説明

顆粒状カルボキシル基含有重合体の製造方法および顆粒状カルボキシル基含有重合体

【課題】 特定の中位粒子径を有し、嵩密度が大きく、かつ水に膨潤しやすい顆粒状カルボキシル基含有重合体を簡便に製造する方法を提供する。
【解決手段】 嵩密度が0.18〜0.28g/cmのカルボキシル基含有重合体100質量部に対して、比誘電率が2〜19の有機溶媒を下式の割合で混合、撹拌して造粒することを特徴とする顆粒状カルボキシル基含有重合体の製造方法。
〔−4Z+110〕≦Y≦〔−2Z+190〕
Y:比誘電率が2〜19の有機溶媒の使用量(質量部)
Z:有機溶媒の比誘電率

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顆粒状カルボキシル基含有重合体の製造方法およびそれにより得られる顆粒状カルボキシル基含有重合体に関する。さらに詳しくは、化粧品等の増粘剤として好適に使用しうる顆粒状カルボキシル基含有重合体の製造方法およびそれにより得られる顆粒状カルボキシル基含有重合体に関する。
【背景技術】
【0002】
化粧品等の増粘剤、パップ剤等の保湿剤、乳化剤や懸濁物等の懸濁安定剤等に用いられるカルボキシル基含有重合体としては、架橋型カルボキシル基含有重合体やアルキル変性カルボキシル基含有重合体等が知られている。架橋型カルボキシル基含有重合体としては、例えば、アクリル酸等のα,β−不飽和カルボン酸とポリアリルエーテルとの共重合体(特許文献1参照)、α,β−不飽和カルボン酸とヘキサアリルトリメチレントリスルホンとの共重合体(特許文献2参照)、α,β−不飽和カルボン酸とグリシジルメタクリレート等との共重合体(特許文献3参照)、α,β−不飽和カルボン酸とペンタエリスリトールアリルエーテルとの共重合体(特許文献4、特許文献5および特許文献6参照)、α,β−不飽和カルボン酸と(メタ)アクリル酸エステルとペンタエリスリトールアリルエーテルとの共重合体(特許文献7および特許文献8参照)等が知られている。
【0003】
アルキル変性カルボキシル基含有重合体としては、例えば、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体等が知られている。具体的には、例えば、特定量のオレフィン系不飽和カルボン酸単量体と特定量の(メタ)アクリル酸アルキルエステル(アルキル基の炭素数が10〜30)とを反応させた共重合体(特許文献9参照)、オレフィン系不飽和カルボン酸単量体と(メタ)アクリル酸アルキルエステル(アルキル基の炭素数が8〜30)とを反応させた共重合体(特許文献10参照)等が知られている。
【0004】
架橋型カルボキシル基含有重合体やアルキル変性カルボキシル基含有重合体等のカルボキシル基含有重合体を前記の用途に使用するためには、まずカルボキシル基含有重合体の均一な水分散液を調製し、その後アルカリで中和して0.1〜1質量%程度の中和粘稠液とする必要がある。しかしながら、前記カルボキシル基含有重合体は、通常、微粉末であるため水に分散させる際に塊状物(ママコ)を生じやすい。いったんママコが生成すると、その表面にゲル状の層が形成されるため、その内部に水が浸透する速度が遅くなり、均一な水分散液を得ることが困難となるという欠点がある。
【0005】
したがって、カルボキシル基含有重合体の水分散液を調製する場合には、ママコの生成を防ぐために、カルボキシル基含有重合体の粉末を水中に高速撹拌下で徐々に添加するという生産効率が悪い操作を必要とし、場合によってはママコの生成を防止するために特殊な混合装置を必要とする。
【0006】
また、前記カルボキシル基含有重合体は、通常、微粉末でかつ帯電しやすいため粉立ちが激しい。したがって、前記カルボキシル基含有重合体は取り扱いが難しいばかりでなく、作業環境上好ましくないという欠点がある。さらにカルボキシル基含有重合体の微粉末は嵩密度が小さく輸送コストの増加や広い保管場所を必要とする等の問題があった。
【0007】
そのため、顆粒状のカルボキシル基含有重合体の製造方法が、検討されている。
【0008】
通常、粉体の顆粒化には造粒機が用いられる。造粒機は造粒方法から混合造粒、強制造粒、熱利用造粒に大別される。
【0009】
混合造粒用の造粒機としては、流動層造粒機や転動造粒機といったものが挙げられ、気流や撹拌翼、転動等により粉体を流動させ、バインダーとなる液体を粉体へ均一に噴霧し顆粒体を製造する。これら混合造粒用造粒機をカルボキシル基含有重合体に応用しようとした場合、カルボキシル基含有重合体は非常に粒子径が細かく、嵩密度が小さいため気流や撹拌翼、転動により流動させることが困難である。またバインダーとして使用する液体は、水または極性有機溶媒が好ましいが、カルボキシル基含有重合体を流動させながら水または極性有機溶媒を噴霧するとカルボキシル基含有重合体が粘着性を帯び造粒機の内壁やバインダーを噴霧するノズルに付着したり、カルボキシル基含有重合体同士がくっついて大きな塊を形成したりする。
【0010】
強制造粒用の造粒機としては、圧縮成形造粒機、押し出し造粒機といったものを挙げることができる。カルボキシル基含有重合体を、強制造粒を利用して顆粒化した例としては、微粉末を圧縮成形装置にて圧縮し、粉砕する方法(特許文献11参照)等がある。しかしながらこの方法は、圧縮成形装置の圧力により、カルボキシル基含有重合体が過度に圧縮され、得られる顆粒状カルボキシル基含有重合体の水への膨潤性が悪化する等の問題を有している。
【0011】
熱利用造粒用の造粒機としては、スプレードライヤーを挙げることができる。しかしながらこの方法によるとカルボキシル基含有重合体をスプレー可能な粘度まで水または有機溶媒等で希釈する必要があり経済的でない上に、得られる顆粒が多孔質でないために水への溶解性が悪くなる等の問題を有している。
【0012】
一方、上記の造粒機を使わない顆粒化方法として、例えば高分子凝集剤の微粉末と水蒸気の湯気とを接触させて造粒する方法(特許文献12参照)、水溶性高分子微粉末を有機溶剤に分散させた後、水を添加し造粒する方法(特許文献13参照)、微粉状の水溶性高分子物質に滑剤と水とを同時的かつ連続的に供給し、ゲル体に造粒した後、粉砕する方法(特許文献14参照)等が知られている。
【0013】
しかしながら、特許文献12に記載の方法は、水蒸気の湯気が結露した水がカルボキシル基含有重合体と接触すると、カルボキシル基含有重合体が水に膨潤し最終的に得られる顆粒が無孔質となることから水への溶解性が悪くなる、また、粉体を落下させて水蒸気の湯気と接触させる方法では、カルボキシル基含有重合体は流動性が悪く均一に落下させることが困難であるとともに、粉体を落下させる際に大量の粉塵が発生するおそれがある、という問題がある。
【0014】
特許文献13に記載の方法は、有機溶剤に分散させた後に水を添加したときに含水したゲルが塊状化する、という問題がある。
【0015】
特許文献14に記載の方法は、使用用途によっては不要な滑剤を含んでおり、かつゲル体を経て造粒されることから、得られる顆粒が多孔質でないために水への溶解性が悪くなる、という問題がある。
【0016】
このため、特許文献12〜14に記載の方法を適用することは困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第2,923,629号明細書
【特許文献2】米国特許第2,958,679号明細書
【特許文献3】特開昭58−84819号公報
【特許文献4】米国特許第5,342,911号明細書
【特許文献5】米国特許第5,663,253号明細書
【特許文献6】米国特許第4,996,274号明細書
【特許文献7】特公平5−39966号公報
【特許文献8】特公昭60−12361号公報
【特許文献9】特開昭51−6190号公報
【特許文献10】米国特許第5,004,598号明細書
【特許文献11】国際公開第03/016382号パンフレット
【特許文献12】特開昭52−2877号公報
【特許文献13】特開昭52−136262号公報
【特許文献14】特開平3−143605号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の課題は、特定の中位粒子径を有し、嵩密度が大きく、かつ水に膨潤しやすい顆粒状カルボキシル基含有重合体を簡便に製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明は、特定の嵩密度を有するカルボキシル基含有重合体を、特定の比誘電率の有機溶媒と特定の割合で混合し、撹拌することにより、顆粒状カルボキシル基含有重合体が得られることを見出し完成された。すなわち、本発明は、
項1.嵩密度が0.18〜0.28g/cmのカルボキシル基含有重合体100質量部に対して、比誘電率が2〜19の有機溶媒を下式の割合で混合、撹拌して造粒することを特徴とする顆粒状カルボキシル基含有重合体の製造方法、
〔−4Z+110〕≦Y≦〔−2Z+190〕
Y:比誘電率が2〜19の有機溶媒の使用量(質量部)
Z:有機溶媒の比誘電率
項2.カルボキシル基含有重合体が、α,β−不飽和カルボン酸類を主構成単量体とする単量体成分を、不活性溶媒中で重合させることにより得られるカルボキシル基含有重合体である項1に記載の顆粒状カルボキシル基含有重合体の製造方法、
項3.カルボキシル基含有重合体と比誘電率が2〜19の有機溶媒とを混合、撹拌して造粒した後、さらに造粒機により粒子径を調整することを特徴とする項1または2に記載の顆粒状カルボキシル基含有重合体の製造方法、
項4.項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法により得られる顆粒状カルボキシル基含有重合体であって、
1)中位粒子径が200〜800μm、
2)嵩密度が0.30g/cm以上、
3)静置した25℃の水に、顆粒状カルボキシル基含有重合体を水に対して0.5質量%になるように投入した後、該顆粒状カルボキシル基含有重合体がすべて膨潤するのに要する時間が30分以下、
の特性を有することを特徴とする顆粒状カルボキシル基含有重合体、
に関する。
【発明の効果】
【0020】
本発明の製造方法によれば、特定の中位粒子径を有し、嵩密度が大きく、造粒後も粒子形状が崩れにくい顆粒状カルボキシル基含有重合体を得ることができる。また、本発明の製造方法により得られる顆粒状カルボキシル基含有重合体を水に溶解させた後、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン等のアルカリ化合物で中和することにより、短時間で表面のなめらかさ、増粘性および透明性に優れた中和粘稠液を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明にかかる顆粒状カルボキシル基含有重合体の製造方法は、嵩密度が0.18〜0.28g/cmのカルボキシル基含有重合体に対して、比誘電率が2〜19の有機溶媒を特定の割合で混合、撹拌して造粒することを特徴とする。
【0022】
前記カルボキシル基含有重合体としては、例えば、α,β−不飽和カルボン酸類を主構成単量体成分とするカルボキシル基含有重合体が好ましく用いられる。
【0023】
前記α,β−不飽和カルボン酸類を主構成単量体成分とするカルボキシル基含有重合体としては、例えば、α,β−不飽和カルボン酸類を主構成単量体とする単量体成分を溶解し、かつカルボキシル基含有重合体を溶解しない不活性溶媒中で、α,β−不飽和カルボン酸類を主構成単量体とする単量体成分を重合して得られるものが好ましく用いられる。より具体的には、α,β−不飽和カルボン酸類と、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物とを、ラジカル重合開始剤の存在下、不活性溶媒中で重合させることによって得られる架橋型カルボキシル基含有重合体;α,β−不飽和カルボン酸類と、アルキル基の炭素数が10〜30である(メタ)アクリル酸アルキルエステルとを、ラジカル重合開始剤の存在下、不活性溶媒中で重合させることによって得られるアルキル変性カルボキシル基含有重合体等が挙げられる。
【0024】
前記架橋型カルボキシル基含有重合体を製造する場合のα,β−不飽和カルボン酸類としては、特に限定されず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等のα,β−不飽和カルボン酸;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸ミリスチル、アクリル酸ベヘニル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ミリスチル、メタクリル酸ベヘニル等のα,β−不飽和カルボン酸アルキルエステル等が挙げられ、これらのα,β−不飽和カルボン酸類は、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
なお、本明細書では、アクリルおよびメタクリルを総称して(メタ)アクリルという場合もある。
【0026】
前記架橋型カルボキシル基含有重合体を製造する場合、α,β−不飽和カルボン酸類の使用量は後述する不活性溶媒の100容量部に対して6〜25容量部であることが好ましく、8〜22容量部であることがより好ましく、13〜20容量部であることがさらに好ましい。α,β−不飽和カルボン酸類の使用量が6容量部未満の場合、得られる架橋型カルボキシル基含有重合体の取得量が少なく、経済的でない。また、α,β−不飽和カルボン酸類の使用量が25容量部を超える場合、反応が進行するにつれ、架橋型カルボキシル基含有重合体が析出し、均一に撹拌することが困難となり、反応の制御が難しくなる。
【0027】
前記エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物としては、特に限定されず、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、グリセリン、ポリグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、サッカロース、ソルビトール等のポリオールの2置換以上のアクリル酸エステル類;前記ポリオールの2置換以上のアリルエーテル類;フタル酸ジアリル、リン酸トリアリル、メタクリル酸アリル、テトラアリルオキシエタン、トリアリルシアヌレート、アジピン酸ジビニル、クロトン酸ビニル、1,5−ヘキサジエン、ジビニルベンゼン等を挙げることができる。これらのエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物の中でも、少量で高い増粘性を有する中和粘稠液が得られ、乳化物、懸濁物等に高い懸濁安定性を付与することができることから、ペンタエリスリトールアリルエーテルおよびポリアリルサッカロースが好適に用いられる。これらのエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物は、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
前記エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物の使用量は、α,β−不飽和カルボン酸類100質量部に対して、0.01〜2質量部であることが好ましく、0.3〜1.5質量部であることがより好ましい。エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物の使用量が0.01質量部未満の場合、得られる顆粒状カルボキシル基含有重合体から調製される中和粘稠液の粘度が低下するおそれがある。エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物の使用量が2質量部を超える場合、得られる顆粒状カルボキシル基含有重合体から調製される中和粘稠液中に不溶性のゲルが生成しやすくなるおそれがある。
【0029】
前記アルキル変性カルボキシル基含有重合体を製造する場合のα,β−不飽和カルボン酸類としては、特に限定されず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等が挙げられ、これらのα,β−不飽和カルボン酸類は、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
前記アルキル変性カルボキシル基含有重合体を製造する場合、α,β−不飽和カルボン酸類の使用量は後述する不活性溶媒の100容量部に対して6〜25容量部であることが好ましく、8〜22容量部であることがより好ましく、13〜20容量部であることがさらに好ましい。α,β−不飽和カルボン酸類の使用量が6容量部未満の場合、得られるアルキル変性カルボキシル基含有重合体の取得量が少なく、経済的でない。また、α,β−不飽和カルボン酸類の使用量が25容量部を超える場合、反応が進行するにつれ、アルキル変性カルボキシル基含有重合体が析出し、均一に撹拌することが困難となり、反応の制御が難しくなる。
【0031】
前記アルキル基の炭素数が10〜30である(メタ)アクリル酸アルキルエステルとは、(メタ)アクリル酸と、アルキル基の炭素数が10〜30である高級アルコールとのエステルをいい、例えば、(メタ)アクリル酸とステアリルアルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸とエイコサノールとのエステル、(メタ)アクリル酸とベヘニルアルコールとのエステルおよび(メタ)アクリル酸とテトラコサノールとのエステル等を挙げることができる。これらのアルキル基の炭素数が10〜30である(メタ)アクリル酸アルキルエステルの中でも、得られる顆粒状カルボキシル基含有共重合体の中和粘稠液および電解質存在下における当該液の粘度特性や質感が優れていることから、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸エイコサニル、メタクリル酸ベヘニルおよびメタクリル酸テトラコサニルが好適に用いられる。これらのアルキル基の炭素数が10〜30である(メタ)アクリル酸アルキルエステルは、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、アルキル基の炭素数が10〜30である(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、日本油脂株式会社製の商品名ブレンマーVMA70等の市販品を用いてもよい。
【0032】
前記アルキル基の炭素数が10〜30である(メタ)アクリル酸アルキルエステルの使用量は、α,β−不飽和カルボン酸類100質量部に対して0.5〜20質量部であることが好ましく、1〜10質量部であることがより好ましい。アルキル基の炭素数が10〜30である(メタ)アクリル酸アルキルエステルの使用量が、α,β−不飽和カルボン酸類100質量部に対して0.5質量部未満である場合には、得られる顆粒状カルボキシル基含有共重合体の中和粘稠液の電解質存在下における透過率が不十分になるおそれがあり、一方、20質量部を超える場合には、得られる顆粒状カルボキシル基含有共重合体の水への溶解性を損なうおそれがある。
【0033】
前記ラジカル重合開始剤としては、特に限定されず、例えば、α,α’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビスイソブチレート、過酸化ベンゾイル、ラウロイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、第三級ブチルハイドロパーオキサイド等を挙げることができる。これらのラジカル重合開始剤は、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
ラジカル重合開始剤の使用量は、α,β−不飽和カルボン酸類100質量部に対して、0.01〜0.45質量部であることが好ましく、0.01〜0.35質量部であることがより好ましい。ラジカル重合開始剤の使用量が0.01質量部未満の場合、反応速度が遅くなるため経済的でなくなるおそれがある。また、ラジカル重合開始剤の使用量が0.45質量部を超える場合、反応速度が速くなるため、反応の制御が難しくなる。
【0035】
前記不活性溶媒とは、α,β−不飽和カルボン酸類、および、エチレン性不飽和基を2個以上有する化合物またはアルキル基の炭素数が10〜30である(メタ)アクリル酸アルキルエステルを溶解するが、得られるカルボキシル基含有重合体を溶解しない溶媒をいう。
【0036】
前記不活性溶媒としては、例えば、ノルマルペンタン、ノルマルヘキサン、ノルマルヘプタン、ノルマルオクタン、イソオクタン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、エチレンジクロライド、酢酸エチル、酢酸イソプロピル、エチルメチルケトン、イソブチルメチルケトン等を挙げることができる。これらの不活性溶媒の中でも、品質が安定しており入手が容易である観点から、エチレンジクロライドおよびノルマルヘキサンが好適に用いられる。これらの不活性溶媒は、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
前記α,β−不飽和カルボン酸類とエチレン性不飽和基を2個以上有する化合物とを重合させる際、または、α,β−不飽和カルボン酸類とアルキル基の炭素数が10〜30である(メタ)アクリル酸アルキルエステルとを重合させる際の雰囲気は、例えば、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気であることが好ましい。
【0038】
反応温度は、反応溶液の粘度上昇を抑制し、反応制御を容易にする観点、および、得られるカルボキシル基含有重合体の嵩密度を制御する観点から、50〜90℃であることが好ましく、55〜80℃であることがより好ましい。
【0039】
反応時間は、反応温度によって異なるので一概には決定することができないが、通常、2〜10時間である。
【0040】
反応終了後、反応溶液を80〜130℃に加熱し、不活性溶媒を揮散除去することにより白色微粉末のカルボキシル基含有重合体を得ることができる。加熱温度が、80℃未満の場合、乾燥に長時間を要するおそれがあり、130℃を超える場合、得られる顆粒状カルボキシル基含有重合体から調製される中和粘稠液の表面のなめらかさが悪化するおそれがある。
【0041】
本発明に用いられる嵩密度が0.18〜0.28g/cmのカルボキシル基含有重合体は、例えば、前記重合の際に、不活性溶媒の種類、不活性溶媒におけるα,β−不飽和カルボン酸類の濃度等を、下記の傾向を参照して制御することで調整することができる。
・比誘電率の低い不活性溶媒を使用すると、嵩密度が小さくなる傾向がある。
・比誘電率の高い不活性溶媒を使用すると、嵩密度が大きくなる傾向がある。
・不活性溶媒におけるα,β−不飽和カルボン酸類の濃度を低く設定すると、嵩密度が大きくなる傾向がある。
・不活性溶媒におけるα,β−不飽和カルボン酸類の濃度を高く設定すると、嵩密度が小さくなる傾向がある。
【0042】
本発明にかかる顆粒状カルボキシル基含有重合体の製造方法において、顆粒状カルボキシル基含有重合体は、例えば、上記のようにして得られた嵩密度が0.18〜0.28g/cmのカルボキシル基含有重合体と、比誘電率が2〜19の有機溶媒とを特定の割合で混合、撹拌してカルボキシル基含有重合体を造粒することにより製造することができる。ここで、比誘電率は、20〜25℃の温度で測定した際の値である。
【0043】
前記嵩密度が0.18〜0.28g/cmのカルボキシル基含有重合体を造粒する方法としては、特に限定されないが、例えば、比誘電率が2〜19の有機溶媒に嵩密度が0.18〜0.28g/cmのカルボキシル基含有重合体を添加して混合、撹拌する方法;嵩密度が0.18〜0.28g/cmのカルボキシル基含有重合体に、比誘電率が2〜19の有機溶媒を添加して混合、撹拌する方法等が挙げられる。
【0044】
本発明に用いられる有機溶媒の比誘電率は、2〜19であり、好ましくは3〜19、より好ましくは4〜19である。使用する有機溶媒の比誘電率が2未満の場合、カルボキシル基含有重合体が造粒されにくい。また、使用する有機溶媒の比誘電率が19を超える場合、カルボキシル基含有重合体が塊状化するおそれがあり、その際は粉砕する必要があり、工程が煩雑となる。
【0045】
本発明に用いられる比誘電率が2〜19の有機溶媒としては、例えば、シクロヘキサン等の脂環族炭化水素系溶媒;ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール等の芳香族炭化水素系溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,1−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、クロロベンゼン等のハロゲン系溶媒;ジメチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒;2−プロパノール、1−ブタノール、2−メトキシエタノール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール等のアルコール系溶媒等が挙げられる。これらの有機溶媒のなかでも、エステル系溶媒、ケトン系溶媒、エステル系溶媒が好適に用いられ、特に、酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンがより好適に用いられる。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0046】
また、本発明においては、比誘電率が2〜19の範囲に含まれない有機溶媒を組み合わせて用いることもできる。その際には、下記式に従い、比誘電率(計算値)が2〜19の範囲となるように適宜使用量を調整する必要がある。ただし、Σはεの総和、εは組み合わせて用いる有機溶媒の比誘電率、dは使用する有機溶媒全質量に対する組み合わせて用いる有機溶媒の質量比を示す。
【0047】
比誘電率(計算値)=Σ(ε
組み合わせて用いることができる有機溶媒としては、前述の通り混合後の比誘電率(計算値)が2〜19の範囲となる溶媒であれば特に限定されない。組み合わせて用いることができる有機溶媒の具体例としては、n−ペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の脂肪族炭化水素系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒;エチレンカーボネート等のカーボネート系溶媒;メタノール、エタノール、2−エトキシエタノール、1,2−プロパンジオール等のアルコール系溶媒等が挙げられる。これら組み合わせて用いることができる有機溶媒は、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0048】
比誘電率が2〜19の有機溶媒の使用量は、嵩密度が0.18〜0.28g/cmのカルボキシル基含有重合体100質量部に対して、以下の割合であり、
〔−4Z+110〕≦Y≦〔−2Z+190〕
好ましくは以下の割合である。
〔−4.4Z+121〕≦Y≦〔−1.8Z+171〕
ここで、Yは比誘電率が2〜19の有機溶媒の使用量(質量部)、Zは使用する有機溶媒の比誘電率である。
【0049】
比誘電率が2〜19の有機溶媒の使用量が〔−4Z+110〕質量部以上であれば、適度な有機溶媒の使用量であり、嵩密度が0.18〜0.28g/cmのカルボキシル基含有重合体の造粒が行いやすい。また、比誘電率が2〜19の有機溶媒の使用量が〔−2Z+190〕質量部以下であれば、適度な有機溶媒の使用量であり、造粒後の乾燥もしやすい。
【0050】
具体的には、嵩密度が0.18〜0.28g/cmのカルボキシル基含有重合体100質量部に対して、例えば、酢酸エチル(比誘電率(Z)=6.0)では86〜178質量部、酢酸エチル/n−ヘプタン混合溶媒(質量比0.5/0.5、比誘電率(Z)=4.0)では94〜182質量部、酢酸エチル/メチルイソブチルケトン(質量比0.5/0.5、比誘電率(Z)=9.6)では72〜171質量部、メチルイソブチルケトン(比誘電率(Z)=13.1)では58〜164質量部、メチルエチルケトン(比誘電率(Z)=18.5)では36〜153質量部である。
【0051】
なお、前記嵩密度が0.18〜0.28g/cmのカルボキシル基含有重合体を製造する際に、比誘電率が2〜19の有機溶媒を使用する場合は、重合反応終了後に得られるスラリーから、デカンテーション、留去等の方法により当該有機溶媒の一部を、前記の使用量に調整し、撹拌して造粒することにより、本発明の顆粒状カルボキシル基含有重合体を得ることもできる。
【0052】
上記のようにして、嵩密度が0.18〜0.28g/cmのカルボキシル基含有重合体と比誘電率が2〜19の有機溶媒とを混合、撹拌して造粒することにより、顆粒状カルボキシル基含有重合体が得られる理由は明らかではないが、粒子同士が、比誘電率が2〜19の有機溶媒をバインダーとして結合し、造粒するものと考えられる。
【0053】
嵩密度が0.18〜0.28g/cmのカルボキシル基含有重合体と比誘電率が2〜19の有機溶媒を混合した後、必要により、任意の目開きを有する篩を通すことにより、所望の中位粒子径に調整された顆粒状カルボキシル基含有重合体を得ることができる。
【0054】
また、生産性の観点から、湿式押出造粒機により粒子径を調整することが好ましい。湿式押出造粒機としては、ツインドームグランシリーズ(不二パウダル株式会社製)等の湿式押出造粒機;バスケットリューザーシリーズ(不二パウダル株式会社製)等の円筒造粒機等が挙げられる。
【0055】
本発明にかかる顆粒状カルボキシル基含有重合体の製造方法では、上記で得られたカルボキシル基含有重合体の造粒物を乾燥することが望ましい。
【0056】
乾燥に用いられる乾燥装置は特に限定されないが、例えば、減圧乾燥機を挙げることができる。乾燥温度としては、30〜130℃であることが好ましく、50〜110℃であることがより好ましい。乾燥温度が30℃未満の場合、乾燥に長時間要するおそれがあり、130℃を超える場合、得られる顆粒状カルボキシル基含有重合体の水への溶解性を損なうおそれがある。乾燥後の含液率は、長期保存中に顆粒状カルボキシル基含有重合体の塊状化等が起こらないようにとの観点から、5質量%未満とするのが好ましい。
【0057】
このようにして、本発明の顆粒状カルボキシル基含有重合体を得ることができるが、さらに所望の目開きの篩を用いて分級し粗粉を取り除くことによって、所望の中位粒子径となすこともできる。
【0058】
本発明の製造方法により得られる顆粒状カルボキシル基含有重合体は、好ましくは以下のような特性を有している。
1)中位粒子径が200〜800μm、
2)嵩密度が0.30g/cm以上、
3)静置した25℃の水に、顆粒状カルボキシル基含有重合体を水に対して0.5質量%になるように投入した後、該顆粒状カルボキシル基含有重合体がすべて膨潤するのに要する時間が30分以下。
【0059】
本発明にかかる顆粒状カルボキシル基含有重合体の中位粒子径は、200〜800μmであることが好ましく、300〜600μmであることがさらに好ましい。中位粒子径が200μm未満の場合、使用時に粉塵が立ちやすくなるおそれがある。一方、中位粒子径が800μmを超える場合、水に対して膨潤する速度が遅くなるおそれがある。なお、本発明において「中位粒子径」とは、後述の測定方法により測定した値である。
【0060】
本発明にかかる顆粒状カルボキシル基含有重合体の嵩密度は、0.30g/cm以上であることが好ましく、0.30〜0.60g/cmであることがより好ましく、0.35〜0.55g/cmであることが特に好ましい。嵩密度が0.30g/cm未満の場合、従前のカルボキシル基含有重合体にくらべ十分に嵩密度が大きいとは言えず、輸送コストの増加や保管場所を多く必要とする等の問題を解決することにならない。なお、本発明において「嵩密度」とは、後述の測定方法により測定した値である。
【0061】
本発明の顆粒状カルボキシル基含有重合体は、静置した25℃の水に、該重合体を水に対して0.5質量%になるように投入した後、重合体の膨潤状態を目視で観察し、重合体がすべて膨潤するのに要する時間が30分以下であることが好ましく、30〜1分であることがより好ましい。重合体がすべて膨潤するのに要する時間が30分を超える場合、従前のカルボキシル基含有重合体にくらべて十分に膨潤性が良いとは言えず好ましくない。なお、詳細な測定方法は、後述の測定方法により測定した値である。
【0062】
以下に実施例および比較例を挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これら実施例によってなんら限定されるものではない。
【0063】
[測定方法]
各実施例および比較例により得られた顆粒状架橋型カルボキシル基含有重合体について、中位粒子径、嵩密度および膨潤するのに要する時間を以下の方法により評価した。得られた結果を表1に示す。
【0064】
(1)中位粒子径
本発明において「中位粒子径」とは、顆粒状カルボキシル基含有重合体を篩で分級したときに各篩上に残っている粒子の質量を順次積算して得られた積算質量が、粒子の全質量の50質量%に達したときの篩目開きに相当する粒子径をいう。より具体的には、JIS−Z8801−1982に規定された7つの標準篩(目開き850μm、500μm、355μm、300μm、250μm、180μm、106μm)および受け皿を用意し、目開きの小さい篩から目開きの大きい篩を順次積層し、一番目開きの大きい篩に顆粒状カルボキシル基含有重合体100gを入れ、ロータップ式篩振動機を用いて、10分間振動させ、各篩上に残った粒子を秤量し、順次積算して得られた積算質量が粒子の全質量の50質量%に達したときの篩の目開きに相当する粒子径を次式により算出して求められた粒子径を中位粒子径とする。
中位粒子径(μm)=(50−A)/(C−A)×(D−B)+B
式中、Aは、目開きの粗い篩から順次篩上に残った顆粒状カルボキシル基含有重合体の質量を積算し、積算質量が全質量の50質量%未満であり、かつ50質量%に最も近い篩までの積算値(g)である。Cは目開きの粗い篩から順次篩上に残った粒子の質量を積算し、積算質量が、粒子の全質量の50質量%以上であり、かつ50質量%に最も近い篩までの積算値(g)である。Dは、Aの積算値を求めた時の篩の目開き(μm)であり、BはCの積算値を求めた時の篩の目開き(μm)である。
【0065】
(2)嵩密度
本発明において「嵩密度」とは、顆粒状カルボキシル基含有重合体の質量を、該質量の重合体の容積で除した際の値をいう。より具体的には、顆粒状カルボキシル基含有重合体10gを50cm容の空メスシリンダー上部5cmの高さから20秒間以内で投入した後、顆粒状カルボキシル基含有重合体の占める容積(cm)を測定し、重合体の質量10gを、顆粒状カルボキシル基含有重合体の占める容積(cm)で除することにより算出した値をいう。
【0066】
(3)膨潤するのに要する時間
200ml容のビーカーに水150gを入れ、水の温度を25℃に調整する。これを静置した状態で、顆粒状カルボキシル基含有重合体0.75gを投入し、重合体のすべてが中心まで膨潤するのに要する時間を測定する。なお、顆粒状カルボキシル基含有重合体が水に膨潤したとする判定は、乾燥時には白色の重合体が、水に膨潤し白色半透明になることを目視により判断して行う。
【0067】
[製造例1]
撹拌機、温度計、窒素吹き込み管および冷却管を備えた500ml容の四つ口フラスコに、N−ヘプタン108.8gと酢酸エチル36g、2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル(MAIB)0.036gを仕込んだ。次いで窒素雰囲気下でアクリル酸溶液(アクリル酸60g、N−ヘプタン54.4g、酢酸エチル18.0g、ペンタエリスリトールアリルエーテル0.36g)を連続的に滴下していき75℃で4時間反応させた。
【0068】
反応終了後、生成したスラリーを90℃に加熱して、溶剤を留去し、さらに110℃、10mmHg、8時間減圧乾燥することにより、白色微粉末の架橋型カルボキシル基含有重合体57gを得た。得られた架橋型カルボキシル基含有重合体の嵩密度は、0.23g/cmであった。
【0069】
[製造例2]
撹拌機、温度計、窒素吹き込み管および冷却管を備えた500ml容の四つ口フラスコに、N−ヘプタン122.4gと酢酸エチル18g、2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル(MAIB)0.036gを仕込んだ。次いで窒素雰囲気下でアクリル酸溶液(アクリル酸60g、N−ヘプタン61.2g、酢酸エチル9.0g、ペンタエリスリトールアリルエーテル0.36g)を連続的に滴下していき75℃で4時間反応させた。
【0070】
反応終了後、生成したスラリーを90℃に加熱して、溶剤を留去し、さらに110℃、10mmHg、8時間減圧乾燥することにより、白色微粉末の架橋型カルボキシル基含有重合体56gを得た。得られた架橋型カルボキシル基含有重合体の嵩密度は、0.18g/cmであった。
【0071】
[製造例3]
撹拌機、温度計、窒素吹き込み管および冷却管を備えた500ml容の四つ口フラスコに、N−ヘプタン95.2gと酢酸エチル47.6g、2,2’−アゾビス(イソ酪酸)ジメチル(MAIB)0.036gを仕込んだ。次いで窒素雰囲気下でアクリル酸溶液(アクリル酸60g、N−ヘプタン54.0g、酢酸エチル27.0g、ペンタエリスリトールアリルエーテル0.36g)を連続的に滴下していき75℃で4時間反応させた。
【0072】
反応終了後、生成したスラリーを90℃に加熱して、溶剤を留去し、さらに110℃、10mmHg、8時間減圧乾燥することにより、白色微粉末の架橋型カルボキシル基含有重合体57gを得た。得られた架橋型カルボキシル基含有重合体の嵩密度は、0.27g/cmであった。
【0073】
[実施例1]
製造例1と同様の方法で得られた架橋型カルボキシル基含有重合体100gと酢酸エチル(比誘電率:6.0)150gとを、卓上型ニーダー(株式会社入江商会社製、PNV−1型)を用いて混合、撹拌し、架橋型カルボキシル基含有重合体の造粒物を得た。得られた造粒物を、ツインドームグランテスト機(不二パウダル株式会社製、MG−55型、ドームダイの目開き1.0mm、開口度35.4%)を用いて湿式押出を行い、粒子径を調整した。これを110℃、10mmHg、8時間減圧乾燥することにより、顆粒状架橋型カルボキシル基含有重合体98gを得た。
得られた顆粒状の架橋型カルボキシル基含有重合体について、上記の項目を評価した。その結果を表1に示す。
【0074】
[実施例2]
製造例2と同様の方法で得られた架橋型カルボキシル基含有重合体100gと酢酸エチル(比誘電率:6.0)60gとn−ヘプタン(比誘電率:1.9)60gとの混合溶媒(比誘電率(計算値):4.0)を、卓上型ニーダー(株式会社入江商会社製、PNV−1型)を用いて混合、撹拌し、架橋型カルボキシル基含有重合体の造粒物を得た。得られた造粒物を、ツインドームグランテスト機(不二パウダル株式会社製、MG−55型、ドームダイの目開き1.0mm、開口度35.4%)を用いて湿式押出を行い、粒子径を調整した。これを110℃、10mmHg、8時間減圧乾燥することにより、顆粒状架橋型カルボキシル基含有重合体95gを得た。
得られた顆粒状の架橋型カルボキシル基含有重合体について、上記の項目を評価した。その結果を表1に示す。
【0075】
[実施例3]
製造例1と同様の方法で得られた架橋型カルボキシル基含有重合体100gと酢酸エチル(比誘電率:6.0)75gとメチルイソブチルケトン(MIBK、比誘電率:13.1)75gとの混合溶媒(比誘電率(計算値):9.6)を、卓上型ニーダー(株式会社入江商会社製、PNV−1型)を用いて混合、撹拌し、架橋型カルボキシル基含有重合体の造粒物を得た。得られた造粒物を、ツインドームグランテスト機(不二パウダル株式会社製、MG−55型、ドームダイの目開き1.0mm、開口度35.4%)を用いて湿式押出を行い、粒子径を調整した。これを110℃、10mmHg、8時間減圧乾燥することにより、顆粒状架橋型カルボキシル基含有重合体98gを得た。
得られた顆粒状の架橋型カルボキシル基含有重合体について、上記の項目を評価した。その結果を表1に示す。
【0076】
[実施例4]
製造例3と同様の方法で得られた架橋型カルボキシル基含有重合体100gと酢酸エチル(比誘電率:6.0)40gとメチルイソブチルケトン(MIBK、比誘電率:13.1)40gとの混合溶媒(比誘電率(計算値):9.6)を、卓上型ニーダー(株式会社入江商会社製、PNV−1型)を用いて混合、撹拌し、架橋型カルボキシル基含有重合体の造粒物を得た。得られた造粒物を、ツインドームグランテスト機(不二パウダル株式会社製、MG−55型、ドームダイの目開き1.0mm、開口度35.4%)を用いて湿式押出を行い、粒子径を調整した。これを110℃、10mmHg、8時間減圧乾燥することにより、顆粒状架橋型カルボキシル基含有重合体98gを得た。
得られた顆粒状の架橋型カルボキシル基含有重合体について、上記の項目を評価した。その結果を表1に示す。
【0077】
[実施例5]
製造例1と同様の方法で得られた架橋型カルボキシル基含有重合体100gとメチルイソブチルケトン(MIBK、比誘電率:13.1)100gとの混合溶媒(比誘電率(計算値):9.6)を、卓上型ニーダー(株式会社入江商会社製、PNV−1型)を用いて混合、撹拌し、架橋型カルボキシル基含有重合体の造粒物を得た。得られた造粒物を、ツインドームグランテスト機(不二パウダル株式会社製、MG−55型、ドームダイの目開き1.0mm、開口度35.4%)を用いて湿式押出を行い、粒子径を調整した。これを110℃、10mmHg、8時間減圧乾燥することにより、顆粒状架橋型カルボキシル基含有重合体98gを得た。
得られた顆粒状の架橋型カルボキシル基含有重合体について、上記の項目を評価した。その結果を表1に示す。
【0078】
[実施例6]
製造例2と同様の方法で得られた架橋型カルボキシル基含有重合体100gとメチルエチルケトン(MEK、比誘電率:18.5)130gを、卓上型ニーダー(株式会社入江商会社製、PNV−1型)を用いて混合、撹拌し、架橋型カルボキシル基含有重合体の造粒物を得た。得られた造粒物を、ツインドームグランテスト機(不二パウダル株式会社製、MG−55型、ドームダイの目開き1.0mm、開口度35.4%)を用いて湿式押出を行い、粒子径を調整した。これを110℃、10mmHg、8時間減圧乾燥することにより、顆粒状架橋型カルボキシル基含有重合体98gを得た。
得られた顆粒状の架橋型カルボキシル基含有重合体について、上記の項目を評価した。その結果を表1に示す。
【0079】
[実施例7]
製造例3と同様の方法で得られた架橋型カルボキシル基含有重合体100gとメチルエチルケトン(MEK、比誘電率:18.5)60gを、卓上型ニーダー(株式会社入江商会社製、PNV−1型)を用いて混合、撹拌し、架橋型カルボキシル基含有重合体の造粒物を得た。得られた造粒物を、ツインドームグランテスト機(不二パウダル株式会社製、MG−55型、ドームダイの目開き1.0mm、開口度35.4%)を用いて湿式押出を行い、粒子径を調整した。これを110℃、10mmHg、8時間減圧乾燥することにより、顆粒状架橋型カルボキシル基含有重合体98gを得た。
得られた顆粒状の架橋型カルボキシル基含有重合体について、上記の項目を評価した。その結果を表1に示す。
【0080】
[比較例1]
製造例1と同様の方法で得られた架橋型カルボキシル基含有重合体100gとn−ヘキサン(比誘電率:1.89)150gとを、卓上型ニーダー(株式会社入江商会社製、PNV−1型)を用いて混合、撹拌し、架橋型カルボキシル基含有重合体の造粒物を得た。得られた造粒物を、ツインドームグランテスト機(不二パウダル株式会社製、MG−55型、ドームダイの目開き1.0mm、開口度35.4%)を用いて湿式押出を行い、粒子径を調整した。これを110℃、10mmHg、8時間減圧乾燥することにより、顆粒状架橋型カルボキシル基含有重合体98gを得た。しかしながら、得られた顆粒状架橋型カルボキシル基含有重合体は、ほとんどが崩れて顆粒状を保持していなかった。
得られた顆粒状の架橋型カルボキシル基含有重合体について、上記の項目を評価した。その結果を表1に示す。
【0081】
[比較例2]
製造例1と同様の方法で得られた架橋型カルボキシル基含有重合体100gと酢酸エチル(比誘電率:6.0)200gとを、卓上型ニーダー(株式会社入江商会社製、PNV−1型)を用いて混合、撹拌し、架橋型カルボキシル基含有重合体の塊状物を得た。これを110℃、10mmHg、8時間減圧乾燥することにより、架橋型カルボキシル基含有重合体95gを得た。
得られた架橋型カルボキシル基含有重合体について、上記の項目を評価した。その結果を表1に示す。
【0082】
[比較例3]
製造例1と同様の方法で得られた架橋型カルボキシル基含有重合体100gと酢酸エチル(比誘電率:6.0)100gとメチルイソブチルケトン(MIBK、比誘電率:13.1)100gとの混合溶媒(比誘電率(計算値):9.6)を、卓上型ニーダー(株式会社入江商会社製、PNV−1型)を用いて混合、撹拌し、架橋型カルボキシル基含有重合体の塊状物を得た。これを110℃、10mmHg、8時間減圧乾燥することにより、架橋型カルボキシル基含有重合体95gを得た。
得られた架橋型カルボキシル基含有重合体について、上記の項目を評価した。その結果を表1に示す。
【0083】
[比較例4]
製造例2と同様の方法で得られた架橋型カルボキシル基含有重合体100gとメチルエチルケトン(MEK、比誘電率:18.5)180gを、卓上型ニーダー(株式会社入江商会社製、PNV−1型)を用いて混合、撹拌し、架橋型カルボキシル基含有重合体の塊状物を得た。これを110℃、10mmHg、8時間減圧乾燥することにより、架橋型カルボキシル基含有重合体95gを得た。
得られた架橋型カルボキシル基含有重合体について、上記の項目を評価した。その結果を表1に示す。
【0084】
[比較例5]
製造例1と同様の方法で得られた架橋型カルボキシル基含有重合体100gと酢酸エチル(比誘電率:6.0)70gとを、卓上型ニーダー(株式会社入江商会社製、PNV−1型)を用いて混合、撹拌し、架橋型カルボキシル基含有重合体の塊状物を得た。これを110℃、10mmHg、8時間減圧乾燥することにより、架橋型カルボキシル基含有重合体95gを得た。
得られた架橋型カルボキシル基含有重合体について、上記の項目を評価した。その結果を表1に示す。
【0085】
[比較例6]
製造例3と同様の方法で得られた架橋型カルボキシル基含有重合体100gと酢酸エチル(比誘電率:6.0)25gとメチルイソブチルケトン(MIBK、比誘電率:13.1)25gとの混合溶媒(比誘電率(計算値):9.6)を、卓上型ニーダー(株式会社入江商会社製、PNV−1型)を用いて混合、撹拌し、架橋型カルボキシル基含有重合体の塊状物を得た。これを110℃、10mmHg、8時間減圧乾燥することにより、架橋型カルボキシル基含有重合体95gを得た。
得られた架橋型カルボキシル基含有重合体について、上記の項目を評価した。その結果を表1に示す。
【0086】
[比較例7]
製造例2と同様の方法で得られた架橋型カルボキシル基含有重合体100gとメチルエチルケトン(MEK、比誘電率:18.5)25gを、卓上型ニーダー(株式会社入江商会社製、PNV−1型)を用いて混合、撹拌し、架橋型カルボキシル基含有重合体の塊状物を得た。これを110℃、10mmHg、8時間減圧乾燥することにより、架橋型カルボキシル基含有重合体95gを得た。
得られた架橋型カルボキシル基含有重合体について、上記の項目を評価した。その結果を表1に示す。
【0087】
[比較例8]
製造例1と同様の方法で得られた架橋型カルボキシル基含有重合体100gとアセトン(比誘電率:20.7)100gとを、卓上型ニーダー(株式会社入江商会社製、PNV−1型)を用いて混合、撹拌し、架橋型カルボキシル基含有重合体の塊状物を得た。これを110℃、10mmHg、8時間減圧乾燥することにより、塊状化した架橋型カルボキシル基含有重合体85gを得た。
得られた塊状の架橋型カルボキシル基含有重合体について、上記の項目を評価した。その結果を表1に示す。
【0088】
[比較例9]
製造例1と同様の方法で得られた架橋型カルボキシル基含有重合体100gとメタノール(比誘電率:33.1)100gとを、卓上型ニーダー(株式会社入江商会社製、PNV−1型)を用いて混合、撹拌し、架橋型カルボキシル基含有重合体の塊状物を得た。これを110℃、10mmHg、8時間減圧乾燥することにより、塊状化した架橋型カルボキシル基含有重合体85gを得た。
得られた塊状の架橋型カルボキシル基含有重合体について、上記の項目を評価した。その結果を表1に示す。
【0089】
[参考例1]
製造例1と同様の方法で得られた架橋型カルボキシル基含有重合体について、上記の項目を評価した。ただし、中位粒子径は、レーザー回折式粒度分布測定装置(型式:SALD−2000J、株式会社島津製作所製、分散媒:ノルマルヘキサン)により測定した。その結果を表1に示す。
【0090】
【表1】

【0091】
表1の結果より、本発明にかかる製造方法で得られた顆粒状の架橋型カルボキシル基含有重合体は特定の中位粒子径を有し、嵩密度が大きく、凝集後も崩れにくく、かつ短時間で水に膨潤することがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明の製造方法によれば、微粉末状のカルボキシル基含有重合体と比べ、ママコが発生しにくく、凝集後も崩れにくく、水への膨潤性に優れ、粉立ちが少なく作業性に優れた顆粒状カルボキシル基含有重合体を得ることができる。また、本発明の製造方法により得られる顆粒状カルボキシル基含有重合体を水に溶解させた後、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン等のアルカリで中和することにより、短時間で表面のなめらかさ、増粘性および透明性に優れた中和粘稠液を得ることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
嵩密度が0.18〜0.28g/cmのカルボキシル基含有重合体100質量部に対して、比誘電率が2〜19の有機溶媒を下式の割合で混合、撹拌して造粒することを特徴とする顆粒状カルボキシル基含有重合体の製造方法。
〔−4Z+110〕≦Y≦〔−2Z+190〕
Y:比誘電率が2〜19の有機溶媒の使用量(質量部)
Z:有機溶媒の比誘電率
【請求項2】
カルボキシル基含有重合体が、α,β−不飽和カルボン酸類を主構成単量体とする単量体成分を、不活性溶媒中で重合させることにより得られるカルボキシル基含有重合体である請求項1に記載の顆粒状カルボキシル基含有重合体の製造方法。
【請求項3】
カルボキシル基含有重合体と比誘電率が2〜19の有機溶媒とを混合、撹拌して造粒した後、さらに造粒機により粒子径を調整することを特徴とする請求項1または2に記載の顆粒状カルボキシル基含有重合体の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法により得られる顆粒状カルボキシル基含有重合体であって、
1)中位粒子径が200〜800μm、
2)嵩密度が0.30g/cm以上、
3)静置した25℃の水に、顆粒状カルボキシル基含有重合体を水に対して0.5質量%になるように投入した後、該顆粒状カルボキシル基含有重合体がすべて膨潤するのに要する時間が30分以下、
の特性を有することを特徴とする顆粒状カルボキシル基含有重合体。

【公開番号】特開2011−26415(P2011−26415A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−172404(P2009−172404)
【出願日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(000195661)住友精化株式会社 (352)
【Fターム(参考)】