説明

頭髪化粧料

【構成】 ムラサキセンブリの抽出物を配合することを特徴とする頭髪化粧料。
【効果】 本発明の頭髪化粧料は、毛髪の櫛通りを改善し、コンディショニング効果を著しく増加させる効果に優れている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は頭髪化粧料に関し、更に詳しくは毛髪の櫛通りを良くし、コンディショニング効果に優れた頭髪化粧料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】シャンプーは一般にアニオン性界面活性剤を多量に含んでおり、頭髪を洗浄すると、汚れの他に頭髪表面の皮脂やその他の油分が同時に洗い落とされてしまう。従って、頭髪の感触が悪くなり、パサつき、そして櫛通り性が悪くなるといった悪影響が生じてくる。また、頭皮の油分も除去されるので、ふけが発生しやすくなる。従来、これらの欠点を解消するために、シャンプー基剤に油分等を配合し、洗髪中に油分を補給する方法がから採用されてきた。しかしながら、これらの欠点を解消するのに充分な量の油分を安定に配合することは難しく、また、何らかの方法で多量の油分を安定に配合させたとしても、シャンプー本来の機能である起泡効果や洗浄効果が劣ったものになってしまう。
【0003】一方、シャンプーによる洗髪後に別の頭髪用化粧料、例えばヘアーリンス、ヘアートリートメント等を使用して、シャンプーによる洗髪後の髪の感触を改善する方法も一般に使用されている。この方法は、その頭髪化粧料中に配合したカチオン性界面活性剤や油分を頭髪に吸着させて好ましい風合および柔軟性を与えるものである。しかしながら、従来から頻繁に用いられるカチオン性界面活性剤は皮膚や眼に対する刺激が強く、安全性の面ではいまだ満足できるものではなかった。更に、ヘアーリンス類に、皮膚や眼に対する安全性の高い両性界面活性剤を配合するという試みも行われているが、これも安全性が高い反面、リンス効果に劣るという欠点があり、未だ満足できるものではない。
【0004】また、前記の問題点を解決する方法として、特開昭62−263113号公報にはビワから抽出した抽出物を配合した毛髪化粧料、特開昭63−57513号公報にはスイレン科植物の抽出物を配合した頭髪化粧料が開示されているが、充分満足できる効果には至っていない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、前記の問題点を持たずに、頭髪に潤い、滑らかさ、しなやかさ、そして適度のハリ(コシ)を与える頭髪化粧料を提供することにある。
【0006】本発明者等は、そのような頭髪化粧料を得るために鋭意研究を行った結果、ムラサキセンブリの抽出物を配合することにより、毛髪の櫛通りを改善し、優れたコンディショニング効果を持つことを見出し、本発明を完成した。
【0007】
【課題を解決する為の手段】すなわち、本発明はムラサキセンブリ(Swertia pseudochinsis Hara)の抽出物を配合することを特徴とする頭髪化粧料を提供するものである。
【0008】以下、本発明の構成について詳述する。
【0009】本発明に使用されるムラサキセンブリの抽出物は、開花期のムラサキセンブリ全草の乾燥粉砕物を適当な溶媒を用いて抽出した抽出液、または抽出液を濃縮したものであり、粉末として頭髪化粧料に配合しても良いし、適当な溶媒で抽出した抽出液として配合しても良い。
【0010】一般的な抽出法は、開花期のムラサキセンブリ全草の乾燥粉砕物を、溶媒、例えば水、低級アルコール、含水低級アルコールのような適当な溶媒により抽出し、残渣を濾別することによって得られる。また、抽出液中の溶媒を蒸留後さらに1,3−ブチレングリコールのような溶媒に溶解したり、また、得られた抽出液を適当な溶媒に溶解したり、濃縮した濃縮物として、本発明に使用することも出来る。また別の方法として、上記抽出液をシリカゲルクロマトグラフィーなどの吸着系クロマトグラフィーを用いて分画して得られる抽出物を用いることもできる。
【0011】本発明におけるムラサキセンブリの抽出物の配合量は、頭髪化粧料全量中、乾燥重量で0.001〜5重量%、好ましくは0.01〜1重量%である。0.001重量%未満では、配合しても本発明の効果が発揮されず、5重量%を超えると、製品の製造工程上好ましくない。
【0012】本発明の頭髪化粧料は、前記の必須成分に加えて必要に応じて本発明の効果を損なわない範囲で頭髪化粧料に通常使用されている任意の成分を使用することが出来る。これらの成分としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、油分、紫外線吸収剤、防腐剤、保湿剤、香料、水、アルコール、増粘剤、色剤、金属イオン封鎖剤、酸化防止剤、薬剤等が挙げられる。
【0013】また本発明の化粧料は、頭皮ないし頭髪に使用するものを広く指し、例えば、ヘアーローション、ヘアーリキッド、頭皮用乳液、ヘアークリーム、シャンプー、ヘアーリンス、ヘアートリートメント、ヘアーフォーム、ヘアースプレー、パーマ剤、ヘアダイ等が含まれる。
【0014】
【実施例】次に、実施例によって本発明をさらに詳細に説明する。試験例1、2は髪に対する櫛通り性改善試験とコンディショニング性能評価試験である。これは毛髪に対する作用の一般的な試験方法である。尚、本発明は、これによって限定されるものではない。配合量は重量%である。
【0015】試験例1本例は、ムラサキセンブリの抽出物で処理した頭髪の動摩擦係数について説明する。
【0016】ムラサキセンブリ抽出物の1.0%溶液を以下の製法によって用意した。(製法)開花期のムラサキセンブリ全草の乾燥粉砕物50gを90v/v%エタノール750mlで2日間、室温で抽出した。濾過して固液を分離し、抽出残渣について同様の抽出操作を3回繰り返した。得られた抽出液を併せて減圧下に濃縮し、得られた濃縮物(固形物含有量5.4g)にエタノールおよび精製水を加えて、エタノール濃度を70v/v%、全量を50mlに調製した。その後、5℃で1週間放置し、不溶物を濾別し、濾液を減圧下に乾固し(固形物4.2g)、70v/v%エタノールを加えてムラサキセンブリ抽出物の1%溶液を作成した。
【0017】予め、市販のシャンプー(通常のアルキル硫酸エステル塩系シャンプー)で洗浄し、充分に水ですすいだ毛束(長さ15cm,10g)を前記のムラサキセンブリ抽出液中または70v/v%エタノール溶液中(対照用)に40℃で10分間浸漬し、40℃の水で充分すすいだ後、室温にて24時間風乾した。これらの毛髪について動摩擦係数を測定した。結果を以下の表1に示す。動摩擦係数の測定は、日本レオロジー社製の摩擦磨耗試験器NRF型を使用し、荷重20g、10rpmの条件で行い、各10回の平均値で示した。測定条件は、温度25℃および湿度50%であった。
【0018】
【表1】


【0019】表1に示すように、ムラサキセンブリの抽出物で処理した頭髪の動摩擦係数は未処理の頭髪の動摩擦係数より低い値を示す。これは、前者の平滑性および柔軟性が優れていることを意味する。このことから、ムラサキセンブリの抽出物のコンディショニング効果が優れていることがわかる。
【0020】試験例2本例は、本発明によるムラサキセンブリの抽出物が頭髪に与える効果について説明する。
【0021】試験対象者として、18才から24才の女性20名を選んだ。各試験対象者は、市販シャンプー(通常のアルキル硫酸エステル系シャンプー)で洗髪後の頭髪に、後記の表2に示す3種類のヘアーリンス12gずつを塗布し、約40℃の水ですすぎ洗い落としてから、タオルドライ後、ドライヤー処理中およびドライヤー処理後の頭髪の感触を「よい」、「普通」および「よくない」の3段階で判定し、判定結果を「よい」と答えた人の人数で評価した。
【0022】ムラサキセンブリの抽出物の5%溶液は以下の製法によった。
(製法)開花期のムラサキセンブリ全草の乾燥粉砕物50gを80〜90℃の精製水750mlに浸漬し、1時間抽出した。濾過して固液を分離し、抽出残渣について同様の操作を3回繰り返した。得られた抽出液を併せて減圧下に濃縮し、得られた濃縮物(固形物含有量10.0g)にエタノールおよび精製水を加えてエタノール濃度を50v/v%、全量を50mlに調製した。その後、5℃で1週間放置し、不溶物を濾別し、濾液を減圧下に乾固し(固形物6.5g)、70v/v%エタノールを加えてムラサキセンブリ抽出物の5%溶液を作成した。
【0023】次に、比較として用いたビワ抽出物の製法を以下に示す。
(製法)ビワの乾燥葉10gを80〜90℃の精製水150mlに浸漬し、1時間抽出した。濾過して固液を分離し、抽出残渣について同様の操作を3回繰り返した。得られた抽出液を併せて減圧下に濃縮し、得られた濃縮物(固形物含有量1.2g)にエタノールおよび精製水を加えてエタノール濃度を50v/v%、全量を50mlに調製した。その後、5℃で1週間放置し、不溶物を濾別し、濾液を減圧下に乾固し(固形物0.9g)、70v/v%エタノールを加えてビワ抽出物の5%溶液を作成した。
【0024】
【表2】


【0025】表2に示すように、ムラサキセンブリの抽出物で処理した頭髪は、潤い、なめらかさ、しなやかさ及びはり(こし)の面で優れた効果を示し、このことから、ムラサキセンブリの抽出物のコンディショニング効果が優れていることがわかる。
【0026】実施例1下記の成分を常法によって混合して、パール感のあるシャンプーを調製した。
成分 重量%ポリオキシエチレンラウリル硫酸ナトリウム 16.0ラウリン酸ジエタノールアミド 4.0ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン 5.0エチレングリコールジステアレート 2.0ムラサキセンブリ抽出液※ 1.0防腐剤 適 量香料 適 量精製水 残 余 ※試験例1で調製したムラサキセンブリ抽出液
【0027】このシャンプーで洗髪した頭髪は、洗髪後にパサつきがなく、櫛通りも良好であった。また、その頭髪には良好な潤いが得られ、なめらかさ、しなやかさ、およびはりも良好であった。
【0028】実施例2下記の成分を常法によってヘアーリンスを調製した。
成分 重量%塩化セチルトリメチルアンモニウム 1.5セタノール 2.5スクワラン 2.0ポリエキシエチレンステアリルエーテル(5E.O.) 1.0ムラサキセンブリ抽出液※ 2.01,3−ブチレングリコール 5.0防腐剤 適 量香料 適 量精製水 残 余 ※試験例1で調製したムラサキセンブリ抽出液
【0029】市販のシャンプー(通常のアルキル硫酸エステル系シャンプー)で洗髪した後に、本例のヘアーリンスで処理したところ、頭髪には良好な潤いが得られ、なめらかさ、およびはりも良好であった。
【0030】実施例3下記の成分を常法によってヘアートリートメントを調製した。
成分 重量%塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 2.5塩化ジステアリルジメチルアンモニウム 1.5セタノール 5.0流動パラフィン 2.0オクチルドデカノール 2.0ポリエキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.) 0.5ムラサキセンブリ抽出液※ 5.0プロピレングリコール 5.0防腐剤 適 量香料 適 量精製水 残 余 ※試験例1で調製したムラサキセンブリ抽出液
【0031】市販のシャンプー(通常のアルキル硫酸エステル系シャンプー)で洗髪した後に、本例のヘアートリートメントで処理したところ、頭髪には良好な潤いが得られなめらかさ、およびはりも良好であった。
【0032】実施例4下記の成分を常法によってヘアークリームを調製した。
成分 重量%ミツロウ 3.0ワセリン 5.0ステアリルアルコール 5.0流動パラフィン 30.0スクワラン 10.0ポリエキシエチレンセチルエーテル(60E.O.) 2.5ムラサキセンブリ抽出物※ 0.2EDTA−2Na 0.1防腐剤 適 量香料 適 量精製水 残 余 ※試験例2で調製したムラサキセンブリ抽出液
【0033】このヘアークリームを塗布した頭髪は、良好な潤い、およびはりをもち、しなやかさおよびなめらかさも良好であった。
【0034】実施例5下記の成分を常法によってヘアーセットローションを調製した。
成分 重量%ポリビニルピロリドン 2.0ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.) 1.0ジプロピレングリコール 3.0ムラサキセンブリ抽出物※ 0.5エタノール 30.0香料 適 量精製水 残 余 ※試験例2で調製したムラサキセンブリ抽出液
【0035】市販のシャンプー(通常のアルキル硫酸エステル系シャンプー)で洗髪した後に、本例のヘアーセットローションで処理し、ドライヤーで乾燥させたところ、頭髪に良好な潤いが得られなめらかさ、およびはりも良好であった。
【0036】実施例6下記の成分を常法によってヘアーフォームを調製した。
成分 重量%塩化ステアリルトリメチルアンモニウム 0.5ガフカット755 [GAF社製のカチオン性樹脂] 15.0流動パラフィン 1.0シリコン油 2.0ムラサキセンブリ抽出物※ 1.0エタノール 10.0ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(80E.O.) 1.0香料 適 量精製水 残 余 ※試験例2で調製したムラサキセンブリ抽出液
【0037】上記の各成分から製造した原液95重量部に、噴射剤として液化石油ガス5重量部を加えて、エアゾール缶に充填した。
【0038】市販のシャンプー(通常のアルキル硫酸エステル系シャンプー)で洗髪した後に、本例のヘアーフォームで処理したところ、頭髪に良好な潤いおよびしなやかさが得られ、なめらかさ、およびはりも良好であった。
【0039】実施例7下記の成分を常法によってヘアーリキッドを調製した。
成分 重量%ポリオキシプロピレンブチルエーテル(60P.O.) 20.0エタノール 50.0ムラサキセンブリ抽出物※ 5.0ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(80E.O.) 1.0香料 適 量精製水 残 余 ※試験例2で調製したムラサキセンブリ抽出液
【0040】市販のシャンプー(通常のアルキル硫酸エステル系シャンプー)で洗髪した後に、本例のヘアーリキッドで処理したところ、頭髪に良好な潤いおよびしなやかさが得られ、なめらかさ、およびはりも良好であった。
【0041】実施例8下記の成分を常法によってヘアーローションを調製した。
成分 重量%エタノール 40.0l−メントール 0.5塩化ベンザルコニウム 0.05グリチルレチン酸 0.05ムラサキセンブリ抽出物※ 10.0ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(40E.O.) 1.0香料 適 量精製水 残 余 ※試験例2で調製したムラサキセンブリ抽出液
【0042】市販のシャンプー(通常のアルキル硫酸エステル系シャンプー)で洗髪した後に、本例のヘアーローションで処理したところ、頭髪に良好な潤いおよびしなやかさが得られ、なめらかさ、およびはりも良好であった。
【0043】
【発明の効果】本発明の頭髪化粧料は、ムラサキセンブリの抽出物を配合することにより、毛髪の櫛通りを改善し、コンディショニング効果を著しく増加させる利点を有している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 ムラサキセンブリの抽出物を配合することを特徴とする頭髪化粧料。

【公開番号】特開平5−213723
【公開日】平成5年(1993)8月24日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−57127
【出願日】平成4年(1992)2月6日
【出願人】(000000952)鐘紡株式会社 (120)