説明

音響装置

【課題】 使用状況に応じて音響空間を良好に確保して音響特性を向上させることができる音響装置を提供する。
【解決手段】 放音用の開口部にスピーカ6が設けられた楽器ケース1と、この楽器ケース1内に上下方向に移動可能に設けられ、且つ楽器ケース1の下部ケース3に設けられた開口部12を開閉可能に塞ぐ電池収納蓋13と、この電池収納蓋13に着脱可能に取り付けられ、且つ楽器ケース1の開口部12を通して楽器ケース1内に挿脱可能に収納される電池ボックス11とを備えている。従って、電池ボックス11を電源として使用する際に、電池ボックス11を楽器ケース1内に収納することができ、電池ボックス11を使用しないときに、電池ボックス11を楽器ケース1内から取り出すことができる。これにより、電池ボックス11を使用しないときに、楽器ケース1内の音響空間を広くすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スピーカを備えた音響装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、音響装置としての電子楽器があり、特許文献1に記載されているように、楽器ケースに鍵盤部が上側に露出した状態で設けられていると共に、この楽器ケース内にスピーカが設けられ、このスピーカで鍵盤部の押鍵操作に応じた楽音を放音するように構成されたものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08−314459号公報
【0004】
このような電子鍵盤楽器では、室内で演奏する際には室内の電源を楽器ケースに接続して演奏し、電源のない屋外で演奏する際には楽器ケース内に設けられた電池ボックス内の電池で電源を供給して演奏するように構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような電子鍵盤楽器においては、楽器ケース内に電池ボックスを設けてしまうと、この電池ボックスによって楽器ケース内の音響空間が狭くなり、電池ボックスの電源を用いずに室内の電源を使用する際にも、音響空間を広くすることができないため、音響特性を向上させることができないという問題がある。
【0006】
この発明が解決しようとする課題は、使用状況に応じて音響空間を良好に確保して音響特性を向上させることができる音響装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、スピーカが取り付けられた放音用の開口部、及び電池収容用の開口部とを有し、内部に前記スピーカの音響空間が形成されたケースと、前記ケース内にその内外方向に向けて移動可能に設けられ、前記電池収容用の開口部を開閉可能に塞ぐ電池収納蓋と、この電池収納蓋に着脱可能に取り付けられ、且つ前記電池収容用の開口部を通して前記ケース内に挿脱可能に収納される電池ボックスとを備えていることを特徴とする音響装置である。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、電池ボックスを電源として使用する際に、電池ボックスを楽器ケース内に収納することができ、電池ボックスを使用しないときに、電池ボックスを楽器ケース内から取り出すことができる。このため、使用状況に応じて楽器ケース内の音響空間を広くしたり狭くしたりすることができ、これにより使用状況に応じて音響空間を良好に確保して音響特性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明を電子鍵盤楽器に適用した一実施形態を示した平面図である。
【図2】図1に示された電子鍵盤楽器において、上部ケースを取り外した状態を示した斜視図である。
【図3】図1に示された電子鍵盤楽器のA−A矢視における拡大断面図である。
【図4】図2に示された電子鍵盤楽器のB−B矢視における拡大断面図である。
【図5】図2に示された電子鍵盤楽器における電池ボックスの収納部分を示した要部の拡大斜視図である。
【図6】図5に示された電池収納蓋を示した拡大斜視図である。
【図7】図6に示された電池収納蓋の下面に取り付けられる電池ボックスを示した拡大斜視図である。
【図8】図3に示された電子鍵盤楽器の楽器ケース内から電池ボックスを取り出した状態を示した要部の拡大断面図である。
【図9】図4に示された電子鍵盤楽器の楽器ケース内から電池ボックスを取り出した状態を示した要部の拡大断面図である。
【図10】図9に示された電子鍵盤楽器におけるA部を示した拡大断面図である。
【図11】図4に示された電子鍵盤楽器におけるB部を示し、(a)はその拡大断面図、(b)は電池ボックスの係止部を電池収納蓋の縁部に係止させる前の状態を示した拡大断面図である。
【図12】図9に示された電子鍵盤楽器におけるC部を示し、(a)は電池収納蓋のフック部がガイドリブ部の係止凹部に係合している状態を示した拡大断面図、(b)は電池ボックスのロック解除部がスライドしてフック部の操作突起を押し下げる状態を示した拡大断面図、(c)はロック解除部がフック部の操作突起を押し下げてフック部の係合部を係止凹部から離脱させた状態を示した拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図1〜図12を参照して、この発明を電子鍵盤楽器に適用した一実施形態について説明する。
この電子鍵盤楽器は、図1〜図3に示すように、楽器ケース1を備えている。この楽器ケース1は、上部ケース2と下部ケース3とで構成されている。
【0011】
下部ケース3は、図2および図3に示すように、鍵盤シャーシを兼ねるものであり、その前側上部(図3では左側上部)に鍵盤部4が設けられている。鍵盤部4は、図1〜図3に示すように、白鍵および黒鍵からなる複数の鍵5が、下部ケース3上に並列に配列された状態で、上下方向に回転可能に取り付けられた構成になっている。
【0012】
上部ケース2は、鍵盤部4の後方に位置する下部ケース3の後部(図3では右側部)および鍵盤部4の両側部(図3では左右の両側部)に位置する下部ケース3の両側部上に配置され、鍵盤部4の後端部(図3では右端部)を除いて、鍵盤部4を上側に露呈させるように構成されている。
【0013】
この上部ケース2の両側部には放音用の開口部が設けられ、図1および図3に示すように、これらの開口部にスピーカ6がそれぞれ取り付けられる。このスピーカ6は、鍵盤部4の鍵5の操作に応じて楽音を放音するためのものであり、上部ケース2の内面(図3では下面)に上向き状態、つまり上部ケース2の上方に向けて音を放音する状態で開口部に取り付けられている。
【0014】
また、この上部ケース2の中間部には、表示部7およびスイッチ部8が設けられている。表示部7は、図1に示すように、液晶表示パネルやEL(エレクトロ・ルミネッセンス)表示パネルなどの平面型の表示パネルからなり、楽器に必要な情報を電気光学的に表示するように構成されている。スイッチ部8は、電源スイッチ、音量スイッチ、音色選択スイッチなどの各種のスイッチを備え、これらスイッチが表示部7の周囲に配列された状態で設けられている。
【0015】
ところで、下部ケース3内における後部の両側部には、図2に示すように、補強リブ部10がそれぞれ設けられている。この補強リブ部10は、スピーカ6に対応する箇所の下部ケース3の強度を補強して、楽器ケース1の強度を確保するためのものであり、格子状のリブ10aと、複数の円柱状のリブ10bとを備えている。
【0016】
また、この下部ケース3内の後部における中間部には、図2および図3に示すように、電池ボックス11が挿脱可能に収納されるように構成されている。この場合、下部ケース3の底部には、図3および図8に示すように、電池ボックス11が挿入する開口部12が楽器ケース1の内外(図3では上下)に貫通して設けられている。
【0017】
この開口部12は、図3および図8に示すように、電池ボックス11と電池収納蓋13とのいずれかによって開放可能に塞がれるように構成されている。この場合、電池収納蓋13は、図2〜図7に示すように、電池ボックス11が着脱可能に取り付けられると共に、下部ケース3の底部上に設けられたガイドリブ部14によって楽器ケース1の内外方向である上下方向にガイドされるように構成されている。
【0018】
ガイドリブ部14は、図2〜図5に示すように、下部ケース3の底部における開口部12の周囲に沿ってほぼ長方形の枠状に形成されている。電池収納蓋13は、図3および図6に示すように、ほぼ長方形の平板状に形成され、ガイドリブ部14内に上下方向に移動可能に配置されるように構成されている。電池ボックス11は、図3および図7に示すように、その上面が開放されたほぼ長方形の箱状に形成され、ガイドリブ部14内に出没可能に配置されるように構成されている。
【0019】
電池ボックス11は、図4および図9に示すように、電池収納蓋13に対して着脱可能に取り付けられるように構成されている。すなわち、この電池ボックス11の上端部には、図7および図11に示すように、電池収納蓋13の外周部に位置する縁部13aに係脱可能に係止される複数の取付片15が設けられていると共に、後述する複数のロック解除片16が設けられている。
【0020】
また、この電池ボックス11の側面下部には、図3、図4および図7に示すように、電池ボックス11がガイドリブ部14内に挿入されて配置された際に、ガイドリブ部14の下部に設けられた後述する係止凹部22内に弾力的に係止される複数の弾性係止部17が設けられている。これにより、電池ボックス11は、弾性係止部17がガイドリブ部14の係止凹部22内に弾力的に係止された際に、ガイドリブ部14内に位置規制され、これにより電池収納蓋13をガイドリブ部14の上限位置に位置規制するように構成されている。
【0021】
一方、電池収納蓋13は、図4および図9に示すように、ガイドリブ部14によって上下方向にガイドされるように構成されている。すなわち、この電池収納蓋13の周縁部には、図6に示すように、複数のガイド突起18と複数のフック部19とがそれぞれ設けられている。複数のガイド突起18は、電池収納蓋13の周縁部上に立上り、この立ち上がった先端が水平方向に向けて延び、この延びた先端部が電池収納蓋13の周縁部から側方に向けて突出して形成されている。
【0022】
また、複数のフック部19は、図4および図9に示すように、電池収納蓋13の周縁部に盛り上って設けられた下側が中空状の凸部19aと、この凸部19aの外端部が下側に向けて折り曲げられ、この折り曲げられた下部が上方に向けて折り返された折返し部19bと、この折返し部19bの上端部に設けられた係合部19cと、折返し部19bからガイドリブ部14の内側に向けて突出した操作突起19dとを備えている。
【0023】
このフック部19は、図9に示すように、電池収納蓋13がガイドリブ部14の下部に位置して下部ケース3の開口部12を塞いだ際に、係合部19cがガイドリブ部14の下部に設けられた後述する係止凹部22内に係止されるように構成されている。また、このフック部19は、図12(a)に示すように、その凸部19aの下側に電池ボックス11のロック解除片16が挿入してスライドするように構成されている。
【0024】
また、このフック部19は、図11(a)および図12(b)に示すように、電池ボックス11が電池収納蓋13に対してスライドして電池ボックス11の取付片15が電池収納蓋13の縁部13aに係止された際に、ロック解除片16が折返し部19bの操作突起19dを押し下げて係合部19cを変位させることにより、図12(c)に示すように、係合部19cをガイドリブ部14の係止凹部22内から離脱させ、ガイドリブ部14の係止凹部22に対する係合部19cの係合が解除されるように構成されている。
【0025】
一方、ガイドリブ部14には、図2および図5に示すように、電池収納蓋13の複数のガイド突起18をそれぞれ上下方向にガイドする複数の第1ガイド溝20と、複数のフック部19をそれぞれ上下方向にガイドする複数の第2ガイド溝21と、複数のフック部19を係脱可能に係止する係止凹部22とが設けられている。この場合、第1ガイド溝20に対応する下部ケース3上には、図9および図10に示すように、電池収納蓋13のガイド突起18を係脱可能に係止する突起係止片23が設けられている。
【0026】
第1ガイド溝20は、図5に示すように、ガイドリブ部14の下部から上部に亘って設けられ、電池収納蓋13のガイド突起18を上下方向にガイドして下限位置と上限位置とに規制するように構成されている。この場合、電池収納蓋13のガイド突起18は、図9および図10に示すように、第1ガイド溝20によって下限位置にガイドされた際に、ガイド突起18の外端部が突起係止片23に係止されるように構成されている。
【0027】
第2ガイド溝21は、図2、図4および図5に示すように、ガイドリブ部14の下部から上端部に亘り、この上端部から上方に開放されて設けられ、電池収納蓋13のフック部19を上下方向にガイドするように構成されている。この場合、電池収納蓋13のフック部19は、図4に示すように、電池収納蓋13がガイドリブ部14の上限位置に移動した際に、フック部19の係合部19cがガイドリブ部14の上方に突出するように構成されている。
【0028】
係止凹部22は、図9および図12に示すように、第2ガイド溝21に対応するガイドリブ部14の下部に設けられ、電池収納蓋13がガイドリブ部14の下部に位置した際に、フック部19の係合部19cが係合するように構成されている。これにより、電池収納蓋13は、ガイドリブ部14の下部に位置して下部ケース3の開口部12を塞いだ際に、フック部19の係合部19cがガイドリブ部14の係止凹部22内に係止されて、下限位置に位置規制されるように構成されている。
【0029】
また、この係止凹部22は、図3および図4に示すように、電池ボックス11がガイドリブ部14内に挿入されて配置された際に、電池ボックス11の側面下部に設けられた複数の弾性係止部17を弾力的に係止するように構成されている。これにより、電池ボックス11は、弾性係止部17がガイドリブ部14の係止凹部22内に弾力的に係止された際に、ガイドリブ部14内に位置規制され、電池収納蓋13を上限位置に位置規制するように構成されている。
【0030】
ところで、電池ボックス11は、図7に示すように、その内部に複数の乾電池(図示せず)が収納されるように構成されている。この電池ボックス11の上端部には、複数の乾電池の各電極が電気的に接続される電池接続部24がビス24aによって取り付けられている。また、電池収納蓋13の上面には、図3および図5に示すように、電源基板25がビス25aによって取り付けられている。
【0031】
この電源基板25には、図3に示すように、基板接続部26が電池ボックス11の電池接続部24に対応して設けられている。この電源基板25は、電池収納蓋13の下面に電池ボックス11が取り付けられた際に、電池ボックス11の電池接続部24と電源基板25の基板接続部26とが電気的に接続されるように構成されている。また、この電源基板25は、楽器ケース1内に設けられた回路基板27と接続ケーブル28によって電気的に接続されている。
【0032】
一方、楽器ケース1の背面には、図3に示すように、電源ジャック30が設けられている。この電源ジャック30は、楽器ケース1内に設けられた回路基板27と接続ケーブル31によって電気的に接続されている。また、この電源ジャック30は、室内に設けられたコンセットなどの外部電源(図示せず)と電源コード32によって電気的に接続されるように構成される。
【0033】
これにより、この電子鍵盤楽器は、電池ボックス11を楽器ケース1内に収納することにより、電池ボックス11内の乾電池(図示せず)によって電源が供給されると共に、電池ボックス11を取り外しても、室内のコンセットなどの外部電源から電源が供給されることにより、電池ボックス11と室内のコンセットなどの外部電源とのいずれか一方から電源が供給されるように構成されている。
【0034】
次に、このような電子鍵盤楽器の作用について説明する。
まず、電池ボックス11を用いて電子鍵盤楽器を使用する場合には、電池ボックス11を楽器ケース1内に配置する。このときには、図8および図9に示すように、電池収納蓋13をガイドリブ部14の下部に移動し、この状態で電池ボックス11を電池収納蓋13の下面に取り付ける。
【0035】
すなわち、電池収納蓋13がガイドリブ部14の下部に配置されると、電池収納蓋13が下部ケース3の開口部12を塞いだ状態になり、電池収納蓋13のガイド突起18が下部ケース3内に設けられた突起係止片23によって下限位置に位置規制される。この状態では、電池収納蓋13における複数のフック部19の各係合部19cがガイドリブ部14の側面下部に設けられた係合凹部22内に係止され、電池収納蓋13が開口部12から下部ケース3の外部に露出する。
【0036】
そして、この露出した電池収納蓋13の外周部に位置する縁部13aに電池ボックス11の複数の取付片15を対応させると共に、電池収納蓋13における複数のフック部19の各凸部19a内に電池ボックス11の複数のロック解除片16を挿入させる。この状態で、電池ボックス11を電池収納蓋13に対してスライドさせると、電池ボックス11の複数の取付片15が電池収納蓋13の縁部13aに係止され、これにより電池ボックス11が電池収納蓋13に取り付けられる。
【0037】
また、このときには、図12(a)〜図12(c)に示すように、電池ボックス11の複数のロック解除片16が、電池収納蓋13における複数のフック部19の各凸部19a内をスライドして、電池収納蓋13における複数のフック部19の各折返し部19bに設けられた操作突起19dを押し下げる。これにより、複数のフック部19の各係合部19cが変位してガイドリブ部14の係合凹部22内から離脱し、ガイドリブ部14の係合凹部22に対する複数のフック部19における各係合部19cの係合が解除される。
【0038】
この状態で、電池ボックス11を楽器ケース1内に押し込む。すると、突起係止片23による電池収納蓋13のガイド突起18の係止が解除され、電池収納蓋13が下部ケース3のガイドリブ部14にガイドされながら上方に移動する。このときには、電池収納蓋13の外周縁がガイドリブ部14の内面に沿ってガイドされるほか、電池収納蓋13のガイド突起18がガイドリブ部14の第1ガイド溝20に沿ってガイドされると共に、電池収納蓋13のフック部19がガイドリブ部14の第2ガイド溝21に沿ってガイドされる。
【0039】
このように電池収納蓋13がガイドリブ部14にガイドされながら上方に移動すると、この電池収納蓋13の移動に伴って電池ボックス11が下部ケース3の開口部12を通してガイドリブ部14内に挿入する。そして、電池収納蓋13のガイド突起18がガイドリブ部14の第1ガイド溝20の上端部に当接すると、電池ボックス11がガイドリブ部14内に配置される。
【0040】
このときには、図3および図4に示すように、電池ボックス11の側面下部に設けられた弾性係止部17がガイドリブ部14の下部に設けられた係止凹部22内に弾力的に係止される。これにより、電池ボックス11がガイドリブ部14内に位置規制されて配置され、電池収納蓋13がガイドリブ部14の上部を塞いだ状態で、電池ボックス11によって位置規制される。
【0041】
この場合、電池ボックス11が電池収納蓋13の下面に取り付けられた際には、図3に示すように、電池収納蓋13上に設けられた電源基板25の基板接続部26と電池ボックス11の電池接続部24とが電気的に接続される。これにより、電池ボックス11内の乾電池が電源基板25を介して回路基板27と電気的に接続され、電池ボックス11の電源が回路基板27に供給され、スピーカ6が放音可能な状態になる。これにより、演奏者が鍵盤部4の各鍵5を押鍵操作すると、その押鍵操作に応じた楽音をスピーカ6から放音する。
【0042】
一方、楽器ケース1の電源ジャック30に室内などの外部電源を接続して電子鍵盤楽器を使用する場合には、楽器ケース1内から電池ボックス11を取り出す。このときには、電池ボックス11の側面下部に設けられた弾性係止部17をガイドリブ部14の下部に設けられた係止凹部22内から離脱させ、ガイドリブ部14に対する電池ボックス11の位置規制を解除する。この状態で、電池ボックス11を下部ケース3の開口部12から下側に引き出す。
【0043】
すると、電池収納蓋13が下部ケース3のガイドリブ部14にガイドされながら下側に移動する。このときには、電池収納蓋13の外周縁がガイドリブ部14の内面に沿ってガイドされるほか、電池収納蓋13のガイド突起18がガイドリブ部14の第1ガイド溝20に沿ってガイドされると共に、電池収納蓋13のフック部19がガイドリブ部14の第2ガイド溝21に沿ってガイドされる。
【0044】
そして、電池収納蓋13のガイド突起18が下部ケース3の底部に当接すると、図9および図10に示すように、このガイド突起18が下部ケース3の突起係止片23に係止されて下限位置に位置規制され、電池収納蓋13が下部ケース3の開口部12を塞ぐ。このときには、電池収納蓋13のフック部19の係合部19cがガイドリブ部14の下部に設けられた係止凹部22に対応する。
【0045】
この状態で、電池ボックス11を電池収納蓋13に対してスライドさせると、図11に示すように、電池ボックス11の取付片15が電池収納蓋13の縁部13aから離脱する。これにより、電池ボックス11を電池収納蓋13から取り外すことができる。また、このときには、図12(a)に示すように、電池収納蓋13に対する電池ボックス11のスライドに伴って、電池ボックス11のロック解除片16が電池収納蓋13のフック部19の折返し部19bに設けられた操作突起19dから離れる。
【0046】
これにより、電池ボックス11のロック解除片16によるフック部19の操作突起19dの押し下げが解除されるので、図12(a)に示すように、フック部19の折返し部19bが弾性復帰して、フック部19の係合部19cがガイドリブ部14の下部に設けられた係止凹部22内に挿入して係止される。これにより、電池収納蓋13が下部ケース3の開口部12を塞いだ状態で、下部ケース3に対して位置規制される。
【0047】
この状態で、下部ケース3上に設けられたガイドリブ部14の上面側が開放された状態になる。このため、ガイドリブ部14はその内部をスピーカ6の音響空間として利用することができる。これにより、演奏者が鍵盤部4の各鍵5を押鍵操作し、その押鍵操作に応じた楽音をスピーカ6から放音した際に、ガイドリブ部14の内部が音響空間として機能するので、電池ボックス11を用いた場合に比べて、スピーカ6の音響空間を広くすることができ、これにより低音域の音を良好に得ることができる。
【0048】
このように、この電子鍵盤楽器によれば、スピーカ6が設けられ、内部に音響空間を有する楽器ケース1と、この楽器ケース1内に上下方向である内外方向に向けて移動可能に設けられて音響空間の容積を変化させ、且つ楽器ケース1に設けられた開口部12を塞ぐ電池収納蓋13と、この電池収納蓋13に着脱可能に取り付けられ、且つ楽器ケース1の開口部12を通して楽器ケース1内に挿脱可能に収納される電池ボックス11とを備えているので、使用状況に応じてスピーカ6の音響空間を良好に確保して音響特性を向上させることができる。
【0049】
すなわち、この電子鍵盤楽器では、電池ボックス11を電源として使用する際に、電池ボックス11を楽器ケース1内に収納することができ、電池ボックス11を使用しないときに、電池ボックス11を楽器ケース1内から取り出すことができる。このため、電池ボックス11を使用しないときに、楽器ケース1内の音響空間を広くすることができる。これにより、使用状況に応じて楽器ケース1内の音響空間を良好に確保することができ、音響特性を向上させることができると共に、楽器ケース1の小型化を図ることができる。
【0050】
また、この電子鍵盤楽器では、電池収納蓋13が楽器ケース1の開口部12を塞ぐ位置と、楽器ケース1内に電池ボックス11が収納される位置とに、電池収納蓋13を移動可能にガイドするガイドリブ部14を備えていることにより、電池ボックス11を楽器ケース1内に挿入する際、および電池ボックス11を楽器ケース1内から取り出す際に、ガイドリブ部14によって電池ボックス11および電池収納蓋13をガイドすることができ、これにより電池ボックス11および電池収納蓋13を円滑に且つ良好に移動させることができる。
【0051】
すなわち、電池収納蓋13には、複数のガイド突起18が電池収納蓋13の外周縁から突出して設けられており、ガイドリブ部14には、複数のガイド突起18をガイドする複数の第1ガイド溝20が上下方向に沿って設けられていることにより、電池ボックス11を電池収納蓋13に取り付けた状態で、電池ボックス11を楽器ケース1内に挿入する際、および電池ボックス11を楽器ケース1内から取り出す際に、ガイドリブ部14の第1ガイド溝20によって電池収納蓋13のガイド突起18を確実に且つ良好にガイドすることができる。
【0052】
この場合、電池ボックス11は、その外側面がガイドリブ部14の内側面によって上下方向にガイドされるので、電池ボックス11を楽器ケース1内に挿入する際、および電池ボックス11を楽器ケース1内から取り出す際に、ガイドリブ部14の内側面によって電池ボックス11を良好にガイドすることができ、これによっても電池ボックス11および電池収納蓋13を円滑に且つ良好に移動させることができる。
【0053】
また、この電子鍵盤楽器では、電池収納蓋13が楽器ケース1の開口部12を塞ぐ位置に電池収納蓋13を位置規制するためのフック部19を備えていることにより、電池収納蓋13が楽器ケース1の開口部12を塞いだ際に、フック部19によって電池収納蓋13をガイドリブ部14の下部に位置規制することができる。これにより、電池収納蓋13から電池ボックス11を取り外して楽器ケース1の開口部12を電池収納蓋13で塞ぐことにより、楽器ケース1内の音響空間を確実に且つ良好に広げることができる。
【0054】
この場合、ガイドリブ部14の下部には、電池収納蓋13のフック部19が係合する係合凹部22が設けられていることにより、電池収納蓋13がガイドリブ部14によって下側にガイドされて楽器ケース1の開口部12を塞いだ際に、電池収納蓋13のフック部19を係合凹部22で係止することができ、これにより電池収納蓋13をガイドリブ部14の下部に確実に位置規制することができ、これにより楽器ケース1内に音響空間を確保することができる。
【0055】
さらに、この電子鍵盤楽器では、電池収納蓋13の外周部に位置する縁部13aに対して係脱可能に係止されて、電池ボックス11を電池収納蓋13に取り付けるための取付片15を備えていることにより、電池収納蓋13が楽器ケース1の開口部12を塞いだ際に、電池収納蓋13の縁部13aを楽器ケース1の下側に露呈させることができ、この状態で電池ボックス11の取付片15を電池収納蓋13の縁部13aに係止させることができるので、電池ボックス11を電池収納蓋13に簡単に且つ確実に取り付けることができる。
【0056】
また、この電子鍵盤楽器では、電池収納蓋13が楽器ケース1の開口部12を塞いでいる状態のときにガイドリブ部14に対する電池ボックス11のフック部19による位置規制を解除するロック解除片16を備えていることにより、電池ボックス11のロック解除片16によってガイドリブ部14に対するフック部19による位置規制を解除することができ、これにより電池ボックス11を楽器ケース1内に挿入する際に、電池収納蓋13をガイドリブ部14に沿って円滑に且つ良好に移動させることができる。
【0057】
すなわち、フック部19は、電池収納蓋13の周縁部に設けられた下側が中空状の凸部19aと、この凸部19aの先端に設けられて上方に向けて折り返された折返し部19bと、この折返し部19bの上端部に設けられた係合部19cと、折返し部19bに設けられた操作突起19dとを有しており、電池ボックス11のロック解除片16は、その凸部19aの下側に挿入し、この状態で電池ボックス11をスライドさせて電池ボックス11の取付片15を電池収納蓋13の縁部13aに係止させた際に、折返し部19bの操作突起19dを押し下げて係合部19cを変位させることができ、これにより係合部19cをガイドリブ部14の下部から確実に且つ良好に離脱させることができる。
【0058】
さらに、この電子鍵盤楽器では、電池ボックス11が楽器ケース1内に収納された際にガイドリブ部14の係止凹部22に係合して電池ボックス11を位置規制する弾性係止部17を備えていることにより、電池ボックス11を楽器ケース1内のガイドリブ部14内に収納した際に、電池ボックス11の弾性係止部17をガイドリブ部14の係止凹部22に弾力的に係止させることができ、これにより電池ボックス11をガイドリブ部14内に確実に且つ良好に位置規制して収納することができ、この電池ボックス11によって電池収納蓋13をも位置規制することができる。
【0059】
なお、上述した実施形態では、電池ボックス11内に乾電池を収納するように構成した場合について述べたが、これに限らず、例えば燃料電池を収納しても良く、またリチュームイオン電池を収納しても良く、さらには太陽電池などの電力を蓄えることができる充電池を設けた構成であっても良い。
【0060】
また、上述した実施形態では、電子鍵盤楽器に適用した場合について述べたが、必ずしも電子鍵盤楽器である必要はなく、例えば電気ギターなどの電子弦楽器、サックスホーンなどの電子管楽器のほか、スピーカを備えた他の電子楽器に広く適用することができる。さらに他の音響装置にも適用することが可能である。
【0061】
以上、この発明の一実施形態について説明したが、この発明は、これに限られるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲を含むものである。
以下に、本願の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0062】
(付記)
請求項1に記載の発明は、スピーカが取り付けられた放音用の開口部、及び電池収容用の開口部とを有し、内部に前記スピーカの音響空間が形成されたケースと、
前記ケース内にその内外方向に向けて移動可能に設けられ、前記電池収容用の開口部を開閉可能に塞ぐ電池収納蓋と、
この電池収納蓋に着脱可能に取り付けられ、且つ前記電池収容用の開口部を通して前記ケース内に挿脱可能に収納される電池ボックスと
を備えていることを特徴とする音響装置である。
【0063】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の音響装置において、前記電池収納蓋が前記電池収容用の開口部を塞ぐ位置と、前記ケース内に前記電池ボックスが収納される位置とに、前記電池収納蓋を移動可能にガイドするガイド部を備えていることを特徴とする音響装置である。
【0064】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の音響装置において、前記電池収納蓋が前記電池収容用の開口部を塞ぐ位置に前記電池収納蓋を位置規制するためのフック部を備えていることを特徴とする音響装置である。
【0065】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のいずれかに記載の音響装置において、前記電池収納蓋に係脱可能に係止されることにより、前記電池ボックスを前記電池収納蓋に取り付けるための取付部を備えていることを特徴とする音響装置である。
【0066】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに記載の音響装置において、前記電池収納蓋が前記電池収容用の開口部を塞いでいる状態のときに、前記ガイド部に対する前記フック部による位置規制を解除するロック解除部を備えていることを特徴とする音響装置である。
【0067】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜請求項5のいずれかに記載の音響装置において、前記ケース内に前記電池ボックスが収納された際に、前記ガイド部の一部に弾力的に係合して前記電池ボックスを位置規制するための弾性係止部を備えていることを特徴とする音響装置である。
【符号の説明】
【0068】
1 楽器ケース
2 上部ケース
3 下部ケース
4 鍵盤部
6 スピーカ
11 電池ボックス
12 開口部
13 電池収納蓋
14 ガイドリブ部
15 取付片
16 ロック解除片
17 弾性係止部
18 ガイド突起
19 フック部
19a 凸部
19b 折返し部
19c 係合部
19d 操作突起
20 第1ガイド溝
21 第2ガイド溝
22 係止凹部
23 突起係止部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピーカが取り付けられた放音用の開口部、及び電池収容用の開口部とを有し、内部に前記スピーカの音響空間が形成されたケースと、
前記ケース内にその内外方向に向けて移動可能に設けられ、前記電池収容用の開口部を開閉可能に塞ぐ電池収納蓋と、
この電池収納蓋に着脱可能に取り付けられ、且つ前記電池収容用の開口部を通して前記ケース内に挿脱可能に収納される電池ボックスと
を備えていることを特徴とする音響装置。
【請求項2】
請求項1に記載の音響装置において、前記電池収納蓋が前記電池収容用の開口部を塞ぐ位置と、前記ケース内に前記電池ボックスが収納される位置とに、前記電池収納蓋を移動可能にガイドするガイド部を備えていることを特徴とする音響装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の音響装置において、前記電池収納蓋が前記電池収容用の開口部を塞ぐ位置に前記電池収納蓋を位置規制するためのフック部を備えていることを特徴とする音響装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の音響装置において、前記電池収納蓋に係脱可能に係止されることにより、前記電池ボックスを前記電池収納蓋に取り付けるための取付部を備えていることを特徴とする音響装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の音響装置において、前記電池収納蓋が前記電池収容用の開口部を塞いでいる状態のときに、前記ガイド部に対する前記フック部による位置規制を解除するロック解除部を備えていることを特徴とする音響装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかに記載の音響装置において、前記ケース内に前記電池ボックスが収納された際に、前記ガイド部の一部に弾力的に係合して前記電池ボックスを位置規制するための弾性係止部を備えていることを特徴とする音響装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−74533(P2013−74533A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213248(P2011−213248)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】