説明

音響タイル

本発明は、コア及び表面処理を含む音響タイルに関する。該表面処理は、ホルムアルデヒドフリーラテックス結合剤から構成され、該結合剤は少なくとも1つのホルムアルデヒドフリー殺生物剤を含む。本発明はまた、音響タイルを製造するプロセスも提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
音響タイルは、部屋、廊下又は会議場等の屋内空間において、音を吸収し又は音の伝達を減らすことで音響を改善する目的で、特別にデザインされたシステムである。多数の種類の音響タイルが存在するが、大多数の音響タイルは、例えば特許文献1に開示されているように、一般に、ミネラルウールファイバ、充填剤、着色剤、及び結合剤を含む。これらの材料は、他の種々の材料と並び、所望の音響特性並びに色及び外見など所望の他の特性を有する音響タイルを提供するために利用し得る。
【背景技術】
【0002】
上記で議論したように、種々の商業的に入手可能な音響タイル製品が存在するが、現在の時点で、ミネラルウールファイバを含むホルムアルデヒドフリーの音響天井製品は、今日市場には存在しない。揮発性有機化合物(VOC)低排出型に分類された製品は多数入手可能である。しかしながら、これらの製品は全て、これらのタイル中に利用されている種々のホルムアルデヒド排出成分の存在により、検出可能レベルのホルムアルデヒドを排出する。本発明者らは、表面処理及びバックコーティングに使用される特定の高分子結合剤が、本質的にホルムアルデヒドを含有、放出、排出、又は生成することを発見した。加えて、表面処理及びバックコーティングに含まれる保湿剤(wet-state preservatives) 又は殺生物剤のような添加剤もまた、検出及び定量が可能なレベルのホルムアルデヒドを放出、排出、又は生成し得る。それゆえホルムアルデヒドが、音響タイルに使用される高分子結合剤又は殺生物剤の構成要素でないとしても、該高分子結合剤及び/又は殺生物剤の変性などに例示される多数の理由から、該タイルは尚もホルムアルデヒドを放出、排出又は生成し得る。製造プロセスでの熱暴露の間に生成されるホルムアルデヒドの排出は、排気筒(stacks)又は焼却炉中に排気されるが、最終製品には、尚ホルムアルデヒド残渣が含まれており、その設置により排出される。ホルムアルデヒド排出の削減、又はホルムアルデヒド排出の排除ができれば、学校、保険医療施設、又はオフィスビルなど、音響タイルが設置される場所の室内空気質が改善されるであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第1,769,519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、音響タイル及び音響タイルの製造プロセスを提供する。本発明の詳細な記述を見れば、本発明のこれらの利点及び他の利点は、当業者にとって明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、コア及び表面処理を含む音響タイルを提供する。本発明は更に、コア及び表面処理を含むホルムアルデヒドフリー音響タイルを提供する。該表面処理は、ホルムアルデヒドフリーのラテックス結合剤を含み、且つ少なくとも1つのホルムアルデヒドフリーの殺生物剤を含む。
【0006】
本発明は更に、コア及び表面処理を有する、音響タイル並びに更にはホルムアルデヒドフリーの音響タイルであって、乾燥前の表面処理が:約30から約50重量%の水;約40から約60重量%の充填剤;約2から約15重量%のTiO;約2から約20重量%のホルムアルデヒドフリーラテックス;約0.25から約1.00重量%の分散剤;約0.01から約1.00重量%の増粘剤;約0.10から約1.00重量%の界面活性剤;約0.05から約0.50重量%の消泡剤;及び約0.01から約1.50重量%のホルムアルデヒドフリー殺生物剤を含む音響タイルを提供する。
【0007】
更には、本発明は、音響タイル及び更にはホルムアルデヒドフリー音響タイルの、製造プロセスを提供する。このプロセスは、音響タイルコアの調達、及び該コアへの表面処理の適用を含むプロセスであって、該表面処理はホルムアルデヒドフリーラテックス結合剤を含み、且つ少なくとも1つのホルムアルデヒドフリー殺生物を含む。
【発明の効果】
【0008】
更には、本発明は表面処理を提供する。本発明はまた、ホルムアルデヒド無添加又は定量可能量のホルムアルデヒドを放出、排出若しくは生成する化合物を含まない表面処理にて処理された、音響タイルを提供する。なお更には、本発明は、ホルムアルデヒド無添加又は定量可能量のホルムアルデヒドを放出、排出若しくは生成する化合物を含まない表面処理にて処理された、ホルムアルデヒドフリー音響タイルを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の一実施態様による、ホルムアルデヒドフリー音響タイルの略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は音響タイルからなる。別の態様によれば、本発明は、ホルムアルデヒドフリー音響タイルからなる。
【0011】
「ホルムアルデヒドフリー音響タイル」という用語は、本明細書中で使用されるとおり、定量限界、即ち、定量下限(lower LOQ)を下回るレベルのホルムアルデヒドを放出又は排出するように製造されたタイルのことを言う。ここで、定量下限(lower LOQ)とは、ASTM D5116−97などを含む米国材料試験協会(ASTM)の規格を多数取り入れた、2004年7月15日付けの、小規模チャンバー法を用いた多種発生源からの揮発性有機物放出試験の標準実施要領(The Testing Of Volatile Organic Emissions From Various Sources Using Small-Scale Environmental Champers、以下、標準実施要領という)のテストプロトコルにより設定された定量下限(lower LOQ)である。該標準実施要領のセクション3.9.7.1にて、「定量下限」とは、「装置のノイズレベルの10倍高い応答をする分析量、又は低いレベルのスタンダードを繰り返し解析した際の標準偏差の10倍の分析量」と定義されている。ホルムアルデヒドフリーという用語は、放出又は排出されるホルムアルデヒドの量が定量下限を下回ることを意味する。好ましい実施態様においては、本発明のホルムアルデヒドフリー音響タイルにより放出又は排出されるホルムアルデヒドの量は、典型的に約2μg/mを下回る。より好ましい実施態様においては、本発明のホルムアルデヒドフリー音響タイルにより放出又は排出されるホルムアルデヒドの量は、典型的に約1μg/mを下回る。本発明の音響タイルは、本明細書中で定義するように、ホルムアルデヒドフリーで製造されるものであるが、該音響タイルは、ホルムアルデヒドフリー音響タイルに吸収される恐れのある揮発性有機化合物(VOC)汚染物質(特にホルムアルデヒド)への暴露を避ける場所及び方法にて保存するのが好ましい。
【0012】
本発明の好ましい実施態様によるホルムアルデヒドフリー音響タイルは、多数の理由から望ましく、とりわけ、VOC排出物質、特にホルムアルデヒドにより健康被害や環境被害が生じるという結果から望ましい。例えば、世界保健機関の一部である国際がん研究機関により、ホルムアルデヒドは、ヒト発癌物質に分類されている。立法府及び規制機関からは、ホルムアルデヒドの排出レベル低下がますます要求されている。例えばコラボラティヴハイパフォーマンススクール(Collaborative for High Performance Schools)(CHPS)における、カリフォルニア州特別環境要求規格01350(California's Special Environmental Requirements, Specifications Section 01350)には、排出テストの手順、及び選定したVOCについての最大許容濃度が挙げられており、これは保健医療に基づく建築材料の最初の規格である。CHPSセクション01350のサブセクションは、建築材料が室内空気質及び居住者の健康に及ぼす有害な影響を最小限にすることを目標とし、ATSM D 5116−97スタンダード・メソッドによる小チャンバーテストに基づき、建築材料の選択及び取扱に着目している。2004年にはCHPSは該標準実施要領に採用されている。
【0013】
該標準実施要領は、又、試料の受領、取扱、及び作製の手順を特定している。該標準実施要領中で特定されるように、各テスト試料は23±2℃及び相対湿度50±10%の条件に10日間±5時間保ち、次いで96時間のテストを行う。該テストは、該標準実施要領の小チャンバーテストに基づき、上記調整期間の完了に引き続いて、該チャンバーテストを開始した後、24、48及び96時間にてチャンバーの空気のサンプリングを行う方法である。装置のキャリブレーション、並びに個々の化合物の同定及び定量も必要とされる。
【0014】
本発明の1つの態様によるホルムアルデヒドフリー音響タイルは、図1に図示するように、音響タイルコア10、表面処理20、及び所望によりバッキング30から構成される。音響タイルの製造手順は、米国特許第1,769,519号公報に説明されている。1つの態様では、該コア10は、ミネラルウールファイバ及びスターチを含み、該ミネラルウールファイバは、スラグウール、ロックウール、及び/又は玄武岩ウールなど、種々のファイバからなる。本発明の別の態様においては、ホルムアルデヒドフリー音響タイルの該スターチ成分は、米国特許第1,769,519号公報、同3,246,063号公報、及び同3,307,651号公報に開示されているように、ミネラルウールファイバの結合剤として作用し得るスターチゲルであり得る。本発明の更なる態様においては、該音響タイルコア10は、ガラスファイバを有しても良い。
【0015】
本発明の音響タイルは、種々の技術を用いて製造し得る。1つの実施態様では、該コア10は、米国特許第4,911,788号公報及び同6,919,132号公報に記載のように、ウェット・フェルテッド又はウォーター・フェルテッド(wet- or water-felted)プロセスにより製造される。該表面処理20及びバッキング30は、本明細書中に記載のように、ウェット・フェルテッドプロセス法により製造された音響タイルに適用してもよい。当業者であれば、該表面20及び該バッキング30を改良してウェット・フェルテッドコア10に適用する方法を理解できるであろう。好ましい実施態様においては、該コア10は、スターチを種々の添加剤と共に組み合わせ、水中で混合してスラリを得ることにより製造される。該スラリを加熱してスターチを加熱することによりスターチゲルを得、それをミネラルウールファイバと混合する。ゲル、添加剤、及びミネラルウールファイバのこの組み合わせ(「パルプ」と称する)を、連続的なプロセスにて、トレイ中で計量する。該パルプを計量する該トレイの底は、所望により、バッキング30(例えば、漂白紙、未漂白紙、又はクラフト紙付きアルムミニウムホイルなど、以下、クラフト/アルミニウムホイルと称する)を含んでよく、ここで該バッキング30は、該材料が該トレイから剥離するのを助ける役割をするのみならず、最終製品の一部としても残留する。該パルプの表面は模様を施してあってよく、該パルプを含む該トレイは、その後に、例えば熱風トンネル乾燥機を通すなどして、乾燥してよい。次に、乾燥した該製品又は平板(slab)を、仕上げラインに乗せ、サイズに切断して該音響タイル10を得る。該コア10は続いて、乾燥後に本発明の該表面処理20となる表面処理組成物を塗布することにより、本発明のホルムアルデヒドフリー音響タイルに加工される。該表面処理組成物は、該コア10が成型され乾燥された後に該コアに塗布するのが好ましい。
【0016】
上記記載のとおり、ホルムアルデヒドフリー音響タイルの該コア10は、その他の種々の添加剤及び薬剤を含み得る。例えば、該コア10は、硫酸カルシウム材料(例えば、スタッコ、石膏、及び/又は硬石膏)、ホウ酸、及びヘキサメタリン酸ナトリウム(SHMP)を含み得る。音響タイルの製造においては、スタッコ及びホウ酸は、カオリンクレイ及びグアーガムで代替し得る。更なる実施例においては、該コア10は、本明細書中に記載するように、保存剤として、1以上のホルムアルデヒドフリー殺生物剤を含み得る。
【0017】
前記のとおり、本発明の音響タイルは、所望によりバッキング30を含み得る。該バッキング30としては、未漂白紙、漂白紙、クラフト/アルミニウムホイルなどを含む数多くの材料が使用できる。製品表面の燃焼特性の改善のため、耐炎バックコーティングを、所望により、漂白紙若しくは未漂白紙のバッキングと組み合わせて適用し得る。該耐炎バックコーティングは、例えば、水、燃焼抑制剤、及び殺生物剤など、種々の構成要素を含み得る。該バッキング30は、たわみ抵抗及び/又は音質調整の改善のために利用することもできる。さらに、該バッキング30には、1または複数の補修用塗料(fill coating)を塗布しても良い。該補修用塗料は、例えば水、充填剤、結合剤、並びに、消泡剤、殺生物剤、及び分散剤など他の種々の添加剤などの、種々の構成要素を含み得る。
【0018】
該表面処理20は、天然ポリマー又は合成ポリマーより作成されたホルムアルデヒドフリーラテックス、並びに1以上のホルムアルデヒドフリー殺生物剤を含む。該ホルムアルデヒドフリーラテックスは、該表面処理20にフィルム強度を与えるものであり、ホルムアルデヒドを排出しない殺生物剤を含む。本明細書にて使用される「ホルムアルデヒドフリーラテックス」という用語は、ホルムアルデヒドを使用せず製造されたラテックス、又は、ホルムアルデヒドを生成若しくは排出しうる材料を使用せずに製造されたラテックス、又はその両方のことを言う。本発明に従えば、ホルムアルデヒドフリーラテックス中には、ホルムアルデヒドフリー殺生物剤のみが含まれ、それゆえ該ホルムアルデヒドフリーラテックスは、乾燥による副生成物としても、或いは中に含まれる殺生物剤に帰着するものとしても、ホルムアルデヒドを排出又は生成することはない。ホルムアルデヒドフリーラテックスの作成に使用するのに適した材料としては、例えば、El 8764(Rohm&Haas社製)として入手可能な、熱可塑性合成アクリルポリマー;HP31−316NFとして入手可能な、ビニルアクリルコポリマー;エチレン、塩化ビニル、及び酢酸ビニルのターポリマー;PD0062(H.B.Fuller社製)として入手可能な、ポリ酢酸ビニルのホモポリマー;Polyco(登録商標)3103(Rohm&Haas社製)として入手可能な、酢酸ビニルとアクリルのコポリマー;DL218NA(Dow Chemical社製)及びAcronal(登録商標)296D(BASF社製)として入手可能な、スチレンとアクリルのコポリマー;Epi−Rez(登録商標)3510−W60(Celanese社製)として入手可能な、エポキシポリマーのエマルション;ポリウレタン;並びに、Airvol(登録商標)(Air Products社製)として入手可能な、ポリビニルアルコール;又は、それらの組み合わせが挙げられる。ホルムアルデヒドフリーラテックスの作成に使用する他の適した材料としては、セルロースエーテルなどの水溶性ポリマーが挙げられる。適したセルロースエーテルとしては、Methocel(商標)A(Dow Chemical社製)及びCulminal(登録商標)(Hercules社製)として入手可能な、メチルセルロース;Tylose(登録商標)MH300(Shin Etsu社製)として入手可能な、メチルヒドロキシエチルセルロース;Methocel(商標)228(Dow Chemical社製)として入手可能な、メチルヒドリキシプロピルセルロース;Klucel(登録商標)(Hercules社製)として入手可能な、ヒドロキシプロピルセルロース;Tylose(登録商標)C(Shin Etsu社製)、CMC 7H(Hercules社製)、及びCellosize(商標)CMC P−75−M(Dow Chemical社製)として入手可能な、カルボキシメチルセルロースナトリウム;並びに、Natrosol(登録商標)250HBR(Hercules社製)、Cellosize(商標)WP−09(Dow Chemical社製)として入手可能な、ヒドロキシエチルセルロースが挙げられる。使用に適した他の適した水溶性天然ポリマーとしては、Calbond(商標)(MGP Ingredients社製)として入手可能なアルファー化スターチ、ProCote(登録商標)550及びProCote(登録商標)4200(DuPont Soy Polymers社製)として入手可能な大豆蛋白質由来のポリマーが挙げられる。該ホルムアルデヒドフリーラテックスが、1以上のホルムアルデヒドフリーラテックスを含み得るのは、当業者が認めるところである。更に、本発明に従い、且つ本発明の音響タイルからのホルムアルデヒド排出を更に減らす努力のもとに製造又は提供された該ホルムアルデヒドフリーラテックスは、ホルムアルデヒドを排出又は生成する殺生物剤を含むことはない。
【0019】
該表面処理組成物、及びバッキング30は、両方とも、当業者にとって容易に知ることができ、且つ入手可能な種々の技術、例えばエアレス・スプレーシステムやエアアシスト・スプレーシステムなどを用いて、塗布することができる。該表面処理組成物及びバッキング30は、フローコーティング(flow coating)、フラッドコーティング(flood coating)、又はロールコーターを用いて塗布してもよい。その生成物を乾燥することにより、該表面処理組成物のキャリアとして使用した水及び/又は溶媒、又は構成要素のいずれかが除去され、該ポリマー結合剤が構造的で強固なネットワークに転換されて、表面処理20を得る。
【0020】
本発明に従い、且つ、本発明の音響タイルからのホルムアルデヒドの排出を更に減らすように努力をすることにより、該表面処理は、保存剤として1以上の殺生物剤を含み、そのいずれもホルムアルデヒドを排出又は生成しない。ホルムアルデヒドフリー殺生物剤は、該ラテックスが該表面の構成要素として該コアに塗布される前に、該ラテックスに添加されるのが好ましい。例えば、該ホルムアルデヒドフリー殺生物剤の該ラテックスへの添加は、該ラテックス製造過程の間、又は、その後であってさえよい。該ホルムアルデヒドフリー殺生物剤は、該表面処理の構成要素としての使用に先立つ輸送及び/又は貯蔵の間、該ラテックスの保存剤として作用し得る。該ホルムアルデヒドフリー殺生物剤は本発明の音響タイルの保存剤として作用し得る。
【0021】
殺生物剤は、カビ/白カビ、菌類、酵母、藻類、及び細菌などを含む生物類の除去又は抑制に役立つ。それゆえ、例えば殺生物剤は、抗微生物剤、抗菌剤、抗細菌剤などを含み得る。適したホルムアルデヒドフリー殺生物剤としては、以下のコア構造を有する、イソチアゾリン−3−オンが挙げられる。
【0022】
【化1】

【0023】
好ましいイソチアゾリン−3−オンとしては、例えば、Proxel(登録商標)GXL若しくはProxel(登録商標)CRL(ARCH Chemicals社製)、Nalcon(登録商標)200(Nalco社製)、Canguard(商標)BIT(Dow Chemical社製)及びRocima(商標)BT 1S(Rohm&Haas社製)として入手可能な、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンが挙げられる。他のイソチアゾリン−3−オンとしては、Acticide(登録商標)MBS(Acti−Chem社製)として入手可能な、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンと2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの混合物が挙げられる。更なるイソチアゾリン−3−オンとしては、5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、及びそれらの混合物が挙げられる。5−クロロ−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンと2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オンの混合物としては、Kathon(商標)LX(Rohm&Haas社製)、Mergal(登録商標)K14(Troy Chemical社製)及びAmerstat(登録商標)251(Drew Chemical社製)が入手可能である。
【0024】
他の適したホルムアルデヒドフリー殺生物剤としては、Zinc Omadine(登録商標)(ARCH Chemicals社製)として入手可能な、1−ヒドロキシ−2(1H)−ピリジンチオン亜鉛が挙げられ、乾燥状態及び湿った状態のどちらでも好ましく効果的である。1−ヒドロキシ−2(1H)−ピリジンチオン亜鉛は酸化亜鉛と共に利用してもよく、Zinc Omadine(登録商標)のエマルションとして入手可能である。他の適したホルムアルデヒドフリー殺生物剤としては、Kathon(商標)893、及びSkane(登録商標)M−8(Rohm&Haas社製)として入手可能な、2−n−オクチル−4−イソチアゾリン−3−オン、並びに、Metasol(登録商標)TK−100(LanXess社製)として入手可能な、2−(4−チアゾリル)−ベンズイミダゾールが挙げられる。
【0025】
該殺生物剤は、個々の該殺生物剤も、組み合わせとして利用した殺生物剤もホルムアルデヒドを排出又は生成しない限りは、個別に、又は組み合わせて使用してよい。同様に、該ラテックスに含まれる殺生物剤の量、該表面処理中に含まれる殺生物剤の量、及び該表面処理中に含まれる殺生物剤の量と該ラテックス中に含まれる殺生物剤の量を足し合わせた殺生物剤の量は、該殺生物剤がホルムアルデヒドを排出又は生成しない限り、限定されない。仮に該ラテックスが殺生物剤を含んで製造されていない場合には、該ラテックスが該コアに塗布される前、またはラテックスが表面処理に含まれる前に、1以上の殺生物剤をラテックス結合剤に添加することができる。このような殺生物剤又はその組み合わせのいかなるものも、該ラテックスの使用中又は乾燥後に、1または複数の該殺生物剤がホルムアルデヒドを放出、排出又は生成しないように選択することが重要である。
【0026】
該表面処理20は、一般に、該ホルムアルデヒドフリーラテックス結合剤及び該ホルムアルデヒドフリー殺生物剤に加えて、成分を含む。例えば、表面処理組成物が乾燥されて該表面処理20が形成される前に、該表面処理組成物を、水などの種々の溶媒又はキャリア中に分散してもよい。水がもっとも好ましい溶媒又はキャリアであるが、他の種々の溶媒又はキャリアを利用してもよい。また該表面処理20は、例えば乾式カオリン、湿式カオリン、若しくは焼成カオリンなどのカオリンクレイ;沈降炭酸カルシウム若しくは乾式の重質炭酸カルシウム若しくは石灰石;又は、雲母、ガラス、セラミックミクロスフェア、長石、若しくはネフェリン閃長岩などのケイ酸塩、などの多数の充填剤を含み得る。加えて、該表面処理20は、珪藻土、滑石、石膏、方解石、又は酸化亜鉛を含み得る。該表面処理の、例えば色、レオロジー、及び、隠ぺい力、若しくは不透明性の調整のため、該充填剤を加えるのが望ましい。
【0027】
加えて、輝度及び不透明性を与えるため、該表面処理20にTiOを加えてもよい。該表面処理20は、又、種々の固体を分散させ凝集体が形成されないようにするための分散剤;塗料の非浸透性(holdout)及び塗布粘度改良のための増粘剤;界面活性剤;及び空気混入の最小化のための消泡剤を含んでいてもよい。該分散剤、増粘剤、界面活性剤、充填剤、及び消泡剤は、ホルムアルデヒドを排出又は生成しないよう選択する。
【0028】
本発明の該ホルムアルデヒドフリー音響タイルの該表面処理には、種々の分散剤、増粘剤、界面活性剤、及び消泡剤を使用してよい。適した分散剤としては、ピロリン酸四カリウム(TKPP)(FMC社製)、及びTamol(登録商標)731A(Rohm&Haas社製)として入手可能なポリカルボキシレートのナトリウム塩が挙げられる。増粘剤の例としてはヒドロキシエチルセルロースが挙げられ、Natrosol(登録商標)(Hercules社製)として入手可能である。界面活性剤の例としては、ノニルフェノールエトキシレートが挙げられ、IGEPAL(登録商標)CO−630(Rhodia Canada社製)として入手可能である。消泡剤の例としては、オイルベース消泡剤が挙げられ、Hi−Mar DFC−19(Hi−Mar Spacialties社製)として入手可能である。当業者が認めているとおり、該表面処理組成物は、1以上の各該分散剤、増粘剤、界面活性剤、充填剤、及び消泡剤を含んでもよい。
【0029】
表面処理は種々の処方のものを利用し得る。1つの実施態様では、表面処理20の剤形は、約30から約50重量%の水、約40から約60重量%の充填剤、約2から約15重量%のTiO、約2から約20重量%のラテックス、約0.25から約1.00重量%の分散剤、約0.01から約1.00重量%の増粘剤、約0.05から約0.50重量%の消泡剤、約0.1から約1.0重量%の界面活性剤、及び約0.01から約1.50重量%の殺生物剤から構成される。より好ましくは、表面処理20の剤形は、約35から約40重量%の水、約45から約55重量%の充填剤、約2から約5重量%のTiO、約3から約8重量%のラテックス、約0.50から約1.00重量%の分散剤、約0.01から約0.15重量%の増粘剤、約0.05から約0.20重量%の消泡剤、約0.1から約0.5重量%の界面活性剤、及び約0.01から約1.10重量%の殺生物剤から構成される。更により好ましくは、表面処理20の剤形は、約35から約38重量%の水、約52から約57重量%の充填剤、約2.50から約3.75重量%のTiO、約5から約8重量%のラテックス、約0.75から約1.00重量%の分散剤、約0.05から約0.10重量%の増粘剤、約0.10から約0.15重量%の消泡剤、約0.20から約0.50重量%の界面活性剤、及び約0.025から約0.60重量%の殺生物剤から構成される。
【0030】
別の態様では、本発明は、ホルムアルデヒドフリー音響タイルの製造プロセスを提供する。この方法は、音響タイルコア10を製造すること、及び該音響タイルコア10に表面処理組成物を塗布し、表面処理20を形成することを含む。該表面処理組成物及び表面処理20は、ホルムアルデヒドフリーラテックス結合剤及び1以上のホルムアルデヒドフリー殺生物剤を含む。
【0031】
以下の実施例により本発明を更に説明するが、当然のことながら、これはその範囲を如何様にも限定するものではない。
【実施例】
【0032】
この実施例において、多数の音響タイルを製造し、該標準実施要領に従って、ホルムアルデヒドの排出についてテストした。結果を実施例1〜7にて提供する。実施例1及び2は、2つの標準的な音響タイルのホルムアルデヒド排出データを提供する。実施例3は、コア及び耐火バックコーティングを有する音響タイルのホルムアルデヒド排出データを提供する。実施例4はコア、耐火バックコーティング、及びホルムアルデヒドフリーラテックスを含む表面処理を有し、該ホルムアルデヒドフリーラテックスがホルムアルデヒドフリー殺生物剤を含む、本発明の音響タイルのホルムアルデヒド排出データを提供する。実施例5は、実施例4に記載の本発明の音響タイルの該表面処理組成物に、更なる殺生物剤を加えた音響タイルのホルムアルデヒド排出データを提供する。実施例6及び7は、コア、耐火バックコーティング、並びにホルムアルデヒドフリーラテックス及びホルムアルデヒドフリー殺生物剤を含む表面処理を含む、本発明の音響タイルのホルムアルデヒド排出データを提供する。
【0033】
【表1】

【0034】
実施例3に示された結果は、耐火バックコーティング及び該コアの組み合わせが、本明細書中で定義したように、ホルムアルデヒドフリーであることを実証している。即ち、この実施例の該音響タイルは、2μg/mより少ない量を排出しており、これは該標準実施要領の定量下限(lower LOQ)を下回っている。実施例4は、耐火バックコーティング、ホルムアルデヒドフリーラテックス、及び該コアを含む音響タイルが、本明細書にて定義したとおり、ホルムアルデヒドフリーであることを実証している。実施例5、6及び7は、該表面処理の構成要素として、とりわけ、ホルムアルデヒドフリー殺生物剤を含む音響タイルが、本明細書中で定義したように、ホルムアルデヒドフリーであることが実証している。更には、表1の実施例3〜7は、本発明の音響タイルの製造に使用された構成要素の組み合わせもまた、本明細書中で定義するように、ホルムアルデヒドフリーであることを実証している。これらのタイルのホルムアルデヒド排出が1μg/mを下回ることからも、実施例3〜7は、本発明の好ましい実施態様を説明するものである。
【0035】
本明細書中に引用された出版物、特許出願及び特許を含む全ての参考文献は、各参考文献が参照することにより本明細書中に取り込まれることが個々に且つ特定に示されている場合と同様、この場において参照することにより、本明細書中に取り込まれる。
【0036】
本発明の好ましい実施例は、本発明者らが知る本発明を実施する最良の形態を含むものとして、本明細書中に記載されている。これらの好ましい実施例のバリエーションは、前記の記載を読めば当業者には明らかである。本発明者らは、当業者が必要に応じてこのようなバリエーションを行うものと考えており、また本発明者らは、本発明が、本明細書中に特に記載されていない他の方法にて実践されることも予定している。従って、適用される法律によって許可される限り、本発明は、特許請求範囲に記載の主題事項を改良したもの、若しくは該主題事項と同質なものを全て含む。更には、上記記載の要素を可能なあらゆるバリエーションにて組み合わせたものも、本明細書中に他に示されない限り、若しくは状況から明らかに矛盾しない限り、本発明に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア及び表面処理を含み、該表面処理がホルムアルデヒドフリーラテックス結合剤及び少なくとも1つのホルムアルデヒドフリー殺生物剤を含む、音響タイル。
【請求項2】
該殺生物剤がイソチアゾリン−3−オンである、請求項1に記載の音響タイル。
【請求項3】
該音響タイルが1−ヒドロキシ−2(1H)−ピリジンチオン亜鉛を含み、
該コアが、ガラスファイバ、ミネラルウールファイバ、及びそれらの混合物からなる群より選択されるファイバを含み、
該ミネラルウールファイバが、スラグウール、ロックウール、玄武岩ウール、及びそれらの混合物からなる群より選択され、
該コアが、更に硫酸カルシウム材料、ホウ酸、カオリンクレイ、グアーガム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、及びそれらの混合物からなる群より選択される部材を含み、
該タイルが、漂白紙、未漂白紙、及びクラフト/アルミニウムホイルからなる群より選択されるバッキングを含み、
且つ該表面処理がクレイ充填剤、炭酸カルシウム充填剤、TiO、分散剤、及び増粘剤を含む、
請求項2に記載の音響タイル。
【請求項4】
該殺生物剤が、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンとメチル−4−イソチアゾリン−3−オンの組み合わせである、請求項1に記載の音響タイル。
【請求項5】
該ホルムアルデヒドフリーの合成若しくは天然のラテックス結合剤が、
熱可塑性合成アクリルポリマーのエマルション;
エチレン、塩化ビニル、及び酢酸ビニルのターポリマー;
スチレンとアクリルのコポリマー;
酢酸ビニルとアクリルのコポリマー;
ポリ酢酸ビニルのホモポリマー;
エポキシポリマーのエマルション;
ポリウレタン;
ポリビニルアルコール;
スターチ;
大豆由来蛋白質;又は
それらの組み合わせである、
請求項1に記載の音響タイル。
【請求項6】
該タイルがホルムアルデヒドフリーである、請求項1に記載の音響タイル。
【請求項7】
該タイルが約1μg/mの定量限界を下回るホルムアルデヒドを放出又は排出する、請求項6に記載の音響タイル。
【請求項8】
コア及び表面処理を含み、乾燥前の該表面処理が
約30から約50重量%の溶媒;
約40から約60重量%の充填剤;
約2から約15重量%のTiO
約2から約20重量%のホルムアルデヒドフリーラテックス;
約0.25から約1.00重量%の分散剤;
約0.01から約1.00重量%の増粘剤;
約0.10から約1.00重量%の界面活性剤;
約0.05から約0.50重量%の消泡剤;及び
約0.01から約1.50重量%のホルムアルデヒドフリー殺生物剤
を含む、音響タイル。
【請求項9】
該殺生物剤がイソチアゾリン−3−オンである、請求項8に記載の音響タイル。
【請求項10】
該殺生物剤が、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オンとメチル−4−イソチアゾリン−3−オンの組み合わせである、請求項8に記載の音響タイル。
【請求項11】
該コアが、ガラスファイバ、ミネラルウールファイバ、及びそれらの混合物からなる群より選択されるファイバを含み、
該ミネラルウールファイバが、スラグウール、ロックウール、玄武岩ウール、及びそれらの混合物からなる群より選択され、
該コアが、更に硫酸カルシウム材料、ホウ酸、カオリンクレイ、グアーガム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、及びそれらの混合物からなる群より選択される部材を含み、
該タイルが、漂白紙、未漂白紙、及びクラフト/アルミニウムホイルからなる群より選択されるバッキングを含む、
請求項8に記載の音響タイル。
【請求項12】
更に1−ヒドロキシ−2(1H)−ピリジンチオン亜鉛を含む、請求項8に記載の音響タイル。
【請求項13】
該タイルがホルムアルデヒドフリーである、請求項8に記載の音響タイル。
【請求項14】
該タイルが約1μg/mの定量限界を下回るホルムアルデヒドを放出又は排出する、請求項13に記載の音響タイル。
【請求項15】
音響タイルコアを製造し、該コアに表面処理を施す音響タイルの製造プロセスであって、該表面処理が、ホルムアルデヒドフリーの合成若しくは天然のラテックス結合剤及び少なくとも1つのホルムアルデヒドフリー殺生物剤を含む、音響タイルの製造プロセス。
【請求項16】
該コアが、ガラスファイバ、ミネラルウールファイバ、及びそれらの混合物からなる群より選択されるファイバを含み、
該ミネラルウールファイバが、スラグウール、ロックウール、玄武岩ウール、及びそれらの混合物からなる群より選択され、
該コアが、更に硫酸カルシウム材料、ホウ酸、カオリンクレイ、グアーガム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、及びそれらの混合物からなる群より選択される部材を含み、
該タイルが、漂白紙、未漂白紙、及びクラフト/アルミニウムホイルからなる群より選択されるバッキングを含む、
請求項15に記載の音響タイル。
【請求項17】
表面処理が、更に1−ヒドロキシ−2(1H)−ピリジンチオン亜鉛を含む、請求項15に記載の音響タイルの製造プロセス。
【請求項18】
該表面処理が、更にクレイ充填剤、炭酸カルシウム充填剤、TiO、分散剤、及び増粘剤を含む、請求項15に記載の音響タイルの製造プロセス。
【請求項19】
該ホルムアルデヒドフリーの合成若しくは天然のラテックス結合剤が、
熱可塑性合成アクリルポリマーのエマルション;
エチレン、塩化ビニル、及び酢酸ビニルのターポリマー;
スチレンとアクリルのコポリマー;
酢酸ビニルとアクリルのコポリマー;
ポリ酢酸ビニルのホモポリマー;
エポキシポリマーのエマルション;
ポリウレタン;
ポリビニルアルコール;
スターチ;
大豆由来蛋白質;又はそれらの組み合わせである、請求項15に記載の音響タイルの製造プロセス。
【請求項20】
該ホルムアルデヒドフリーの殺生物剤が、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、又はそれらの組み合わせである、請求項19に記載の音響タイルの製造プロセス。
【請求項21】
該タイルがホルムアルデヒドフリーである、請求項15に記載の音響タイルの製造プロセス。
【請求項22】
該タイルが約1μg/mの定量限界を下回るホルムアルデヒドを放出又は排出する、請求項21に記載の音響タイルの製造プロセス。



【図1】
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【公表番号】特表2009−539004(P2009−539004A)
【公表日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513249(P2009−513249)
【出願日】平成19年5月30日(2007.5.30)
【国際出願番号】PCT/US2007/012720
【国際公開番号】WO2007/142955
【国際公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(508352218)ユーエスジー インテリアズ、インコーポレイテッド (5)
【Fターム(参考)】