説明

頁連動型入出力装置

【課題】従来、本と、その内容に付加したり読んだりする音声は、別の媒体で提供され本の頁をめくりながら読解すると同時に、音声再生は同期させて別の操作を必要とした。
また、ノートブックに書き込むときも、同時に録音した音声は、別の媒体に記録されるので、頁をめくりながら書き込みを読むときも、音声再生は同期させて別の操作を必要とした。
【解決手段】音声再生と記録が可能で、かつ本の見開かれた頁を検知可能な筐体装置を、本に着脱可能にして、本の各頁には、筐体装置の検知手段に対応した被検知手段を配設し、本と筐体装置が一体となった状態で、頁をめくると、その頁に対応した音声再生や記録が自動的になされるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、読み書きのための本あるいは記録のためのノートブックに音声やその他のデータを連動させ、読み聞かせや議事録等の用途に対し、読み書き等の視覚による認識と同時に聴覚による認識を連係させ、理解しやすく、かつ、より便利な形態を提供するものである。
【背景技術】
【0002】
人間にとって、視覚と聴覚が重要なことは言うまでも無いが、脳に対する刺激として時間軸を考慮すると、視覚による認識と聴覚による認識は一体をなし同時性が求められる。
【0003】
本や映画のような視覚や聴覚で楽しむメディアは多くのものが提供されている。
【0004】
映画は視覚と聴覚の両方で同時に楽しめるメディアであるが、設備の整った環境が必要であり、個人で手軽に利用できるとは言い難い。
【0005】
個人で手軽に楽しめるメディアの代表が本である。また本の視覚情報と同時に聴覚情報を提供することは、従来から種々の試みがなされている。
【0006】
例えば絵本は幼児にとって重要な情操教育手段であるが、文字を読めない幼児は絵を追うだけで理解も浅くなるので、読んで聞かせることが望ましいが、そのために、音声が録音されたCD等を添付した絵本も出版されている。
【0007】
また、近年では電子出版が盛んになり、当然、聴覚に訴える音声による出版も提供され普及すると予想される。
【0008】
以上のように、本によって文字、絵等で表現し提供するコンテンツを、同時に音声でも提供することは種々なされているが、いずれの場合も、視覚と聴覚のそれぞれに対応した別体のメディアであり、使用者はそれぞれのメディアを別々に操作しながら時間的な同期をさせることが要求される。
【0009】
視覚情報と聴覚情報を記録する場合についても同様のことが言える。
近年では、電子カメラを使用して両者を同時に記録再生することも可能となったが、その再生のためには、電子ディスプレイやアンプ、スピーカーといった装置が必要であり、常に携行して手軽に利用できるとは言い難い。
【0010】
個人で手軽に記録する方法が、写真を撮影したりメモを書き込んだり、またボイスレコーダーを使って音声記録を行う方法であるが、いずれの場合も視覚と聴覚のそれぞれに対応した別体のメディアであり、後から記録を再生するときには、それぞれのメディアを別々に操作しながら時間的な同期をさせることが要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本に書かれた文字や絵と、本以外のメディアで提供される音声とを、意図して別々の操作をしないでも、時間的に同期させながら同時に楽しむことを可能とすること。
【0012】
文字や絵による記録と、別のメディアでの音声記録を、意図して別々の操作をしないでも、時間的に同期させながら同時に記録可能にすること。
【0013】
以上のように、視覚情報を得るための本と聴覚情報を得るための記録再生装置を一体化しながら、かつ、本の特定の頁と音声記録領域を対応させ時間的同期をはかること。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、文字や絵が書かれた複数頁の本に対し、読解以外の別のデータを再生可能な装置を内蔵した筐体を装着し、使用者が頁を繰りながら本を読解すると同時に、見開かれた頁に対応したデータの一部を再生する目的で、その表裏が頁となる本を構成する紙葉の一部に付与された被検知手段を筐体内の検知手段で認識可能にした。
【0015】
あるいは、本発明は、文字や絵を書くための複数頁の本に対し、書き込み以外の別のデータを記録可能な装置を内蔵した筐体を装着し、使用者が頁を繰りながら本に書き込むと同時に、見開かれた頁に対応した別のデータを記録する目的で、その表裏が頁となる本を構成する紙葉の一部に付与された被検知手段を筐体内の検知手段で認識可能にした。
【0016】
使用者が本の頁を繰る操作を支障無く自然に行えるように、上記の、検知手段および被検知手段を、非接触で認識可能なフォトリフレクタと反射用ドグの対とした。
【0017】
さらに同様の目的で、上記の、検知手段および被検知手段を、非接触で認識可能なRFIDリーダーとRFIDタグの対とした。
【0018】
読解や書き込みは視覚によるが、聴覚による認識が可能なように、前述の別のデータを音声データとし、本と筐体が一体化された状態で音声を再生あるいは記録可能にした。
【0019】
使用者が本だけを使う場合に支障を与えないように、一体化した本と筐体は、必要に応じて分離可能とした。
【発明の効果】
【0020】
本発明の頁連動型入出力装置によれば、視覚と聴覚の両方で同時に認識することが可能で、本のコンテンツを理解しやすく、また記録もより正確に行える。さらに使用者が音声データをパソコン等でお気に入りの声で作成したり、背景音を付加したりして筐体内の記憶装置に転送することで、その本の読解者に、使用者のメッセージを送り、より強い印象を与えることも可能となる。
【0021】
さらに、本発明は、見開き頁を非接触で検知し、本の紙葉に配置する被検知手段は、配線を必要としないので、既存の製本工程が大きく変わることなく実現可能である。
以上のように、本発明の効果は明らかなものである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の第一実施例を左手前から見た外観斜視図である。
【図2】本発明の第一実施例に於ける本を開いた状態を、左手前から見た外観斜視図である。
【図3】本発明の第一実施例に於ける、左手前から見た分解斜視図である。尚、本は閉じられて分解されていない。
【図4】本発明の第二実施例を左手前から見た外観斜視図である。
【図5】本発明の第二実施例に於ける本を開いた状態を、左手前から見た外観斜視図である。
【図6】本発明の第二実施例に於ける、左手前から見た分解斜視図である。尚、本は閉じられて分解されていない。
【図7】図4に於けるA−A断面図である。細部表現のため拡大している。
【図8】本発明の第三実施例を左手前から見た外観斜視図である。
【図9】本発明の第三実施例に於ける本を開いた状態を、左手前から見た外観斜視図である。
【図10】本発明の第三実施例に於ける、左手前から見た分解斜視図である。尚、本は閉じられて分解されていない。
【図11】図8に於けるB−B断面図である。細部表現のため拡大している。
【図12】本発明の三つの実施例に於ける、回路ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態を、図を基に説明する。
【0024】
図1、図2、図3、図12は本発明による第一実施例を示す。
【0025】
本2は表表紙23と裏表紙24を含んで16枚の紙葉22が背28で背貼りによって製本されている。紙葉には曲がりにくい板紙が使用されている。仮に判型は四六判としている。
【0026】
図2に示すように、表表紙23以外の紙葉22の小口27の辺縁には切り欠き2aが設けられている。またその切り欠き2aはそれぞれの紙葉22が閉じられた時に重複しないように順繰りに上方に大きくされている。
【0027】
図2においては、表表紙23を含む5枚の紙葉22がめくられ、8頁と9頁が見開かれている。尚、表表紙23と裏表紙24は頁として加算しない。
【0028】
裏表紙24に両端を固着されたバンド29を筐体3に掛けることによって、本2と筐体3は一体となる。このとき、図では示していないが、筐体3に植設されたボスと本2の裏表紙24に開けられた穴等で位置決めされるのは、言うまでもない。
【0029】
図3は筐体3を分解した状態である。筐体3は上カバー3aと下カバー3bとからなり制御基板4を収納している。検知手段収納部31の上面は、紙葉22の切り欠き2aに沿うように階段状をなし、上面にはフォトリフレクタ411の光線を通過させる長穴32が開けられている。
【0030】
制御基板4には紙葉22と同じ数のフォトリフレクタ411が実装され、検知手段収納部31の内側に収まる。この結果、フォトリフレクタ411と紙葉22とは上カバー3aを介して密接するので、紙葉22の小口27の耳が曲がったとしても、確実に紙葉22の有無を検知可能である。なおこの例では、四六判の縦寸法188mmに対し、フォトリフレクタのピッチを10mmとして16個配置している。
【0031】
図2に於いて、表表紙23を含む5枚の紙葉22が開かれているので、下から5番目までのフォトリフレクタ411の検出出力がHiとなり6番目以上はLoとなる。
【0032】
このようにして、見開き頁を検知し、制御基板4上に実装されたマイクロコンピュータ42、記憶装置43、音声処理回路44、再生アンプ45、スピーカー46、マイク47によって、見開き頁に対応した記憶装置43内のひも付きデータを再生し、あるいはひも付きデータとして記憶装置43に記録する。
【0033】
制御基板4には、電池48、SW1検知スイッチ49、SW2検知スイッチ50、モード切り替えボタン51、モード表示ランプ52も実装されている。
【0034】
SW1検知スイッチ49は筐体3に本2が装着されたことを検知して、かつ電池48とマイクロコンピュータ42の間の配線を開閉するので、本2が装着されていない時は、制御基板4は動作しない。
【0035】
SW2検知スイッチ50は本2が開かれているか閉じられているかの状態を判別し、筐体3に本2が装着されていたとしても、本2が閉じられている時には、マイクロコンピュータ42をスリープ状態とする。また、モード切り替えボタン51とモード表示ランプ52は再生と録音のモードを切り替える。
【0036】
なお、図12の検知手段41のひとつであるRFIDリーダー413は、この実施例に於いては存在しない。
【0037】
図4、図5、図6、図7、図12は本発明による第二実施例を示す。
【0038】
本第二実施例は、第一実施例の被検知手段21、検知手段41をそれぞれRFIDタグ2b、RFIDリーダー413に置き換えたものである。本実施例に用いられているRFIDはアンテナを持たないチップ上の小さなタイプである。
【0039】
このタイプはタグ、リーダーともにアンテナ無しで電波による通信を行うため、図7に示すように読み取り範囲2cは非常に小さいが、RFIDタグ2bを紙葉22の中に埋め込むことが可能で、頁表面には痕跡が出ない。表表紙23と裏表紙24を含んで、12枚の紙葉22に対し、RFIDタグ2bは小口27の辺に沿って13mmピッチで12個配置されている。
【0040】
また、図5、図7に示すように切り欠き2aを各紙葉22に設けて、RFIDリーダーを斜めに配置し、読み取り範囲2cに対応している。
【0041】
図5に於いて、表表紙23を含む5枚の紙葉22が開かれているので、下から5番目までのRFIDタグ2bは検出されず6番目以上は検出される。
【0042】
前記第一実施例のフォトリフレクタ411は遮蔽物の有無しか検出できないのに対し、RFIDを使うと、紙葉22の有無の他に、本2の情報、例えば題名、読むだけの本か、あるいは書き込みか、等も検知できるので、本第二実施例に於いてはモード切り替えボタン51、モード表示ランプ52は不要である。
【0043】
さらに、前記第一実施例においては、ひとつの本2にひとつの記憶装置43を対応させる必要があり、本2が変われば、例えばSDカード等を交換して記憶装置43を更新する必要があったが、本第二実施例では、その必要がなく、例えばひとつのSDカードで複数の本22に対応可能である。
【0044】
図12に於いて、本第二実施例では、検知手段41のひとつであるフォトリフレクタ411、モード切り替えボタン51、モード表示ランプ52は存在しない。
【0045】
図8、図9、図10、図11、図12は本発明による第三実施例を示す。
【0046】
本第三実施例は、第一実施例の被検知手段21、検知手段41をそれぞれRFIDタグ2b、RFIDリーダー413に置き換えたものである。本実施例に用いられているRFIDはアンテナを持ち、複数のタグを読み取り可能なアンチコリジョン機能を備えたタイプである。
【0047】
このタイプに於いても、チップ状の小さなアンテナ付きRFIDタグ2bが実用化されており、RFIDタグ2bを紙葉22の中に埋め込むことが可能で、頁表面には痕跡が出ない。図8、図9、図10では図示されていないが、第二実施例と同様、表表紙23と裏表紙24を含んで、12枚の紙葉22に対し、RFIDタグ2bは小口27の辺に沿って13mmピッチで12個配置されている。
【0048】
また、RFIDリーダー413の上方の複数のRFIDタグ2bはアンテナによる輻射電波によって検出されるので、間に紙葉が存在しても問題なく、従って前期第二実施例のように、切り欠き2aは不要である。なお本第三実施例では、RFIDリーダー413の外形一杯に張られたアンテナ414によって、本2が閉じられた状態では、すべてのRFIDタグ2bが、そのアンテナ内に位置し、検知、読み取りを確実にしている。
【0049】
本第三実施例では、紙葉22の小口27の辺に沿って直線的にRFIDタグ2bを配置しているが、このタイプのRFIDリーダーはアンテナによって読み取り範囲を広く出来るので、RFIDタグは小口27の辺に沿うだけでなく、横方向にもずらして配置可能であり、本2の判型や紙葉22の数に応じて広い範囲で対応可能である。
【0050】
図9に於いて、表表紙23を含む5枚の紙葉22が開かれているので、下から5番目までのRFIDタグ2bが検出されず6番目以上は検出される。
【0051】
前記第一実施例のフォトリフレクタ411は遮蔽物の有無しか検出できないのに対し、RFIDを使うと、紙葉22の有無の他に、本2の情報、例えば題名、読むだけの本か、あるいは書き込みか、等も検知できるので、本第三実施例に於いてはモード切り替えボタン51、モード表示ランプ52は不要である。
【0052】
さらに、前記第一実施例においては、ひとつの本2にひとつの記憶装置43を対応させる必要があり、本2が変われば、例えばSDカード等を交換して記憶装置43を更新する必要があったが、本第三実施例では、その必要がなく、例えばひとつのSDカードで複数の本22に対応可能である。
【0053】
図12に於いて、本第三実施例では、検知手段41のひとつであるフォトリフレクタ411、モード切り替えボタン51、モード表示ランプ52は存在しない。
【0054】
前記第二実施例と第三実施例に用いられたRFIDタグ2bはパッシブタイプで電源を必要としないものである。
【0055】
以上三つの実施例に於いては、小口27の辺に沿って被検知手段21と検知手段41を配列したが、横長の判型の本の場合、天25、あるいは地26の辺に沿って配列可能なことは言うまでもない。また、聴覚不自由者のために、例えば振動による触覚を通しての読解以外のデータでもよく、記録再生は必ずしも音声だけとは限らない。
【0056】
以上三つの実施例を示したが、例えば、検知手段にはフォトリフレクタ411とRFIDリーダー413が混在しても良く、実施に於いては、この三つの構成範囲を逸脱しない限りで自由に変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上述べたように、本発明によって本の利用価値、利便性が大幅に高まり、あらゆる分野でひろく利用されるものである。
【符号の説明】
【0058】
1 頁連動型入出力装置
2 本
21 被検知手段 22 紙葉
23 表表紙 24 裏表紙
25 天 26 地
27 小口 28 背
29 バンド 2a 切り欠き
2b RFIDタグ 2c 読み取り範囲
3 筐体
31 検知手段収納部 32 長穴
3a 上カバー 3b 下カバー
4 制御基板
41 検知手段 42 マイクロコンピュータ
43 記憶装置 44 音声処理回路
45 再生アンプ 46 スピーカー
47 マイク 48 電池
49 SW1検知スイッチ 50 SW2検知スイッチ
51 モード切り替えボタン 52 モード表示ランプ
411 フォトリフレクタ
412 RFIDタグ
413 RFIDリーダー
414 アンテナ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数頁の本と、少なくとも検知手段及び記憶装置とを内蔵した筐体とからなり、該本の、その表裏が頁をなし該本を構成する紙葉に、被検知手段を該紙葉ごとにずらしながら配置し、かつ該被検知手段に対応した該検知手段によって見開き頁を検知し、該記憶装置内の該見開き頁に対応した特定のデータを読み出すことを特徴とする頁連動型入出力装置。
【請求項2】
複数頁の本と、少なくとも検知手段及び記憶装置とを内蔵した筐体とからなり、該本の、その表裏が頁をなし該本を構成する紙葉に、被検知手段を該紙葉ごとにずらしながら配置し、かつ該被検知手段に対応した該検知手段によって見開き頁を検知し、該記憶装置内の該見開き頁に対応した特定の領域にデータを書き込むことを特徴とする頁連動型入出力装置。
【請求項3】
前記検知手段をフォトリフレクタとし、前記被検知手段を前記紙葉の天あるいは小口あるいは地のいずれかの辺に沿った辺縁の一部分としたことを特徴とする請求項1あるいは請求項2記載の頁連動型入出力装置。
【請求項4】
前記検知手段をRFIDリーダーとし、前記被検知手段を前記紙葉に植設されたRFIDタグとしたことを特徴とする請求項1あるいは請求項2記載の頁連動型入出力装置。
【請求項5】
前記データは音声データであって、前記筐体内に記録再生のためのマイク及びスピーカー及び音声処理回路を内蔵することを特徴とする請求項1あるいは請求項2記載の頁連動型入出力装置。
【請求項6】
前記本と前記筐体は着脱可能とされ、前記本だけでの利用も可能なことを特徴とする請求項1あるいは請求項2記載の頁連動型入出力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−52668(P2013−52668A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206583(P2011−206583)
【出願日】平成23年9月5日(2011.9.5)
【出願人】(507237417)
【Fターム(参考)】