説明

音響再生装置

【課題】騒音が大きいときでも騒音を増大させることがなく、音楽を聞き逃す恐れのない音響再生装置を提供する。
【解決手段】携帯型音響再生装置10内の制御部107は、周囲の騒音の音量が第1の値よりも大きい状態が第2の時間継続するかどうかを監視し、継続した場合は、復号部104に復号を停止させる。制御部107は再生を停止したら、周囲の騒音の音量が第3の値よりも小さい状態が第4の時間継続するかどうかを監視し、継続した場合は、再生停止時点よりも所定時間戻った時点から復号部104に復号を開始させる。これにより、周囲の騒音の音量が大きく発生したために再生停止するまでの間に聞き逃した部分があっても、周囲の騒音の音量が小さくなってから再生停止時点より戻った時点から再生されるので、聞き逃した部分は必ず再生され、聞き逃しを生じることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は音響再生装置に係り、特に携帯型の音響再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
気軽に持ち運んで音楽や音声番組などを楽しむ携帯型の音響再生装置が各社から提供されている。携帯型音響再生装置で音楽を楽しむとき、周囲の音が全く聞こえないと危険なため、密閉型ヘッドホンはあまり使用されないが、周囲の騒音が大きいと音楽が聞き取りにくくなるという弊害がある。
【0003】
ところで、従来から、音響再生される音量を、周囲の騒音量に応じて、聴取し易いように自動調整する騒音感応自動音量調整装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。このような騒音感応自動音量調整装置を用いれば、周囲の騒音が大きくても音楽を良好な状態で聴取することができる。
【0004】
また、自動販売機などに使用されている音声合成装置などの音声出力装置において、周囲の騒音の量に応じて音声出力量を可変する構成の音声出力装置も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
図4は、この特許文献2に記載の音声出力装置の一例のブロック図を示す。この音声出力装置では、音声合成装置1からの音声信号を利得可変アンプ2を通してスピーカ3より音声出力する。また、音声出力装置は、マイクロホン4で周囲の騒音に応じた音声信号を得て検波器5に供給し、騒音量に応じた検波信号を利得制御信号発生器6を通して利得制御信号として利得可変アンプ2に供給する。これにより、騒音量が大きいときには利得可変アンプ2の利得を大きくしてスピーカ3から出力される音声出力量を増やし、騒音量が小さいときには利得可変アンプ2の利得を小さくしてスピーカ3から出力される音声出力量を減らす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−186540号公報
【特許文献2】特開平1−189215号公報(第1図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1記載の騒音感応自動音量調整装置や、特許文献2記載の音声出力装置を携帯型の音響再生装置に適用した場合、その音響再生装置は電車に乗っていてトンネルに入ったときなど、周囲の騒音が大きくなりすぎると、音響再生装置の音量も極めて大きくすることになり、かえって聴取しづらくなったり、聴覚に障害を起こすおそれもあるので、音量を大きくすることにも限界がある。
【0008】
そこで、音量に上限を設けることになるが、そうすると騒音が大きい時は音楽を聞き逃すばかりでなく、騒音と再生音とが一緒になってしまい、結果として騒音を増大させてしまう。
【0009】
このように従来の音響再生装置は、騒音が大きすぎるときは音楽や音声番組を聴取することができないという課題がある。
【0010】
本発明は以上の点に鑑みなされたもので、騒音が大きいときでも騒音を増大させることがなく、音楽や音声番組を聞き逃す恐れのない音響再生装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するため、本発明は、再生すべき音源信号を記憶する記憶手段と、記憶手段に記憶された音源信号を再生する再生手段と、周囲の騒音の音量を検出する音量検出手段と、再生手段で再生した音源信号を再生機器に向けて出力する出力端子と、音量検出手段が検出した周囲の騒音の音量が所定の第1の値よりも大きい状態が第1の時間継続するときは再生手段の再生を停止するとともに、その後周囲の騒音の音量が所定の第2の値よりも小さい状態が第2の時間継続するときは再生手段の再生を停止した時点に対し第1の時間よりも長い所定時間に相当する再生開始側の時点から記憶手段に記憶された音源信号の再生手段による再生を開始させる制御手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、周囲の騒音に応じて再生音量を調整するとともに、周囲の騒音が所定の値よりも大きいときは一旦再生を停止させ、騒音が小さくなったのちに再生を停止させた時点から少し戻った時点から再生を再開するものとしたので、騒音が大きいときでも騒音を増大させることがなく、また音楽や音声番組を聞き逃す恐れをなくすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の音響再生装置の一実施形態を示すシステム構成図である。
【図2】本発明の音響再生装置の一実施の形態のブロック図である。
【図3】本発明の音響再生装置の再生制御説明用フローチャートである。
【図4】従来の音声出力装置の一例のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の音響再生装置の一実施の形態の外観構成図を示す。同図において、携帯型音響再生装置10はヘッドホン11に接続されると共にマイクロホン12を有する。ここでヘッドホン11はイヤホンを含むこととする。また、マイクロホン12は携帯型音響再生装置10に設けられているがこれに限らず、ヘッドホン11に設けてもよい。
【0016】
図2は、本発明の音響再生装置の一実施の形態のブロック図を示す。同図中、図1と同一構成部分には同一符号を付してある。図2において、携帯型音響再生装置10は、電源部101、半導体メモリなどの記憶部102、読み取り部103、復号部104、増幅率が制御信号により可変制御可能な増幅部105、出力端子106、制御部107、操作部108により構成されている。
【0017】
ヘッドホン11は、携帯型音響再生装置10の出力端子106に接続されている。記憶部102には例えば複数の楽曲や語学学習の教材がMP3(Mpeg1 Audio Layer3)形式で圧縮されて記録されている。各部には電源部101から電源が供給されている。
【0018】
いま、携帯型音響再生装置10の操作部108を操作して再生を指示すると、制御部107の制御により記憶部102に記憶された楽曲のMP3ファイルが読み取り部103で読み出され、復号部104で復号されて、増幅部105で増幅された後出力端子106から音響信号として出力される。これにより、ユーザはヘッドホン11で楽曲を聴くことができる。この楽曲を聴いている状態で携帯型音響再生装置10は、以下説明する再生制御を行う。
【0019】
以下、図3のフローチャートに基づき本実施の形態の音響再生装置の再生の制御の手順について説明する。まず、制御部107はマイクロホン12で収音した周囲の騒音の音声信号を検波して周囲の騒音の音量を検出し、その音量が第1の値よりも大きいかどうかを判断する(ステップS301)。
【0020】
周囲の騒音の音量が第1の値以下のときは、制御部107は周囲の騒音の音量に比例した増幅率を増幅部105に指示して増幅を行い、出力端子106から音声信号を出力する(ステップS302)。これにより、周囲の騒音の音量が第1の値以下のときは、ユーザは騒音の音量に応じて再生音量が自動的に制御された楽曲をヘッドホン11で聴くことができる。
【0021】
周囲の騒音の音量が第1の値よりも大きいときは、制御部107はその状態が第2の時間T2、例えば4秒以上継続するかどうかを監視し(ステップS303)、4秒以上継続した場合は、復号部104に復号を停止させ、再生を停止する(ステップS304)。このとき再生を停止した時点をA時点とする。本実施の形態では例えばA時点は時間:分:秒の表示で1:30:45であるとする。
【0022】
制御部107は再生を停止したら再び周囲の騒音の音量を監視して、周囲の騒音の音量が第3の値よりも小さくなったかどうかを判断する(ステップS305)。この第3の値は第1の値よりも小さくすることにより動作が不必要に繰り返されることを防止することができる。周囲の騒音の音量が第3の値よりも小さいときは、制御部107はその状態が第4の時間T4、例えば4秒以上継続するかどうかを監視し(ステップS306)、4秒以上継続した場合は、復号部104に復号を開始させ、再生を開始する(ステップS307)。
【0023】
このとき復号部104はA時点から第5の時間T5(固定)だけ戻った時点から復号を行う。例えば、A時点が1:30:45、第5の時間T5が6秒であったときは、1:30:39から再生を開始するものとする。このときの第5の時間T5は第2の時間T2よりも長く設定する。
【0024】
これにより、周囲の騒音の音量が第1の値よりも大きく発生したために再生停止するまでの第2の時間の間に聞き逃した部分があっても、周囲の騒音の音量が第3の値よりも小さくなり騒音が無くなってから第5の時間T5だけ戻って再生されるので、聞き逃した部分は必ず再生され、聞き逃しを生じることがない。聴取している音声番組が語学学習教材であったり、落語などのストーリー性のある番組の場合、聞き逃しが生じないのでより効果的である。また、再生を停止するときはフェードアウトさせ、再生を開始するときはフェードインさせれば、より聞き取りやすく好適である。
【0025】
このように、本実施の形態の携帯型音響再生装置10によれば、騒音が所定の音量以下のときは、騒音の大きさに応じて再生音量を可変するとともに、騒音が所定の音量よりも大きいときは、騒音が収まるまで再生を停止して、騒音が収まった後に、再生を停止した時点から所定の時間戻った時点から再生を開始するものとしたので、騒音が大きいときでも騒音を増大させることがなく、また音楽や音声番組を聞き逃す恐れをなくすことができる。
【符号の説明】
【0026】
10 携帯型音響再生装置
11 ヘッドホン
12 マイクロホン
101 電源部
102 記憶部
103 読み取り部
104 復号部
105 増幅部
106 出力端子
107 制御部
108 操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
再生すべき音源信号を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された音源信号を再生する再生手段と、
周囲の騒音の音量を検出する音量検出手段と、
前記再生手段で再生した音源信号を再生機器に向けて出力する出力端子と、
前記音量検出手段が検出した周囲の騒音の音量が所定の第1の値よりも大きい状態が第1の時間継続するときは前記再生手段の再生を停止するとともに、その後周囲の騒音の音量が所定の第2の値よりも小さい状態が第2の時間継続するときは前記再生手段の再生を停止した時点に対し前記第1の時間よりも長い所定時間に相当する再生開始側の時点から前記記憶手段に記憶された音源信号の前記再生手段による再生を開始させる制御手段と
を有することを特徴とする音響再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−58355(P2012−58355A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199460(P2010−199460)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(308036402)株式会社JVCケンウッド (1,152)
【Fターム(参考)】