説明

音響保護カバーアセンブリ

【課題】トランスデューサ、例えばマイクロフォン、ラウドスピーカ、ブザー、リンガーなどを周囲の環境から保護する、音声伝送性のカバーアセンブリが開示される。
【解決手段】カバーアセンブリは、微孔性の保護メンブランを有している。この保護メンブランは、2つの接着支持システム相互間に、エッジの近くの外側領域で捕捉されている。結合された外側領域によって取り囲まれた結合されていない内側領域が形成されるので、保護メンブランは音圧波に応答して変位または運動可能である。保護メンブランの構成は形状と相俟って、音響エネルギーが、極めて低い減衰を伴って、保護メンブランを通過することを可能にする一方、液体侵入に対する長時間の暴露に耐えることができる。カバーアセンブリの構成は、シール作用を発揮し、音響エネルギーをハウジングの開口に集束するように、付属の音響ガスケットを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広くは、電子デバイスに採用されるトランスデューサ(例えばマイクロフォン、リンガーまたはスピーカ)のための音響保護カバーに関する。より具体的には、本発明は、低い音響損失、および、液体浸入に対する長時間の暴露に耐え得る能力の双方を提供する微多孔質保護メンブランを含む音響保護カバーアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
最新の電子デバイス、例えばラジオや携帯電話は、トランスデューサ、例えばマイクロフォン、リンガー、スピーカ、ブザーなどを有している。これらの電子デバイスはしばしば、トランスデューサの上方に配置された小さな開口または穴を有するハウジングを有しており、これにより、トランスデューサがハウジング内部からの音声信号を伝送したり受け取ったりすることが可能になる。しかしながら、このような構造は水(例えば雨滴)に対する偶発的な暴露からトランスデューサを保護するものの、トランスデューサの効率と音質とを著しく減衰してしまう。さらに、このような構造は、大量の水の浸入を阻止することはできない。従って、水その他の液体の流入による損傷からトランスデューサを保護するために、トランスデューサとハウジングとの間に音響保護カバーが利用されてきた。
【0003】
従来の音響保護カバーは、通気流に対する材料の抵抗を減じることだけに基づいて構成された、多孔質の繊維材料から成っているのが典型的である。結果として材料を厚くするこの材料の大きな有効孔径は、高い通気流パラメータを達成するための手段であった。この場合、材料の音声減衰量は、その孔のサイズと逆比例する。すなわち、孔径が大きくなるにつれて、音声減衰が減少する。しかしながら、孔径は逆に、材料の耐水性に不都合な影響を及ぼす。極端に小さな孔を有する、または孔を有さない材料は高い耐水性を有する。
【0004】
従って、従来技術の音響保護カバーは、高度な音声伝送および音質のために大きい空孔を有するか、あるいは、高い耐水性のため著しく小さな空孔および比較的密な構造を有することに焦点を絞ってきた。前者に焦点を絞ると、音響保護カバーはせいぜい、水への暴露に対する保護が最低限の電子デバイスを提供するにとどまる。後者に焦点を絞ると、大量の水から電子デバイスを保護するようになるが、しかし、大きな音声減衰により音質が悪くなる。たとえ多孔質材料に撥水処理を施しても、孔構造が大きいことにより、かなりの深さまで電子デバイスを浸漬することを可能にすることはできない。
【0005】
上述の科学的原則に付随する従来技術の特許について、以下に説明する。
発明の名称「スピーカシステム(Speaker System)」の米国特許第4949386号において教示された、環境保護カバーシステムは部分的に、ポリエステルの製織材料または不織材料と、微多孔質のポリテトラフルオロエチレン(「PTFE」)メンブランとから成る、2層積層構造から成っている。微多孔質PTFEメンブランの疎水性が、液体が環境バリヤシステムを通過することを阻止する。しかしながら、このような積層カバーシステムは、電子デバイス内への液体の流入を阻止する上では効果的であるかもしれないが、積層体は音声を著しく減衰する。このような減衰は、秀でた音質を必要とする現代の通信用電子デバイスにおいては許容されない。さらに、積層カバーシステムは、瞬間的な液体流入を阻止する点では効果的であるが、長時間の液体に対する暴露は、接着剤/メンブラン界面が場合によっては破壊されてしまうため、制限される。
【0006】
発明の名称「補聴器または補聴器用イヤーアダプタの開口を閉鎖するための機器(Apparatus For Closing Openings Of A Hearing Aid Or An Ear Adaptor For Hearing Aids)」の米国特許第4987597号が、電子トランスデューサのカバーとして微多孔質PTFEメンブランを使用することを教示している。メンブランは、音声信号を著しく減衰することなしに、メンブランにおける液体の通過を制限する。しかしながら、この特許は、空孔率および透過性に関連したパラメータについては全体的に記載しているものの、低い音声損失および液体浸入に対する長時間の暴露の双方を達成するために、メンブランのどの材料パラメータが必要となるかについては特に教示していない。
【0007】
発明の名称「高強度の音響アラーム信号を有する、手動作動可能なリスト(手首)アラーム(Manually Actuable Wrist Alarm Having A High-Intensity Sonic Alarm Signal)」の米国特許第5420570号が、液体浸入から電子デバイスを保護するための保護層として、無多孔質フィルムを使用することを教示している。前述のように、無多孔質フィルムは秀でた液体浸入抵抗を有するが、このような無多孔質フィルムは、著しく音声信号を歪める比較的高い音声伝送損失を被る。伝送損失は、無多孔質フィルムと関連した比較的高い質量により増大する。
【0008】
発明の名称「防水性の空気圧等化弁(Water-Proof Air Pressure Equalizing Valve)」の米国特許第4071040号が、2つの焼成ステンレス鋼ディスク間に薄い微多孔質メンブランを配置することを教示している。このような構造は、軍用タイプの屋外用の頑丈な電話セットでの使用目的には効果的であったかもしれないが、現代の通信用電子デバイスにおける使用には望ましくない。なぜならば、焼成金属ディスクは比較的厚く、重いからである。さらに、2つのステンレス鋼ディスクの間に微多孔質メンブランを配置することによって、メンブランを物理的に拘束することになり、これにより、メンブランの振動能力を制限してしまう。このことは、伝送される音声信号を減衰し、歪めることによって、音質を低下させる。
【0009】
上記の米国特許第4949386号、同4987597号、同5420570号および同4071040号それぞれの特許に関連した上述の欠点の一部を克服するために、発明の名称「高度な音響特性を有する保護カバーアセンブリ(Protective Cover Assembly Having Enhanced Acoustical Characteristics)」の米国特許第5828012号に教示された音声伝送性の音響カバーアセンブリは、多孔質支持層に結合された保護メンブランを有しているが、これにより外側の結合された領域に取り囲まれた、内側の結合されていない領域が形成される。このような構造の場合、メンブラン層および支持層は、これを通る音響エネルギーに応答して自由に独立して振動するかまたは運動することができ、これにより、音響エネルギーの減衰を最小限に抑える。しかしながら、カバーアセンブリは音響減衰を低減しはするものの、音響減衰の度合いは制限される。なぜならば、音響エネルギーが通過しなければならない材料の質量および厚さが増大する(すなわち、音響エネルギーは最初にメンブランを通過し、次いで支持層を通過しなければならない)からである。
【0010】
最後に、発明の名称「多孔質ポリテトラフルオロエチレンフィルムおよびその製法(Porous Polytetrafluoroethylene Film And Manufacturing Process For Same)」の特開平10−165787号公報は、音声透過性を維持しつつ、液体流入から電子デバイスを保護するための多孔質PTFEの使用を開示している。長手方向に伸張されたPTFEメンブランの片面または両面に、補強材および形状安定材の双方として機能する熱可塑性樹脂が網状に被覆される。この製法を用いると、フィルムの孔径が均一に拡張し、フィルムの耐水性を損なうことなく、メンブランを薄くすることによって音声透過度が向上する。このような多孔質PTFEフィルムは、300〜3000Hzの周波数(すなわち、「電話域(telephony range)」として知られる周波数域)で1dB以下の音声減衰と、30cm以上の静水圧抵抗とを呈する。しかしながら、PTFEフィルムの被覆は音声減衰を比較的低くするものの、音声伝送損失全体は過度になり、現代の通信用電子デバイスにおいては許容できないものと考えられる。これに加えて、PTFEフィルムは、高圧での長時間にわたる水浸入に耐える能力に欠けている。
【0011】
上述の従来技術の特許は、メンブランの空孔率にだけ焦点を絞っているので、これらの明細書において教示された、高い通気流を有するメンブランの音声伝送損失は低いが、国際電気標準会議(IEC)によって規定されたIP−57レベルの防水(30分間で1メートルの潜水)に適合することはできない。IECは国際標準化機構(ISO)の関連組織であり、「閉鎖体により提供される保護度(Degrees Of Protection Provided By Enclosures)」と題するIPコードを刊行しており、その中で電気機器の閉鎖体によって提供された保護度を分類するためのシステムを記述している。この規格に列挙された目的の一つは、水の浸入による有害な影響に対して、閉鎖体内部の機器を保護することである。IP−57規格はIECの刊行物第529号、第2刷、1992年に記載されている。
【0012】
消費者市場は、例えば長時間にわたる液体および粒子の侵入に対する暴露のような、過酷な環境条件および作業条件での、電子デバイスの使用を望むので、高音質を有する耐久耐水性の電子デバイスへの要求が著しく増大している。従って、低い(すなわち3dB未満の)音声減衰を可能にする高通気流を有し、かつIP−57レベルの保護を可能にするような音響保護カバーが求められる。音響保護カバーはまた、軽量かつ、迅速で正確な取り付けを行うのに十分な剛性を有するべきである。
【0013】
前述のものに加えて、音響ガスケットは、側路および構造振動を排除し、ハウジング開口に音響エネルギーを集束することが望ましい。より具体的には、音声トランスデューサ(ラウドスピーカ、リンガー、マイクロフォンなど)とハウジングとの間に音響ガスケットがないと、音響エネルギーはハウジングの他の領域内に漏れるおそれがある。これにより、ハウジングを出入りする音響エネルギーが減衰され、歪まされることになる。このような音響エネルギーの漏れは、ラウドスピーカ、リンガーなどのようなトランスデューサによってハウジングから放出された音声、または、マイクロフォンを作動させるためにハウジングに入る音を減衰し、歪ませるおそれがある。音響ガスケットが設けられていないと、これらの音響損失は、通信用電子デバイスの電池寿命およびトランスデューサの高出力レベルを低減してしまう。音響ガスケットは、ラウドスピーカをハウジングから絶縁することにより、その効果を向上することができ、それによりスピーカのより多くの機械エネルギーを直接音響エネルギーに変換することができる。音響ガスケットおよび材料は当業者にはよく知られているが、しかし、これらは通常、独立した構成素子としてデバイス内に組み込まれ、これにより、デバイスの製造コスト、製造の複雑さを高めてしまう。
【0014】
以上は、通信用電子デバイスの既存の音響保護カバーおよびガスケットシステムに存在する、周知の制約を示したものである。従って、上記制約のうちの1つ以上を克服するために、改善された保護システムを提供することが有利であることは明らかである。よって、以下にさらに詳しく開示された特徴も含め、適切な代替案を述べる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
前述のものと関連して、長時間にわたる液体浸入に対する暴露から電子デバイスを保護する一方、従来の音響カバーと等価の、またはより良好な音声減衰を提供するような音声伝送性の音響保護カバーアセンブリを開示する。アセンブリは、メンブランを構成する際に焦点を絞るべき重要なパラメータが、可動質量および厚さであって、通気流ではないことを認識することにより、音声損失の低い、IP−57の要件を満たす微多孔質保護メンブランを有している。メンブランの可動質量および厚さの双方を減じると、電話域内の音声伝送損失が効果的に低減される。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の1つの態様によれば、アセンブリは、2つの接着支持システムの間に捕捉された微多孔質保護メンブランから成っている。第1の接着支持システムは片面または両面接着剤であってよいが、しかし、この接着支持システムの主たる機能は、メンブランを対向する接着支持システムに固定させることである。第2の接着支持システムは、両面接着剤で、用途に応じてトランスデューサまたはハウジングのガスケットとして役立つ。両接着支持システムは、メンブランに結合されるので、外側の結合された領域に取り囲まれた内側の結合されていない領域がメンブランに形成される。結合されていない領域では、2つの接着支持システムの組み合わせは、上流側の音圧波がメンブランを振動させ、メンブランの固体伝播エネルギー(機械的な振動)を、音響保護カバーアセンブリの下流側で空気伝播エネルギー(圧力波)に変換することを可能にする。これにより音響損失/減衰が小さくなる。伝送損失を最小化することに加えて、音響カバーアセンブリは、上述のような、メンブランのためのIP−57レベルの防水を提供する。このような防水レベルが達成されるのは、メンブランに付加的な剛性および定着が提供されるからである。対向する接着支持システムは、接着剤からメンブランが剥離することにより、アセンブリが構造的に破壊されるのを防止する。
【0017】
本発明の別の態様によれば、第1の接着支持システムはさらにガスケットを組み込んだ両面接着剤で、電子デバイスのハウジングに設けられた開口を音声が通るようにし、音響漏れ、さらにはデバイスの伝送損失が増大する原因となり得る音響保護カバーアセンブリとデバイスポートとの間のギャップを埋める。
【0018】
本発明のさらに別の態様によれば、保護メンブランは第2の接着支持システムにだけ結合されている。
本発明のさらに別の態様によれば、保護メンブランはキャップ内に射出成形されている。
添付の図面と関連させた本発明に関する以下の詳細な説明、および特許請求の範囲から、本発明の装置および方法をより容易に理解することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】音響保護カバーアセンブリを採用した、従来型携帯電話のフロントハウジングカバーの外部を示す図である。
【図2】図1の携帯電話のフロントハウジングカバーの内部を示す図である。
【図3】本発明の、「キャプティブ構造」(捕捉構造)の音響保護カバーアセンブリの態様を示す上面図である。
【図4】図3の音響保護カバーアセンブリのX−X線に沿った断面図である。
【図5】単一の接着支持システムを有する音響保護カバーアセンブリの態様の底面図である。
【図6】図5の音響保護カバーアセンブリのX−X線に沿った断面図である。
【図7】ガスケットが取り付けられた音響保護カバーアセンブリの態様を示す上面図である。
【図8】図7の音響保護カバーアセンブリのX−X線に沿った断面図である。
【図9】キャップに射出成形された保護メンブランを有する、音響保護カバーアセンブリの態様を示す上面図である。
【図10】図9の音響保護カバーアセンブリのX−X線に沿った断面図である。
【図11】中央支持体のために設計された補足結合箇所を備えた保護メンブランを有する音響保護カバーアセンブリの態様を示す上面図である。
【図12】図11の音響保護カバーアセンブリのX−X線に沿った断面図である。
【図13】結合支持体を改善するように設計された別の補足結合箇所を備えた保護メンブランを有する音響保護カバーアセンブリの態様を示す上面図である。
【図14】図13の音響保護カバーアセンブリのX−X線に沿った断面図である。
【図15】音響伝送損失を測定するために使用される装置の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図面を参照すると、いくつかの図面にわたって、対応部分が同一符号で示されており、本発明の音声伝送性の音響保護カバーアセンブリおよびガスケットシステムが、種々の構造で全体的に示されており、また、典型的な電子デバイス、例えば携帯電話に設けられたトランスデューサをカバーするのに使用するために寸法設定されている。本発明が本明細書中の態様に限定されるものではなく、これらの態様は単に例示したものにすぎず、本願の請求の範囲から逸脱することなしにこれらの態様に変更を加えるかまたは適合することができるのは、明らかである。
【0021】
本明細書中の用語「キャプティブ(捕捉)構造」とは、2つの接着支持システムの間の保護メンブランの結合状態を意味する。
本明細書中の用語「微多孔質メンブラン」とは、孔の50%以上が約5μm以下の公称直径を有している、最小50%の有孔率を有する(つまり孔容積が50%以上の)連続的なシート材料を意味する。
本明細書中の用語「疎油性」とは、気体の通過を可能にする一方で、油をはじく、または油を吸収しない、材料の性質を一般的に意味する。
本明細書中の用語「疎水性」とは、気体の通過を可能にする一方で、水をはじく、または水を吸収しない、材料の性質を一般的に意味する。
【0022】
本明細書中の用語「音響ガスケット」およびその派生語は、シールを形成するために2つの表面の間に圧縮されたときに、音波エネルギーを吸収しまたは反射する性質を有する材料を意味する。音響ガスケットは、トランスデューサとハウジング表面との間、またはハウジング内の表面相互間で従来の形式で使用することができ、これにより選択された領域における振動を音響的に絶縁し、減衰する。
【0023】
図1は、小さな開口11を有する、従来型の携帯電話のフロントハウジングカバー10の外側を示す図である。開口の数、サイズおよび形状は大幅に変更することができる。これとは別の開口の構成には、狭幅のスロットまたは種々の数の円形開口が含まれる。
【0024】
図2は、マイクロフォン設置位置12と、スピーカ設置位置13と、アラート設置位置15とを示す、フロントハウジングカバー10の内側の図である。図2は、マイクロフォン設置位置12と、スピーカ設置位置13と、アラート設置位置15とに設けられた、音響保護カバーアセンブリ14のための典型的な設置位置を全体的に示している。
【0025】
図3および図4は、本発明の保護カバーアセンブリ14の音響的に透明な「キャプティブ構造」態様を示している。前述のように、「キャプティブ構造」とは、保護カバーアセンブリ14の形状を意味しており、この構造において、微多孔質の保護メンブラン20が一般的に、第1の接着支持システム22と第2の接着支持システム24との間で「キャプティブ(捕捉)」状態で保持される。
【0026】
接着支持システム22および24は、外側の結合領域によって取り囲まれた保護メンブラン22の内側の結合されない領域が形成されるように、結合されている。結合されない領域では、2つの接着支持システム22および24の組み合わせは、保護メンブラン20のエッジを束縛し、ひいては、上流側の音圧波が保護メンブラン20を振動させ、かつ、保護メンブラン20の固体伝播エネルギー(機械的な振動)を、音響保護カバーアセンブリ14の下流側の空気伝播エネルギー(圧力波)に変換させることを可能にし、その結果、音響損失/減衰を低くする。
【0027】
保護メンブラン20は、ダストおよび他の粒子に対するバリヤを提供するのに役立ち、水または他の水性液による浸透に対して耐性を有しており、また、メンブランを通る音声損失を最小限に抑えるために、多孔質である。保護メンブラン20は微多孔質であるのが好ましく、これにより、非多孔質材料に比べて、メンブラン重量がとりわけ減じられる。保護メンブラン20は、多くのポリマー材料のうちの1つから製造されていてよい。この材料には、例えばポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、例えばポリエチレンおよびポリプロピレン、またはフルオロポリマーが含まれるが、これらに限定されるものではない。ポリ弗化ビニリデン(「PVDF」)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(「FEP」)、テトラフルオロエチレン−(ペルフルオロアクリル)ビニルエーテルコポリマー(「PFA」)、ポリテトラフルオロエチレン(「PTFE」)などのようなフルオロポリマーが、これらの固有の疎水性、化学的不活性、耐温度性および加工特性に関して好ましい。多孔質の保護メンブランが、本質的に疎水性材料から製造されていない場合には、当業者にはよく知られた、フッ素を含有する、撥水および疎油材料で処理することにより、空孔率に顕著な損失を与えることなしに、付与された疎水性の性質を有することができる。例えば、米国特許第5116650号、同第5286279号、同第5342434号、同第5376441号および他の特許明細書に開示された、水および油をはじく材料および方法が使用されてよい。
【0028】
保護メンブラン20は、低い表面張力の液体での漏れに対する耐性を向上させるために、疎油性処理を施されることが望ましい。この処理は、通常弗素化ポリマーのコーティングであり、このポリマーには例えば、米国特許第5385694号および同第5460872号の各明細書に教示されている、ジオキソル/TFEコポリマー、米国特許第5462586号に教示されているペルフルオロアルキルアクリレートおよびペルフルオロアルキルメタクリレート、そしてフルオロオレフィン、フルオロシリコーンなどがあるが、しかしこれに限定されるものではない。特に好ましい液体不透性かつ気体透過性のメンブランは、ジオキソル/TFEコポリマーおよびペルフルオロアルキルアクリレートポリマーで処理された延伸PTFE(「ePTFE」)から成る微多孔質メンブランである。
【0029】
保護メンブラン20は以下の性質を有しているべきである:約3〜150μmの範囲内、好ましくは3〜33μmの範囲内の厚さ;0.05〜5μmの範囲、好ましくは約0.05〜1μmの範囲内の公称孔径;20〜99パーセントの範囲、好ましくは50〜95パーセントの範囲内の空孔容積;0.15〜50ガーレー(Gurley)秒の範囲、好ましくは1〜10ガーレー秒の範囲内の空気透過度;5〜200psiの範囲、好ましくは20〜150psiの範囲内の耐水圧抵抗;約1〜40グラム/m2の範囲、好ましくは1〜30グラム/m2の範囲内の質量;および、1メートルの水圧において0.5時間よりも長い、好ましくは1メートルの水圧において4時間よりも長い、長時間の耐水圧継続時間。
【0030】
本発明の1つの態様において、保護メンブラン20は、少なくとも部分的に微多孔質PTFEから成っている。微多孔質PTFEは、多数の周知のプロセスのうちのいずれかによって、例えば延伸または伸張プロセス、製紙プロセス、充填材がPTFE樹脂に組み込まれ、次いで充填材を除去して多孔質構造を残すようなプロセス、または粉末焼成プロセスによって調製されてよい。微多孔質PTFE材料は、参照されることにより本明細書中に含まれる米国特許第3953566号、同4187390号および同4110392号それぞれの明細書に記載されているように、相互に接続したノードとフィブリルから成る微細構造を有する微多孔質ePTFEであることが好ましい。これらの明細書には、微多孔質PTFE材料を製造するための好ましい材料およびプロセスが十分に記載されている。微多孔質PTFE材料は、カーボンブラックのような顔料、または、見栄えをよくする目的で着色に使用される染料を含有していてよい。
【0031】
接着支持システム22および24は全体的に、接着剤、例えば粘着テープを有する基材から成るシステムの形状で形成されているのが好ましい。適宜な基材の例には、ウェブ材料およびメッシュ材料が含まれる。接着剤は、例えばアクリル、ポリアミド、ポリアクリルアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリウレタン、ポリシリコンなどを含む分類から選択された、液体状または固体状の、熱可塑性タイプ、熱硬化性タイプまたは反応性硬化タイプであってよいが、それらに限られるものではない。接着支持システム22および24は、基材のない接着剤であってもよく、スクリーン印刷、グラビア印刷、スプレーコーティング、粉末コーティングなどによって、メンブラン20に直接的に被着することができる。
【0032】
保護メンブラン20と接着支持システム22および24は、通常これらのエッジが同一の広がりを有するように、全体的に重ね合わされ、位置決めされる。ただし、このような必要がいつも生じるとは限らない。保護メンブラン20と接着支持システム22および24とは、少なくともこれらのエッジの近くの周縁領域で互いに結合され、これにより、外側の結合された領域内に、1つまたは複数の内側の結合されない領域を形成し、取り囲む。結合された領域の内辺部によって画定されたスパンが約38ミリメートル(1インチ半)以下であるような音響カバーアセンブリ14に関しては、一般的に、保護メンブラン20に対する接着支持システム22および24の付加的な結合は必要でない。約38ミリメートルより大きなスパンがある場合には、不連続的な互いに大きく離れた点で、付加的な結合箇所を設けることが望ましい。目的は2つある。第1の目的は、上流側の音圧波がメンブラン20を振動させ、メンブラン20の固体伝播エネルギー(機械的な振動)を音響保護カバーアセンブリ14の下流側で、空気伝播エネルギー(圧力波)に変換させることを可能にすることによって、アセンブリ14にわたる音響歪みを減じることである。第2の目的は、高い液圧に晒される大きな区域と連携するメンブランの点負荷を減じることである。極めて大きな音響保護カバーアセンブリ14に関しては、不連続的な結合点の変わりに、互いに大きく離れた結合線を使用すると、より便利である。音響保護カバーアセンブリ14の層同士を付加的に結合する必要があるかどうかは、カバーされるべき領域またはデバイスの形状ならびにアセンブリ14のサイズに関連する。従って、カバーアセンブリ14の音響性能を最適化するべく、付加的な結合の最良の方法およびパターンを確立するために、多少の実験が必要とされる場合もある。一般的に、すべてのサイズにおいて、アセンブリ14の機械的かつ音響的な要件によって許される範囲まで、結合された領域の面積が最小化され、結合されていない領域の面積が最大化されることが好ましい。
【0033】
第1および第2の接着支持システム22および24の目的は、保護メンブラン20に不慮の力が加えられた場合に、この保護メンブラン20を機械的に支持することである。例えば、アセンブリ14が取り付けられたデバイスが、起りうることであるが、例えば、携帯電話をスイミングプールに落としたり、ボートから水中に落としたりして、水中に浸漬されたときに、音響保護カバーアセンブリ14に加わる静水圧に対してである。キャプティブな構造はさらに、より薄い、場合によっては弱い保護メンブラン20を使用することを可能にするという利点を提供する。これにより音響保護カバーアセンブリ14を通る音声伝送を改善する。2つの接着支持システム22および24と組み合わされたキャプティブ構造は、堅固な音響保護カバーアセンブリ14を完成する。このアセンブリの製造および組み立てプロセス中の取り扱いは、個別の部品の場合よりも著しく簡単である。前述のように、従来技術においては、このような要求を満足するために、層構造が示唆されている。しかしながら、このような構造は、これを通過する音エネルギーを過度に減衰し、歪めてしまう。なぜならば、積層物は質量を付加するからである。加えて、キャプティブ構造は、音響性能を著しく損なうことなしに、厳しい環境条件を必要とする電子デバイス内部のより厚い、より頑健なアセンブリ14を可能にする。
【0034】
さらに、キャプティブ構造は、音響エネルギーが、音響保護カバーアセンブリ14を最小限の減衰しか伴わずに通過させる一方で、支持および取り扱い上の利点をなおも得ることを可能にする。保護メンブラン20および接着支持システム22および24は、選択された面積または領域内だけで一緒に結合されるので、接着支持システム22および24相互間に結合されていない広い面積を得ることができる。従って、接着支持システム22および24によって拘束された保護メンブラン20は、音響エネルギーに応答して、結合されていない領域内で自由に運動または振動することができる。
【0035】
次に図5および図6を参照すると、これらの図面には音響保護カバーアセンブリ14の別の構造が示されている。この態様は、第1の接着支持システム22を有していないという点を除けば、すべての面で上述のキャプティブ構造の態様と同一である。換言すれば、保護メンブラン20は、その一方の側で全く結合されておらず、従って接着支持システム24から一層剥離しやすい。従って、このような構造に対しては、接着支持システム24の接着剤は著しく強力でなければならない。保護メンブラン20に十分に接着し、かつ保護メンブラン20が接着支持システム24から剥離するのを防止する接着剤を見出すために多少の実験が必要とされる場合もある。
【0036】
図7および図8は、図3および図4に示したような、「キャプティブ構造」の音響保護カバーアセンブリ14の態様を示している。第1の接着支持システム22には音響ガスケット34が結合されている。このような態様の場合、第1の接着支持システム22は両面接着剤である。音響ガスケット34は、結合されていない領域において保護メンブラン20の独立した運動を可能にするように、取り付けられている。
【0037】
従来の市販されている材料が当業者に知られており、音響ガスケットとしての使用に適している。例えば、軟質のエラストマー系材料または発泡エラストマー、例えばシリコーンゴムおよびシリコーンゴムフォームを使用することができる。好ましいガスケット材料は微多孔質PTFE材料であり、より好ましくは、米国特許第3953566号、同第4187390号および同第4110392号の各明細書に記載されているような、相互に接続されたノードとフィブリルから成る微細構造を有する微多孔質ePTFEであり、これらの事項は、参照することにより本願に組み込まれている。音響ガスケットが、エラストマー系材料で部分的に充填することができる微多孔質ePTFEのマトリックスから成っていることがより好ましい。音響ガスケット34は、保護メンブラン20と接着支持システム22および24とを一緒に結合するための方法および材料を用いて、カバー材料に結合することができる。
【0038】
図9および図10に示した音響保護カバーアセンブリ14の態様の場合、保護メンブラン20はプラスチックカプセルまたはキャップ36に射出成形されている。加硫性プラスチック、例えばシリコーンまたは天然ゴム、および、熱可塑性プラスチック、例えばポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネートまたはポリアミド、ならびに、好ましくは熱可塑性エラストマー、例えばSantoprene(商標)またはHytrel(商標)が、プラスチックカプセル36のための材料として特に適している。これらすべてのプラスチックは、いわゆるインサート成形射出成形プロセスで、使用することができる。インサート成形射出成形プロセスの利点は、プラスチックカプセル36の微多孔質メンブラン20への射出成形が、1回の工程で可能であることである。具体的には熱可塑性エラストマーは、インサート成形射出成形プロセスで加工可能であるという特性と、このように加工を行う上でエラストマーの特性を維持し続けるという特性とを兼ね備えている。
【0039】
保護メンブラン20をキャップ36の中央で成形されるものとして、例示したが、メンブラン20は、キャップ36の鉛直方向位置、例えば頂部または底部に形成された溝内に、成形することができる。カバーアセンブリ14は、剛性を有する閉鎖体またはハウジング、例えば携帯電話、ポータブルラジオ、ポケットベル(登録商標)、ラウドスピーカーなどの閉鎖体などに配置されたトランスデューサを保護するのに使用することができる。従ってアセンブリ14は、第1に、トランスデューサの寸法特性および音響特性を考慮に入れ、第2に、ハウジングの音声伝送開口に関連して構成されていなければならない。このことはアセンブリ14の結合されない区域のサイズ設定をする上で特に重要である。精密な関係は必要とならないが、しかし、カバーアセンブリ14の近くの、ハウジングに設けられた開口の面積よりも、結合されない面積が著しく大きいことが好ましい。
【0040】
図11および図12は別の「キャプティブ構造」の態様を示している。これらの態様は、接着支持システム22および24内に設けられた補足結合箇所38,39が保護メンブラン20に渡り延びている点を除けば、すべての面で上述のものと同様である。この補足結合箇所38,39は、上述のように、比較的大きな結合されない内側領域を有するカバーアセンブリを支持する。
【0041】
図13および図14は、さらに別の「キャプティブ構造」の態様を示している。これらの態様は、接着支持システム22および24内の補足結合箇所38,39の別の配置が保護メンブラン20に渡り延びている点を除けば、すべての面で図11および図12に示したものと同様である。
【0042】
−テスト法−
(1)音響伝送損失
ASTM E 1050〜90(音響材料のインピーダンスおよび吸収性に関する標準テスト法);ASTM C 384(インピーダンスチューブ法による、音響材料のインピーダンスおよび吸収性に関する標準テスト法);Leo L. Beranek (音響特性);A. F. Seybert (ダクト内における音声強度および音響特性の測定のための2センサー法)に記載されている分析手順および方法を組み合わせて用いることによって、サンプルがテストされ評価された。
【0043】
サンプルをテストするのに使用された装置40を図15に示す。装置は一般的に、取り付けプレート44を収納するインピーダンス測定チューブ42、このチューブ42の対向する各端部に位置するスピーカ46および半無響終端48から成っている。取り付けプレート44は直径16ミリメートルの開口部を有している。マイクロフォン50および52から成る第1の対は、取り付けプレート44のスピーカ側に位置しており、マイクロフォン54および56から成る第2の対は、取り付けプレート44の半無響終端側に位置している。マイクロフォン50,52,54および56は、貫通した形で、チューブ42の側部に配置されている。サンプルの上流側および下流側の双方でマイクロフォン対を使用することにより、サンプル内に入射した波およびサンプルから伝送される波だけに集中して分析を行うことが可能になる。スピーカ46はFFTアナライザ(FFT ANALYZER)60に直接接続されているのに対して、マイクロフォンは増幅器(AMPLIFIER)58を介してFFTアナライザ60に電気的に接続されている。FFTアナライザ60は、ポストプロセッサ(POST-PROCESSOR)62に電気的に接続されている。
【0044】
装置40を使用して、測定が以下のように行われる。図15に示したように、チューブ42内の取り付けプレート44に、サンプル66が配置される。FFTアナライザ60は、スピーカ46から形成される白色ノイズ音波64を発生させる。PTFEメンブランサンプル66への入射波から発生した音圧レベル(SPL)は、上流側のマイクロフォン対50および52から測定される。入射圧力波は次いで、PTFEメンブランサンプル66を励起し、音波68をサンプルの下流側に伝送する。伝送された音波68はマイクロフォン対54および56から測定される。両マイクロフォン対は、正確な結果を得るために位相を整合されている。次いで、ポストプロセッサ62は、マイクロフォン対50および52に対して、またマイクロフォン対54および56に対して、300Hz〜3000Hzで50Hzずつ周波数を増大して、能動強度レベル(IL)を測定する。ポストプロセッサ62はさらに、次の等式を用いて伝送損失(TL)を算出する:
【0045】
TL(dB)=10log10(IL50,52/IL54,56
電話周波数全域(300〜3000Hz)にわたる個々のTL測定値を使用して、総合TLが算出される。総合TLは次のように算出される:
TLoverall(dB)
=10log10(Σ10(300~3000Hzで50Hzずつ増大した場合のTL)/10
例えば:
TLoverall(dB)=10log10(10(TL@300Hz)/10
+10(TL@350Hz)/10+10(TL@400Hz)/10
+...+10(TL@3.000Hz)/10
【0046】
測定のためのこのような手順は、所与の用途に対応する周波数域全体にわたる材料伝送損失を比較するために、正確かつ簡単な測定法を提供する。加えて、スペクトルに渡る音響伝送効率を評価するために、伝送損失の算出は周波数に関連してプロットされてよい。
【0047】
(2)耐水圧(「WEP」)
耐水圧(「WEP」)は、メンブランへの水浸入に対するテスト法を提供する。WEPは瞬間WEPまたは長時間WEPとして、測定することができる。長時間WEPは、長時間に渡るサンプルの撥水性または水バリアとして機能する能力を測るものである。このことは、電子デバイスの疎水性通気を考える上で考慮すべき重要な特性である。IP−57基準は長時間WEPに基づいている。
【0048】
瞬間WEPを測定するためには、テストサンプルを、一対のテストプレート間にクランプする。下側のプレートは、サンプルの一部を水で圧縮する能力を有している。水流入の証拠を示す指標として、圧縮されない側のプレートとの間にあるサンプルの頂部にpH試験紙を配置する。次いで、pH試験紙の色変化が水流入の最初のサインを示すまで、サンプルは徐々に圧縮される。水の貫通または流入時の水圧が、瞬間WEPとして記録される。
【0049】
長時間WEPを測定するために、水圧1メートル(1.4psig)まで徐々に増大され、30分間保たれる。30分後、水浸入の証拠が観察されない場合、このサンプルはIP−57テストに合格したことになる。水浸入のサインがあった場合、そのサンプルは不合格となる。30分後にサンプルが圧力を保持し続ける場合、所定の水圧で不合格となるまでの最大時間を決定するために、サンプルテスト時間を拡大することができる。
【0050】
(3)空気透過度
通気量に対するサンプルの抵抗が、ASTMテスト法D726-58に記載された手順に従って、W.&L.E.Gurley & Sons製造のガーレーデンソメートルによって測定された。結果はガーレー数またはガーレー秒で記録される。ガーレー秒は、100立方センチメートルの空気が1平方インチのテストサンプルを、4.88インチの水の圧力降下時に通過する秒時間である。
【0051】
(4)粒子捕集効率
TSI製造のモデル8160、自動フィルタテスター(「AFT」)を使用し、粒子捕集効率を測定する。AFTは、空気ろ過媒体の、フィルタ効率、透過対粒子サイズ、ならびに、通気量抵抗を測定する、自動化フィルタである。AFTは、テスト中のサンプルの上流側および下流側双方に配置された2つの凝縮粒子カウンタを使用し、粒子捕集効率を測定する。
以下の例の効率テストに用いられる粒子サイズは0.055μmである。
【0052】
−比較例1−
結合構造を有する疎水性の多孔質メンブラン
この例は、W. L. Gore & Associates, Inc.製の商品名GORE ALL−WEATHER(商標) VENTとして市販の保護カバー材料である。この製品は、W. L. Gore & Associates, Inc.製の多孔質のePTFEに結合された不織ポリエステル生地(0.015”厚、1.0oz/yd2、.NEXUS(商標)32900005、Precision Fabrics Group Co.から入手)から成っている。支持体に結合されたメンブランは以下の特性を有していた:質量57.473g/m2;厚さ0.0133”(338μm);空気透過度8.6ガーレー秒;通気量107.76ml/min−cm2;瞬間耐水圧138psi(951.5kPa);粒子効率99.999994%。
【0053】
米国特許第5828012号の教示内容に従って、30mm直径の2つのディスクが、一方は不織ポリエステル生地から、他方は多孔質のPTFEメンブランから切り出された。ディスクを整列させ、接着層によって一緒に結合した。
16mmの内径を除去した外径30mmの第1の接着支持システムを、両面接着テープから切り出した。両面接着テープは、50μm厚のMylar(商標)ポリエステルフィルム(DFM−200−clear V−156、Flexcon Corp.から入手)の各面上に設けられた19μm厚のアクリル感圧接着剤の層から成っている。第1の接着支持システムは、多孔質PTFEメンブランの表面と整列されて結合され、この組み合わせが不織ポリエステル生地に取り付けられた。
【0054】
16mmの内径が除去された、30mmの外径を有する第2の接着支持システムが、上述の両面接着テープから切り出された。第2の接着支持システムは、多孔質PTFEメンブラン層と整列させられ、この層に接着された。第2の接着支持システムの外面は、16mmの内径が中心に配置された状態で、中心で取り付けプレートに接着され、取り付けプレートアセンブリは音響測定装置内に配置された。サンプルの音声伝送損失および長時間WEPが上述のようにテストされた。テスト結果を表1に示す。
【0055】
−例1−
「キャプティブ」構造を有する疎水性の多孔質メンブラン
次の性質を有する延伸PTFEメンブランが提供された:質量18.347g/m2;厚さ0.0013”(33μm);空気透過度8.6ガーレー秒;通気量107.71ml/min−cm2;瞬間耐水圧138psi(951.5kPa);粒子効率99.999994%。直径30mmのディスクがメンブランから切り出された。
16mmの内径が除去された、30mmの外径を有する第2の接着支持システムが、上述の両面接着テープから切り出された。両面接着テープは、50μm厚のMylar(商標)ポリエステルフィルム(DFM−200−clear V−156、Flexcon Corp.から入手)の各面上に設けられた19μm厚のアクリル感圧接着剤の層から成っている。第2の接着支持システムは多孔質PTFEメンブランの表面に整列させられ、結合された。
【0056】
16mmの内径が除去された、30mmの外径を有する第1の接着支持システムが、片面接着テープから切り出された。片面接着テープは、50μm厚のMylar(商標)ポリエステルフィルム(DFM−200−clear V−156、Flexcon Corp.から入手)の一方の面上に設けられた19μm厚のアクリル感圧接着剤の層から成っている。第1の接着支持システムは、第2の接着支持システムとは反対側の多孔質PTFEメンブラン表面と整列させられ、この表面に接着された。
第2の支持システムの暴露された接着剤は、16mmの内径が中心に配置された状態で、中心で取り付けプレートに接着され、取り付けプレートアセンブリは音響測定装置内に配置された。
サンプルの音声伝送損失および長時間WEPが上述のようにテストされた。テスト結果を表1に示す。
【0057】
−比較例2−
延伸ラミネート構造を有する疎水性の多孔質ブラックメンブラン
この例は、Nitto Denko, Inc.により、商品名MICRO−TEX(商標)N−Seriesで市販されている保護カバー材料である。製品は、多孔質ePTFEメンブランの片面または両面にラミネートされたポリオレフィン網状構造から成っている。材料は以下の特性を有していた:質量38.683g/m2;厚さ0.009”(228.6μm);通気量6078.4ml/min−cm2;瞬間耐水圧0.4psi(3.0kPa);粒子効率-NA(該当なし)。粒子効率テストは行われなかった。なぜならば、利用可能なサンプル材料が所要のテストサイズよりも小さかったからである。30mmの直径を有するディスクが、上述の材料から切り出された。
【0058】
ディスクは、例1に記載されたように第2の接着支持システムと第1の接着支持システムと整列させられ、これらの接着支持システムに結合され、これにより、サンプルアセンブリが形成された。
暴露された接着剤は、16mmの内径が中心に配置された状態で、中心で取り付けプレートに接着され、取り付けプレートアセンブリは音響測定装置内に配置された。
サンプルの音声伝送損失および長時間WEPが上述のようにテストされた。テスト結果を表1に示す。
【0059】
−比較例3−
「キャプティブ」構造を有する疎水性の多孔質メンブラン
この例は、Nitto Denko, Inc.により、商品名MICRO−TEX(商標)Advantec 0.2で市販されている保護カバー材料である。製品は多孔質ePTFEメンブランから成っている。この材料は以下の特性を有していた:質量47.5g/m2;厚さ0.0036”(91.4μm);空気透過度24.2ガーレー秒;通気量38.43ml/min−cm2;瞬間耐水圧120psi(827.4kPa);粒子効率99.989%。30mmの直径を有するディスクがこの材料から切り出された。
【0060】
ディスクは、例1に記載されたように第2の接着支持システムと第1の接着支持システムと整列させられ、これらの接着支持システムに結合され、これにより、サンプルアセンブリが形成された。
暴露された接着剤は、16mmの内径が中心に配置された状態で、中心で取り付けプレートに接着され、取り付けプレートアセンブリは音響測定装置内に配置された。
サンプルの音声伝送損失および長時間WEPが上述のようにテストされた。テスト結果を表1に示す。
【0061】
−比較例4−
「キャプティブ」構造を有する疎水性の多孔質メンブラン
この例は、Nitto Denko, Inc.により、商品名MICRO−TEX(商標) NTF1033で市販されている保護カバー材料である。製品は、0.2μmの孔径を有する多孔質ePTFEメンブランから成っている。この材料は以下の特性を有していた:質量4.421g/m2;厚さ0.0007”(17.8μm);空気透過度0.15ガーレー秒;通気量6413.81ml/min−cm2;瞬間耐水圧1.8psi(12.1kPa);粒子効率74%。30mmの直径を有するディスクがこの材料から切り出された。
【0062】
ディスクは、例1に記載されたように第2の接着支持システムと第1の接着支持システムと整列させられ、これらの接着支持システムに結合され、これにより、サンプルアセンブリが形成された。
暴露された接着剤は、16mmの内径が中心に配置された状態で、中心で取り付けプレートに接着され、取り付けプレートアセンブリは音響測定装置内に配置された。
サンプルの音声伝送損失および長時間WEPが上述のようにテストされた。テスト結果を表1に示す。
【0063】
−例2−
「キャプティブ」構造を有する疎水性の多孔質ブラックメンブラン
この製品は、W. L. Gore & Associates, Inc.によって製造された、3.0重量パーセントのカーボンブラック(KETJENBLACK(商標)EC−300J、Akzo Corp.から入手)を含有する多孔質延伸PTFEから成っている。メンブランは以下の特性を有していた:質量8.731g/m2;厚さ0.0012”(29.7μm);空気透過度3.0ガーレー秒;通気量314.72ml/min−cm2;瞬間耐水圧45.6psi(314.4kPa);粒子効率99.999996%。30mmの直径を有するディスクが記載の材料から切り出された。
【0064】
ディスクは、例1に記載されたように第2の接着支持システムと第1の接着支持システムと整列させられ、これらの接着支持システムに結合され、これにより、サンプルアセンブリが形成された。
暴露された接着剤は、16mmの内径が中心に配置された状態で、中心で取り付けプレートに接着され、取り付けプレートアセンブリは音響測定装置内に配置された。
サンプルの音声伝送損失および長時間WEPが上述のようにテストされた。テスト結果を表1に示す。
【0065】
−比較例5−
「キャプティブ構造」を有する疎油性の多孔質メンブラン
製品は不織ナイロン支持体上の改質されたアクリルコポリマーキャストから成っていた。この製品はPall Corpが疎油加工し製造した(VERSAPOR(商標)5000TRメンブラン)。メンブランは以下の特性を有していた:質量41.4g/m2;厚さ0.037”(94.0μm);空気透過度0.8ガーレー秒;通気量1207.8ml/min−cm2;瞬間耐水圧7.9psi(54.5kPa);粒子効率80.4%。30mmの直径を有するディスクが記載の材料から切り出された。
【0066】
ディスクは、例1に記載されたように第2の接着支持システムと第1の接着支持システムと整列させられ、これらの接着支持システムに結合され、これにより、サンプルアセンブリが形成された。
暴露された接着剤は、16mmの内径が中心に配置された状態で、中心で取り付けプレートに接着され、取り付けプレートアセンブリは音響測定装置内に配置された。
サンプルの音声伝送損失および長時間WEPが上述のようにテストされた。テスト結果を表1に示す。
【0067】
−比較例6−
「キャプティブ構造」を有する疎油性の多孔質メンブラン
製品は、疎油加工を施され、かつ0.22μmの孔径を有するポリ弗化ビニリデン(PVDF)から成り、Millipore Corporationによって製造された(DURAPEL(商標)0.22μmメンブラン)。メンブランは以下の特性を有していた:質量67.4g/m2;厚さ0.0044”(111.3μm);空気透過度41.8ガーレー秒;通気量22.25ml/min−cm2;瞬間耐水圧>50psi(345.0kPa)。粒子効率および不連続的な耐水圧レベルは測定されなかった。しかし、Millipre社のパンフレットによれば、被験メンブランに対応する耐水圧は62psi(427.5kPa)であることが予測される。粒子効率テストは行われなかった。なぜならば、利用可能なサンプル材料が所要のテストサイズよりも小さかったからである。30mmの直径を有するディスクが記載の材料から切り出された。
【0068】
ディスクは、例1に記載されたように第2の接着支持システムと第1の接着支持システムと整列させられ、これらの接着支持システムに結合され、これにより、サンプルアセンブリが形成された。
暴露された接着剤は、16mmの内径が中心に配置された状態で、中心で取り付けプレートに接着され、取り付けプレートアセンブリは音響測定装置内に配置された。
サンプルの音声伝送損失および長時間WEPが上述のようにテストされた。テスト結果を表1に示す。
【0069】
−例3−
「キャプティブ構造」を有する疎油性の多孔質メンブラン
製品は、W. L. Gore & Associates, Inc.によって製造された、米国特許第5376441号明細書に従って疎油加工を施された多孔質ePTFEメンブランから成っていた。メンブランは以下の特性を有していた:質量12.1g/m2;厚さ0.0009”(22.1μm);空気透過度2.6ガーレー秒;通気量362.10ml/min−cm2;瞬間耐水圧73.7psi(508.1kPa);粒子効率99.999996%。30mmの直径を有するディスクが記載の材料から切り出された。
【0070】
ディスクは、例1に記載されたような第2の接着支持システムと第1の接着支持システムと整列させられ、これらの接着支持システムに結合され、これにより、サンプルアセンブリが形成された。
暴露された接着剤は、16mmの内径が中心に配置された状態で、中心で取り付けプレートに接着され、取り付けプレートアセンブリは音響測定装置内に配置された。
サンプルの音声伝送損失および長時間WEPが上述のようにテストされた。テスト結果を表1に示す。
【0071】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
音声伝送性の保護カバーアセンブリであって、
(a)微孔性メンブランから成っており、前記微孔性メンブランは、前記メンブランの少なくとも一部が、音響エネルギーに応答して自由に運動するように少なくとも1つの接着支持システムによって周囲で支持されており、前記アセンブリが、少なくとも1メートル水柱の瞬間水流入圧力と、300〜3000Hzの周波数域で3dB以下の総合音響伝送損失とを有していることを特徴とする、音声伝送性の保護カバーアセンブリ。
【請求項2】
保護カバーアセンブリがさらに、音響デバイスにアセンブリを結合するための手段を有している、請求項1に記載の音声伝送性の保護カバーアセンブリ。
【請求項3】
音響デバイスがトランスデューサである、請求項2に記載の音声伝送性の保護カバーアセンブリ。
【請求項4】
アセンブリがさらに、ブラックカラーを有している、請求項1に記載の音声伝送性の保護カバーアセンブリ。
【請求項5】
アセンブリがさらに疎油加工部を有している、請求項1に記載の音声伝送性の保護カバーアセンブリ。
【請求項6】
アセンブリがさらに音響ガスケットを有しており;
前記音響ガスケットが、メンブランの、結合されていない領域の独立の運動を妨げないように、アセンブリに結合され、アセンブリと同じ広がりを有している、請求項1に記載の音声伝送性の保護カバーアセンブリ。
【請求項7】
音響ガスケットが、メンブランの第2の表面に結合されている、請求項6に記載の音声伝送性の保護カバーアセンブリ。
【請求項8】
アセンブリが少なくとも99.99999%の粒子捕集効率を有している、請求項1に記載の音声伝送性の保護カバーアセンブリ。
【請求項9】
アセンブリが2dB以下の伝送ロスを有している、請求項1に記載の音声伝送性の保護カバーアセンブリ。
【請求項10】
アセンブリが、最小30分間で少なくとも1メートルの水柱の長時間水流入圧力を有している、請求項1に記載の音声伝送性の保護カバーアセンブリ。
【請求項11】
メンブランがePTFEである、請求項1に記載の音声伝送性の保護カバーアセンブリ。
【請求項12】
前記微孔性メンブランがその周囲で、複数の接着支持システムによって支持されている、請求項1に記載の音声伝送性の保護カバーアセンブリ。
【請求項13】
前記微孔性メンブランが、前記接着支持システムによって、キャプティブ構造で支持されている、請求項12に記載の音声伝送性の保護カバーアセンブリ。
【請求項14】
前記カバーアセンブリがさらに、音響ガスケットを有している、請求項24に記載の音声伝送性の保護カバーアセンブリ。
【請求項15】
トランスデューサを有する電子デバイスのための音声伝送性の音響保護カバーとして、微孔性メンブランを使用する方法であって、前記方法が、
前記メンブランの少なくとも一部が音響エネルギーに応答して自由に運動するように、微孔性メンブランをその周囲で少なくとも1つの接着支持システムで支持し;さらに、
電子デバイス内のトランスデューサをカバーするように、前記支持された微孔性メンブランを方向付けすることにより、音声伝送性の音響保護カバーを形成することを含み;
これにより、カバーが少なくとも1メートルの水柱の瞬間水流入圧力と、300〜3000Hzの周波数域で3dB以下の総合音響伝送損失とを有することを特徴とする、微孔性メンブランを使用する方法。
【請求項16】
さらに、前記微孔性メンブランに疎油加工を施すことを含む、請求項26記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate


【公開番号】特開2013−102555(P2013−102555A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−42596(P2013−42596)
【出願日】平成25年3月5日(2013.3.5)
【分割の表示】特願2009−230178(P2009−230178)の分割
【原出願日】平成12年7月7日(2000.7.7)
【出願人】(598123677)ゴア エンタープライズ ホールディングス,インコーポレイティド (279)
【Fターム(参考)】