頭部保護エアバッグ装置
【課題】三列目の座席に着座した乗員の頭部を的確に保護可能な頭部保護エアバッグ装置を提供すること。
【解決手段】エアバッグ23が、膨張完了時に一列目と二列目の座席S1・S2の側方の窓W1・W2を覆う前側膨張遮蔽部30・31を有した前列用バッグ24と、膨張完了時に三列目の座席S3の側方の窓W3を覆う後側膨張遮蔽部51を有した後列用バッグ45と、から構成される頭部保護エアバッグ装置。後列用バッグ45が、連結部59を前列用バッグ24の膨張完了時における後縁近傍に配設されるガイド部43に連結させることにより、前列用バッグ24に連結される。連結部59は、前列用バッグ24のみの展開膨張を許容し、かつ、後列用バッグ45の膨張完了時において連結部59から後列用バッグ45の後端近傍に配設される取付部55Bにかけてテンションを発生可能に、ガイド部43に連結されている。
【解決手段】エアバッグ23が、膨張完了時に一列目と二列目の座席S1・S2の側方の窓W1・W2を覆う前側膨張遮蔽部30・31を有した前列用バッグ24と、膨張完了時に三列目の座席S3の側方の窓W3を覆う後側膨張遮蔽部51を有した後列用バッグ45と、から構成される頭部保護エアバッグ装置。後列用バッグ45が、連結部59を前列用バッグ24の膨張完了時における後縁近傍に配設されるガイド部43に連結させることにより、前列用バッグ24に連結される。連結部59は、前列用バッグ24のみの展開膨張を許容し、かつ、後列用バッグ45の膨張完了時において連結部59から後列用バッグ45の後端近傍に配設される取付部55Bにかけてテンションを発生可能に、ガイド部43に連結されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、三列シートタイプの車両に搭載される頭部保護エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、三列シートタイプの車両に搭載される頭部保護エアバッグ装置は、車両の車内側における窓の上縁側に折り畳まれて収納されるとともに、インフレーターからの膨張用ガスを流入させて窓の車内側を覆うように展開膨張する構成のエアバッグを備えていた。そして、従来の頭部保護エアバッグ装置では、エアバッグが、一列目から三列目の座席の側方に配設される3つの窓の車内側を、それぞれ、覆うように、膨張用ガスを流入させて膨張する3つの膨張遮蔽部を、を備えた構成であった。(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−200959公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の頭部保護エアバッグ装置では、エアバッグが、3つの膨張遮蔽部を備える構成であることから、エアバッグが大型化して、容量が増大し、インフレーターも高出力のものを使用する必要が生じていた。また、三列シートタイプの車両の場合、三列目の座席に乗員が着座しない場合も多いことから、エアバッグを、膨張完了時に、一列目と二列目の座席の側方に配設される窓の車内側を覆う構成の前列用バッグと、三列目の座席の側方に配設される窓の車内側を覆う構成の後列用バッグと、に、分割して、それぞれ、インフレーターからの膨張用ガスを流入させて展開膨張させる構成とし、後列用バッグを、三列目の座席に乗員が着座した場合にのみ展開膨張可能な構成とすることも考慮できる。しかし、後列用バッグを分割させた場合、車外側へ移動する乗員の頭部を拘束する際に、乗員頭部の車外側への移動を防止するテンションを確保し難い。
【0004】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、三列目の座席に着座した乗員の頭部を的確に保護可能な頭部保護エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る頭部保護エアバッグ装置は、膨張完了時の上縁側を車両の車内側における窓の上縁側のボディ側に固定させて、窓の上縁側に折り畳まれて収納されるとともに、インフレーターからの膨張用ガスを流入させて収納位置から下方に突出しつつ窓の車内側を覆うように展開膨張する構成のエアバッグ、を備える構成とされて、三列シートタイプの車両に搭載され、
エアバッグが、インフレーターからの膨張用ガスを流入させて膨張するガス流入部と、膨張用ガスを流入させない非流入部と、を備える構成とされ、
ガス流入部が、エアバッグの膨張完了時に、窓の車内側を覆うように配設される膨張遮蔽部を備える構成の頭部保護エアバッグ装置であって、
エアバッグが、それぞれ別体とされて、膨張完了時に一列目と二列目の座席の側方に配設される窓の車内側を覆うように配設される前側膨張遮蔽部を有した前列用バッグと、膨張完了時に三列目の座席の側方に配設される窓の車内側を覆うように配設される後側膨張遮蔽部を有した後列用バッグと、から構成され、
後列用バッグが、膨張完了時の前端近傍における下縁側の部位に配設される連結部を、前列用バッグの膨張完了時における後縁近傍において略上下方向に沿って配設されるガイド部に連結させることにより、前列用バッグに連結される構成とされ、
連結部が、
前列用バッグのみを展開膨張させる際に、ガイド部に対して相対的に摺動可能として、前列用バッグのみの展開膨張を許容するように、ガイド部に連結され、かつ、
前列用バッグと後列用バッグとをともに展開膨張させる際に、後列用バッグの下方への展開に伴ってガイド部の下端付近まで摺動可能とされて、後列用バッグの膨張完了時において、連結部から後列用バッグの上縁側における後端近傍に配設されるボディ側への固定部位にかけてテンションを発生可能に、
ガイド部に連結されていることを特徴とする。
【0006】
本発明の頭部保護エアバッグ装置では、展開膨張時に三列目の座席の側方に配設される窓の車内側を覆う後列用バッグを、展開膨張時に一列目・二列目の座席の側方に配設される窓の車内側を覆う前列用バッグと、別体としているものの、後列用バッグは、展開膨張時の前端近傍の下縁側の部位に配設される連結部により、前列用バッグと連結されている構成である。三列目の座席に乗員が着座した状態では、通常、運転者がいる一列目あるいは二列目の座席にも運転者を含めた乗員が着座していることから、後列用バッグの展開膨張時には、必ず、前列用バッグも展開膨張することとなる。そのため、後列用バッグは、展開膨張完了時に、前縁側の下端近傍部位を、膨張を完了させた前列用バッグのガイド部の下端付近に、連結部を介して連結された状態とし、そして、連結部から後列用バッグの上縁側における後端近傍に配設されるボディ側への固定部位にかけてテンションを発生可能に、膨張を完了させることとなる。その結果、着座した乗員の頭部が車外側に大きく移動した場合にも、連結部から斜め後方の固定部位にかけてのテンションを発生させた後側膨張遮蔽部により、乗員の頭部を、車外側へ移動させることなく、拘束することができて、乗員の頭部を的確に保護することが可能となる。
【0007】
従って、本発明の頭部保護エアバッグ装置では、三列目の座席に着座した乗員の頭部を的確に保護することができる。
【0008】
また、本発明の頭部保護エアバッグ装置では、エアバッグが、それぞれ別体とされる前列用バッグと後列用バッグとから構成されており、三列目の座席に乗員が着座していない状態では、前列用バッグのみを展開膨張させる構成であるが、本発明の頭部保護エアバッグ装置では、後列用バッグを前列用バッグに連結させる連結部が、前列用バッグに配設されるガイド部に対して相対的に摺動可能として、前列用バッグのみの展開膨張を許容するように、ガイド部に連結されていることから、連結部により前列用バッグと後列用バッグが連結されている構成であっても、前列用バッグのみを円滑に展開膨張させることができる。
【0009】
さらに、上記構成の頭部保護エアバッグ装置において、ガイド部を、略上下方向に沿った帯状として、前側膨張遮蔽部の後縁側の非流入部の部位に配設させる構成とすれば、ガイド部が、膨張完了時に乗員の頭部を保護する部位であるガス流入部の膨張遮蔽部から後方側に外れた非流入部の位置に配設されることとなるため、エアバッグの展開膨張時に、ガイド部や、ガイド部と連結される連結部が、一列目や二列目の座席に着座した乗員と干渉することを抑えることができて、好ましい。
【0010】
さらにまた、上記構成の頭部保護エアバッグ装置において、前列用バッグに、非流入部として、膨張完了時における前側膨張遮蔽部の後縁側における少なくとも下端側の部位から車両後方側に延びるように配設されて、後端を三列目に配設される窓の上縁側に固定させる延設部を、配設させる構成とし、
後側膨張遮蔽部の前・後列用バッグの膨張完了時における車外側を、延設部に支持させる構成とすることが好ましい。
【0011】
頭部保護エアバッグ装置を上記構成とすれば、エアバッグの膨張完了時に、延設部により、膨張を完了させた後列用バッグにおける後側膨張遮蔽部の車外側を支持させることができることから、三列目の座席に着座した乗員の頭部が車外側に大きく移動しても、乗員の頭部を、一層確実に拘束することができる。また、上記構成の頭部保護エアバッグ装置では、前列用バッグの車両のボディ側への固定位置における後端側の部位を、延設部を配設させない構成のものと比較して、車両後方側に位置させることができることから、延設部を配設させない構成のものと比較して、前列用バッグの膨張完了時に、前後方向に沿うように大きなテンションが発生することとなる。そのため、一列目あるいは二列目の座席に着座した乗員の頭部が車外側に大きく移動した場合にも、前側膨張遮蔽部により、乗員の頭部を確実に拘束することができて、好ましい。なお、上記構成の頭部保護エアバッグ装置では、前列用バッグのみを展開膨張させた際に、延設部が、三列目の座席の側方に配設される窓の車内側を覆うこととなるが、延設部は、膨張用ガスを流入させない非流入部から構成されており、前列用バッグの展開膨張時に、薄い状態で展開することから、三列目の座席を、不使用時に、窓の車内側に近接して立てるように格納するタイプの車両に適用した場合にも、延設部が格納されている三列目の座席と干渉することを極力抑えることができ、前列用バッグを円滑に展開膨張させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。本発明の実施形態である頭部保護エアバッグ装置Mは、図1に示すように、前後方向に沿って三列に並んだ座席S1・S2・S3を備えた三列シートタイプの車両Vに搭載されるもので、車両Vの窓(サイドウィンド)W1・W2・W3及びリヤピラー部RPの上縁側におけるフロントピラー部FPやルーフサイドレール部RRに、搭載されている。なお、実施形態では、エアバッグ装置Mは、三列目の座席S3を、不使用時に、図7・9に示すごとく、窓W3の車内側に近接して立てるように格納するタイプの車両Vに搭載されている。
【0013】
エアバッグ装置Mは、エアバッグ23、インフレーター9・13、取付ブラケット10・14・18、及び、エアバッグカバー21を、備えて構成されている。
【0014】
エアバッグカバー21は、図1に示すように、フロントピラー部FPに配設されるピラーガーニッシュ3と、ルーフサイドレール部RRに配設されるルーフヘッドライニング4と、のそれぞれの下縁側から構成されている。そして、エアバッグカバー21は、折り畳まれて収納されたエアバッグ23の車内側を覆うように配設されるとともに、展開膨張時のエアバッグ23を車内側へ突出可能とするために、エアバッグ23に押されて車内側に開き可能な構成とされている。
【0015】
インフレーター9は、エアバッグ23の後述する前列用バッグ24に膨張用ガスを供給するもので、略円柱状とされて、先端(前端)側に、膨張用ガスを吐出可能な図示しないガス吐出口を、配設させている構成である。インフレーター9は、ガス吐出口付近を含めた先端付近を、前列用バッグ24の後述するガス流入口部29に挿入させ、ガス流入口部29の後端29a付近に外装されるクランプ12を利用して、前列用バッグ24に対して、連結されている。また、インフレーター9は、インフレーター9を保持する取付ブラケット10と、取付ブラケット10をボディ1側のインナパネル2に固定するための取付ボルト11と、を利用して、インナパネル2における第1中間ピラー部P1の上方となる位置に、取り付けられている。
【0016】
インフレーター13は、エアバッグ23の後述する後列用バッグ45に膨張用ガスを供給するもので、インフレーター9と同様に、略円柱状とされて、ガス吐出口を含めた先端(前端)付近を、後列用バッグ45の後述するガス流入口部50に挿入させ、ガス流入口部50の後端50a付近に外装されるクランプ16を利用して、後列用バッグに対して、連結されている。また、インフレーター13は、インフレーター9と同様に、取付ブラケット18と取付ボルト19とを利用して、インナパネル2における窓W3の上方となる位置に、取り付けられている。
【0017】
エアバッグ23は、車内側のドアや窓W1・W2・W3の上縁側周縁におけるフロントピラー部FPの下縁側からルーフサイドレール部RRの下縁側にわたって、折り畳まれて収納されるもので、それぞれ別体とされて、膨張完了時に窓W1・W2の車内側を覆い可能な構成とされる前列用バッグ24と、膨張完了時に窓W3の車内側を覆い可能な構成とされる後列用バッグ45と、から構成されている。
【0018】
前列用バッグ24は、バッグ本体25と、バッグ本体25の後端付近に配設されるガイド部43と、から構成されている。バッグ本体25は、実施形態の場合、ポリアミド糸等を使用した袋織りにより製造されている。バッグ本体25は、図1・6に示すように、上縁25a側に形成される後述する取付部35の部位で、窓W1・W2の上縁側におけるボディ1側のインナパネル2に固定されるとともに、インフレーター9からの膨張用ガスを流入させて、折り畳み状態から展開して収納位置から下方に突出しつつ、第1中間ピラー部P1の前後に配設される窓(一列目と二列目の座席S1・S2の側方に配設される窓)W1・W2、及び、第1・第2中間ピラー部P1・P2のそれぞれの車内側を覆うように、展開膨張する構成である。また、バッグ本体25は、図2・3に示すように、車内側壁部26aと車外側壁部26bとを離すようにして、膨張用ガスG1を内部に流入可能なガス流入部26と、膨張用ガスを流入させない非流入部34と、から構成されている。
【0019】
ガス流入部26は、実施形態の場合、ガス供給路部28、ガス流入口部29、及び、前側膨張遮蔽部としての第1・第2膨張遮蔽部30・31、から構成されている。
【0020】
ガス供給路部28は、図2に示すように、バッグ本体25の上縁25a側で、車両Vの前後方向に沿うように配設されており、インフレーター9から吐出される膨張用ガスG1を、ガス供給路部28の下方に配設される第1・第2膨張遮蔽部30・31に案内する構成である。ガス供給路部28の前後方向における中央から、若干、前方側にずれた位置には、インフレーター9と接続されるガス流入口部29が、ガス供給路部28と連通されて、ガス供給路部28から上方に突出するように、配設されている。ガス流入口部29は、実施形態の場合、後端29a側を開口させている。そして、ガス流入口部29は、クランプ12を利用して、インフレーター9に連結されることとなる。
【0021】
第1膨張遮蔽部30は、前列用バッグ24の膨張完了時において、一列目の座席S1の側方に配設される窓W1の車内側を覆う部位である。第2膨張遮蔽部31は、前列用バッグ24の膨張完了時において、二列目の座席S2の側方に配設される窓W2の車内側を覆う部位である。第1・第2膨張遮蔽部30・31は、その領域内に、後述する区画結合部37により区画されて、それぞれ、上下方向に沿って配設される複数の縦膨張部32を、前後に並設させて構成されており、実施形態の場合、第1膨張遮蔽部30は、3つの縦膨張部32から構成され、第2膨張遮蔽部31は、2つの縦膨張部32から構成されている。
【0022】
非流入部34は、車内側壁部26aと車外側壁部26bとを結合させた構成とされており、実施形態の場合、取付部35、周縁結合部36、区画結合部37、及び、板状部38、から構成されている。周縁結合部36は、バッグ本体25の外周縁の部位において、ガス流入部26の周囲を囲むように、配設されている。
【0023】
取付部35は、バッグ本体25の上縁25a側における周縁結合部36の上縁側の部位や、板状部38における後述する延設部39・40の上縁側から、上方へ突出するように、複数(実施形態では7個)配設されている。各取付部35には、前列用バッグ24をインナパネル2に取り付けるための取付ブラケット18が固着されることとなる。取付ブラケット18は、取付部35の車内側と車外側とを覆うように配設される2枚の板金製とされている(図6参照)。そして、各取付部35は、取付ボルト19を使用して、取付ブラケット18ごと、ボディ1側のインナパネル2に固定されている。実施形態の場合、前列用バッグ24の後端側となる延設部40の上縁側に配設される取付部35A・35Bは、後述する後列用バッグ45の取付部55A・55Bとともに、インナパネル2に固定される構成である。また、取付部35Aは、さらに、ガイド部43の上端部位43aとともに、インナパネル2に固定される構成である。取付部35Bは、取付部35Bを取付部55Bの車外側Oに重ねた状態で、取付部35Bの車外側Oと取付部55Bの車内側Iとに取付ブラケット18を配置させて、インナパネル2に固定されている(図6参照)。取付部35Aは、同様に、取付部35Aの車内側に、ガイド部43の上端部位43aと、後列用バッグ45の取付部55Aと、を重ねた状態で、取付部35Aの車外側と取付部55Aの車内側とに、取付ブラケット18を配置させて、インナパネル2に固定されることとなる。
【0024】
そして、実施形態の前列用バッグ24では、延設部39の前端付近に配設される取付部35Cが、フロントピラー部FPの下部側の部位においてボディ1側に取り付けられ、延設部40の後端付近に配設される取付部35Bが、窓W3の後端付近となる上縁側の部位においてボディ1側に取り付けられていることから、前列用バッグ24の膨張完了時において、取付部35C・35Bの間に、前後方向に沿ったテンションを発生させることができる。特に、実施形態の前列用バッグ24では、複数の縦膨張部32を、前後方向に沿って並設させていることから、前列用バッグ24の展開膨張時に、各縦膨張部32が前後方向の幅寸法を縮めるように膨張し、膨張を完了させた前列用バッグ24に、前後方向に沿って大きなテンションが発生することとなる。
【0025】
板状部38は、第1膨張遮蔽部30の前縁側から車両前方側に延びるように配設される延設部39と、第2膨張遮蔽部31の後縁側から車両後方側に延びるように配設される延設部40と、第1・第2膨張遮蔽部30・31の間におけるガス供給路部28の下方に配設される長方形板状部41と、から構成されている。延設部39は、前端側と、後端側となる第1膨張遮蔽部30の前縁側と、の上縁側となる部位に、取付部35C・35を配設させている。延設部40は、略三角板系状とされて、前端側となる第2膨張遮蔽部31の後縁近傍部位と、後端側と、の上縁側となる部位に、取付部35A・35Bを配設させている。そして、前列用バッグ24の膨張完了時に、既述したように、延設部39の前端に配設される取付部35Cと、延設部40の後端に配設される取付部35Bと、の間に、前後方向に沿ったテンションが、発生することとなる。また、延設部40は、前列用バッグ24と後列用バッグ45とがともに膨張を完了させた際に、後列用バッグ45の車外側O
に配設されて後述する第3膨張遮蔽部(後側膨張遮蔽部)51の車外側Oを支持することとなる(図9参照)。長方形板状部41は、前列用バッグ24におけるバッグ本体25の全体形状を確保するとともに、ガス流入部26の容積を小さくして、膨張完了までの時間を短くするために、配設されている。
【0026】
区画結合部37は、各第1・第2膨張遮蔽部30・31の領域内において、周縁結合部36や長方形板状部41の上縁側から延びるように、配設されている。これらの区画結合部37は、第1・第2膨張遮蔽部30・31を複数の縦膨張部32に区画して、膨張完了時の前列用バッグ24におけるバッグ本体25の厚さを規制するために、配設されている。後端側に配設される縦膨張部32Aの部位に配設される区画結合部37Aは、縦膨張部32Aの上端付近の前後方向の中間部位付近となる位置に、下方に突出する突出部37aを備えている構成である。この突出部37aは、縦膨張部32Aにおいて、前後方向の略中央部位における上端付近の部位を区画して、第1中間ピラー部P1の車内側に配設される縦膨張部32Aの膨張完了時の厚さ寸法を規制するために、配設されている(図7参照)。
【0027】
ガイド部43は、バッグ本体25と別体とされるとともに、可撓性を有した帯状とされて、実施形態の場合、ポリアミド糸やポリエステル糸等を使用した織布から形成されている。ガイド部43は、後列用バッグ45に配設される後述する連結部59に挿通可能な帯状とされて、バッグ本体25の車内側に配設されている。実施形態の場合、ガイド部43は、第2膨張遮蔽部31の後方側において、下端43b側を上端43a側よりも前方側に位置させるように傾斜しつつ、上下方向に略沿うように配設されて、上下両端側をバッグ本体25に結合させている。具体的には、ガイド部43の上端側の部位43aは、取付部35Aとともに取付ブラケット18を利用してインナパネル2に固定されることにより、バッグ本体25に固定されている。下端側の部位43bは、第2膨張遮蔽部31の後縁近傍となる延設部40の部位に、縫着されて、バッグ本体25に固定されている。また、ガイド部43は、前列用バッグ24の折り畳み収納時、バッグ本体25とともに折り畳まれて収納されることとなる。
【0028】
後列用バッグ45は、バッグ本体46と、バッグ本体46の前縁近傍に配設されて前列用バッグ24のガイド部43と連結される連結部59と、から構成されている。バッグ本体46は、前列用バッグ24のバッグ本体25と同様に、ポリアミド糸等を使用した袋織りにより製造されている。バッグ本体46は、図1・6に示すように、上縁46a側に形成される後述する取付部55の部位で、W3の上縁側におけるボディ1側のインナパネル2に固定されるとともに、インフレーター13からの膨張用ガスを流入させて、折り畳み状態から展開して収納位置から下方に突出しつつ、第2中間ピラー部P2とリヤピラー部RPとの間に配設される窓W3の車内側を覆うように、展開膨張する構成である。実施形態の場合、後列用バッグ45は、三列目の座席に配設された荷重センサや圧力検知センサ等からなる乗員着座検知センサが、乗員の着座を検知した場合にのみ、エアバッグ作動回路を作動させて、展開膨張する構成とされている。また、後列用バッグ45のバッグ本体46は、図4・5に示すように、車内側壁部47aと車外側壁部47bとを離すようにして、膨張用ガスG2を内部に流入可能なガス流入部47と、膨張用ガスを流入させない非流入部54と、から構成されている。
【0029】
ガス流入部47は、ガス供給路部49、ガス流入口部50、及び、後側膨張遮蔽部としての第3膨張遮蔽部51、から構成されている。
【0030】
ガス供給路部49は、図4に示すように、バッグ本体46の上縁46a側で、車両Vの前後方向に沿うように配設されており、インフレーター13から吐出される膨張用ガスG2を、ガス供給路部49の下方に配設される第3膨張遮蔽部51に案内する構成である。ガス供給路部49の前後方向における中央から、若干、前方側にずれた位置には、インフレーター13と接続されるガス流入口部50が、ガス供給路部49と連通されて、ガス供給路部49から上方に突出するように、配設されている。ガス流入口部50は、実施形態の場合、後端50a側を開口されている。そして、ガス流入口部50は、クランプ16を利用して、インフレーター13に連結されることとなる。
【0031】
第3膨張遮蔽部51は、バッグ本体46の膨張完了時において、三列目の座席S3の側方に配設される窓W3の車内側を覆う部位であり、その領域内に、後述する区画結合部57により区画されて、それぞれ、上下方向に沿って配設される2つの縦膨張部52A・52Bを、前後に並設させて構成されている。
【0032】
非流入部54は、車内側壁部47aと車外側壁部47bとを結合させた構成とされており、実施形態の場合、取付部55、周縁結合部56、及び、区画結合部57、から構成されている。周縁結合部56は、バッグ本体46の外周縁の部位において、ガス流入部47の周囲を囲むように、配設されている。
【0033】
取付部55は、バッグ本体46の上縁46a側における前後両端近傍となる部位から、上方へ突出するように、2個配設されている。各取付部55A・55Bは、図1・6に示すごとく、実施形態の場合、前列用バッグ23の取付部35A・35Bとともに、取付ブラケット18及び取付ボルト19を使用して、ボディ1側のインナパネル2に固定されている。
【0034】
区画結合部57は、第3膨張遮蔽部51の領域内において、第3膨張遮蔽部51を2つの縦膨張部52A・52Bに区画して、膨張完了時の後列用バッグ45におけるバッグ本体46の厚さを規制するために、配設されている。区画結合部57は、縦膨張部52A・52Bを区画するように上下方向に沿って配設される縦区画部57aと、縦区画部57aの上端から前方に突出するように前後方向に沿って配設される横区画部57bと、を備えて構成されている。横区画部57bは、ガス供給路部49の下縁側を構成するとともに、縦膨張部52Aの上端側を閉塞する構成である。
【0035】
連結部59は、バッグ本体46と別体とされるもので、実施形態の場合、ポリアミド糸やポリエステル糸等を使用した帯状の織布から形成されて、バッグ本体46の前端近傍における下縁側の部位に、配設されている。そして、連結部59は、長手方向の両端をバッグ本体46に縫着させて、前列用バッグ24に配設されるガイド部43を挿通可能な輪状とされており、実施形態の場合、ガイド部43に対して相互に摺動可能に連結されている。具体的には、連結部59は、前列用バッグ24のみを展開膨張させる際に、前列用バッグ24のみの展開膨張を許容するとともに、前列用バッグ24と後列用バッグ45とをともに展開膨張させる際に、後列用バッグ45の下方への展開に伴ってガイド部43の下端43b付近まで摺動可能とされて、後列用バッグ45の膨張完了時において、連結部59から後列用バッグの後端側に配設される取付部55Bにかけてテンションを発生させるように、ガイド部43に連結される構成である。
【0036】
次に、実施形態のエアバッグ装置Mの車両Vへの搭載について説明する。バッグ本体46に予め連結部59を縫着させて、後列用バッグ45を形成しておく。また、ガイド部43の下端43bも、予め、バッグ本体25に縫着させておく。まず、平らに展開した後列用バッグ45を、連結部59の部位を除いて、図4の二点鎖線に示すように、前後方向に沿うような折目C2を付けて、下縁46b側を上縁46a側に接近させるように蛇腹折りし、折り崩れ防止用の図示しないラッピング材により、所定箇所をくるんでおく。前列用バッグ24も、同様に、平らに展開した状態から、図2の二点鎖線に示すように、前後方向に沿うような折目C1を付けて、下縁25b側を上縁25a側に接近させるように蛇腹折りする。このとき、ガイド部43もバッグ本体25とともに蛇腹折りされるが、バッグ本体25を上縁25a近傍まで折り畳んだ状態で、ガイド部43を連結部59に挿通させ、ガイド部43と連結部59とを連結しておく。すなわち、連結部59は、前・後列用バッグ24・45の折り畳み収納時において、前列用バッグ24の上端近傍(ガイド部43の上端43a近傍)に、配設されることとなる。そして、折り畳まれた前列用バッグ24も、折り崩れ防止用の図示しないラッピング材により、所定箇所をくるんでおく。
【0037】
そして、前列用バッグ24の取付部35A・35Bを、それぞれ、後列用バッグ45の取付部55A・55Bの車外側Oに位置させるように、取付部35A・35B・55A・55B相互を重ねる。このとき、取付部35A・55A間には、ガイド部43の上端側部位43aが介在されることとなる。そして、各取付ブラケット35・55に、取付ブラケット18を取り付けておく。なお、取付部35A・上端側部位43a・取付部55A、及び、各取付部35B・55Bは、それぞれ、相互に重ねられた状態で、取付ブラケット18に挟持されることとなる。また、クランプ12を利用しつつ、前列用バッグ24のガス流入口部29にインフレーター9を連結させ、同様に、クランプ16を利用して、後列用バッグ45のガス流入口部50にインフレーター13を連結させ、各インフレーター9・13の周囲に、取付ブラケット10・14を取り付けて、各インフレーター9・13を、それぞれ、前列用・後列用バッグ24・45に組み付けて、エアバッグ組付体を形成しておく。
【0038】
その後、各取付ブラケット10・14・18をインナパネル2の所定位置に配置させてボルト11・15・19止めし、エアバッグ組付体をボディ1に取り付ける。次いで、インフレーター9・13に、所定のインフレーター作動用の制御装置から延びる図示しないリード線を結線し、ピラーガーニッシュ3やルーフヘッドライニング4をボディ1に取り付け、さらに、ピラーガーニッシュ5・6・7をボディ1に取り付ければ、エアバッグ装置Mを車両Vに搭載することができる。
【0039】
そして、エアバッグ装置Mの車両Vへの搭載後、三列目の座席S3に乗員が着座しない状態では、インフレーター9のみが作動されて、図7に示すごとく、前列用バッグ24のみが展開膨張することとなる。三列目の座席S3に乗員が着座した状態では、インフレーター9・13が作動して、図8に示すごとく、前列用・後列用バッグ24・45が、ともに展開膨張することとなる。通常、三列目の座席S3に乗員が着座した状態で、運転者がいる一列目あるいは二列目の座席S1・S2に運転者を含めた乗員が着座していないことは考えられないことから、実施形態のエアバッグ装置Mでは、後列用バッグ45の展開膨張時には、必ず前列用バッグ24も展開膨張することとなる。
【0040】
インフレーター9・13が作動されれば、インフレーター9からの膨張用ガスG1が、図2の二点鎖線に示すように、ガス流入口部29からガス供給路部28内を流れ、さらに、第1・第2膨張遮蔽部30・31内に流入し、前列用バッグ24の第1・第2膨張遮蔽部30・31が、折りを解消させつつ膨張し始める。同時に、インフレーター13からの膨張用ガスG2が、図4の二点鎖線に示すように、ガス流入口部50からガス供給路部49内を流れ、さらに、第3膨張遮蔽部51内に流入して、後列用バッグ45の第3膨張遮蔽部51が、折りを解消させつつ膨張し始める。そして、エアバッグ23(前列用・後列用バッグ24・45)が、図示しないラッピング材を破断させ、さらに、ピラーガーニッシュ3とルーフヘッドライニング4との下縁で構成されるエアバッグカバー20を押し開いて下方へ突出しつつ、図1の二点鎖線及び図8〜10に示すごとく、窓W1・W2・W3、第1・第2中間ピラー部P1・P2、及び、リヤピラー部RPの車内側を覆うように、大きく膨張することとなる。
【0041】
そして、実施形態のエアバッグ装置Mでは、展開膨張時に三列目の座席S3の側方に配設される窓W3の車内側を覆う後列用バッグ45を、展開膨張時に一列目・二列目の座席S1・S2の側方に配設される窓W1・W2の車内側を覆う前列用バッグ24と、別体としているものの、後列用バッグ45は、展開膨張時の前端近傍の下縁側の部位に配設される連結部59により、前列用バッグ24と連結されており、展開膨張完了時、前縁側の下端近傍部位を、膨張を完了させた前列用バッグ24のガイド部43の下端43b付近に、連結部59を介して連結された状態とし、そして、連結部59から取付部55Bにかけてテンションを発生可能に、膨張を完了させることとなる。その結果、三列目の座席S3に着座した乗員の頭部が車外側に大きく移動した場合にも、連結部59から斜め後方の取付部55Bにかけてのテンションを発生させた後列用バッグ45の第3膨張遮蔽部(後側膨張遮蔽部)51により、乗員の頭部を車外側へ移動させることなく、拘束することができて、乗員の頭部を的確に保護することが可能となる。
【0042】
従って、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、三列目の座席S3に着座した乗員の頭部を的確に保護することができる。
【0043】
また、実施形態のエアバッグ装置Mでは、エアバッグ23が、それぞれ別体とされる前列用バッグ24と後列用バッグ45とから構成されており、三列目の座席S3に乗員が着座していない状態では、前列用バッグ24のみを展開膨張させる構成であるが、実施形態のエアバッグ装置Mでは、後列用バッグ45を前列用バッグ24に連結させる連結部59が、前列用バッグ24に配設されるガイド部43に対して相対的に摺動可能として、前列用バッグ24のみの展開膨張を許容するように、ガイド部43に連結されていることから、連結部59により前列用バッグ24と後列用バッグ45が連結されている構成であっても、前列用バッグ24のみを円滑に展開膨張させることができる。特に、実施形態のエアバッグ装置Mでは、連結部59を、折り畳まれた前列用バッグ24の上端近傍部位(ガイド部43の上端43a近傍部位)に位置させるように、後列用バッグ45が折り畳まれて収納されていることから、前列用バッグ24のみが展開膨張する際に、連結部59が、展開する前列用バッグ24(ガイド部43)の影響を受け難く、前列用バッグ24の膨張に伴って後列用バッグ45が展開することを極力抑えることができる。
【0044】
また、実施形態のエアバッグ装置Mでは、前列用バッグ24の第1・第2膨張遮蔽部30・31が、それぞれ、複数の縦膨張部32を、前後方向に沿って並設させた構成とされていることから、前列用バッグ24の展開膨張時に、各縦膨張部32が前後方向の幅寸法を縮めるように膨張することとなる。すなわち、ガイド部43を前方へ移動させるように前列用バッグ24が膨張を完了させることとなり、ガイド部43自体が、連結部59を前方へ引っ張るような態様となる。そのため、後列用バッグ45の膨張完了時において、連結部59から取付部55Bにかけて、一層大きなテンションが発生することとなる。勿論、第1・第2膨張遮蔽部を縦膨張部から形成しない構成の前列用バッグであっても、エアバッグの膨張完了時に、連結部59により、後列用バッグ45の前縁側における下端近傍の部位が、後方側へ引っ張られるように移動することを抑えることができて、連結部59から取付部55Bにかけてテンションを発生させることができ、乗員の頭部を支障なく拘束することができる。しかし、乗員頭部の拘束性能を高める見地からは、実施形態の前列用バッグ24のごとく、膨張遮蔽部30・31を、複数の縦膨張部32を前後方向に沿って並設させた構成とすることが好ましい。
【0045】
なお、実施形態のエアバッグ装置Mでは、ガイド部43が、下端43b側を上端43a側よりも前方側に位置させるように、傾斜して配設されていることから、後列用バッグ45の展開膨張に伴って連結部59がガイド部43に沿って下方へ移動する際に、連結部59がガイド部43に牽引されて前方に引っ張られるように、下方移動することとなり、後列用バッグ45の膨張完了時に、連結部59と取付部55Bとの間に、一層大きなテンションを発生させることができる。勿論、このような点を考慮しなければ、ガイド部43を上下方向に沿うように配設させる構成としてもよい。また、実施形態のエアバッグ装置Mでは、ガイド部43と連結部59とを、ともに、バッグ本体25・46と別体とした織布から形成しているが、ガイド部43及び連結部59の形状はこれに限られるものではなく、例えば、図11の前列用バッグ24Aに示すごとく、第2膨張遮蔽部31の後縁近傍に、上下方向に沿って配設されるスリット60・60を2本並設させ、スリット60・60間の部位を、ガイド部61とするように、構成してもよい。また、ガイド部として、織布から形成された帯状のものではなく、例えばロープ等の紐状物や、前列用バッグとともに折り畳んで収納可能な可撓性を有したワイヤ状のもの等を使用してもよい。勿論、連結部も、紐状物を輪状に形成したものを使用してもよく、さらには、連結部として、後列用バッグの周縁結合部における前端近傍における下縁側の部位に、ガイド部を挿通可能な穴を形成して、周縁にハトメ等を配設させた構成のものを使用してもよい。
【0046】
さらに、実施形態のエアバッグ装置Mでは、ガイド部43を、略上下方向に沿った帯状として、第2膨張遮蔽部31の後縁側の非流入部の部位(延設部40)に配設させた構成である。すなわち、実施形態の前列用バッグ24では、ガイド部43が、膨張完了時に乗員の頭部を保護する部位であるガス流入部47(第1・第2膨張遮蔽部30・31)から後方側に外れた部位に配設されることとなるため、エアバッグ23の展開膨張時に、ガイド部43や、ガイド部43と連結される連結部59が、一列目や二列目の座席S1・S2に着座した乗員と干渉することを抑えることができて、好ましい。勿論、このような点を考慮しなければ、ガイド部を、第2膨張遮蔽部31の前縁側の長方形板状部41の部位や、さらには、第1膨張遮蔽部30の前縁側の延設部39の部位に配設させる構成としてもよい。
【0047】
さらにまた、実施形態のエアバッグ装置Mでは、後列用バッグ45の第3膨張遮蔽部51が、図9に示すごとく、膨張完了時に、車外側Oを、前列用バッグ24の延設部40に支持される構成である。そのため、三列目の座席S3に着座した乗員の頭部が車外側Oに大きく移動しても、乗員の頭部を、一層確実に拘束することができる。また、上記構成の頭部保護エアバッグ装置では、前列用バッグ24における後端側の取付部35B(延設部40の後端側に配設される取付部35B)を、延設部を配設させない構成のものと比較して、車両後方側に位置させることができることから、延設部40を配設させない構成のものと比較して、前列用バッグ24の膨張完了時に、前後方向に沿うように大きなテンションが発生することとなる。そのため、一列目あるいは二列目の座席S1・S2に着座した乗員の頭部が車外側に大きく移動した場合にも、第1・第2膨張遮蔽部30・31により、乗員の頭部を確実に拘束することができて、好ましい。なお、実施形態のエアバッグ装置Mでは、前列用バッグのみを展開膨張させた際に、図7に示すごとく、延設部40が、三列目の座席S3の側方に配設される窓W3の車内側を覆うこととなるが、延設部40は、膨張用ガスを流入させない非流入部34から構成されており、前列用バッグ24の展開膨張時に、薄い状態で展開することから、図7の二点鎖線や図9の一点鎖線で示すごとく、三列目の座席S3を、不使用時に、窓W3の車内側Iに近接して立てるように格納している場合にも、展開する延設部40が、格納されている三列目の座席S3と干渉することを極力抑えることができ、前列用バッグ24を円滑に展開膨張させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態である頭部保護エアバッグ装置を車内側から見た概略正面図である。
【図2】実施形態の頭部保護エアバッグ装置で使用する前列用バッグを平らに展開した状態を示す正面図である。
【図3】図2のIII−III部位の断面図である。
【図4】実施形態の頭部保護エアバッグ装置で使用する後列用バッグを平らに展開した状態を示す正面図である。
【図5】図4のV−V部位の断面図である。
【図6】図1のVI−VI部位の拡大断面図である。
【図7】実施形態の頭部保護エアバッグ装置において、前列用バッグのみが膨張を完了させた状態を示す車内側から見た概略正面図である。
【図8】実施形態の頭部保護エアバッグ装置において、前列用バッグと後列用バッグとが膨張を完了させた状態を示す車内側から見た概略正面図である。
【図9】実施形態の頭部保護エアバッグ装置において、エアバッグの膨張完了状態を示す断面図であり、後列用バッグの部位を示す概略縦断面図である。
【図10】実施形態の頭部保護エアバッグ装置において、エアバッグの膨張完了状態を示す断面図であり、後列用バッグの部位を示す概略横断面図である。
【図11】前列用バッグの変形例を示す部分拡大正面図である。
【符号の説明】
【0049】
1…ボディ、
9・13…インフレーター、
23…エアバッグ、
24…前列用バッグ、
30…第1膨張遮蔽部(前側膨張遮蔽部)、
31…第2膨張遮蔽部(前側膨張遮蔽部)、
40…延設部、
43…ガイド部、
45…後列用バッグ、
59…連結部、
S1・S2・S3…座席、
W1・W2・W3…窓、
V…車両、
M…頭部保護エアバッグ装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、三列シートタイプの車両に搭載される頭部保護エアバッグ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、三列シートタイプの車両に搭載される頭部保護エアバッグ装置は、車両の車内側における窓の上縁側に折り畳まれて収納されるとともに、インフレーターからの膨張用ガスを流入させて窓の車内側を覆うように展開膨張する構成のエアバッグを備えていた。そして、従来の頭部保護エアバッグ装置では、エアバッグが、一列目から三列目の座席の側方に配設される3つの窓の車内側を、それぞれ、覆うように、膨張用ガスを流入させて膨張する3つの膨張遮蔽部を、を備えた構成であった。(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2002−200959公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の頭部保護エアバッグ装置では、エアバッグが、3つの膨張遮蔽部を備える構成であることから、エアバッグが大型化して、容量が増大し、インフレーターも高出力のものを使用する必要が生じていた。また、三列シートタイプの車両の場合、三列目の座席に乗員が着座しない場合も多いことから、エアバッグを、膨張完了時に、一列目と二列目の座席の側方に配設される窓の車内側を覆う構成の前列用バッグと、三列目の座席の側方に配設される窓の車内側を覆う構成の後列用バッグと、に、分割して、それぞれ、インフレーターからの膨張用ガスを流入させて展開膨張させる構成とし、後列用バッグを、三列目の座席に乗員が着座した場合にのみ展開膨張可能な構成とすることも考慮できる。しかし、後列用バッグを分割させた場合、車外側へ移動する乗員の頭部を拘束する際に、乗員頭部の車外側への移動を防止するテンションを確保し難い。
【0004】
本発明は、上述の課題を解決するものであり、三列目の座席に着座した乗員の頭部を的確に保護可能な頭部保護エアバッグ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る頭部保護エアバッグ装置は、膨張完了時の上縁側を車両の車内側における窓の上縁側のボディ側に固定させて、窓の上縁側に折り畳まれて収納されるとともに、インフレーターからの膨張用ガスを流入させて収納位置から下方に突出しつつ窓の車内側を覆うように展開膨張する構成のエアバッグ、を備える構成とされて、三列シートタイプの車両に搭載され、
エアバッグが、インフレーターからの膨張用ガスを流入させて膨張するガス流入部と、膨張用ガスを流入させない非流入部と、を備える構成とされ、
ガス流入部が、エアバッグの膨張完了時に、窓の車内側を覆うように配設される膨張遮蔽部を備える構成の頭部保護エアバッグ装置であって、
エアバッグが、それぞれ別体とされて、膨張完了時に一列目と二列目の座席の側方に配設される窓の車内側を覆うように配設される前側膨張遮蔽部を有した前列用バッグと、膨張完了時に三列目の座席の側方に配設される窓の車内側を覆うように配設される後側膨張遮蔽部を有した後列用バッグと、から構成され、
後列用バッグが、膨張完了時の前端近傍における下縁側の部位に配設される連結部を、前列用バッグの膨張完了時における後縁近傍において略上下方向に沿って配設されるガイド部に連結させることにより、前列用バッグに連結される構成とされ、
連結部が、
前列用バッグのみを展開膨張させる際に、ガイド部に対して相対的に摺動可能として、前列用バッグのみの展開膨張を許容するように、ガイド部に連結され、かつ、
前列用バッグと後列用バッグとをともに展開膨張させる際に、後列用バッグの下方への展開に伴ってガイド部の下端付近まで摺動可能とされて、後列用バッグの膨張完了時において、連結部から後列用バッグの上縁側における後端近傍に配設されるボディ側への固定部位にかけてテンションを発生可能に、
ガイド部に連結されていることを特徴とする。
【0006】
本発明の頭部保護エアバッグ装置では、展開膨張時に三列目の座席の側方に配設される窓の車内側を覆う後列用バッグを、展開膨張時に一列目・二列目の座席の側方に配設される窓の車内側を覆う前列用バッグと、別体としているものの、後列用バッグは、展開膨張時の前端近傍の下縁側の部位に配設される連結部により、前列用バッグと連結されている構成である。三列目の座席に乗員が着座した状態では、通常、運転者がいる一列目あるいは二列目の座席にも運転者を含めた乗員が着座していることから、後列用バッグの展開膨張時には、必ず、前列用バッグも展開膨張することとなる。そのため、後列用バッグは、展開膨張完了時に、前縁側の下端近傍部位を、膨張を完了させた前列用バッグのガイド部の下端付近に、連結部を介して連結された状態とし、そして、連結部から後列用バッグの上縁側における後端近傍に配設されるボディ側への固定部位にかけてテンションを発生可能に、膨張を完了させることとなる。その結果、着座した乗員の頭部が車外側に大きく移動した場合にも、連結部から斜め後方の固定部位にかけてのテンションを発生させた後側膨張遮蔽部により、乗員の頭部を、車外側へ移動させることなく、拘束することができて、乗員の頭部を的確に保護することが可能となる。
【0007】
従って、本発明の頭部保護エアバッグ装置では、三列目の座席に着座した乗員の頭部を的確に保護することができる。
【0008】
また、本発明の頭部保護エアバッグ装置では、エアバッグが、それぞれ別体とされる前列用バッグと後列用バッグとから構成されており、三列目の座席に乗員が着座していない状態では、前列用バッグのみを展開膨張させる構成であるが、本発明の頭部保護エアバッグ装置では、後列用バッグを前列用バッグに連結させる連結部が、前列用バッグに配設されるガイド部に対して相対的に摺動可能として、前列用バッグのみの展開膨張を許容するように、ガイド部に連結されていることから、連結部により前列用バッグと後列用バッグが連結されている構成であっても、前列用バッグのみを円滑に展開膨張させることができる。
【0009】
さらに、上記構成の頭部保護エアバッグ装置において、ガイド部を、略上下方向に沿った帯状として、前側膨張遮蔽部の後縁側の非流入部の部位に配設させる構成とすれば、ガイド部が、膨張完了時に乗員の頭部を保護する部位であるガス流入部の膨張遮蔽部から後方側に外れた非流入部の位置に配設されることとなるため、エアバッグの展開膨張時に、ガイド部や、ガイド部と連結される連結部が、一列目や二列目の座席に着座した乗員と干渉することを抑えることができて、好ましい。
【0010】
さらにまた、上記構成の頭部保護エアバッグ装置において、前列用バッグに、非流入部として、膨張完了時における前側膨張遮蔽部の後縁側における少なくとも下端側の部位から車両後方側に延びるように配設されて、後端を三列目に配設される窓の上縁側に固定させる延設部を、配設させる構成とし、
後側膨張遮蔽部の前・後列用バッグの膨張完了時における車外側を、延設部に支持させる構成とすることが好ましい。
【0011】
頭部保護エアバッグ装置を上記構成とすれば、エアバッグの膨張完了時に、延設部により、膨張を完了させた後列用バッグにおける後側膨張遮蔽部の車外側を支持させることができることから、三列目の座席に着座した乗員の頭部が車外側に大きく移動しても、乗員の頭部を、一層確実に拘束することができる。また、上記構成の頭部保護エアバッグ装置では、前列用バッグの車両のボディ側への固定位置における後端側の部位を、延設部を配設させない構成のものと比較して、車両後方側に位置させることができることから、延設部を配設させない構成のものと比較して、前列用バッグの膨張完了時に、前後方向に沿うように大きなテンションが発生することとなる。そのため、一列目あるいは二列目の座席に着座した乗員の頭部が車外側に大きく移動した場合にも、前側膨張遮蔽部により、乗員の頭部を確実に拘束することができて、好ましい。なお、上記構成の頭部保護エアバッグ装置では、前列用バッグのみを展開膨張させた際に、延設部が、三列目の座席の側方に配設される窓の車内側を覆うこととなるが、延設部は、膨張用ガスを流入させない非流入部から構成されており、前列用バッグの展開膨張時に、薄い状態で展開することから、三列目の座席を、不使用時に、窓の車内側に近接して立てるように格納するタイプの車両に適用した場合にも、延設部が格納されている三列目の座席と干渉することを極力抑えることができ、前列用バッグを円滑に展開膨張させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。本発明の実施形態である頭部保護エアバッグ装置Mは、図1に示すように、前後方向に沿って三列に並んだ座席S1・S2・S3を備えた三列シートタイプの車両Vに搭載されるもので、車両Vの窓(サイドウィンド)W1・W2・W3及びリヤピラー部RPの上縁側におけるフロントピラー部FPやルーフサイドレール部RRに、搭載されている。なお、実施形態では、エアバッグ装置Mは、三列目の座席S3を、不使用時に、図7・9に示すごとく、窓W3の車内側に近接して立てるように格納するタイプの車両Vに搭載されている。
【0013】
エアバッグ装置Mは、エアバッグ23、インフレーター9・13、取付ブラケット10・14・18、及び、エアバッグカバー21を、備えて構成されている。
【0014】
エアバッグカバー21は、図1に示すように、フロントピラー部FPに配設されるピラーガーニッシュ3と、ルーフサイドレール部RRに配設されるルーフヘッドライニング4と、のそれぞれの下縁側から構成されている。そして、エアバッグカバー21は、折り畳まれて収納されたエアバッグ23の車内側を覆うように配設されるとともに、展開膨張時のエアバッグ23を車内側へ突出可能とするために、エアバッグ23に押されて車内側に開き可能な構成とされている。
【0015】
インフレーター9は、エアバッグ23の後述する前列用バッグ24に膨張用ガスを供給するもので、略円柱状とされて、先端(前端)側に、膨張用ガスを吐出可能な図示しないガス吐出口を、配設させている構成である。インフレーター9は、ガス吐出口付近を含めた先端付近を、前列用バッグ24の後述するガス流入口部29に挿入させ、ガス流入口部29の後端29a付近に外装されるクランプ12を利用して、前列用バッグ24に対して、連結されている。また、インフレーター9は、インフレーター9を保持する取付ブラケット10と、取付ブラケット10をボディ1側のインナパネル2に固定するための取付ボルト11と、を利用して、インナパネル2における第1中間ピラー部P1の上方となる位置に、取り付けられている。
【0016】
インフレーター13は、エアバッグ23の後述する後列用バッグ45に膨張用ガスを供給するもので、インフレーター9と同様に、略円柱状とされて、ガス吐出口を含めた先端(前端)付近を、後列用バッグ45の後述するガス流入口部50に挿入させ、ガス流入口部50の後端50a付近に外装されるクランプ16を利用して、後列用バッグに対して、連結されている。また、インフレーター13は、インフレーター9と同様に、取付ブラケット18と取付ボルト19とを利用して、インナパネル2における窓W3の上方となる位置に、取り付けられている。
【0017】
エアバッグ23は、車内側のドアや窓W1・W2・W3の上縁側周縁におけるフロントピラー部FPの下縁側からルーフサイドレール部RRの下縁側にわたって、折り畳まれて収納されるもので、それぞれ別体とされて、膨張完了時に窓W1・W2の車内側を覆い可能な構成とされる前列用バッグ24と、膨張完了時に窓W3の車内側を覆い可能な構成とされる後列用バッグ45と、から構成されている。
【0018】
前列用バッグ24は、バッグ本体25と、バッグ本体25の後端付近に配設されるガイド部43と、から構成されている。バッグ本体25は、実施形態の場合、ポリアミド糸等を使用した袋織りにより製造されている。バッグ本体25は、図1・6に示すように、上縁25a側に形成される後述する取付部35の部位で、窓W1・W2の上縁側におけるボディ1側のインナパネル2に固定されるとともに、インフレーター9からの膨張用ガスを流入させて、折り畳み状態から展開して収納位置から下方に突出しつつ、第1中間ピラー部P1の前後に配設される窓(一列目と二列目の座席S1・S2の側方に配設される窓)W1・W2、及び、第1・第2中間ピラー部P1・P2のそれぞれの車内側を覆うように、展開膨張する構成である。また、バッグ本体25は、図2・3に示すように、車内側壁部26aと車外側壁部26bとを離すようにして、膨張用ガスG1を内部に流入可能なガス流入部26と、膨張用ガスを流入させない非流入部34と、から構成されている。
【0019】
ガス流入部26は、実施形態の場合、ガス供給路部28、ガス流入口部29、及び、前側膨張遮蔽部としての第1・第2膨張遮蔽部30・31、から構成されている。
【0020】
ガス供給路部28は、図2に示すように、バッグ本体25の上縁25a側で、車両Vの前後方向に沿うように配設されており、インフレーター9から吐出される膨張用ガスG1を、ガス供給路部28の下方に配設される第1・第2膨張遮蔽部30・31に案内する構成である。ガス供給路部28の前後方向における中央から、若干、前方側にずれた位置には、インフレーター9と接続されるガス流入口部29が、ガス供給路部28と連通されて、ガス供給路部28から上方に突出するように、配設されている。ガス流入口部29は、実施形態の場合、後端29a側を開口させている。そして、ガス流入口部29は、クランプ12を利用して、インフレーター9に連結されることとなる。
【0021】
第1膨張遮蔽部30は、前列用バッグ24の膨張完了時において、一列目の座席S1の側方に配設される窓W1の車内側を覆う部位である。第2膨張遮蔽部31は、前列用バッグ24の膨張完了時において、二列目の座席S2の側方に配設される窓W2の車内側を覆う部位である。第1・第2膨張遮蔽部30・31は、その領域内に、後述する区画結合部37により区画されて、それぞれ、上下方向に沿って配設される複数の縦膨張部32を、前後に並設させて構成されており、実施形態の場合、第1膨張遮蔽部30は、3つの縦膨張部32から構成され、第2膨張遮蔽部31は、2つの縦膨張部32から構成されている。
【0022】
非流入部34は、車内側壁部26aと車外側壁部26bとを結合させた構成とされており、実施形態の場合、取付部35、周縁結合部36、区画結合部37、及び、板状部38、から構成されている。周縁結合部36は、バッグ本体25の外周縁の部位において、ガス流入部26の周囲を囲むように、配設されている。
【0023】
取付部35は、バッグ本体25の上縁25a側における周縁結合部36の上縁側の部位や、板状部38における後述する延設部39・40の上縁側から、上方へ突出するように、複数(実施形態では7個)配設されている。各取付部35には、前列用バッグ24をインナパネル2に取り付けるための取付ブラケット18が固着されることとなる。取付ブラケット18は、取付部35の車内側と車外側とを覆うように配設される2枚の板金製とされている(図6参照)。そして、各取付部35は、取付ボルト19を使用して、取付ブラケット18ごと、ボディ1側のインナパネル2に固定されている。実施形態の場合、前列用バッグ24の後端側となる延設部40の上縁側に配設される取付部35A・35Bは、後述する後列用バッグ45の取付部55A・55Bとともに、インナパネル2に固定される構成である。また、取付部35Aは、さらに、ガイド部43の上端部位43aとともに、インナパネル2に固定される構成である。取付部35Bは、取付部35Bを取付部55Bの車外側Oに重ねた状態で、取付部35Bの車外側Oと取付部55Bの車内側Iとに取付ブラケット18を配置させて、インナパネル2に固定されている(図6参照)。取付部35Aは、同様に、取付部35Aの車内側に、ガイド部43の上端部位43aと、後列用バッグ45の取付部55Aと、を重ねた状態で、取付部35Aの車外側と取付部55Aの車内側とに、取付ブラケット18を配置させて、インナパネル2に固定されることとなる。
【0024】
そして、実施形態の前列用バッグ24では、延設部39の前端付近に配設される取付部35Cが、フロントピラー部FPの下部側の部位においてボディ1側に取り付けられ、延設部40の後端付近に配設される取付部35Bが、窓W3の後端付近となる上縁側の部位においてボディ1側に取り付けられていることから、前列用バッグ24の膨張完了時において、取付部35C・35Bの間に、前後方向に沿ったテンションを発生させることができる。特に、実施形態の前列用バッグ24では、複数の縦膨張部32を、前後方向に沿って並設させていることから、前列用バッグ24の展開膨張時に、各縦膨張部32が前後方向の幅寸法を縮めるように膨張し、膨張を完了させた前列用バッグ24に、前後方向に沿って大きなテンションが発生することとなる。
【0025】
板状部38は、第1膨張遮蔽部30の前縁側から車両前方側に延びるように配設される延設部39と、第2膨張遮蔽部31の後縁側から車両後方側に延びるように配設される延設部40と、第1・第2膨張遮蔽部30・31の間におけるガス供給路部28の下方に配設される長方形板状部41と、から構成されている。延設部39は、前端側と、後端側となる第1膨張遮蔽部30の前縁側と、の上縁側となる部位に、取付部35C・35を配設させている。延設部40は、略三角板系状とされて、前端側となる第2膨張遮蔽部31の後縁近傍部位と、後端側と、の上縁側となる部位に、取付部35A・35Bを配設させている。そして、前列用バッグ24の膨張完了時に、既述したように、延設部39の前端に配設される取付部35Cと、延設部40の後端に配設される取付部35Bと、の間に、前後方向に沿ったテンションが、発生することとなる。また、延設部40は、前列用バッグ24と後列用バッグ45とがともに膨張を完了させた際に、後列用バッグ45の車外側O
に配設されて後述する第3膨張遮蔽部(後側膨張遮蔽部)51の車外側Oを支持することとなる(図9参照)。長方形板状部41は、前列用バッグ24におけるバッグ本体25の全体形状を確保するとともに、ガス流入部26の容積を小さくして、膨張完了までの時間を短くするために、配設されている。
【0026】
区画結合部37は、各第1・第2膨張遮蔽部30・31の領域内において、周縁結合部36や長方形板状部41の上縁側から延びるように、配設されている。これらの区画結合部37は、第1・第2膨張遮蔽部30・31を複数の縦膨張部32に区画して、膨張完了時の前列用バッグ24におけるバッグ本体25の厚さを規制するために、配設されている。後端側に配設される縦膨張部32Aの部位に配設される区画結合部37Aは、縦膨張部32Aの上端付近の前後方向の中間部位付近となる位置に、下方に突出する突出部37aを備えている構成である。この突出部37aは、縦膨張部32Aにおいて、前後方向の略中央部位における上端付近の部位を区画して、第1中間ピラー部P1の車内側に配設される縦膨張部32Aの膨張完了時の厚さ寸法を規制するために、配設されている(図7参照)。
【0027】
ガイド部43は、バッグ本体25と別体とされるとともに、可撓性を有した帯状とされて、実施形態の場合、ポリアミド糸やポリエステル糸等を使用した織布から形成されている。ガイド部43は、後列用バッグ45に配設される後述する連結部59に挿通可能な帯状とされて、バッグ本体25の車内側に配設されている。実施形態の場合、ガイド部43は、第2膨張遮蔽部31の後方側において、下端43b側を上端43a側よりも前方側に位置させるように傾斜しつつ、上下方向に略沿うように配設されて、上下両端側をバッグ本体25に結合させている。具体的には、ガイド部43の上端側の部位43aは、取付部35Aとともに取付ブラケット18を利用してインナパネル2に固定されることにより、バッグ本体25に固定されている。下端側の部位43bは、第2膨張遮蔽部31の後縁近傍となる延設部40の部位に、縫着されて、バッグ本体25に固定されている。また、ガイド部43は、前列用バッグ24の折り畳み収納時、バッグ本体25とともに折り畳まれて収納されることとなる。
【0028】
後列用バッグ45は、バッグ本体46と、バッグ本体46の前縁近傍に配設されて前列用バッグ24のガイド部43と連結される連結部59と、から構成されている。バッグ本体46は、前列用バッグ24のバッグ本体25と同様に、ポリアミド糸等を使用した袋織りにより製造されている。バッグ本体46は、図1・6に示すように、上縁46a側に形成される後述する取付部55の部位で、W3の上縁側におけるボディ1側のインナパネル2に固定されるとともに、インフレーター13からの膨張用ガスを流入させて、折り畳み状態から展開して収納位置から下方に突出しつつ、第2中間ピラー部P2とリヤピラー部RPとの間に配設される窓W3の車内側を覆うように、展開膨張する構成である。実施形態の場合、後列用バッグ45は、三列目の座席に配設された荷重センサや圧力検知センサ等からなる乗員着座検知センサが、乗員の着座を検知した場合にのみ、エアバッグ作動回路を作動させて、展開膨張する構成とされている。また、後列用バッグ45のバッグ本体46は、図4・5に示すように、車内側壁部47aと車外側壁部47bとを離すようにして、膨張用ガスG2を内部に流入可能なガス流入部47と、膨張用ガスを流入させない非流入部54と、から構成されている。
【0029】
ガス流入部47は、ガス供給路部49、ガス流入口部50、及び、後側膨張遮蔽部としての第3膨張遮蔽部51、から構成されている。
【0030】
ガス供給路部49は、図4に示すように、バッグ本体46の上縁46a側で、車両Vの前後方向に沿うように配設されており、インフレーター13から吐出される膨張用ガスG2を、ガス供給路部49の下方に配設される第3膨張遮蔽部51に案内する構成である。ガス供給路部49の前後方向における中央から、若干、前方側にずれた位置には、インフレーター13と接続されるガス流入口部50が、ガス供給路部49と連通されて、ガス供給路部49から上方に突出するように、配設されている。ガス流入口部50は、実施形態の場合、後端50a側を開口されている。そして、ガス流入口部50は、クランプ16を利用して、インフレーター13に連結されることとなる。
【0031】
第3膨張遮蔽部51は、バッグ本体46の膨張完了時において、三列目の座席S3の側方に配設される窓W3の車内側を覆う部位であり、その領域内に、後述する区画結合部57により区画されて、それぞれ、上下方向に沿って配設される2つの縦膨張部52A・52Bを、前後に並設させて構成されている。
【0032】
非流入部54は、車内側壁部47aと車外側壁部47bとを結合させた構成とされており、実施形態の場合、取付部55、周縁結合部56、及び、区画結合部57、から構成されている。周縁結合部56は、バッグ本体46の外周縁の部位において、ガス流入部47の周囲を囲むように、配設されている。
【0033】
取付部55は、バッグ本体46の上縁46a側における前後両端近傍となる部位から、上方へ突出するように、2個配設されている。各取付部55A・55Bは、図1・6に示すごとく、実施形態の場合、前列用バッグ23の取付部35A・35Bとともに、取付ブラケット18及び取付ボルト19を使用して、ボディ1側のインナパネル2に固定されている。
【0034】
区画結合部57は、第3膨張遮蔽部51の領域内において、第3膨張遮蔽部51を2つの縦膨張部52A・52Bに区画して、膨張完了時の後列用バッグ45におけるバッグ本体46の厚さを規制するために、配設されている。区画結合部57は、縦膨張部52A・52Bを区画するように上下方向に沿って配設される縦区画部57aと、縦区画部57aの上端から前方に突出するように前後方向に沿って配設される横区画部57bと、を備えて構成されている。横区画部57bは、ガス供給路部49の下縁側を構成するとともに、縦膨張部52Aの上端側を閉塞する構成である。
【0035】
連結部59は、バッグ本体46と別体とされるもので、実施形態の場合、ポリアミド糸やポリエステル糸等を使用した帯状の織布から形成されて、バッグ本体46の前端近傍における下縁側の部位に、配設されている。そして、連結部59は、長手方向の両端をバッグ本体46に縫着させて、前列用バッグ24に配設されるガイド部43を挿通可能な輪状とされており、実施形態の場合、ガイド部43に対して相互に摺動可能に連結されている。具体的には、連結部59は、前列用バッグ24のみを展開膨張させる際に、前列用バッグ24のみの展開膨張を許容するとともに、前列用バッグ24と後列用バッグ45とをともに展開膨張させる際に、後列用バッグ45の下方への展開に伴ってガイド部43の下端43b付近まで摺動可能とされて、後列用バッグ45の膨張完了時において、連結部59から後列用バッグの後端側に配設される取付部55Bにかけてテンションを発生させるように、ガイド部43に連結される構成である。
【0036】
次に、実施形態のエアバッグ装置Mの車両Vへの搭載について説明する。バッグ本体46に予め連結部59を縫着させて、後列用バッグ45を形成しておく。また、ガイド部43の下端43bも、予め、バッグ本体25に縫着させておく。まず、平らに展開した後列用バッグ45を、連結部59の部位を除いて、図4の二点鎖線に示すように、前後方向に沿うような折目C2を付けて、下縁46b側を上縁46a側に接近させるように蛇腹折りし、折り崩れ防止用の図示しないラッピング材により、所定箇所をくるんでおく。前列用バッグ24も、同様に、平らに展開した状態から、図2の二点鎖線に示すように、前後方向に沿うような折目C1を付けて、下縁25b側を上縁25a側に接近させるように蛇腹折りする。このとき、ガイド部43もバッグ本体25とともに蛇腹折りされるが、バッグ本体25を上縁25a近傍まで折り畳んだ状態で、ガイド部43を連結部59に挿通させ、ガイド部43と連結部59とを連結しておく。すなわち、連結部59は、前・後列用バッグ24・45の折り畳み収納時において、前列用バッグ24の上端近傍(ガイド部43の上端43a近傍)に、配設されることとなる。そして、折り畳まれた前列用バッグ24も、折り崩れ防止用の図示しないラッピング材により、所定箇所をくるんでおく。
【0037】
そして、前列用バッグ24の取付部35A・35Bを、それぞれ、後列用バッグ45の取付部55A・55Bの車外側Oに位置させるように、取付部35A・35B・55A・55B相互を重ねる。このとき、取付部35A・55A間には、ガイド部43の上端側部位43aが介在されることとなる。そして、各取付ブラケット35・55に、取付ブラケット18を取り付けておく。なお、取付部35A・上端側部位43a・取付部55A、及び、各取付部35B・55Bは、それぞれ、相互に重ねられた状態で、取付ブラケット18に挟持されることとなる。また、クランプ12を利用しつつ、前列用バッグ24のガス流入口部29にインフレーター9を連結させ、同様に、クランプ16を利用して、後列用バッグ45のガス流入口部50にインフレーター13を連結させ、各インフレーター9・13の周囲に、取付ブラケット10・14を取り付けて、各インフレーター9・13を、それぞれ、前列用・後列用バッグ24・45に組み付けて、エアバッグ組付体を形成しておく。
【0038】
その後、各取付ブラケット10・14・18をインナパネル2の所定位置に配置させてボルト11・15・19止めし、エアバッグ組付体をボディ1に取り付ける。次いで、インフレーター9・13に、所定のインフレーター作動用の制御装置から延びる図示しないリード線を結線し、ピラーガーニッシュ3やルーフヘッドライニング4をボディ1に取り付け、さらに、ピラーガーニッシュ5・6・7をボディ1に取り付ければ、エアバッグ装置Mを車両Vに搭載することができる。
【0039】
そして、エアバッグ装置Mの車両Vへの搭載後、三列目の座席S3に乗員が着座しない状態では、インフレーター9のみが作動されて、図7に示すごとく、前列用バッグ24のみが展開膨張することとなる。三列目の座席S3に乗員が着座した状態では、インフレーター9・13が作動して、図8に示すごとく、前列用・後列用バッグ24・45が、ともに展開膨張することとなる。通常、三列目の座席S3に乗員が着座した状態で、運転者がいる一列目あるいは二列目の座席S1・S2に運転者を含めた乗員が着座していないことは考えられないことから、実施形態のエアバッグ装置Mでは、後列用バッグ45の展開膨張時には、必ず前列用バッグ24も展開膨張することとなる。
【0040】
インフレーター9・13が作動されれば、インフレーター9からの膨張用ガスG1が、図2の二点鎖線に示すように、ガス流入口部29からガス供給路部28内を流れ、さらに、第1・第2膨張遮蔽部30・31内に流入し、前列用バッグ24の第1・第2膨張遮蔽部30・31が、折りを解消させつつ膨張し始める。同時に、インフレーター13からの膨張用ガスG2が、図4の二点鎖線に示すように、ガス流入口部50からガス供給路部49内を流れ、さらに、第3膨張遮蔽部51内に流入して、後列用バッグ45の第3膨張遮蔽部51が、折りを解消させつつ膨張し始める。そして、エアバッグ23(前列用・後列用バッグ24・45)が、図示しないラッピング材を破断させ、さらに、ピラーガーニッシュ3とルーフヘッドライニング4との下縁で構成されるエアバッグカバー20を押し開いて下方へ突出しつつ、図1の二点鎖線及び図8〜10に示すごとく、窓W1・W2・W3、第1・第2中間ピラー部P1・P2、及び、リヤピラー部RPの車内側を覆うように、大きく膨張することとなる。
【0041】
そして、実施形態のエアバッグ装置Mでは、展開膨張時に三列目の座席S3の側方に配設される窓W3の車内側を覆う後列用バッグ45を、展開膨張時に一列目・二列目の座席S1・S2の側方に配設される窓W1・W2の車内側を覆う前列用バッグ24と、別体としているものの、後列用バッグ45は、展開膨張時の前端近傍の下縁側の部位に配設される連結部59により、前列用バッグ24と連結されており、展開膨張完了時、前縁側の下端近傍部位を、膨張を完了させた前列用バッグ24のガイド部43の下端43b付近に、連結部59を介して連結された状態とし、そして、連結部59から取付部55Bにかけてテンションを発生可能に、膨張を完了させることとなる。その結果、三列目の座席S3に着座した乗員の頭部が車外側に大きく移動した場合にも、連結部59から斜め後方の取付部55Bにかけてのテンションを発生させた後列用バッグ45の第3膨張遮蔽部(後側膨張遮蔽部)51により、乗員の頭部を車外側へ移動させることなく、拘束することができて、乗員の頭部を的確に保護することが可能となる。
【0042】
従って、実施形態の頭部保護エアバッグ装置Mでは、三列目の座席S3に着座した乗員の頭部を的確に保護することができる。
【0043】
また、実施形態のエアバッグ装置Mでは、エアバッグ23が、それぞれ別体とされる前列用バッグ24と後列用バッグ45とから構成されており、三列目の座席S3に乗員が着座していない状態では、前列用バッグ24のみを展開膨張させる構成であるが、実施形態のエアバッグ装置Mでは、後列用バッグ45を前列用バッグ24に連結させる連結部59が、前列用バッグ24に配設されるガイド部43に対して相対的に摺動可能として、前列用バッグ24のみの展開膨張を許容するように、ガイド部43に連結されていることから、連結部59により前列用バッグ24と後列用バッグ45が連結されている構成であっても、前列用バッグ24のみを円滑に展開膨張させることができる。特に、実施形態のエアバッグ装置Mでは、連結部59を、折り畳まれた前列用バッグ24の上端近傍部位(ガイド部43の上端43a近傍部位)に位置させるように、後列用バッグ45が折り畳まれて収納されていることから、前列用バッグ24のみが展開膨張する際に、連結部59が、展開する前列用バッグ24(ガイド部43)の影響を受け難く、前列用バッグ24の膨張に伴って後列用バッグ45が展開することを極力抑えることができる。
【0044】
また、実施形態のエアバッグ装置Mでは、前列用バッグ24の第1・第2膨張遮蔽部30・31が、それぞれ、複数の縦膨張部32を、前後方向に沿って並設させた構成とされていることから、前列用バッグ24の展開膨張時に、各縦膨張部32が前後方向の幅寸法を縮めるように膨張することとなる。すなわち、ガイド部43を前方へ移動させるように前列用バッグ24が膨張を完了させることとなり、ガイド部43自体が、連結部59を前方へ引っ張るような態様となる。そのため、後列用バッグ45の膨張完了時において、連結部59から取付部55Bにかけて、一層大きなテンションが発生することとなる。勿論、第1・第2膨張遮蔽部を縦膨張部から形成しない構成の前列用バッグであっても、エアバッグの膨張完了時に、連結部59により、後列用バッグ45の前縁側における下端近傍の部位が、後方側へ引っ張られるように移動することを抑えることができて、連結部59から取付部55Bにかけてテンションを発生させることができ、乗員の頭部を支障なく拘束することができる。しかし、乗員頭部の拘束性能を高める見地からは、実施形態の前列用バッグ24のごとく、膨張遮蔽部30・31を、複数の縦膨張部32を前後方向に沿って並設させた構成とすることが好ましい。
【0045】
なお、実施形態のエアバッグ装置Mでは、ガイド部43が、下端43b側を上端43a側よりも前方側に位置させるように、傾斜して配設されていることから、後列用バッグ45の展開膨張に伴って連結部59がガイド部43に沿って下方へ移動する際に、連結部59がガイド部43に牽引されて前方に引っ張られるように、下方移動することとなり、後列用バッグ45の膨張完了時に、連結部59と取付部55Bとの間に、一層大きなテンションを発生させることができる。勿論、このような点を考慮しなければ、ガイド部43を上下方向に沿うように配設させる構成としてもよい。また、実施形態のエアバッグ装置Mでは、ガイド部43と連結部59とを、ともに、バッグ本体25・46と別体とした織布から形成しているが、ガイド部43及び連結部59の形状はこれに限られるものではなく、例えば、図11の前列用バッグ24Aに示すごとく、第2膨張遮蔽部31の後縁近傍に、上下方向に沿って配設されるスリット60・60を2本並設させ、スリット60・60間の部位を、ガイド部61とするように、構成してもよい。また、ガイド部として、織布から形成された帯状のものではなく、例えばロープ等の紐状物や、前列用バッグとともに折り畳んで収納可能な可撓性を有したワイヤ状のもの等を使用してもよい。勿論、連結部も、紐状物を輪状に形成したものを使用してもよく、さらには、連結部として、後列用バッグの周縁結合部における前端近傍における下縁側の部位に、ガイド部を挿通可能な穴を形成して、周縁にハトメ等を配設させた構成のものを使用してもよい。
【0046】
さらに、実施形態のエアバッグ装置Mでは、ガイド部43を、略上下方向に沿った帯状として、第2膨張遮蔽部31の後縁側の非流入部の部位(延設部40)に配設させた構成である。すなわち、実施形態の前列用バッグ24では、ガイド部43が、膨張完了時に乗員の頭部を保護する部位であるガス流入部47(第1・第2膨張遮蔽部30・31)から後方側に外れた部位に配設されることとなるため、エアバッグ23の展開膨張時に、ガイド部43や、ガイド部43と連結される連結部59が、一列目や二列目の座席S1・S2に着座した乗員と干渉することを抑えることができて、好ましい。勿論、このような点を考慮しなければ、ガイド部を、第2膨張遮蔽部31の前縁側の長方形板状部41の部位や、さらには、第1膨張遮蔽部30の前縁側の延設部39の部位に配設させる構成としてもよい。
【0047】
さらにまた、実施形態のエアバッグ装置Mでは、後列用バッグ45の第3膨張遮蔽部51が、図9に示すごとく、膨張完了時に、車外側Oを、前列用バッグ24の延設部40に支持される構成である。そのため、三列目の座席S3に着座した乗員の頭部が車外側Oに大きく移動しても、乗員の頭部を、一層確実に拘束することができる。また、上記構成の頭部保護エアバッグ装置では、前列用バッグ24における後端側の取付部35B(延設部40の後端側に配設される取付部35B)を、延設部を配設させない構成のものと比較して、車両後方側に位置させることができることから、延設部40を配設させない構成のものと比較して、前列用バッグ24の膨張完了時に、前後方向に沿うように大きなテンションが発生することとなる。そのため、一列目あるいは二列目の座席S1・S2に着座した乗員の頭部が車外側に大きく移動した場合にも、第1・第2膨張遮蔽部30・31により、乗員の頭部を確実に拘束することができて、好ましい。なお、実施形態のエアバッグ装置Mでは、前列用バッグのみを展開膨張させた際に、図7に示すごとく、延設部40が、三列目の座席S3の側方に配設される窓W3の車内側を覆うこととなるが、延設部40は、膨張用ガスを流入させない非流入部34から構成されており、前列用バッグ24の展開膨張時に、薄い状態で展開することから、図7の二点鎖線や図9の一点鎖線で示すごとく、三列目の座席S3を、不使用時に、窓W3の車内側Iに近接して立てるように格納している場合にも、展開する延設部40が、格納されている三列目の座席S3と干渉することを極力抑えることができ、前列用バッグ24を円滑に展開膨張させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の一実施形態である頭部保護エアバッグ装置を車内側から見た概略正面図である。
【図2】実施形態の頭部保護エアバッグ装置で使用する前列用バッグを平らに展開した状態を示す正面図である。
【図3】図2のIII−III部位の断面図である。
【図4】実施形態の頭部保護エアバッグ装置で使用する後列用バッグを平らに展開した状態を示す正面図である。
【図5】図4のV−V部位の断面図である。
【図6】図1のVI−VI部位の拡大断面図である。
【図7】実施形態の頭部保護エアバッグ装置において、前列用バッグのみが膨張を完了させた状態を示す車内側から見た概略正面図である。
【図8】実施形態の頭部保護エアバッグ装置において、前列用バッグと後列用バッグとが膨張を完了させた状態を示す車内側から見た概略正面図である。
【図9】実施形態の頭部保護エアバッグ装置において、エアバッグの膨張完了状態を示す断面図であり、後列用バッグの部位を示す概略縦断面図である。
【図10】実施形態の頭部保護エアバッグ装置において、エアバッグの膨張完了状態を示す断面図であり、後列用バッグの部位を示す概略横断面図である。
【図11】前列用バッグの変形例を示す部分拡大正面図である。
【符号の説明】
【0049】
1…ボディ、
9・13…インフレーター、
23…エアバッグ、
24…前列用バッグ、
30…第1膨張遮蔽部(前側膨張遮蔽部)、
31…第2膨張遮蔽部(前側膨張遮蔽部)、
40…延設部、
43…ガイド部、
45…後列用バッグ、
59…連結部、
S1・S2・S3…座席、
W1・W2・W3…窓、
V…車両、
M…頭部保護エアバッグ装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
膨張完了時の上縁側を車両の車内側における窓の上縁側のボディ側に固定させて、前記窓の上縁側に折り畳まれて収納されるとともに、インフレーターからの膨張用ガスを流入させて収納位置から下方に突出しつつ前記窓の車内側を覆うように展開膨張する構成のエアバッグ、を備える構成とされて、三列シートタイプの車両に搭載され、
前記エアバッグが、前記インフレーターからの膨張用ガスを流入させて膨張するガス流入部と、膨張用ガスを流入させない非流入部と、を備える構成とされ、
前記ガス流入部が、前記エアバッグの膨張完了時に、窓の車内側を覆うように配設される膨張遮蔽部を備える構成の頭部保護エアバッグ装置であって、
前記エアバッグが、それぞれ別体とされて、膨張完了時に一列目と二列目の座席の側方に配設される窓の車内側を覆うように配設される前側膨張遮蔽部を有した前列用バッグと、膨張完了時に三列目の座席の側方に配設される窓の車内側を覆うように配設される後側膨張遮蔽部を有した後列用バッグと、から構成され、
前記後列用バッグが、膨張完了時の前端近傍における下縁側の部位に配設される連結部を、前記前列用バッグの膨張完了時における後縁近傍において略上下方向に沿って配設されるガイド部に連結させることにより、前記前列用バッグに連結される構成とされ、
前記連結部が、
前記前列用バッグのみを展開膨張させる際に、前記ガイド部に対して相対的に摺動可能として、前記前列用バッグのみの展開膨張を許容するように、前記ガイド部に連結され、かつ、
前記前列用バッグと前記後列用バッグとをともに展開膨張させる際に、前記後列用バッグの下方への展開に伴って前記ガイド部の下端付近まで摺動可能とされて、前記後列用バッグの膨張完了時において、前記連結部から前記後列用バッグの上縁側における後端近傍に配設される前記ボディ側への固定部位にかけてテンションを発生可能に、
前記ガイド部に連結されていることを特徴とする頭部保護エアバッグ装置。
【請求項2】
前記ガイド部が、略上下方向に沿った帯状とされて、前記前側膨張遮蔽部の後縁側の前記非流入部の部位に、配設されていることを特徴とする請求項1に記載の頭部保護エアバッグ装置。
【請求項3】
前記前列用バッグが、前記非流入部として、膨張完了時における前記前側膨張遮蔽部の後縁側における少なくとも下端側の部位から車両後方側に延びるように配設されて、後端を三列目に配設される窓の上縁側に固定させる延設部を、備えて構成され、
前記後列用バッグにおける前記後側膨張遮蔽部が、前記前・後列用バッグの膨張完了時において、車外側を、前記延設部に支持される構成であることを特徴とする請求項1又は2に記載の頭部保護エアバッグ装置。
【請求項1】
膨張完了時の上縁側を車両の車内側における窓の上縁側のボディ側に固定させて、前記窓の上縁側に折り畳まれて収納されるとともに、インフレーターからの膨張用ガスを流入させて収納位置から下方に突出しつつ前記窓の車内側を覆うように展開膨張する構成のエアバッグ、を備える構成とされて、三列シートタイプの車両に搭載され、
前記エアバッグが、前記インフレーターからの膨張用ガスを流入させて膨張するガス流入部と、膨張用ガスを流入させない非流入部と、を備える構成とされ、
前記ガス流入部が、前記エアバッグの膨張完了時に、窓の車内側を覆うように配設される膨張遮蔽部を備える構成の頭部保護エアバッグ装置であって、
前記エアバッグが、それぞれ別体とされて、膨張完了時に一列目と二列目の座席の側方に配設される窓の車内側を覆うように配設される前側膨張遮蔽部を有した前列用バッグと、膨張完了時に三列目の座席の側方に配設される窓の車内側を覆うように配設される後側膨張遮蔽部を有した後列用バッグと、から構成され、
前記後列用バッグが、膨張完了時の前端近傍における下縁側の部位に配設される連結部を、前記前列用バッグの膨張完了時における後縁近傍において略上下方向に沿って配設されるガイド部に連結させることにより、前記前列用バッグに連結される構成とされ、
前記連結部が、
前記前列用バッグのみを展開膨張させる際に、前記ガイド部に対して相対的に摺動可能として、前記前列用バッグのみの展開膨張を許容するように、前記ガイド部に連結され、かつ、
前記前列用バッグと前記後列用バッグとをともに展開膨張させる際に、前記後列用バッグの下方への展開に伴って前記ガイド部の下端付近まで摺動可能とされて、前記後列用バッグの膨張完了時において、前記連結部から前記後列用バッグの上縁側における後端近傍に配設される前記ボディ側への固定部位にかけてテンションを発生可能に、
前記ガイド部に連結されていることを特徴とする頭部保護エアバッグ装置。
【請求項2】
前記ガイド部が、略上下方向に沿った帯状とされて、前記前側膨張遮蔽部の後縁側の前記非流入部の部位に、配設されていることを特徴とする請求項1に記載の頭部保護エアバッグ装置。
【請求項3】
前記前列用バッグが、前記非流入部として、膨張完了時における前記前側膨張遮蔽部の後縁側における少なくとも下端側の部位から車両後方側に延びるように配設されて、後端を三列目に配設される窓の上縁側に固定させる延設部を、備えて構成され、
前記後列用バッグにおける前記後側膨張遮蔽部が、前記前・後列用バッグの膨張完了時において、車外側を、前記延設部に支持される構成であることを特徴とする請求項1又は2に記載の頭部保護エアバッグ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−232081(P2006−232081A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−49173(P2005−49173)
【出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】
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