説明

頬紅を適切に塗布するための化粧用補助具

【課題】 化粧料を精確に塗布するために改良された塗布具は存在するが、頬紅を塗布するときに塗布具と共に用いる補助具は存在しない。本発明は補助具を用いて、顔に頬紅を塗布するときに、塗布する形状や場所を勘や経験に頼らず誰でも容易に決定することができることを課題とする。
【解決手段】 頬紅塗布具で頬紅の化粧をするときに、仕上げ前の段階として顔の所定の範囲に頬紅を塗布するために顔に宛がう板部を有し、該板部に孔部が設けられ、この孔部を介して頬紅が顔に塗布される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に女性が頬紅を顔に塗布するときに、あらかじめ顔に宛がって塗布する場所や形状などを決定することができる化粧用補助具に関する。
【背景技術】
【0002】
顔にメイキャップ製品を精確に塗布するために人間工学的かつ解剖学的に設計された化粧用塗布具は存在する(例えば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特表2002−507441号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、顔に頬紅を塗布するときに、頬紅の形状や場所を勘や経験に頼らず誰でも容易に決定できるようにすることを課題とする。
【0004】
特許文献1は、化粧料を精確に塗布するための塗布具である。これに対して、本発明は頬紅を塗布具で塗布するときに、塗布する形状等を決定するための補助具であって塗布具とは別に存在する。特許文献1のように、化粧料を精確に塗布するために改良された塗布具は存在するが、頬紅を塗布するときに塗布具と共に用いる補助具は存在しない。頬紅は顔がほんのり色づくようにするためのものであって、輪郭がはっきりするように塗布せず、ぼかして塗布する。そして、輪郭をぼかす頬紅の塗布は人間の経験や勘を頼りにおおまかに行われている。したがって、特に初心者や経験の浅い使用者は、塗布した後の頬紅の形状や位置に満足せず失敗してしまうことは少なからず起きる。そうすると、塗布した頬紅を除去して再度頬紅を塗布することとなる。従来のように勘や経験に頼らず、頬紅の形状や位置を決定できれば便利である。
【0005】
また、人間の顔の形は千差万別であるから、塗布する頬紅の形状や場所によって個人差が顕著に表われる。塗布する頬紅の最適の形状と場所などの条件が判明したときは、塗布の際にその条件を容易に選択できれば使用者にとって便利である。そこで、本発明は、顔に頬紅を塗布するときに、塗布する形状や場所を勘や経験に頼らず誰でも容易に決定することができる化粧用補助具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1は、頬紅塗布具で頬紅の化粧をするときに、仕上げ前の段階として顔の所定の範囲に頬紅を塗布するために顔に宛がう板部を有し、該板部に孔部が設けられ、この孔部を介して頬紅が顔に塗布される構成である。
【0007】
請求項2は、孔部が、複数の孔の集合である要素が請求項1に付加された構成である。
【0008】
請求項3は、孔部が多数の孔の集合であり、孔の大きさは2種類以上あり、孔部の外周に最も近い孔は最小の孔が採用されている要素が請求項2に付加された構成である。
【0009】
請求項4は、鼻や目など顔の所定の一部分を基準位置として化粧用補助具の位置決めをするために、その基準位置に宛がうべき宛がい部が化粧用補助具の周縁の一部に設けられている要素が請求項1乃至請求項3に付加された構成である。
【0010】
請求項5は、孔部が可撓性を有するシート状の板部に設けられ、孔部以外の部分であって少なくとも孔部の外周に沿う部分はそのシート状の板部よりも肉厚に形成されている要素が請求項1乃至請求項4に付加された構成である。
【発明の効果】
【0011】
請求項1は、頬紅塗布具で頬紅の化粧をするときに、仕上げ前の段階として顔の所定の範囲に頬紅を塗布するために顔に宛がう板部を有し、板部に孔部が設けられ、この孔部を介して頬紅が顔に塗布される構成である。顔に塗布する頬紅の最適の形状は人によって相違する。円に近い形状が似合う人もいれば、楕円形のように横長の形状が似合う人もいる。したがって、形状について数種類のパターンの化粧用補助具を別個の商品として店頭に陳列し、需要者がその中から最適のものを選択して購入すれば、それを使用することによって常に最適の形状に仕上げることができる。店頭に陳列された化粧用補助具を選択するときに、塗布する頬紅の形状をその時点であらかじめ予測できる。これにより、需要者は頬紅が好みの形状になるものを選択できる。別個の商品として販売せず、数種類のパターンの化粧用補助具をセットにして販売したときは、購入者が数種類のパターンを利用できる。各化粧用補助具に結合部を設けて一体的に連結するようにすれば、紛失することを防止できる。さらに、孔部によって頬紅が塗布される範囲が限定されるので、必要以上に広い範囲に塗布することを防止できる。
【0012】
請求項2は、孔部が、複数の孔の集合である構成である。複数の孔であれば、塗布後に塗布具を顔から離したときに孔と孔との間の塗布されない場所が生じる。通常は、その後で再度塗布具を用いて仕上げをする。塗布された頬紅を塗布されない部分まで延ばすことによって、頬紅は全体的に薄くなって自然な感じの色づけをすることができる。
【0013】
請求項3は、孔部は多数の孔の集合であり、孔の大きさは2種類以上あり、孔部の外周に最も近い孔は最小の孔が採用されている構成である。孔部の外周に最も近い孔は最小の孔が採用されているので、塗布された頬紅の密度は孔部の外周付近で低い。このために、再度塗布具を用いて仕上げをしたときに、密度の低い外周付近は頬紅が最も薄くなるので皮膚色との境界をぼかすことができる。これにより、頬紅による色づけを自然な感じとすることができる。
【0014】
請求項4は、鼻や目など顔の所定の一部分を基準位置として化粧用補助具の位置決めをするために、その基準位置に宛がうべき宛がい部が化粧用補助具の周縁の一部に設けられている構成である。頬紅を塗布する際に、頬紅の形状を決めることは重要であるが、頬紅を塗布する場所も重要である。顔の中心に近づき過ぎても、顔の外側に寄りすぎても不自然であり滑稽に見えてしまう。また、上下の位置でも上すぎたり下すぎたりすれば不自然であり滑稽に見えてしまう。請求項4は、顔の所定の一部分を基準とすることで塗布する場所が自動的に決定されるので、塗布場所について失敗することがない。また、小鼻など顔から突出した部分の側方に宛がい部を宛がえば、使用中に化粧用補助具が安定する。
【0015】
請求項5は、孔部が可撓性を有するシート状の板部に設けられ、孔部以外の部分であって少なくとも孔部の外周に沿う部分はそのシート状の板部よりも肉厚に形成されている。孔部が可撓性を有するシート状の板部に設けられていて、シート状というのは紙のように薄い。したがって、孔部を通して頬紅を確実に塗布することができる。また、孔部の外周に沿う部分はシート状の板部よりも肉厚に形成されている。シート状の板部は薄いので腰がなくしっかり顔に宛がうことができない。外周に肉厚部分を形成したのでシート状の板部は形状が維持できるように補強され、使用時にしっかりと顔に宛がうことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に本発明を実施するための最良の形態について説明する。補助具1はフレーム2と多数の小孔5,6,7の集合体である孔部3とから成る。孔部3はプラスチックの薄いシート4で形成されている。シート4は透明であり、厚みは約0.1mmである。シート4は不透明でもよい。孔部3を薄いシート4で形成した場合の厚みはこの数値に限定されるものでなく、0.1mmより薄くてもよいし、0.1mmより厚くてもよい。たとえば、0.2〜1.0mmの厚みのシートでもよい。シートの材料は可撓性を有するものが好ましく、例えばオレフィン系フィルムが使用される。シートの材料に抗菌剤を添加してもよい。
【0017】
図1に示す孔部3の形状は楕円形である。この形状は最も一般的であり販売上ナチュラルタイプと名付けられる。形状は楕円形に限定されるものでなく、頬紅を顔に塗布したときに不自然でない形状であればよい。例えば図4に示すような勾玉形であってもよい。この形状は細長いので販売上シャープタイプと名付けられる。図5に示すような円形であってもよい。この形状はかわいらしいので販売上キュートタイプと名付けられる。小孔5,6,7の大きさは全部同じではなく、数種類の大きさのものが存在する。孔部3の外周に沿って設けられている小孔5は一番小さく形成されている。この小孔5の直径は約1.2mmである。中心付近の小孔7は最も大きく形成されている。この小孔7の直径は約2.0mmである。それらの小さな小孔5と大きな小孔7との間にそれらの中間の大きさの小孔6が設けられている。この小孔6の直径は約1.7mmである。各小孔の形状、大きさ、あるいは配置等についてはこれに限定されるものではない。例えば、孔部3の中心から外側に向かって小孔が徐々に小さくなっていくものであってもよい。
【0018】
フレーム2は不透明のプラスチックで孔部3よりも肉厚に形成されている。厚みは約2mmであるがこれに限定されるものでない。また、透明であってもよい。フレーム2を設けた理由の一つはシート状に形成された孔部3の補強のためである。また、フレーム2にはその一部を膨出させた把持部8が形成されている。把持部8を持つことによって塗布作業を円滑に行うことができる。把持部8の両面に窪み16,16が設けられているので、指先にフィットする。フレーム2は可撓性を有するように形成してもよい。これによって、フレーム2が顔の凹凸に適応するように撓むので使用しやすくなる。
【0019】
フレーム2の側部に弧状の凹部9が形成されている。図1の本実施形態において、凹部9の底から孔部3までの距離は約15mmである。図4のものでは約17mmであり、図5のものでは約19mmである。これらの距離は孔部3の形状によって異なる。凹部9の底部と孔部3の間の部分に一本の横線10が設けられている。また、フレーム2の上部には横線10に垂直な方向に三本の縦線11,12,13が平行に設けられている。これらの横線10及び縦線11,12,13は補助具1の他方の面(図示せず。)にも設けられている。これらの横線又は縦線は印刷で表示するが、補助具1の表面に直接溝を設けたり突条を設けたりして表示してもよい。また、線に目盛を付してもよい。
【0020】
図2に示すように、フレーム2は2つのフレーム板14,14を重ねて結合した構造である。各フレーム板14,14には窓部15,15が設けられている。孔部3はこの窓部15,15に存在する。孔部3を有するシート4はフレーム板14,14に挟着されている。シート4を挟着したフレーム板14,14を結合する構造としては、シート4とフレーム板14の接触面及び重ねた2つのフレーム板14,14の接触面を接着剤で接着する。あるいは、シート4の孔部3よりも外側部分にいくつかの小さな孔を設け、一方のフレーム板14のシート4との接触面にその小さな孔に挿通可能ないくつかの突起を設け、他方のシート4の同じ場所にその突起が嵌合する穴を設ける。これらのいくつかの小さな孔と突起は把持部8の周囲に設けてもよい。そして、2つのフレーム板14,14を接着する際に、シート4の小さな孔に一方のフレームの突起を挿通し、その突起を他方のシート4の穴に嵌合する。これにより、突起がシート4を確実に固定してシート4がフレーム2から外れることがない。接着に代えて溶着でもよい。
【0021】
次に、本発明の使用方法を説明する。この使用方法は一例に過ぎず、使用者がどのように使用してもよいことは勿論である。まず、図3に示すように補助具1の凹部9を小鼻17の左側に宛がう。小鼻17は、化粧用補助具の位置決めをする顔の所定の一部分であり、これが基準位置である。この場合、横線10が水平になるように補助具1を顔に宛がう。この作業によって、補助具1を宛がう場所が決定する。また、頬紅の塗布される場所と形状も決定する。他の方法としては、横線10は水平でなくてもよい。また、凹部9は小鼻17に宛がわなくてもよく、距離を置いてもよい。基準位置を小鼻17の左側あるいは右側とせず、ホクロなどでもよい。
【0022】
この後で塗布具であるブラシに頬紅を付けて塗布するのであるが、最初にブラシを孔部3のどの場所に宛がって塗布を開始するかについて、横線10と縦線11,12,13を利用してその起点を知ることができる。例えば、眼球の黒目18の端部を通る縦指示線19と横線10の延長線との交点が起点20である。黒目の端部を通る縦指示線19は使用者によって位置が異なる。そこで、黒目の端部が三本の縦線11,12,13を基準線としてどの位置にあるかを目測する。その位置を確認した後に、その位置から真下に線を延ばして横線10と交差する点を起点として決定する。すなわち、縦線11,12,13がないときは、黒目の端部から横線10の高さまでの長い縦線を目測しなければならず正確性に欠ける。そこで、縦線11,12,13を設けて起点20を決定する目安とするのである。縦線11,12,13は縦指示線19の目安であるから、図3に示すように縦指示線19が必ずしも縦線11,12,13のいずれかと一致するものでない。むしろ、それらの縦線から外れる場合が多い。縦指示線19が縦線11,12,13から外れても、縦指示線19の目安とすることができることは言うまでもない。
【0023】
起点20が決定したら、起点20から頬紅を付けたブラシを入れ、ブラシを孔部3の長手方向に沿って顔の側方へ運ぶ。その際、ブラシを進行方向に寝かせて運ぶと良い。図5のように孔部3が円形のときはやや斜め上方向に運ぶ。この作業によって頬紅のベース形状がつくられる。次いで、補助具1を顔から取り除く。この塗布によってベース形状を構成する頬紅が顔に点在する。その後、点在する頬紅をブラシで何度かぼかして濃さを調整して仕上げる。
【0024】
前述したように、横線10及び縦線11,12,13は補助具1の背面にも設けられている。したがって、図3に示すように顔の左側に頬紅を塗布した後で、補助具1を裏返して顔の右側に宛がうことによって顔の両側に使用できる。また、顔の左右で同じ補助具を使用するから、塗布した頬紅は対称となりバランスのよい化粧ができる。
【0025】
本発明は、上述した形態に限定されるものではない。補助具1はフレーム2とシート4とに分けずに、一枚の薄板で形成してもよい。その場合、薄板の厚みは3mm以下であることが好ましい。2mmでもよく1mmでもよい。それ以下でもよい。フレーム2の材料はプラスチックに限定されるものでなく、金属や紙などでもよい。孔部3は複数の孔の集合でなくてもよく、孔部3は単一の孔から成るものであってもよい。使用後に孔部3に付着している頬紅を迅速に除去するために、孔部3の表面に撥水性及び撥油性に優れた被膜を形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の正面図
【図2】図1におけるA−A線拡大断面図
【図3】使用状態を示す正面図
【図4】形状を異にする実施形態の正面図
【図5】形状を異にする実施形態の正面図
【符号の説明】
【0027】
1 補助具
2 フレーム
3 孔部
4 シート
5 小孔
6 小孔
7 小孔
8 把持部
9 凹部
10 横線
11 縦線
12 縦線
13 縦線
14 フレーム板
15 窓部
16 窪み
17 小鼻
18 黒目
19 縦指示線
20 起点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
頬紅塗布具で頬紅の化粧をするときに、仕上げ前の段階として顔の所定の範囲に頬紅を塗布するために顔に宛がう板部を有し、該板部に孔部が設けられ、この孔部を介して頬紅が顔に塗布されることを特徴とする化粧用補助具。
【請求項2】
孔部は、複数の孔の集合である請求項1記載の化粧用補助具。
【請求項3】
孔部は多数の孔の集合であり、孔の大きさは2種類以上あり、孔部の外周に最も近い孔は最小の孔が採用されている請求項2記載の化粧用補助具。
【請求項4】
鼻や目など顔の所定の一部分を基準位置として化粧用補助具の位置決めをするために、その基準位置に宛がうべき宛がい部が化粧用補助具の周縁の一部に設けられている請求項1乃至請求項3記載の化粧用補助具。
【請求項5】
孔部は可撓性を有するシート状の板部に設けられ、孔部以外の部分であって少なくとも孔部の外周に沿う部分はそのシート状の板部よりも肉厚に形成されている請求項1乃至請求項4記載の化粧用補助具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−239072(P2006−239072A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−57557(P2005−57557)
【出願日】平成17年3月2日(2005.3.2)
【出願人】(000001454)株式会社貝印刃物開発センター (123)