説明

頭頸部扁平上皮癌を診断するための方法

患者の頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)の診断および陰性診断におけるタンパク質バイオマーカーおよびそれらの使用を開示する。また、本発明のタンパク質バイオマーカーを検出するHNSCCの診断用キット、および複数の分類子を使用してHNSCCの有望な診断を行う方法を開示する。本発明の特定の局面において、本方法は決定ツリー解析の使用を含む。種々のコンピュータ可読媒体および本発明によるそれらの使用もまた開示する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
連邦政府支援の研究開発の下でなされた発明の権利に関する説明
本発明は、米国立衛生研究所/米国立癌研究所による助成金番号第CA85067号の下、政府の支援を受けてなされたものである。政府は、本発明において一定の権利を有する。
【0002】
発明の背景
頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)は依然として深刻な疾患であり、米国ではすべての癌の5%を超える割合を占め、世界的には癌のさらに大きな割合を占めている(Jemal, A. et al., CA Cancer J. Clin. 53:5-26 (2003))。HNSCCの既知危険因子には、喫煙および過度のアルコール消費が含まれる。これらの危険因子に関する認識が高まっているにもかかわらず、米国におけるHNSCCの発症率は有意に変化していない。さらに、この30年間でHNSCCの治療は大きく進歩したにもかかわらず、生存率の改善はほとんど進歩していない。
【0003】
病期の初期段階における頭頸部癌の検出は、臨床治療の成否にとって最も重要である。しかし、主に、医師が利用できる十分なスクリーニング手段が不足しているという理由から、HNSCCのスクリーニングは米国癌学会の最新のスクリーニング指針にさえも記載されていない(Smith, R. CA Cancer J Clin. 53:27-43 (2003))。疑わしい臨床所見または臨床症状を有する患者における頭頸部の徹底的な検診および画像試験はさておき、これらの癌をスクリーニングする一般に認められた形式が存在しない。現在、HNSCC患者に利用できる標準的かつ効率的なスクリーニング手段は存在しない。HNSCC腫瘍の位置およびHNSCCの初期症状がウイルス性上気道感染などの良性過程と似ているという事実に起因して、ほとんどの患者は疾患の後期に至るまで診断されず、その結果、病的状態となり生活の質が顕著に低下する。例えば、進行性のHNSCCの治療は多くの場合、患者の外観を損なう。さらに、放射線照射および化学療法による衰弱させる副作用によって、構音障害および嚥下障害が生じる。
【0004】
HNSCCを予測するバイオマーカーの探索は、主に、HNSCCの発症をもたらす遺伝子異常の検出に焦点をおいている(Gleich, L., et al., Cancer Control 9:369-378 (2002);Patel, V., et al., Crit. Rev. Oral Biol. Med. 12:55-63 (2001))。しかし、HNSCCにおける複数の分子異常が同定され特徴づけられているにもかかわらず、技術の利用性の問題から日常的な臨床での使用が限定され、HNSCCの初期検出を強化するものは何も見い出されていない。
【0005】
また、多くの研究では、HNSCCの初期診断および予後に役立ち得るHNSCC関連タンパク質およびDNA/RNAバイオマーカーの同定において、ある程度成功していることが報告されている。例えば、RT-PCRを用いて、小数の上咽頭癌患者の血清中に転移関連サイトケラチン19陽性腫瘍細胞が検出された。しかしこの研究では、83.3%(6名の患者のうち5名)の感度に達するのに長期的血液試料を必要とした(Lin, J.C., et al., Head Neck 24:591-596 (2002))。さらに、一次化学放射線治療を受けた後の26名のHNSCC患者における、塩基性線維芽細胞増殖因子(bFGF)、血管内皮増殖因子、および基質メタロプロテイナーゼ-2を含む複数の生物学的マーカーの血清濃度のELISA解析から、bFGF濃度の上昇のみが以前の局所領域対照と相関することが示された(Dietz, A., et al., Head Neck 22: 666-673 (2000))。他の研究では、26名のHNSCC患者においていくつかの従来の血清学的マーカーが調べられたが、統計学的に有意なものは認められなかった(Walther, E.K. et. al., Head Neck 15:230-235 (1993))。さらなる研究から、p53腫瘍抑制タンパク質に対する抗体が、271名の口腔SCC患者のうち25%の血清中に(Gottschlich, S., et al., Anticancer Res. 19:2703-2705 (1999))、およびHNSCC患者の唾液中に低い割合で(Tavassoli, M., et al., Int J. Cancer 78:390-391 (1998);Warnakulasuriya, S., et al., J. Pathology 192:52-57 (2000))検出されることが認められた。核酸に基づくマイクロサテライト解析および腫瘍に特異的な異常なプロモーターメチル化もまた、HNSCC患者の血清および唾液における腫瘍特異的変化を検出するためのマーカーとして用いられた(Nawroz, H., et al., Nature Med. 2:1035-1037 (1996);Spafford, M.F., Clin. Cancer Res. 7: 607-612 (2001);El-Naggar, A.K., et al., J. Molec. Diagnostics 3:164-170 (2001);Sanchez-Cespedes, M., et al., Cancer Res. 60:892-895 (2000);Rosas, S.L.B., et al., Cancer Res. 61:939-942 (2001))。しかし、これらのアプローチは主観的である場合が多く、技術的能力が問われ得り、さらに一連のマイクロサテライトマーカーまたは選択された遺伝子を必要とする。一般に、核酸に基づく癌の検出方法は限られた数の試料で評価されたものであり、これらの初期の結果を確認するにはさらなる治験が必要となる。
【0006】
近年、診断バイオマーカーの探索では、HNSCCプロテオームの解読に注目が集中している。HNSCC患者に由来する特定の差次的発現タンパク質を検出するアッセイが、現在のところ診断および予後の有用性に関して評価されている。例えば、上皮増殖因子受容体(EGFr)外部ドメインタンパク質(Harvey, et al.、米国特許第5,344,760号)、p16ポリペプチド(Sidransky, et al.、米国特許第5,856,094号)、メタロパンスチムリン(metallopanstimulin)(「MPS」)関連タンパク質(Fernandez-Pol、米国特許第5,955,287号)、および頭頸部腫瘍タンパク質の少なくとも一部を含むポリペプチド(Wang, et al.、米国特許出願公開第US2002/0168647 A1号)を検出するアッセイが、現在、HNSCC診断の有効性に関して調べられている。
【0007】
免疫測定法に加えて、プロテオミクス研究には伝統的に、健常(対照)群と疾患群との間の組織試料および体液試料におけるタンパク質発現差を検出するための、二次元ゲル電気泳動(2D-PAGE)が関与する(Srinivas, P.R., et al., Clin Chem. 47:1901-1911 (2001);Adam, B.L., et al., Proteomics 1:1264-1270 (2001))。二次元ポリアクリルアミドゲル電気泳動(2D-EP)は、タンパク質発現の相違を分離および検出するためのプロテオームの探索における古典的アプローチであるが、厄介で手間がかかり、再現性の問題がある点で限界があり、よって臨床設定に容易に適用することができない。
【0008】
全般的に見て、いくつかの潜在的腫瘍マーカーが同定され広く研究されているにもかかわらず、いずれも、HNSCCの診断マーカーまたはスクリーニング手段として臨床上有用であることは見い出されていない。おそらくは、HNSCC細胞で起こる遺伝子変化および分子変化の複雑性から考えて、これらの複雑な変化の発現パターンは、スクリーニング、診断、および予後において、個々の分子変化自体よりも重要な情報を保持している可能性があると考えられる。
【0009】
プロテオミクスにおける近年の技術的進歩の1つは、ProteinChip(登録商標)表面増強レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析(SELDI-TOF-MS)である(Kuwata, H., et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 245:764-773 (1998);Merchant, M. et al., Electrophoresis 21:1164-1177 (2000))。このシステムでは、表面増強レーザー脱離/イオン化飛行時間型(SELDI-TOF)質量分析を利用して、プロテインチップアレイに結合しているタンパク質を検出する。SELDIシステムは、タンパク質およびペプチドの複雑な混合物を解析する極めて感度が高く、かつ迅速な方法である。この技術を応用することで、前立腺癌、乳癌、卵巣癌、および膀胱癌の初期検出への大きな可能性が示される(Li, J., et al., Clin. Chem. 48:1296-1304 (2002);Adam, B., et al., Cancer Res. 62:3609-3614 (2002);Cazares, L.H., et al., Clin. Cancer Res. 8:2541-2552 (2002);Petricoin, E.F., et al., Lancet 359:572-577 (2002);Petricoin, E.F. et al., J. Natl. Cancer Inst. 94:1576-1578 (2002);Vlahou, A., et al., Amer. J. Pathology 158:1491-1502 (2001))。ProteinChip(登録商標)技術を用いて、6症例のHNSCCのうち5症例の腫瘍抽出物において、対応する正常組織溶解物では認められない8670ダルトンタンパク質が検出された(von Eggeling, F, et al., BioTechniques 29:1066-1070 (2000))。また、SELDI技術を用いて、2つのHNSCC細胞株(一方は転移性であり、もう一方は非転移性)におけるタンパク質の差次的発現が検出された。原発腫瘍またはリンパ節転移に由来する2つの対応するHNSCC細胞株の研究において、SELDI ProteinChip(登録商標) H4を使用し、転移性細胞株において2つの膜結合タンパク質(アネキシンIおよびアネキシンII)および解糖系タンパク質(エノラーゼ-α)の上方制御が同定された。また、転移性細胞株においてカルメニン(calumenin)前駆体の下方制御が同定された(Wu, W., et al., Clin. Exp. Metastasis 19:319-326 (2002))。しかし今日まで、SELDI ProteinChip(登録商標)技術は、正常対照に対してHNSCC患者の血清を調べてHNSCCタンパク質フィンガープリントを作製するための手段として報告されていない。
【0010】
癌と非癌を識別するタンパク質プロファイルまたはパターンを同定する取り組みを継続することで、HNSCCの初期検出および診断試験の開発が可能となると考えられる。したがって、比較的迅速かつ安価に実施することができ、さらに臨床上有用である、HNSCC診断のための方法および組成物が必要である。本発明は、この必要性および他の必要性に取り組むものである。
【発明の開示】
【0011】
発明の概要
本発明は、頭頸部扁平上皮癌(HNSCC)患者の試料と対照対象の試料に差次的に存在する新規タンパク質マーカーを初めて提供する。本発明はまた、これらの新規マーカーを検出することによる、HNSCCの診断の補助として用いられ得る、感度が高くかつ迅速な方法およびキットを提供する。患者の試料において、これらのマーカーを単独でまたは組み合わせて測定することで、HNSCCの有望な診断または陰性診断(例えば、正常または無病状態)と相関し得る情報が提供される。マーカーはすべて、分子量によって特徴づけられる。マーカーは、例えば質量分析法と組み合わせたクロマトグラフィー分離により、または伝統的な免疫測定法により、試料中の他のタンパク質と分離され得る。好ましい態様において、分離方法は、質量分析プローブの表面がマーカーと結合する吸着剤を含む、表面増強レーザー脱離/イオン化(「SELDI」)質量分析法を伴う。
【0012】
本発明の1つの形態では、診断を支援するまたはさもなくば診断を行うための方法は、患者由来の試験試料中の少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーを検出する段階を含む。タンパク質バイオマーカーは、約2778±5.6、2951±5.9、3772±7.5、3888±7.8、4181±8.4、4464±8.9、5064±10.1、5078±10.2、5242±10.5、5335±10.7、5363±10.7、5544±11.1、5905±11.8、5920±11.8、6110±12.2、7764±15.5、7805±15.6、7830±15.7、7920±15.8、7971±15.9、8928±17.9、9094±18.1、9134±18.3、9181±18.4、9287±18.6、9416±18.8、10264±20.5、10843±21.7、11722±23.4、11922±23.8、13350±26.7、13881±27.8、14687±29.4、および15139±30.3ダルトンからなる群より選択される分子量を有する。本方法は、検出をHNSCCの有望な診断または陰性診断と相関づける段階をさらに含む。
【0013】
1つの態様において、相関づける場合には、試料中の1つもしくは複数のマーカーの量および/または対照中の上記と同じ1つもしくは複数のマーカーの検出頻度を考慮に入れる。
【0014】
別の態様においては、1つまたは複数のマーカーを検出するのに、気相イオン分光法が用いられる。例えば、レーザー脱離/イオン化質量分析法を用いることができる。
【0015】
別の態様において、マーカーを検出するために用いられるレーザー脱離/イオン化質量分析法は、以下の段階を含む:(a) そこに付着した吸着剤を含む基材を提供する段階;(b) 試料を吸着剤と接触させる段階;および(c) 質量分析計により1つまたは複数のマーカーを脱離およびイオン化する段階。任意の適切な吸着剤を用いて、1つまたは複数のマーカーと結合させることができる。例えば、基材上の吸着剤は、陽イオン性吸着剤、抗体吸着剤などであってよい。
【0016】
別の態様では、1つまたは複数のマーカーを検出するのに免疫測定法が用いられ得る。
【0017】
本発明の特定の形態では、対象由来の試験試料中のマーカーは以下の群において検出され得り、またこのマーカーは以下の分子量を有し得る:約5064、13881、および15139ダルトン。
【0018】
本発明では、本明細書に記載のバイオマーカーの少なくとも1つが検出され得る。バイオマーカーのすべてを含むバイオマーカーのうちの1つまたは複数が検出され、次いで解析され得ることが理解されるべきであり、このことは本明細書中に記載されている。さらに、本発明の1つもしくは複数のバイオマーカーが検出されないこと、または臨床もしくは前臨床HNSCCの非存在と相関し得るレベルもしくは量でそれらが検出されることは、臨床または前臨床HNSCCの非存在を診断する手段として有用でありかつ望ましい場合があること、およびこのことが本発明の意図する局面を形成することが理解されるべきである。
【0019】
本発明のさらに別の局面では、本明細書に記載するバイオマーカーを検出するために利用できる、さもなくばHNSCCを診断する、もしくはさもなくばHNSCCの診断を支援するために使用できるキットを提供する。本発明の1つの形態では、キットは、約5064±10.1、13881±27.8、および15139±30.3ダルトンからなる群より選択される少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーを保持し得る、そこに付着した吸着剤を含む基材;および試験試料を吸着剤と接触させ、吸着剤によって保持されたバイオマーカーを検出することによって、タンパク質バイオマーカーを検出するための説明書を含む。
【0020】
本発明のさらに別の局面では、キットは、約2778±5.6、2951±5.9、3772±7.5、3888±7.8、4181±8.4、4464±8.9、5064±10.1、5078±10.2、5242±10.5、5335±10.7、5363±10.7、5544±11.1、5905±11.8、5920±11.8、6110±12.2、7764±15.5、7805±15.6、7830±15.7、7920±15.8、7971±15.9、8928±17.9、9094±18.1、9134±18.3、9181±18.4、9287±18.6、9416±18.8、10264±20.5、10843±21.7、11722±23.4、11922±23.8、13350±26.7、13881±27.8、14687±29.4、および15139±30.3ダルトンからなる群より選択される少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーを保持し得る、そこに付着した吸着剤を含む基材;および試験試料を吸着剤と接触させ、吸着剤によって保持されたバイオマーカーを検出することによって、タンパク質バイオマーカーを検出するための説明書を含む。
【0021】
本発明のさらに別の局面では、複数の分類子を使用してHNSCCの有望な診断または陰性診断を行う方法を提供する。本発明の1つの形態では、方法は以下の段階を含む:a) 正常対照およびHNSCCと診断された対象の複数の試料から質量スペクトルを得る段階;b) 質量スペクトルの少なくとも一部に決定ツリー解析を適用して、ピーク強度値および関連閾値を含む複数の加重ベース分類子を得る段階;およびc) 複数の加重ベース分類子の直線的組み合わせに基づき、HNSCCの有望な診断または陰性診断を行う段階。本発明の特定の形態において、本方法は、ピーク強度値および関連閾値を直線的に組み合わせて使用し、HNSCCの有望な診断または陰性診断を行う段階を含み得る。
【0022】
本発明のさらなる目的は、複数の分類子を開発するおよび/または使用することで、約2778±5.6、2951±5.9、3772±7.5、3888±7.8、4181±8.4、4464±8.9、5064±10.1、5078±10.2、5242±10.5、5335±10.7、5363±10.7、5544±11.1、5905±11.8、5920±11.8、6110±12.2、7764±15.5、7805±15.6、7830±15.7、7920±15.8、7971±15.9、8928±17.9、9094±18.1、9134±18.3、9181±18.4、9287±18.6、9416±18.8、10264±20.5、10843±21.7、11722±23.4、11922±23.8、13350±26.7、13881±27.8、14687±29.4、および15139±30.3ダルトンからなる群より選択される少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーを用いてHNSCCの有望な診断または陰性診断を行うためのコンピュータ実行過程をコンピュータに実施するよう指示するためのコンピュータ命令をその中に保存しているコンピュータプログラム媒体を提供することにある。好ましくは、タンパク質バイオマーカーは、約5064±10.1、13881±27.8、および15139±30.3ダルトンタンパク質バイオマーカーより選択される。
【0023】
好ましい態様の説明
本発明の原理の理解を進める目的で、好ましい態様について参照を作成し、特定の用語を用いてこれを説明する。上記にかかわらず、これに関して本発明の特許請求の範囲に制限を受けないことを意図し、本明細書に説明するような本発明の変更およびさらなる修正、ならびに本発明の原理のさらなる適用を、本発明の関連する当業者が通常考えるように意図することは理解される。
【0024】
本発明は、HNSCCの診断を支援する方法、およびHNSCCを診断する方法に関する。表面増強レーザー脱離/イオン化質量分析法を種々のアルゴリズムと組み合わせることで、HNSCCの診断を支援する、および/もしくはHNSCCを診断する、または陰性診断を行うための種々の決定ツリーにおいて利用され得るタンパク質バイオマーカーを推定した。したがって、そのようなタンパク質バイオマーカーもまた本明細書で提供される。
【0025】
本発明の方法は、HNSCCを有する個体と正常個体とを効率的に識別する。本明細書において定義されるように、正常個体とは、HNSCCに関して陰性診断された個体である。すなわち、正常個体はHNSCCを有さない。本方法は、対象に由来する試験試料中のタンパク質バイオマーカーを検出する段階を含む。例えば、HNSCCの有望な診断において役立つか、または陰性診断において役立つ、約2778±5.6、2951±5.9、3772±7.5、3888±7.8、4181±8.4、4464±8.9、5064±10.1、5078±10.2、5242±10.5、5335±10.7、5363±10.7、5544±11.1、5905±11.8、5920±11.8、6110±12.2、7764±15.5、7805±15.6、7830±15.7、7920±15.8、7971±15.9、8928±17.9、9094±18.1、9134±18.3、9181±18.4、9287±18.6、9416±18.8、10264±20.5、10843±21.7、11722±23.4、11922±23.8、13350±26.7、13881±27.8、14687±29.4、および15139±30.3ダルトンの分子量を有するタンパク質バイオマーカーが同定された。本発明では、タンパク質バイオマーカーの少なくとも1つが検出される。好ましくは、2個もしくはそれ以上、3個もしくはそれ以上、4個もしくはそれ以上、5個もしくはそれ以上、10個もしくはそれ以上、15個もしくはそれ以上、20個もしくはそれ以上、30個もしくはそれ以上、または34個すべてのタンパク質バイオマーカーが検出され、このようなバイオマーカーの存在または非存在がHNSCCの診断に相関づけられる。バイオマーカーの量は、例えば質量分析によって同定されるピーク強度により、またはバイオマーカーの濃度により表され得る。
【0026】
本発明の特定の形態において、選択されたタンパク質バイオマーカー群はHNSCCの診断において有用である。例えば以下のマーカー群は、特定の診断を行うのに、またはさもなくば特定の診断を支援するのに有用である:(1) 約5064±10.1ダルトンバイオマーカー;(2) 約5064±10.1および13881±27.8ダルトンバイオマーカー;(3) 約5064±10.1、13881±27.8、および15139±30.3ダルトンバイオマーカー;(4) 約2778±5.6、3772±7.5、4464±8.9、5064±10.1ダルトンバイオマーカー;ならびに(5) 約5064±10.1、5242±10.5、13881±27.8、および15139±30.3ダルトンバイオマーカー。好ましくは、約5064±10.1ダルトンバイオマーカー、または約5064±10.1、13881±27.8、および15139±30.3ダルトンバイオマーカーの組み合わせを使用する。
【0027】
選択されたバイオマーカーの正常個体に対する差次的発現(過剰発現または低発現など)を、HNSCCと相関づけることができる。差次的に発現されるとは、本明細書において、タンパク質バイオマーカーが別の疾患状態と比較して1つの疾患状態において高レベルもしくは低レベルで見い出され得ること、または1つもしくは複数の疾患状態において高頻度で見い出され得ることを意味する。例えば、約5064±10.1ダルトンバイオマーカーの、対照患者に対する少なくとも2倍、好ましくは3倍の低発現は、HNSCCの有望な診断と相関づけられ得る。さらに、約2778±5.6、2951±5.9、3772±7.5、3888±7.8、4181±8.4、4464±8.9、5064±10.1、5078±10.2、5242±10.5、5335±10.7、5363±10.7、5544±11.1、5905±11.8、5920±11.8、6110±12.2、7764±15.5、7805±15.6、7830±15.7、7920±15.8、7971±15.9、8928±17.9、9094±18.1、9134±18.3、9181±18.4、9287±18.6、9416±18.8、10264±20.5、10843±21.7、11722±23.4、11922±23.8、13350±26.7、14687±29.4ダルトンバイオマーカーは、正常患者と比較してHNSCC患者において差次的に発現されることが認められた。特に、約2778、3772、4464、8928、9094、9134、11722、11922、13350、および17687ダルトンバイオマーカーは、HNSCC患者において過剰発現されることが認められ、約3888、5064、5078、5335、5905、6110、7764、7805、7920、および7971ダルトンバイオマーカーは、HNSCC患者において低発現されることが認められた。
【0028】
さらに、分類ツリーにおいてバイオマーカーの分類を組み合わせることは、HNSCC陽性患者およびHNSCC陰性患者を同定するのに有用であることが認めらた。例えば、図1は、HNSCC患者と正常患者とを識別するために用いられ得る適切な分類ツリーを示す。1つの群では、約5064±10.1ダルトンバイオマーカーの2.7以下の閾値での存在が、HNSCCの診断と相関づけられ得る。別の群では、約5064±10.1ダルトンバイオマーカーの2.7を超えて5.1以下であるピーク強度閾値での存在、および約13881±27.8ダルトンバイオマーカーの1.4を超えるピーク強度での存在が、HNSCCの有望な診断と相関づけられ得る。別の群では、約5064±10.1ダルトンバイオマーカーの2.7を超えて5.1以下であるピーク強度閾値での存在、および約13881±27.8ダルトンバイオマーカーの1.4以下のピーク強度での存在、および約15139±30.3ダルトンバイオマーカーの約0.088以下の閾値での非存在が、正常診断と相関づけられ得る。最後に、約5064±10.1ダルトンバイオマーカーの2.7を超えて5.1以下であるピーク強度閾値での存在、および約13881±27.8ダルトンバイオマーカーの1.4以下のピーク強度での存在、および約15139±30.3ダルトンバイオマーカーの約0.088以下の閾値での存在が、HNSCC診断または正常診断と関連づけられ得る。好ましくは、これらの分類の組み合わせが、HNSCCを診断するための単一の分類ツリーを形成する。しかし、本発明は、HNSCC陽性患者およびHNSCC陰性患者の診断または同定を支援するために、これらの個々の分類を単独でまたは他の分類と組み合わせて使用することも意図する。したがって、1つまたは複数のそのような分類、好ましくは2つもしくはそれ以上、またはより好ましくはこれら全ての分類が診断を支援する。
【0029】
データ解析は、検出されたバイオマーカーのシグナル強度(例えば、ピークの高さ、ピークの面積)を決定する段階、および「外れ値」(所定の統計的分布から外れたデータ)を除去する段階を含み得る。例えば、ある参照に対する各ピークの高さを算出する過程によって、観察されたピークを標準化することができる。例えば、参照は装置および化学物質(例えばエネルギー吸収分子)によって生じるバックグラウンドノイズであってよく、これを目盛りのゼロと設定する。次にシグナル強度を各バイオマーカーについて検出することができ、または他の物質を所望の目盛りの相対強度(例えば100)の形態で表すことができる。または、標準物質によるピークを参照として用いて、検出される各バイオマーカーまたは他のマーカーで観察されるシグナルの相対強度を計算できるように、試料内に標準物質を含めてもよい。
【0030】
図1中の閾値は、バイオマーカーの標準化されたピーク強度を表す。実施例1においてさらに十分に説明するように、これらの閾値は、バイオマーカーの濃度と関連する特定のバイオマーカーの標準化されたピーク強度を表し得る。標準化過程は、標準化因子として全イオン電流を用いる段階を含み得る。または標準化過程は、内部対照または外部対照のピーク強度に対するピーク強度を報告する段階を含み得る。例えば、既知タンパク質を本システムに加えることができる。さらに、試験対象によって産生されるアルブミンなどの既知産物を、内部標準物質または対照としてもよい。図1において同定された閾値は、実施例1で用いられた対照に関するものであることが理解される。しかし、当業者が理解するように、この閾値は、内部対照または外部対照に基づいて異なり得る。
【0031】
本方法は、少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーを検出する段階を含む。しかし、任意の数のバイオマーカーを検出してよい。解析においては、少なくとも2つのタンパク質バイオマーカーを検出することが好ましい。しかし、本明細書に記載のバイオマーカーの3個、4個、または全バイオマーカーを含めたそれ以上のバイオマーカーを本診断において利用できることが理解される。したがって、1つまたは複数のマーカーを検出できるばかりでなく、1〜34個、好ましくは2〜34個、2〜20個、および2〜10個のバイオマーカー、2〜5個のバイオマーカー、またはいくつかの他の組み合わせを検出して、本明細書に記載するように解析することができる。さらに、本明細書に記載していない他のタンパク質バイオマーカーを本明細書に開示するタンパク質バイオマーカーのいずれかと組み合わせて、HNSCCの診断に役立てることも可能である。例えば、本発明の方法を用いて、既知バイオマーカー(すなわち、分子量約10,068 DaのMPS-1)を検出することができる。これらの既知バイオマーカーを本明細書に開示するタンパク質バイオマーカーのいずれかと組み合わせて、HNSCCの診断に役立てることも可能である。さらに、上記のタンパク質バイオマーカーの任意の組み合わせを、本発明に従って検出することができる。
【0032】
本明細書に記載する試験試料におけるタンパク質バイオマーカーの検出は、様々な方法により行うことができる。本発明の1つの形態において、バイオマーカーを検出する方法は、気相イオン分光計を用いた気相イオン分光測定法によりバイオマーカーを検出する段階を含む。本方法は、本明細書に記載するタンパク質バイオマーカー等のバイオマーカーを有する試験試料を、バイオマーカーと吸着剤との結合を可能にする条件下で、その上に吸着剤を含む基材と接触させる段階、および気相イオン分光測定法により吸着剤に結合しているバイオマーカーを検出する段階を含み得る。
【0033】
多種多様な吸着剤を用いることができる。吸着剤には、疎水基、親水基、陽イオン基、陰イオン基、金属イオンキレート基、もしくは抗原性バイオマーカー特異的に結合する抗体、またはそれらのいくつかの組み合わせ(「混合型」吸収剤等)が含まれる。疎水基を含む例示的な吸着剤には、C1-C18脂肪族炭化水素等の脂肪族炭化水素を有する基質、およびフェニル基を含む芳香族炭化水素機能基を有する基質が含まれる。親水基を含む例示的な吸着剤には、酸化ケイ素、またはポリアルキレングリコール、ポリエチレングリコール、デキストラン、アガロース、もしくはセルロース等の親水性ポリマーが含まれる。陽イオン基を含む例示的な吸着剤には、二級アミン、三級アミン、または四級アミンの基質が含まれる。陰イオン基を含む例示的な吸着剤には、硫酸陰イオンの基質、およびカルボン酸陰イオンまたはリン酸陰イオンの基質が含まれる。金属イオンキレート基を含む例示的な吸着剤には、銅、ニッケル、コバルト、亜鉛、鉄、アルミニウム、およびカルシウム等の金属イオンと配位共有結合を形成し得る1つまたは複数の電子供与基を有する有機分子が含まれる。抗体を含む例示的な吸着剤には、本明細書に提供するバイオマーカーのいずれかに特異的であり、当業者に周知の方法によって容易に作製することができる抗体が含まれる。
【0034】
または、基材は、気相イオン分光計に取り外し可能に挿入できるプローブの形態であってよい。例えば、基材はその表面上に吸着剤を有するストリップの形態であってよい。本発明のさらに他の形態では、基材を第2基材の上に設置し、気相イオン分光計に取り外し可能に挿入できるプローブを形成してもよい。例えば、基材はマーカーを結合するための機能基を有する重合体ビーズまたはガラスビーズ等の固相の形態であってよく、これを第2基材の上に設置してプローブを形成することができる。第2基材は、ストリップ、または所定の位置に一連のウェルを有するプレートの形態であってよい。この方法においては、バイオマーカーを第1基材に吸収させ第2基材に移すことができ、次にこれを気相イオン分光計による解析に供することができる。
【0035】
プローブは、気相イオン分光計に取り外し可能にに挿入できる限りは、円形、楕円形、正方形、長方形、もしくは他の多角形、または他の所望の形を含む、多種多様な所望の形の形態であってよい。プローブはまた、気相イオン分光計の吸気装置および検出器との使用に適合させる、またはさもなくば設定することが好ましい。例えば、手動でプローブを再配置する必要のない、プローブを連続した位置に水平方向および/または垂直方向に動かすような、水平方向および/または垂直方向に移動可能な運搬台にはめ込むように、プローブを適合させてもよい。
【0036】
プローブを形成する基材は、様々な吸着剤を支持し得る多種多様な材料から作製することができる。例示的な材料には、ガラスおよびセラミック等の絶縁材;シリコン・ウエハー等の半絶縁材;導電材(ニッケル、真ちゅう、スチール、アルミニウム、金、または導電性ポリマー等の金属を含む);有機ポリマー;バイオポリマー;またはそれらの組み合わせが含まれる。
【0037】
本発明の他の態様では、基材の性質に依存して、基材表面が吸着剤を形成してもよい。他の場合には、基材表面を修飾してその上に所望の吸着剤を組み入れてもよい。プローブを形成する基材の表面は、基材がそれ自体でバイオマーカーに結合できない場合には、マーカーに結合し得る吸着剤に結合するようにプローブを処理するまたはさもなくば調節することができる。または、所望のバイオマーカーに結合する本来の能力を亢進するように、基材の表面を処理するまたはさもなくば調節することも可能である。本発明の使用に適した他のプローブは、例えば国際公開公報第01/25791号(Tai-Tungら)および国際公開公報第01/71360号(Wrightら)に見出すことができる。
【0038】
吸着剤は、連続的または非連続的なパターンを含む多種多様なパターンでプローブ基材上に設置することができる。1種類の吸着剤または2種類以上の吸着剤を基材表面上に設置することができる。パターンは、線、円等の曲線、または所望された任意のそのような他の形もしくはパターンの形態であってよい。
【0039】
プローブを作製する方法は、当技術分野で周知のように、基材材料および/または吸着剤の選択に依存することになる。例えば、基材が金属である場合、基材はその上に載せる吸着剤に依存して調製され得る。例えば、基材表面を、金属表面を誘導体化し吸着剤を形成し得る酸化ケイ素、酸化チタン、または金等の材料で被覆してもよい。次に基材表面を、一方が表面の機能基と共有結合等の結合をし、リンカーのもう一方の末端が吸着剤として機能する基によってさらに誘導体化され得る二機能性リンカーを用いて誘導体化することができる。さらなる例として、結晶シリコンから作製された多孔性シリコン表面を含む基材を、マーカーを結合するための吸着剤を含むように化学的に修飾することができる。さらに、例えば、置換アクリルアミドもしくはアクリル単量体、または吸着剤として選択した機能基を含むそれらの誘導体を含む単量体溶液を原位置で重合することにより、ヒドロゲル骨格を有する吸着剤を基材表面上で直接形成することも可能である。
【0040】
本発明の好ましい形態において、プローブはサイファージェン・バイオシステムズ(Ciphergen Biosystens, Inc.)(カリフォルニア州、パロアルト)から入手可能なチップ等のチップであってよい。チップは、親水性、疎水性、陰イオン交換、陽イオン交換、固定化金属親和性、または前活性化タンパク質チップアレイであってよい。疎水性チップは、逆相相互作用によってタンパク質に結合する長鎖脂肪族表面を含むPtoteinChip H4であってよい。親水性チップは、二酸化ケイ素基材表面を含むPtoteinChip NP1およびNP2であってよい。陽イオン交換タンパク質チップアレイは、陽イオン性タンパク質に結合するカルボン酸表面を有する弱い陽イオン交換アレイであるPtoteinChip WCX2であってよい。またはチップは、二酸化ケイ素被覆アルミニウム基材から作製されたSAX1(強力な陰イオン交換)PtoteinChip、または陰イオン性タンパク質に結合する大容量四級アンモニウム表面を有するPtoteinChip SAX2等の陰イオン交換タンパク質チップアレイであってよい。さらなる有用なチップは、表面上にニトリロ三酢酸を有する固定化金属親和性捕獲チップ(IMAC3)であってよい。さらに別の場合には、アミノ基と共有結合的に反応するカルボニルジイミダゾール表面を含むPtoteinChip PS1が利用でき、またはアミン基およびチオール基と共有結合的に反応するエポキシ表面を含むPtoteinChip PS2を利用してもよい。
【0041】
本発明に従って、プローブを試験試料に接触させる。試験試料は多種多様な供給源から得ることができる。試料は典型的に、HNSCCに関して試験する被験者もしくは患者または病気の危険性があると考えられる健常人に由来する生体液から得る。好ましい生体液は血液または血清である。バイオマーカーが見出され得る他の生体液には、例えば、精液、精漿、リンパ液、肺/気管支洗浄液、粘液、乳頭分泌液、痰、涙液、唾液、尿または他の類似の体液が含まれる。必要に応じて、プローブと接触させる前に、試料を溶離液に溶解するかまたは溶離液と混合することができる。浴浸漬、浸漬、液浸、噴霧、洗浄、分注、または他の所望の方法を含む多種多様な技法によって、プローブを試験試料と接触させることができる。プローブの吸着剤が試験試料液と好ましく接触できるように、方法を実施する。試料中の1つまたは複数のバイオマーカーの濃度は変動し得るが、吸着剤に結合させるために、約1μl〜約500μl溶液中に約1アトモル〜約100ピコモルのマーカーを含む量の試験試料を接触させることが一般に望ましい。
【0042】
バイオマーカーが吸着剤に結合するのに可能な十分な時間、試料とプローブを相互に接触させる。この時間は試料の性質、バイオマーカーの性質、吸着剤の性質、およびバイオマーカーを溶解した溶液の性質に依存して変動し得るが、典型的には試料と吸着剤を約30秒間〜約12時間、好ましくは約30秒間〜約15分間接触させる。
【0043】
プローブを試料に接触させる際の温度は、試料の性質、バイオマーカーの性質、吸着剤の性質、およびバイオマーカーを溶解した溶液の性質に依存することになる。一般に、外界の温度および圧力条件下で、試料をプローブと接触させることができる。しかし、温度および圧力は必要に応じて変更してよい。現在の本発明の好ましい態様においては、例えば、温度は約4℃〜約37℃で変更できる。
【0044】
マーカーが吸着剤、または吸着剤を用いない場合には基材表面に結合するのに十分な時間、試料をプローブと接触させた後、結合した物質のみがそれぞれの表面に残存するように、非結合の物質を基材または吸着剤表面から洗浄除去する。洗浄は、例えば、浴浸漬、浸漬、液浸、リンス、噴霧することにより、またはさもなくばそれぞれの表面を溶離液もしくは他の洗浄液を用いて洗浄することにより達成することができる。溶離液等の洗浄液をプローブ上の吸着剤の小さな部位に挿入する場合には、マイクロフルイディクス(microfluidics)過程を用いることが好ましい。洗浄液の温度は変動し得るが、典型的に約0℃〜約100℃、好ましくは約4℃および約37℃である。
【0045】
多種多様な洗浄液を使用して、プローブ基材表面を洗浄することができる。洗浄液は、有機溶液または水溶液であってよい。例示的な水溶液は、HEPES緩衝液、Tris緩衝液、リン酸緩衝食塩水、または当業者に周知の他の類似の緩衝液を含む緩衝液であってよい。特定の洗浄液の選択は、バイオマーカーの性質および用いる吸着剤の性質に依存することになる。例えば、SCXI PtoteinChip(登録商標)アレイのように、プローブが吸着剤として疎水基およびスルホン基を含む場合には、HEPES緩衝液等の水溶液を用いることができる。さらなる例として、Ni(II) PtoteinChip(登録商標)アレイのように、プローブが吸着剤として金属結合基を含む場合には、リン酸緩衝食塩水等の水溶液が好ましい。さらなる例として、HF PtoteinChip(登録商標)アレイのように、プローブが吸着剤として疎水基を含む場合、水が好ましい洗浄液となり得る。。
【0046】
溶液中に存在するようなエネルギー吸収分子を、プローブの基材表面上に結合しているバイオマーカーまたは他の物質に添加することができる。本明細書で用いる「エネルギー吸収分子」とは、気相イオン分光計のエネルギー源からのエネルギーを吸収する分子を指し、これはマーカーまたは他の物質のプローブ表面からの脱離を支援し得る。例示的なエネルギー吸収分子には、桂皮酸誘導体、シナピン酸、ジヒドロ安息香酸、および当業者に周知の他の類似の分子が含まれる。エネルギー吸収分子は、好ましくは非結合の物質をプローブ基材表面から洗浄除去した後に、例えば噴霧、分注、または液浸を含む、試料とプローブ基材との接触について本明細書で先に考察した多種多様な技法により添加することができる。
【0047】
バイオマーカーを適切にプローブに結合させた後、適切な検出機器、好ましくは気相イオン分光計を用いて、バイオマーカーを検出、定量することができる、および/またはさもなくばその特徴を決定することができる。当技術分野で周知のように、気相イオン分光計には、例えば、質量分析計、イオン移動度分光計、および全イオン電流測定装置が含まれる。
【0048】
好ましい態様においては、質量分析計を用いて、プローブの基材表面に結合しているバイオマーカーを検出する。表面にマーカーの結合したプローブを、質量分析計の吸気装置に挿入することができる。次に、レーザー、高速原子衝撃、プラズマ、または当業者に周知の他の適切なイオン源等のイオン源により、マーカーをイオン化することができる。生じたイオンは典型的にイオン光学アセンブリにより収集され、次に質量分析器により通過するイオンが分散および解析される。質量分析器から抜け出たイオンは、検出器によって検出される。検出器は、検出したイオンの情報を質量電荷比に変換する。マーカーの検出および/または定量は典型的に、シグナル強度の検出を含む。
【0049】
本発明のさらなる好ましい形態において、質量分析計はレーザー脱離飛行時間型質量分析計であり、さらに好ましくは表面増強レーザー脱離飛行時間型質量分析計(SELDI)を使用する。SELDIでは、分析物を載せる表面が、分析物の捕獲および/または脱離において積極的な役割を果たす。
【0050】
当技術分野で周知のように、レーザー脱離質量分析法では、マーカーの結合したプローブを吸気装置に挿入する。レーザーイオン源により、マーカーは脱離して気相内にイオン化される。生じたイオンはイオン光学アセンブリによって収集される。イオンは、飛行時間型質量分析器において短い高電圧電場を通過し加速され、高真空チャンバー内へのドリフトが可能になる。加速されたイオンは、異なる時間で、高真空チャンバーの遠端の高感度検出器表面に衝突する。飛行時間はイオン質量の関数であるため、イオン化と衝突との間の経過時間を用いて、特定質量の分子の有無を同定することができる。相対量または絶対量でのバイオマーカーの定量は、バイオマーカーの示すシグナル強度を、対照量のバイオマーカーまたは当技術分野で周知の他の標準物質と比較することによって達成し得る。レーザー脱離飛行時間型質量分析計の成分を、本明細書に記載するおよび/または当業者に周知の、脱離、加速、検出、または時間測定の様々な手段を用いる他の成分と組み合わせることが可能である。
【0051】
さらなる態様において、バイオマーカーの検出および/または定量は、マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)によって達成することができる。MALDIはまた、固体相から気相への直接的な生物試料の気化およびイオン化を提供する。当技術分野において周知のように、好ましくはこの過程において分析物の分解を防ぐため、所望の分析物を含む試料を、分析物と共に結晶化する基質に溶解するかまたはさもなくば懸濁する。
【0052】
イオン移動度分光計を用いて、本明細書に記載するバイオマーカーを検出および特徴づけすることができる。イオン移動度分光計の原理は、イオンの異なる移動度に基づく。具体的には、イオン化によって生じた試料のイオンは、例えば質量、電荷、または形状の違いにより、電場の影響下でチューブ内を異なる速度で移動する。イオン(典型的に電流の形態で)は検出器に記録され、次にこれを用いて試料中のマーカーまたは他の物質が同定され得る。イオン移動度分光計の1つの利点は、大気圧で作動し得る点である。
【0053】
全イオン電流測定器を用いて、本明細書に記載するバイオマーカーを検出および特徴づけることができる。例えば、プローブが単一種類のマーカーのみの結合を可能にする界面化学を有する場合に、この装置を用いることができる。単一種類のマーカーがプローブに結合する場合、イオン化したバイオマーカーから生じた全電流はマーカーの性質を反映する。次に、バイオマーカーによって生じた全イオン電流を、既知化合物の保存してある全イオン電流と比較することができる。次いで、バイオマーカーの特徴が決定され得る。
【0054】
バイオマーカーの脱離および検出によって作成されたデータは、プログラム可能なデジタルコンピューターを用いて解析することができる。コンピュータープログラムは一般に、コードを保存する可読媒体を含む。プローブ上の各特徴の位置、その特徴の存在する吸着剤の同一性、および吸着剤を洗浄するために用いた溶出条件を含むある種のコードを、メモリに供することができる。次にこの情報を用いて、用いた吸着剤および溶離液の種類等の特定の選択特性を規定して、プログラムでプローブ上の一連の特徴を同定することができる。コンピューターはまた、入力として、プローブ上の特定のアドレス可能位置から受け取る様々な分子量におけるシグナル強度でデータを受け取るコードを含む。このデータは検出されたバイオマーカーの数を示し得り、状況に応じて検出された各バイオマーカーのシグナル強度および決定された分子量を含む。上記のように、検出されたバイオマーカーのシグナル強度(例えば、ピークの高さまたはピークの面積)を決定する段階および任意の「外れ値」を除去する段階のような公知の方法に従ってデータを標準化し得る。
【0055】
コンピューターは、結果として得られたデータを様々な表示型式に変換することができる。「スペクトル図またはリテンテートマップ(retentate map)」と称される1つの型式では、それぞれ特定の分子量において検出器に到達したバイオマーカーの量を示す、標準的なスペクトル図が示され得る。「ピークマップ」と称される別の型式では、スペクトル図からピークの高さおよび質量情報のみが抽出され、より明瞭な像が得られ、ほぼ等しい分子量を有するマーカーがより容易に見えるようになる。「ゲル図」と称されるさらに別の型式では、ピーク図の各質量が各ピークの高さに基づき濃淡の像に変換され、電気泳動ゲル上のバンドに類似した形が得られる。「3-Dオーバーレイ」と称されるさらなる型式では、いくつかのスペクトルが重ねられ、相対的なピークの高さで微妙な変化を検討することができる。「相違マップ図」と称されるさらなる型式では、一意的なバイオマーカーまたは試料間で上方制御されたまたは下方制御されたバイオマーカーを都合よく強調し、2つまたはそれ以上のスペクトルを比較することができる。任意の2つの試料に由来するバイオマーカープロファイル(スペクトル)を、視覚的に比較することができる。
【0056】
上記の表示型式のいずれかを用いて、特定の分子量を有するバイオマーカーが試料から検出されるかどうかをシグナル表示から容易に決定することが可能である。さらに、シグナル強度から、プローブ表面に結合したマーカーの量を決定することができる。
【0057】
本発明の好ましい形態においては、単一の決定ツリー分類アルゴリズムを利用して、SELDIによって作成されたデータを解析する。そのような分類を作製するために用いられるアルゴリズムは、当地術分野において周知である。例えば、累積確率に基づく分類論理(Classification Logic)、PeakMiner(インターネットアドレス:www.evms.edu/vpc/seld)、または分類と回帰ツリー(Classification and Regression Tree)(CART)(Breiman, L., Friedman, J., Olshen, R., and Stone, C. J. (1984) Classiffication and Regression Trees Chapman and Hall, New York)によるような、分類ツリーの作製に用いられるアルゴリズム、およびそのような分類ツリーの作製に適した周知の方法;例えば、遺伝子クラスター、ロジスティック回帰、表面ベクトル機構、および神経網によって作成されるアルゴリズムが用いられ得る(Jain et al. “Statistical Pattern Recognition: A Review,” IEEE Transactions on Pattern Analysis and Machine Intelligence, Vol. 22, No. 1, Jan. 2000)。例えば、1つのそのようなアルゴリズムを、本明細書の実施例1でより具体的に説明する。
【0058】
試験試料は、気相イオン分光測定に供する前に前処理してもよい。例えば、解析のためにより単純な試料が提供されるように、試料を精製またはさもなくば前分画することができる。試験試料に存在する生体分子の任意の精製手順は、大きさ、電荷、および機能等の生体分子の特定に基づき得る。精製法には、遠心分離、電気泳動、クロマトグラフィー、透析、またはこれらの組み合わせが含まれる。当技術分野で周知のように、電気泳動を使用して、大きさおよび電荷に基づき生体分子を分離することができる。電気泳動手順は当業者に周知であり、これには等電点電気泳動、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)、アガロースゲル電気泳動、および電気泳動の他の周知の方法が含まれる。
【0059】
精製段階は、サイズ分画、電荷による分画、および分離する生体分子の他の特性による分画を含むクロマトグラフィー分画技法によって達成してもよい。当技術分野で周知のように、クロマトグラフィー系は固定相および移動相を含み、分離は分離する生体分子と種々の相との相互作用に基づく。本発明の好ましい形態においては、カラムクロマトグラフィー手順を用いることができる。そのような手順には、分配クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、およびアフィニティークロマトグラフィーが含まれる。そのような方法は当業者に周知である。サイズ排除クロマトグラフィーでは、サイズ分画カラムにより、分子量が約10,000ダルトンを超える分子を排除することが好ましい。
【0060】
本発明の好ましい形態においては、気相イオン分光測定に供す前に、リテンテートクロマトグラフィーにより、バイオクロマトグラフィーチップ上で試料を精製するかまたはさもなくば分画する。好ましいチップは、サイファージェン・バイオシステムズ(カリフォルニア州、パロアルト)から入手可能なPtoteinChip(登録商標)である。上記のように、チップまたはプローブを質量分析計での使用に適合させる。チップは、その表面に付着した吸着剤を含む。ある適用において、この吸着剤はインサイチュークロマトグラフィー樹脂として機能し得る。操作において、試料を溶離液中で吸着剤に添加する。それに対して吸着剤が親和性を有する分子は、洗浄条件下で吸着剤に結合する。吸着剤に結合しない分子は、洗浄により除去される。解析するのに適当なレベルまで分析物が保持されるまたは溶出されるように、様々なレベルのストリンジェンシーで吸着剤をさらに洗浄することができる。次に、エネルギー吸収分子を吸着部分に添加し、さらに脱離およびイオン化を促進することができる。吸着剤からの脱離、イオン化、および検出器による直接的検出により、分析物が検出される。したがって、リテンテートクロマトグラフィーは、従来のクロマトグラフィーでは親和性物質から溶出された物質が検出されるのに対し、親和性物質によって保持された分析物が検出される点で、従来のクロマトグラフィーとは異なる。
【0061】
本発明のバイオマーカーを、免疫測定手順により定性的にまたは定量的に検出することができる。免疫測定法は典型的に、試験試料を、バイオマーカーに特異的に結合するまたはさもなくばこれを認識する抗体と接触させる段階、および試料中のバイオマーカーに結合した抗体の複合体の存在を検出する段階を含む。免疫測定手順は、競合的または非競合的酵素免疫測定法、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、放射性免疫測定法(RIA)、およびウェスタンブロット法、ならびに幾つかの所望の抗体がガラスビーズまたはプレート等の支持体上に配置され、かつ試験試料と反応するまたはさもなくば接触する抗体アレイの使用を含む複合アッセイの使用を含む、抗体/抗原複合体の認識が関与する、当業者に周知の多種多様な免疫測定手順から選択され得る。そのようなアッセイ法は当業者に周知であり、例えば、HarlowおよびLaneによる「Antibodies: A Laboratory Manual」(1988);「Immunoassays: A Practical Approach」Oxford University Press, Gosling, J.P.(編) (2001)、および/または定期的に改正される「Current Ptorocols in Molecular Biology」(Ausbelら)に十分に記載されている。
【0062】
本明細書に記載する免疫測定法で使用する抗体はポリクローナル抗体であってよく、精製されたバイオマーカーを様々な動物に注射する段階、および血清中に産生された抗体を単離する段階を含む、当業者に周知の手順によって得ることができる。抗体は一方でモノクローナル抗体であってもよく、その作製法は当業者に周知であり、精製されたバイオマーカーを例えばマウスに注射する段階、抗血清を産生する脾臓細胞を単離する段階、この細胞を腫瘍細胞と融合してハイブリドーマを形成する段階、およびハイブリドーマをスクリーニングする段階を含む。本明細書に前記したクロマトグラフィー、電気泳動、および遠心分離手順を含む当業者に周知の技法によって、まずバイオマーカーを同様に精製することができる。そのような手順は、タンパク質バイオマーカーの大きさ、電荷、溶解度、選択した成分への結合親和性、これらの組み合わせ、またはタンパク質の他の特徴もしくは特性を活用し得る。そのような方法は当業者に周知であり、例えば、「Current Protocols in Protein Science」J. Wiley and Sons, New York, NY, Coliganら(編) (2002);Harris, E.L.V.およびS. Angal、「Protein purification applications: a practical approcach」Oxford University Press New York, MY (1990)に見出すことができる。抗体が提供されたならば、本明細書に前記した免疫測定法により、バイオマーカーを検出および/または定量することができる。
【0063】
免疫測定法の特定の手順は当業者に周知であるが、一般に、まず試験対象から本明細書で前記したような試料を得ることにより免疫測定法を行うことができる。抗体/タンパク質バイオマーカー複合体の洗浄および次の単離を容易にするため、抗体を試料と接触させる前に、抗体を固相支持体に固定することができる。固相支持体の例は当業者に周知であり、これには、例えば、マイクロタイタープレートといった形態のガラスまたはプラスチックが含まれる。抗体は、本明細書に記載するProteinChip(登録商標)等のプローブ基材に付着させてもよい。
【0064】
試験試料を抗体とインキュベートした後、混合物を洗浄し、抗体-マーカー複合体を検出することができる。検出は、洗浄した混合物を検出試薬と共にインキュベートし、例えば色または他の指標の出現を観察することによって達成され得る。任意の検出可能な標識を使用することができる。検出試薬は、例えば、検出可能な標識で標識した二次抗体であってよい。例示的な検出可能な標識には、磁気ビーズ(例えばDYNABEADS(登録商標))、蛍光色素、放射標識、酵素(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、および酵素免疫測定手順で一般に用いられる他の酵素)、およびコロイド金、色ガラス、もしくはプラスチックビーズ等の比色標識が含まれる。または、例えば標識抗体を用いて結合したマーカー特異的抗体複合体を検出する間接的アッセイ法を用いて、および/またはバイオマーカーの異なるエピトープに結合するモノクローナル抗体を混合物と同時にインキュベートする競合もしくは阻害アッセイ法により、試料中のマーカーを検出することもできる。抗体-マーカー複合体の量は、標準物質との比較により決定することができる。
【0065】
アッセイの間、それぞれの試料の組み合わせの後に、インキュベーションおよび/または洗浄段階が必要とされ得る。インキュベーション段階は約5秒〜数時間、好ましく約5分〜24時間で変動し得る。しかしインキュベーション時間は、特定の免疫測定法、バイオマーカー、およびアッセイ条件に依存することになる。通常、アッセイは外気温度で行うが、約0℃〜約40℃等の範囲で行ってもよい。
【0066】
例えば本明細書に記載したバイオマーカーを検出するために使用し得るキットを提供する。例えばキットを用いて、HNSCCの診断、もしくは陰性診断をする、またはそれらの診断を支援するために有利に使用し得る、本明細書に記載の任意の1つまたは複数のバイオマーカーを検出することができる。
【0067】
1つの態様において、キットは、好ましくは本明細書に記載した1つまたは複数のタンパク質バイオマーカーへの結合に適した吸着剤をその上に含む基材、および本明細書に記載する試験試料を吸着剤と接触させ、吸着剤によって保持されたバイオマーカーを検出することによってバイオマーカーを検出するための説明書を含み得る。ある態様では、キットは、例えば気相イオン分光測定を使用して、溶離液と吸着剤の組み合わせによりタンパク質バイオマーカーの検出を可能にする溶離液、または溶離液を作製するための説明書を含み得る。そのようなキットは、本明細書に記載した物質から調製することができる。
【0068】
さらに別の態様において、キットは、その上に吸着剤を含む第1基材(例えば、吸着剤で機能化した粒子)、および第1基材がその上に設置されて、気相イオン分光計に取り外し可能に挿入できるプローブを形成し得る第2基材を含み得る。他の態様では、キットは、基材上に吸着剤を有する、取り外し可能に挿入できるプローブの形態である単一の基材を含み得る。さらに別の態様では、キットは前分画スピンカラム(例えば、K-30サイズ排除カラム)をさらに含んでもよい。
【0069】
キットは、ラベルまたは別の挿入物の形態をした、パラメータを適切に操作するための説明書をさらに含み得る。例えばキットは、消費者または他の個人に、試料をプローブと接触させた後いかにしてプローブを洗浄するかの情報を与える標準的説明書を有し得る。さらなる例として、キットは、試料中のタンパク質の複雑性を減少させるために試料を前分画するための説明書を含み得る。
【0070】
さらなる態様において、キットはマーカーに特異的に結合する抗体および検出試薬を含んでよい。そのようなキットは、本明細書に記載する材料から調製することができる。キットは、上記の前分画スピンカラム、およびラベルまたは別の挿入物の形態をした、パラメータを適切に操作するための説明書をさらに含み得る。
【0071】
本発明のさらに別の局面では、複数の分類子を使用してHNSCCの有望な診断を行う方法を提供する。本発明の1つの形態では、方法は以下の段階を含む:a) 正常対照およびHNSCCと診断された対象の複数の試料から質量スペクトルを得る段階;b) 質量スペクトルの少なくとも一部に決定ツリー解析を適用して、ピーク強度値および関連閾値を含む複数の加重ベース分類子を得る段階;およびc) 複数の加重ベース分類子の直線的組み合わせに基づき、HNSCCの有望な診断または陰性診断を行う段階。本発明の特定の形態において、本方法は、ピーク強度値および関連閾値を直線的に組み合わせて使用し、HNSCCの有望な診断または陰性診断を行う段階を含む。好ましいアルゴリズムおよびデータ処理を、実施例1においてさらに十分に説明する。
【0072】
本発明の方法は、他の用途も有する。例えば、バイオマーカーを用いて、バイオマーカーの発現を調節する化合物をインビトロまたはインビボでスクリーニングすることができ、このような化合物は患者のHNSCCの治療または予防に役立ち得る。別の例では、バイオマーカーを用いて、HNSCCの治療に対する反応をモニターすることができる。さらに別の例では、バイオマーカーを遺伝研究において使用し、対象がHNSCCを発症する危険性があるかどうかを決定することができる。
【0073】
したがって、例えば、本発明のキットは、プロテインバイオチップ(例えば、Ciphergen WCX2 ProteinChipアレイ、例えば、ProteinChipアレイ)のような陽イオン交換基を有する固体基材、および基材を洗浄するための酢酸ナトリウム緩衝液、ならびにチップ上で本発明のバイオマーカーを測定し、これらの測定値を用いてHNSCCを診断するための手順を提供する説明書を含み得る。
【0074】
まず表1に記載の1つまたは複数のバイオマーカーと相互作用する化合物を同定することにより、治験に適した化合物をスクリーニングすることができる。一例として、スクリーニングは、表1に記載のバイオマーカーを組み換えにより発現させる段階、バイオマーカーを精製する段階、およびこのバイオマーカーを基材に結合させる段階を含み得る。次いで、試験化合物を典型的に水性条件下で基材と接触させ、例えば塩濃度に応じた溶出速度を測定することで、試験化合物とバイオマーカーとの相互作用を測定する。ある種のタンパク質は表1の1つまたは複数のバイオマーカーを認識して切断し得り、そのような場合には、例えばタンパク質のゲル電気泳動によるなど、標準的なアッセイ法で1つまたは複数のバイオマーカーの消化をモニターして、タンパク質を検出することができる。
【0075】
関連する態様では、試験化合物が表1の1つまたは複数のバイオマーカーの活性を阻害する能力を測定し得る。当業者は、特定のバイオマーカーの活性を測定するために用いられる技法が、バイオマーカーの機能および特徴に応じて変わることを理解すると考えられる。例えば、適切な基質を利用することができるならば、かつ基質の濃度または反応産物の出現が容易に測定可能であるならば、バイオマーカーの酵素活性をアッセイすることができる。潜在的治療試験化合物が所与のバイオマーカーの活性を阻害または増強する能力は、試験化合物の存在下または非存在下において触媒反応速度を測定することで決定することができる。試験化合物が、表1のバイオマーカーのうちの1つの非酵素的(例えば、構造的)機能または活性を妨げる能力もまた測定することができる。例えば、表1のバイオマーカーの1つを含む多タンパク質複合体の自己会合を、試験化合物の存在下または非存在下において分光法によりモニターすることができる。または、バイオマーカーが転写の非酵素的エンハンサーであるならば、バイオマーカーが転写を増強する能力を妨げる試験化合物を、試験化合物の存在下および非存在下において、バイオマーカー依存的転写のレベルをインビボまたはインビトロで測定することで同定することができる。
【0076】
表1のバイオマーカーのいずれかの活性を調節し得る試験化合物を、HNSCCもしくは他の癌に罹患している患者、またはHNSCCもしくは他の癌を発症する危険性のある患者に投与することができる。例えば、インビボにおける特定のバイオマーカーの活性がHNSCCに関するタンパク質の蓄積を妨げるのであれば、特定のバイオマーカーの活性を上昇させる試験化合物を投与することで、患者のHNSCCの危険性を軽減することができる。逆に、バイオマーカーの活性の上昇がHNSCCの発症に少なくとも部分的に関与するのであれば、特定のバイオマーカーの活性を減少させる試験化合物を投与することで、患者のHNSCCの危険性を軽減することができる。
【0077】
臨床レベルでは、試験化合物のスクリーニングは、対象を試験化合物に曝露する前および後に、試験対象から試料を採取する段階を含む。表1に記載の1つまたは複数のバイオマーカーの試料中のレベルを測定および解析して、試験化合物への曝露後にバイオマーカーレベルが変化したかどうかを決定することができる。試料は本明細書に記載の質量分析法により解析することができ、または当業者に周知である任意の適切な手段により解析することができる。例えば、表1に記載の1つまたは複数のバイオマーカーのレベルを、このバイオマーカーに特異的に結合する放射標識または蛍光標識抗体を用いたウェスタンブロットにより、直接測定することができる。または、1つまたは複数のバイオマーカーをコードするmRNAのレベルの変化を測定し、対照に対する所与の試験化合物の投与と関連づけることができる。さらなる態様では、1つまたは複数のバイオマーカーの発現レベルの変化を、インビトロの方法および材料を用いて測定することができる。例えば、表1の1つまたは複数のバイオマーカーを発現するかまたは発現し得るヒト組織培養細胞を、試験化合物と接触させ得る。試験化合物による処置を受けた対象は、処置に起因し得る任意の生理的効果に関して日常的に試験されることになる。特に、試験化合物は、対象における疾患可能性を低減させる能力に関して評価される。または、試験化合物を、以前にHNSCCと診断された対象に投与する場合には、試験化合物が疾患の進行を停止させるかまたは遅くする能力に関してスクリーニングする。
【0078】
コンピュータによる実行
本発明の技法は、図5に示すようなコンピュータシステム104で実行することができる。この点で、図5は、本発明の少なくとも1つのコンピュータ実行態様に従ってコンピュータ処理のいくつかあるいはすべてを実行し得るコンピュータシステム104の説明図である。
【0079】
図5を外部から見ると、参照番号104で示されるコンピュータシステムは、コンピュータシステムによって収容され得るいくつかのディスクドライブを単に象徴するドライブ502および504を有するコンピュータ部分112を有する。典型的に、これらは、フロッピーディスクドライブ502、ハードディスクドライブ(外部からは見えない)、およびCD ROM 504を含み得る。ドライブの数および形式は典型的に、それぞれのコンピュータ構成によって変わる。ディスクドライブ502および504は実際に任意であり、空間を考慮して、コンピュータシステムから除外され得る。
【0080】
コンピュータシステム104はさらに任意のディスプレイモニター110を有し、このモニター上には、正常または異常細胞、正常と考えられる細胞、異常と考えられる細胞などに関する情報が表示され得る。場合によっては、キーボード116およびマウス114が入力装置として提供され、これらを介して入力が行われ得り、それにより入力が中央演算処理装置(CPU)604に接続され得る(図6)。しかしまた、携帯性を向上させるため、キーボード116は機能が制限されたキーボードであってよく、またはキーボード全体が除外され得る。さらに、マウス114は、任意にタッチパッド制御装置もしくはトラックボール装置であり、またはなおその全体が除外され、またマウスは同様に入力装置として用いられ得る。さらに、コンピュータシステム104はまた任意に、赤外線信号を送信および/または受信するための少なくとも1つの赤外線(無線)送信機および/または赤外線(無線)受信機を含む。
【0081】
コンピュータシステム104は、単一のプロセッサ、単一のハードディスクドライブ614、および単一のローカルメモリを有するように図示されているが、システム104は任意に、任意の複数のまたは組み合わせのプロセッサまたは記憶装置を適切に装備する。コンピュータシステム104は実際には、携帯用コンピュータ、ラップトップ/ノートブックコンピュータ、ミニコンピュータ、メインフレームコンピュータ、およびスーパーコンピュータならびにそれらの処理システムネットワーク連携を含む、本発明の原理に従って作動する任意の適切な処理システムに置き換えられ得るか、またはこの処理システムと併用され得る。
【0082】
図6は、図5のコンピュータシステム104の内部ハードウェアのブロック図である。バス602は、コンピュータシステム104の他の構成要素を相互接続する主要な情報ハイウェイとして働く。CPU604は、プログラムを実行するのに必要な計算および論理演算を実行する、システムの中央演算処理装置である。読み取り専用メモリ(ROM)606およびランダムアクセスメモリ(RAM)608は、コンピュータシステム104のメインメモリを構成する。ディスクコントローラ610は、1つまたは複数のディスクドライブをシステムバス602にインターフェースで接続する。これらのディスクドライブは、例えば、502のようなフロッピーディスクドライブ、CD ROMもしくはDVD(デジタルビデオディスク)ドライブ504、または内部もしくは外部ハードドライブ614である。前述したように、これら種々のディスクドライブおよびディスクコントローラは任意の装置である。
【0083】
ディスプレイインタフェース618は、ディスプレイ110をインターフェースで接続し、バス602からの情報をディスプレイ110上に表示することを可能にする。この場合もやはり先の通りであり、ディスプレイ110もまた任意の付属品である。例えば、ディスプレイ110は置き換えられ得るかまたは除外され得る。例えば本明細書に記載のシステムの他の構成要素のような外部装置との通信は、通信ポート616を使用することで行われる。例えば、光ファイバーおよび/または電気ケーブルおよび/または導線および/または光通信(例えば、赤外線など)および/または無線通信(例えば、無線周波数(RF)など)が、外部装置と通信ポート616との間の輸送媒体として使用され得る。周辺インターフェース620はキーボード116およびマウス114をインターフェースで接続し、入力データをバス602に伝送することを可能にする。
【0084】
別の態様において、上記CPU 604は、PAL(プログラマブル・アレイ・ロジック)およびPLA(プログラマブル・ロジック・アレイ)、DSP(デジタル信号プロセッサ)、FPGA(フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ)、ASIC(特定用途向け集積回路)、VLSI(超大規模集積回路)などのプログラム可能な論理回路を含む、任意の適切な処理回路に置き換えられ得るか、またはこの処理回路と併用され得る。
【0085】
現在利用できるまたは今後開発される任意のコンピュータソフトウェア言語および/またはハードウェア成分を、本発明のこのような態様において用いることができる。例えば、上記の機能の少なくともいくつかは、拡張マークアップ言語(XML)、HTML、ビジュアルベーシック、C、C++、または使用するプロセッサを考慮して適切である任意のアセンブリ言語を用いて実行され得る。これはまた、Javaなどの解釈環境で書き込まれ、様々な使用者への複数のあて先に送信され得る。
【0086】
本発明の実行の1つは、一般的に上記のように構成される1つまたは複数のコンピュータシステム104のランダムアクセスメモリ608内に、一組の命令として存在する。コンピュータシステム104により要求されるまで、一組の命令は、ハードディスクドライブ614、または最終的にCD-ROM504で使用される光ディスク、もしくは最終的にフロッピーディスクドライブ502で使用されるフロッピーディスク(たとえば、図7のフロッピーディスク702)などの取り外し可能なメモリといった、別のコンピュータ可読メモリ内に保存され得る。さらに、一組の命令(Java、HTML、XML、汎用マークアップ言語規約(SGML)、および/または構造化照会言語(SQL)で書き込まれた命令など)は別のコンピュータのメモリ内に保存され、使用者が所望する場合に、ローカルエリア・ネットワークまたは、インターネットのような広域ネットワークを介して伝送され得る。当業者には、コンピュータプログラム媒体の保存または伝送は、媒体がコンピュータ可読情報を伝えることができるように、媒体を電気的、磁気的、または化学的に変化させることは周知である。
【0087】
ここで、上記のバイオマーカー、キット、コンピュータプログラム媒体、および方法について説明する具体的な実施例について言及する。実施例は好ましい態様を説明するために提供するものであり、これにより本発明の範囲が制限されないことを意図することを理解されたい。
【0088】
実施例1
血清試料
セントルイス大学医学部およびペンシルベニア州立大学医学部から、血清試料を入手した。血清の入手、データ管理、および血液採取手順は、イースタンバージニア医科大学施設内倫理委員会により承認された。インフォームドコンセントを行った後、頭頸部癌患者および非喫煙対照から全血を採取した。血清を分離し、等分し、かつSELDI解析の為に特別に解凍するまでは-80℃で凍結した。
【0089】
患者およびドナーコホート
本研究では、2群の患者に由来する試料を使用した:HNSCCと診断された患者に由来する99試料、および正常非喫煙対照患者に由来する102試料。
【0090】
SELDIタンパク質プロファイリング
SELDI解析を行うため、CuSO4で前処理したIMAC3 ProteinChip(登録商標)を用いて、以前に記載されている通りに血清試料を処理した(Merchant, M., et al., Electrophoresis 21:1164-1177 (2000))。簡潔に説明すると、血清20μlを8M尿素、1%CHAPSで前処理し、4℃で10分間ボルテックスした。1M尿素、0.125% CHAPS、およびPBSでさらに希釈した。次いで、希釈した試料をバイオプロセッサを用いてProteinChip(登録商標)に添加した。血清試料はそれぞれ二つ組でアッセイし、二つ組試料は異なるProteinChip(登録商標)上にランダムに配置した。次にProteinChip(登録商標)を室温でインキュベートし、その後PBSおよび水で洗浄した。アレイを風乾し、50% (v/v)アセトニトリル、0.5% (v/v)トリフルオロ酢酸中のシナピン酸(Ciphergen Biosystems、カリフォルニア州、フレモント)飽和溶液を各スポットに添加した。プロテインチップアレイを、SELDI ProteinChip(登録商標)システム(PBS-II、Ciphergen Biosystems、カリフォルニア州、フレモント)を用いて解析した。陽性モードでのレーザー強度220における192ショットの蓄積により、スペクトルを収集した。タンパク質の質量は、精製ペプチド標準物質(Ciphergen Biosystems、カリフォルニア州、フレモント)を用いて、外部から較正した。
【0091】
データ解析
解析を行う前に、データを以下のような2つのセットに分割した:各群(正常およびHNSCC)由来の75試料からなる訓練セット、ならびに24のHNSCC試料および27の正常試料の試験セット。
【0092】
ピーク検出
Ciphergen SELDIソフトウェアバージョン3.0(インターネットアドレス:www.ciphergen.com)を用いて、ピークの検出を行った。2,000 Da〜21,000 Daの質量範囲は、分離されるタンパク質/ペプチドの大部分を含んでいるため、解析にはこれらの質量範囲を選択した。ピーク検出およびクラスタリングは、シグナル対ノイズ比:3、ピーク閾値:スペクトルの10%、およびクラスター質量領域:.2%のBioMarker Wizard Settingで行った。
【0093】
標識ピークはすべて(平均90ピーク/スペクトル)、SELDIからExcel表計算にエクスポートされた。
【0094】
分類と回帰ツリー(CART)解析
決定ツリー分類アルゴリズムの構築は、150の試料(正常75およびHNSCC 75)からなる訓練セットを用いて、Breiman, L., et al., Classification and Regression Trees, (1984)によって記載されている通りに行った。BioMarker Patternsソフトウェアプログラムに組み込まれている分類と回帰ツリー(CART)および人工知能バイオインフォマティクスアルゴリズムに関する詳細はまた、Bertone, P., et al., Nucleic Acids Res. 29: 2884-2898 (2001);Kosuda, S., et al., Ann. Nucl. Med. 16: 263-271 (2002)によって記載されている。分類ツリーでは、質問形式で同時に1つの規則を用いて、データを2つのビンまたはノードに分割した。分割の判定は、1つのピークの有無および強度レベルに基づいた。したがって、SELDIプロファイルから同定されるピークまたはクラスターは、分類工程で変動した。例えば、「質量AはX以下の強度を有する」という質問に対する答えにより、データは、ハイの左側ノードおよびイイエの右側ノードという2つのノードに分割される。この「分割」工程は、末端ノードに到達し、データ分類においてさらなる分割が行われなくなるまで続けられる。末端ノードの分類は、そのノード内の試料の大部分を表す試料(すなわち、HNSCC、正常)の群(「クラス」)によって決定した。訓練セットを用いて分類ツリーを構築し、V重交差検証を行った後、各分類ツリーの精度を試験セット(アルゴリズムに対して盲目的)を用いて検証した。この工程を用いて複数の分類ツリーを作成し、さらなる試験のために最も性能のよいツリーを選択した。
【0095】
統計解析
特異性は、正確に分類された陰性試料数と真の陰性試料の総数の比として算出した。感度は、正確に分類された疾患試料数と疾患試料の総数の比として算出した。群間の相対ピーク強度レベルの比較は、スチューデントのt検定を用いて算出した。
【0096】
データ解析
SELDIソフトウェアプログラムを用いたピーク検出により、平均90ピーク/スペクトルが同定された。これらのうち、2,000ダルトン〜21,000ダルトンの質量を有する、共通に見られる80のピークまたはクラスターを、訓練セットから生成した。各クラスターは0.2%の質量領域で測定し、これによって1つのタンパク質ピークが示される。以下の表1に示すように、これらのピークのうち32のピークが、HNSCC血清と対照血清との間で有意に差次的な発現レベルを有することが認められた。
【0097】
(表1)HNSCC血清と対照血清において差次的に発現されるタンパク質ピーク

am/z 質量電荷比
bスチューデントのt検定から算出されたP値
【0098】
CART解析
訓練セットを用いて、V重交差検証を行い、全80ピークから分類ツリーを作成した。この種類の交差検証では、それぞれのツリーについて試験するために、乱数を使用して訓練セット内のデータを分割する。CART解析に基づき、5064ダルトンのタンパク質ピークの低発現が、第1分割子としてすべての分類ツリーにおいて用いられた。図2は、対照血清と比較した場合のHNSCC血清におけるこのピークの低発現を示す、代表的なゲル図(2A)およびスペクトル(2B)である。図3は、5064ダルトンピークに関してプロットされた平均標準化強度値を示し、この図から、対象血清における平均発現に対してHNSCC血清での平均発現が3倍低いことが示される。
【0099】
全80ピークを用いて、決定ツリー分類アルゴリズムを構築した。1つの試料分類アルゴリズムでは、5 kDa〜16 kDaの3種類の質量を用いて、5つの末端ノードを生成した(図1)。アルゴリズムで最も識別能力のあるピークが同定されて、分類規則はかなり単純になった。
【0100】
最も精度の高いツリーは、訓練セット中のHNSCC血清の90.7%を正しく分類した(表2Aを参照)。次に、この分類ツリーアルゴリズムを、健常個体に由来する27血清およびHNSCCと診断された患者に由来する24血清(訓練セットとは異なる)からなる試験セット(アルゴリズムに対して盲目的)を用いて検証した。対照の100%およびHNSCC試料の83.3%が正しく同定された(表2Bを参照)。分類ツリーの形態は、3つの主要なピーク(5064、13881、および15139 Da)および5つの末端ノードからなった(図1を参照)。5つの末端ノードによる分類結果の合計を、以下の表2において訓練セットおよび試験セットについて示す。
【0101】
(表2)HNSCC訓練セットおよび試験セットの決定ツリー分類
A. 訓練セット

B. 試験セット

【0102】
再現性
信頼性のある疾患診断を行う、および初期検出を行うのための任意の臨床的アプローチの重要な側面は、再現性である。SELDIデータの再現性は、プールされた正常血清試料を用いて以前に実証されている(Adam, B. L., et al., Cancer Res. 62:3609-3614 (2002))。ピーク質量に関するアッセイ内およびアッセイ間変動係数(CV)は、15%〜20%の標準化強度CV値を用いて日常的に0.05%である。再現性を評価するため、各血清試料について二つ組試料をアッセイした。図4は、3ヶ月の期間をおいて実施して得られたSELDIスペクトルデータの再現性の例である。
【0103】
考察
SELDI/TOF-MS技法を用いて、本発明者らは驚くべきことに、迅速かつ再現性のある様式でHNSCCの検出に関して100%の特異性および83.3%の感度を達成した。HNSCCはほとんどの場合、タバコおよびアルコールの使用に関連していることが認められているが、前記の実施例において使用した対照血清はこれらの危険因子をもたない正常個体から採取した。予備実験において(データは示さず)、本明細書に記載するような分類ツリーを、100名の健常喫煙者(症状も所見もなく、頭頸部の十分な診察を受けた患者)から採取した血清を用いて試験し、HNSCCを有する患者と健常喫煙者との識別において83%の感度および92.5%の特異性を達成した。意味深いことに、正常から癌への進行は多巣性であり不均一であることから、健常喫煙者とHNSCC患者との差は、正常健常対照とHNSCC患者間との差よりも小さいと考えられた。このことから、いくらかの「健常」喫煙者は、明白な臨床的徴候をもたずにHNSCCを発症している途中であろうことが示唆される。
【0104】
多くのタンパク質ピークは、対照血清と比較してHNSCCにおいて統計的に高い有意性で差次的に発現されることが認められた(表1)。これらの有意なピークのすべてが分類ツリーアルゴリズムにおいて用いられたわけではないが、本発明は、差次的に発現されるマーカーの使用を意図することに注目すべきである。予測材料として機能し得る単一の変数のみを求める統計的手段とは異なり、CART解析では変数の組み合わせを調べる。単一のタンパク質ピークに関して群の平均差を試験した場合に、有意なp値が達成され得る。分類アルゴリズムでは、最も優れた分類を提供するピーク発現の組み合わせを求めて、多くの異なる変数を一度に試験することができる。さらに、グループ間で試験した場合に有意なp値をもたないピークも、実際には分類アルゴリズムと関連し得る、例えば、図1に示す最も性能のよい分類ツリーで用いられる2つのピーク(13881および15139 Da)は、2つの血清群の間では個々に差次的に発現されなかった。しかし、これらは、5064 Daの有意なピークによって階層化された群のサブセットを描写するための分類ツリーに対しては有意であった。HNSCC群と非癌群との識別に関して最大の感度/特異性をもたらす組み合わせでは、いくつかの異なる質量のパターンが用いられた。これらの質量のうち、5,064 DaピークはHNSCCにおいて低発現するものであり、この血清セット用いて作成されたすべての分類ツリーにおいて見い出され、さらにSELDI技術がどのようにHNSCCの新規生物学的マーカーの発見に役立ち得るか、およびどのようにタンパク質発現パターンの相違の解析を提供し得るかの一例である。
【0105】
本明細書に記載の現段階で最も好ましいHNSCC分類システムの使用は、3つの質量:5064±10.1;13881±27.8;および15139±30.3ダルトンのタンパク質「フィンガープリント」パターンに依存する。これらの質量は、再現性よくかつ確実に検出されることが認められた。これらのバイオマーカーに関する質量値および発現レベル(すなわち、各ピークの値)により、正確な分類または診断が可能になった。重要なことには、差次的診断目的とする場合に、これらのバイオマーカーの同一性を知る必要はない。
【0106】
SELDIタンパク質フィンガープリント法は、伝統的な癌診断アプローチからのパラダイムシフトを示す。潜在的に新規なタンパク質バイオマーカーの発見は、SELDI/TOF-MSにより容易になる。特定の理論によって制約されることを意図しないが、個々のタンパク質変化よりもむしろタンパク質パターンの方が、正常健常個体とHNSCCを有するかまたはHNSCCを発症する可能性のある個体を識別するのに、より重要であるようである。SELDI/TOF-MS技法と強力な人工知能分類アルゴリズムを併用することで、本研究において達成された高感度および高特異性により、健常個体とHNSCC患者を識別する血清中のタンパク質パターンが同定された。この技法により、蓄積が容易であり、かつ臨床上での使用に直ちに結びつくはずのデータが提供される。
【0107】
本発明を図および上記の記載において詳細に説明し記載したが、これは特徴を説明するものであって制限するものでないと考えるべきであり、好ましい態様のみを示し説明したのであって、本発明の趣旨の範囲内に入る全ての変更および修正の保護を要求することを理解すべきである。さらに、本明細書に引用したすべての参考文献および特許は当技術分野における技術のレベルを示し、その全体が参照として本明細書に組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0108】
【図1】実施例1で利用した決定ツリー分類システムの略図を示す。「HC」は健常対照患者を示し、「HNSCC」は頭頸部扁平上皮癌患者を示す。四角は主要なノードであり、円は末端ノードを示す。ルートノード中の質量値には、≦強度値が付随している。
【図2】正常対照6名の血清と比較した場合の、HNSCC患者6名の血清の、4,000m/z〜6,000 m/zにわたる代表的なSELDIゲル図(A)およびスペクトル(B)を示す。「囲み」は、正常血清と比較してHNSCCにおいて低発現している、5064 Daの平均質量を有するピークを示す。
【図3】正常対照の血清と比較した場合の、HNSCC患者の血清中の5064 Daタンパク質の発現レベルを示す。「‐」は平均標準化強度を示し、「O」は個々の患者の値を示す。
【図4】IMAC PtoteinChip(登録商標)を用いて、3ヶ月の期間をおいてアッセイした、2つの異なる血清試料の代表的なSELDIスペクトルを示す。
【図5】本発明のコンピュータ実行態様に従ってコンピュータ工程を実行するための、中央演算処理装置の一例を示す。
【図6】図5の中央演算処理装置の内部ハードウェアのブロック図の一例を示す。
【図7】そこでコンピュータ命令が具体化され得る、例示的なコンピュータ可読媒体である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階を含む、患者における頭頸部扁平上皮癌の診断を支援するための方法:
(a) 頭頸部扁平上皮癌に罹患している疑いのある患者から体液試料を採取する段階;
(b) 該試料中の、約2778±5.6、2951±5.9、3772±7.5、3888±7.8、4181±8.4、4464±8.9、5064±10.1、5078±10.2、5242±10.5、5335±10.7、5363±10.7、5544±11.1、5905±11.8、5920±11.8、6110±12.2、7764±15.5、7805±15.6、7830±15.7、7920±15.8、7971±15.9、8928±17.9、9094±18.1、9134±18.3、9181±18.4、9287±18.6、9416±18.8、10264±20.5、10843±21.7、11722±23.4、11922±23.8、13350±26.7、13881±27.8、14687±29.4、および15139±30.3ダルトンの分子量を有するタンパク質バイオマーカーからなる群より選択される少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーを検出する段階;
(c) 該少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーの検出を、該患者の頭頸部扁平上皮癌の診断と相関づける段階。
【請求項2】
検出段階が、少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーの差次的発現を同定する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
相関づけが、試料中の少なくとも1つタンパク質バイオマーカーの有無、および対照中の該少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーの検出頻度を考慮に入れる、請求項1記載の方法。
【請求項4】
相関づけが、少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーの対照量に対する、試料中の該少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーの量をさらに考慮に入れる、請求項3記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーが、約5064±10.1、13881±27.8、および15139±30.3ダルトンバイオマーカーからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項6】
約5064±10.1、13881±27.8、および15139±30.3ダルトンバイオマーカーの量を決定する段階を含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーが、約5064±10.1、2778±5.6、4464±8.9、および3772±7.5ダルトンバイオマーカーからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項8】
約5064±10.1、2778±5.6、4464±8.9、および3772±7.5ダルトンバイオマーカーの量を決定する段階を含む、請求項7記載の方法。
【請求項9】
少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーが、約5064±10.1、5242±10.5、13881±27.8、および15139±30.3ダルトンバイオマーカーからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項10】
約5064±10.1、5242±10.5、13881±27.8、および15139±30.3ダルトンバイオマーカーの量を決定する段階を含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーを検出する段階が質量分析法によって行われる、請求項1記載の方法。
【請求項12】
質量分析法がレーザー脱離質量分析法である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
質量分析法が表面増強レーザー脱離/イオン化質量分析法である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
レーザー脱離/イオン化質量分析法が以下の段階をを含む、請求項13記載の方法:
(a) そこに付着した吸着剤を含む基材を提供する段階;
(b) 試験試料を吸着剤と接触させる段階;
(c) 基材からバイオマーカーを脱離およびイオン化する段階;および
(d) 質量分析計により、脱離/イオン化したバイオマーカーを検出する段階
【請求項15】
試験試料を吸着剤と接触させる前に、試験試料を精製する段階をさらに含む、請求項14記載の方法。
【請求項16】
対象の試験試料中の少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーを検出する段階が、免疫測定法によって行われる、請求項1記載の方法。
【請求項17】
免疫測定法が酵素免疫測定法である、請求項16記載の方法。
【請求項18】
体液が血液血清である、請求項1記載の方法。
【請求項19】
体液が、精液、精漿、唾液、血液、リンパ液、肺/気管支洗浄液、粘液、便、乳頭分泌液、痰、涙液、および尿からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項20】
2〜20個のバイオマーカーが検出される、請求項1記載の方法。
【請求項21】
以下の段階を含む、請求項1記載の方法:
(a) 約5064±10.1、約13881±27.8、および約15139±30.3ダルトンからなる群より選択される分子量を有するタンパク質バイオマーカーの有無を検出する段階;および
(b) 検出を、頭頸部扁平上皮癌の有望な診断と相関づける段階。
【請求項22】
約5064±10.1ダルトンの分子量を有するタンパク質バイオマーカーの有無を検出する、請求項21記載の方法。
【請求項23】
約5064±10.1および約13881±27.8ダルトンの分子量を有するタンパク質バイオマーカーの有無を検出する、請求項21記載の方法。
【請求項24】
約5064±10.1、約13881±27.8、および約15139±30.3ダルトンの分子量を有するタンパク質バイオマーカーの有無を検出する、請求項21記載の方法。
【請求項25】
検出段階が質量分析法によって行われる、請求項21記載の方法。
【請求項26】
質量分析法がレーザー脱離質量分析法である、請求項25記載の方法。
【請求項27】
質量分析法が表面増強レーザー脱離/イオン化質量分析法である、請求項26記載の方法。
【請求項28】
レーザー脱離/イオン化質量分析法が以下の段階を含む、請求項27記載の方法:
(a) そこに付着した吸着剤を含む基材を提供する段階;
(b) 試験試料を吸着剤と接触させる段階;
(c) 基材からバイオマーカーを脱離およびイオン化する段階;および
(d) 質量分析計により、脱離/イオン化したバイオマーカーを検出する段階
【請求項29】
試験試料を吸着剤と接触させる前に、試験試料を精製する段階をさらに含む、請求項28記載の方法。
【請求項30】
検出段階が免疫測定法によって行われる、請求項21記載の方法。
【請求項31】
免疫測定法が酵素免疫測定法である、請求項30記載の方法。
【請求項32】
約5064±10.1、13881±27.8、および15139±30.3ダルトンからなる群より選択される少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーを保持し得る、そこに付着した吸着剤を含む基材を含むキット。
【請求項33】
基材が、吸着剤が付着した表面を有し、気相イオン分光計での使用に適合したプローブである、請求項32記載のキット。
【請求項34】
吸着剤が金属キレート吸着剤である、請求項32記載のキット。
【請求項35】
吸着剤が陽イオン基を含む、請求項32記載のキット。
【請求項36】
基材が複数の異なる種類の吸着剤を含む、請求項32記載のキット。
【請求項37】
吸着剤が、バイオマーカーに特異的に結合する抗体である、請求項32記載のキット。
【請求項38】
溶離液で洗浄した際にバイオマーカーが吸着剤上に保持される溶離液をさらに含む、請求項32記載のキット。
【請求項39】
約2778±5.6、2951±5.9、3772±7.5、3888±7.8、4181±8.4、4464±8.9、5064±10.1、5078±10.2、5242±10.5、5335±10.7、5363±10.7、5544±11.1、5905±11.8、5920±11.8、6110±12.2、7764±15.5、7805±15.6、7830±15.7、7920±15.8、7971±15.9、8928±17.9、9094±18.1、9134±18.3、9181±18.4、9287±18.6、9416±18.8、10264±20.5、10843±21.7、11722±23.4、11922±23.8、13350±26.7、13881±27.8、14687±29.4、および15139±30.3ダルトンからなる群より選択される少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーを保持し得る、そこに付着した吸着剤を含む基材を含むキット。
【請求項40】
基材が、吸着剤が付着した表面を有し、気相イオン分光計での使用に適合したプローブである、請求項39記載のキット。
【請求項41】
吸着剤が金属キレート吸着剤である、請求項39記載のキット。
【請求項42】
吸着剤が陽イオン基を含む、請求項39記載のキット。
【請求項43】
基材が複数の異なる種類の吸着剤を含む、請求項39記載のキット。
【請求項44】
吸着剤が、バイオマーカーに特異的に結合する抗体である、請求項39記載のキット。
【請求項45】
溶離液で洗浄した際にバイオマーカーが吸着剤上に保持される溶離液をさらに含む、請求項39記載のキット。
【請求項46】
以下の段階を含む、複数の分類子を使用して頭頸部扁平上皮癌の有望な診断または陰性診断を行う方法:
a) 正常対象および頭頸部扁平上皮癌と診断された対象の複数の試料から質量スペクトルを得る段階;および
b) 質量スペクトルの少なくとも一部に決定ツリー解析を適用し、ピーク強度値および関連閾値を含む複数の加重ベース分類子を得て、該値を直線に組み合わせて使用することで、少なくとも1つの頭頸部扁平上皮癌の有望な診断または陰性診断を行う段階。
【請求項47】
以下を含む、良性前立腺肥大または前立腺癌の診断を支援するコンピュータ実行過程をコンピュータに実施するよう指示するためのコンピュータ命令をその中に保存しているコンピュータプログラム媒体:
(a) 患者由来の試験試料中の、約2778±5.6、2951±5.9、3772±7.5、3888±7.8、4181±8.4、4464±8.9、5064±10.1、5078±10.2、5242±10.5、5335±10.7、5363±10.7、5544±11.1、5905±11.8、5920±11.8、6110±12.2、7764±15.5、7805±15.6、7830±15.7、7920±15.8、7971±15.9、8928±17.9、9094±18.1、9134±18.3、9181±18.4、9287±18.6、9416±18.8、10264±20.5、10843±21.7、11722±23.4、11922±23.8、13350±26.7、13881±27.8、14687±29.4、および15139±30.3ダルトンからなる群より選択される分子量を有する少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーを検出するための、第1コンピュータプログラムコード手段;および
(b) 検出を良性前立腺肥大、前立腺癌の有望な診断、または陰性診断と相関づけるための、第2コンピュータプログラムコード手段。
【請求項48】
少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーが約5064±10.1ダルトンタンパク質バイオマーカーである、請求項47記載の媒体。
【請求項49】
タンパク質バイオマーカーが、約5064±10.1および13881±27.8ダルトンバイオマーカーである、請求項47記載の媒体。
【請求項50】
タンパク質バイオマーカーが、約5064±10.1、13881±27.8、および15139±30.3ダルトンバイオマーカーである、請求項47記載の媒体。
【請求項51】
タンパク質バイオマーカーが約5064±10.1ダルトンである、請求項1記載の方法。
【請求項52】
5064±10.1ダルトンバイオマーカーの量を決定する段階を含む、請求項51記載の方法。
【請求項53】
以下の段階を含む、患者における頭頸部扁平上皮癌の診断を支援する方法:
(a) 頭頸部扁平上皮癌に罹患している疑いのある患者から体液試料を採取する段階;
(b) 表面増強レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析(SELDI-TOF-MS)により、該試料中の、約5064±10.1、13881±27.8、および15139±30.3ダルトンの分子量を有するタンパク質バイオマーカーからなる群より選択される少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーを検出する段階;
(c) 該少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーの該検出を、該患者の頭頸部扁平上皮癌の診断と相関づける段階。
【請求項54】
以下の段階を含む、患者における頭頸部扁平上皮癌の診断を支援する方法:
(a) 頭頸部扁平上皮癌に罹患している疑いのある患者から体液試料を採取する段階;
(b) 表面増強レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析(SELDI-TOF-MS)により、該試料中の、約5064±10.1、2778±5.6、4464±8.9、および3772±7.5ダルトンの分子量を有するタンパク質バイオマーカーからなる群より選択される少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーを検出する段階;
(c) 該少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーの該検出を、該患者の頭頸部扁平上皮癌の診断と相関づける段階。
【請求項55】
以下の段階を含む、患者における頭頸部扁平上皮癌の診断を支援する方法:
(a) 頭頸部扁平上皮癌に罹患している疑いのある患者から体液試料を採取する段階;
(b) 表面増強レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析(SELDI-TOF-MS)により、該試料中の、約5064±10.1、5242±10.5、13881±27.8、および15139±30.3ダルトンの分子量を有するタンパク質バイオマーカーからなる群より選択される少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーを検出する段階;
(c) 該少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーの該検出を、該患者の頭頸部扁平上皮癌の診断と相関づける段階。
【請求項56】
以下の段階を含む、患者における頭頸部扁平上皮癌の診断を支援する方法:
(a) 頭頸部扁平上皮癌に罹患している疑いのある患者から体液試料を採取する段階;
(b) 表面増強レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析(SELDI-TOF-MS)により、該試料中の、約5064±10.1、5242±10.5、13881±27.8、および15139±30.3ダルトンの分子量を有するタンパク質バイオマーカーからなる群より選択される少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーを検出する段階;
(c) 該少なくとも1つのタンパク質バイオマーカーの該検出を、該患者の頭頸部扁平上皮癌の診断と相関づける段階。
【請求項57】
以下の段階を含む、患者における頭頸部扁平上皮癌の診断を支援する方法:
(a) 頭頸部扁平上皮癌に罹患している疑いのある患者から体液試料を採取する段階;
(b) 表面増強レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析(SELDI-TOF-MS)により、該試料中の約5064±10.1ダルトンの分子量を有するタンパク質バイオマーカーを検出する段階;
(c) 該タンパク質バイオマーカーの該検出を、該患者の頭頸部扁平上皮癌の診断と相関づける段階。
【請求項58】
以下の段階を含む、患者における頭頸部扁平上皮癌の診断を支援する方法:
(a) 頭頸部扁平上皮癌に罹患している疑いのある患者から体液試料を採取する段階;
(b) 表面増強レーザー脱離/イオン化飛行時間型質量分析(SELDI-TOF-MS)により、該試料中の約5064±10.1ダルトンの分子量を有するタンパク質バイオマーカーの量を検出する段階;
(c) 該タンパク質バイオマーカーの低発現を、該患者の頭頸部扁平上皮癌の診断と相関づける段階。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2007−502990(P2007−502990A)
【公表日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−524023(P2006−524023)
【出願日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【国際出願番号】PCT/US2004/026872
【国際公開番号】WO2005/034727
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
2.JAVA
【出願人】(505386454)イースタン バージニア メディカル スクール (3)
【Fターム(参考)】