説明

顆粒の製造方法

本発明は、セルロース含有繊維および分解された繊維を含むバイオ複合材料を含む顆粒の製造方法、分解された繊維を含むバイオ複合材料の製造方法における前記顆粒の使用、ならびに、本発明の方法により製造される細礫バイオ複合材料に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロース含有繊維およびバイオ複合材料(biocomposite)を含む顆粒の製造方法、分解された繊維を含むバイオ複合材料の製造方法における前記顆粒の使用、ならびに、本発明の方法により製造される顆粒に関する。
【背景技術】
【0002】
石油化学製品に由来する通常の複合材料に代わるものである環境に優しいバイオ複合材料は、一般に、マトリクス材料としての生分解性ポリマーと補強材としての生分解性充填剤からなる。デンプンは、石油由来のプラスチックに取って代わる最も有望な多糖ポリマーであり、豊富に存在すること及び生分解性の観点から、その望ましい特性の結果として、マトリクスポリマーとして一般的に利用されている。さらに、デンプンを水および他の可塑剤、典型的にはグリセロールと混合させた場合に、熱可塑性デンプン(TPS)として溶融加工可能である。その魅力的な物理的および化学的特性にも関わらず、商業生産においてデンプンを使用すると多くの複雑な問題が生じる。
【0003】
他の炭水化物および食用ポリマーと異なり、デンプンは、アミロースとアミロペクチンから成る、離散(discrete)半結晶性親水性粒子として生じ、デンプン粒と呼ばれる。アミロース成分は、加工可能性に悪影響を与える高い溶融粘度を有する。さらに、デンプンは吸湿性であり、経年劣化しやすく、それにより、デンプン含有製品の長期間の保存の間に、望ましくない構造変化と脱結晶化が生じるので、性質に劣化が生じる。それゆえに、従来の加工技術では、ポリマーが溶融状態になる前に熱劣化が起こるので、デンプンは一般に望ましくない。しかしながら、高温、せん断、及び水の特定の組み合わせを利用することにより、依然として非常に狭い加工手段ではあるが、デンプンは熱可塑性材料のように加工可能である。さまざまなタイプの可塑剤を添加することにより、生じるTPS材料の物理的および化学的特性が調節され得る。
【0004】
バイオ複合材料補強材として利用される生分解性充填剤は、植物細胞壁の大部分を構成する、セルロースである直鎖β-(1,4)-グルカンから比較的頻繁に誘導される。セルロース繊維は、事実上あらゆる技術分野において多様な用途のために一般的に利用されており、紙、パルプおよび繊維工業に限定されないのみならず、薬学においてや、加工産業においてさえもしばしば用途は見出される。したがって、セルロースの物理的および化学的特性に関して、相当な研究努力が行われてきており、かかる多糖の構造的組成と特性は非常によく知られている。植物細胞壁はセルロース繊維を含んでなり、セルロース繊維は、個々のセルロース鎖に由来するナノ繊維(ナノフィブリル)から成る。ナノ繊維は多大な魅力的な力学的特性を有し、その高い縦横比(aspect ratio)(最大で数マイクロメートルの長さとほぼ5〜100nm程度の幅を有する)により、かかるポリマーは合成繊維の有望な代替物となる。従来のセルロース繊維と比較して、複合材料における充填剤/補強材として、ナノサイズの繊維(すなわちナノ繊維)が有する最重要な利点は、充填剤が低含量であっても、力学的特性が改善されることである。
【0005】
セルロースのナノ繊維の抽出は、植物細胞壁の力学的分解に基づいた、本質的に困難な処理である。大きな機械力や強い加水分解などの様々な化学的前処理を適用しても、分解処理によっては、ほとんど常にナノ繊維の束が生じてしまい、非常に望ましい個々に区別されるナノ繊維は生じない(Saito et al., Communications, Biomacromolecules, Vol. 7, 2006)。
【0006】
溶融加工および他の従来的な加工工程は多くの産業、特には自動車産業および家具産業において主力となるものである。複合物質、特にナノ複合物質は、溶融加工に関して魅力的な出発原料を構成する。しかしながら、ナノ複合物質においては、充填剤含量が受け入れがたいほどに低く、高い溶融粘度に悩まされることとなる。この理由は、ナノ繊維の高い縦横比と特定の大きな表面積が高い溶融粘度を引き起こすからである。さらに、実行可能な反応系を可能にすることを意図した一般に使用される加工条件は、ナノ繊維含量が、例えば、約0.5%と、一般に非常に低く、このような含量では生じる複合物質の特性を有意には改善しない。
【0007】
例えば、溶媒鋳造(solvent casting)は、主として実験室における手法であり、とりわけ、凝集の問題に悩まされることとなり、その産業上の適合性は今のところ制限される(Svagan et al., Biomacromolecules, Vol 8, 2007)。
【0008】
セルロースのナノ複合材料を製造するための他の方法には、乾燥セルロースのナノ繊維網の含浸 (Nakagaito et al., Applied Physics A, Vol 80, 2005)と2つの熱可塑性シート間の乾燥セルロースのナノ繊維網の圧縮成形が挙げられるが、2つの方法は固有の問題を有する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Saito et al., Communications, Biomacromolecules, Vol. 7, 2006
【非特許文献2】Svagan et al., Biomacromolecules, Vol 8, 2007
【非特許文献3】Nakagaito et al., Applied Physics A, Vol 80, 2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、上記に示したような問題を解決し、既存の必要性を満足させること、すなわち、第1に、最も汎用的なマトリクスポリマー(デンプン)の望ましくない特性に反して、従来的な加工技術用の、効率的な生分解環境としての安価なバイオ複合材料の使用を可能にすること、第2に、セルロース含有繊維由来の、高比率のマイクロ繊維から成るセルロースを含むセルロースのナノ複合材料を得ることを可能にすることであって、ここで、ナノ複合材料は現在の技術と比較して高い強度及び剛性を有すること、そして、第3に、顆粒を製造するための新しい技術を提供して、ポリマーマトリクス内に均一に分散したナノ繊維が存在するナノ複合材料の製造を可能にすることである。したがって、本発明はセルロース含有繊維を含む顆粒の製造方法に関し、それにより、前記顆粒を望ましい(ナノ複合材料の)製品にさらに加工することを可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
より具体的には、本発明の方法は、セルロース含有繊維を前処理する工程、場合により前処理したセルロース含有繊維を洗浄および濾過して、前処理用薬剤と過剰な溶媒を除去する工程、少なくとも1種の熱可塑性ポリマーを前処理したセルロース含有繊維に添加する工程、および、最後に、前述の工程で得た混合物をコンパウンド化して、それにより前記顆粒を得る工程を含む。さらに、約5〜70%の前処理したセルロース含有繊維と約30〜95%の少なくとも1種の熱可塑性ポリマーを含んでなる顆粒もまた本発明の範囲内にある。さらに、本発明は、前記工程によって得ることができる顆粒、および分解されたナノ繊維および優れた特性を有する複合材料を産生するための本発明の顆粒の使用に関する。
【0012】
本発明は、過剰な機械力を必要とすることなく、適度な温度で実施される最適化された工程を用いて、セルロース含有繊維を含むパルプ由来の複合物質の製造のための、効率的で、迅速で、そして単純化された顆粒の製造を可能にする。さらに、一部には前記との関連で、本発明は、環境に優しいバイオ複合材料をもっぱら含んでなる生分解環境を利用すること、例えば溶融加工などの従来的な加工技術を利用することを可能にする。さらに、顆粒に含まれる繊維の大部分の分解は加工工程の間に実施され、粘度の増加は加工工程のぎりぎりまでは生じないので、粘度が増加する問題は除外される。これは、現在の技術である、第1に、石油化学系製品はほとんど常にマトリクスおよび充填剤として利用され、第2に、溶融粘度の増加により、マイクロ繊維から成るセルロースに基づいてナノ複合材料を利用することが、不可能でないとしても、あまりに現実的ではないことを暗示していることから、それとは対照的である。さらに、本発明の顆粒は、熱可塑性マトリクスにおいてマイクロ繊維から成るセルロースを含んでなる複合材料の製造のためのさまざまな出発原料を構成する。顆粒の製造方法のみならず顆粒の構成は、長期間の保存が可能であることを示唆するものであり、それは、輸送および加工目的のために非常に有利である。さらに、顆粒から得られる最終バイオ複合材料における、結果として生じるマイクロ繊維から成るセルロースは、例えば剛性および強度の増加などの、さまざまな望ましい特性を保有する。さらに、スケールアップ可能な個々の工程や、加工の簡便さ、スケールアップが可能な工程それ自体により、複合材料の製造のための迅速で確実なスケールアップが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】0及び6重量%の繊維(図1a)と0及び20重量%繊維(図1b)を有する試料の応力ひずみ曲線を示す図である。
【図2】従来のセルロース含有繊維と処理されたセルロース含有繊維を有する複合材料に関する、剛性の漸進的変化(evolution)と繊維含量の対比とを示す図である。40 rpmのスクリュー速度での押出。(■)はTPS + Tempo処理された繊維を表し、(▲)はTPS + パルプ繊維を表す。
【図3】従来のセルロース含有繊維と処理されたセルロース含有繊維を有する複合材料に関する、繊維含量に応じた引張強度の漸進的変化を示す図である。(■)はTPS + Tempo処理された繊維を表し、(▲)はTPS + パルプ繊維を表す。
【図4】異なる2つのスクリュー速度である40および80 rpmでの、6重量%の処理または未処理繊維を含有する複合材料の応力ひずみ曲線を示す図である。1 = TPS + 6% TEMPO処理されたパルプ繊維、40 rpm; 2 = TPS + 6% TEMPO処理されたパルプ繊維、80 rpm; 3 = TPS + 6% パルプ繊維、40 rpm; 4 = TPS + 6% パルプ繊維、80 rpm。
【図5】異なる2つのスクリュー速度である40および80 rpmでの、20重量%の処理または未処理繊維を含有する複合材料の応力ひずみ曲線を示す図である。1 = TPS + 20% TEMPO処理されたパルプ繊維、40 rpm; 2 = TPS + 20% TEMPO処理されたパルプ繊維、80 rpm; 3 = TPS + 20% パルプ繊維、80 rpm; 4 = TPS + 20% パルプ繊維、40 rpm。
【図6】処理セルロース含有繊維を含有する複合材料における繊維含量に応じたヤング係数(モジュール)(図6a)及び引張強度(図6b)の漸進的変化を示す図である。図6Aにおいて、(■)はTPS + TEMPO処理された繊維、40 rpmを表し、(○)はTPS + TEMPO処理された繊維、80 rpmを表す。図6Bにおいて、(□)はTPS + TEMPO処理された繊維、40 rpmを表し、(●)はTPS + TEMPO処理された繊維、80 rpmを表す。
【図7】元のセルロース含有繊維を含有する複合材料における繊維含量に応じたヤング係数(図7a)及び引張強度(図7b)の漸進的変化を示す図である。図7Aにおいて、(■)はTPS + パルプ繊維、40 rpmを表し、(○)はTPS + パルプ繊維、80 rpmを表す。図7Bにおいて、(□)はTPS + パルプ繊維、40 rpmを表し、(●)はTPS + パルプ繊維、80 rpmを表す。
【図8】TPSマトリックスおよびその最初の誘導体のTGA曲線を示す図である。
【図9】複合材料TPS + 20% PF(パルプ繊維)およびその最初の誘導体のTGA曲線を示す図である。
【図10】複合材料TPS + 20% TempoFおよびその最初の誘導体のTGA曲線を示す図である。
【図11】20重量%のセルロース含有繊維および処理されたセルロース含有繊維を有する、複合材料に関するTGA曲線の比較を示す図である。1 = TPS + TEMPO処理されたパルプ繊維、20%;2 = TPS + パルプ繊維、20%;3 = もっぱらTPSのみ(pure TPS)。
【図12】それぞれ、TPSのみのマトリクス(neat TPS matrix)、および20%の未処理および処理した繊維を有する2種の複合材料のDMA曲線を示す図である。1 = TPS + TEMPO処理されたパルプ繊維、20%;2 = TPS + パルプ繊維、20%;3 = もっぱらTPSのみ(pure TPS)。
【図13】低倍率(x200)における40 rpmで処理された、6%の繊維(T=処理済み 又は U=未処理)を有する複合材料のSEMイメージを示す図である。
【図14】2つの異なる倍率(x100およびx350)における40 rpmで処理された、20%のTEMPO処理された繊維を有する複合材料のSEMイメージを示す図である。
【図15】低倍率(x100)における40 rpmと80 rpmで処理された、TPSと20%の未処理繊維を有する複合材料のSEMイメージを示す図である。
【図16】異なる倍率(x45000およびx100000)における40 rpmで処理された、TPS + 20%の処理された繊維を有する複合材料のSEMイメージを示す図である。
【図17】少なくとも10日間、5% RHおよび50% RHにおいて試料を調整した後に得られた処理繊維を有する複合材料とTPSの応力ひずみ曲線を示す図である。1 = 5% RHでのTPS; 2 = 50% RHでのTPS + 20%処理された繊維;3 = 5% RHでのTPS + 20%処理された繊維;4 = 5% RHでのTPS + 6%処理された繊維;5 = 50% RHでのTPS + 6%処理された繊維;6 = 50% RHでのTPS。
【図18】少なくとも10日間、5% RHおよび50% RHにおいて試料を調整した後に得られた未処理繊維を有する複合材料とTPSの応力ひずみ曲線を示す図である。1 = 5% RHでのTPS; 2 = 5% RHでのTPS + 6%処理された繊維;3 = 5% RHでのTPS + 20%処理された繊維;4 = 50% RHでのTPS + 20%処理された繊維;5 = 50% RHでのTPS + 6%処理された繊維;6 = 50% RHでのTPS。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明はセルロース含有繊維を含んでなる顆粒の製造方法に関し、この顆粒により、個々に区別できるセルロース誘導のマイクロ繊維から成るセルロース(MFC)を含んでなる複合材料のそれに続く製造が可能になる。本発明はさらに、顆粒それ自体、さらにはセルロース含有繊維/ポリマー混合物におけるセルロース含有繊維由来のMFCの分解に関連した様々な目的のための顆粒の使用に関する。
【0015】
本発明の特徴、実施形態、または態様がマーカッシュの群の観点で記載されている場合、当業者は、マーカッシュの群の構成のいずれの個々の構成または亜群の観点において、本発明が同様にそれに関して記載されていることを理解する。当業者はさらに、マーカッシュの群の個々の構成または亜群のいずれもの組み合わせの観点において、本発明が同様にそれに関して記載されていることを理解する。さらに、本発明の態様および/または実施形態の1つとの関連で記載される実施形態および特徴が本発明の他のあらゆる態様および/または実施形態に対して変更するべきところは変更して同様に適用され得ることに留意すべきである。例えば、顆粒の製造方法に関連して記載される熱可塑性ポリマーおよび様々なタイプのセルロース含有繊維の前処理が、当然に、本発明それ自体に全面的に応じて、本発明のバイオ複合材料の製造方法に照らして変更するべきところは変更して適用される。
【0016】
本明細書の記載および実施例から明らかであるように、用語「顆粒」は4μm〜1cmの範囲にあるサイズを有する、本発明の方法により製造される小粒子に関する。用語「セルロース含有繊維」はセルロース含有繊維、例えば、化学パルプおよび/または熱機械パルプ、化学‐熱機械パルプ、および/またはセルロースを含む任意の他の材料を含んでなる適切な材料源から得られる繊維状の物質に関する。用語「生分解環境」、「分解媒体」、「熱可塑性ポリマー」および「熱可塑性マトリクス」は実質的には交換可能に使用され、セルロース含有繊維の分解が生じる媒体に関する。用語「マイクロ繊維から成る」、「ナノ繊維から成る」、「ナノ繊維」および「ナノ繊維から成る繊維」、「マイクロ繊維から成るセルロース」は、1から200μmの範囲にある長さと5から1000nmの範囲にある幅を有する、セルロース含有繊維の分解から得られる繊維に関する。用語「下流における分解(downstream disintegration)」および「下流における処理(downstream processing)」は、改変されたセルロース繊維が完全または部分的にセルロースのナノ繊維に分解される、前記顆粒の処理に関する。
【0017】
第1に、本発明は、セルロース含有繊維を含んでなる顆粒の製造方法に関し、ここで、該方法は(a)セルロース含有繊維を前処理して、電荷を導入し、および/または、細胞壁を膨張させて、下流における分解を容易にする工程;(b)少なくとも1種の熱可塑性ポリマーを前処理されたセルロース含有繊維に添加する工程;および(c)最後に、得られた混合物をコンパウンド化して、それにより前記顆粒を得る工程を含む。最終的には、セルロース含有繊維は、分解の程度に応じて、性質に応じたマイクロ繊維から成るセルロースに似た、より小さくてより強度のある単位へと分解することが意図される。
【0018】
例えば、前処理用薬剤および過剰な溶媒を除去するために、洗浄および濾過工程を場合により含めてもよい。さらに、任意の均質化工程(b’)を工程(b)と工程(c)の間に実施して、混合物のさらなる処理を容易にすることが可能である。
【0019】
工程(c)を当業者に既知のたくさんの技術/機器、例えば単軸または複軸のスクリューを使用した押出、射出成形、動翼機(rotating blade machine)、バッチ混合、均質化および/または圧縮成形を用いて実施してもよい。
【0020】
本発明において利用される熱可塑性ポリマーは、限定はされないが、アミロペクチン、アミロース、純粋ジャガイモアミロペクチン、ポリ乳酸、ポリヒドロキシ酪酸、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリビニルクロライド、ポリエステル、ポリアミド、熱可塑性エラストマー、加硫用の、天然ゴム、合成ゴム、射出成形可能な熱硬化性樹脂およびポリカプロラクトン、および/またはそれらの任意の組み合わせを含む群から選択されてもよい。さらに、熱可塑性ポリマーの様々な組み合わせを本発明において利用してもよく、それは、ある種の組み合わせが潜在的に分解媒体に対して、変更された、望ましい特性を与えるからである。
【0021】
本発明の方法は、セルロース含有繊維顆粒の製造を促進して生じるナノ繊維の特性を最適化するために、少なくとも1種の非揮発性可塑剤を添加する工程を含んでもよい。非揮発性可塑剤は、限定はされないが、低分子量の炭水化物、スクロース、グルコース、フルクトース、ポリエチレングリコール、尿素、グリセロール、ソルビトール、および/またはアミド系可塑剤、および/またはこれらの任意の組み合わせを含む群から選択されてもよい。非揮発性可塑剤とともに、または単独のいずれかで、例えば水などの揮発性可塑剤を分解媒体に添加することは、既に存在する水が十分ではない場合に代替手段となり得る。可塑剤の添加は例えばデンプンなどのような、ある種のポリマーに関してより関連性があってよいが、可塑剤を含めることは同様に他の種類の熱可塑性ポリマーについても有益であろう。さらに、処理を促進するために、例えばステアリン酸、グルテン、および/またはステアリン酸マグネシウム、および/またはこれらの組み合わせなどのような加工助剤を熱可塑性ポリマーとセルロース含有繊維の混合物に添加してよい。加工助剤は0〜15%、好ましくは0〜5%(w/w)の範囲にある濃度で存在してもよく、好ましくは0〜5%(w/w)でのステアリン酸であってよい。非揮発性溶媒に対する熱可塑性ポリマーの比率はそれぞれ10〜6と10〜1の間であってよい。非揮発性溶媒に対する熱可塑性ポリマーの比率は好ましくはそれぞれ10〜3であってよい。これらに類似して、水が揮発性可塑剤として添加される場合には、同様の比率が関係する。とりわけUV防護、安定化、および/または顔料に関してプラスチックに使用される他の一般的な添加剤は、材料組成の一部となってよい。
【0022】
本発明のセルロース含有繊維の前処理は、例えば酸化、加水分解、酵素前処理および/または例えばポリエチレングリコール(PEG)などのような細胞壁を膨張させる適当な化合物の添加などの、たくさんの手法のいずれか1つを用いて実施してもよい。酸化方法は、限定はされないが、TEMPO/NaClO/NaBr酸化、カルボキシメチル化、および/またはカチオン変性法(cationic modification method)を含む群から選択されてよい。例えば、TEMPO/NaClO/NaBr酸化は、水にセルロース含有繊維を懸濁すること、TEMPOおよび臭化ナトリウムを添加すること、および最後に液滴の態様で次亜塩素酸ナトリウムを添加して、反応を開始させることを通して実施される。グルクロン酸の形成によって生じるpHの変化は水酸化ナトリウムの添加によって中和されて、約pH10でpHは維持される。セルロース含有繊維の化学的前処理としては酸化が非常に有利でありかなり温和な条件しかそれは要求しないが、その理由は下流における処理工程に生かせるかもしれない繊維膨張を生じさせるからである。そうではあるが、当業者に既知の、上述したような、細胞壁を膨張させ、および/または、電荷を導入する他の方法もまた使用してよい。
【0023】
工程(c)の混合物における繊維の最終濃度は0.1〜70%、好ましくは10〜70%、より好ましくは20〜70%、いっそうさらに好ましくは30〜70%の範囲におけるいずれかであってよく、できるだけ高いのが好ましい。高いセルロース含有繊維含量を有する顆粒を得ることは本質的に難しいが、高含量の繊維は複合物質の特性の改善と相関しているので、最大量の繊維を有する顆粒を得ることは非常に望ましい。本願発明の手法の主要な利点の1つは、セルロース含有繊維の分解が処理前には生じず、処理中に生じるので、より高含量のナノセルロースが生じることが可能であることである。分解したMFCを含む顆粒は、さらなる処理のために、純粋(neat)熱可塑性プラスチック、熱硬化性樹脂またはゴムに添加される、マスターバッチとして使用してもよい。
【0024】
顆粒に含まれるセルロース含有繊維は実質的に非分解であってもよく、またはわずかな程度だけ分解されていてもよい。実質的に非分解の繊維を含む顆粒は、例えば、個々に区別化されたナノ繊維を含んでなる複合物質を生成するためのそれに続く製造における高い可制御性、および操作特性の改善などの観点において多くの利点を有する。さらに、処理工程の間に繊維の分解が生じるという事実は、まさに最後の段階まで溶融粘度が増加しないことを暗示するものであり、不可能ではないにしろ、ある意味で扱いにくい材料を使用して従来的な技術で処理することを可能にする。しかしながら、分解されたセルロース含有繊維を含んでなる顆粒もまた本発明の範囲内にある。
【0025】
本発明はさらに前述の方法のいずれかによって生産される顆粒に関する。
【0026】
マイクロ繊維からなるセルロースと少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを含んでなるバイオ複合材料の製造方法はさらに本発明に従うものである。本発明の方法は、セルロース含有繊維を前処理することによりマイクロ繊維から成るセルロースへと、下流における分解を促進する工程、少なくとも1種の熱可塑性ポリマーを、前処理したセルロース含有繊維に添加する工程、熱可塑性ポリマーと前処理したセルロース含有繊維を含んでなる混合物をコンパウンド化して顆粒を製造する工程、および、最後に顆粒をバイオ複合材料中に処理する工程を含んでよい。下流を製造する工程を含む方法は、別の場所での、または別の機関による後続する生産のための中間体産物としての顆粒の貯蔵および輸送、最適化した処理工程および販売を考慮すれば、潜在的に有利であろう。
【0027】
しかしながら、本発明と合致するマイクロ繊維から成るセルロースおよび少なくとも1種の熱可塑性ポリマーを含んでなるバイオ複合材料を製造するためのさらなる別の方法は、セルロース含有繊維を前処理することにより、マイクロ繊維から成るセルロースへと、下流における分解を促進する工程、少なくとも1種の熱可塑性ポリマーを、前処理したセルロース含有繊維に添加する工程、少なくとも1種の熱可塑性ポリマーと前処理したセルロース含有繊維を含んでなる混合物を処理してバイオ複合材料にする工程を含む。少なくとも1種の熱可塑性ポリマーと前処理したセルロース含有繊維を含む混合物のかかる直接的処理は、とりわけ、より合理化された(streamlined)処理工程において潜在的な利点を伴い得る。
【0028】
上述の方法のためのセルロース含有繊維の前処理は、酸化、加水分解、酵素的処理、および/または細胞壁を膨張させ、及び/もしくは電荷を導入するのに好適な化合物の添加の少なくとも1つを含む群から選択してもよい。
【0029】
本発明に従うバイオ複合材料を製造するための方法におけるコンパウンド化工程は、押出、射出成形、混合、均質化、切断、破砕、及び圧縮成形を含む群から選択される少なくとも1種の技術を用いて実施してよい。これと類似して、少なくとも1種の熱可塑性ポリマーと前処理したセルロース含有繊維を含んでなる混合物を処理してバイオ複合材料にする工程は、押出、加熱プレス、射出成形、混合、均質化および圧縮成形を含む群から選択される少なくとも1種の技術を用いて実施してよい。
【0030】
本発明は、また、本発明にしたがう方法のいずれかにより製造されるバイオ複合材料にも関する。
【0031】
本発明はさらに約5〜70%の前処理したセルロース含有繊維と約30〜95%の熱可塑性ポリマーを含む顆粒に関する。さらに、熱可塑性ポリマーの種類やセルロース含有繊維含量などの因子に応じて、顆粒は可塑剤および加工助剤および他の添加物を含んでよい。例えば、少なくとも1種の非揮発性可塑剤が、約5〜35%の範囲にある濃度で含まれてもよい。さらに、少なくとも1種の揮発性可塑剤が約5%〜35%の範囲にある濃度で、さらには場合により、約0〜5%の加工助剤が、顆粒に含まれてもよい。
【0032】
本発明に使用される熱可塑性ポリマーは、制限はされないが、アミロペクチン、アミロース、純粋ジャガイモアミロペクチン、ポリ乳酸、ポリヒドロキシ酪酸、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリビニルクロライド、ポリエステル、およびポリカプロラクトン、および/またはそれらの任意の組み合わせ、及び熱可塑性エラストマー、加硫用ゴム、および射出成形もしくは圧縮成形用の熱硬化性樹脂を含む群から選択されてもよい。さらに、様々な組み合わせの熱可塑性ポリマーを本発明において利用してもよく、それは、ある種の組み合わせが潜在的に分解媒体に対して、変更された、望ましい特性を与えるからである。さらに、様々な組み合わせの熱可塑性ポリマーを本発明において利用してもよく、それは、ある種の組み合わせが潜在的に分解媒体に対して、変更された、望ましい特性を与えるからである。
【0033】
前述したように、顆粒は、さらに、少なくとも1種の顆粒を含むことによって、生じるナノ繊維の特性を最適化し、処理を容易にしてもよい。非揮発性可塑剤は、限定はされないが、低分子量の炭水化物、スクロース、グルコース、フルクトース、ポリエチレングリコール、尿素、グリセロール、ソルビトール、および/またはアミド系可塑剤、および/またはこれらの任意の組み合わせを含む群から選択されてもよい。例えば水または他の種類の水溶液などの揮発性可塑剤を、顆粒の可塑化を促進し、顆粒の特性を改善させるために、単独または非揮発性可塑剤と組み合わせてのいずれかで、組み合わせてもよい。揮発性可塑剤を別に添加して顆粒の一部を形成してもよく、またはセルロース含有繊維用の溶媒として既に揮発性可塑剤が存在していてもよい。さらに、顆粒を得ることを容易にし、下流における処理をさらに改善するために、例えばステアリン酸、グルテン、および/またはステアリン酸マグネシウム、および/またはこれらの任意の組み合わせなどの加工助剤を下流反応物の一部として形成させてもよい。
【0034】
加工助剤は0〜15%、好ましくは0〜5%(w/w)の範囲にある濃度で存在してもよく、好ましくは0〜5%(w/w)でのステアリン酸であってよい。非揮発性溶媒に対する熱可塑性ポリマーの比率はそれぞれ10〜6と10〜1の間であってよい。非揮発性溶媒に対する熱可塑性ポリマーの比率は好ましくはそれぞれ10〜3であってよい。揮発性可塑剤に関しても同様に類似の比率が関係する。
【0035】
顆粒に含まれるセルロース含有繊維は、例えば、限定はされないが、TEMPO/NaClO/NaBr酸化、カルボキシメチル化、イオン性溶媒酸化、および/またはカチオン変性法を含む群から選択されるたくさんの酸化方法のいずれかを用いて、酸化を介して前処理されてもよい。さらに、加水分解及びPEGなどの適当な変性剤の添加などの当業者に既知の前処理手法もまた本発明の範囲内にある。
【0036】
本発明はさらに、例えば、単軸または複軸のスクリュー押出および/または射出成形を含む群から選択される方法を用いて、分解された繊維を含む複合物質を製造するための方法においてなど、様々な目的のための前記顆粒の下流における使用に関する。さらに本発明における使用は一般に既知の技術を用いた複合物質の製造に関するが、当業者に既知の前記顆粒に関する他の使用は当然に本発明の範囲内にある。
【実施例】
【0037】
材料および方法
純粋ジャガイモアミロペクチンをLyckeby AB (Kristianstad, Sweden)から得た。純度約87%のグリセロールをMerck (Darmstadt, Germany)から得た。ステアリン酸をSigma Aldrichから得た。未乾燥さらし亜硫酸パルプをNordic Paper Seffle AB (Sweden)から得た。材料の混合をBrabender Plasticorder (Duisburg, Germany)で行った。顆粒の押出をAXON AB Plastic Machinery (Nyvang, Sweden)製の単軸スクリュー押出機を用いて実施した。押出物の機械的特性を200Nのロードセルを装備したMinimaterial Tester 2000を用いて引張に関して測定した。動力学的機械的分析試験をTA Instruments製のDMA Q800機器を用いて実施した。熱重量分析および示差走査熱量測定をMETTLER TOLEDO Instrumentで行った。Hitachi S-4800走査型電子顕微鏡を押出された顆粒の可視化のために利用した。
【0038】
セルロース含有繊維の改変
[実施例1]
未乾燥の叩解(beaten)木材パルプ(乾燥重量10g)を750mlのH2Oに分散させた。2,2,6,6-テトラメチルピペリジン1-oxyl (TEMPO) (0.125g)および臭化ナトリウム(1.25g)を50 mLの脱イオン水に溶解させて、その後に、セルロース繊維懸濁液に添加した。10重量%の次亜塩素酸ナトリウム(NaOCl)溶液(50 mmol)を1 M塩酸(HCl)を用いてpH10まで調製した。TEMPOを介した酸化をスラリーにNaOCl溶液を添加することによって開始させ、水酸化ナトリウム(NaOH)溶液(0.5 M)を添加して調整して、pH10で室温で反応を進行させた。NaOHを用いたpHの調整が必要ない場合には、15 mLのエタノールを用いて反応をクエンチさせ(quenched)、次いでHCl溶液を用いてpHを7〜8まで中和する。その後、繊維を濾過を通して十分に洗浄した。
【0039】
[実施例2]
繊維のカルボキシメチル化
未乾燥の叩解木材パルプ(乾燥重量10g)を繰り返し洗浄して、エタノールで溶媒交換し、100 mLエタノールで濾過する。溶媒交換した繊維をモノクロリク酢酸(monochloricacetic acid)/イソプロパノール(1g/50 mL)の溶液中に30分間浸す。繊維を水酸化ナトリウム(NaOH) (1.6 g)、メタノール(50 mL)、及びイソプロパノール(200 mL)の加熱溶液中に移す。60分間反応を進行させた後に繊維を脱イオン水、酢酸溶液(0.1 M)、そして脱イオン水に分散および濾過させて洗浄する。最後に、カルボキシメチル化繊維を重炭酸ナトリウム溶液(4重量%)に60分間漬けて、その後に、脱イオン水で十分にそれらを洗浄する。
【0040】
[実施例3]
繊維の酵素的前処理
(pHが7±0.2であるようにKH2PO4及びNa2HPO4の溶液から調製された250 mL)リン酸緩衝液中に未乾燥精製(refined)針葉樹パルプ(100g)を分散させる。エンドグルカナーゼ(1.7μl)を添加し、2時間50℃でインキュベーションさせ、この時間の間、試料を30分ごとに手作業で混合する。パルプを脱イオン水で洗浄した後に、30分間80℃でエンドグルカナーゼで変性させる。再度脱イオン水で洗浄後、精製機で繊維を精製して、前処理済み繊維を得る。
【0041】
a. 試料の調製
デンプン、グリセロールおよび水を、10:6:6〜10:1:1の間の様々な比率、特には10:3:3で混合して、生分解環境を調製した。0〜15%の範囲にある様々な濃度でステアリン酸を混合物中に入れた。様々な酸化手法を用いて水溶液中でセルロース含有繊維を酸化させたところ、生分解環境に添加した、酸化した繊維の割合は0〜70%(セルロース含有繊維/デンプン重量)の間であり、主としては20%であった。
【0042】
分解媒体を有する酸化した繊維の混合を、3つの異なる加熱ゾーン(それぞれ、120℃、105℃および90℃)を有するBrabender Plasticorderにおいて実施した。得られた混合物を場合により一晩保管して、顆粒への変換のために動翼機へと移す前に、より粘性が少なく、かつ扱いやすくした。動翼機は本質的に材料が添加される場所である供給ゾーン、複数の動翼、定常の穴径を有する除去可能な格子、および顆粒を回収するための除去可能な容器を含んでなる。
【0043】
b. 顆粒の押出
顆粒の押出を、5つの加熱ゾーンを備え、かつ20rpm〜100rpmの範囲にあるスクリュースピードを有する単軸スクリュー押出機を用いて実施した。供給ゾーンからダイス(die)までの温度は140℃、140℃、150℃、130℃および95℃にセットされた。
【0044】
c. 特徴付け ‐ 機械的特性
押出工程の直後に、少なくとも10日間、それぞれ、50%および23℃の、管理された相対湿度(RH)および温度で、押出物を調整部屋中に貯蔵した。
【0045】
条件付きの環境が変化した部分も考慮して、試料をカットした後に少なくとも10日間5% RHおよび21℃で塩(salt)とともにデシケーターに保存した。周囲相対湿度および温度をデシケーター中に存在する特別な装置を用いて測定した。試料を試験前に口を閉じたバッグ中に個々に保管し、引張試験をまさに実施するときにのみ開封した。
【0046】
試料の機械的特性を200Nのロードセルを装備したMinimaterial Tester 2000を用いて引張に関して測定した。押出物は標準的な形状であった。交差ヘッドスピード(cross-head speed)は全ての特性に関して5 mm/分であった。
【0047】
ヤング係数、引張強度、破断点伸度、およびさらに破壊エネルギーをMinimatソフトウェアを用いて計算した。結果は5〜8試料に対する平均をとった。
【0048】
d. 特徴付け ‐ 密度測定
40 rpmで押し出した各試料に関して密度を計算したが、6つの試料に関してのみ80 rpmで押出した。その理由は、より高いスクリュースピードで処理した押出物に関する密度の何らかの違いを検出するためであった。
【0049】
各試料の体積をデジタルキャリパー及び厚さ計を用いて容量を測定することにより得た。これらの測定を各容積に対して行った。密度を試料の質量をその体積で割ることにより得た。
【0050】
e. 特徴付け ‐ 動力学的力学分析(DMA)
DMA試験をTA Instruments製のDMA Q800装置で行った。試料を試験前に15分間105℃でDMAチャンバー中で調整した。3℃/分の温度傾斜で25℃〜300℃の張力で試料を試験した。
【0051】
全試料の体積は約20x5x[0.3〜0.7]mm3であった。得られた結果を確かめるために試験を2回行なった。
【0052】
f. 特徴付け ‐ 熱重量分析(TGA)
TGAをMETTLER TOLEDO Instrumentで行った。試験を50 ml/分のN2の不活性雰囲気下、10℃/分の傾斜で25℃〜700℃の温度範囲に対して実施した。
【0053】
g. 特徴付け ‐ 示差走査熱量測定(DSC)
DSCをMETTLER TOLEDO Instrumentで行った。試験を60 ml/分のN2の不活性雰囲気下、10℃/分の傾斜で-50℃〜300℃の温度範囲に対して実施した。
【0054】
h. 特徴付け ‐ 走査型電子顕微鏡(SEM)
0.5 kVで操作して、日立S-4800の走査型電子顕微鏡を用いて亀裂表面の2次元電子像を得た。試料を炭素テープを用いて金属容器中に設置し、3〜4 nmの層の金で被覆した。
【0055】
結果および議論
最初に、デンプン:グリセロール:水の比率100:50:50 (w/w/w)を選択して熱可塑性マトリックスを製造した。100:50:50の試料の加工における、ある種の困難性の結果として、特に押出機への顆粒の供給と生じる材料の態様により(5重量%の加工助剤を有してさえ非常にゴムのようであり(rubbery)粘着性がある)、別の比率を見つけなければならなかった。
【0056】
あまりに低量のグリセロールでは加工の困難性へと陥ることが知られており、過剰なグリセロールではグリセロールが滲出し得る。
【0057】
元のスクリュースピードは全ての試験に関して40rpmであった。0, 6及び20重量%の繊維(処理済または未処理)を含む試料の応力ひずみ曲線を図1に表す。スクリュースピードとして40 rpmで製造した全ての試料の力学的特性および密度の再現を表1に示す。曲線から理解可能であるように、処理された繊維を含む試料は、改変されていないセルロース含有繊維を有する試料よりも優れた特性を有する。異なる複合材料の力学的挙動の相違は、セルロース含有繊維と比較して20重量%の処理された繊維を添加することによりいっそう強調される。応力ひずみ曲線はまた、処理された繊維を含む材料が、繊維を添加することでより脆弱となることを示す。対照的に、マトリクスにおける未処理のセルロース含有繊維の添加により、破断点伸度およびE係数(モジュール)に小さな変化(減少)のみが見られる。表1から理解できるように、複合材料TPS + 20% TempoFの弾性係数(モジュール)は複合材料TPS + 20%PFの弾性係数の約9倍高く、それらはそれぞれ、489 Mpaと55 MPaである。未処理繊維を有する複合材料と比較して複合材料TPS + 20%TempoFに対する引張強度は約2倍である。引張強度はTPS + 20%PFとTPS + 20% TempoFに関してそれぞれ8.36 MPaと14.88 MPaである。
【0058】
【表1】

表1. TPSとセルロース含有繊維(処理済または未処理)で製造し、40 rpmで押出した複合材料の密度および力学的特性。少なくとも10日間調整のために50% RHと23℃で。
【0059】
複合材料の破壊エネルギー(work-to-fracture)を応力ひずみ曲線下において面積から評価した。表1より、破壊エネルギーの値は何らの傾向も伴わないようにみえることが理解できる。しかしながら、破壊エネルギーに関して得られた最高値は、複合材料TPS + 1% TempoFとTPS + 6% TempoFに対してそれぞれ3.14 MJ/m3と3.12 MJ/m3であった。複合材料TPS + 20% PFに関してはより低い値である2.86 MJ/m3もまた観察されたが、これは、セルロース含有繊維を含む複合材料において得られた最高値でもあった。もしこれらの値のみを考慮に入れるならば、処理および未処理繊維の存在による破壊エネルギーの改善が実際に見て取れる。しかし、他の値が全く異なっているのでこれらを真実としてみなすことはできない。
【0060】
20重量%の処理された繊維を有する試料は最低の破壊エネルギーを示し、これは、他の材料に比べてこの材料がもっとも脆弱な力学的挙動を有することを意味する。さらに、この脆弱な挙動は最低の破断点伸度、最高のヤング係数および最高の引張強度によっても支持され、それらは、それぞれ、13.65 %、14.88 MPaおよび489.19 MPaである。
【0061】
図2および図3は重量%での繊維含量に応じた複合材料のE係数と引張強度を表す(PAP基準)。
【0062】
再度、図2において、(処理および未処理セルロース含有繊維を有する)2種類の複合材料に関するヤング係数の漸進的変化における著しい違いが理解されよう。未処理セルロース含有繊維を有するこれらの試料は、繊維含量が増加すると剛性においてわずかな減少を示す。
【0063】
20%のセルロース含有繊維を有する複合材料はTPSマトリクスそれ自身よりも低いヤング係数を有する。この結果は実際に予期せぬものであったが、それは、ヤング係数は、何らの充填剤が存在しないものよりも高含量のセルロース含有繊維において少なくとも良好であるはずだったからである。TPSマトリクスおよび残りの無作為配向性の充填剤網における亀裂の大きな分散および拡散により、弾性係数におけるかかる低下へとつながり得る。
【0064】
しかしながら、図3では両方の種類の複合材料に関して引張強度に増加が見られる。増加は処理された繊維の場合により顕著である。処理および未処理セルロース含有繊維に関して、20%の繊維含量では、複合材料はそれぞれ14.88 MPaおよび8.36 MPaの引張強度を示す。処理された繊維+ TPS複合材料の引張強度は元のセルロース含有繊維+ TPS複合材料に関するそれのほぼ2倍高い。さらに、20重量%での未処理セルロース含有繊維を有する試料の引張強度値は、他のと比較して大きな標準偏差を特に有する。
【0065】
未処理セルロース含有繊維を含む試料のと比較して、TEMPO酸化繊維を含む試料の力学的特性の重要な増加は、酸化処理の効果を裏付ける。セルロース繊維の酸化はTPSマトリクスにおけるそれらのより良好な分散およびそれらの分解にも貢献するかもしれない。
【0066】
さらに、異なるスクリュースピードで押出された複合材料間の力学的な相違が調査された。より高いスクリュースピードが、処理されたセルロース含有の分解処理に好影響を与えるかどうかを評価するために、80 rpmのスクリュースピードが選択された。より高いスクリュースピードは押出機内のせん断を増加させて、より良好な分解を誘導するであろう。しかし、高いせん断はまた、熱可塑性デンプンがかなり不安定で、それに続く還元特性により加水分解にさらされ得るので、TPSマトリクスを分解させる可能性がある。
【0067】
図4および図5はそれぞれ6%の繊維(両方の種類)と20%の繊維(両方の種類)を有する40および80rpmで処理された異なる複合材料の応力ひずみ曲線を示す。
【0068】
一見してわかるように、スクリュースピードを増加させても、複合材料の力学的特性における有意な改善は観察されない。反対に、20%のセルロース含有繊維を有する試料を除いては、より高いスクリュースピードで力学的特性の減少が存在する。表2に見られるように、ヤング係数と引張強度は、生産の間により高いせん断によって実際に改善されているように思われる。ヤング係数は40 rpmで54.71 MPaから80 rpmで79.79 MPaまで増加する。引張強度は40 rpmで8.36から80 rpmで12.17 MPaまで増加する。
【0069】
特性の全体的な減少と比較してかかる複合材料の特性におけるこの固有の増加はTPSマトリクスにおける繊維のより良好な均質化によっておそらく説明可能であろう。かかるより良好な分散はこの挙動を説明し得る低含量の空洞(void)と結び付く。複合材料TPS + 20% PFの押出は非常に困難であり、押出物はダイスから出てくるのが困難であった。押出機のシリンダー(barrel)に沿ったせん断応力の増大は、この試料のゆっくりとした製造を確かに引き起こす高含量のセルロース含有繊維によって誘導される、かかる分散と誘導をも改善させ得る。
【0070】
【表2】

表2. 異なる2つのスクリュースピードである40 rpmと80 rpmに対する複合材料TPS + 繊維(両方の種類)のヤング係数と引張強度。
【0071】
図6および図7は、異なる2つのスクリュースピードである40および80 rpmに関しての、繊維含量に対する弾性係数と引張強度の漸進的変化を示す。TEMPO酸化繊維を含む複合材料に関して、40から80 rpmへのスクリュースピードの増大では、予期された結果は提供されなかったことが理解できる。対照的に、より高いせん断はより低い力学的特性を提供した。しかしながら、変性されていないセルロース含有繊維を含む複合材料に関して、より高いせん断は、より良好な力学的特性へとつながる複合材料の物理的特性を改善させるようである。さらに、処理繊維を有する複合材料に関しての両方の力学的特性の漸進的変化が、より高いせん断でさえ、同じ傾向を維持させたが、より低い値であった。
【0072】
表2にあるように、処理繊維を有する複合材料のE係数および引張強度はスクリュースピードを増加させるとより低い値をとる。しかし、複合材料における繊維の量がより高い場合には特性の減少はより顕著ではなくなる。一方で、複合材料TPS + 1% TempoFに関して、E係数は40 rpmと80 rpmに対してそれぞれ106.89 MPaと48.04 MPaであり、すなわち、80 rpmでは40 rpmでの値の約50%である。他方で、複合材料TPS + 6% TempoF に関して、E係数は40 rpmと80 rpmに対してそれぞれ203.66 MPaと160.53 MPaであり、すなわち、80 rpmでは20%のみの減少である。
【0073】
(処理または未処理繊維を有する)2種の複合材料に関するより高いスクリュースピードでの挙動の相違は、カルボキシレート基を有する表面改変繊維の取り込みにおそらくは起因するものである。この取り込みは、TPSマトリクスの加水分解に貢献するものであろうが、それは、構造内のナノ繊維の個別化によって誘導される処理済み繊維内の促進された水分浸透のためである。
【0074】
力学的特性の役割を結論付けるための、TPSマトリクスへの処理繊維の導入は、未処理繊維の取り込みと比較して複合材料の力学的特性に大きな影響を与えた。特性は、元のセルロース含有繊維と比較して、低含量(20%のみまたはそれ未満)の処理繊維でさえ有意に改善された。かかる改善は、押出中の処理繊維の良好な分解処理によって説明され得る。
【0075】
TGAは複合材料の主要な成分;PAP、グリセロールのみならずセルロース含有繊維およびTEMPO酸化セルロース含有繊維に関して実施される。グリセロール、PAPおよびセルロース含有繊維の分解温度はそれぞれ246℃、298℃および342℃である。しかしながら、セルロース含有繊維は2つの工程の分解を示すように思えた:第1の分解温度はセルロース鎖の脱重合に相当し、残りの炭化物(char)の脱重合に相当する第2の分解工程は450℃で開始した。さらに、TEMPO酸化繊維の分解温度はより低いにように思われる。
【0076】
TPSマトリクスのみ(neat TPSマトリクス)の質量(mass)の漸進的変化を図8に示す。第1の誘導体は317℃で大きなピークと290℃で小さなピークを有する。20%のセルロース含有繊維を含有する複合材料のTGAを図9に示す。それは、TPSのみに関して、270℃で小さなピークと312℃で大きなピークといった同様なパターンを示す。20%の処理されたセルロース含有繊維を含有する複合材料は、図10に示されるように298℃で分解が開始する。
【0077】
図11は20%充填剤を含有する複合材料のTGA曲線どうしの比較を示す。まず、約100℃で水を蒸発させた後に試料がより多くの重量を失ったので、マトリクスのみ(neat matrix)はより高い水分含量を有するのかまたはグリセロールをも消失したのかが決定できる。
【0078】
その上、マトリクスのみの前に複合材料は分解し始めることは注目に値する。TEMPO酸化繊維を含有する複合材料は最低の分解温度を有する。しかしながら、複合材料はマトリクスのみよりもより少ない重量を失っているように思え、それは、複合材料が分解に対してより抵抗性があることを意味する。図11から、処理済繊維を含有する複合材料が未処理繊維およびマトリクスを含有する他の複合材料よりもゆっくりと重量を失うことが理解できる。これは、複合材料中に分解された繊維が存在することを暗示し得る。
【0079】
図12は温度を増加させたときの貯蔵係数(モジュール)(storage modulus)の漸進的変化を示す。繊維をTPSマトリクスへ添加させると係数(モジュール)の温度依存性が減少する。しかしながら、TPSマトリクス中の処理繊維の添加は元のセルロース含有繊維よりもより高い効果を有する。さらに、両方の複合材料の曲線は約225℃で同様の傾向を有するように思える。処理繊維を有する複合材料の曲線は劇的に低下して、他の複合材料の曲線の傾向に追随する。かかるターニングポイントはTPSマトリクスが溶解し始めた時となり得る。
【0080】
表3から、マトリクスのみおよびその複合材料であるTPS + 20% PFおよびTPS + 20% TempoFの貯蔵係数の値が160℃および280℃であることが示される。160℃で、マトリクスのみの貯蔵係数は206 MPaであり、20%の未処理繊維を有する複合材料に関しては342 MPaであり、20%の処理された繊維含有複合材料に関しては912 MPaである。TEMPO酸化繊維の添加により得られる貯蔵係数はマトリクスのみの場合の少なくとも4倍高いのみならず、未処理セルロース含有繊維を有する複合材料の貯蔵係数のよりもほぼ3倍高い。
【0081】
280℃で、TPSマトリクスの貯蔵係数は0.02 MPaであり、1.4 MPaの貯蔵係数を有する処理繊維を含有する複合材料に対照的である。これは実にマトリクスのみの70倍高い。未処理繊維を有する複合材料に関して、その貯蔵係数は160℃で344 MPaから280℃で0.19 MPaまで減少する。さらに、図12には、処理セルロース含有繊維を含有する複合材料の貯蔵係数が200℃後も定常であり、次いで増加することを明示している。マトリクスのみおよび元のセルロース含有繊維を有する試料の貯蔵係数は温度の増加に伴って減少し続ける。
【0082】
【表3】

表3: 異なる2つの温度である160℃および280℃でのマトリクスのみ、6%の処理繊維を有する複合材料および2種類の(処理または未処理の)20%の繊維を有する複合材料の貯蔵係数。
【0083】
最後に、処理繊維を有する複合材料は温度にあまり依存しない力学的挙動を有するようにみえることから、DMAは面白い結果を提供した。しかしながら、MFCを含有する複合材料の一般的な挙動は熱依存的な力学的挙動ではほとんどなく、温度増加を通しての、外見上の平らな漸進的変化と解釈される。したがって、処理繊維を含有する複合材料は、分解繊維の存在におそらくは起因して、異なる漸進的変化を有するが、「最大サイズ」の繊維が残存することもDMAは示した。
【0084】
複合材料の亀裂表面を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて調査した。図13は、同一倍率(x200)での6%未処理繊維および6%処理繊維を有する複合材料のSEM像を示す。6%セルロース含有繊維を有する複合材料の亀裂表面はたくさんの穴および大きな繊維を有することが明らかになった。穴は、引張応力にさらされた時の繊維の引っ張られるゾーンに相当する。さらに、6%の処理繊維を有する複合材料の亀裂表面は前のものとは完全に異なる。繊維分散はよりきめ細かくなり、存在する繊維の全般的な大きさはより小さく見える。
【0085】
図14はTPSおよび20%処理繊維を含有する試料の亀裂表面を示す。より低倍率では(x100)、セルロース含有繊維は亀裂表面とは区別することができない。より高倍率では(x350)、数μmの寸法を有する繊維とより小さな繊維が同定可能であり、処理繊維の一部が押出工程の間に分解されないでいることをそれは示す。
【0086】
40 rpmと80 rpmで処理した20%の未処理繊維を含有する繊維どうしの物理的な違いが図15で観察可能である。40 rpmのスクリュー回転速度で処理された試料は80 rpmで押出された試料と対照的に空洞(void)を示す。試料中の分散は最高の速度処理を行うことにより改善される。この観察は同一の複合材料に関して事前に得られた結果に直接関係する。力学的特性におけるかかる改善は複合物質の構造自身の改善に関係する。
【0087】
20%のTEMPO酸化繊維を含有する複合材料の構造は、TPSマトリクス中にナノサイズの繊維が存在するかを確認するためにより高倍率で研究された。得られた2つのSEM像を図16に示す。x45000およびx100000の倍率で複合材料を観察可能である。像は試料が確実にナノ繊維を含有することを示す。検出されたナノ繊維は20〜40 nmの範囲にある直径を有する。
【0088】
さらに、試料の周囲相対湿度の効果を研究した。この目的のために、(処理および未処理繊維を有する)両方の種類の複合材料由来の試料の一部を湿度制御機を有するデシケーター中に入れた。相対湿度を5% RH(±1%)で維持し、温度を22℃から19℃まで変化させた。試料を少なくとも10日間調整した。
【0089】
貯蔵後に、試料の力学的特性をできるだけすばやく試験した。周囲相対湿度が約50%RHであったので、試験室における周囲環境からの影響を避けるために試料を別々の封をしたバッグ中に入れた。引張試験をセットして準備したときに、試料をバッグから取り出して試験した。
【0090】
図17および図18は2つの異なる調整環境(5% RHおよび50% RH)にさらした複合材料の両方の種類の応力ひずみ曲線を示す。一見して、相対湿度の変化に対する両方の複合材料の力学的挙動が完全に異なることが観察できる。未処理セルロース含有繊維を含有する複合材料は、処理されたセルロース含有繊維を含有する複合材料よりも周囲相対湿度により感受性があるようにみえる。しかしながら、これらの感受性は繊維含量を増加させると減少する。TPSマトリクスのみならず未処理セルロース含有繊維を有する複合材料は、50% RHでそれらの挙動と比較した場合に、破断点で高い応力と低い伸長を示す。
【0091】
試験した複合材料のヤング係数と破断時の応力値を表4に示す。TPSマトリクスは周囲湿度に非常に影響を受けやすい;そのE係数は50% RHと5% RHに対してそれぞれ約100 MPaから1.1 GPaとなる。その引張強度は50% RHで5 % RHの7倍も高い。試料TPS + 6% PFの力学的挙動は純粋なマトリクスに類似しており、20% PFを有する試料のみでは、それらの力学的特性の増大は最低である。
【0092】
処理セルロース含有繊維を含有する複合材料に関して、挙動の相違はより明らかでないようにみえる。試料TPS + 6%処理繊維のヤング係数は5% RHに置かれた場合でさえ変化はせず、値はそれぞれ50% RHと5% RHで203.66 MPaと197.8 MPaであった。さらに、後者の複合材料の引張強度はそれぞれ50% RHと5% RHで9.31 MPaと9.47 MPaであった。20%の処理繊維を含有する複合材料に関して、5% RHでの調整はその特性を低下させる。50% RHに関して、E係数と破断点での応力はそれぞれ489.19と14.88 MPaであった。5% RHでは、E係数と破断点での応力はそれぞれ225.7と11.50 MPaであった。
【0093】
したがって、TPSマトリクスにおける両方の種類の繊維は、5% RHでの複合材料の挙動に大きな影響を有した。力学的挙動におけるかかる大きな変化は「抗可塑化(anti-plasticization)」と呼ばれる現象によって説明可能である。この現象は添加剤が低量(一般に<15%)で存在する場合に合成ポリマーにおいて一般に生じるものであるが、関与する機構は完全には明らかではなく、しかしながら、抗可塑化現象は伸張の減少と応力の増加に対応しているように思われる。
【0094】
【表4】

表4: 50% RHと5% RHで調整したTPSと複合材料のE係数と引張強度。
【0095】
5% RHで得られた力学的結果から、TPSマトリクス中に繊維を添加することはこの抗可塑化工程を回避することに役立つと本発明者は結論付けている。さらに、処理繊維を有する複合材料は周囲湿度にいっそう影響を受けないので、したがって、「抗可塑化」工程を抑える。
【0096】
ナノサイズの繊維の存在に起因して、処理繊維の複合材料はそれゆえに周囲湿度に対して影響を受けにくい。個々の繊維と分解媒体との間の相互作用により、おそらくは、セルロースナノ繊維によって影響を及ぼされる、膨張に関する制限された効果と強い分子間相互作用に起因して、湿度感受性の低下へとつながる。その結果、分解繊維を含有する複合材料は、セルロース含有繊維網と比較して、湿度のより低拡散性が原因で、50% RHで貯蔵中に獲得されるすべての湿度を放出することは恐らくできないであろう。したがって、処理繊維を有する複合材料は湿度に、より感受性が低く、それにより水からの有意な抗可塑化がない。
【0097】
結論として、TEMPO酸化セルロース含有繊維および未処理セルロース含有繊維を含有する熱可塑性マトリクスおよびかかるマトリクスの複合材料はスクリュー押出機を用いて押出されたが、かかる処理は様々な他の技術を用いても実施した。処理繊維を有する複合材料は未処理セルロース含有繊維を有する他の試料よりも有意に高い力学的および熱的特性を示した。複合材料の亀裂表面のSEM像は、処理繊維を有する複合材料の場合にはより小さなサイズとよりきめ細かい分散を有する繊維であることを明らかにした。ナノスケールおよびマイクロスケールの繊維の両方が発見された。可塑化デンプンマトリクスにおけるTEMPO酸化セルロースの押出による分解が生じていることを全ての試験が示した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース含有繊維を含んで成る顆粒の製造方法であって、以下の工程:
(a) セルロース含有繊維を前処理して下流における分解を促進してマイクロ繊維から成るセルロースへと変える工程;
(b) 少なくとも1種の熱可塑性ポリマーを工程(a)で得た前処理したセルロース含有繊維に添加する工程;
(c) 工程(b)で得た混合物をコンパウンド化して前記顆粒を得る工程
を含む方法。
【請求項2】
押出、射出成形、混合、均質化、切断、破砕、および圧縮成形を含む群から選択される少なくとも1種の技術を使用して工程(c)を実施する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
任意の均質化工程(b’)を工程(b)と工程(c)の間に実施する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1種の熱可塑性ポリマーはデンプン、純粋ジャガイモアミロペクチン、ポリ乳酸、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリビニルクロライド、ポリエステル、ポリアミド、熱可塑性エラストマー、加硫用の天然ゴム、合成ゴム、射出成形可能な熱硬化性樹脂化合物、および/またはこれらの任意の組み合わせを含む群から選択される、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1種の可塑剤が場合により工程(b)に含まれる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1種の加工助剤が場合により工程(b)に含まれる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
セルロース含有繊維の前処理は、酸化、加水分解、酵素的前処理、および/または細胞壁を膨張させ、及び/もしくは電荷を導入するのに好適な化合物の添加の少なくとも1つを含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
顆粒に含まれるセルロース含有繊維が実質的に非分解である、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法によって製造される顆粒。
【請求項10】
マイクロ繊維から成るセルロースと少なくとも1種の熱可塑性ポリマーを含んでなるバイオ複合材料の製造方法であって、以下の工程:
(a) セルロース含有繊維を前処理して下流における分解を促進してマイクロ繊維から成るセルロースへと変える工程;
(b) 少なくとも1種の熱可塑性ポリマーを工程(a)で得た前処理したセルロース含有繊維に添加する工程;
(c) 工程(b)の混合物をコンパウンド化して前記顆粒を得る工程;および
(d) 工程(c)の顆粒を処理して前記バイオ複合材料へと変える工程
を含む方法。
【請求項11】
マイクロ繊維から成るセルロースと少なくとも1種の熱可塑性ポリマーを含んでなるバイオ複合材料の製造方法であって、以下の工程:
(a) セルロース含有繊維を前処理して下流における分解を促進してマイクロ繊維から成るセルロースへと変える工程;
(b) 少なくとも1種の熱可塑性ポリマーを工程(a)で得た前処理したセルロース含有繊維に添加する工程;
(c) 工程(b)の混合物を処理してバイオ複合材料へと変える工程
を含む方法。
【請求項12】
セルロース含有繊維の前処理は、酸化、加水分解、酵素的処理、および/または細胞壁を膨張させ、及び/もしくは電荷を導入するのに好適な化合物の添加の少なくとも1つを含む、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1種の熱可塑性ポリマーはデンプン、純粋ジャガイモアミロペクチン、ポリ乳酸、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリビニルクロライド、ポリエステル、ポリアミド、熱可塑性エラストマー、加硫用の天然ゴム、合成ゴム、射出成形可能な熱硬化性樹脂化合物、および/またはこれらの任意の組み合わせを含む群から選択される、請求項10〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
押出、射出成形、混合、均質化、切断、破砕、および圧縮成形を含む群から選択される少なくとも1種の技術を使用して工程(c)を実施する、請求項10〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
押出、加熱プレス、射出成形、混合、均質化、および圧縮成形を含む群から選択される少なくとも1種の技術を使用して工程(d)を実施する、請求項10、12および13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
請求項10〜15のいずれか一項に記載の方法によって製造されるバイオ複合材料。
【請求項17】
約0.1%〜70%の間、好ましくは約10%〜70%の間、より好ましくは約20%〜70%の間、さらにより好ましくは約30%〜70%の間の前処理したセルロース含有繊維および約30〜95%の間の少なくとも1種の熱可塑性ポリマーを含んでなる顆粒。
【請求項18】
さらに少なくとも1種の可塑剤を含んでなる請求項17に記載の顆粒。
【請求項19】
さらに少なくとも1種の加工助剤を含んでなる、請求項17または18に記載の顆粒。
【請求項20】
熱可塑性ポリマーはデンプン、純粋ジャガイモアミロペクチン、ポリ乳酸、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリカプロラクトン、ポリビニルクロライド、ポリエステル、ポリアミド、熱可塑性エラストマー、加硫用の天然ゴム、合成ゴム、射出成形可能な熱硬化性樹脂化合物、および/またはこれらの任意の組み合わせを含む群から選択される、請求項17〜19のいずれか一項に記載の顆粒。
【請求項21】
複合材料を製造するための方法における請求項17〜20のいずれか一項に記載の顆粒の使用。
【請求項22】
分解繊維を含んで成る複合材料を製造するための方法における請求項17〜20のいずれか一項に記載の顆粒の使用。
【請求項23】
前記複合材料の製造方法が単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、三軸スクリュー押出機、および/または射出成形を含む群から選択される、請求項21または22に記載の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2013−510920(P2013−510920A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538790(P2012−538790)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際出願番号】PCT/SE2010/051239
【国際公開番号】WO2011/059386
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(509159171)スヴェトリー・テクノロジーズ・アーベー (6)
【Fターム(参考)】