頭部装着型ディスプレイ装置
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、観察者の頭部に保持するシースルー機能を持つ頭部装着型ディスプレイ装置に関し、特に、大きな画角で電子像及び外界が観測可能な頭部装着型ディスプレイ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、シースルー機能を持つ頭部装着型ディスプレイ装置として、ハーフミラーを介して電子像と外界像を視軸に導き、両者を選択的に又は合成して表示するものが知られている。その典型的な構成は、図11R>1に平面図を示すように、液晶表示素子等の2次元表示素子4によって表示された電子像の光をレンズ系3を経て偏心配置の凹面ハーフミラー2により反射させて使用者頭部の眼球1へ導くと共に、外界像の光を凹面ハーフミラー2を通して眼球1へ導いて、両者を合成して表示するか、2次元表示素子4の表示を切って外界像のみを観察するか、又は、凹面ハーフミラー2の前方に配置した液晶シャッタ5によって外界光を遮断して電子像を選択的に表示するものである。このように、液晶シャッタ5は、外界を観察するときは透過状態にし、電子像を観察するときは遮光状態にしている。
【0003】しかし、一般的に用いられているツイストネマティック(TN)液晶あるいはスーパーツイストネマティック(STN)液晶を用いた液晶シャッタは、ある特定の方向から見た場合には、高いコントラストを持つが(これを視角方向と呼ぶが、その方向を液晶面に投影した方向も視角方向と呼ぶ。)、その他の方向から見た場合には、相対的にコントラストが低くなる。
【0004】例えば、図5(a)に示すように、視角方向が6時方向である6時視角のポジ型の液晶シャッタ(「ポジ型」とは、電圧印加時に遮光状態になるものを言う。)の電圧印加時、すなわち、遮光時の上下方向(12時6時方向)の視角θ0 と遮光率の関係は、同図(b)に示すような特性を示す。また、そのときの左右方向(3時9時方向)の視角θ1 と遮光率の関係は、図6R>6に示すようになる。図5(b)、図6(b)から明らかなように、遮光状態が良好な領域は、左右方向はほぼ対称であるが、上下方向では非対称となる。
【0005】つまり、ある特定の方向から見た場合には高いコントラストを持つが、その他の方向から見た場合にはコントラストが低くなる。また、視線と液晶シャッタの交わる点における視線と液晶シャッタの法線のなす角度、すなわち、視角θ0 、θ1 によってもコントラストが変化する。
【0006】このような状況において、本出願人は、遮光率の良好な視角範囲を広げるために、液晶シャッタを複数枚重ねる方法とこのような液晶シャッタを用いた頭部装着型ディスプレイ装置を既に提案している(特願平4−267505号)。これは、例えば、同じ6時方向の視角方向を持つが、貼り付けてある2枚の偏光板の透過軸方向がお互いに90°異なっている液晶シャッタAと液晶シャッタBの2枚を用い、これを、■図7(a)あるいは(b)に示すように、視角特性が非対称な上下方向を相互に逆にして2枚重ねる、あるいは、■図8(a)あるいは(b)に示すように、視角特性が非対称な上下方向を回転軸として1枚を裏返しにして2枚重ねるものである。
【0007】例えば、図7(a)のポジ型の液晶シャッタA、Bの2枚重ねの場合、遮光時の透過率−視角特性例を示すと図9のようになる。この図から、視角θ0 、θ1が小さい範囲では、上下方向も、左右方向も十分に高い遮光率が得られることが分かる(透過率が十分低い)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】このように液晶シャッタを複数枚重ねても、実際には、良好な遮光状態が得られる視角範囲は、視角θ0 、θ1 が±15°程度なので、図10に示したように、複数枚からなる液晶シャッタ50を顔の前面に取り付ける構造の頭部装着型ディスプレイ装置にした場合には、外界の観測可能範囲は、画角にして30°程度の範囲になる。
【0009】しかし、2次元表示素子によって表示する電子像をワイドビジョンのように画角の大きなものにし、それに伴い外界の観測可能な範囲も大きくしようとすると、すなわち、外界の観測可能な画角を大きくしようとすると、周辺部では十分な遮光率が得られなくなる。この問題は、外界像の周辺部では視角θ0 、θ1 が大きくなり、液晶シャッタ50の良好な遮光状態が得られる視角範囲を越えてしまうために生じる。
【0010】本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、液晶シャッタを透過状態にして外界を観察可能にし、これを遮光状態にして電子像を観察可能にする頭部装着型ディスプレイ装置において、大きな画角で電子像及び外界を良好に観察可能にすることである。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成する本発明の頭部装着型ディスプレイ装置は、映像を表示する映像表示素子と、前記映像表示素子に表示された映像を観察者の眼球に投影する投影光学系と、前記観察者の眼球に導かれる外界像を透過・遮断する液晶シャッタとを有する頭部装着型ディスプレイ装置において、前記液晶シャッタの面形状が、少なくともその一部が曲面又は複数の平面で構成され、前記観察者の眼球の瞳を通る視線と前記液晶シャッタの交わる点における視線と液晶シャッタの法線のなす角度が、少なくとも前記液晶シャッタの面内の一部において、前記液晶シャッタを平面状の1枚の液晶シャッタで構成する場合よりも、小さくなるような面形状になっていることを特徴とするものである。
【0012】
【作用】本発明においては、液晶シャッタの面形状が、少なくともその一部が曲面又は複数の平面で構成され、観察者の眼球の瞳を通る視線と液晶シャッタの交わる点における視線と液晶シャッタの法線のなす角度が、液晶シャッタを平面状の1枚の液晶シャッタで構成する場合よりも、少なくとも液晶シャッタの面内の一部において小さくなるような面形状になっているので、大きな画角においても液晶シャッタの良好な遮光状態が得られ、大画角の電子像を良好な状態で観察可能になり、大画角で外界も観察できる。
【0013】
【実施例】本発明の基本原理は、頭部装着型ディスプレイ装置に用いる液晶シャッタを曲面状にするか、あるいは、複数の平面状の液晶シャッタを接合部を介して折り曲げた形状に接合した構成にして、視線と液晶シャッタの交わる点における視線と液晶シャッタの法線のなす角度、すなわち、上下方向の視角θ0 、左右方向の視角θ1 の少なくとも一方を平面状の1枚の液晶シャッタを用いる場合よりも小さくなるようにして、観察範囲の周辺部においても、液晶シャッタの良好な遮光状態が得られる視角範囲を越えないようにすることである。
【0014】以下、図面を参照にして本発明の頭部装着型ディスプレイ装置の実施例について説明する。図1は、第1実施例の頭部装着型ディスプレイ装置の平面図であり、従来のものと同様、液晶表示素子等の左右一対の2次元表示素子4によって表示された電子像の光を左右それぞれのレンズ系3を経て偏心配置の左右それぞれの凹面ハーフミラー2により反射させて使用者頭部の左右の眼球1へ導くと共に、外界像の光をそれぞれの凹面ハーフミラー2を通して眼球1へ導いて、両者を合成して表示するか、2次元表示素子4の表示を切って外界像のみを観察するか、又は、凹面ハーフミラー2の前方に配置した左右一対の液晶シャッタ50によって外界光を遮断して電子像を選択的に表示する。ここで、液晶シャッタ50は、図7、図8に示したように、ポジ型の液晶シャッタを2枚重ねた構成であり、同じ視角方向を持つが、貼り付けてある2枚の偏光板の透過軸方向が相互に90°異なっているものを用意し、これらを視角方向を互いに逆にして2枚重ねるか、あるいは、相互に裏返しにして2枚重ねたものである。そして、外界を観察するときは液晶シャッタ50を透過状態にし、電子像を観察するときは液晶シャッタ50を遮光状態にして使用する。
【0015】ところで、液晶シャッタ50を構成する各液晶シャッタは、例えば曲げても割れないプラスチックフィルムを用いて構成したフィルム液晶シャッタからなり、曲面状に曲げられている。その曲げ状態は、眼球1の瞳を通る視線と液晶シャッタ50の交わる点における視線と液晶シャッタ50の法線のなす角度の中、上下方向の視角θ0 、左右方向の視角θ1 の少なくとも一方が、液晶シャッタ50として平面状の1枚の液晶シャッタを用いる場合よりも、小さくなるような曲面形状であり、図1の場合は、ワイドビジョンのように、使用者頭部側に曲率中心が位置し、水平方向に曲がっている円筒面形状になっている。このような面形状にすることにより、視角θ0 、θ1 を小さくすることができ、液晶シャッタ50の良好な遮光状態が得られる視角範囲を越えないように調整することができる。なお、面形状はこれに限らず、垂直方向にも曲がっていてもよい。
【0016】上記実施例では、液晶シャッタを2枚重ねて液晶シャッタ50を構成しているが、1枚の液晶シャッタのみで外界の観測可能範囲全体を十分に遮光できるよう、液晶シャッタの視角範囲内に視角θ0 、θ1 が収まるようにその曲面形状及び取り付け状態が調整できる場合は、1枚の液晶シャッタのみで構成してもよい。さらには、3枚以上の液晶シャッタを重ねたものでもよい。また、ポジ型の液晶シャッタの代わりに、単数又は複数の重畳したネガ型の液晶シャッタを用いてもよい。
【0017】本実施例では、液晶シャッタ50をプラスチックフィルムを使用して構成しているので、従来のガラス板を使用した液晶シャッタに比べて薄く軽量にできる。また、液晶シャッタ50を曲面にすることができるので、装置をコンパクトにできる。なお、液晶シャッタ50の材料は、曲げることができるものであれば、プラスチックに限る必要はない。また、曲面ガラスを使用して構成してもよい。
【0018】図2は、図1の実施例の変形例を示すもので、この実施例においては、左右の眼球1それぞれに液晶シャッタ50を配置する代わりに、両眼共通の1枚の液晶シャッタ50で構成している。この場合も、左右それぞれの視線と液晶シャッタ50の法線のなす角度の中、上下方向の視角θ0 、左右方向の視角θ1 の少なくとも一方が、液晶シャッタ50として平面状の1枚の液晶シャッタを用いる場合よりも、小さくなるような曲面形状であり、この場合、液晶シャッタ50の両端で、使用者頭部側に曲率中心が位置するように、水平方向に曲がっている。
【0019】図3に第2実施例に用いる液晶シャッタ50の斜視図を示す。この実施例においては、平面型の3枚の液晶シャッタ61 〜63 、71 〜73 を接合部8を介して折り曲げた形状に接合して、2枚重ねの液晶シャッタ50を構成している。そして、図4に示すように、このような液晶シャッタ50を左右それぞれの凹面ハーフミラー2の前方に取り付ける。接合部8は遮光性材料で構成しなければならないが、目障りにならないようにできるだけ接合部8は細くするようにする。また、液晶シャッタ面に眼のピントを合わせることができないくらい眼の近くに液晶シャッタ50を取り付ければ、接合部8自体は視野を妨げるものとはなり得ない。
【0020】この場合も、液晶シャッタ50は、ポジ型液晶シャッタを2枚重ねた構成であり、同じ視角方向を持つが、貼り付けてある2枚の偏光板の透過軸方向が相互に90°異なっているものを用意し、これらを視角方向を互いに逆にして2枚重ねるか、あるいは、相互に裏返しにして2枚重ねたものである。そして、外界を観察するときは液晶シャッタ50を透過状態にし、電子像を観察するときは液晶シャッタ50を遮光状態にして使用する。
【0021】そして、左右の眼球1に対して図4のように図3の液晶シャッタ50を取り付けると、観察可能な外界像の周辺部においても、視線と液晶シャッタ50の交わる点における視線と液晶シャッタ50の法線のなす角度θ0 、θ1 が大きくならないので、液晶シャッタ50の良好な遮光状態が得られる視角範囲を越えないように調整することができる。
【0022】ここで、この例でも、液晶シャッタ50を2枚重ねで使用しているが、1枚の液晶シャッタのみで外界の観測可能範囲全体を十分に遮光できるよう、液晶シャッタの視角範囲内に視角θ0 、θ1 が収まるようにその取り付け状態が調整できる場合は、1枚の液晶シャッタのみで構成してもよい。さらには、3枚以上の液晶シャッタを重ねたものでもよい。また、ポジ型の液晶シャッタの代わりに、単数又は複数の重畳したネガ型の液晶シャッタを用いてもよい。
【0023】なお、本実施例では、面方向に3枚の液晶シャッタを接合して液晶シャッタ50を構成したが、この枚数に限る必要はなく、2枚でもまた4枚以上であってもよい。
【0024】以上、本発明の頭部装着型ディスプレイ装置をいくつかの実施例に基づいて説明してきたが、本発明はこれら実施例に限定されることなく種々の変形が可能である。例えば、頭部装着型ディスプレイ装置を構成する光学系は、図1に示されたような配置に限定されるものではない。
【0025】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明の頭部装着型ディスプレイ装置によると、液晶シャッタの面形状が、少なくともその一部が曲面又は複数の平面で構成され、観察者の眼球の瞳を通る視線と液晶シャッタの交わる点における視線と液晶シャッタの法線のなす角度が、液晶シャッタを平面状の1枚の液晶シャッタで構成する場合よりも、少なくとも液晶シャッタの面内の一部において小さくなるような面形状になっているので、大きな画角においても液晶シャッタの良好な遮光状態が得られ、大画角の電子像を良好な状態で観察可能になり、大画角で外界も観察できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の頭部装着型ディスプレイ装置の第1実施例の平面図である。
【図2】図1の変形例の平面図である。
【図3】第2実施例に用いる液晶シャッタの斜視図である。
【図4】第2実施例の平面図である。
【図5】ポジ型の液晶シャッタの遮光時に上下方向で遮光状態が非対称になることを示す図である。
【図6】図5の状態で左右方向で遮光状態がほぼ対称になることを示す図である。
【図7】2枚の液晶シャッタの1つの重ね合わせ状態を示す図である。
【図8】2枚の液晶シャッタの他の重ね合わせ状態を示す図である。
【図9】重ね合わせ状態の視角と遮光時の透過率との関係の特性の例を示す図である。
【図10】本出願人の先の提案の頭部装着型ディスプレイ装置の平面図である。
【図11】従来の1例の頭部装着型ディスプレイ装置の平面図である。
【符号の説明】
1…眼球
2…凹面ハーフミラー
3…レンズ系
4…2次元表示素子
61 〜63 、71 〜73 …平面型液晶シャッタ
8…接合部
50…液晶シャッタ
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、観察者の頭部に保持するシースルー機能を持つ頭部装着型ディスプレイ装置に関し、特に、大きな画角で電子像及び外界が観測可能な頭部装着型ディスプレイ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、シースルー機能を持つ頭部装着型ディスプレイ装置として、ハーフミラーを介して電子像と外界像を視軸に導き、両者を選択的に又は合成して表示するものが知られている。その典型的な構成は、図11R>1に平面図を示すように、液晶表示素子等の2次元表示素子4によって表示された電子像の光をレンズ系3を経て偏心配置の凹面ハーフミラー2により反射させて使用者頭部の眼球1へ導くと共に、外界像の光を凹面ハーフミラー2を通して眼球1へ導いて、両者を合成して表示するか、2次元表示素子4の表示を切って外界像のみを観察するか、又は、凹面ハーフミラー2の前方に配置した液晶シャッタ5によって外界光を遮断して電子像を選択的に表示するものである。このように、液晶シャッタ5は、外界を観察するときは透過状態にし、電子像を観察するときは遮光状態にしている。
【0003】しかし、一般的に用いられているツイストネマティック(TN)液晶あるいはスーパーツイストネマティック(STN)液晶を用いた液晶シャッタは、ある特定の方向から見た場合には、高いコントラストを持つが(これを視角方向と呼ぶが、その方向を液晶面に投影した方向も視角方向と呼ぶ。)、その他の方向から見た場合には、相対的にコントラストが低くなる。
【0004】例えば、図5(a)に示すように、視角方向が6時方向である6時視角のポジ型の液晶シャッタ(「ポジ型」とは、電圧印加時に遮光状態になるものを言う。)の電圧印加時、すなわち、遮光時の上下方向(12時6時方向)の視角θ0 と遮光率の関係は、同図(b)に示すような特性を示す。また、そのときの左右方向(3時9時方向)の視角θ1 と遮光率の関係は、図6R>6に示すようになる。図5(b)、図6(b)から明らかなように、遮光状態が良好な領域は、左右方向はほぼ対称であるが、上下方向では非対称となる。
【0005】つまり、ある特定の方向から見た場合には高いコントラストを持つが、その他の方向から見た場合にはコントラストが低くなる。また、視線と液晶シャッタの交わる点における視線と液晶シャッタの法線のなす角度、すなわち、視角θ0 、θ1 によってもコントラストが変化する。
【0006】このような状況において、本出願人は、遮光率の良好な視角範囲を広げるために、液晶シャッタを複数枚重ねる方法とこのような液晶シャッタを用いた頭部装着型ディスプレイ装置を既に提案している(特願平4−267505号)。これは、例えば、同じ6時方向の視角方向を持つが、貼り付けてある2枚の偏光板の透過軸方向がお互いに90°異なっている液晶シャッタAと液晶シャッタBの2枚を用い、これを、
【0007】例えば、図7(a)のポジ型の液晶シャッタA、Bの2枚重ねの場合、遮光時の透過率−視角特性例を示すと図9のようになる。この図から、視角θ0 、θ1が小さい範囲では、上下方向も、左右方向も十分に高い遮光率が得られることが分かる(透過率が十分低い)。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】このように液晶シャッタを複数枚重ねても、実際には、良好な遮光状態が得られる視角範囲は、視角θ0 、θ1 が±15°程度なので、図10に示したように、複数枚からなる液晶シャッタ50を顔の前面に取り付ける構造の頭部装着型ディスプレイ装置にした場合には、外界の観測可能範囲は、画角にして30°程度の範囲になる。
【0009】しかし、2次元表示素子によって表示する電子像をワイドビジョンのように画角の大きなものにし、それに伴い外界の観測可能な範囲も大きくしようとすると、すなわち、外界の観測可能な画角を大きくしようとすると、周辺部では十分な遮光率が得られなくなる。この問題は、外界像の周辺部では視角θ0 、θ1 が大きくなり、液晶シャッタ50の良好な遮光状態が得られる視角範囲を越えてしまうために生じる。
【0010】本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、液晶シャッタを透過状態にして外界を観察可能にし、これを遮光状態にして電子像を観察可能にする頭部装着型ディスプレイ装置において、大きな画角で電子像及び外界を良好に観察可能にすることである。
【0011】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成する本発明の頭部装着型ディスプレイ装置は、映像を表示する映像表示素子と、前記映像表示素子に表示された映像を観察者の眼球に投影する投影光学系と、前記観察者の眼球に導かれる外界像を透過・遮断する液晶シャッタとを有する頭部装着型ディスプレイ装置において、前記液晶シャッタの面形状が、少なくともその一部が曲面又は複数の平面で構成され、前記観察者の眼球の瞳を通る視線と前記液晶シャッタの交わる点における視線と液晶シャッタの法線のなす角度が、少なくとも前記液晶シャッタの面内の一部において、前記液晶シャッタを平面状の1枚の液晶シャッタで構成する場合よりも、小さくなるような面形状になっていることを特徴とするものである。
【0012】
【作用】本発明においては、液晶シャッタの面形状が、少なくともその一部が曲面又は複数の平面で構成され、観察者の眼球の瞳を通る視線と液晶シャッタの交わる点における視線と液晶シャッタの法線のなす角度が、液晶シャッタを平面状の1枚の液晶シャッタで構成する場合よりも、少なくとも液晶シャッタの面内の一部において小さくなるような面形状になっているので、大きな画角においても液晶シャッタの良好な遮光状態が得られ、大画角の電子像を良好な状態で観察可能になり、大画角で外界も観察できる。
【0013】
【実施例】本発明の基本原理は、頭部装着型ディスプレイ装置に用いる液晶シャッタを曲面状にするか、あるいは、複数の平面状の液晶シャッタを接合部を介して折り曲げた形状に接合した構成にして、視線と液晶シャッタの交わる点における視線と液晶シャッタの法線のなす角度、すなわち、上下方向の視角θ0 、左右方向の視角θ1 の少なくとも一方を平面状の1枚の液晶シャッタを用いる場合よりも小さくなるようにして、観察範囲の周辺部においても、液晶シャッタの良好な遮光状態が得られる視角範囲を越えないようにすることである。
【0014】以下、図面を参照にして本発明の頭部装着型ディスプレイ装置の実施例について説明する。図1は、第1実施例の頭部装着型ディスプレイ装置の平面図であり、従来のものと同様、液晶表示素子等の左右一対の2次元表示素子4によって表示された電子像の光を左右それぞれのレンズ系3を経て偏心配置の左右それぞれの凹面ハーフミラー2により反射させて使用者頭部の左右の眼球1へ導くと共に、外界像の光をそれぞれの凹面ハーフミラー2を通して眼球1へ導いて、両者を合成して表示するか、2次元表示素子4の表示を切って外界像のみを観察するか、又は、凹面ハーフミラー2の前方に配置した左右一対の液晶シャッタ50によって外界光を遮断して電子像を選択的に表示する。ここで、液晶シャッタ50は、図7、図8に示したように、ポジ型の液晶シャッタを2枚重ねた構成であり、同じ視角方向を持つが、貼り付けてある2枚の偏光板の透過軸方向が相互に90°異なっているものを用意し、これらを視角方向を互いに逆にして2枚重ねるか、あるいは、相互に裏返しにして2枚重ねたものである。そして、外界を観察するときは液晶シャッタ50を透過状態にし、電子像を観察するときは液晶シャッタ50を遮光状態にして使用する。
【0015】ところで、液晶シャッタ50を構成する各液晶シャッタは、例えば曲げても割れないプラスチックフィルムを用いて構成したフィルム液晶シャッタからなり、曲面状に曲げられている。その曲げ状態は、眼球1の瞳を通る視線と液晶シャッタ50の交わる点における視線と液晶シャッタ50の法線のなす角度の中、上下方向の視角θ0 、左右方向の視角θ1 の少なくとも一方が、液晶シャッタ50として平面状の1枚の液晶シャッタを用いる場合よりも、小さくなるような曲面形状であり、図1の場合は、ワイドビジョンのように、使用者頭部側に曲率中心が位置し、水平方向に曲がっている円筒面形状になっている。このような面形状にすることにより、視角θ0 、θ1 を小さくすることができ、液晶シャッタ50の良好な遮光状態が得られる視角範囲を越えないように調整することができる。なお、面形状はこれに限らず、垂直方向にも曲がっていてもよい。
【0016】上記実施例では、液晶シャッタを2枚重ねて液晶シャッタ50を構成しているが、1枚の液晶シャッタのみで外界の観測可能範囲全体を十分に遮光できるよう、液晶シャッタの視角範囲内に視角θ0 、θ1 が収まるようにその曲面形状及び取り付け状態が調整できる場合は、1枚の液晶シャッタのみで構成してもよい。さらには、3枚以上の液晶シャッタを重ねたものでもよい。また、ポジ型の液晶シャッタの代わりに、単数又は複数の重畳したネガ型の液晶シャッタを用いてもよい。
【0017】本実施例では、液晶シャッタ50をプラスチックフィルムを使用して構成しているので、従来のガラス板を使用した液晶シャッタに比べて薄く軽量にできる。また、液晶シャッタ50を曲面にすることができるので、装置をコンパクトにできる。なお、液晶シャッタ50の材料は、曲げることができるものであれば、プラスチックに限る必要はない。また、曲面ガラスを使用して構成してもよい。
【0018】図2は、図1の実施例の変形例を示すもので、この実施例においては、左右の眼球1それぞれに液晶シャッタ50を配置する代わりに、両眼共通の1枚の液晶シャッタ50で構成している。この場合も、左右それぞれの視線と液晶シャッタ50の法線のなす角度の中、上下方向の視角θ0 、左右方向の視角θ1 の少なくとも一方が、液晶シャッタ50として平面状の1枚の液晶シャッタを用いる場合よりも、小さくなるような曲面形状であり、この場合、液晶シャッタ50の両端で、使用者頭部側に曲率中心が位置するように、水平方向に曲がっている。
【0019】図3に第2実施例に用いる液晶シャッタ50の斜視図を示す。この実施例においては、平面型の3枚の液晶シャッタ61 〜63 、71 〜73 を接合部8を介して折り曲げた形状に接合して、2枚重ねの液晶シャッタ50を構成している。そして、図4に示すように、このような液晶シャッタ50を左右それぞれの凹面ハーフミラー2の前方に取り付ける。接合部8は遮光性材料で構成しなければならないが、目障りにならないようにできるだけ接合部8は細くするようにする。また、液晶シャッタ面に眼のピントを合わせることができないくらい眼の近くに液晶シャッタ50を取り付ければ、接合部8自体は視野を妨げるものとはなり得ない。
【0020】この場合も、液晶シャッタ50は、ポジ型液晶シャッタを2枚重ねた構成であり、同じ視角方向を持つが、貼り付けてある2枚の偏光板の透過軸方向が相互に90°異なっているものを用意し、これらを視角方向を互いに逆にして2枚重ねるか、あるいは、相互に裏返しにして2枚重ねたものである。そして、外界を観察するときは液晶シャッタ50を透過状態にし、電子像を観察するときは液晶シャッタ50を遮光状態にして使用する。
【0021】そして、左右の眼球1に対して図4のように図3の液晶シャッタ50を取り付けると、観察可能な外界像の周辺部においても、視線と液晶シャッタ50の交わる点における視線と液晶シャッタ50の法線のなす角度θ0 、θ1 が大きくならないので、液晶シャッタ50の良好な遮光状態が得られる視角範囲を越えないように調整することができる。
【0022】ここで、この例でも、液晶シャッタ50を2枚重ねで使用しているが、1枚の液晶シャッタのみで外界の観測可能範囲全体を十分に遮光できるよう、液晶シャッタの視角範囲内に視角θ0 、θ1 が収まるようにその取り付け状態が調整できる場合は、1枚の液晶シャッタのみで構成してもよい。さらには、3枚以上の液晶シャッタを重ねたものでもよい。また、ポジ型の液晶シャッタの代わりに、単数又は複数の重畳したネガ型の液晶シャッタを用いてもよい。
【0023】なお、本実施例では、面方向に3枚の液晶シャッタを接合して液晶シャッタ50を構成したが、この枚数に限る必要はなく、2枚でもまた4枚以上であってもよい。
【0024】以上、本発明の頭部装着型ディスプレイ装置をいくつかの実施例に基づいて説明してきたが、本発明はこれら実施例に限定されることなく種々の変形が可能である。例えば、頭部装着型ディスプレイ装置を構成する光学系は、図1に示されたような配置に限定されるものではない。
【0025】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明の頭部装着型ディスプレイ装置によると、液晶シャッタの面形状が、少なくともその一部が曲面又は複数の平面で構成され、観察者の眼球の瞳を通る視線と液晶シャッタの交わる点における視線と液晶シャッタの法線のなす角度が、液晶シャッタを平面状の1枚の液晶シャッタで構成する場合よりも、少なくとも液晶シャッタの面内の一部において小さくなるような面形状になっているので、大きな画角においても液晶シャッタの良好な遮光状態が得られ、大画角の電子像を良好な状態で観察可能になり、大画角で外界も観察できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の頭部装着型ディスプレイ装置の第1実施例の平面図である。
【図2】図1の変形例の平面図である。
【図3】第2実施例に用いる液晶シャッタの斜視図である。
【図4】第2実施例の平面図である。
【図5】ポジ型の液晶シャッタの遮光時に上下方向で遮光状態が非対称になることを示す図である。
【図6】図5の状態で左右方向で遮光状態がほぼ対称になることを示す図である。
【図7】2枚の液晶シャッタの1つの重ね合わせ状態を示す図である。
【図8】2枚の液晶シャッタの他の重ね合わせ状態を示す図である。
【図9】重ね合わせ状態の視角と遮光時の透過率との関係の特性の例を示す図である。
【図10】本出願人の先の提案の頭部装着型ディスプレイ装置の平面図である。
【図11】従来の1例の頭部装着型ディスプレイ装置の平面図である。
【符号の説明】
1…眼球
2…凹面ハーフミラー
3…レンズ系
4…2次元表示素子
61 〜63 、71 〜73 …平面型液晶シャッタ
8…接合部
50…液晶シャッタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】 映像を表示する映像表示素子と、前記映像表示素子に表示された映像を観察者の眼球に投影する投影光学系と、前記観察者の眼球に導かれる外界像を透過・遮断する液晶シャッタとを有する頭部装着型ディスプレイ装置において、前記液晶シャッタの面形状が、少なくともその一部が曲面又は複数の平面で構成され、前記観察者の眼球の瞳を通る視線と前記液晶シャッタの交わる点における視線と液晶シャッタの法線のなす角度が、前記液晶シャッタを平面状の1枚の液晶シャッタで構成する場合よりも、少なくとも前記液晶シャッタの面内の一部において小さくなるような面形状になっていることを特徴とする頭部装着型ディスプレイ装置。
【請求項1】 映像を表示する映像表示素子と、前記映像表示素子に表示された映像を観察者の眼球に投影する投影光学系と、前記観察者の眼球に導かれる外界像を透過・遮断する液晶シャッタとを有する頭部装着型ディスプレイ装置において、前記液晶シャッタの面形状が、少なくともその一部が曲面又は複数の平面で構成され、前記観察者の眼球の瞳を通る視線と前記液晶シャッタの交わる点における視線と液晶シャッタの法線のなす角度が、前記液晶シャッタを平面状の1枚の液晶シャッタで構成する場合よりも、少なくとも前記液晶シャッタの面内の一部において小さくなるような面形状になっていることを特徴とする頭部装着型ディスプレイ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【特許番号】特許第3262872号(P3262872)
【登録日】平成13年12月21日(2001.12.21)
【発行日】平成14年3月4日(2002.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−346087
【出願日】平成4年12月25日(1992.12.25)
【公開番号】特開平6−194597
【公開日】平成6年7月15日(1994.7.15)
【審査請求日】平成11年11月11日(1999.11.11)
【出願人】(000000376)オリンパス光学工業株式会社 (11,466)
【登録日】平成13年12月21日(2001.12.21)
【発行日】平成14年3月4日(2002.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成4年12月25日(1992.12.25)
【公開番号】特開平6−194597
【公開日】平成6年7月15日(1994.7.15)
【審査請求日】平成11年11月11日(1999.11.11)
【出願人】(000000376)オリンパス光学工業株式会社 (11,466)
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