一音声が出力されていることを認識するためには、全座席に出力されている音声を耳で確認する必要がある。
【0005】
本発明では、上記した問題に鑑み、飛行機、電車、自動車等の移動体内で提供されている音響環境の状態を、視覚を通して認識することができるインターフェースを備える音響システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明においては、上記課題を解決するために、以下の手段を採用した。すなわち、本発明は、個別空間または複数の前記個別空間で構成される全体空間に音声を出力する音声出力手段を制御する音響制御手段と、前記個別空間または前記全体空間に出力されている音声に関する音声情報を表示する表示手段と、前記音響制御手段は、前記個別空間ごとに異なる音声が出力されていることを示す音声情報または前記全体空間に同一音声が出力さ
れていることを示す音声情報を前記表示手段に表示させる音響システムである。
【0007】
上記音響システムでは、個別空間ごとに異なる音声が出力されている場合、表示手段には、個別空間ごとに異なる音声が出力されていることを示す音声情報が表示される。また、上記音響システムでは、全体空間に同一音声が出力されている場合、表示手段には、全体空間に同一音声が出力されていることを示す音声情報が表示される。ここで、個別空間とは、聴取者が音声を聴取することが可能な一定の広がりを持つ空間であり、全体空間とは、複数の個別空間が集まった一定の広がりを持つ空間である。したがって、全体空間には個別空間が含まれている。また、個別空間に出力される音声の音源が異なるため、個別空間ごとに異なる音声が出力されている場合と、個別空間に出力される音声の音源は同一であるが音源が発生する音声が異なるため、個別空間ごとに異なる音声が出力されている場合とがある。
【0008】
聴取者は、表示手段に表示される個別空間ごとに異なる音声が出力されていることを示す音声情報を見ることによって、個別空間ごとに異なる音声が出力されていることを認識することができる。また、聴取者は、表示手段に表示される全体空間に同一音声が出力されていることを示す音声情報を見ることによって、全体空間に同一音声が出力されていることを認識することができる。このため、聴取者は、個別空間に出力されている音声を耳で確認する必要が無くなり、個別空間に出力されている音声を聴取することに集中することができる。
【0009】
また、上記音響システムにおいて、前記表示手段は、その表面に対する接触を検出可能な接触検出手段を有し、前記音響制御手段は、前記接触検出手段への接触が行われた場合、前記音声情報の設定情報を前記表示手段に表示させるようにしてもよい。これにより、接触検出手段への接触操作が行われることで、音声情報の設定情報を表示手段に表示させることができる。したがって、聴取者は、個別空間ごとに異なる音声が出力されている場合における音声情報の設定情報または全体空間に同一音声が出力されている場合における音声情報の設定情報を知ることができる。ここで、設定情報は、個別空間ごとに出力されている音声の音源の種類を示す情報、個別空間ごとに出力されている音声の種類を示す情報、全体空間に出力されている音声の音源の種類を示す情報、全体空間に出力されている音声の種類を示す情報等である。
【0010】
また、上記音響システムにおいて、前記音声情報は、少なくとも図形、文字、図形と文字の組み合わせのいずれかであってもよい。これにより、聴取者は、表示手段に表示される音声情報を見ることによって、個別空間ごとに異なる音声が出力されていることを直感的に認識することができ、また、全体空間に同一音声が出力されていることを直感的に認識することができる。また、本発明は、コンピュータその他の装置、機械等が上記いずれかの処理を実行する方法であってもよい。また、本発明は、コンピュータその他の装置、機械等に、以上のいずれかの機能を実現させるプログラムであってもよい。また、本発明は、そのようなプログラムをコンピュータ等が読み取り可能な記録媒体に記録したものでもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、飛行機、電車、自動車等の移動体内で提供されている音響環境の状態を、視覚を通して認識することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態を説明する。以下の実施形態の構成は例示であり、本発明は実施形態の構成には限定されない。なお、以下では、本実施形態に係る音響システムを車両に適用した場合について説明するが、映画館、コンサート、飛行機、
電車等に適用してもよい。図1は、本実施形態に係る音響システム10が搭載される車両1の概略図である。図1において、車両1には閉ざされた空間である車両空間2が設けられ、車両1には搭乗者である聴取者が存在可能である。車両1の座席3には、聴取者が存在可能となる位置に合わせてスピーカー4およびエラーマイク5が設けられている。
【0013】
本実施形態に係る音響システム10が搭載される車両1内に設けられた各個別空間に対して個別音響環境を提供し、また、該車両1内に設けられた全体空間に対して同一音響環境を提供する。例えば、図1に示すスピーカー4a、4bと、スピーカー4c、4dと、スピーカー4e、4fと、スピーカー4g、4hとでそれぞれ異なる音源の音声が出力されることによって、座席3a近辺の空間、座席3b近辺の空間、座席3c近辺の空間および座席3d近辺の空間それぞれに対して個別音響環境を提供する。したがって、個別音響環境が提供される場合、各個別空間に異なる音声が出力されることになる。また、図1に示すスピーカー4a、4bと、スピーカー4c、4dと、スピーカー4e、4fと、スピーカー4g、4hとで同一音源の音声が出力されることによって、座席3a近辺の空間、座席3b近辺の空間、座席3c近辺の空間および座席3d近辺の空間を含む全体空間に対して同一音響環境を提供する。したがって、同一音響環境が提供される場合、全体空間に同一音声が出力されることになる。
【0014】
本実施形態に係る音響システム10では、個別音響空間を提供する際に各座席で出力される音声が他の座席に漏れることを低減するための漏れ音低減処理を行う。ここで、本実施形態に係る音響システム10の漏れ音低減処理について、図2を参照して説明する。なお、ここで説明する漏れ音低減処理は一例であり、本実施形態に係る音響システム10では、他の漏れ音低減処理を適用することもできる。
【0015】
図2は、本実施形態に係る音響システム10の漏れ音低減処理の説明図である。図2に示すように、本実施形態に係る音響システム10は、他席スピーカー12と、自席スピーカー13と、自席エラーマイク14と、他席音源21と、漏れ音低減フィルタ22と、自席音源23と、仮想音源フィルタ24と、後方音源逆フィルタ25と、補助フィルタ26とからなる。なお、自席スピーカー13から提供される音は、自席の聴取者の前方に仮想的な音源である仮想音源15を有する。また、左上角が黒く示された漏れ音低減フィルタ22および補助フィルタ26は、ADF(適応フィルタ;Adaptive Digital Filter)で
あることを表している。
【0016】
本実施形態に係る音響システム10は、他席スピーカー12から聴取者10が座っている自席に漏れる音を効果的に低減するために、他席スピーカー12と自席エラーマイク14との間の漏れ音伝達関数P(z)および自席スピーカー13と自席エラーマイク14との間の誤差経路伝達関数C(z)を、補助フィルタ26を用いて漏れ音低減フィルタ22を適応制御させるとともに、仮想音源フィルタ24および後方音源逆フィルタ25を用いて音像を聴取者の前方へ定位させ、臨場感のある個別音響環境を提供する。
【0017】
他席スピーカー12は、他席右スピーカー12aおよび他席左スピーカー12bからなり、例えば、自動車における後部座席のシート肩口あるいはヘッドレスト部等に設置される。なお、他席スピーカー12は、他席音源21と接続されており、他席用の音楽や音声などの個別音響環境を提供する。
【0018】
自席スピーカー13は、自席右スピーカー13aおよび自席左スピーカー13bからなり、例えば、自動車における運転席のシート背面部に設置される。なお、自席スピーカー13は、漏れ音低減フィルタ22及び後方音源逆フィルタ25に接続されており、自席用の音楽や音声などの個別音響環境を提供するとともに、他席スピーカー12からの漏れ音を打ち消す制御音を出力する。
【0019】
自席エラーマイク14は、右エラーマイク14aおよび左エラーマイク14bからなり、自席スピーカー13を構成する自席右スピーカー13aおよび自席左スピーカー13bの前方に設置される。なお、自席エラーマイク14も自席スピーカー13と同じく、例えば、自動車における運転席のシート肩口あるいはヘッドレスト部等に設置される。そして、自席エラーマイク14の出力は、補助フィルタ26における「漏れ音伝達関数P(z)」および「誤差経路伝達関数C(z)」の推定に用いられる。
【0020】
他席音源21は、CDやDVDといった可搬型記憶媒体の音楽や音声、ラジオ、テレビ、カーナビゲーションシステム等の音楽や音声を再生するデバイスである。なお、他席音源21の出力は、他席スピーカー12へ入力される他、漏れ音低減フィルタ22および補助フィルタ26にも入力される。
【0021】
漏れ音低減フィルタ22は、補助フィルタ26の出力に基づいて推定された漏れ音伝達関数P(z)および誤差経路伝達関数C(z)を用い、他席スピーカー12からの漏れ音を打ち消す制御音を発生させるフィルタである。なお、この漏れ音低減フィルタ22は、ADF(適応フィルタ;Adaptive Digital Filter)として構成される。
【0022】
ここで、漏れ音低減フィルタ22の算出手順について簡単に説明する。漏れ音低減フィルタ22を「Hl(z)」、補助フィルタ26を「S(z)」、漏れ音伝達関数を「P(z)」、誤差経路伝達関数を「C(z)」とすると、これらの関係式は、式「S(z)=P(z)+Hl(z)C(z)」と表わされる。
【0023】
式「S(z)=P(z)+Hl(z)C(z)」において、S(z)およびHl(z)に2通りの初期値(S1(z)、Hl1(z)、S2(z)、Hl2(z))を入力し、
打ち消し誤差が最小となるようにS1(z)およびS2(z)を更新することで、最適なP(z)およびP(z)を推定することができる。そして、最適なHl(z)は、式「Hl(z)=−P(z)/C(z)」と表わされる。
【0024】
自席音源23は、CDやDVDといった可搬型記憶媒体の音楽や音声、ラジオ、テレビ、カーナビゲーションシステム等の音楽や音声を再生するデバイスである。なお、自席音源23の出力は、仮想音源フィルタ24および後方音源逆フィルタ25を経て自席スピーカー13へ出力される。
【0025】
仮想音源フィルタ24は、自席音源23からの出力を受け取り、自席の聴取者の前方に仮想的な音像を有する仮想音場を生成するフィルタ(Q(z))である。なお、仮想音源フィルタ24によって生成される仮想音場は、図2に示す仮想音源15のように、あたかも聴取者の前方に音源があるように自席音源23の信号を処理したものである。また、仮想音源フィルタ24は、事前の測定結果等に基づいて予め求められた伝達関数であるので、処理負荷をかけることなく臨場感のある音場を得ることができる。ここで、事前の測定は、聴取者を模擬したダミーヘッドの前方に設置した2つのスピーカーから音声を発し、ダミーヘッドの耳位置に設置されたマイクで、耳位置におけるインパルス応答を測定することによって行われる。そして、係る測定の結果に基づいて目標音場に係る目標伝達関数を求め、求めた目標伝達関数をQ(z)とする。
【0026】
後方音源逆フィルタ25は、自席スピーカー13と自席エラーマイク14との間の誤差経路伝達関数C(z)の逆関数として定義されるフィルタであり、自席スピーカー13の位置を基準とする仮想音場を自席エラーマイク14の位置へ定位させる処理を行う。これにより、自席スピーカー13が聴取者の後方に設置されることに起因する音像の後方定位を補正することができる。なお、後方音源逆フィルタ25を「Hb(z)」とすると、H
b(z)は、式「Hb(z)=1/C(z)」と表わされる。なお、この式におけるC(z)は、予め推定しておいた静的な誤差経路伝達関数が用いられる。
【0027】
補助フィルタ26は、他席音源21および自席エラーマイク14の出力を受け取り、漏れ音伝達関数P(z)および誤差経路伝達関数C(z)を推定する処理を行うフィルタである。そして、この補助フィルタ26の出力は、漏れ音低減フィルタ22の適応制御に用いられる。
【0028】
このように、環境変化に応じて変化しやすい誤差経路伝達関数C(z)を動的に推定することで、漏れ音低減フィルタ22の動作精度を向上させることができる。また、仮想音源フィルタ24で聴取者の前方に音像を有する音を生成し、さらに後方音源逆フィルタ25で、自席スピーカー13の位置を基準とする音像を乗員の耳位置に近い自席エラーマイク14の位置へ定位させることで臨場感のある個別音響環境を提供することができる。
【0029】
次に、本実施形態に係る音響システム10の概略について説明する。図3は、本実施形態に係る音響システム10の構成を示す図である。図3に示すように、本実施形態に係る音響システム10は、スピーカー4a〜4hからなるスピーカー4と、メインアンプ31と、音声出力部32と、DSP(Digital Signal Processor)33と、表示部34および操作部35等によって構成されるインターフェース部36と、制御部37と、を備えている。
【0030】
音声出力部32は、音源38と、音源38の再生装置39とから構成される。音源38は、例えば、CD、DVD、MD、HDD、FM・AMチューナ、TVチューナ、携帯型の音声記録媒体等である。音声出力部32から出力される音声信号は、不図示のA/Dコンバータによりデジタル信号に変換される。デジタル信号に変換された音声信号は、DSP33によりイコライジング等の処理が行われ、不図示のD/Aコンバータによりアナログ信号に変換される。アナログ信号に変換された音声信号は、メインアンプ31により増幅されてスピーカー4から音声として出力される。
【0031】
インターフェース部36は、表示部34や操作部35等によって構成される。表示部34には、各種情報が表示される。表示部34は、例えば、液晶表示装置、プラズマディスプレイパネル、CRT(Cathode Ray Tube)、エレクトロルミネッセンスパネル等である。また、図示しないが、表示部34には、画像データを格納するRAM、およびRAMのデータに基づき表示部34を駆動する駆動回路が含まれる。ただし、画像データを格納するRAM、表示部34を駆動する駆動回路等は、画像処理基板として独立に設けてもよい。その場合、画像処理基板には、制御部37からの画面情報を構成するデータが入力される。
【0032】
操作部35は、聴取者からの操作を受け付ける。例えば、操作部35は、表示部34の表示内容を選択・変更するためのボタンやスイッチ等である。さらに、操作部35は、不図示のリモコンに設けられたボタンやスイッチ等の操作指示を受け取ることができるようにしてもよい。また、操作部35は、表面に対する接触を検出可能なタッチパネルであってもよく、タッチパネルへの接触操作により、表示部34の表示内容を選択・変更するようにしてもよい。この場合、インターフェース部36は、操作部35への接触操作が行われた場合、接触操作の検出信号を制御部37に出力する。
【0033】
インターフェース部36は、車両1内の各座席から視認することができる位置に設置することが好ましい。ただし、インターフェース部36をナビゲーションシステムの表示画面として機能させる場合には、車両1の運転に支障がない位置に設置することが好ましい。また、インターフェース部36を車両1の各座席に設置することも可能である。例えば
、車両1の運転座席には、ナビゲーションシステムの表示画面として機能させることが可能なインターフェース部36を設置し、その他の座席には、映像用ディスプレイとして機能させることが可能なインターフェース部36を設置してもよい。
【0034】
制御部37は、CPU(Central Processing Unit)40やメモリ41等によって構成
され、メモリ41に格納されたプログラムがCPUによって読み込まれることにより各種処理を実行する。また、制御部37は、音声出力部32、DSP33、インターフェース部36等の制御を含む本音響システム10全体の制御を行う。例えば、制御部37は、操作部35を介して表示部34の表示内容の選択・変更の信号を受け取り、それに応じて表示部34の表示を制御する。メモリ41は、CPU上で実行されるコンピュータプログラムによって制御される電源バックアップされた揮発性メモリ、フラッシュメモリ等の不揮発性のメモリによって実現される。
【0035】
聴取者が個別音響環境にて音源38の再生処理を所望する場合、音源38の選択および個別音響環境の指定が行われる。具体的には、聴取者による操作部35への操作を制御部37が検出し、表示部34に音源38の選択画面および音響環境の設定画面が表示されることにより、聴取者は、操作部35を介して音源38の選択および個別音響環境の指定を行う。例えば、個別音響環境の指定は、車両1内の座席を指定することにより行う。この場合、車両1内の座席を複数指定することにより、個別音響環境の指定を行ってもよい。選択された音源38の再生処理は、制御部37によって音声出力部32が制御されることにより行われ、制御部37によってDSP33が制御されることにより個別音響環境の提供が行われる。具体的には、選択された音源38から出力された音声信号がDSP33を介してメインアンプ31に入力され、指定された座席に設けられたスピーカー4から音声が出力される。
【0036】
一方、聴取者が同一音響環境にて音源38の再生処理を所望する場合、音源38の選択および同一音響環境の指定が行われる。具体的には、聴取者による操作部35への操作を制御部37が検出し、表示部34に音源38の選択画面および音響環境の設定画面が表示されることにより、聴取者は、操作部35を介して音源38の選択および同一音響環境の指定を行う。例えば、同一音響環境の指定は、車両1内の全座席を指定することにより行う。選択された音源38の再生処理は、制御部37によって音声出力部32が制御されることにより行われ、制御部37によってDSP33が制御されることにより同一音響環境の提供が行われる。具体的には、選択された音源38から出力された音声信号がDSP33を介してメインアンプ31に入力され、全座席に設けられたスピーカー4から音声が出力される。
【0037】
次に、個別音響環境が提供された場合における表示部34の表示処理および同一音響環境が提供された場合における表示部34の表示処理について説明する。図4は、本実施形態に係る音響システム10における表示処理の流れを示すフローチャートである。
【0038】
本実施形態に係る音響システム10における表示処理は、音源38の再生処理が開始された場合に実行される。まず、制御部37は、音響環境の設定画面で指定された音響環境が個別音響環境であるか否かを判定する(S01)。すなわち、音響環境の設定画面において個別音響環境が指定されているか、同一音響環境が指定されているかが判定される。
【0039】
音響環境の設定画面において個別音響環境が指定されている場合(S01の処理でYES)、制御部37は、DSP33を制御することにより個別音響環境の提供を行うとともに、インターフェース部36を制御することにより表示部34の画面上に個別音響環境の提供が行われていることを示す標識を表示させる(S02)。個別音響環境の提供が行われていることを示す標識は、例えばアイコンであるが、その他の図形や文字、アイコンと
文字の組み合わせ、図形や文字の組み合わせ等であってもよい。
【0040】
一方、音響環境の設定画面において同一音響環境が指定されている場合(S01の処理でNO)、制御部37は、DSP33を制御することにより同一音響環境の提供を行うとともに、インターフェース部36を制御することにより表示部34の画面上に同一音響環境の提供が行われていることを示す標識を表示させる(S03)。同一音響環境の提供が行われていることを示す標識は、例えばアイコンであるが、その他の図形や文字、アイコンと文字の組み合わせ、図形や文字の組み合わせ等であってもよい。
【0041】
図5から図11を参照して、表示部34の画面上に表示される個別音響環境の提供が行われていることを示す標識および同一音響環境の提供が行われていることを示す標識の具体例について説明する。
【0042】
図5は、本実施形態に係る標識の一実施例を示す図である。図5に示す太矢印の右側では、個別音響環境の提供が行われていることを示す標識が、斜線が引かれた略円形の2つのアイコンと、斜線が引かれていない略円形の2つのアイコンとによって表されている。図5に示す太矢印の左側では、同一音響環境の提供が行われていることを示す標識が、斜線が引かれた略円形の4つのアイコンによって表されている。ここで、斜線が引かれた略円形のアイコンと、斜線が引かれていない略円形のアイコンとは、アイコンに付された色が異なることを意味している。
【0043】
斜線が引かれた略円形の2つのアイコンおよび斜線が引かれていない略円形の2つのアイコンが表示部34の画面上に表示された場合、異なる種類のアイコンが表示部34の画面上に表示されるため、聴取者は、個別音響環境の提供が行われていることを認識することが可能となる。したがって、聴取者は、表示部34の画面上に表示されるアイコンを一見するだけで、車両1内では個別音響環境の提供が行われていることを認識することができる。
【0044】
一方、斜線が引かれた略円形の4つのアイコンが表示部34の画面上に表示された場合、同一種類のアイコンが表示部34の画面上に表示されるため、聴取者は、同一音響環境の提供が行われていることを認識することが可能となる。したがって、聴取者は、表示部34の画面上に表示されるアイコンを一見するだけで、車両1内では同一音響環境の提供が行われていることを認識することができる。
【0045】
また、図5の太矢印の右側における4つのアイコンまたは太矢印の左側における4つのアイコンは、車両1内における座席の位置に対応している。そのため、図5の太矢印の右側における4つのアイコンが表示部34の画面上に表示された場合、聴取者は、車両1内の右側の前後の座席3a、3cでは、同一音源によって個別音響環境の提供が行われていることを認識することができる。また、聴取者は、車両1内の左側の前後の座席3b、3dでは、同一音源によって個別音響環境の提供が行われていることを認識することができる。
【0046】
図6は、本実施形態に係る標識の一実施例を示す図である。図6に示す太矢印の右側では、個別音響環境の提供が行われていることを示す標識が、矩形の2つのアイコンと、略円形の2つのアイコンとによって表されている。なお、本明細書では、矩形とは、長方形および正方形を含む直角四辺形を指すものとする。図6に示す太矢印の左側では、同一音響環境の提供が行われていることを示す標識が、略円形の4つのアイコンによって表されている。
【0047】
図6に示すように、個別音響環境の提供が行われていることを示す標識を異なる種類の
複数のアイコンで表し、同一音響環境の提供が行われていることを示す標識を同一種類の複数のアイコンで表すことにより、聴取者は、車両1内で提供されている音響環境の種類を認識することができる。なお、図6に示す矩形のアイコンと略円形のアイコンとにそれぞれ異なる色を付してもよい。これにより、聴取者は、表示部34の画面上に表示されるアイコンの形状だけでなくアイコンの色によっても、車両1内で提供されている音響環境の種類を認識することができる。また、図5に示すアイコンと同様に、図6に示すアイコンは、車両1内における座席の位置に対応している。
【0048】
図7は、本実施形態に係る標識の一実施例を示す図である。図7に示す太矢印の右側では、個別音響環境の提供が行われていることを示す標識が、略円形の4つのアイコンによって表されている。図7に示す太矢印の左側では、同一音響環境の提供が行われていることを示す標識が、略円形の1つのアイコンによって表されている。図7の太矢印の左側の略円形のアイコンは、太矢印の右側の略円形のアイコンよりもその形状が大きい。
【0049】
図7に示すように、個別音響環境の提供が行われていることを示す標識を同一種類の複数のアイコンで表し、同一音響環境の提供が行われていることを示す標識を1つのアイコンで表すことにより、聴取者は、車両1内で提供されている音響環境の種類を認識することができる。なお、図7に示す大きさの異なる略円形のアイコンにそれぞれ異なる色を付してもよい。これにより、聴取者は、表示部34の画面上に表示されるアイコンの大きさだけでなくアイコンの色によっても、車両1内で提供されている音響環境の種類を認識することができる。
【0050】
図8は、本実施形態に係る標識の一実施例を示す図である。図8に示す太矢印の右側では、個別音響環境の提供が行われていることを示す標識が、矩形の1つのアイコンによって表されている。図8に示す太矢印の左側では、同一音響環境の提供が行われていることを示す標識が、略円形の1つのアイコンによって表されている。図8に示すように、個別音響環境の提供が行われていることを示す標識と、同一音響環境の提供が行われていることを示す標識とを、形状が異なるアイコンで表すことにより、聴取者は、車両1内で提供されている音響環境の種類を認識することができる。なお、図8に示す形状が異なる各アイコンにそれぞれ異なる色を付してもよい。これにより、聴取者は、表示部34の画面上に表示されるアイコンの形状だけでなくアイコンの色によっても、車両1内で提供されている音響環境の種類を認識することができる。
【0051】
図9は、本実施形態に係る標識の一実施例を示す図である。図9に示す太矢印の右側では、個別音響環境の提供が行われていることを示す標識が、現在再生処理が行われている音源38の種類を示す情報を重ね合わせた略円形のアイコン60、61、および62と、現在再生処理が行われている音源38の種類を示す情報を図形化したアイコン63とによって示されている。図9に示す太矢印の左側では、同一音響環境の提供が行われていることを示す標識が、略円形の4つのアイコンによって表されている。図9の太矢印の右側における4つのアイコン60〜63または太矢印の左側における4つのアイコンは、車両1内における座席の位置に対応している。
【0052】
図9に示すアイコン60は、現在再生処理が行われている音源38がラジオであることを示しており、アイコン60に対応する座席3aでは、ラジオを音源38として個別音響環境の提供が行われている。また、図9に示すアイコン61は、現在再生処理が行われている音源38がCDであることを示しており、アイコン61に対応する座席3bでは、CDを音源38として個別音響環境の提供が行われている。さらに、図9に示すアイコン62は、現在再生処理が行われている音源38がDVDであることを示しており、アイコン62に対応する座席3cでは、DVDを音源38として個別音響環境の提供が行われている。そして、図9に示すアイコン63は、現在再生処理が行われている音源38が携帯型
の音声記録媒体であることを示しており、アイコン63に対応する座席3dでは、携帯型の音声記録媒体を音源38として個別音響環境の提供が行われている。
【0053】
図9で示すアイコン60、61、62および63が表示部34の画面上に表示された場合、聴取者は、個別音響環境の提供が行われていることを認識するとともに、現在再生処理が行われている音源38の種類を認識することができる。一方、図9で示す略円形の4つのアイコンが表示部34の画面上に表示された場合、同一種類のアイコンが表示部34の画面上に表示されるため、聴取者は、同一音響環境の提供が行われていることを認識することができる。
【0054】
図10は、本実施形態に係る標識の一実施例を示す図である。図10に示す太矢印の右側では、個別音響環境の提供が行われていることを示す標識が、現在再生処理が行われている音源38の種類を示す情報を重ね合わせた略円形のアイコン60、61および62と、現在再生処理が行われている音源38の種類を示す情報を図形化したアイコン63とによって示されている。図10に示す太矢印の左側では、同一音響環境の提供が行われていることを示す標識が、現在再生処理が行われている音源38の種類を示す情報を重ね合わせた略円形の1つのアイコン64によって表されている。図10に示すアイコン60、61、62および63は、図9と同様である。図10に示す略円形の1つのアイコン64は、現在再生処理が行われている音源38がCDであることを示している。
【0055】
図10で示すアイコン60、61、62および63が表示部34の画面上に表示された場合、聴取者は、個別音響環境の提供が行われていることを認識するとともに、現在再生処理が行われている音源38の種類を認識することができる。一方、図10で示す略円形の1つのアイコン64が表示部34の画面上に表示された場合、聴取者は、同一音響環境の提供が行われていることを認識するとともに、現在再生処理が行われている音源38の種類を認識することができる。
【0056】
図11は、本実施形態に係る標識の一実施例を示す図である。図11に示す太矢印の右側では、個別音響環境の提供が行われていることを示す標識が、現在再生処理が行われている音源38の種類を示す情報を重ね合わせた略円形のアイコン60、61および62と、現在再生処理が行われている音源38の種類を示す情報を図形化したアイコン63とによって示されている。図11に示す太矢印の左側では、同一音響環境の提供が行われていることを示す標識が、現在再生処理が行われている音源38の種類を示す情報を重ね合わせた略円形の4つのアイコン65、66、67および68によって表されている。図11に示すアイコン60、61、62および63は、図9と同様である。図11に示す略円形の4つのアイコン65、66、67および68は、現在再生処理が行われている音源38がCDであることを示している。また、図5に示すアイコンと同様に、図11に示すアイコンは、車両1内における座席の位置に対応している。
【0057】
図11で示すアイコン60、61、62および63が表示部34の画面上に表示された場合、聴取者は、個別音響環境の提供が行われていることを認識するとともに、現在再生処理が行われている音源38の種類を認識することができる。一方、図11で示すアイコン65、66、67および68が表示部34の画面上に表示された場合、聴取者は、同一音響環境の提供が行われていることを認識するとともに、現在再生処理が行われている音源38の種類を認識することができる。
【0058】
制御部37によりナビゲーション処理が実行される場合、表示部34の画面上には車両1の現在位置や車両1の周辺の地図等が表示されることになる。この場合、個別音響環境の提供が行われていることを示す標識または同一音響環境の提供が行われていることを示す標識は、表示部34の画面上の中心以外の位置に表示するようにする。すなわち、表示
部34の画面上に表示された車両1の現在位置や車両1の周辺の地図等の妨げにならないような位置に表示する。例えば、図12に示すように、アイコン70を、表示部34の画面上の右上隅に表示させるようにすればよい。また、表示部34の画面上において、車両1の現在位置や車両1の周辺の地図等が表示される領域と、アイコン70が表示される領域とを区分して表示するようにしてもよい。
【0059】
ここで、聴取者による車両1内の音響環境の設定確認および設定変更について説明する。例えば、聴取者は、図12に示すアイコン70を、操作部35を介して選択することによって音響環境の設定画面を表示部34の画面上に表示させる。車両1内で同一音響環境の提供が行われている場合、音響環境の設定画面には、音源情報や音楽情報が表示される。音源情報は、CD、MD、DVD、HD、AUX(Auxiliary)等の音源38の種類を
示す情報であり、音楽情報は、音楽のタイトルや再生時間等の情報である。車両1内で個別音響環境の提供が行われている場合、音響環境の設定画面には、各座席に出力されている音声ごとに音源情報や音楽情報が表示される。なお、音響環境の設定画面において、車両1内に出力されている音声の音量や仮想音場やイコライザ等の音響システム10の基本設定を行うことも可能である。
【0060】
〈変形例〉
上記説明したように、車両1内で個別音響環境の提供が行われている場合、表示部34の画面上には、個別音響環境の提供が行われていることを示す標識が表示され、車両1内で同一音響環境の提供が行われている場合、表示部34の画面上には、同一音響環境の提供が行われていることを示す標識が表示される。本変形例では、以下のように変形してもよい。
【0061】
例えば、車両1内で個別音響環境の提供が行われている場合にのみ、表示部34の画面上に、個別音響環境の提供が行われていることを示す標識を表示するようにしてもよい。そして、車両1内で同一音響環境の提供が行われている場合には、表示部34の画面上に、同一音響環境の提供が行われていることを示す標識を表示しないようにしてもよい。表示部34の画面上に、個別音響環境の提供が行われていることを示す標識が表示されている場合には、聴取者は、個別音響環境の提供が行われていることを認識することができる。そして、表示部34の画面上に、個別音響環境の提供が行われていることを示す標識が表示されていない場合には、聴取者は、同一音響環境の提供が行われていることを認識することができる。
【0062】
また、例えば、車両1内で同一音響環境の提供が行われている場合にのみ、表示部34の画面上に、同一音響環境の提供が行われていることを示す標識を表示するようにしてもよい。そして、車両1内で個別音響環境の提供が行われている場合には、表示部34の画面上に、個別音響環境の提供が行われていることを示す標識を表示しないようにしてもよい。表示部34の画面上に、同一音響環境の提供が行われていることを示す標識が表示されている場合には、聴取者は、同一音響環境の提供が行われていることを認識することができる。そして、表示部34の画面上に、同一個別音響環境の提供が行われていることを示す標識が表示されていない場合には、聴取者は、個別音響環境の提供が行われていることを認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本実施形態に係る音響システムが搭載される車両の概略図である。
【図2】本実施形態に係る音響システムの漏れ音低減処理の説明図である。
【図3】本実施形態に係る音響システムの構成を示す図である。
【図4】本実施形態に係る音響システムにおける表示処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】本実施形態に係る標識の一実施例である。
【図6】本実施形態に係る標識の一実施例である。
【図7】本実施形態に係る標識の一実施例である。
【図8】本実施形態に係る標識の一実施例である。
【図9】本実施形態に係る標識の一実施例である。
【図10】本実施形態に係る標識の一実施例である。
【図11】本実施形態に係る標識の一実施例である。
【図12】本実施形態に係る表示部に表示される画面の例である。
【符号の説明】
【0064】
1 車両
2 車両空間
3 座席
4 スピーカー
5 エラーマイク
10 音響システム
12 他席スピーカー
13 自席スピーカー
14 自席エラーマイク
15 仮想音源
21 他席音源
22 漏れ音低減フィルタ
23 自席音源
24 仮想音源フィルタ
25 後方音源逆フィルタ
26 補助フィルタ
31 メインアンプ
32 音声出力部
33 DSP
34 表示部
35 操作部
36 インターフェース部
37 制御部
38 音源
39 再生装置
40 CPU
41 メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
個別空間または複数の前記個別空間で構成される全体空間に音声を出力する音声出力手段を制御する音響制御手段と、
前記個別空間または前記全体空間に出力されている音声に関する音声情報を表示する表示手段と、
前記音響制御手段は、前記個別空間ごとに異なる音声が出力されていることを示す音声情報または前記全体空間に同一音声が出力されていることを示す音声情報を前記表示手段に表示させる音響システム。
【請求項2】
前記表示手段は、その表面に対する接触を検出可能な接触検出手段を有し、
前記音響制御手段は、前記接触検出手段への接触が行われた場合、前記音声情報の設定情報を前記表示手段に表示させることを特徴とする請求項1に記載の音響システム。
【請求項3】
前記音声情報は、少なくとも図形、文字、図形と文字の組み合わせのいずれかである請求項1または2に記載の音響システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2009−143498(P2009−143498A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−325227(P2007−325227)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【出願人】(000237592)富士通テン株式会社 (3,383)
【Fターム(参考)】