説明

音響装置およびその振動伝達方法

【課題】アクチュエータを振動源に用いて発音する音響装置において、再生音圧の向上と、従来困難であった低周波数領域の再生を可能にする技術を提供すること。
【解決手段】入力信号に基づいて振動を発現するアクチュエータ部300から振動を受け取り振動板7に振動を伝達する振動受動部11に付加荷重体200を配置し、力学的モーメントの増加と低域共振周波数f0の低下を図り、再生音圧の向上と再生周波数の低周波数領域の拡大を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばアクチュエータを振動源とする発音装置に係り、更に詳しくは振動源の振動を振動板に伝達して発音する音響装置およびその振動伝達方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、これまでの発音装置、いわゆる磁石とコイルを用いた動電型スピーカーとは異なる磁歪アクチュエータ等を振動源とした発音装置が提案され、これまでの音響システム、映像装置とは異なる、例えば特許文献1、2のような音響システム、映像装置が市販されてきている。
【0003】
従来、この種のアクチュエータから発音をする振動板への振動伝達は、例えば特許文献3に示される様に振動板の表面に直接、取り付けることで行っている。
【0004】
基本的な取り付け構造は、特許文献3の様なL字型の変位伝達部材で固定する方法が一般的である。すなわち、アクチュエータで発生する振動をL字型の取り付け部に伝達し、この取り付け部から振動板に伝達して発音する構造である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−166027号公報
【特許文献2】特開2010−93769号公報
【特許文献3】特開2006−238575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発音源にアクチュエータを使用した音響装置で、最も課題となるのがアクチュエータから振動板へ振動が伝達されて発音される再生音圧と再生周波数特性である。
【0007】
磁歪アクチュエータ等を用いた音響装置では、1KHz以下の周波数帯域を再生するのが困難とされ、アクチュエータによる発音の再生周波数は一般的に1KHz以上の周波数帯域、すなわち、一般的なスピーカーシステムでミッドレンジ、ツイーターレンジなどと呼ばれる中、高周波数帯域である。
【0008】
そのために、1KHz以下の低周波数帯域の再生を必要とする音響装置の場合は低音用のウーハースピーカー、中音用のミッドレンジスピーカーが必要とされ、広帯域の音響装置を構築する上で煩雑、かつ装置が大きくなる傾向にあり、磁歪アクチュエータ等の小型、軽量の特徴が失われる問題があった。
【0009】
本発明は、上記の問題点を鑑み提案されたもので、低音、中音再生に必要とされる別のスピーカーを用いることなく、アクチュエータ単体で1KHz以下の周波数帯域の再生を可能にし、上記、問題の解決を図るものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1に係る本発明の音響装置は、入力信号に基づいて振動を発現するアクチュエータとその振動を受け取り振動板に伝達する受動部を備える音響装置において、上記受動部は、上記アクチュエータに対する慣性質量要素を備えることを特徴とする。
【0011】
また、請求項2に係る本発明は、請求項1記載の音響装置において、上記慣性質量要素は上記受動部と一体に形成されていることを特徴とする。
【0012】
さらに、請求項3に係る本発明は、請求項1記載の音響装置において、上記アクチュエータは、その振動方向が上記振動板の表面に沿うよう配され、上記受動部は、上記振動板の表面に取着されるとともに、上記アクチュエータから受け取った振動を該取着部から上記振動板に伝達し、上記慣性質量要素は、上記取着部から見て振動受取部より遠く配されることを特徴とする。
【0013】
さらにまた、請求項4に係る本発明は、請求項3記載の音響装置において、上記慣性質量要素は、上記取着部から見て上記アクチュエータの長手方向に延在することを特徴とする。
【0014】
請求項5に係る本発明は、請求項4記載の音響装置において、上記慣性質量要素は、上記アクチュエータの上部を覆うように配置されることを特徴とする。
【0015】
また、請求項6に係る本発明は、請求項1記載の音響装置において、上記アクチュエータは、その振動方向が上記振動板の表面に垂直となるよう配され、上記受動部は、その断面がコ字状に形成され、上記振動板の表面に取着されるとともに、その内側中央で上記アクチュエータの振動を受け取り、上記慣性質量要素は、上記受動部の振動受取部に付加されることを特徴とする。
【0016】
請求項7に係る本発明の振動伝達方法は、アクチュエータに入力信号を与えて振動させ、振動板に取着される受動部に上記アクチュエータの振動を伝達し、上記受動部が受け取った振動を上記振動板に伝達する振動伝達方法において、上記受動部は、上記アクチュエータに対する慣性質量要素を備え、上記受動部と上記振動板の振動作用点における縦波振動と首振り運動を励起し、受け取った振動を上記振動板に伝達することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1〜6記載の本発明では、アクチュエータの振動を受け取り振動板に伝達する受動部に、アクチュエータに対する慣性質量要素を備えることで、受動部と振動板の作用点に働く力学的モーメントを大きくして、中低域の周波数領域の再生音圧レベルの向上と低域側への再生帯域の拡大が図れる。これによって、低音、中音再生に必要とされる別のスピーカーを用いることなく、アクチュエータ単体で1KHz以下の周波数帯域の再生を可能にできる。
【0018】
また、請求項7記載の本発明では、受動部と振動板の振動作用点における縦波振動と首振り運動を励起し、受け取った振動を振動板に伝達することにより、受動部と振動板の作用点に働く力学的モーメントを大きくして、中低域の周波数領域の再生音圧レベルの向上と低域側への再生帯域の拡大が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施の形態および実施例1に係る音響装置について説明するためのもので、コンパクト化した振動伝達装置の構造を示しており、(a)図は正面図、(b)図は(a)図の1B−1B線矢示断面図である。
【図2】図1に示した振動伝達装置における磁歪アクチュエータの構成例を示しており、(a)図は正面図、(b)図は(a)図の2B−2B線矢示断面図である。
【図3】本発明の実施の形態および実施例2に係る音響装置について説明するためのもので、振動伝達装置における付加荷重体の取り付け位置近傍の構造を示しており、(a)図は正面図、(b)図は(a)図の3B−3B線矢示断面図である。
【図4】図1に示した振動伝達装置の等価回路である。
【図5】本発明の効果を確認するために使用した評価板を示す平面図である。
【図6】本発明の比較例とした振動伝達装置の構造を示しており、(a)図は正面図、(b)図は(a)図の6B−6B線矢示断面図である。
【図7】付加荷重に対する再生音圧−周波数特性を示す図である。
【図8】付加荷重に対する再生音圧−低周波数領域特性を示す図である。
【図9】アクチュエータの取り付け振動受動部における頭頂部の加速度レベル−周波数特性を示す図である。
【図10】アクチュエータの取り付け振動受動部における最下部の加速度レベル−周波数特性を示す図である。
【図11】付加荷重体の質量の影響について考察するためのもので、振動作用点周辺の構造を単純化して示す図である。
【図12】実験2の再生音圧−周波数特性を示す図である。
【図13】図1に示した振動伝達装置を用いた音響装置の再生音圧−周波数特性を示す図である。
【図14】本発明の実施例2に係る音響装置を示しており、磁歪アクチュエータの縦型の取り付け例を示す断面図である。
【図15】実施例2の再生音圧−周波数特性を示す図である。
【図16】本発明の変形例2の動電型アクチュエータ部の構成例を示す図である。
【図17】本発明の変形例2の動電型アクチュエータ部の再生音圧−周波数特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明者らは振動伝達現象を種々の検討、解析を重ねた結果、アクチュエータの振動を振動板に伝達して発音する音響装置において、図1、図3に示すように、アクチュエータ100から振動を受け取る振動受動部11に付加荷重体200を取り付ける、換言すれば質量Mを増すことで、1KHz以下の帯域における再生音圧の向上ができることを見出した。
【0021】
すなわち、図1、図3に示した振動受動部11と振動板7の振動作用点70に働く力学的モーメントFを大きくすることで、1KHz以下の帯域の再生音圧が向上することが解った。
【0022】
力学的モーメントFは以下の一般的な式で表される。
F=M×r
M:受動部の質量(振動系の質量)、r:付加荷重体200から振動作用点70までの距離
【0023】
付加荷重体200である錘を受動部11に取り付けたときの質量Mを一定とすれば、付加荷重体200の重心から作用点70までの距離r(ΔH1=15mm、ΔH2=20mm)を大きくすることで力学的モーメントが大きくなり、振動板7への振動伝達力が増大し、再生音圧が向上することが考察される。
【0024】
上記で力学的モーメントを大きくすることで再生音圧の向上に有利であることを推測したが、さらに振動発生部であるアクチュエータ100から受動部11、振動板7への振動伝達経路を詳細に解析した結果、図1に示した構造は図4に示す等価回路で表せる。この等価回路の共振周波数f0は下記式で示され、付加荷重の増加によって共振周波数f0を低下させることが出来、すなわち再生周波数を低域側に拡大が図れるものと推論される。
【0025】
図4に示した等価回路の共振周波数f0は以下の一般的な式で表せる。
【数1】

M:受動部の質量(振動系の質量)、k:振動板のバネ定数
【0026】
なお、振動板7の粘性抵抗μは、付加荷重の効果を確認するにおいては影響しないため、および式を簡単に解釈するために省略をした。
【0027】
上記式から振動板7のバネ定数kを一定と仮定すると、受動部11に質量Mを付加することで低域共振周波数f0が低下し、再生周波数を低周波数側に拡大が可能であり、また付加荷重による再生周波数の調整が可能であることが解る。
【0028】
付加荷重(質量M)を加えることで、力学的モーメントの増加と共振周波数f0の低下を図ることができ、再生音の向上、再生周波数の低周波数側への拡大に効果的であることを見出したが、本発明を実用化する上では、構築する振動伝達装置の形状的制約を受けることがある。
【0029】
ここで提案する構造は、本発明の付加荷重体の取り付け構造を限定するものではないが、一例として付加荷重体をよりコンパクト、力学的モーメントをより大きくできるものとして提案する構造、形態である。
【0030】
図3に示した振動受動部11の上端に付加荷重体200を取り付けて低音まで再生する説明を行ってきたが、質量Mが大きく作用点70までの距離が大きく取れる構造を検討した結果、振動発生部であるアクチュエータ100上部に付加荷重体200を配置することで、コンパクト化を容易にすることが出来る図1に示した構造を見出した。
【0031】
図1から明らかなように、付加荷重体200(錘)を振動受動部11の上部に取り付ける構造にすることで、振動伝達装置の長さ方向を短く出来、コンパクト化が図れる。
【0032】
また、振動発生部であるアクチュエータ100の上部全体を使用することができることから、付加荷重体200の質量Mの範囲を大きく取れ、質量選択の自由度が大きくなるメリットもある。
【0033】
なお、発音装置の構造は、本発明を実用化する上での発音の安定性、装置の信頼性の向上を考慮し、図2に示した磁歪アクチュエータ100を図1に示したように組み込み、アクチュエータ100の振動発生部と振動を受け取る振動受動部11からなる構造にした。
【0034】
本発明は上記構造に限定されるものではなく、特許文献3に示された従来のL字部品等を用いた取り付け方法でも良い。
【0035】
また、本発明ではアクチュエータとして、磁歪アクチュエータを用いて説明を加えているが、アクチュエータとしては特に磁歪アクチュエータに限定するものではなく、磁歪アクチュエータと同様な振動を発生するもの、例えば積層圧電型アクチュエータ等でも良い。
【実施例1】
【0036】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。
【0037】
本発明の実施例1に係る音響装置は、基本的には図1に示すように、振動伝達装置を被振動部に装着した構造になっている。振動伝達装置は、入力信号に基づいて振動を発現するアクチュエータ部300、このアクチュエータ部300から振動を受け取る振動受動部11、および振動受動部11に取り付けられた付加荷重体200を一体化した構造である。この一体化した振動伝達装置の取り付け部を、被振動部である振動板7に例えば取り付けネジ15で固定する。そして、磁歪アクチュエータ100の振動を振動板7へ適格に伝達するために、振動伝達調整ネジ10によるアクチュエータ100の加圧を行う。
【0038】
[磁歪アクチュエータ]
まず、磁歪アクチュエータ100の概略構成を具体的に説明する。
図2は、磁歪アクチュエータ100の概略構造を示しており、(a)図は正面図、(b)図は(a)図の2B−2B線矢示断面図である。
【0039】
磁歪アクチュエータ100は、一例として、図2に示したように、棒状の磁歪素子50を備え、その周囲に、この磁歪素子50に制御磁界を印加するためのソレノイドコイル5が配置されている。ソレノイドコイル5の周囲には、磁石4およびヨーク(図示しない)が配置され、磁歪素子50の一端に駆動ロッド(振動子端)1が連結され、磁歪素子50の他端に固定盤(底部キャップ)6が取り付けられている。これらがシンバル状の内部予負荷バネ3とともに外筐ケース2内に装填され、組み立て後に駆動ロッド1の先端部が外筐ケース2の外側に突出する。
【0040】
磁歪素子50は、その特性としてソレノイドコイル5による制御磁界の大きさに対する応力歪み(長手方向の寸法変化)応答が、予め加えられる圧力により変化することが知られている。図2の磁歪アクチュエータ100では、適正加圧より小さめの予圧を与えるようにバネ3により圧力を加えている。また、この応力歪み応答が広い範囲で線形とみなせる領域を使用するように、磁石4およびヨークなどにより静的磁界が与えられている。
【0041】
磁歪素子50には下記に示す縦、横2mm、長さ約10mmの柱状磁歪素子を用いた。外筐ケース2をアルミニウムで製作し、外径15mm、長さ30mmの大きさの磁歪アクチュエータ100を作成した。
超磁歪素子:ETREMA PRODUCTS INC製のETREMA TERFENOL-D(登録商標、超磁歪材料)
【0042】
この磁歪アクチュエータ100のソレノイドコイル5に、例えば音声信号を入力することにより、駆動ロッド(振動子端)1からそれに応じた振動出力を得ることができる。
【0043】
[アクチュエータ部]
次に、アクチュエータ部300の概略構成を説明する。
【0044】
図1に示したように、磁歪アクチュエータ100を振動板7上に取り付けるとともに、磁歪素子50に適正加圧を与えるため、ケース13に磁歪アクチュエータ100を装填してアクチュエータ部300を構成する。
【0045】
ケース13は、その外形が角柱状であって、その底部にはネジ留めを可能とする貫通穴を有する脚部をその両側にそれぞれ備える。ケース13の長手方向の一面(前面)には丸穴が開けられている。ケース13の内部は円筒状にくり抜かれており、この内部に後面から磁歪アクチュエータ100を装填する。このとき、磁歪アクチュエータ100の駆動ロッド1の先端部(加振点)1aがこの丸穴から外側に突出する。磁歪アクチュエータ100の後部にコイルバネ14、圧縮板16を挿入し、固定板17を取り付けてケース13の後面とする。固定板17の中央にはネジ穴が切られており、振動伝達調整ネジ10が螺合するように挿入される。この振動伝達調整ネジ10を回して固定板17を加圧することにより、コイルバネ14を介して磁歪アクチュエータ100が加圧され、バネ3とともに磁歪素子50に適正加圧が与えられる。
【0046】
なお、ここではアクチュエータ部300から振動板7への振動を伝達する際の、磁歪アクチュエータ100への適正加圧は、振動伝達調整ネジ10を調整して10N/mmになるよう設計、製作した。
【0047】
このように構成されたアクチュエータ部300は、振動受動部11とともに振動板7に取り付けられる。
【0048】
前述のようにアクチュエータ部300の底部には、振動板7への取り付け用に脚部が備わり、両側の脚部にはそれぞれ少なくとも2個の貫通穴が設けられている。振動板7の対応する位置にはネジ穴が切られており、取り付けネジ15で取り付けられる。
【0049】
ここでは、振動板7にネジ穴が切られているものとして説明するが、逆にアクチュエータ部300の脚部にネジ穴が切られていて、振動板7の対応位置には貫通穴が設けられ図面下方よりネジ留めしてもよいし、両者とも貫通穴としてアクチュエータ部300と振動板7とを鋲留めしてもよい。もちろん、接着などこの他の固着方法が用いられてもよい。
【0050】
アクチュエータ部300の駆動ロッド1の先端部1aが振動受動部11の端面に当接するように、振動受動部11が振動板7上に取り付けられる。
【0051】
[振動受動部]
振動受動部11は、その外形が角柱状であって、その底部にはネジ留めを可能とする貫通穴を有する脚部をその両側にそれぞれ備える。アクチュエータ部300の取り付けと同様に、振動板7の対応する位置にはネジ穴が切られており、取り付けネジ15で取り付けられる。
【0052】
図1に図示したように、磁歪アクチュエータ100の長手方向、つまり振動方向を、振動板面に沿って配しており、振動板7上にアクチュエータ部300を取り付けたときに、その全高は低く抑えられるので、振動板7を含む機器の低背化に寄与する。また、振動受動部11上に設ける付加荷重体200のサイズは、例えば長さΔL=40mm程度、幅ΔW=15mm程度、厚さΔD=4mm程度であり、付加荷重体200を設けることによるサイズの増大は最小限にできる。
【0053】
さらに、アクチュエータ部300前方の取り付け位置と振動受動部11の取り付け位置とが接近して配置される構成であるので、この磁歪アクチュエータ100の適正加圧を与えるために振動伝達調整ネジ10を調整したときに、振動受動部11を押圧する力によりアクチュエータ部300と振動受動部11の両頭頂部間が開くことが少なく、振動板7が比較的に薄い、あるいは強度が小さい材質であっても振動伝達が良好になされる。
【0054】
音声信号を磁歪アクチュエータ100に与えることにより、磁歪アクチュエータ100が振動し、アクチュエータ部300の駆動ロッド1の先端部1aからその振動が振動受動部11に伝達される。その伝達された振動は、さらに振動板7に伝達され、最終的に振動板7から音波として出力される。
【0055】
振動受動部11が振動板7に取り付けられた位置を振動作用点70とし、磁歪アクチュエータ100の振動がこの作用点70における縦波振動(剪断方向、振動板面に沿う方向)と回転振動とに寄与する。
【0056】
振動板面に沿う縦波振動は、振動板7内部を伝搬し、振動板材料に応じて定まるポアソン比に応じて振動板各部で横波振動に変換され、振動板7を加振する。よく知られているように、縦波振動は横波振動に比べて材料内部を遠方まで伝搬するので、振動板7が平面でなくともその隅々まで効率よく加振することができる。
【0057】
一方で、振動作用点70に作用する回転振動は、振動受動部11が首振り運動のような動作となり、振動板7が可撓体であれば、振動板7を撓ませて振動させ、結果的に横波振動のような振動を励起する。
【0058】
この縦波振動と回転振動とを比較したとき、どちらがより望ましいかは、最終的に音響出力として得られるべき結果に依存し、特に振動板7の材質、形状、アクチュエータ部300の取り付け位置などに影響を受けるが、本発明の目的である再生帯域の拡大を達成するためには、いずれの振動についてもその低音域への伝達効率の向上が望まれる。
【0059】
[評価板]
次に、本発明の効果を確認するために使用した評価板について説明する。
【0060】
下記に示すアクリル板を評価板23として用いて実験を行い、確認を行った。
アクリル板:アクリライト(登録商標)L(三菱レイヨン社製)
板厚:3mm
大きさ:300mm×300mm
【0061】
なお、アクチュエータ部300と振動受動部11の取り付けは、図5にハッチングを付して示す場所とした。すなわち、アクチュエータ部300の長手方向が評価板23の一辺に沿い、かつ中心軸が一辺から20mm内側の距離である。事前の実験により、このような振動板周辺近傍の位置に取り付けても振動板全体が加振できることを確認したので、敢えて周辺近傍位置に取り付けてみている。
【0062】
この評価板23にアクチュエータ部300や振動受動部11などを取り付け、磁歪アクチュエータ100に測定信号を与えて、評価板23から出力された音圧の周波数特性を測定し評価を行う。その音圧周波数特性測定は下記条件で測定した。
条件:入力1W、測定距離1m(振動板中央から垂直方向に)
【0063】
上記のように説明したアクチュエータ部300、振動受動部11を評価板(振動板7)23の所定位置に取り付け、以下に説明する各種の実験によりその効果を確認した。
【0064】
実験では、振動受動部11に取り付ける付加荷重体200の質量をパラメータとして、その音圧周波数特性および振動受動部11各部の振動加速度周波数特性を測定した。
【0065】
このとき、比較対象として、図6のように図1と同様な構造およびサイズの振動伝達装置を構成し、付加荷重体200を取り付けない状態での各周波数特性を用いた。ここで、振動受動部11の高さΔH=20mm、幅ΔW=15mmである。また、振動受動部11自体の質量は17gであった。
【0066】
[実験1]
付加荷重体200の質量を、0g、10g、15g、30g、40gと変化させたときの再生音圧−周波数特性を測定した。
【0067】
付加荷重0g、30gの再生音圧−周波数特性を示す図7において、650Hz、1.1KHz、1.7KHzなどに顕著なピークが現れているが、これは僅かに音圧レベルの違いがあるものの、そのピーク周波数はほとんど変化していない。これらは評価板の固有振動モードに相当すると考えられる。
【0068】
付加荷重体200の質量の影響が大きく表れているのが、200〜400Hzを含む帯域である(図8参照)。質量が0gのときの特性では、そのピークが290Hzに僅かに現われているが、付加荷重の増加と共に250Hzまで低下し(図8中、矢印で示す)、再生音圧レベルが15dB程度の上昇がみられ、低周波数領域の再生の向上が図られることが確認された。
【0069】
付加荷重の効果は加重増加と共に大きくなるが、本実験では30gが最大で、40gにおいては減少する結果であった。この現象は使用するアクチュエータと振動板の大きさ、ヤング率等の物性に影響されるものと考察され、実用化においては付加荷重の最適化が必要と推測される。
【0070】
付加荷重体200の質量Mを上記のように変化させたときの振動受動部11の振動加速度−周波数特性を測定した。振動受動部11の前面、つまりアクチュエータ部300により加振される面の反対側での頭頂部と最下部の2点についてレーザー加速度計で測定した。振動受動部11の頭頂部での加速度レベル−周波数特性を図9に、最下部での加速度レベル−周波数特性を図10にそれぞれ示す。
【0071】
図9において同様に中低域に着目してみると、基準特性、つまり質量が0gのときの特性では400Hzに見られるピークが、付加荷重体200の質量Mを増していくにしたがって、250Hz、200Hz、100Hzと低下していく様子が確認できる(図9中、矢印で示す)。
【0072】
そして、図10においても、同様にピーク周波数の低下が観測された(図10中、矢印で示す)。
【0073】
なお、荷重30g、40gはともに100Hzであるが、これは測定に使用したレーザー加速度計の周波数分解能が50Hzであったため、ともにピーク周波数が100Hzであるように見えるが、その加速度レベルを加味して評価すると、この実験系における最適な効果条件が30gと、この測定からも推測される。
【0074】
これらの測定データから、振動受動部11がアクチュエータ部300により加振され、振動作用点70における縦波振動と首振り運動(回転振動)が励起されたと解釈される。
【0075】
この付加荷重体200の質量Mの影響を考察する。
振動作用点70周辺の構造を単純化して図11に示す。振動板7上に振動受動部11が取り付けられ、その接合部を作用点70とする。アクチュエータ部からの振動が印加される位置を、作用点70からaの高さとし、振動受動部の全長をb、付加荷重体200の重心までの高さをcとする。
【0076】
まず、付加荷重体(質量M)200を取り付けないときの作用点70に発生する力を導出する。このとき、振動受動部11は片持ち梁として解釈できるので、作用点70には水平反力としてF、モーメントの反力としてF×aが発生する。振動受動部11や振動板7が剛体として見なせれば、アクチュエータ部からの振動は作用点70においてこれらの力がそのまま作用すると考えられる。
【0077】
しかし、特に振動板7が可撓体であると、そのコンプライアンスにより振動受動部11が首振り運動をする。振動受動部11の加振点より上部(長さb−aの部分)は、微小ではあるが質量成分として見ることができるので、図4に示した等価回路で説明されるような機械的共振系が構成される。図4の等価回路の共振周波数f0は前述したように以下の一般式で表せる。
【数2】

M:振動系の質量、k:バネ定数(コンプライアンスの逆数)
この共振周波数が図9、図10に現れた約400KHzのピークに相当する。
【0078】
次に、付加荷重体(質量M)200を共振受動部の上部に取り付けた場合を考える。前述の微小質量成分と同様に考えれば、作用点70を中心とする慣性モーメントはM×cで表され、付加荷重体200の質量Mの増大に応じてその共振周波数が低下する。
【0079】
図7の音圧周波数特性では、前述もしたように、付加荷重の増大に伴うピーク周波数の低下とともに、出力音圧レベルは付加荷重が30gのときが最大で、その前後では音圧レベルがそれよりも低下している。これについて考察する。
【0080】
振動受動部11の加振点をアクチュエータ部が加振したとき、付加荷重200は慣性質量とみなせ、その慣性モーメントはM×cで表される。より厳密には上述のように振動受動部11の加振点より上部(長さb−aの部分)も質量を持つので、これらをまとめて慣性質量要素と考えられる。慣性質量は機械系のイナータンスとして物体の運動のしにくさを表し、共振周波数より高い周波数では付加荷重体200および振動受動部11との接合点は振動しにくくなる。共振周波数では小さい加振力でも大きな振動となり、共振周波数より低い周波数では加振力Fに応じた首振り運動および水平振動をする。
【0081】
アクチュエータ部の機械インピーダンスが十分に大きければ、付加荷重200を過度に大きくしても、十分に振動受動部を加振することができる。しかし、実際は有限の機械インピーダンスであり、駆動力の限界もあるので、付加荷重200が過度に大きくなると、駆動しきれなくなり、結果的に音響出力に十分寄与できなくなると推察される。
【0082】
さて、ここまでの実験結果と考察をまとめると、振動受動部11に付加荷重200を付加していくとその共振周波数が低下していき、そのあたりの帯域での出力音圧レベルが増加する。ただし、付加荷重200を過度に大きくすると、出力音圧レベルの改善度が低下する。
【0083】
[実験2]
図11において、付加荷重体(質量M)200の重心位置の高さをcとし、作用点70を中心とする慣性モーメントはM×cで表されると説明した。その質量Mを増大するとこの慣性モーメントが大きくなり、機械共振系の共振周波数が低下することは実験1で確認した。この慣性モーメントの式によれば、直接的にこの質量Mを大きくする代わりに重心までの距離を長くすることも有効と考えられる。
【0084】
図3のように振動受動部11の前面に質量30gの付加荷重体(質量M)200を取り付ける。このとき、付加荷重体(質量M)200の取り付け高さを変えてその音圧周波数特性を測定した。図12において、応答特性Aは付加荷重体(質量M)200を取り付けなかったときの特性、特性Bは図3のBの位置に取り付けたときの特性、特性Cは図3のCの位置に取り付けたときの特性を表す。
【0085】
図12の特性を比較すると明らかなように、付加荷重体200と取り付け距離(c)の増加による慣性モーメントが増加し、その効果により、中低周波数領域の再生周波数の音圧レベルが大きく向上することが確かめられた。
【0086】
[コンパクト化したアクチュエータ部]
上述した実験および考察から、外形寸法の大型化を極力抑えることが可能な振動伝達装置を用いた音響装置を考案した。その一例を図1に示す。
【0087】
振動板7上にアクチュエータ部300と振動受動部11とを取り付けることはこれまでと同様であり、付加荷重体200の形状が大きく異なる。
【0088】
付加荷重体200として扁平な板状金属を使用し、その端部を振動受動部11の上端に取り付ける。付加荷重体200はアクチュエータ部300の長手方向に延在し、取り付け後、付加荷重体200はアクチュエータ部300に接触しない位置に配される。
【0089】
このような構成とすることにより、付加荷重体200の質量Mが同じであっても、その重心位置が振動作用点70よりもアクチュエータ部300の後方に向けて後退するので、付加荷重体200の重心までの距離が長くとられ、慣性モーメントが大きくなる。
【0090】
図6に示した発音装置の大きさ(幅約15mm、長さ約40mm)を保ち、高さのみ変化させたことになる。錘(付加荷重体200)の質量Mを30gとするとその高さは4mmで、すなわち図6の発音装置の高さのみ約4mmの伸長とすることで済み、装置のコンパクト化が図れた。
【0091】
再生音圧−周波数特性を図13に示す。図13から明らかなようにコンパクト化が図られた構造であっても、実験1、2と同様に中低域の周波数領域の再生音圧レベルの向上と低域側への再生帯域の拡大が図られている。
【実施例2】
【0092】
先の実施例1では、アクチュエータ部300の振動方向を振動板7の表面に沿うように配置して全体の低背化を図ったが、ここでは、アクチュエータ部300を振動板7に垂直に立てて設置した例を示す。
なお、実施例1と同様の構成部材については同じ符号を振り、その説明は省略する。
【0093】
図14のようにアクチュエータ部300を振動板7上に垂直に立てた状態で、コ字状の縦型取り付け枠201を重ねて取り付ける。つまり、アクチュエータ部300の駆動ロッド1の先端部1aが、縦型取り付け枠201の内側中央に当接する状態とする。
【0094】
縦型取り付け枠201の高さは、アクチュエータ部300の全長より僅かに小さめとする。縦型取り付け枠201を振動板7上に取り付けるために、その端部には取付け脚部19が設けられており、取付け脚部19には貫通穴がそれぞれに開けられている。
【0095】
図14では、振動板7の対応する位置にはネジ穴が切られており、取付け脚部19の貫通穴とそのネジ穴とがネジ20により固定される。このとき、ネジ20の頭頂部と取付け脚部19との間にコイルバネ21が挿入されており、ネジ穴22により締め付け具合を調整できるようになっている。この締め付け具合の調整により、結果的にアクチュエータ部300に適正加圧を与える役目を果たす。
【0096】
この状態で、アクチュエータ部300の駆動ロッド1の先端部1aが振動すると、縦型取り付け枠201の内側中央からその振動が伝達され、さらに取付け脚部19(振動作用点)から振動板7に伝達され、最終的に振動板7の各部から音響出力が得られる。
【0097】
試作では、この縦型取り付け枠201は厚さt=1.6mmの短冊状鉄板を折り曲げて形成している。板厚を変化させてこれ自体の強度を変えてみたが、その音響出力への影響は小さかった。ここで、図14に示すように、縦型取り付け枠201の上辺中央に、質量200gの付加荷重体200を取り付けてみた。
【0098】
図15に、付加荷重体200を取り付けないときの出力音圧周波数特性(特性D)と、付加荷重体200を取り付けたときの出力音圧周波数特性(特性E)とを示す。
【0099】
図15から明らかなように、付加荷重なし(特性D)に比較し、付加荷重あり(特性E)は再生音圧の向上と低周波数領域の再生拡大もなされ、実施例1と同様に、縦型取り付け方法においても受動部の質量増加による効果の有効性が確認された。
【0100】
また、この構成においても、付加荷重体200の質量Mを過度に大きくすると、出力音圧レベルが低下してしまうことが確認されている。したがって、実施例1同様に、中低音域において出力音圧を最大化するために、付加荷重体200に最適質量があることを確認した。
【0101】
[変形例1]
上述の実施例1および2では、アクチュエータとして、磁歪アクチュエータを用いて説明したが、アクチュエータとしては特に磁歪アクチュエータに限定するものではなく、磁歪アクチュエータと同様な振動を発生するもの、例えば積層圧電型アクチュエータ等でも良い。
【0102】
また、実施例1および2では、付加荷重体200を振動受動部11または縦型取り付け枠201に取り付ける構成としたが、これに限るものではない。例えば実施例1の場合、付加荷重体200を一体構造とした振動受動部11としても良い。つまり、振動受動部11の横断面がL字状に形成され、その重心が振動作用点70から見て加振点1aより上方に、つまり離れるように位置するよう構成されればよい。
【0103】
実施例2の場合も同様であり、付加荷重体200を、例えば鋳造または鍛造により一体構造とした縦型取り付け枠201を形成し、その重心が振幅作用点から見て加振点より上方に、つまり離れるように位置するよう構成されればよい。
すなわち、いずれの場合も、アクチュエータ部300の加振点において慣性質量要素と見なせるよう集中的に質量が付加されたものであれば、同様の作用効果を奏する。
【0104】
[変形例2]
図16に示すように、コイルと磁石から構成されるいわゆる動電型アクチュエータを試作し、実施例2と同様に付加荷重20gを取り付け、効果を確認した。
【0105】
この動電型アクチュエータ部400は、有底円筒状の軟磁性材からなるヨーク402と、このヨーク402の底部に設けられた円柱状の磁石401と、ヨーク402の外周壁上方内周面と磁石402との間の磁気ギャップ内に一端部が配置されたボイスコイル403およびボイスコイルボビン404と、このボイスコイルボビン404とヨーク402の上部との間に設けられたダンパー405とを備え、このダンパー405によってボイスコイルボビン404は振動可能に支持されている。
【0106】
図16のように上記動電型アクチュエータ部400に、コ字状の取り付け枠406を重ねて取り付ける。つまり、動電型アクチュエータ部400におけるボイスコイルボビン404の上端が、取り付け枠406の内側中央に当接する状態とする。
【0107】
上記取り付け枠406を振動板7上に取り付けるために、その端部には取付け脚部19が設けられており、取付け脚部19には貫通穴がそれぞれに開けられている。図16では、振動板7の対応する位置にはネジ穴が切られており、取付け脚部19の貫通穴とそのネジ穴とがネジ20により固定される。このとき、ネジ20の頭頂部と取付け脚部19との間にコイルバネ21が挿入されており、ネジ穴22により締め付け具合を調整できるようになっている。この締め付け具合の調整により、結果的に動電型アクチュエータ部400に適正加圧を与える役目を果たす。そして、取り付け枠406の上辺中央には、例えば質量200gの付加荷重体200を取り付ける。
【0108】
この状態で、動電型アクチュエータ部400のボイスコイルボビン404が振動すると、取り付け枠406の内側中央からその振動が伝達され、さらに取付け脚部19(振動作用点)から振動板7に伝達され、最終的に振動板7の各部から音響出力が得られる。
【0109】
この動電型アクチュエータを用いた音響装置の再生音圧−周波数測定結果を図17に示す。付加荷重なし(特性F)に比較し、20gの付加荷重体200を取り付けた場合(特性G)、低周波数領域が図中、矢印で示す様におよそ、200Hzほど再生帯域が拡大していることが確認された。
【0110】
従って、本発明によれば、入力信号に基づいて振動を発現する振動源の振動を受け取り、振動板に伝達する受動部に、振動源に対する慣性質量要素を設けたことで、受動部と振動板の作用点に働く力学的モーメントを大きくして、中低域の周波数領域の再生音圧レベルの向上と低域側への再生帯域の拡大が図れる。これによって、振動源にアクチュエータを用いた場合、低音、中音再生に必要とされる別のスピーカーを用いることなく、アクチュエータ単体で1KHz以下の周波数帯域の再生を可能にできる。
【産業上の利用可能性】
【0111】
アクチュエータを用いて発音する音響システムの分野において、本発明の音響装置を適用することで、1KHz以下の周波数領域の再生音圧を向上、低域側の再生帯域の拡大が図れ、従来のアクチュエータを用いた音響システムで用いられた低音再生用のスピーカーを不要とする新音響システムの開発が可能になる。
【符号の説明】
【0112】
1 駆動ロッド(振動子端)
1a 駆動ロッドの先端部(加振点)
2 外筐ケース
3 内部予負荷バネ
4 磁石
5 ソレノイドコイル
6 固定盤
7 振動板
8 取り付けネジ
10 振動伝達調整ネジ
11 振動受動部
13 ケース
14 コイルバネ
15 取り付けネジ
16 圧縮板
17 固定板
19 取付け脚部
20 ネジ
21 コイルバネ
22 ネジ穴
23 評価板
50 磁歪素子
70 振動作用点
100 磁歪アクチュエータ
200 付加荷重体
201 縦型取り付け枠
300 アクチュエータ部
400 動電型アクチュエータ部
401 磁石
402 ヨーク
403 ボイスコイル
404 ボイスコイルボビン
405 ダンパー
406 取り付け枠


【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力信号に基づいて振動を発現するアクチュエータとその振動を受け取り振動板に伝達する受動部を備える音響装置において、
上記受動部は、上記アクチュエータに対する慣性質量要素を備えることを特徴とする音響装置。
【請求項2】
請求項1の音響装置において、
上記慣性質量要素は上記受動部と一体に形成されていることを特徴とする音響装置。
【請求項3】
請求項1の音響装置において、
上記アクチュエータは、その振動方向が上記振動板の表面に沿うよう配され、
上記受動部は、上記振動板の表面に取着されるとともに、上記アクチュエータから受け取った振動を該取着部から上記振動板に伝達し、
上記慣性質量要素は、上記取着部から見て振動受取部より遠く配されることを特徴とする音響装置。
【請求項4】
請求項3の音響装置において、
上記慣性質量要素は、上記取着部から見て上記アクチュエータの長手方向に延在することを特徴とする音響装置。
【請求項5】
請求項4の音響装置において、
上記慣性質量要素は、上記アクチュエータの上部を覆うように配置されることを特徴とする音響装置。
【請求項6】
請求項1の音響装置において、
上記アクチュエータは、その振動方向が上記振動板の表面に垂直となるよう配され、
上記受動部は、その断面がコ字状に形成され、上記振動板の表面に取着されるとともに、その内側中央で上記アクチュエータの振動を受け取り、
上記慣性質量要素は、上記受動部の振動受取部に付加されることを特徴とする音響装置。
【請求項7】
アクチュエータに入力信号を与えて振動させ、振動板に取着される受動部に上記アクチュエータの振動を伝達し、上記受動部が受け取った振動を上記振動板に伝達する振動伝達方法において、
上記受動部は、上記アクチュエータに対する慣性質量要素を備え、上記受動部と上記振動板の振動作用点における縦波振動と首振り運動を励起し、受け取った振動を上記振動板に伝達することを特徴とする振動伝達方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−257003(P2012−257003A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−127923(P2011−127923)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(506150146)ビフレステック株式会社 (16)
【出願人】(000112565)フォスター電機株式会社 (113)
【Fターム(参考)】