説明

音響処理装置

再生システム全体としてSN比の劣化が少ないバーチャルサラウンド再生を実現するために、バーチャルサラウンド信号と前方チャンネル用オーディオ信号とを加算器1300で加算する場合には、加算を行う前に音量正規化処理部1200で音量正規化処理を行い、加算しない場合には、音量正規化処理部1200で音量正規化処理を行わずにバーチャルサラウンド信号と前方チャンネル用オーディオ信号とをそれぞれ独立して出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受聴者の前方に配置された前方スピーカのみで擬似的にマルチチャンネル再生を実現する音響処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
DVD(Digital Versatile Disc)やBSデジタル放送などをはじめとするマルチチャンネルオーディオ再生対応の音源が出現したため、2チャンネルのスピーカシステムしか持ち合わせないユーザーにもマルチチャンネル再生を楽しめることができるように、後方チャンネル用オーディオ信号に対し、受聴者の前方に配置されたスピーカで再生された場合に、受聴者に認識される音像位置が受聴者の後方になる音像定位処理(バーチャルサラウンド処理)を施し、前方スピーカのみで擬似的にマルチチャンネル再生を実現する音響処理装置が数多く開発されてきている。
【0003】
そのような音響処理装置としては、例えば図12に示すように、後方チャンネル用オーディオ信号に対し前記バーチャルサラウンド処理を施した信号(バーチャルサラウンド信号)と前方チャンネル用オーディオ信号とを加算して、前方スピーカ用のオーディオPCM信号として出力する音響処理装置4000が知られている(例えば、特許文献1、および特許文献2を参照。)。
【0004】
音響処理装置4000は、バーチャルサラウンド処理部4100と、音量正規化処理部4200と、加算器4300とから構成される。
【0005】
バーチャルサラウンド処理部4100は、外部から入力された前方左右再生用の前方チャンネル用オーディオ信号(左右2チャンネル)、および後方左右再生用の後方チャンネル用オーディオ信号(左右2チャンネル)の合計4チャンネルのオーディオPCM信号のうちの後方チャンネル用オーディオ信号に対し、前記バーチャルサラウンド処理を施したバーチャルサラウンド信号を出力するようになっている。
【0006】
音量正規化処理部4200は、前方チャンネル用オーディオ信号、およびバーチャルサラウンド信号に対して、音量レベルが所定のレベル範囲に収まるように処理(音量正規化処理)を行うようになっている。音量正規化処理を行うのは前方チャンネル用オーディオ信号とバーチャルサラウンド信号との加算の際にオーバーフローが発生するのを防ぐためである。
【0007】
加算器4300は、音量正規化処理部4200によって音量正規化処理が施された前方チャンネル用オーディオ信号とバーチャルサラウンド信号とを加算するようになっている。
【0008】
このように構成された、音響処理装置4000では、音響処理装置の外部から前記前方チャンネル用オーディオ信号、および後方チャンネル用オーディオ信号が入力されるとバーチャルサラウンド処理部4100は、前記後方チャンネル用オーディオ信号に対し、前記バーチャルサラウンド処理を施し、バーチャルサラウンド信号を音量正規化処理部4200に出力する。そして、音量正規化処理部4200が前記前方チャンネル用オーディオ信号とバーチャルサラウンド信号とに音量正規化処理を行った後、これらの信号は、加算器4300によって加算され、前方スピーカ用のオーディオPCM信号として出力される。
【0009】
上記のように、音響処理装置4000では、後方チャンネル用オーディオ信号に対しバーチャルサラウンド処理が施されることによって、前方スピーカのみで擬似的にマルチチャンネル再生が実現される。
【0010】
また、音響処理装置の外部から入力される前方左右再生用の2チャンネルのオーディオPCM信号(2チャンネルのステレオオーディオ信号)に対し、反射音を擬似的に求める反射音生成処理を施すことによって、後方チャンネル用オーディオ信号を擬似的に生成し、擬似的にマルチチャンネル再生を実現する音響処理装置5000も知られている(例えば、特許文献3を参照。)。
【0011】
音響処理装置5000は、図13に示すようにバーチャルサラウンド処理部4100と、音量正規化処理部4200と、加算器4300と、反射音処理部5400とから構成される。
【0012】
反射音処理部5400は、2チャンネルステレオオーディオ信号に対し、反射音を擬似的に求める処理(反射音生成処理)を施し、後方チャンネル用オーディオ信号として出力するようになっている。
【0013】
このように構成された、音響処理装置5000では、反射音処理部5400によって、前記2チャンネルステレオオーディオ信号に対し、反射音生成処理が行われて擬似的な後方チャンネル用オーディオ信号として出力されると、この後方チャンネル用オーディオ信号は、バーチャルサラウンド処理部4100によって前記バーチャルサラウンド処理が行われる。そして、バーチャルサラウンド処理が行われた信号と、前記チャンネルのステレオオーディオ信号とが音量正規化処理部4200による音量正規化処理を経た後、加算器4300で加算されて出力される。
【0014】
すなわち、音響処理装置5000では、2チャンネルステレオオーディオ信号に対し、音像拡大処理を施して原信号に加算することで、擬似的に立体音響効果がえられるマルチチャンネル再生が実現される。
【特許文献1】特開平6−233394号公報
【特許文献2】特開平10−174197号公報
【特許文献3】特開平8−116597号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、近年急速に普及しているDVDなどをターゲットとした音響処理装置(または、映像信号の処理も行う映像音響処理装置)の傾向の1つとして、ハイファイユーザーをターゲットとした高性能化や高音質化が求められているが、バーチャルサラウンド信号と前方チャンネル用オーディオ信号とが加算される場合に、加算時のオーバーフローを避けるため正規化処理が行われることによって、SN比が悪化してしまう場合がある。
【0016】
また、バーチャルサラウンド処理の有無(ON/OFF)を切り替えできるように構成された音響処理装置では、バーチャルサラウンド処理がONの場合とOFFの場合との音量感を合わせるため、バーチャルサラウンド処理がONの場合のみならず、OFFの場合にも音量正規化処理によって再生音量が下げられて、システム全体としてSN比が悪くなってしまうという問題を有していた。
【0017】
また、マルチチャンネルを再生できるシステムでありながら、ユーザーの都合で、例えば後方再生用スピーカを受聴者の前面に配置せざるを得ない場合には、後方用スピーカの出力をOFFとして再生せざるを得ず、結果として2チャンネル再生システムの場合と同様、オーバーフローを避けるための正規化処理を行う分SN比が悪くなってしまう。
【0018】
本発明は、上記の問題に着目してなされたものであり、再生システム全体としてSN比の劣化が少ないバーチャルサラウンド再生を実現することが可能な音響処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
前記の課題を解決するため、請求項1の発明は、
受聴者の後方に配置されたスピーカで再生された場合に受聴者に認識される音像位置が受聴者の後方になる後方チャンネル用オーディオ信号に対し、受聴者の前方に配置されたスピーカで再生された場合に受聴者に認識される音像位置が受聴者の後方になるように、所定の音像定位処理を行って、音像定位処理済みオーディオ信号を生成する音響処理部を備え、
受聴者の前方に配置されたスピーカで再生された場合に受聴者に認識される音像位置が受聴者の前方になる前方チャンネル用オーディオ信号と、前記音像定位処理済みオーディオ信号と、をそれぞれ独立して出力することを特徴とする。
【0020】
また、請求項2の発明は、
請求項1の音響処理装置であって、
さらに、入力された前方チャンネル用オーディオ信号に対し、反射音生成処理を行って、前記後方チャンネル用オーディオ信号を生成する反射音生成処理部を備えたことを特徴とする。
【0021】
また、請求項3の発明は、
請求項1の音響処理装置であって、
さらに、入力された前方チャンネル用オーディオ信号および入力された後方チャンネル用オーディオ信号のそれぞれの信号に反射音信号を付加して、前記前方チャンネル用オーディオ信号および前記後方チャンネル用オーディオ信号を生成する反射音付加処理部を備えたことを特徴とする。
【0022】
これらにより、前方チャンネル用オーディオ信号と音像定位処理済みオーディオ信号とが、それぞれ独立して出力されるので、例えば前方チャンネル用信号と音像定位処理済みオーディオ信号とを外部のアナログ回路にて加算処理を行えば、SN比を悪化させずに、バーチャルサラウンド再生が可能になる。
【0023】
また、請求項4の発明は、
請求項1の音響処理装置であって、さらに、
前記前方チャンネル用オーディオ信号および音像定位処理済みオーディオ信号の音量レベルを所定のレベル範囲に収まるように制御する音量正規化処理部と、
前記音量正規化処理部によって音量レベルが制御された前方チャンネル用オーディオ信号と前記音量正規化処理部によって音量レベルが制御された音像定位処理済みオーディオ信号とを加算した加算オーディオ信号を生成する加算器と、
出力制御情報を示す制御信号に応じて、前記前方チャンネル用オーディオ信号と前記音像定位処理済みオーディオ信号とをそれぞれ独立して出力する出力動作、および前記加算オーディオ信号を出力する出力動作の何れかの出力動作を選択的に行う切り替え部とを備えことを特徴とする。
【0024】
これにより、入力された制御信号に応じて、出力動作が切り替えられる。
【0025】
また、請求項5の発明は、
請求項4の音響処理装置であって、
前記出力制御情報は、出力チャンネル構成を示す出力チャンネル構成情報を含んだものであり、
前記切り替え部は、前記出力チャンネル構成情報に応じて、前記切り替えを行うことを特徴とする。
【0026】
これにより、出力チャンネル構成に応じて、出力動作が切り替えられる。
【0027】
また、請求項6の発明は、
請求項5の音響処理装置であって、
さらに、前記出力チャンネル構成情報、および入力音量レベルに応じて、出力するオーディオ信号の音量レベルを制御する音量制御部を備えたことを特徴とする。
【0028】
これにより、出力チャンネル構成に応じて、出力するオーディオ信号のレベルが制御され、より最適な音量制御が可能になる。
【0029】
また、請求項7の発明は、
請求項4の音響処理装置であって、
前記出力制御情報は、受聴者に認識される音像位置が受聴者の後方になるオーディオ信号を出力するための後方音像用スピーカが、受聴者の前方に配置された状態、後方に配置された状態、および配置されていない状態のうちの何れの配置状態であるかを示す後方スピーカ配置情報を含んだものであり、
前記音響処理部は、前記後方スピーカ配置情報が示す配置状態に応じて、前記音像定位処理済みオーディオ信号の生成の有無が制御されるように構成され、
前記切り替え部は、前記後方スピーカ配置情報に応じて、前記前方チャンネル用オーディオ信号と前記音像定位処理済みオーディオ信号とをそれぞれ独立して出力する出力動作、前記加算オーディオ信号を出力する出力動作、および入力されたオーディオ信号をそのまま出力する出力動作のうちの何れかの出力動作を選択的に行うように構成されていることを特徴とする。
【0030】
これにより、出力を行うスピーカの配置に応じて、音像定位処理の有無や出力動作が切り替えられる。
【0031】
また、請求項8の発明は、
請求項7の音響処理装置であって、
さらに、前記後方スピーカ配置情報、および入力音量レベルに応じて、出力するオーディオ信号の音量レベルを制御する音量制御部を備えたことを特徴とする。
【0032】
これにより、出力を行うスピーカの配置に応じて、出力するオーディオ信号のレベルが制御され、より最適な音量制御が可能になる。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、再生システム全体としてSN比の劣化が少ないバーチャルサラウンド再生を実現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
[図1]図1は、本発明の実施形態1に係る音響処理装置の構成を示すブロック図である。
[図2]図2は、本発明の実施形態1に係る音響処理装置の動作を示すフローチャートである。
[図3]図3は、本発明の実施形態2に係る音響処理装置の構成を示すブロック図である。
[図4]図4は、本発明の実施形態2に係る音響処理装置の動作を示すフローチャートである。
[図5]図5は、本発明の実施形態3に係る音響処理装置の構成を示すブロック図である。
[図6]図6は、本発明の実施形態3に係る音響処理装置を実装した再生システムの一構成例を示す図である。
[図7]図7は、本発明の実施形態3に係る音響処理装置を実装した再生システムの一構成例を示す図である。
[図8]図8は、本発明の実施形態3に係る音響処理装置を実装した再生システムの一構成例を示す図である。
[図9]図9は、本発明の実施形態3に係る音響処理装置を実装した再生システムの一構成例を示す図である。
[図10]図10は、本発明の実施形態3に係る音響処理装置の後方スピーカ配置情報に対する各処理動作の有無を示す一覧表である。
[図11]図11は、本発明の実施形態3に係る音響処理装置の動作を示すフローチャートである。
[図12]図12は、従来の音響処理装置の構成を示すブロック図である。
[図13]図13は、従来の音響処理装置の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0035】
1000 音響処理装置
1100 バーチャルサラウンド処理部
1200 音量正規化処理部
1300 加算器
1400 出力切り替え部
1500 外部インターフェース
1700 自動音量制御部
2000 音響処理装置
2500 外部インターフェース
2600 反射音処理部
2700 自動音量制御部
3000 音響処理装置
3100 バーチャルサラウンド処理部
3200 音量正規化処理部
3400 出力切り替え部
3500 外部インターフェース
3600 反射音処理部
3700 自動音量制御部
4000 音響処理装置
4100 バーチャルサラウンド処理部
4200 音量正規化処理部
4300 加算器
5000 音響処理装置
5400 反射音処理部
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0037】
《発明の実施形態1》
図1は、本発明の実施形態1に係る音響処理装置1000の構成を示すブロック図である。音響処理装置1000は、同図に示すようにバーチャルサラウンド処理部1100、音量正規化処理部1200、加算器1300、出力切り替え部1400、および外部インターフェース1500を備えて構成されている。
【0038】
音響処理装置1000は、具体的には、例えばDSP(Digital Signal Processor)等によって構成され、外部から入力された前方左右再生用の前方チャンネル用オーディオ信号および後方左右再生用の後方チャンネル用オーディオ信号の合計4チャンネルのオーディオPCM信号に対して所定の処理を行うことによって、以下の2種類の出力動作を行うようになっている。
【0039】
1種類目の出力動作は、前記後方チャンネル用オーディオ信号に対し、受聴者の前方に配置されたスピーカで再生された場合に、受聴者に認識される音像位置が受聴者の後方になる音像定位処理(バーチャルサラウンド処理)を施したうえ、前記前方チャンネル用オーディオ信号と加算して前方スピーカ用の2チャンネル分の信号として出力する動作である。出力された信号により、前方スピーカのみで擬似的なマルチチャンネル再生(バーチャルサラウンド再生)を実現することが可能になる。
【0040】
また、2種類目の出力動作は、前記前方チャンネル用オーディオ信号、および前記バーチャルサラウンド処理が行われた信号(バーチャルサラウンド信号)の合計4チャンネル分の信号を出力する動作である。例えば出力された前方チャンネル用信号と前記バーチャルサラウンド信号とを外部のアナログ回路にて加算処理して前方スピーカから出力したり、ユーザーの都合で後方スピーカを受聴者の前面に配置したような場合にバーチャルサラウンド信号を前面に配置した後方スピーカから出力したりすれば、やはりバーチャルサラウンド再生を実現することが可能になる。
【0041】
何れの出力動作を行うかは、音響処理装置1000の外部から入力される出力制御情報(後述)に基づいて制御されるようになっている。
【0042】
この出力制御情報は、本実施形態では、外部へ出力されるオーディオPCM信号のチャンネル構成が2チャンネル分の信号である2チャンネル出力設定であるか、4チャンネル分である4チャンネル出力設定であるかを示す出力チャンネル構成情報である。
【0043】
バーチャルサラウンド処理部1100は、前記後方チャンネル用オーディオ信号に前記バーチャルサラウンド処理を施し、前記バーチャルサラウンド信号を出力するようになっている。
【0044】
音量正規化処理部1200は、前記出力チャンネル構成情報が2チャンネル出力設定の場合には、前方チャンネル用オーディオ信号、およびバーチャルサラウンド信号の音量を6dB下げる音量正規化処理を行って出力し、4チャンネル出力設定の場合には、前方チャンネル用オーディオ信号、および前記バーチャルサラウンド信号のスルー出力を行うようになっている。2チャンネル出力設定の場合に音量正規化処理を行うのは、前方チャンネル用オーディオ信号とバーチャルサラウンド信号との加算の際にオーバーフローが発生するのを防ぐためである。
【0045】
加算器1300は、音量正規化処理部1200によって音量正規化処理が施された前方チャンネル用オーディオ信号と出力切り替え部1400が出力した前記バーチャルサラウンド信号とを加算して出力するようになっている。
【0046】
出力切り替え部1400は、前記出力チャンネル構成情報が2チャンネル出力設定の場合には、音量正規化処理部1200が出力したバーチャルサラウンド信号を加算器1300に出力し、4チャンネル出力設定の場合には、音響処理装置1000の外部に後方スピーカ用出力を行うようになっている。
【0047】
外部インターフェース1500は、外部から入力された前記出力制御情報を音量正規化処理部1200と出力切り替え部1400とに出力するようになっている。
【0048】
上記のように構成された音響処理装置1000は、図2のフローチャートに示す各ステップの処理が行われることによって、前記出力制御情報に応じて、4チャンネル出力、および2チャンネル出力のうちの何れかの出力が行われる。各ステップでは、以下の処理が行われる。
【0049】
[S101]前方チャンネル用オーディオ信号、および後方チャンネル用オーディオ信号の合計4チャンネルのオーディオPCM信号をバーチャルサラウンド処理部1100に入力する。
【0050】
[S102]バーチャルサラウンド処理部1100は、前記後方チャンネル用オーディオ信号に対し、前記バーチャルサラウンド処理を行い、バーチャルサラウンド信号として音量正規化処理部1200に出力する。
【0051】
[S103]音量正規化処理部1200は、オーディオ信号の音量正規化の要否を決定するため、外部インターフェース1500が出力した出力チャンネル構成情報が2チャンネル出力設定か、または4チャンネル出力設定かを判断し、2チャンネル出力設定の場合には、S104の処理に移行し、また、4チャンネル出力設定の場合には、前方チャンネル用オーディオ信号、およびバーチャルサラウンド信号のスルー出力を行い、S105の処理に移行する。
【0052】
[S104]音量正規化処理部1200は、前方チャンネル用オーディオ信号、およびバーチャルサラウンド信号の音量正規化処理を行う。具体的には、両信号の音量を6dB下げて出力する。
【0053】
これにより、前方チャンネル用オーディオ信号とバーチャルサラウンド信号との加算の際にオーバーフローが発生するのが防止される。
【0054】
[S105]出力切り替え部1400は、バーチャルサラウンド信号の出力先を決定するために、出力チャンネル構成情報が、2チャンネル出力設定か、または4チャンネル出力設定かを判断し、2チャンネル出力設定の場合には、バーチャルサラウンド信号を加算器1300に出力してS106の処理に移行し、4チャンネル出力設定の場合には、S107の処理に移行する。
【0055】
[S106]加算器1300は、前方チャンネル用オーディオ信号、およびバーチャルサラウンド信号の加算を行い、S107の処理に移行する。
【0056】
[S107]加算器1300の出力を前方スピーカ用として出力し、出力切り替え部1400の出力を後方スピーカ用として出力する。
【0057】
上記のST101〜S107の処理が行われることによって、前記出力制御情報に応じて、4チャンネル出力、および2チャンネル出力のうちの何れかの出力が行われる。
【0058】
例えば出力チャンネル構成情報が2チャンネル出力設定の場合(出力チャンネル構成が2チャンネル出力)には、バーチャルサラウンド処理部1100が前記後方チャンネル用オーディオ信号に対し、前記バーチャルサラウンド処理を行うことによって、バーチャルサラウンド信号が生成される。このバーチャルサラウンド信号は、音量正規化処理部1200で音量が6dB下げられた後、出力切り替え部1400を介して加算器1300に出力され、加算器1300で前記前方チャンネル用オーディオ信号と加算されて、前方スピーカ用出力として出力される。加算処理が行われる場合、音量正規化処理部1200において、各々のオーディオ信号に正規化処理が施されているので、加算処理によるオーバーフローは発生しない。
【0059】
また、出力チャンネル構成情報が4チャンネル出力設定の場合(出力チャンネル構成が4チャンネル出力)には、2チャンネル出力設定の場合と同様にして前記バーチャルサラウンド信号が生成された後、音量正規化処理部1200による音量正規化処理、および加算器1300での加算処理は行われずに、前方チャンネル用オーディオ信号は、前方スピーカ用出力として出力され、バーチャルサラウンド信号は、後方スピーカ用出力として出力される。ここでは、音量正規化処理部1200において各々のオーディオ信号に正規化処理が施されていないが、加算処理が行われないため、当然ながらオーバーフローは発生しない。
【0060】
上記のように、本実施形態によれば、出力切り替え部1400を備えたことで、バーチャルサラウンド信号と前方チャンネル用オーディオ信号とを加算せず独立して出力することが可能になるので、例えば前方チャンネル用信号とバーチャルサラウンド信号とを外部のアナログ回路にて加算処理を行えば、再生システム全体としてSN比を悪化させずに、2チャンネルのスピーカシステムでバーチャルサラウンド再生が可能になる。
【0061】
しかも、前記出力チャンネル構成情報が入力されることによって、外部の出力チャンネル構成に応じて、自動的に音量正規化処理の有無、および前記バーチャルサラウンド信号と前方チャンネル用オーディオ信号との加算処理の有無が切り替えられるので、本装置が実装される再生システムの形態に応じた最適音量設定が行われ、再生システム全体として自動的にSN比を最適な状態にすることができるようになる。
【0062】
《発明の実施形態2》
入力されるオーディオ信号は、前方再生用左右2チャンネル(ステレオ)のオーディオPCM信号であるが、実施形態1の装置と同様に、前記2チャンネル出力設定、および4チャンネル出力設定の2種類の出力設定を行うことができる装置の例を説明する。
【0063】
図3は、本発明の実施形態2に係る音響処理装置2000の構成を示すブロック図である。なお、以下の実施形態において前記実施形態1等と同様の機能を有する構成要素については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0064】
同図に示すように、音響処理装置2000は、実施形態1の装置の外部インターフェース1500に代えて外部インターフェース2500を備え、さらに反射音処理部2600と自動音量制御部2700とを追加して構成され、前記出力制御情報に基づいて、前記2チャンネル出力設定、および4チャンネル出力設定のいずれかが選択されるようになっている。本装置も具体的には、例えばDSP等によって構成される。
【0065】
外部インターフェース2500は、音量正規化処理部1200、出力切り替え部1400、および自動音量制御部2700に前記出力チャンネル構成情報を出力するようになっている。
【0066】
反射音処理部2600は、外部より入力されたステレオのオーディオPCM信号(前方チャンネル用オーディオ信号)に対して反射音を擬似的に求めて付加する処理(反射音生成処理)を施すことによって、擬似的に後方チャンネル用信号を生成するようになっている。
【0067】
自動音量制御部2700は、前記出力チャンネル構成情報が2チャンネル出力設定の場合にのみ、入力された信号の音量レベルに応じて、音量制御を行うようになっている。例えば、入力された信号の音量レベルが過大レベルの場合には、自動的に音量レベルの平滑処理や圧縮処理を行う。複数のオーディオ信号が加算される場合には、オーバーフローが発生しやすくなるが、自動音量制御部2700で自動音量制御が行われることによって、オーバーフロー状態を緩和することが可能となる。
【0068】
なお、実施形態1の装置では音量正規化処理部1200は、入力された信号のレベルを6dB下げる例を説明したが、本実施形態では、入力された信号のレベルを3dB下げるようになっている。本実施形態で音量正規化処理部1200における信号の減衰量を3dBとしたのは、本装置が自動音量制御部2700を備えているため、ある程度のオーバーフローは回避することが可能であるためである。
【0069】
上記のように構成された音響処理装置2000は、図4のフローチャートに示す各ステップの処理が行われることによって、前記出力制御情報に応じて、4チャンネル出力、および2チャンネル出力のうちの何れかの出力が行われる。各ステップで行われる処理は、以下の通りである。
【0070】
[S201]オーディオPCM信号をバーチャルサラウンド処理部1100、および反射音処理部2600に入力する。
【0071】
[S202]反射音処理部2600は、前方チャンネル用オーディオ信号に対し、前記反射音処理を行うことによって、擬似的に後方チャンネル用オーディオ信号を生成する。
【0072】
[S203]バーチャルサラウンド処理部1100は、擬似的に生成された後方チャンネル用オーディオ信号に対し、前記バーチャルサラウンド処理を行い、バーチャルサラウンド信号として音量正規化処理部1200に出力する。
【0073】
[S204]音量正規化処理部1200は、オーディオ信号の音量正規化の要否を決定するため、外部インターフェース2500が出力した出力チャンネル構成情報が2チャンネル出力設定か、または4チャンネル出力設定かを判断し、2チャンネル出力設定の場合には、S205の処理に移行し、また、4チャンネル出力設定の場合には、前方チャンネル用オーディオ信号、およびバーチャルサラウンド信号のスルー出力を行い、S206の処理に移行する。
【0074】
[S205]音量正規化処理部1200は、前方チャンネル用オーディオ信号、およびバーチャルサラウンド信号の音量正規化処理を行う。具体的には、両信号の音量を3dB下げて出力する。
【0075】
これにより、前方チャンネル用オーディオ信号とバーチャルサラウンド信号との加算の際にオーバーフローが発生するのが防止される。
【0076】
[S206]出力切り替え部1400は、バーチャルサラウンド信号の出力先を決定するために、出力チャンネル構成情報が2チャンネル出力設定か、または4チャンネル出力設定かを判断し、2チャンネル出力設定の場合には、バーチャルサラウンド信号を加算器1300に出力してS106の処理に移行し、4チャンネル出力設定S107の処理に移行する。
【0077】
[S207]加算器1300は、前方チャンネル用オーディオ信号、およびバーチャルサラウンド信号の加算を行い、S107の処理に移行する。
【0078】
[S208]自動音量制御処理の要否を決定するため、自動音量制御部2700は、前記出力チャンネル構成情報が2チャンネル出力設定か、または4チャンネル出力設定かを判断し、2チャンネル出力設定の場合には、音量を調整するためにS209の処理に移行し、また、4チャンネル出力設定の場合(すなわち、音量調整が不要の場合)には、S210の処理に移行する。
【0079】
[S209]自動音量制御部2700は、音量レベルの平滑処理や圧縮処理を行うことによって、前方チャンネル用オーディオ信号とバーチャルサラウンド信号の音量調整を行う。
【0080】
[S210]自動音量制御部2700の出力を前方スピーカ用、および後方スピーカ用として出力する。
【0081】
上記のST201〜S210の処理が行われることによって、前記出力制御情報に応じて、4チャンネル出力、および2チャンネル出力のうちの何れかの出力が行われる。
【0082】
例えば前記出力チャンネル構成情報が2チャンネル出力設定の場合には、反射音処理部2600で反射音処理が行われて、擬似的に後方チャンネル用オーディオ信号を生成される。この後方チャンネル用オーディオ信号に対し、バーチャルサラウンド処理部1100が前記バーチャルサラウンド処理を行うことによって、バーチャルサラウンド信号が生成される。このバーチャルサラウンド信号は、音量正規化処理部1200で音量が3dB下げられた後、出力切り替え部1400を介して加算器1300に出力され、加算器1300で前記前方チャンネル用オーディオ信号と加算されて、前方スピーカ用出力として出力される。加算処理が行われる場合、音量正規化処理部1200において、後方チャンネル用オーディオ信号とバーチャルサラウンド信号とは正規化処理が施されているので、加算処理によるオーバーフローは発生しない。自動音量制御部2700は、加算器1300の出力する信号の音量が過大レベルの場合には、自動的に音量レベルの平滑処理や圧縮処理を行うことでオーバーフロー状態を緩和する。
そして、自動音量制御部1700によって音量制御処理が実施された信号は、前方スピーカ出力側へ出力される。
【0083】
また、前記出力チャンネル構成情報が4チャンネル出力設定の場合には、2チャンネル出力設定の場合と同様にして前記バーチャルサラウンド信号が生成された後、音量正規化処理部1200での音量正規化処理、加算器1300での加算処理、および自動音量制御部2700での音量制御は行われずに、前方チャンネル用オーディオ信号は前方スピーカ用出力として出力され、バーチャルサラウンド信号は後方スピーカ用出力として出力される。ここでは、音量正規化処理部1200、および自動音量制御部2700において各々のオーディオ信号に音量正規化処理や自動音量制御処理が施されていないが、加算処理が行われないため、当然ながらオーバーフローは発生しない。
【0084】
上記のように、本実施形態によれば、前方チャンネル用オーディオ信号から擬似的に後方チャンネル用信号を生成するので、入力される信号が前方チャンネル用オーディオ信号のみであっても、実施形態1の装置と同様に、再生システム全体としてSN比を最適な状態に維持しつつ、本装置が実装される再生システムの出力チャンネル構成に応じたオーディオ信号を出力できる。
【0085】
しかも、前記出力チャンネル構成情報に応じて、音量レベルの調整を行う自動音量制御部を備えているので、出力チャンネル構成に応じて音量制御処理を切り替えることが可能になり、より最適な音量制御処理が実現できる。
【0086】
《発明の実施形態3》
図5は、本発明の実施形態3に係る音響処理装置3000の構成を示すブロック図である。音響処理装置3000は、加算器1300、自動音量制御部2700、バーチャルサラウンド処理部3100、音量正規化処理部3200、出力切り替え部3400、外部インターフェース3500、反射音処理部3600、および自動音量制御部3700を備えて構成され、後方スピーカの配置に応じたオーディオPCM信号が出力されるようになっている。
【0087】
本実施形態では、出力制御情報は、音響処理装置3000を実装した再生システムにおける後方スピーカの配置を表す情報(後方スピーカ配置情報)である。後方スピーカ配置情報は、後方スピーカが受聴者の後方に配置される「後方配置」、前方に配置される「前方配置」、および後方スピーカが配置されない「なし」のいずれかを示す情報である。
【0088】
「後方配置」とは、図6に示すように、後方スピーカを通常のマルチチャンネルシステム通り再生システムの受聴者の後方に配置される場合である。
【0089】
また、「前方配置」とは、図7に示すように、後方スピーカを前方に配置する場合、または図8に示すように、音響処理装置3000の外部のアナログ回路上で後方スピーカ出力と前方スピーカ出力を加算する場合である。
【0090】
また、「なし」とは、図9に示すように、音響処理装置3000内部でバーチャルサラウンド信号と前方チャンネル用オーディオ信号とを加算して、前方スピーカ用の出力を行う場合を示す。
【0091】
バーチャルサラウンド処理部3100は、外部インターフェース3500から前記後方スピーカ配置情報が入力され、前記後方スピーカ配置情報が「前方配置」、および「なし」のうちのいずれかの場合には、前記後方チャンネル用オーディオ信号に前記バーチャルサラウンド処理を施してバーチャルサラウンド信号を出力し、「後方配置」の場合は、バーチャルサラウンド処理を行わずにスルー出力を行うようになっている。
【0092】
外部インターフェース3500は、バーチャルサラウンド処理部3100、音量正規化処理部1200、出力切り替え部1400、および自動音量制御部2700に前記後方スピー力配置情報を出力するようになっている。
【0093】
音量正規化処理部3200は、外部インターフェース3500が出力した後方スピーカ配置情報が「なし」の場合に、前方チャンネル用オーディオ信号、およびバーチャルサラウンド処理部3100が生成するバーチャルサラウンド信号のレベルを3dB下げるようになっている。本実施形態で音量正規化処理部3200における信号の減衰量を実施形態1の装置のように6dBではなく3dBとしたのは、本装置が自動音量制御部2700を備えているため、ある程度のオーバーフローは回避することが可能であるためである。
【0094】
出力切り替え部3400は、外部インターフェース3500が出力した後方スピーカ配置情報が、「なし」の場合にのみバーチャルサラウンド信号を加算器1300に出力し、「前方配置」、および「後方配置」の場合は、バーチャルサラウンド信号を後方スピーカ用出力側に出力するようになっている。
【0095】
反射音処理部3600は、外部から前方左右再生用の前方チャンネル用オーディオ信号、および後方左右再生用の後方チャンネル用オーディオ信号の合計4チャンネルのオーディオPCM信号が入力され、前方チャンネル用オーディオ信号、および後方チャンネル用オーディオ信号に対して前記反射音生成処理を施すようになっている。本実施形態では、全チャンネルのオーディオ信号に対して、反射音を付加することが可能になる。また、例えば後方チャンネル用オーディオ信号が入力されない場合にも、前方チャンネル用オーディオ信号に対して前記反射音生成処理を施すことによって、擬似的に後方チャンネル用信号を生成することが可能になる。
【0096】
また、反射音処理部3600では、入力時に既に存在しているチャンネルに反射音を付加する場合には、予めの音量正規化処理を行うようになっている。
【0097】
自動音量制御部3700は、後方スピーカ配置情報に応じて、入力された信号の音量レベル制御(例えば平滑処理や圧縮処理)を行うようになっている。具体的には、外部インターフェース3500が出力した後方スピーカ配置情報が、「なし」の場合にのみ、入力された信号の音量レベルに応じて音量制御を行い、後方スピーカ配置情報が「前方配置」および「後方配置」の場合には、スルー出力を行うようになっている。これにより、例えば、入力された信号の音量レベルが過大レベルの場合に、音量レベルの平滑処理や圧縮処理を行うことによって、オーバーフロー状態を緩和することが可能となる。
【0098】
図10は、各後方スピーカ配置情報ごとのバーチャルサラウンド処理部3100、音量正規化処理部3200、出力切り替え部3400、および自動音量制御部3700の動作をまとめたものである。
【0099】
上記のように構成された音響処理装置3000は、図11のフローチャートに示す各ステップの処理が行われることによって、後方スピーカが受聴者の後方に配置される場合、前方に配置される場合、および後方スピーカが配置されない場合のそれぞれの場合に応じた出力動作が行われる。各ステップで行われる処理は、以下の通りである。
【0100】
[S301]オーディオPCM信号を反射音処理部3600に入力する。
【0101】
[S302]反射音処理部3600は、前方チャンネル用オーディオ信号、および後方チャンネル用オーディオ信号に対し、前記反射音処理を行うことによって、反射音を付加する。
【0102】
[S303]バーチャルサラウンド処理部3100は、外部インターフェース3500が出力した後方スピーカ配置情報を解析し、後方スピーカ配置情報が「前方配置」、または「なし」の場合には、前記バーチャルサラウンド処理を行うためS304の処理に移行し、後方スピーカ配置情報が「後方配置」の場合には、後方チャンネル用オーディオ信号のスルー出力を行い、S305の処理に移行する。
【0103】
[S304]バーチャルサラウンド処理部3100は、反射音処理部3600が出力した後方チャンネル用オーディオ信号に対し、前記バーチャルサラウンド処理を行って、バーチャルサラウンド信号を音量正規化処理部3200に出力する。
【0104】
[S305]音量正規化処理部3200は、外部インターフェース3500が出力した後方スピーカ配置情報を解析し、後方スピーカ配置情報が「なし」の場合には、音量正規化を行うためS306の処理に移行し、「前方配置」、または後方配置」の場合には、前方チャンネル用オーディオ信号、およびバーチャルサラウンド信号のスルー出力を行い、S307の処理に移行する。
【0105】
[S306]反射音処理部3600は、前方チャンネル用オーディオ信号、および後方チャンネル用オーディオ信号に対し、音量正規化処理を行う。具体的には、両信号の音量を3dB下げて出力する。
【0106】
これにより、前方チャンネル用オーディオ信号とバーチャルサラウンド信号との加算の際にオーバーフローが発生するのが防止される。
【0107】
[S307]出力切り替え部3400は、バーチャルサラウンド信号の出力先を決定するために、後方スピーカ配置情報を解析し、後方スピーカ配置情報が「なし」の場合には、バーチャルサラウンド信号を加算器1300に出力してS308の処理に移行し、「前方配置」、または「後方配置」の場合には、後方チャンネル用オーディオ信号のスルー出力を行い、S309の処理に移行する。
【0108】
[S308]加算器1300は、前方チャンネル用オーディオ信号、およびバーチャルサラウンド信号の加算を行い、S309の処理に移行する。
【0109】
[S309]自動音量制御処理の要否を決定するため、自動音量制御部3700は、後方スピーカ配置情報を解析し、後方スピーカ配置情報が「なし」の場合には、音量を調整するためにS310の処理に移行し、また、「前方配置」、または「後方配置」の場合(すなわち、音量調整が不要の場合)には、S311の処理に移行する。
【0110】
[S310]自動音量制御部3700は、音量レベルの平滑処理や圧縮処理を行うことによって、前方チャンネル用オーディオ信号とバーチャルサラウンド信号の音量調整を行う。
【0111】
[S311]自動音量制御部3700の出力を前方スピーカ用、および後方スピーカ用として出力する。
【0112】
上記のS301〜S311の処理が行われることによって、後方スピーカが受聴者の後方に配置される場合、前方に配置される場合、および後方スピーカが配置されない場合のそれぞれの場合に応じた出力動作が行われる。
【0113】
例えば図6に示すように後方スピーカが配置されて再生システムが構成されている場合に、後方スピーカ配置情報として「後方配置」が入力されると、反射音処理部3600は、入力された4チャンネルのオーディオPCM信号に対し、音量正規化処理を行うとともに、反射音を付加する。バーチャルサラウンド処理部3100は、反射音処理部3600が出力した後方チャンネル用オーディオ信号に対し、バーチャルサラウンド処理を実行せずスルー出力を行う。
【0114】
音量正規化処理部3200は、反射音処理部3600が出力した前方チャンネル用オーディオ信号、およびバーチャルサラウンド処理部3100が出力した後方チャンネル用オーディオ信号に対し、音量正規化処理を実行せずスルー出力を行う。
【0115】
出力切り替え部3400は、音量正規化処理部3200から入力された後方チャンネル用オーディオ信号を自動音量制御部3700に出力するので、加算器1300での加算は行われず、前方チャンネル用オーディオ信号は、独立して自動音量制御部3700に入力される。そして、自動音量制御部3700においてもスルー出力が行われ、前方チャンネル用オーディオ信号、および後方チャンネル用オーディオ信号は、前方スピーカ用、および後方スピーカ用としてそれぞれ出力される。
【0116】
上記のように、後方スピーカ配置情報として「後方配置」が入力されると、入力された4チャンネルのオーディオPCM信号は、音量正規化処理部3200の音量正規化処理、および自動音量制御部3700の自動音量制御処理が施されることなく外部へ出力されるので、例えば図6のように構成されている再生システムでは、SN比を悪化させることなくサラウンド再生を実現することが可能になる。
【0117】
また、例えば図7、または図8に示すようにスピーカが配置されて再生システムが構成されている場合に、後方スピーカ配置情報として「前方配置」が入力されると、バーチャルサラウンド処理部3100が「後方配置」の場合とは異なる動作を行う。すなわち、バーチャルサラウンド処理部3100は、反射音処理部3600が出力した後方チャンネル用オーディオ信号に対して前記バーチャルサラウンド処理を実行し、バーチャルサラウンド信号を生成する。
【0118】
上記のように、音量正規化処理部3200の音量正規化処理、および自動音量制御部3700の自動音量制御処理が施されないで前方チャンネル用オーディオ信号、およびバーチャルサラウンド信号が外部へ出力されるので、例えば図7のように構成された再生システムでは、前方スピーカからは、前方チャンネル用オーディオ信号が出力され、受聴者の前方に配置された後方スピーカからは、バーチャルサラウンド信号が出力されるので、SN比を悪化させることなくバーチャルサラウンド再生を実現することが可能になる。また、例えば図8のように構成された再生システムでは、前方スピーカ用出力と前方スピーカ用出力とを外部のアナログ回路にて加算処理を行えば、やはりバーチャルサラウンド再生を実現することが可能になる。
【0119】
また、例えば図9で示されるようにスピーカが配置されて再生システムが構成されている場合に、後方スピーカ配置情報として「なし」が入力されると、反射音処理部3600は、入力された4チャンネルのオーディオPCM信号に対し、音量正規化処理を行うとともに、反射音を付加する。バーチャルサラウンド処理部3100では、反射音処理部3600で生成された後方チャンネル用オーディオ信号に対し、バーチャルサラウンド処理を実行してバーチャルサラウンド信号を生成する。
【0120】
音量正規化処理部3200は、前方チャンネル用オーディオ信号、およびバーチャルサラウンド信号に対し音量正規化処理を行う。具体的には、各々の入力信号の音量を3dB下げる処理を行う。
【0121】
出力切り替え部3400は、音量正規化処理部3200から入力されたバーチャルサラウンド信号を加算器1300に出力するので、加算器1300では、前方チャンネル用オーディオ信号とバーチャルサラウンド信号との加算が行われ、自動音量制御部3700に入力される。そして、自動音量制御部3700は、加算器1300の出力に対し、信号の音量レベルに応じた音量制御処理を行い、前方スピーカ用に出力する。自動音量制御部3700における音量制御は、実施形態2の装置と同様、例えば入力信号の音量レベルが過大レベルの場合には、自動的に音量レベルの平滑処理や圧縮処理を行うことでオーバーフロー状態を緩和する働きがある。
【0122】
このように、音量正規化処理部3200の音量正規化処理が行われた後に加算処理が行われ、さらに自動音量制御部3700で自動音量制御処理が施された後に外部へ出力されるので、加算処理や外部出力の際のオーバーフローは発生せず、例えば図9のように構成された再生システムでバーチャルサラウンド再生を実現することが可能になる。
【0123】
上記のように、本実施形態によれば、出力切り替え部3400を備えたことで、バーチャルサラウンド処理の有無(ON/OFF)に係わらずバーチャルサラウンド信号と前方再生用の2チャンネル信号とを加算せず独立に出力することが可能になるので、バーチャルサラウンド処理がONの場合とOFFの場合との音量感を合わせるために、OFFの場合に再生音量を下げる必要がなくなり、再生システム全体としてSN比を維持することが可能となる。
【0124】
また、前記後方スピーカ配置情報が入力されることによって、外部の出力チャンネル構成に応じて、自動的に音量正規化処理部での音量正規化処理の有無、自動音量制御部での音量レベルの調整の有無、および前記バーチャルサラウンド信号と前方チャンネル用オーディオ信号との加算処理の有無が切り替えられるので、本装置が実装される再生システムの形態に応じた最適音量設定が行われ、システム全体として自動的にSN比を最適な状態にすることができるようになる。
【0125】
しかも、本実施形態では、前記出力チャンネル構成情報が入力されることによって、後方再生用スピーカの配置や出力方法に応じて、バーチャルサラウンド処理の有無の制御を行うことができる。
【0126】
なお、実施形態3の装置では、前記後方スピーカ配置情報は、例えば本実施形態の音響処理装置を搭載した再生システムを構築する場合に、音響処理装置とのインターフェースとして後方のスピーカに位置情報の受け渡し機能を追加し、バーチャルサラウンド処理の有無、出力チャンネル構成、音量レベル制御等の処理を自動的に行わせるようにしてもよい。これにより、最適な状態での再生を自動的に実現することが可能になる。
【0127】
また、実施形態1、および実施形態3の装置では、説明を容易とするため、外部から入力される信号が前方2チャンネルと後方2チャンネルとの合計4チャンネルのオーディオPCM信号である場合の例を説明したが、前方中央再生用(センター)チャンネルやサブウーハーなどのチャンネルを含む場合や、後方再生用チャンネルがモノラルの場合に適用してもよい。
【0128】
また、実施形態3の装置における、自動音量制御部の出力チャンネル構成情報に基づいた処理は、音量制御の有無(ON/OFF)が切り替えられる例を説明したが、反射音処理部や音量正規化処理部の設定に応じて音量制御処理の効果を可変にすることも可能である。
【0129】
また、実施形態3の装置でも、外部から入力されるオーディオ信号が前方再生用左右2チャンネル(ステレオ)のオーディオPCM信号の場合に、反射音処理部3600で擬似的に後方チャンネル用オーディオ信号を生成し、これに対して前記バーチャルサラウンド処理を行うようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0130】
本発明にかかる音響処理装置は、再生システム全体としてSN比の劣化が少ないバーチャルサラウンド再生を実現することが可能になるという効果を有し、受聴者の前方に配置された前方スピーカのみで擬似的にマルチチャンネル再生を実現する音響処理装置等として有用である。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
受聴者の後方に配置されたスピーカで再生された場合に受聴者に認識される音像位置が受聴者の後方になる後方チャンネル用オーディオ信号に対し、受聴者の前方に配置されたスピーカで再生された場合に受聴者に認識される音像位置が受聴者の後方になるように、所定の音像定位処理を行って、音像定位処理済みオーディオ信号を生成する音響処理部を備え、
受聴者の前方に配置されたスピーカで再生された場合に受聴者に認識される音像位置が受聴者の前方になる前方チャンネル用オーディオ信号と、前記音像定位処理済みオーディオ信号と、をそれぞれ独立して出力することを特徴とする音響処理装置。
【請求項2】
請求項1の音響処理装置であって、
さらに、入力された前方チャンネル用オーディオ信号に対し、反射音生成処理を行って、前記後方チャンネル用オーディオ信号を生成する反射音生成処理部を備えたことを特徴とする音響処理装置。
【請求項3】
請求項1の音響処理装置であって、
さらに、入力された前方チャンネル用オーディオ信号および入力された後方チャンネル用オーディオ信号のそれぞれの信号に反射音信号を付加して、前記前方チャンネル用オーディオ信号および前記後方チャンネル用オーディオ信号を生成する反射音付加処理部を備えたことを特徴とする音響処理装置。
【請求項4】
請求項1の音響処理装置であって、さらに、
前記前方チャンネル用オーディオ信号および音像定位処理済みオーディオ信号の音量レベルを所定のレベル範囲に収まるように制御する音量正規化処理部と、
前記音量正規化処理部によって音量レベルが制御された前方チャンネル用オーディオ信号と前記音量正規化処理部によって音量レベルが制御された音像定位処理済みオーディオ信号とを加算した加算オーディオ信号を生成する加算器と、
出力制御情報を示す制御信号に応じて、前記前方チャンネル用オーディオ信号と前記音像定位処理済みオーディオ信号とをそれぞれ独立して出力する出力動作、および前記加算オーディオ信号を出力する出力動作の何れかの出力動作を選択的に行う切り替え部とを備えことを特徴とする音響処理装置。
【請求項5】
請求項4の音響処理装置であって、
前記出力制御情報は、出力チャンネル構成を示す出力チャンネル構成情報を含んだものであり、
前記切り替え部は、前記出力チャンネル構成情報に応じて、前記切り替えを行うことを特徴とする音響処理装置。
【請求項6】
請求項5の音響処理装置であって、
さらに、前記出力チャンネル構成情報、および入力音量レベルに応じて、出力するオーディオ信号の音量レベルを制御する音量制御部を備えたことを特徴とする音響処理装置。
【請求項7】
請求項4の音響処理装置であって、
前記出力制御情報は、受聴者に認識される音像位置が受聴者の後方になるオーディオ信号を出力するための後方音像用スピーカが、受聴者の前方に配置された状態、後方に配置された状態、および配置されていない状態のうちの何れの配置状態であるかを示す後方スピーカ配置情報を含んだものであり、
前記音響処理部は、前記後方スピーカ配置情報が示す配置状態に応じて、前記音像定位処理済みオーディオ信号の生成の有無が制御されるように構成され、
前記切り替え部は、前記後方スピーカ配置情報に応じて、前記前方チャンネル用オーディオ信号と前記音像定位処理済みオーディオ信号とをそれぞれ独立して出力する出力動作、前記加算オーディオ信号を出力する出力動作、および入力されたオーディオ信号をそのまま出力する出力動作のうちの何れかの出力動作を選択的に行うように構成されていることを特徴とする音響処理装置。
【請求項8】
請求項7の音響処理装置であって、
さらに、前記後方スピーカ配置情報、および入力音量レベルに応じて、出力するオーディオ信号の音量レベルを制御する音量制御部を備えたことを特徴とする音響処理装置。

【国際公開番号】WO2005/084077
【国際公開日】平成17年9月9日(2005.9.9)
【発行日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−519373(P2006−519373)
【国際出願番号】PCT/JP2005/003044
【国際出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】