説明

顆粒物、錠剤およびその製造方法

【課題】生薬の乾燥エキスを得る乾燥工程には、噴霧乾燥法が採用される。この工程においては、高温に保持した浸出液を高温で噴霧・乾燥するために、低融点の有効成分や精油成分が失われることが指摘されている。そのため、必ずしもこの生薬の浸出液と乾燥エキスが同等であるといえない場合がある。
【解決手段】天然物由来物質の浸出液又はその濃縮液の総添加量の一部を、特殊ケイ酸カルシウムの全量に加えて造粒攪拌して顆粒物を得、当該顆粒物にさらに前記浸出液又はその濃縮液の一部を加えて造粒攪拌して顆粒物を得ることを繰り返し、すべての前記浸出液又はその濃縮液を複数回に分けて前記特殊ケイ酸カルシウムに含ませたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生薬を浸出(以下「抽出」を含む。)した浸出液(以下「抽出液」を含む。)又はその濃縮液から得た顆粒物、錠剤およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
漢方や生薬抽出製剤の固形製剤(顆粒剤、錠剤、カプセル剤等)を加工する場合、乾燥エキスが利用されている。
【0003】
乾燥エキスとは、日本薬局方製剤総則においては、粗末とした生薬に適当な浸出剤を加え、一定時間冷浸、温浸またはパーコレーション法に準じて浸出し、その浸出液を濾過し、所定の方法で乾燥したものである。
【0004】
浸出には、水あるいはエタノールと水の混液(エタノール濃度:30%以下)を抽出溶媒とし、加熱(抽出溶媒の沸騰濃度以下)または冷浸が常法である。
【0005】
この工程で得られた浸出液は、遠心分離後、濾過装置により固液に分離される。
【0006】
医薬品業界において、浸出液と乾燥エキスの関係は、以下のように考えられている(参考文献:「医薬品製造販売指針2005」( 薬事審査研究会監修、株式会社じほう))。
【0007】
浸出液と乾燥エキスが、同じ生薬より構成されている場合、構成されている一部の生薬中の成分(指標成分構成生薬という。)の量を分析し、その値が同一であれば、両者は同一の構成であるとされる。浸出液とは、標準湯剤と呼ばれるものであり、構成されている生薬の約20倍の水を加え、30分以上加熱抽出し、濾過したものをいう。乾燥エキスとは、前記浸出液に乾燥工程を経て得られるものである。
【0008】
これら乾燥エキスを用いて顆粒物を製造する技術としては、既にケイ酸カルシウムに水を加え、均一に混合・分散させた後、乾燥エキスを加えて攪拌する方法が確立されている(例えば、特許文献1参照)。
【0009】
また、ケイ酸カルシウムおよび崩壊剤の混合物に水を加え、均一に混合・分散させた後、乾燥エキスを加えて攪拌して顆粒物を製造する方法もある(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−294533公報
【特許文献2】特開2002−326925公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、乾燥エキスには以下のような問題点が指摘されている。
1.工業的には、乾燥エキスを得る乾燥工程には、噴霧乾燥法が採用される。この工程においては、高温に保持した浸出液又はその濃縮液を高温で噴霧・乾燥する際に、低融点の有効成分や精油成分が失われることが指摘されている。そのため、必ずしも浸出液又はその濃縮液と乾燥エキスとが同等であるといえない場合がある。
2.浸出液又はその濃縮液から乾燥エキスを得るための濃縮・乾燥工程は、製造設備に関する費用が高く、また工程管理項目も多く、製造費用を高いものにしている。
3.さらに、噴霧乾燥法では、非常に大規模な設備で製造するために、製造に際しては製品の相互の汚染を防ぐための大掛かりな洗浄が必要となる。このため、製造ロットの切り替えに時間がかかり、本来の製造工程のみならず、この洗浄工程を含めた製造工程時間が長く、製造工程費用をさらに押し上げることになる。
【0012】
これらの問題点は、製造した固形製剤が有効であるかどうか、また安価なコストで製造できるかどうかなど大きな問題を含んでいる。
【0013】
本発明は、浸出液又はその濃縮液を利用して、乾燥工程を経ずに最終の固形製剤とすることにより、このような問題を解決することを課題とする。
【0014】
乾燥工程を経ずに調整した浸出液又はその濃縮液には、多くの浸出溶媒が含まれている。例えば、一般的には、生薬を浸出した浸出液中には、25〜30%の固形分と、70〜75%の液体分(抽出溶媒が水であれば水)とで構成されている。
【0015】
仮に、薬効上必要な浸出液の量が11ml/日(嵩比重1.13)ならば、固形分量が27.5%の場合、この浸出液の中には9012mgの水が存在していることになり、この水の処理が大きな問題となる。
【0016】
通常、固形製剤を製造するために使用する賦形剤が水を保持できる量は、水に不溶性の賦形剤の場合では自重の最大15%であり、水溶解性の賦形剤の場合では自重の最大10%程度である。
【0017】
実際の製剤工程においては、生薬を浸出した浸出液中には多くの水成分が含まれているため、製剤として一般的な用量の賦形剤に生薬の浸出液を添加すると、賦形剤と浸出液との混合物が泥状になるか、あるいは賦形剤が溶解してしまい、固形製剤の製造は不可能である。
【0018】
賦形剤が10%の水の保持ができる場合、9.01gの水を保持するには、90.1g以上の賦形剤が必要となる。しかしながら、このような条件で錠剤を作った場合、錠剤中の賦形剤成分が占める割合が高くなり過ぎる。例えば、250mgの錠剤で、360錠/日以上を服用しないと薬用効果が得られないこととなり、服用数が極端に多すぎてとても実用に供することができない。
【0019】
乾燥工程を経ないで調整した浸出液又はその濃縮液を固形製剤の工程に使うためには、この問題を解決しなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0020】
そこで本発明は、天然物由来物質の浸出液又はその濃縮液の総添加量の一部を、特殊ケイ酸カルシウムの全量に加えて造粒攪拌して顆粒物を得、当該顆粒物にさらに前記浸出液又はその濃縮液の一部を加えて造粒攪拌して顆粒物を得ることを繰り返し、すべての前記浸出液又はその濃縮液を複数回に分けて前記特殊ケイ酸カルシウムに含ませたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
このようにした本発明は、浸出液又はその濃縮液を乾燥させることなく顆粒に直接導くことができるもので、浸出液又はその濃縮液を、その薬効成分をすべて変化させることのない固形製剤として製造することができるという効果が得られる。
【0022】
また、本発明により造粒された顆粒から常法に従い製造された錠剤は、色むらが少なく、含有成分は均一である。さらに、本発明に従い製造された錠剤は、例えば11mlの浸出液(嵩密度1.13で12430mgに相当)を260mgの錠剤で20錠(合計5200mg)に収めることができるものであり、十分に実用に供することができる。また、難溶性の含有成分が、15分で85%以上水に溶出するなど、溶出性が高く、薬効が確実であるという効果が得られる。
【0023】
さらに、乾燥エキスを製造するための乾燥工程や装置の洗浄工程等を必要としないために、製造工程時間および製造工程費用を大幅に削減することができる効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、ケイ酸カルシウムの一種である花弁状結晶構造を有する特殊ケイ酸カルシウム(以後、株式会社トクヤマの商品名である「フロ−ライトRE」という。)を用いて、2段階に分けて造粒することにより浸出液又はその濃縮液から直接造粒することを可能にしたものである。なお、この造粒工程は2段階以上であれば何段階でもよい。
【0025】
典型的な数値を用いて具体的に説明すると、攪拌造粒機の攪拌容器に100質量部のフローライトREを入れ、そこに浸出液又はその濃縮液736質量部(水を537質量部含む。)を、付属の攪拌装置を稼働しながらゆっくり加え、浸出液又はその濃縮液を含む水過負荷状態のフローライトREの粉体をつくる。
【0026】
攪拌造粒機の自動排出機能を用いて排出し、排出した粉体を乾燥機に投入して乾燥する。乾燥後、ふたたび攪拌造粒機内に戻し、機械に付属する攪拌装置を稼働し均一な第1段階顆粒物を製造する。
【0027】
このできあがった第1段階顆粒物は、ゆるみ嵩密度で0.32g/mlのもので、造粒顆粒量は299質量部になる。
【0028】
この第1段階顆粒物に、浸出液又はその濃縮液300質量部(水を219質量部含む。)を投入し、付属の攪拌装置を稼働して造粒する。造粒後、攪拌造粒機の自動排出機能を用いて排出し、排出した粉体を乾燥機に投入して乾燥し、第2段階顆粒物を得る。乾燥後、整粒機を用い、整粒できる。
【0029】
この第2段階顆粒物は、ゆるみ嵩密度で0.73g/mlのもので、造粒顆粒量は375質量部になる。
【0030】
以上のように、浸出液又はその濃縮液を、2段階に分けて処理することにより、浸出液を乾燥させずにそのまま使用して、顆粒に導くことができた。具体的には、1036質量部の浸出液を、100質量部のフローライトREを用いて、浸出液を濃縮や乾燥せることなく、浸出液をそのまま使用して、浸出液を2段階に分けて処理することにより、375質量部の顆粒に、直接導くことができた。
【0031】
この顆粒は、常法に従い、滑沢剤や必要に応じて崩壊剤等を混合して錠剤にすることができる。
【0032】
以下に、本発明の内容をさらに詳しく説明する。
【0033】
本発明の実施例として用いた浸出液又はその濃縮液は、8種類の生薬(ジオウ、タクシャ、ボタンピ、ブクリョウ、サンシュユ、サンヤク、ケイヒ、修治ブシ)を、熱湯にて抽出・濾過し、さらにエタノールを加え、澱粉等を分離除去した後、エタノールを蒸発除去して製造したエキスであり、医薬品原料として厚生省から承認を得ているものであり、「別紙規格 生薬エキスH」をいう。また、生薬エキスHは、特許3615023記載の方法により製造することができる。
【0034】
攪拌造粒とは、「第十五改正 日本薬局方解説書」(日本薬局方解説書編集委員会編、廣川書店、2006年7月)の製剤総則の散剤、錠剤の項に記載されている造粒法(押出造粒法、転動造粒法、流動層造粒法、湿式および乾式破砕造粒法)のうち、実施例では水または結合剤を含む溶液を投入して行う流動層造粒法および湿式破砕造粒法に相当する。
【0035】
具体的には、容器の中に造粒する粉体を入れたのちに、水または結合剤を含む溶液を投入し、さらに、その後に容器に具備されている装置により攪拌することを原則とする湿式の造粒法である。
【0036】
攪拌方法には様々な形態を有するものがあり、容器の上部から回転アームによるもの、容器の底部にある回転翼によるものと、さらに、これに異方向の攪拌を加えるものがある。
【0037】
造粒に使用される装置として現在市販されているものとしては、次のような商品が挙げられる。バーチカルグラニュレータ、ハイシェアーミキサ、ハイスピードミキサ、プラネタリーミキサ、チョッパー式プラネタリーミキサ等である。
【0038】
好ましく用いられる装置としては、バーチカルグラニュレータやハイスピードミキサがあげられる。
【0039】
第1段階顆粒物や第2段階顆粒物を製造するときに用いる乾燥機は、公知の各種乾燥機により乾燥することが可能であり、通常、流動層乾燥機または棚式乾燥機が使用される。
【0040】
好ましくは、工程時間の短い流動層乾燥機が用いられる。
【0041】
特殊ケイ酸カルシウムは、医薬品添加物規格や化粧品原料基準外成分規格に記載されている化学名「ケイ酸カルシウム」の規格に適合するものの中で、大きな細孔径と細孔容積を有する花弁状結晶構造を持つジャイロライト型ケイ酸カルシウムである。具体的には、株式会社トクヤマの商品名「フローライトRE」として流通している特殊なケイ酸カルシウムである。
【0042】
その化学式は、2CaO・3SiO2・mSiO2・nH2O(式中、1<m<2、2<n<3である。)として示される。
【0043】
造粒は、第1段階造粒と第2段階造粒に分けて行われるもので、このように複数回に分けて造粒するところに本発明の特長がある。
【0044】
生薬エキスHの1日当たりの服用量は、11mlであるが、その量を服用するには、フローライトRE100質量部に対して、浸出液又はその濃縮液の固形分が27質量%の場合で、1036質量部が製造に使われる。天然物であるために固形分量は変化するが、その場合は、浸出液又はその濃縮液の使用量を調整することが可能である。
【0045】
第1段階造粒工程においては、使用する浸出液又はその濃縮液の55〜80質量%が使用される。好ましくは57〜78質量%が、より好ましくは68〜72質量%が使用される。質量部にすると、フローライトRE100質量部に対して495〜880質量部である。第2段階造粒工程以降の造粒工程を含めた最終的に使用される浸出液又はその濃縮液の合計は、フローライトRE100質量部に対して900〜1100質量部である。
【0046】
なお、浸出液又はその濃縮液の合計を900〜1100質量部とした理由は、900質量部未満であると、多段造粒をしなくても造粒が可能であるが、フローライトREの量が多すぎて好ましくないからであり、1100質量部より多いと、フローライトREに対して水分が多すぎてうまく造粒することができないからである。
【0047】
また、浸出液又はその濃縮液は液体部分と固体部分から構成されるが、フローライトRE100質量部に対する浸出液又はその濃縮液の合計を液体部分で換算すると、657〜803質量部である。
【0048】
第1段階造粒で使用する浸出液又はその濃縮液の量は、投入後のフローライトREと浸出液又はその濃縮液の第1段階顆粒物が、粉体として、攪拌造粒機付属の排出機能で排出できるか否かの観点と、第2段階造粒時において、造粒時間が十分にとれるか否かの観点により決められる。
【0049】
第1段階造粒で使用する浸出液又はその濃縮液の量が多すぎると、フローライトREと浸出液又はその濃縮液の混合物は泥状となり、攪拌造粒機から付属の排出機能での排出が困難であり、顆粒の製造ができない。また、第1段階造粒で使用する浸出液又はその濃縮液が少ないと、第2段階造粒時に使用する浸出液又はその濃縮液の量が多くなり、造粒時間が長くとれないために均一な顆粒ができず、さらには、最終製剤である錠剤中の含有量にバラツキができ、商品とすることができない。
【0050】
第2段階造粒工程においては、第1段階造粒工程で使用した浸出液又はその濃縮液の残りを使用する。この工程は、最終製剤に直結する工程であるために製造時間を十分にとることが最終製剤での含有成分の均一性を保証するのに重要である。
【0051】
したがって、第2段階造粒工程の造粒時間は、5分以上であることが求められる。好ましくは8分以上であるとよい。
【0052】
ゆるみ嵩密度とは、容器中に粉体を圧密せずにゆるやかに充填することにより得られるみかけの密度をいう。ゆるみ嵩密度の測定方向は、「第十五改正、日本薬局方解説書」(日本薬局方開設書編集員会編、廣川書店、2006年7月)で規定される疎充填時におけるみかけの密度を測定する方法に従った。
【0053】
ゆるみ嵩密度は、エキス投入量等で変化するため規定されないが、第1段階顆粒物では0.10〜0.50g/mlの範囲が好ましく、0.25〜0.40g/mlの範囲がより好ましい。第2段階顆粒物では、0.50〜0.90g/mlの範囲が好ましく、0.70〜0.80g/mlの範囲がより好ましい。
【0054】
前記顆粒物から錠剤を製造する場合には、前記顆粒物を整粒後、添加物として滑沢剤を加えて混合し、打錠用顆粒を生成する。このとき、必要に応じて崩壊剤を添加することができる。
【0055】
1錠中の滑沢剤や崩壊剤の配合量は、錠剤の打錠時の杵臼への付着性や崩壊性に基づいて決定される。
【0056】
滑沢剤としては、ステアリン酸金属塩(マグネシウム、カルシウム)、タルク、硬化ヒマシ油、ステアリルフマル酸ナトリウム、ショ糖脂肪酸エステル等が使用できる。
【0057】
滑沢剤の配合量については、1錠剤重量の0.1質量%〜5質量%であり、望ましくは0.3質量%〜2質量%である。
【0058】
崩壊剤としては、バレイショデンプン、部分アルファ化デンプン、結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、カルボキシルメチルスターチナトリウム、架橋型ポリビニルピロリドン、デンプングリコール酸ナトリウム等が使用できる。好適には、スーパー崩壊剤と呼ばれる架橋型ポリビニルピロリドンである。
【0059】
崩壊剤の配合量については、1錠剤重量の3質量%〜18質量%であり、好適には5質量%〜15質量%である。
【0060】
製造用打錠用顆粒は、打錠機を用いて錠剤にする。なお、打錠用顆粒を錠剤にする方法は、従来からある一般的な方法であるため、説明は省略する。
【0061】
このようにして製造した錠剤に、フィルムコーティングまたは糖衣コーティングを施すコーティング工程を設けてもよい。なお、錠剤へのコーティングについては、その工程および使用する素材は限定されない。
【0062】
本発明の顆粒物および錠剤は、医薬品、医薬部外品、食品(健康機能食品(特定保健用食品 栄養機能食品など)、一般食品)などとして使用することができる。
【0063】
なお、上記では、生薬を例にして説明したが、天然物由来物質であれば特に制限されるものではなく、その他の漢方処方、あるいは天然物またはそれらの混合物等でもよい。
【0064】
具体的には、漢方処方としては、例えば、「一般用漢方処方の手引き」(厚生省薬務局監修、薬事時報社、1975年)に記載されるものがあげられる。具体的には、漢方薬の小柴胡湯、柴苓湯、補中益気湯、柴朴湯、牛車腎気丸、加味逍遥散、麦門冬湯、八味地黄丸、大建中湯、小青竜湯、六君子湯、当帰芍薬散、十全大補湯、葛根湯、柴胡桂枝湯、桂枝茯苓丸、釣藤散、大柴胡湯、柴胡加竜骨牡蛎湯、猪苓湯、温経湯、黄連解毒湯、防已黄耆湯、五苓散、白虎加人参湯、芍薬甘草湯、半夏白朮天麻湯、人参養栄湯、防風通聖散、半夏瀉心湯、小柴胡湯加桔梗石膏、桂枝加朮附湯、荊芥連翹湯、半夏厚朴湯、加味帰脾湯、温清飲、清肺湯、大黄甘草湯、十味敗毒湯、当帰飲子、辛夷清肺湯、当帰四逆加 呉茱萸生姜湯、麻黄附子細辛湯、乙字湯、葛根湯加川キュウ辛夷、安中 散料、消風散、桂枝加竜骨牡蠣湯、麻黄湯、人参湯、苓桂朮甘湯、桂枝湯、麻杏甘石湯、清上防風湯、桃核承気湯、小建中湯、桂枝加芍薬湯、 桔梗湯、四逆散、酸棗仁湯、桂枝茯苓丸料加ヨクイニン、治頭瘡一方、 七物降下湯、竹茹湯胆湯、神秘湯、五虎湯等である。
【0065】
生薬または天然物由来のエキスとしては、具体的には、例えば、アガリクス、アマチャヅル、イチョウ葉、ウイキョウ、ウコン、エゾウコギ、オリーブ、ナタネニンジン、カミツレ、カリン、カンゾウ、ガラナ、キキョウ、アロエ、クコ、クマザサ、クワ、ケイヒ、シソ、ショウガ、セイヨウオトギリソウ、セイヨウニンジン、ダイダイ、トウガラシ、トウチュウカソウ、トチュウ、ドクダミ、ナツメ、ニンニク、ハトムギ、ベニバナ、ホップ、マカ、マムシ、ヤマブシタケ、レイシ、ローヤルゼリー、アカメガシワ、イカリソウ、インヨウカク、ウイキョウ、ウヤク、エンゴサク、オウギ、オウゴン、オウセイ、オウレン、オンジ、カッコン、ガジュツ、クコシ、ゲンチアナ、コウジン、ゴオウ、ゴミシ、ゴシュユ、サイコ、サイシン、サンザシ、サンシシ、サンシュユ、サンソウニン、サンヤク、ジオウ、シャゼンシ、シュクシャ、ショウキョウ、ジリュウ、セネガ、センキュウ、センブリ、ソウジュツ、ソヨウ、タイソウ、チクセツニンジン、チンピ、トウキ、トコン、トシシ、トチュウ、ナンテンジツ、ニクジュヨウ、ニンジン、バクモンドウ、ハンピ、ホコツシ、マオウ、マタタビ、ムイアプラマ、モッコウ、ヨクイニン、リュウガンニク、リュウタン、ロクジョウ等がある。
【0066】
本発明の浸出液又はその濃縮液としては、乾燥工程を経ないで通常公知の浸出・濃縮方法で調整したものであれば特に制限されず、浸出液としては浸剤、煎剤、チンキなど、濃縮液としては軟エキス、流エキスなどが使用できる。
【0067】
また、上記において、浸出は、必ずしも熱水煎出である必要はなく、冷浸等の他の方法でも無論よい。また、浸出に用いる溶媒は、浸出する漢方・生薬に応じて好適な溶媒を採用することができ、例えば、水および水とエタノールの混合液(エタノール濃度:30%以下)である。また、浸出液の濃縮は、減圧濃縮など通常公知の濃縮方法を採用することができる。
【実施例】
【0068】
以下に本発明の実施例を説明する。
【0069】
実施例において、使用した造粒機は、株式会社パウレック社製高速攪拌造粒機VG−25型である。
【0070】
第1段階造粒(顆粒)時の攪拌回転速度はそれぞれ、底部攪拌装置(ブレード)が60回転/分(以下、rpmとする。)底部攪拌装置と異方向の攪拌装置(クロススクリュー)が2000rpmである。
【0071】
第1段階造粒終了後の乾燥した第1段階造粒物を粉砕するときの攪拌回転速度はそれぞれ、底部攪拌装置(ブレード)が300rpm、底部攪拌装置と異方向の攪拌装置(クロススクリュー)が3500rpmである。
【0072】
第2段階造粒(顆粒)時の攪拌回転速度はそれぞれ、底部攪拌装置(ブレード)が80rpm、底部攪拌装置と異方向の攪拌装置(クロススクリュー)が3000rpmである。
【0073】
それぞれの回転スピードは、造粒物の流動性、造粒の進行に伴い適宜に調節した。
【0074】
乾燥には、フロイント株式会社製の流動層乾燥機FLO-05型を使用した。乾燥に使用する空気量は、造粒部の流動状態に応じて任意に変更した。乾燥空気温度は、80℃とした。
【0075】
整粒は、ダルトン社製のPOWER MILLを用い、0.8mmのスクリーンを使用した。
【0076】
打錠は、菊水株式会社製のVIGRO 512HUK型を使用し、回転盤40回転で圧縮を行った。臼杵は、直径8mm、R6.5を使用した。
【0077】
実施例1
特殊ケイ酸カルシウム(フローライトRE)の100質量部(800g)を、バーチカルグラニュレータの容器に投入する。ブレード60rpm、クロススクリュー2000rpmで回転しながら、生薬エキスHの736質量部(水を537質量部含む、5888g)を4等分し、15秒毎に4回投入して混合した。これにより得られた顆粒を、バーチカルグラニュレータの排出部分から自動排出させた。なお、この4等分は必ずしも4等分に限るものではなく5等分、6等分でもよく、その投入回数もその等分数に応じて投入すればよい。
【0078】
排出した顆粒を流動層乾燥機に入れて乾燥し、乾燥後の顆粒を、第1段階顆粒物とした。仕込みに対する収量は約95%であった。
【0079】
この第1段階顆粒物を、再度、バーチカルグラニュレータの容器に投入し、ブレード300rpm、クロススクリュー3500rpmの運転条件で顆粒を処理した。処理後のゆるみ嵩密度は、0.32g/mlであった。
【0080】
そこで、生薬アエキスHの300質量部(水を219質量部含む、2400g)を加え、ブレード80rpm、クロススクリュー3000rpmの運転条件で8分間造粒した。造粒後、この顆粒をバーチカルグラニュレータの排出部から自動排出させた。
【0081】
排出された顆粒を流動層乾燥機に入れて乾燥し、乾燥後の顆粒を、第2段階顆粒物とした。
【0082】
この第2段階顆粒物の第1段階顆粒物に対する収量は約95%であった。また、第2段階顆粒物の800μmのふるいを通過させた後のゆるみ嵩密度は、0.73g/mlであり、色むらのない均一な顆粒であった。
【0083】
錠剤の製造
上記第2段階顆粒物(800μmのふるいを通過させた後の、ゆるみ嵩密度は、0.73g/ml)の100質量部に、崩壊剤として、クロスポビドン14質量部、滑沢剤として、ステアリン酸マグネシウム0.3質量部を加えて常法に従って打錠して良好な錠剤を得た。
【0084】
実施例2
実施例1の製造方法に従い、特殊ケイ酸カルシウム(フローライトRE)の100質量部(800g)に、第1段階造粒の生薬エキスHの投入量を800質量部(水を584質量部含む、6400g)として、第1段階顆粒物を得た。仕込みに対する収量は約95%であった。
【0085】
この第1段階顆粒物のゆるみ嵩密度は0.40g/mlであった。
【0086】
そこで、生薬エキスHの236質量部(水を172質量部含む、1888g)を加え、ブレード80rpm、クロススクリュー3000rpmの運転条件で5分間造粒した。造粒後、この顆粒をバーチカルグラニュレータの排出部から自動排出させた。
【0087】
排出された顆粒を流動層乾燥機に入れて乾燥し、乾燥後の顆粒を、第2段階顆粒物とした。
【0088】
この第2段階顆粒物の第1段階顆粒物に対する収量は95%であった。また、第2段階顆粒物のゆるみ嵩密度は0.70g/mlであり、色むらのない均一な顆粒であった。
【0089】
実施例3
実施例1の製造方法に従い、特殊ケイ酸カルシウム(フローライトRE)の100質量部(800g)に、第1段階増粒の生薬エキスHの投入量を600質量部(水を438質量部含む、4800g)として、第1段階顆粒物を得た。仕込みに対する収量は約95%であった。
【0090】
この第1段階顆粒物のゆるみ嵩密度は0.25g/mlであった。
【0091】
そこで、生薬エキスHの436質量部(水を318質量部含む、3488g)を加え、ブレード80rpm、クロススクリュー3000rpmの運転条件で12分間造粒した。造粒後、この顆粒をバーチカルグラニュレータの排出部から自動排出させた。
【0092】
排出された顆粒を流動層乾燥機に入れて乾燥し、乾燥後の顆粒を、第2段階顆粒物とした。
【0093】
この第2段階顆粒物の第1段階顆粒物に対する収量は95%であった。また、第2段階顆粒物のゆるみ嵩密度は0.75g/mlであり、色むらのない均一な顆粒であった。
【0094】
比較例1
特殊ケイ酸カルシウム(フローライトRE)100質量部(800g)を、バーチカルグラニュレータの容器に投入する。ブレード60rpm、クロススクリュー2000rpmで回転しながら生薬エキスH900質量部(水を657質量部含む、7200g)を4等分し、15秒毎に4回投入して混合したが、水分が多く、バーチカルグラニュレータの槽壁の付着が多く、さらに排出部から自動排出できず、顆粒状態が得られなかった。
【0095】
比較例2
特殊ケイ酸カルシウム(フローライトRE)100質量部(800g)を、バーチカルグラニュレータの容器に投入する。ブレード60rpm、クロススクリュー2000rpmで回転しながら生薬エキスH500質量部(水を365質量部含む、4000g)を4等分し、15秒毎に4回投入して混合した。この顆粒を、バーチカルグラニュレータの排出部から自動排出させた。排出した顆粒を流動層乾燥機に入れて乾燥した。
【0096】
乾燥後の顆粒を、第1段階顆粒物とした。仕込みに対する収量は約95%であった。
この第1段階顆粒物を、再度バーチカルグラニュレータの容器に投入し、ブレード300rpm、クロススクリュー3500rpmの運転条件で顆粒を処理した。処理後のゆるみ嵩密度は0.20g/mlであった。
【0097】
そこで、生薬エキスHの536質量部(水を391質量部含む、4288g)を加え、ブレード80rpm、クロススクリュー3000rpmの運転条件で第2段階の造粒を行った。造粒時間は2分間であった。
【0098】
第1段階造粒と第2段階造粒におけるエキス投入割合が適切でないため十分な造粒時間を確保することができず、造粒物に目視で色むらがあり、明らかに均一な顆粒とはならなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特殊ケイ酸カルシウム100質量部に対して天然物由来物質の浸出液又はその濃縮液を合計で900〜1100質量部加えて造粒された顆粒物であり、
前記浸出液又はその濃縮液の総添加量の55〜80質量%を特殊ケイ酸カルシウムに加えて造粒して第1段階顆粒物を得る工程と、
この第1段階顆粒物に残りの浸出液又はその濃縮液の一部を加えて造粒して顆粒物を得ることを、前記浸出液又はその濃縮液がなくなるまで複数回繰り返す工程とより製造されることを特徴とする顆粒物。
【請求項2】
特殊ケイ酸カルシウム100質量部に対して天然物由来物質の浸出液又はその濃縮液を合計で900〜1100質量部加えて造粒された顆粒物であり、
前記浸出液又はその濃縮液の総添加量の55〜80質量%を特殊ケイ酸カルシウムに加えて造粒して第1段階顆粒物を得る工程と、
この第1段階顆粒物に残りの浸出液又はその濃縮液の全量を加えて造粒して第2段階顆粒物を得る工程とより製造されることを特徴とする顆粒物。
【請求項3】
特殊ケイ酸カルシウム100質量部に対して天然物由来物質の浸出液又はその濃縮液をその液体部分として合計で657〜803質量部加えて造粒された顆粒物であり、
前記浸出液又はその濃縮液の総添加量の55〜80質量%を特殊ケイ酸カルシウムに加えて造粒して第1段階顆粒物を得る工程と、
この第1段階顆粒物に残りの浸出液又はその濃縮液の全量を加えて造粒して第2段階顆粒物を得る工程とより製造されることを特徴とする顆粒物。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかにおいて、天然物由来物質がジオウ、タクシャ、ボタンピ、ブクリョウ、サンシュユ、サンヤク、ケイヒ、修治ブシの8種類の生薬からなることを特徴とする顆粒物。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかにおいて、特殊ケイ酸カルシウムが、花弁状結晶構造をもつジャイロライト型ケイ酸カルシウムであることを特徴とする顆粒物。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれかで得た顆粒物に、滑沢剤および必要に応じて崩壊剤を配合してなる粉末を圧縮・成型して得ることを特徴とする錠剤。
【請求項7】
特殊ケイ酸カルシウム100質量部に対して天然物由来物質の浸出液又はその濃縮液を合計で900〜1100質量部加えて造粒する顆粒物の製造方法であり、
前記浸出液又はその濃縮液の総添加量の55〜80質量%を特殊ケイ酸カルシウムに加えて造粒して第1段階顆粒物を得る工程と、
この第1段階顆粒物に残りの浸出液又はその濃縮液の一部を加えて造粒して顆粒物を得ることを、前記浸出液又はその濃縮液がなくなるまで複数回繰り返す工程とよりなることを特徴とする顆粒物の製造方法。
【請求項8】
特殊ケイ酸カルシウム100質量部に対して天然物由来物質の浸出液又はその濃縮液を合計で900〜1100質量部加えて造粒する顆粒物の製造方法であり、
前記浸出液又はその濃縮液の総添加量の55〜80質量%を特殊ケイ酸カルシウムに加えて造粒して第1段階顆粒物を得る工程と、
この第1段階顆粒物に残りの浸出液又はその濃縮液を加えて造粒して第2段階顆粒物を得る工程とよりなることを特徴とする顆粒物の製造方法。



【公開番号】特開2011−195520(P2011−195520A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−65213(P2010−65213)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000000055)アサヒグループホールディングス株式会社 (535)
【Fターム(参考)】