説明

頻尿改善剤

【課題】排尿の頻度が増えてきている、排尿のたびに睡眠が中断され満足な睡眠が得られてない等の自覚症状を持つ者に対して、該症状を改善し、生活の質を高めるための、頻尿改善剤(医薬品、健康食品等)を提供する。
【解決手段】シトルリンまたはその塩を有効成分として含有する頻尿改善剤。該シトルリンとしては、L−シトルリンおよびD−シトルリンがあげられるが、L−シトルリンが好ましい。該シトルリンの塩としては、酸付加塩、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩、アミノ酸付加塩等があげられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シトルリンまたはその塩を有効成分として含有する頻尿改善剤に関する。
【背景技術】
【0002】
頻尿は加齢現象の1つで、とりわけ老齢男性の多くはこの症状に悩みを抱えていると言われている。原因は多様で、前立腺肥大症や膀胱炎など疾患による器質性の頻尿から、心因性の頻尿、薬剤の副作用などによる頻尿など様々である。頻尿は、頻繁な排尿の煩わしさ、排尿のたびに睡眠が中断されることによる睡眠不足など、精神的な苦痛を伴い生活の質を著しく低下させることから、こうした症状を改善できることが望まれている。
【0003】
一方、漢方やハーブによる頻尿改善効果が知られているが、医薬品によってはこれらとの併用により副作用が生じることから、使用者が限られるという不都合がある。食品素材としては、ラクトフェリンに頻尿抑制効果があることが知られている(特許文献1)。
L−シトルリンは、生体内でタンパク質の合成原料としては使われず、遊離の状態で存在するアミノ酸の一種である。体内ではアルギニン前駆体としてアルギニン生合成や、一酸化窒素(NO)の供給に関わるNOサイクルの構成因子としての役割を果たしている。
【0004】
L−シトルリンは、NOを産生させ血流を改善する食品素材として米国を中心に用いられている。また、L−シトルリンは欧州では、抗疲労用の医薬品として、シトルリン-リンゴ酸塩の形態で用いられている。しかしながら、シトルリンまたはその塩により頻尿が改善されることは知られていない。
【特許文献1】特開2006−206547号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、排尿の頻度が増えてきている、排尿のたびに睡眠が中断され満足な睡眠が得られてない等の自覚症状を持つ者に対して、頻尿改善剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記の(1)に関する
(1)シトルリンまたはその塩を有効成分として含有する頻尿改善剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明により、シトルリンまたはその塩を有効成分として含有する、安全で効果的な頻尿改善剤を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明で用いられるシトルリンとしては、L−シトルリンおよびD−シトルリンがあげられるが、L−シトルリンが好ましい。
シトルリンは、化学的に合成する方法、発酵生産する方法等により取得することができる。また、シトルリンは、市販品を購入することにより取得することもできる。
シトルリンを化学的に合成する方法としては、例えば、J. Biol. Chem., 122, 477(1938)、J.Org.Chem., 6, 410(1941)に記載の方法があげられる。
【0009】
L-シトルリンを発酵生産する方法としては、例えば、特開昭53−075387号公報、特開昭63−068091号公報に記載の方法があげられる。
また、L-シトルリンおよびD-シトルリンは、シグマ−アルドリッチ社等より購入することもできる。
シトルリンの塩としては、酸付加塩、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩、アミノ酸付加塩等があげられる。
【0010】
酸付加塩としては、塩酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、クエン酸塩、リンゴ酸塩、乳酸塩、α−ケトグルタル酸塩、グルコン酸塩、カプリル酸塩等の有機酸塩があげられる。
金属塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩、マグネシウム塩、カルシウム塩等のアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、亜鉛塩等があげられる。
【0011】
アンモニウム塩としては、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム等の塩があげられる。
有機アミン付加塩としては、モルホリン、ピペリジン等の塩があげられる。
アミノ酸付加塩としては、グリシン、フェニルアラニン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸等の塩があげられる。
【0012】
上記のシトルリンの塩のうち、リンゴ酸塩が好ましく用いられるが、他の塩、または2以上の塩を適宜組み合わせて用いてもよい。
本発明の頻尿改善剤としては、シトルリンまたはその塩をそのまま投与することも可能であるが、通常各種の製剤として提供するのが望ましい。
製剤は、有効成分を薬理学的に許容される一種またはそれ以上の担体と一緒に混合し、製剤学の技術分野においてよく知られている任意の方法により製造することができる。また、該製剤は更に任意の他の治療のための有効成分を含有していてもよい。
【0013】
製剤化する際には、賦形剤、結合剤、崩壊剤、潤沢剤、分散剤、懸濁剤、乳化剤、希釈剤、緩衝剤、抗酸化剤、細菌抑制剤等の添加剤を用いることができる。
剤形としては、例えば錠剤、散剤、顆粒剤、丸剤、懸濁剤、乳剤、浸剤・煎剤、カプセル剤、シロップ剤、液剤、エリキシル剤、エキス剤、チンキ剤、流エキス剤等の経口剤、注射剤、点滴剤、クリーム剤、坐剤等の非経口剤のいずれでもよいが、経口剤として好適に用いられる。
【0014】
例えば、経口投与に適当な剤形が、錠剤、散剤および顆粒剤等の場合には、乳糖、ブドウ糖、蔗糖、マンニトール、ソルビトール等の糖類、バレイショ、コムギ、トウモロコシ等の澱粉、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム等の無機物、結晶セルロース、カンゾウ末、ゲンチアナ末等の植物末等の賦形剤、澱粉、寒天、ゼラチン末、結晶セルロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、アルギン酸ナトリウム等の崩壊剤、ステアリン酸マグネシウム、タルク、水素添加植物油、マクロゴール、シリコーン油等の滑沢剤、ポリビニールアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルメロース、ゼラチン、澱粉のり液等の結合剤、脂肪酸エステル等の界面活性剤、グリセリン等の可塑剤などを添加して製剤化することができる。
【0015】
経口投与に適当な剤形が、シロップ剤のような液体調製物である場合は、水、蔗糖、ソルビトール、果糖等の糖類、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類、ごま油、オリーブ油、大豆油等の油類、p−ヒドロキシ安息香酸エステル類等の防腐剤、パラオキシ安息香酸メチル等のパラオキシ安息香酸誘導体、安息香酸ナトリウム等の保存剤、ストロベリーフレーバー、ペパーミント等のフレーバー類などを添加して製剤化することができる。
【0016】
非経口投与に適当な剤形が、注射剤の場合には、好ましくは受容者の血液と等張であるシトルリンまたはその塩を含む滅菌水性剤からなる。例えば、塩溶液、ブドウ糖溶液または塩溶液とブドウ糖溶液の混合物からなる担体等を用いて注射用の溶液を調製することができる。
また、経口投与に適当な製剤には、一般に飲食品に用いられる添加剤、例えば甘味料、着色料、保存料、増粘安定剤、酸化防止剤、発色剤、漂白剤、防かび剤、ガムベース、苦味料、酵素、光沢剤、酸味料、調味料、乳化剤、強化剤、製造用剤、香料、香辛料抽出物等が添加されてもよい。
【0017】
経口投与に適当な製剤は、そのまま、または例えば粉末食品、シート状食品、瓶詰め食品、缶詰食品、レトルト食品、カプセル食品、タブレット状食品、流動食品、ドリンク剤等の形態のものであってもよい。また、頻尿改善用の健康食品、機能性食品、栄養補助食品、特定保健用食品等の飲食品として用いてもよい。
製剤の摂取形態は、頻尿の抑制に際し最も効果的なものを使用するのが望ましく、経口投与または、例えば静脈内、腹膜内もしくは皮下投与等の非経口投与をあげることができるが、経口投与が好ましい。
【0018】
本発明の頻尿改善剤中のシトルリンまたはその塩の濃度は、製剤の種類、該製剤の投与により期待する効果等に応じて適宜選択されるが、例えば経口剤の場合、シトルリンまたはその塩として、通常は0.1〜100重量%、好ましくは0.5〜80重量%、特に好ましくは1〜70重量%である。
本発明の頻尿改善剤の投与量および投与回数は、投与形態、患者の年齢、体重、治療すべき症状の性質もしくは重篤度により異なるが、通常、成人一日当り、頻尿改善剤またはその塩として通常は50mg〜30g、好ましくは100mg〜10g、特に好ましくは200mg〜3gとなるように、一日一回ないし数回投与する。
【0019】
投与期間は、特に限定されないが、通常は1日間〜1年間、好ましくは1週間〜3ヶ月間である。
以下に、シトルリンの頻尿改善効果を調べた試験例を示す。
試験例
健常な45歳から64歳までの男女36名を18名ずつ2つの群に分け、一日当たりシトルリン800mg(266.6mg/カプセル×3粒)もしくはコーンスターチ800mg(266.6mg/カプセル×3粒)を含むカプセルを3週間摂取させる試験を行った。試験開始時および試験開始3週間後の被験者の排尿頻度について、線分スケール(VAS)法を用いて評価した。すなわち線分の両端に基準となる表現を記し、被験者に図1に示される質問項目の内容に関して線分のどのあたりに相当するかをチェックしてもらった。線分の左端を体感指数0、右端を体感指数10として、線分の左端からチェックした部分までの距離(mm)を測定し、これを体感指数に換算した。この作業を試験前および試験後に実施し、その差(体感指数の変化)を測定して、群毎の平均値および標準偏差を求めた。体感指数の変化が大きいほど、健全な状態に近い(症状を感じない)ことを表す。なお、試験開始時に2群間で差がないことを確認している。
【0020】
また、試験は無作為割付とし、二重盲検並行群間比較を行った。2群間の統計学的有意差検定は、試験開始時と試験終了時の差から、両側分布のunpaired-t検定を行った。結果を図2に示す。
シトルリン摂取により、トイレが近いといった排尿頻度に関する自覚症状が顕著に改善した。この結果から、シトルリンの頻尿改善効果が示された。
【0021】
以下に、本発明の実施例を示す。
【実施例1】
【0022】
シトルリンを含有する錠剤の製造
L-シトルリン(協和発酵工業社製)120kg、環状オリゴ糖19kg、セルロース57kgおよびプルラン1kgを流動層造粒乾燥機で造粒した。得られた造粒物とステアリン酸カルシウム3kgとをコニカルブレンダーで混合した後、ロータリー圧縮成形機で圧縮成形して錠剤を製造した。
【実施例2】
【0023】
シトルリンを含有する腸溶錠剤の製造
実施例1で製造する錠剤の表面をシェラック溶液でコーティングして腸溶錠剤を製造する。
【実施例3】
【0024】
シトルリンを含有する腸溶カプセルの製造
L-シトルリン(協和発酵工業社製)120kg、環状オリゴ糖19kg、セルロース57kg、ステアリン酸カルシウム3kgおよびプルラン1kgを、コニカルブレンダーで混合する。得られる混合物20kgと0.2kgの二酸化ケイ素とを混合攪拌して得られた混合物をカプセル充填機に投入、ハードカプセルに充填してハードカプセルを得る。得られるハードカプセルの表面をツェイン溶液でコーティングして腸溶カプセルを製造する。
【実施例4】
【0025】
シトルリンを含有する飲料の製造
L-シトルリン(協和発酵工業社製)1.28kg、エリスリトール3kg、クエン酸0.05kg、人工甘味料3g、香料0.06kgを液温70℃で水50Lに攪拌溶解し、クエン酸でpHを3.3に調整後、プレート殺菌を用いて滅菌して瓶に充填後、パストライザー殺菌し、飲料を製造する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】図1は、線分スケール法を用いた評価における質問事項を表す図面である。線分の両端に基準となる表現を示す。
【図2】図2は、シトルリンの頻尿改善効果を表すグラフである。縦軸は体感指数の変化の平均値を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シトルリンまたはその塩を有効成分として含有する頻尿改善剤。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−179575(P2009−179575A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−18735(P2008−18735)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【出願人】(308032666)協和発酵バイオ株式会社 (41)
【Fターム(参考)】