音響波取得装置およびその制御方法
【課題】探触子の走査に伴う音響整合剤の供給量を適切に制御する。
【解決手段】被検体を保持する被検体保持手段を介して被検体からの音響波を受信する探触子と、被検体保持手段と探触子との間に音響整合剤を保持する空間を形成する音響整合剤保持手段と、探触子を被検体保持手段の表面において第一の方向および第一の方向に交差する第二の方向に走査させる走査手段と、所定の供給量パターンを用いて空間に音響整合剤を供給する供給手段とを有し、供給手段は、探触子が第一の方向に走査する場合と第二の方向に走査する場合とで異なる供給量パターンを用いる音響波取得装置を適用する。
【解決手段】被検体を保持する被検体保持手段を介して被検体からの音響波を受信する探触子と、被検体保持手段と探触子との間に音響整合剤を保持する空間を形成する音響整合剤保持手段と、探触子を被検体保持手段の表面において第一の方向および第一の方向に交差する第二の方向に走査させる走査手段と、所定の供給量パターンを用いて空間に音響整合剤を供給する供給手段とを有し、供給手段は、探触子が第一の方向に走査する場合と第二の方向に走査する場合とで異なる供給量パターンを用いる音響波取得装置を適用する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響波取得装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被検体の画像情報を取得する装置として超音波装置(音響波取得装置)が知られている。このような超音波装置として、被検体を対向する2枚の保持板で圧迫保持し、探触子を水平方向と垂直方向とに二次元走査して画像取得する構成のものが特許文献1に開示されている。この超音波装置では探触子と保持板との音響インピーダンスの整合をとるため、探触子と保持板との間にマッチングオイルを満たす構成となっている。マッチングオイルは探触子を取り囲むように配置されたオイルシールによって保持されている。オイルシールは、マッチングオイルに混入した気泡を除去できるように上面に開口が設けられている。
【0003】
機械走査される部材と固定部材との間に空気が入らないように液体で満たす技術が特許文献2に開示されている。特許文献2に開示の装置は、水平方向に2軸走査することができる二次元走査ステージと、ステージ上に設けられたウエハに上方から光を投影するための投影光学系を有する投影露光装置である。この装置にはさらに、ウエハ表面と投影光学系の下面との間を液体で満たすための液体供給装置が設けられ、液体供給ノズルと液体回収ノズルによりウエハ表面と投影光学系の下面との間に液体が供給される。ウエハが移動すると、供給された液体が出ていき、空気が入ってしまうため、常に液体が供給され続けている。また、ウエハの移動方向によって空気の入り込む位置が異なるため、供給ノズル及び回収ノズルはステージの移動方向にそれぞれ対応した位置に複数設けられている。その複数の供給ノズルのうち、ウエハの移動方向に応じたノズルから液体が供給されるようになっている。また、液体供給装置は液体の供給量の制御手段を有しており、それぞれの位置の供給ノズルはウエハの移動速度によって供給量が調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−103913号公報
【特許文献2】国際公開第99/049504号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では超音波装置のマッチングオイルの供給量は、走査する速度に関係なく一定である。探触子を停止状態から走査速度に達するまでの加速時、あるいは走査速度から停止するまでの減速時に働く加速度により、マッチングオイルの液面に傾きが発生する。液面が傾くことで液面が低下して探触子と保持板との間に空気が入ってしまう。加速度が高くなるほど、この液面が低下する量が大きくなる。
また保持板近傍のマッチングオイルは、保持板との流体摩擦によって流れが生じるため、一定の速度で走査する定速時であっても液面の低下が生じる。この現象によっても探触子と保持板との間に空気が入ってしまう。液面が低下する量は、速度が高くなるほど大きくなる。しかし、特許文献1に開示の超音波装置は、オイルの供給量に関しては詳細に記述されていない。そのため、走査方向や走査速度によっては過剰に供給することになり、開口部からの漏れが多くなってしまうことがあった。
【0006】
特許文献2に開示された液体供給装置では、供給ノズル一つにつき、速度変化に応じて液体の供給量を変化させるパターンが一つしかない。したがって、一つの供給口で対応し
ようとした場合、液面低下が大きい条件に設定しなければならない。そのため、走査方向や、加速時、定速時などの走査状態によっては必要以上にマッチングオイルを供給することになり、シール材の上面の開口部から漏れるマッチングオイルの量も多くなる。それに伴い、多量のマッチングオイルが装置内部に飛散してしまうという課題があった。飛散したマッチングオイルは、装置内部を汚してしまう原因になっていた。また飛散する量が多いほどオイルタンク内のオイルの減少が多く、その分オイルの補充も多いため経済的ではなかった。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、探触子の走査に伴う音響整合剤の供給量を適切に制御することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成を採用する。すなわち、被検体を保持する被検体保持手段を介して前記被検体からの音響波を受信する探触子と、前記被検体保持手段と前記探触子との間に音響整合剤を保持する空間を形成する音響整合剤保持手段と、前記探触子を前記被検体保持手段の表面において第一の方向および前記第一の方向に交差する第二の方向に走査させる走査手段と、所定の供給量パターンを用いて前記空間に前記音響整合剤を供給する供給手段と、を有し、前記供給手段は、前記探触子が前記第一の方向に走査する場合と前記第二の方向に走査する場合とで異なる供給量パターンを用いることを特徴とする音響波取得装置である。
【0009】
本発明はまた、以下の構成を採用する。すなわち、被検体を保持する被検体保持手段を介して前記被検体からの音響波を受信する探触子と、前記被検体保持手段と前記探触子との間に音響整合剤を保持する空間を形成する音響整合剤保持手段と、を有する音響波取得装置の制御方法であって、走査手段が、前記探触子を前記被検体保持手段の表面において第一の方向および前記第一の方向に交差する第二の方向に走査させる走査ステップと、供給手段が、所定の供給量パターンを用いて前記空間に前記音響整合剤を供給する供給ステップと、を有し、前記供給ステップでは、前記走査ステップにおいて前記探触子が前記第一の方向に走査された場合と前記第二の方向に走査された場合とで異なる供給量パターンが用いられることを特徴とする音響波取得装置の制御方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、探触子の走査に伴う音響整合剤の供給量を適切に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1における光音響装置の概要構成を示した図である。
【図2】実施例における光音響装置の斜視図である。
【図3】探触子ユニットの斜視図である。
【図4】測定時の探触子ユニットの駆動方法の一例を示す図である。
【図5】水平走査時の液面の状態を示す図である。
【図6】垂直走査時の液面の状態を示す図である。
【図7】実施例1における供給量パターングラフである。
【図8】実施例1における供給量パターングラフの別の例である。
【図9】実施例2における光音響装置の概要構成を示した図である。
【図10】水平走査時の走査方向の違いによる液面の状態を示す図である。
【図11】実施例3における加速度に応じた供給量パターンのグラフである。
【図12】実施例3における供給量の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に図面を参照しつつ、本発明の好適な実施の形態を説明する。ただし、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状及びそれらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、この発明の範囲を以下の記載に限定する趣旨のものではない。
【0013】
以下の実施例においては、探触子を用いて人体等の被検体を走査する光音響装置を例として説明を行う。光音響装置においては、被検体に光を照射されると、光音響効果によって被検体から音響波(典型的には超音波)が発生する。なお音響波とは、音波、超音波などと呼ばれる弾性波を含むものであり、光音響効果により発生した音響波は光音響波や光超音波と呼ばれる。そして、音響波を受信して電気信号に変換する受信素子を含む探触子に対して、本発明が適用される。光音響装置は、変換後の電気信号から、被検体内部の初期音圧分布やそれに基づく光吸収係数分布や物質濃度分布等の特性情報を取得し、被検体内部を画像化する。かかる光音響装置は、探触子により音響波を受信する音響波取得装置と呼べる。
したがって本発明は探触子を用いる他の音響波取得装置にも適用可能である。例えば、探触子から被検体に送信された音響波(超音波)が被検体内部で反射したエコー波を受信して被検体内部を画像化するような音響波取得装置(超音波装置)も対象となる。
【0014】
<実施例1>
図1は、本実施例における音響波取得装置の例として光音響装置の概要の構成を示した図である。図2は光音響装置の斜視図である。
探触子ユニット16は、水平方向に走査する水平走査機構18a1、及び垂直方向に走査する垂直走査機構18a2の2軸からなる探触子走査ユニット18aに取り付けられており、固定された保持板17の表面に沿って2次元的に走査可能である。保持板17は、探触子がその表面で走査されるものであり、本発明の被検体保持手段に相当する。探触子走査ユニット18aは、本発明の走査手段に相当する。水平方向は本発明の第一の方向に、水平方向と交差する垂直方向は本発明の第二の方向に相当する。測定対象となる被検体は、保持板17と、保持板17に対向して設けられた可動保持板51とで圧迫保持される。保持板17は、固定プレート55に固定され、可動保持板51は、可動プレート52に固定されている。固定プレート55、可動プレート52は、ガイドロッド53とリニアガイド54により平行移動自在に設けられている。被検体の測定部位を保持板17と保持板51との間に入れて、図示していない圧迫機構、例えば、台形ネジと、かさ歯車とによる機構や、エアシリンダ機構などで保持板17と可動保持板51の間隔を制御し、被検体を保持する。保持板17、可動保持板51を挟んで、探触子ユニット16の対向する位置には被検体に光を照射するための光学系50が配置されている。光学系50は、探触子走査ユニット18aと同様に水平方向、垂直方向の2軸を有する光学走査ユニット18bにより、2次元的に走査可能である。探触子走査ユニット18a及び光学走査ユニット18bの構成は、モータとボールネジとガイドからなる構成でもよいし、モータとギヤとベルトリンクからなる構成でもよいし、空気シリンダとガイドからなる構成でもよい。探触子走査ユニット18aと光学走査ユニット18bを同期制御することで、被検体を挟んで対向配置させた光源50と探触子ユニット16を常に対向させた位置で走査させることができる。
【0015】
図3は探触子ユニット16の斜視図である。
探触子ユニット16は、被検体から発生する超音波を、保持板17を介して測定する探触子19を備えている。保持板17の材質は、被検体から探触子19までの音響インピーダンスの整合をとるため樹脂が好ましく、特にポリメチルペンテンが好適である。探触子ユニット16は、探触子19の周囲を囲むシール材21を有している。シール材21としては、ゴム、多孔質材(スポンジ)、皮革、樹脂などの材質からなるパッキンを用いることができる。このシール材21により、保持板17と探触子19の間に音響インピーダン
スの整合をとるためのマッチングオイルを保持するための空間22が形成される(図1も参照)。シール材21は、本発明の音響整合剤保持手段に相当する。また、シール材21の上部には、マッチングオイルに混入した空気を逃がすための開口45が形成されている。探触子ユニット16には、マッチングオイルを空間22内に供給するための供給口23が形成され、タンク24に収納されているマッチングオイルを供給手段であるポンプ25で配管29を経て供給する。マッチングオイルは脱気したものが好ましい。これらマッチングオイルを供給するためのシステムは、本発明の供給手段に相当する。本実施例では、音響インピーダンスを整合させるための音響整合剤としてマッチングオイルを使用するので、以下の記載ではマッチングオイルについて述べる。ただし音響整合剤としては、ひまし油等のマッチングオイル以外にも、水、音響ジェルなどを用いることができる。
【0016】
タンク24、不図示の配管29の材質には、ポリエチレン、ステンレスなどが適用できる。ただし、絶縁体のマッチングオイルを循環させると静電気を帯電する場合があるので、ステンレス材質のタンクにアース線を付けてグランドに落とせる構成が好ましい。また、タンク24には、異常な液漏れでマッチングオイルが減った場合に感知する、図示しない液面監視手段が具備されている。液面を監視する手段としては、フロー式、光学式、超音波式など、マッチングオイルが絶縁体であっても感知できるものが良い。
【0017】
図1に示したように、タンク24から送出されたマッチングオイルは、ポンプ25の駆動により、温度制御系26、フィルタ28を経て、供給口23から空間22に供給される。温度制御系26は、送出されるマッチングオイルの温度を測定する機能と、所定の温度になるようマッチングオイルを加熱又は冷却する機能を具備している。これにより、マッチングオイル、探触子19などの温度条件の変動が抑制されるので、安定した測定をすることが出来る。フィルタ28は、マッチングオイルが循環する間で混入したゴミが空間22に入り込まないように、ゴミを除去する機能である。例えばメッシュ構造のフィルタを用いることができる。これにより、ゴミによる測定ノイズの発生や、探触子19及び保持板17の傷つきを抑制することができる。
【0018】
測定時には、保持板17、探触子19、シール材21で形成された空間22(少なくとも、保持板17と探触子19の間の部分)がマッチングオイルで満たされるようにする。探触子ユニット16には探触子19の上方に液面センサー20が設けられている。液面センサー20がマッチングオイルを検知した場合、保持板17と探触子19の間にマッチングオイルが満たされていると判断できる。
保持板17の下部には、シール材21から空間22の外に漏れ出たマッチングオイルを回収する回収手段としての回収系48が設けられている。回収系48は、保持板17を伝い落ちるマッチングオイルを受ける受け容器48a(図2参照)と、受け容器48aとタンク24を接続する配管とから構成される。測定中に、シール材21から漏れ出たマッチングオイルは、回収系48で回収しタンク24に循環させる。なお、空間22の形状及び体積は、探触子ユニット16の移動に伴いマッチングオイルが漏れても、測定開始から終了までの間は保持板17と探触子19の間を十分に満たす程度のマッチングオイルが残るように設計されている。
【0019】
次に、本実施例の装置による測定及び制御方法について説明する。
以下で述べる処理は、図1の制御部100によって実行されるものである。制御部100は、マイクロコントローラ又はコンピュータで構成され、駆動ユニット18a、18b、ポンプ25、温度制御系26などの制御を担う制御手段である。また、マッチングオイル監視手段の検知結果、温度制御系26で測定したマッチングオイル温度などの情報は制御部100に入力され、マッチングオイルの供給や温度の制御に利用される。
測定前準備として、まず制御部100はマッチングオイル監視手段の検知結果に基づき、空間22にマッチングオイルが満たされているか否かを確認する。空間22にマッチン
グオイルが満たされていることが確認されれば、測定前準備は完了である。空間22にマッチングオイルが入っていないと確認された場合、制御部100はポンプ25を駆動し、空間22にマッチングオイルを供給する。その後、制御部100は、マッチングオイル監視手段の検知結果から、空間22内にマッチングオイルが満たされたことを検知したら、ポンプ25を停止する。以上の測定前準備処理によって、保持板17と探触子19の間の空間22を適量のマッチングオイルで満たすことができ、良好な測定を行うための準備が整う。測定時のポンプ25の駆動は後述の水平走査の速度、垂直走査の速度に応じて行われる。
【0020】
図4は、測定時における探触子ユニット16の軌道線図を示している。矢印47は、測定時における探触子ユニット16の移動の軌跡を示している。探触子ユニット16は、測定初期段階において、測定範囲の最上部側端に位置している。測定が開始されると、矢印47に示すように、探触子ユニット16は水平方向に走査しながら1ラインのスキャンを行うと、1ライン下に駆動して水平方向逆向きに駆動しながら次ラインのスキャンを行う。この動作を繰り返し、上から順番に1ラインずつスキャンする。探触子ユニット16が終了位置に到達すると、初期位置に戻る。空間22内のマッチングオイルに気泡が混入していた場合、探触子ユニット16が上から下に駆動するときに開口45から気泡を逃がすことができる。なお、走査方法は、前述のラインごとの走査に限られるものではない。例えば、図4の矢印47bのように測定したい位置に探触子を直接移動させて、停止状態で測定する方法や、移動と停止を繰り返し、停止した時に測定を行うステップアンドリピート方式を取ることもできる。
探触子19は、受信した音響波を電気信号に変換し、画像生成部42へと出力する。画像生成部42は、その信号に基づいて生体内部の情報を表す画像を生成する。なお、音響波信号から生体内部の情報を構成する手法については、従来知られている各種の再構成手法を利用可能である。画像生成部42で生成された画像は表示系43に出力される。
【0021】
次に探触子ユニット16を水平に走査した際のマッチングオイルの液面状態について説明する。
図5は、マッチングオイルを空間22に満たした後に、マッチングオイル供給をしない状態で、探触子ユニット16を水平に走査した際のマッチングオイルの液面状態を示した概略図である。図5(a)は探触子ユニット16が停止している時の状態を示している。図5(b)は探触子ユニット16が一定の速度(V1)で走査している時の状態を示している。図5(c)は探触子ユニット16がV1よりもさらに速い速度(V2)で走査している時の状態を示している。
保持板17との流体摩擦により、保持板17近傍のマッチングオイルは、探触子ユニット16に対して相対的にシール材21の端部B方向に向かって流れる。そのため定速で走査していても、液面が低下して探触子19と保持板17との間に空間ができてしまう。この液面の低下によって生じる空間の体積は探触子ユニット16の速度によって異なり、速度が速いほど大きくなる。つまり、図5において、速度V1のときに液面低下により生じる空間の体積をA1、速度V2のときに液面低下により生じる空間の体積をA2とすると、A1<A2となり、速度により適切なマッチングオイルの供給量が異なる。シール材21の端部B付近に流れたマッチングオイルの一部は、シール材21上方に流れて開口45から漏れる。終了位置から初期位置に移動後に探触子ユニット16と保持板17との間に空気が入っていると、再度測定に入る場合にマッチングオイルが満たされるまで待機しなければならない。それを回避するために、垂直走査においても走査時に空間ができないようにマッチングオイルを供給する。
【0022】
図6はマッチングオイルを空間22に満たした後に、マッチングオイル供給をしない状態で、探触子ユニット16が下から上に走査した際のマッチングオイルの状態を示した概略図である。図6(a)は探触子ユニット16が停止している時の状態を示している。図
6(b)は探触子ユニット16が一定の速度(V1)で走査している時の状態を示している。図6(c)は探触子ユニット16がV1よりもさらに速い速度(V2)で走査している時の状態を示している。
この場合も、保持板17との流体摩擦によってマッチングオイルに流れが生じる。この流れにより定速で走査していても、液面が低下して探触子19と保持板17との間に空間ができてしまう。上方向への走査の場合も、速度V1とV2では液面の低下によって生じる空間の体積C1、C2は異なる。すなわち、より速い速度V2に対応する体積C2の方が大きい。したがって、垂直走査においても速度により適切なマッチングオイルの供給量が異なる。また、水平に速度V1で走査した場合の空間の体積A1と、垂直に速度V1で走査した場合の空間の体積C1の空間の体積も異なる。図4の47bのような走査を行った場合でも、探触子ユニット16が測定位置到達後に待機時間を設けることなく測定することができる。また、水平に速度V1で走査した場合の空間の体積A1と、垂直に速度V1で走査した場合の空間の体積C1の空間の体積も異なる。つまり水平、垂直の走査方向と、さらに速度によって液面の低下により生じる空間の体積が異なり、適切なマッチングオイルの供給量が異なる。
【0023】
この異なる供給量に対応するために、制御部100は水平方向に移動した場合の速度に応じたマッチングオイルの供給量パターンと、垂直方向に走査した場合の速度に応じたマッチングオイルの供給量パターンを有している。供給量パターンは、例えばメモリその他の記憶媒体に保持されたテーブルや数値データにより提供されても良い。
図7は供給量パターンをグラフ化したものである。このグラフは走査速度(横軸)と、その速度で走査した場合に保持板17と探触子ユニット16との間のマッチングオイルを維持できる供給量(縦軸)との関係を示している。この供給量パターンは、マッチングオイルの粘度や、シール材21により形成される空間22の形状などから計算されたもの、あるいは実測により最適化されたものが制御部100に記録される。このグラフは一例であり、実際はこれに限られるものではない。走査速度は探触子ユニット16を走査させるための制御部100の処理に基づいているが、速度センサーを設けて、その速度センサーが検知した速度に応じて供給量を制御しても良い。
【0024】
図4における矢印47aの速度がV2である場合は、図7の水平走査の供給量パターンから、D2の供給量のマッチングオイルが供給される。また、終了位置から初期位置に移動する時の垂直走査の速度がV2であればE2の供給量で供給される。マッチングオイルの粘度が高く、加速度による影響が小さい場合は、探触子ユニット16がV2の速度に達するまでの加減速区間においても、速度変化に応じた供給量で制御しても良い。つまり、ある時間での速度がV1の時の供給量はD1となる。図4の矢印47bのように斜めに走査する場合は、水平走査と垂直走査が同時に行われていることになるため、水平走査の速度における供給量と垂直走査の速度における供給量の和を求める等の演算により供給量を求める。斜めの方向は、本発明の第三の方向に相当する。
【0025】
図8は、探触子ユニット16が停止状態においても供給量Hでマッチングオイルを供給するようにさせた供給量パターンの図である。図示したように、水平走査における速度V3以下の場合、および垂直走査における速度V4以下の場合は一律に供給量Hとしている。このように制御することで、停止状態や走査速度が所定の値以下の遅い速度の場合でも供給量Hが確保されるので、マッチングオイルをオーバーフローさせることができ、異物の混入の低減や気泡の除去を行うことができる。ここでは水平走査と垂直走査ともに、図7の供給量パターンにおいて供給量が所定の値H以下となる範囲を一律の供給量としたが、それぞれの供給量パターンごとに所定の値を決定しても構わない。
【0026】
以上の制御により、水平、垂直、斜め走査のいずれの走査に対しても、保持板17と探触子ユニット16との間に常にマッチングオイルを満たすことができる。また走査速度と
して制御部100での処理で用いる値を利用しているため、走査速度を変化させるよりも先にポンプ25の駆動を制御することができる。したがって、液面が下がるよりも先にマッチングオイルが供給されるので、より確実にマッチングオイルを満たすことができる。また、制御部100による制御開始から、実際にポンプ25が駆動してマッチングオイルが供給されるまでの時間差を考慮して設定することもできる。本実施例では水平方向と垂直方向の供給量パターンを設けたが、さらに右方向、左方向、上方向、下方向と細かく供給量パターンを設けても良い。
【0027】
供給量パターンが1つの場合は、探触子19と保持板17との間に生じる空間の体積が大きい方に合わせる。例えば、走査方向と速度による供給量の関係が図7のグラフで示される場合は、水平走査の供給量パターンを、垂直走査の場合にも適用することになる。すなわち、垂直走査をV1の速度で走査する場合、E1の供給量で充分であるのにD1の供給量で供給することになる。供給量の差であるD1−E1の量のマッチングオイルは、探触子ユニット16の上部にある開口45から漏れることになる。
【0028】
しかし、本実施例のように走査の方向と速度に応じてマッチングオイルの供給量を制御することで、探触子ユニット16から漏れるマッチングオイルの量を低減することができる。そのため漏れたマッチングオイルの飛散による装置内部の汚れが低減し、メンテナンスが容易になる。また、マッチングオイルの飛散の低減により、マッチングオイルの回収効率が向上する。マッチングオイルの補充もより少なくてすむためより経済的である。
【0029】
<実施例2>
図9は実施例2における光音響装置の概要構成を示した図である。実施例2では、供給口23に加えて、探触子ユニット16に探触子19を挟んで対向する位置に、もう1箇所の供給口27を設けている。供給口27にマッチングオイルを供給する際には、ポンプ30が駆動される。
図10は探触子ユニット16と液面の状態を示した図である。液面はマッチングオイルを空間22に満たした後に、マッチングオイルを供給しない状態で、探触子ユニット16が水平に走査した際のマッチングオイルの状態を示した概略図である。図10(a)は探触子ユニット16が停止状態での液面を示した図である。図10(b)は、探触子ユニット16が右矢印の方向に走査している時の液面の状態を示した図である。複数の矢印28aは保持板17との流体摩擦によって生じる、探触子ユニット16に対するマッチングオイルの相対的な流れを簡易的に示したものである。図10(c)は、探触子ユニット16が左矢印の方向に走査している時の液面の状態を示した図である。複数の矢印28bは保持板17との流体摩擦によって生じる、探触子ユニット16に対するマッチングオイルの相対的な流れを簡易的に示したものである。
【0030】
実施例2において制御部100は、探触子ユニット16が水平方向右へ移動している場合はポンプ25を駆動させて供給口23からマッチングオイルを供給する。一方、探触子ユニット16が左へ移動している場合はポンプ30を駆動させて供給口27から供給する。つまり、探触子ユニット16の走査方向の前方の供給口からマッチングオイルが供給される。なお、それぞれの供給口に対してポンプ25とポンプ30を設けたが、ポンプを1つにして流路切換弁を設けて制御する構成でも良い。その際の供給量は、実施例1と同様に探触子ユニット16と保持板17をマッチングオイルで満たすことができる量が、移動速度に応じて供給される。
探触子ユニット16が垂直方向に走査する場合は、垂直走査の速度に応じた供給量のマッチングオイルが、供給口23および供給口27から供給される。供給量パターンとして図7のグラフを使用し、移動速度V1の場合、それぞれの供給口からの和がE1となる量が供給される。
【0031】
図10(b)に示すように、探触子ユニット16が右へ走査している時のマッチングオイルは、保持板17により生じる流れ28aの上流側から供給される。また図10(c)に示すように、探触子ユニット16が左へ走査している時のマッチングオイルも、保持板17により生じる流れ28bの上流側から供給される。このように供給口23と供給口27を設けることによって、走査方向の違いによって異なる位置にできる空間に対してマッチングオイルをより適切な供給量で供給することができる。そのため、シール材21から漏れるマッチングオイルも低減するため、マッチングオイルの飛散による装置内の汚れが少なくなり、メンテナンスが容易になる。また、マッチングオイルの飛散の低減により、マッチングオイルの回収効率が向上する。よって、マッチングオイルのタンクへの補充もより少なくてすむためより経済的である。
【0032】
<実施例3>
図11は加速度に応じた供給量パターンを示している。加速時はマッチングオイル全体が加速度に応じた力をオイルシール21より受ける。したがって、加速時のマッチングオイルの挙動は、定速で走査している時の保持板17との流体摩擦によるマッチングオイルの流れの挙動とは異なる。マッチングオイルの粘度が低い場合や加速時間が長い場合はこの影響を受けやすい。加速後の定速での測定や、減速して停止した後の測定に先立って、加速している段階で探触子ユニット16と保持板17との間をマッチングオイルで満たしておくことで、測定にスムーズに移行できる。
本実施例では、探触子ユニット16の加速時における液面の傾きによってできる空間に応じた供給量を供給する。図11に示すように、水平走査において、加速度がS1であればF1の供給量が、S2であればF2の供給量が加速している間供給される。加速度は、探触子ユニット16を加速させる際に、制御部100による演算で求められた値が用いられる。ただし、加速度は探触子ユニット16に加速度センサーを設けて、センサーにより検出された加速度を用いても良い。また、加速後の定速での走査では、速度に応じたパターンで供給を行っても良い。たとえば、S1の加速度で図7のV2まで加速し、その後V2で定速走査する場合は、加速走査では供給量F1でマッチングオイルを供給し、定速走査では供給量D2で供給する。図12は、この場合の供給量の変化を示したものである。時間T1までは供給量F1で供給されている。
【0033】
このように加速時には供給量を増加させて、定速時には供給量を減少させることができる。つまり、加速時と定速時で最適な供給量でマッチングオイルを供給することができる。また実施例1で述べたように、探触子が水平走査と垂直走査を同時に行うことにより斜めに走査する場合は、さらに水平走査での供給量と垂直走査での供給量から演算して供給しても良い。さらには、実施例2のように複数の供給口を設けた場合にも適用できる。そのため、シール材21から漏れるマッチングオイルも低減するため、マッチングオイルの飛散による装置内の汚れが少なくなり、メンテナンスが容易になる。また、マッチングオイルの飛散の低減により、マッチングオイルの回収効率が向上する。よって、マッチングオイルのタンクへの補充もより少なくてすむためより経済的である。
【符号の説明】
【0034】
16:探触子ユニット,17:保持板,18a:探触子走査ユニット,19:探触子,21:シール材,22:空間,23:供給口,25:ポンプ,100:制御部
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響波取得装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被検体の画像情報を取得する装置として超音波装置(音響波取得装置)が知られている。このような超音波装置として、被検体を対向する2枚の保持板で圧迫保持し、探触子を水平方向と垂直方向とに二次元走査して画像取得する構成のものが特許文献1に開示されている。この超音波装置では探触子と保持板との音響インピーダンスの整合をとるため、探触子と保持板との間にマッチングオイルを満たす構成となっている。マッチングオイルは探触子を取り囲むように配置されたオイルシールによって保持されている。オイルシールは、マッチングオイルに混入した気泡を除去できるように上面に開口が設けられている。
【0003】
機械走査される部材と固定部材との間に空気が入らないように液体で満たす技術が特許文献2に開示されている。特許文献2に開示の装置は、水平方向に2軸走査することができる二次元走査ステージと、ステージ上に設けられたウエハに上方から光を投影するための投影光学系を有する投影露光装置である。この装置にはさらに、ウエハ表面と投影光学系の下面との間を液体で満たすための液体供給装置が設けられ、液体供給ノズルと液体回収ノズルによりウエハ表面と投影光学系の下面との間に液体が供給される。ウエハが移動すると、供給された液体が出ていき、空気が入ってしまうため、常に液体が供給され続けている。また、ウエハの移動方向によって空気の入り込む位置が異なるため、供給ノズル及び回収ノズルはステージの移動方向にそれぞれ対応した位置に複数設けられている。その複数の供給ノズルのうち、ウエハの移動方向に応じたノズルから液体が供給されるようになっている。また、液体供給装置は液体の供給量の制御手段を有しており、それぞれの位置の供給ノズルはウエハの移動速度によって供給量が調整される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−103913号公報
【特許文献2】国際公開第99/049504号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では超音波装置のマッチングオイルの供給量は、走査する速度に関係なく一定である。探触子を停止状態から走査速度に達するまでの加速時、あるいは走査速度から停止するまでの減速時に働く加速度により、マッチングオイルの液面に傾きが発生する。液面が傾くことで液面が低下して探触子と保持板との間に空気が入ってしまう。加速度が高くなるほど、この液面が低下する量が大きくなる。
また保持板近傍のマッチングオイルは、保持板との流体摩擦によって流れが生じるため、一定の速度で走査する定速時であっても液面の低下が生じる。この現象によっても探触子と保持板との間に空気が入ってしまう。液面が低下する量は、速度が高くなるほど大きくなる。しかし、特許文献1に開示の超音波装置は、オイルの供給量に関しては詳細に記述されていない。そのため、走査方向や走査速度によっては過剰に供給することになり、開口部からの漏れが多くなってしまうことがあった。
【0006】
特許文献2に開示された液体供給装置では、供給ノズル一つにつき、速度変化に応じて液体の供給量を変化させるパターンが一つしかない。したがって、一つの供給口で対応し
ようとした場合、液面低下が大きい条件に設定しなければならない。そのため、走査方向や、加速時、定速時などの走査状態によっては必要以上にマッチングオイルを供給することになり、シール材の上面の開口部から漏れるマッチングオイルの量も多くなる。それに伴い、多量のマッチングオイルが装置内部に飛散してしまうという課題があった。飛散したマッチングオイルは、装置内部を汚してしまう原因になっていた。また飛散する量が多いほどオイルタンク内のオイルの減少が多く、その分オイルの補充も多いため経済的ではなかった。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、探触子の走査に伴う音響整合剤の供給量を適切に制御することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は以下の構成を採用する。すなわち、被検体を保持する被検体保持手段を介して前記被検体からの音響波を受信する探触子と、前記被検体保持手段と前記探触子との間に音響整合剤を保持する空間を形成する音響整合剤保持手段と、前記探触子を前記被検体保持手段の表面において第一の方向および前記第一の方向に交差する第二の方向に走査させる走査手段と、所定の供給量パターンを用いて前記空間に前記音響整合剤を供給する供給手段と、を有し、前記供給手段は、前記探触子が前記第一の方向に走査する場合と前記第二の方向に走査する場合とで異なる供給量パターンを用いることを特徴とする音響波取得装置である。
【0009】
本発明はまた、以下の構成を採用する。すなわち、被検体を保持する被検体保持手段を介して前記被検体からの音響波を受信する探触子と、前記被検体保持手段と前記探触子との間に音響整合剤を保持する空間を形成する音響整合剤保持手段と、を有する音響波取得装置の制御方法であって、走査手段が、前記探触子を前記被検体保持手段の表面において第一の方向および前記第一の方向に交差する第二の方向に走査させる走査ステップと、供給手段が、所定の供給量パターンを用いて前記空間に前記音響整合剤を供給する供給ステップと、を有し、前記供給ステップでは、前記走査ステップにおいて前記探触子が前記第一の方向に走査された場合と前記第二の方向に走査された場合とで異なる供給量パターンが用いられることを特徴とする音響波取得装置の制御方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、探触子の走査に伴う音響整合剤の供給量を適切に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1における光音響装置の概要構成を示した図である。
【図2】実施例における光音響装置の斜視図である。
【図3】探触子ユニットの斜視図である。
【図4】測定時の探触子ユニットの駆動方法の一例を示す図である。
【図5】水平走査時の液面の状態を示す図である。
【図6】垂直走査時の液面の状態を示す図である。
【図7】実施例1における供給量パターングラフである。
【図8】実施例1における供給量パターングラフの別の例である。
【図9】実施例2における光音響装置の概要構成を示した図である。
【図10】水平走査時の走査方向の違いによる液面の状態を示す図である。
【図11】実施例3における加速度に応じた供給量パターンのグラフである。
【図12】実施例3における供給量の変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に図面を参照しつつ、本発明の好適な実施の形態を説明する。ただし、以下に記載されている構成部品の寸法、材質、形状及びそれらの相対配置などは、発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものであり、この発明の範囲を以下の記載に限定する趣旨のものではない。
【0013】
以下の実施例においては、探触子を用いて人体等の被検体を走査する光音響装置を例として説明を行う。光音響装置においては、被検体に光を照射されると、光音響効果によって被検体から音響波(典型的には超音波)が発生する。なお音響波とは、音波、超音波などと呼ばれる弾性波を含むものであり、光音響効果により発生した音響波は光音響波や光超音波と呼ばれる。そして、音響波を受信して電気信号に変換する受信素子を含む探触子に対して、本発明が適用される。光音響装置は、変換後の電気信号から、被検体内部の初期音圧分布やそれに基づく光吸収係数分布や物質濃度分布等の特性情報を取得し、被検体内部を画像化する。かかる光音響装置は、探触子により音響波を受信する音響波取得装置と呼べる。
したがって本発明は探触子を用いる他の音響波取得装置にも適用可能である。例えば、探触子から被検体に送信された音響波(超音波)が被検体内部で反射したエコー波を受信して被検体内部を画像化するような音響波取得装置(超音波装置)も対象となる。
【0014】
<実施例1>
図1は、本実施例における音響波取得装置の例として光音響装置の概要の構成を示した図である。図2は光音響装置の斜視図である。
探触子ユニット16は、水平方向に走査する水平走査機構18a1、及び垂直方向に走査する垂直走査機構18a2の2軸からなる探触子走査ユニット18aに取り付けられており、固定された保持板17の表面に沿って2次元的に走査可能である。保持板17は、探触子がその表面で走査されるものであり、本発明の被検体保持手段に相当する。探触子走査ユニット18aは、本発明の走査手段に相当する。水平方向は本発明の第一の方向に、水平方向と交差する垂直方向は本発明の第二の方向に相当する。測定対象となる被検体は、保持板17と、保持板17に対向して設けられた可動保持板51とで圧迫保持される。保持板17は、固定プレート55に固定され、可動保持板51は、可動プレート52に固定されている。固定プレート55、可動プレート52は、ガイドロッド53とリニアガイド54により平行移動自在に設けられている。被検体の測定部位を保持板17と保持板51との間に入れて、図示していない圧迫機構、例えば、台形ネジと、かさ歯車とによる機構や、エアシリンダ機構などで保持板17と可動保持板51の間隔を制御し、被検体を保持する。保持板17、可動保持板51を挟んで、探触子ユニット16の対向する位置には被検体に光を照射するための光学系50が配置されている。光学系50は、探触子走査ユニット18aと同様に水平方向、垂直方向の2軸を有する光学走査ユニット18bにより、2次元的に走査可能である。探触子走査ユニット18a及び光学走査ユニット18bの構成は、モータとボールネジとガイドからなる構成でもよいし、モータとギヤとベルトリンクからなる構成でもよいし、空気シリンダとガイドからなる構成でもよい。探触子走査ユニット18aと光学走査ユニット18bを同期制御することで、被検体を挟んで対向配置させた光源50と探触子ユニット16を常に対向させた位置で走査させることができる。
【0015】
図3は探触子ユニット16の斜視図である。
探触子ユニット16は、被検体から発生する超音波を、保持板17を介して測定する探触子19を備えている。保持板17の材質は、被検体から探触子19までの音響インピーダンスの整合をとるため樹脂が好ましく、特にポリメチルペンテンが好適である。探触子ユニット16は、探触子19の周囲を囲むシール材21を有している。シール材21としては、ゴム、多孔質材(スポンジ)、皮革、樹脂などの材質からなるパッキンを用いることができる。このシール材21により、保持板17と探触子19の間に音響インピーダン
スの整合をとるためのマッチングオイルを保持するための空間22が形成される(図1も参照)。シール材21は、本発明の音響整合剤保持手段に相当する。また、シール材21の上部には、マッチングオイルに混入した空気を逃がすための開口45が形成されている。探触子ユニット16には、マッチングオイルを空間22内に供給するための供給口23が形成され、タンク24に収納されているマッチングオイルを供給手段であるポンプ25で配管29を経て供給する。マッチングオイルは脱気したものが好ましい。これらマッチングオイルを供給するためのシステムは、本発明の供給手段に相当する。本実施例では、音響インピーダンスを整合させるための音響整合剤としてマッチングオイルを使用するので、以下の記載ではマッチングオイルについて述べる。ただし音響整合剤としては、ひまし油等のマッチングオイル以外にも、水、音響ジェルなどを用いることができる。
【0016】
タンク24、不図示の配管29の材質には、ポリエチレン、ステンレスなどが適用できる。ただし、絶縁体のマッチングオイルを循環させると静電気を帯電する場合があるので、ステンレス材質のタンクにアース線を付けてグランドに落とせる構成が好ましい。また、タンク24には、異常な液漏れでマッチングオイルが減った場合に感知する、図示しない液面監視手段が具備されている。液面を監視する手段としては、フロー式、光学式、超音波式など、マッチングオイルが絶縁体であっても感知できるものが良い。
【0017】
図1に示したように、タンク24から送出されたマッチングオイルは、ポンプ25の駆動により、温度制御系26、フィルタ28を経て、供給口23から空間22に供給される。温度制御系26は、送出されるマッチングオイルの温度を測定する機能と、所定の温度になるようマッチングオイルを加熱又は冷却する機能を具備している。これにより、マッチングオイル、探触子19などの温度条件の変動が抑制されるので、安定した測定をすることが出来る。フィルタ28は、マッチングオイルが循環する間で混入したゴミが空間22に入り込まないように、ゴミを除去する機能である。例えばメッシュ構造のフィルタを用いることができる。これにより、ゴミによる測定ノイズの発生や、探触子19及び保持板17の傷つきを抑制することができる。
【0018】
測定時には、保持板17、探触子19、シール材21で形成された空間22(少なくとも、保持板17と探触子19の間の部分)がマッチングオイルで満たされるようにする。探触子ユニット16には探触子19の上方に液面センサー20が設けられている。液面センサー20がマッチングオイルを検知した場合、保持板17と探触子19の間にマッチングオイルが満たされていると判断できる。
保持板17の下部には、シール材21から空間22の外に漏れ出たマッチングオイルを回収する回収手段としての回収系48が設けられている。回収系48は、保持板17を伝い落ちるマッチングオイルを受ける受け容器48a(図2参照)と、受け容器48aとタンク24を接続する配管とから構成される。測定中に、シール材21から漏れ出たマッチングオイルは、回収系48で回収しタンク24に循環させる。なお、空間22の形状及び体積は、探触子ユニット16の移動に伴いマッチングオイルが漏れても、測定開始から終了までの間は保持板17と探触子19の間を十分に満たす程度のマッチングオイルが残るように設計されている。
【0019】
次に、本実施例の装置による測定及び制御方法について説明する。
以下で述べる処理は、図1の制御部100によって実行されるものである。制御部100は、マイクロコントローラ又はコンピュータで構成され、駆動ユニット18a、18b、ポンプ25、温度制御系26などの制御を担う制御手段である。また、マッチングオイル監視手段の検知結果、温度制御系26で測定したマッチングオイル温度などの情報は制御部100に入力され、マッチングオイルの供給や温度の制御に利用される。
測定前準備として、まず制御部100はマッチングオイル監視手段の検知結果に基づき、空間22にマッチングオイルが満たされているか否かを確認する。空間22にマッチン
グオイルが満たされていることが確認されれば、測定前準備は完了である。空間22にマッチングオイルが入っていないと確認された場合、制御部100はポンプ25を駆動し、空間22にマッチングオイルを供給する。その後、制御部100は、マッチングオイル監視手段の検知結果から、空間22内にマッチングオイルが満たされたことを検知したら、ポンプ25を停止する。以上の測定前準備処理によって、保持板17と探触子19の間の空間22を適量のマッチングオイルで満たすことができ、良好な測定を行うための準備が整う。測定時のポンプ25の駆動は後述の水平走査の速度、垂直走査の速度に応じて行われる。
【0020】
図4は、測定時における探触子ユニット16の軌道線図を示している。矢印47は、測定時における探触子ユニット16の移動の軌跡を示している。探触子ユニット16は、測定初期段階において、測定範囲の最上部側端に位置している。測定が開始されると、矢印47に示すように、探触子ユニット16は水平方向に走査しながら1ラインのスキャンを行うと、1ライン下に駆動して水平方向逆向きに駆動しながら次ラインのスキャンを行う。この動作を繰り返し、上から順番に1ラインずつスキャンする。探触子ユニット16が終了位置に到達すると、初期位置に戻る。空間22内のマッチングオイルに気泡が混入していた場合、探触子ユニット16が上から下に駆動するときに開口45から気泡を逃がすことができる。なお、走査方法は、前述のラインごとの走査に限られるものではない。例えば、図4の矢印47bのように測定したい位置に探触子を直接移動させて、停止状態で測定する方法や、移動と停止を繰り返し、停止した時に測定を行うステップアンドリピート方式を取ることもできる。
探触子19は、受信した音響波を電気信号に変換し、画像生成部42へと出力する。画像生成部42は、その信号に基づいて生体内部の情報を表す画像を生成する。なお、音響波信号から生体内部の情報を構成する手法については、従来知られている各種の再構成手法を利用可能である。画像生成部42で生成された画像は表示系43に出力される。
【0021】
次に探触子ユニット16を水平に走査した際のマッチングオイルの液面状態について説明する。
図5は、マッチングオイルを空間22に満たした後に、マッチングオイル供給をしない状態で、探触子ユニット16を水平に走査した際のマッチングオイルの液面状態を示した概略図である。図5(a)は探触子ユニット16が停止している時の状態を示している。図5(b)は探触子ユニット16が一定の速度(V1)で走査している時の状態を示している。図5(c)は探触子ユニット16がV1よりもさらに速い速度(V2)で走査している時の状態を示している。
保持板17との流体摩擦により、保持板17近傍のマッチングオイルは、探触子ユニット16に対して相対的にシール材21の端部B方向に向かって流れる。そのため定速で走査していても、液面が低下して探触子19と保持板17との間に空間ができてしまう。この液面の低下によって生じる空間の体積は探触子ユニット16の速度によって異なり、速度が速いほど大きくなる。つまり、図5において、速度V1のときに液面低下により生じる空間の体積をA1、速度V2のときに液面低下により生じる空間の体積をA2とすると、A1<A2となり、速度により適切なマッチングオイルの供給量が異なる。シール材21の端部B付近に流れたマッチングオイルの一部は、シール材21上方に流れて開口45から漏れる。終了位置から初期位置に移動後に探触子ユニット16と保持板17との間に空気が入っていると、再度測定に入る場合にマッチングオイルが満たされるまで待機しなければならない。それを回避するために、垂直走査においても走査時に空間ができないようにマッチングオイルを供給する。
【0022】
図6はマッチングオイルを空間22に満たした後に、マッチングオイル供給をしない状態で、探触子ユニット16が下から上に走査した際のマッチングオイルの状態を示した概略図である。図6(a)は探触子ユニット16が停止している時の状態を示している。図
6(b)は探触子ユニット16が一定の速度(V1)で走査している時の状態を示している。図6(c)は探触子ユニット16がV1よりもさらに速い速度(V2)で走査している時の状態を示している。
この場合も、保持板17との流体摩擦によってマッチングオイルに流れが生じる。この流れにより定速で走査していても、液面が低下して探触子19と保持板17との間に空間ができてしまう。上方向への走査の場合も、速度V1とV2では液面の低下によって生じる空間の体積C1、C2は異なる。すなわち、より速い速度V2に対応する体積C2の方が大きい。したがって、垂直走査においても速度により適切なマッチングオイルの供給量が異なる。また、水平に速度V1で走査した場合の空間の体積A1と、垂直に速度V1で走査した場合の空間の体積C1の空間の体積も異なる。図4の47bのような走査を行った場合でも、探触子ユニット16が測定位置到達後に待機時間を設けることなく測定することができる。また、水平に速度V1で走査した場合の空間の体積A1と、垂直に速度V1で走査した場合の空間の体積C1の空間の体積も異なる。つまり水平、垂直の走査方向と、さらに速度によって液面の低下により生じる空間の体積が異なり、適切なマッチングオイルの供給量が異なる。
【0023】
この異なる供給量に対応するために、制御部100は水平方向に移動した場合の速度に応じたマッチングオイルの供給量パターンと、垂直方向に走査した場合の速度に応じたマッチングオイルの供給量パターンを有している。供給量パターンは、例えばメモリその他の記憶媒体に保持されたテーブルや数値データにより提供されても良い。
図7は供給量パターンをグラフ化したものである。このグラフは走査速度(横軸)と、その速度で走査した場合に保持板17と探触子ユニット16との間のマッチングオイルを維持できる供給量(縦軸)との関係を示している。この供給量パターンは、マッチングオイルの粘度や、シール材21により形成される空間22の形状などから計算されたもの、あるいは実測により最適化されたものが制御部100に記録される。このグラフは一例であり、実際はこれに限られるものではない。走査速度は探触子ユニット16を走査させるための制御部100の処理に基づいているが、速度センサーを設けて、その速度センサーが検知した速度に応じて供給量を制御しても良い。
【0024】
図4における矢印47aの速度がV2である場合は、図7の水平走査の供給量パターンから、D2の供給量のマッチングオイルが供給される。また、終了位置から初期位置に移動する時の垂直走査の速度がV2であればE2の供給量で供給される。マッチングオイルの粘度が高く、加速度による影響が小さい場合は、探触子ユニット16がV2の速度に達するまでの加減速区間においても、速度変化に応じた供給量で制御しても良い。つまり、ある時間での速度がV1の時の供給量はD1となる。図4の矢印47bのように斜めに走査する場合は、水平走査と垂直走査が同時に行われていることになるため、水平走査の速度における供給量と垂直走査の速度における供給量の和を求める等の演算により供給量を求める。斜めの方向は、本発明の第三の方向に相当する。
【0025】
図8は、探触子ユニット16が停止状態においても供給量Hでマッチングオイルを供給するようにさせた供給量パターンの図である。図示したように、水平走査における速度V3以下の場合、および垂直走査における速度V4以下の場合は一律に供給量Hとしている。このように制御することで、停止状態や走査速度が所定の値以下の遅い速度の場合でも供給量Hが確保されるので、マッチングオイルをオーバーフローさせることができ、異物の混入の低減や気泡の除去を行うことができる。ここでは水平走査と垂直走査ともに、図7の供給量パターンにおいて供給量が所定の値H以下となる範囲を一律の供給量としたが、それぞれの供給量パターンごとに所定の値を決定しても構わない。
【0026】
以上の制御により、水平、垂直、斜め走査のいずれの走査に対しても、保持板17と探触子ユニット16との間に常にマッチングオイルを満たすことができる。また走査速度と
して制御部100での処理で用いる値を利用しているため、走査速度を変化させるよりも先にポンプ25の駆動を制御することができる。したがって、液面が下がるよりも先にマッチングオイルが供給されるので、より確実にマッチングオイルを満たすことができる。また、制御部100による制御開始から、実際にポンプ25が駆動してマッチングオイルが供給されるまでの時間差を考慮して設定することもできる。本実施例では水平方向と垂直方向の供給量パターンを設けたが、さらに右方向、左方向、上方向、下方向と細かく供給量パターンを設けても良い。
【0027】
供給量パターンが1つの場合は、探触子19と保持板17との間に生じる空間の体積が大きい方に合わせる。例えば、走査方向と速度による供給量の関係が図7のグラフで示される場合は、水平走査の供給量パターンを、垂直走査の場合にも適用することになる。すなわち、垂直走査をV1の速度で走査する場合、E1の供給量で充分であるのにD1の供給量で供給することになる。供給量の差であるD1−E1の量のマッチングオイルは、探触子ユニット16の上部にある開口45から漏れることになる。
【0028】
しかし、本実施例のように走査の方向と速度に応じてマッチングオイルの供給量を制御することで、探触子ユニット16から漏れるマッチングオイルの量を低減することができる。そのため漏れたマッチングオイルの飛散による装置内部の汚れが低減し、メンテナンスが容易になる。また、マッチングオイルの飛散の低減により、マッチングオイルの回収効率が向上する。マッチングオイルの補充もより少なくてすむためより経済的である。
【0029】
<実施例2>
図9は実施例2における光音響装置の概要構成を示した図である。実施例2では、供給口23に加えて、探触子ユニット16に探触子19を挟んで対向する位置に、もう1箇所の供給口27を設けている。供給口27にマッチングオイルを供給する際には、ポンプ30が駆動される。
図10は探触子ユニット16と液面の状態を示した図である。液面はマッチングオイルを空間22に満たした後に、マッチングオイルを供給しない状態で、探触子ユニット16が水平に走査した際のマッチングオイルの状態を示した概略図である。図10(a)は探触子ユニット16が停止状態での液面を示した図である。図10(b)は、探触子ユニット16が右矢印の方向に走査している時の液面の状態を示した図である。複数の矢印28aは保持板17との流体摩擦によって生じる、探触子ユニット16に対するマッチングオイルの相対的な流れを簡易的に示したものである。図10(c)は、探触子ユニット16が左矢印の方向に走査している時の液面の状態を示した図である。複数の矢印28bは保持板17との流体摩擦によって生じる、探触子ユニット16に対するマッチングオイルの相対的な流れを簡易的に示したものである。
【0030】
実施例2において制御部100は、探触子ユニット16が水平方向右へ移動している場合はポンプ25を駆動させて供給口23からマッチングオイルを供給する。一方、探触子ユニット16が左へ移動している場合はポンプ30を駆動させて供給口27から供給する。つまり、探触子ユニット16の走査方向の前方の供給口からマッチングオイルが供給される。なお、それぞれの供給口に対してポンプ25とポンプ30を設けたが、ポンプを1つにして流路切換弁を設けて制御する構成でも良い。その際の供給量は、実施例1と同様に探触子ユニット16と保持板17をマッチングオイルで満たすことができる量が、移動速度に応じて供給される。
探触子ユニット16が垂直方向に走査する場合は、垂直走査の速度に応じた供給量のマッチングオイルが、供給口23および供給口27から供給される。供給量パターンとして図7のグラフを使用し、移動速度V1の場合、それぞれの供給口からの和がE1となる量が供給される。
【0031】
図10(b)に示すように、探触子ユニット16が右へ走査している時のマッチングオイルは、保持板17により生じる流れ28aの上流側から供給される。また図10(c)に示すように、探触子ユニット16が左へ走査している時のマッチングオイルも、保持板17により生じる流れ28bの上流側から供給される。このように供給口23と供給口27を設けることによって、走査方向の違いによって異なる位置にできる空間に対してマッチングオイルをより適切な供給量で供給することができる。そのため、シール材21から漏れるマッチングオイルも低減するため、マッチングオイルの飛散による装置内の汚れが少なくなり、メンテナンスが容易になる。また、マッチングオイルの飛散の低減により、マッチングオイルの回収効率が向上する。よって、マッチングオイルのタンクへの補充もより少なくてすむためより経済的である。
【0032】
<実施例3>
図11は加速度に応じた供給量パターンを示している。加速時はマッチングオイル全体が加速度に応じた力をオイルシール21より受ける。したがって、加速時のマッチングオイルの挙動は、定速で走査している時の保持板17との流体摩擦によるマッチングオイルの流れの挙動とは異なる。マッチングオイルの粘度が低い場合や加速時間が長い場合はこの影響を受けやすい。加速後の定速での測定や、減速して停止した後の測定に先立って、加速している段階で探触子ユニット16と保持板17との間をマッチングオイルで満たしておくことで、測定にスムーズに移行できる。
本実施例では、探触子ユニット16の加速時における液面の傾きによってできる空間に応じた供給量を供給する。図11に示すように、水平走査において、加速度がS1であればF1の供給量が、S2であればF2の供給量が加速している間供給される。加速度は、探触子ユニット16を加速させる際に、制御部100による演算で求められた値が用いられる。ただし、加速度は探触子ユニット16に加速度センサーを設けて、センサーにより検出された加速度を用いても良い。また、加速後の定速での走査では、速度に応じたパターンで供給を行っても良い。たとえば、S1の加速度で図7のV2まで加速し、その後V2で定速走査する場合は、加速走査では供給量F1でマッチングオイルを供給し、定速走査では供給量D2で供給する。図12は、この場合の供給量の変化を示したものである。時間T1までは供給量F1で供給されている。
【0033】
このように加速時には供給量を増加させて、定速時には供給量を減少させることができる。つまり、加速時と定速時で最適な供給量でマッチングオイルを供給することができる。また実施例1で述べたように、探触子が水平走査と垂直走査を同時に行うことにより斜めに走査する場合は、さらに水平走査での供給量と垂直走査での供給量から演算して供給しても良い。さらには、実施例2のように複数の供給口を設けた場合にも適用できる。そのため、シール材21から漏れるマッチングオイルも低減するため、マッチングオイルの飛散による装置内の汚れが少なくなり、メンテナンスが容易になる。また、マッチングオイルの飛散の低減により、マッチングオイルの回収効率が向上する。よって、マッチングオイルのタンクへの補充もより少なくてすむためより経済的である。
【符号の説明】
【0034】
16:探触子ユニット,17:保持板,18a:探触子走査ユニット,19:探触子,21:シール材,22:空間,23:供給口,25:ポンプ,100:制御部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体を保持する被検体保持手段を介して前記被検体からの音響波を受信する探触子と、
前記被検体保持手段と前記探触子との間に音響整合剤を保持する空間を形成する音響整合剤保持手段と、
前記探触子を前記被検体保持手段の表面において第一の方向および前記第一の方向に交差する第二の方向に走査させる走査手段と、
所定の供給量パターンを用いて前記空間に前記音響整合剤を供給する供給手段と、
を有し、
前記供給手段は、前記探触子が前記第一の方向に走査する場合と前記第二の方向に走査する場合とで異なる供給量パターンを用いる
ことを特徴とする音響波取得装置。
【請求項2】
前記供給量パターンは、前記探触子の走査速度に応じた前記音響整合剤の供給量を表すものである
ことを特徴とする請求項1に記載の音響波取得装置。
【請求項3】
前記供給量パターンにおける前記音響整合剤の供給量は、前記探触子の走査速度が速くなるのに応じて増加する
ことを特徴とする請求項2に記載の音響波取得装置。
【請求項4】
前記供給量パターンにおいて、前記探触子の走査速度が所定の値以下の場合、前記音響整合剤の供給量を一律の値とする
ことを特徴とする請求項3に記載の音響波取得装置。
【請求項5】
前記供給量パターンは、前記探触子の加速度に応じた前記音響整合剤の供給量を表すものである
ことを特徴とする請求項1に記載の音響波取得装置。
【請求項6】
前記供給量パターンは、前記探触子が定速で走査する間は前記探触子の走査速度に応じた前記音響整合剤の供給量を表すものであり、前記探触子が加速または減速する間は前記探触子の加速度に応じた前記音響整合剤の供給量を表すものである
ことを特徴とする請求項1に記載の音響波取得装置。
【請求項7】
前記供給手段は、前記探触子が前記第一の方向および第二の方向のいずれとも異なる第三の方向に走査する場合は、前記第一の方向および第二の方向における前記供給量パターンに基づく演算により前記音響整合剤の供給量を求める
ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の音響波取得装置。
【請求項8】
前記供給手段は、前記空間に前記音響整合剤を供給する複数の供給口を有している
ことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の音響波取得装置。
【請求項9】
前記供給手段は、前記探触子の走査方向の前方の供給口から前記空間に前記音響整合剤を供給する
ことを特徴とする請求項8に記載の音響波取得装置。
【請求項10】
被検体を保持する被検体保持手段を介して前記被検体からの音響波を受信する探触子と、前記被検体保持手段と前記探触子との間に音響整合剤を保持する空間を形成する音響整合剤保持手段と、を有する音響波取得装置の制御方法であって、
走査手段が、前記探触子を前記被検体保持手段の表面において第一の方向および前記第一の方向に交差する第二の方向に走査させる走査ステップと、
供給手段が、所定の供給量パターンを用いて前記空間に前記音響整合剤を供給する供給ステップと、
を有し、
前記供給ステップでは、前記走査ステップにおいて前記探触子が前記第一の方向に走査された場合と前記第二の方向に走査された場合とで異なる供給量パターンが用いられる
ことを特徴とする音響波取得装置の制御方法。
【請求項1】
被検体を保持する被検体保持手段を介して前記被検体からの音響波を受信する探触子と、
前記被検体保持手段と前記探触子との間に音響整合剤を保持する空間を形成する音響整合剤保持手段と、
前記探触子を前記被検体保持手段の表面において第一の方向および前記第一の方向に交差する第二の方向に走査させる走査手段と、
所定の供給量パターンを用いて前記空間に前記音響整合剤を供給する供給手段と、
を有し、
前記供給手段は、前記探触子が前記第一の方向に走査する場合と前記第二の方向に走査する場合とで異なる供給量パターンを用いる
ことを特徴とする音響波取得装置。
【請求項2】
前記供給量パターンは、前記探触子の走査速度に応じた前記音響整合剤の供給量を表すものである
ことを特徴とする請求項1に記載の音響波取得装置。
【請求項3】
前記供給量パターンにおける前記音響整合剤の供給量は、前記探触子の走査速度が速くなるのに応じて増加する
ことを特徴とする請求項2に記載の音響波取得装置。
【請求項4】
前記供給量パターンにおいて、前記探触子の走査速度が所定の値以下の場合、前記音響整合剤の供給量を一律の値とする
ことを特徴とする請求項3に記載の音響波取得装置。
【請求項5】
前記供給量パターンは、前記探触子の加速度に応じた前記音響整合剤の供給量を表すものである
ことを特徴とする請求項1に記載の音響波取得装置。
【請求項6】
前記供給量パターンは、前記探触子が定速で走査する間は前記探触子の走査速度に応じた前記音響整合剤の供給量を表すものであり、前記探触子が加速または減速する間は前記探触子の加速度に応じた前記音響整合剤の供給量を表すものである
ことを特徴とする請求項1に記載の音響波取得装置。
【請求項7】
前記供給手段は、前記探触子が前記第一の方向および第二の方向のいずれとも異なる第三の方向に走査する場合は、前記第一の方向および第二の方向における前記供給量パターンに基づく演算により前記音響整合剤の供給量を求める
ことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の音響波取得装置。
【請求項8】
前記供給手段は、前記空間に前記音響整合剤を供給する複数の供給口を有している
ことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の音響波取得装置。
【請求項9】
前記供給手段は、前記探触子の走査方向の前方の供給口から前記空間に前記音響整合剤を供給する
ことを特徴とする請求項8に記載の音響波取得装置。
【請求項10】
被検体を保持する被検体保持手段を介して前記被検体からの音響波を受信する探触子と、前記被検体保持手段と前記探触子との間に音響整合剤を保持する空間を形成する音響整合剤保持手段と、を有する音響波取得装置の制御方法であって、
走査手段が、前記探触子を前記被検体保持手段の表面において第一の方向および前記第一の方向に交差する第二の方向に走査させる走査ステップと、
供給手段が、所定の供給量パターンを用いて前記空間に前記音響整合剤を供給する供給ステップと、
を有し、
前記供給ステップでは、前記走査ステップにおいて前記探触子が前記第一の方向に走査された場合と前記第二の方向に走査された場合とで異なる供給量パターンが用いられる
ことを特徴とする音響波取得装置の制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−85705(P2013−85705A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228945(P2011−228945)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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