説明

顆粒状入浴剤

【課題】顆粒状入浴成分に微細粉末を均一に配合する。
【解決手段】顆粒状入浴剤10は、水溶性核粒子12と、該核粒子12に被覆され、常温で液状の粘性被覆剤14と、前記粘性被覆剤層14に付着した、前記水溶性核粒子12と同等ないしそれ以下の径を有する小径粒子16と、前記小径粒子16上に被覆された、常温で固体もしくは半固体で加熱溶融性を有し、温水に可溶なコーティング剤18と、前記コーティング剤層18上に付着された、流動化剤20と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は顆粒状入浴剤、特にその顆粒構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
風呂に添加して用いられる入浴剤は、単に色、香りを楽しむばかりでなく、温浴効果、血行促進などの効果が認められるものもある。特に、粒塩を用いた顆粒状入浴剤などは、温浴効果も高く根強い人気を有する。
【0003】
ところで、入浴剤には前述したように各種機能を期待して生薬成分を入れ、あるいは嗜好性を高めるために白濁剤として酸化チタンを入れたり、パール剤を添加する場合がある。
ところが、例えば前記粒塩と酸化チタン粉末は粒径、比重が大きく異なるため、単純に両者を混合したのでは、容器中で分離してしまい、特に大容量容器に入れた場合には底部に酸化チタンが集積する。このため、顆粒状入浴剤に酸化チタンなどの比重、粒径の異なる粉体を混合する場合には、使い切り分封タイプとする必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−248937
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は前記従来技術に鑑みなされたものであり、その解決すべき課題は、顆粒状入浴成分に微細粉末を均一に配合することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために本発明者らが検討した結果、粒塩などの水溶性核粒子に、生薬、酸化チタンなどの小径粒子を特定の顆粒構造となるように付着させることにより、入浴剤適性を損なうことなく、容器内での均一性が得られることを見いだした。
【0007】
すなわち本発明にかかる顆粒状入浴剤は、
水溶性核粒子と、
該核粒子に被覆され、常温で液状の粘性被覆剤と、
前記粘性被覆剤層に付着され、前記水溶性核粒子と同等ないしそれ以下の径を有する小径粒子と、
前記小径粒子層上に被覆された、常温で固体もしくは半固体で加熱溶融性を有し、温水に可溶なコーティング剤と、
前記コーティング剤層上に付着された、低凝集性粉体からなる流動化剤と、
を備えたことを特徴とする。
【0008】
また、前記粒状入浴剤において、
水溶性核粒子は平均粒子径1〜10mmの粒塩であり、かつ入浴剤中80〜99質量%であり、
粘性被覆剤は、ポリオール、親水性高分子、油剤からなる群より選択される一種又は二種以上であり、かつ入浴剤中0.1〜5質量%であり、
小径粒子は、白濁剤、パール剤、生薬成分からなる群より選択される一種又は二種以上であり、かつ入浴剤中0.1〜15質量%であり、
コーティング剤は、ポリエチレングリコールであり、かつ入浴剤中0.1〜10質量%であり、
流動化剤は、シクロデキストリンであり、かつ入浴剤中0.1〜10質量%であることが好適である。
以下、本発明の構成について詳細に説明する。
【0009】
[水溶性核粒子]
本発明において、水溶性核粒子は粒塩、砂糖など、入浴剤に用いられ、かつ水溶性の物質である。その平均粒子径が1〜10mm、好ましくは1〜5mmの粒塩である。
平均粒子径が1mm以下である場合、後述する小径粒子との単純混合により均一性の高い混合物を得ることができる。
【0010】
また、平均粒子径が10mmを超えると、相対的に表面積が小さくなり、後述する小径粒子を必要十分な量付着させることができない。
なお、水溶性核粒子は入浴剤の主成分となり、入浴剤に対し80質量%以上、好ましくは85〜99質量%を占める。
【0011】
[粘性被覆剤]
本発明において、粘性被覆層を形成する粘性被覆剤は、好ましくは水などの溶媒を特に加えることなく、常温で粘性を有するポリオール、水溶性高分子、油剤であることが好適である。より具体的には、1,3−ブチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、パラフィンやスクワラン、香料、油溶性ビタミンなどの油剤を用いることができる。
【0012】
被覆量は、入浴剤に対し0.1〜5質量%、好ましくは0.5〜3質量%である。
なお、後に除去が必要な溶媒を添加する事で粘性を生じるものは、好ましくない。
また、常温で固体であり、加熱溶融により粘性を生じるものは、核粒子表面にむらを生じやすく、好ましくない。ただし、常温で粘性を有していれば、加熱により粘度を低下させ、製造適性を向上させることは可能である。
【0013】
[小径粒子]
水溶性核粒子に付着される小径粒子としては、前記粘性被覆剤に不溶、または難溶のものである。ここで、難溶の粒子には、粘性被覆剤への可溶化量以上の過剰量粉末を用いる場合も含まれる。
小径粒子としては、酸化チタンなどの白濁剤、パール剤、生薬などが挙げられ、その粒径は前記核粒子と同等ないしそれ以下である。特に核粒子の半分以下の平均粒子径を有する場合、あるいは酸化チタンのように比重が高い場合に有効である。
被覆量は、入浴剤に対し0.1〜20質量%、特に好ましくは0.1〜10質量%である。
【0014】
[コーティング剤]
本発明において、コーティング剤は常温で固体もしくは半固体であり、製造時に液状化できることと、温水に可溶であることが必要である。このような要件に適合したものとして、ポリエチレングリコールなどが挙げられる。なお、コーティング剤は加熱溶融して用いることが好適である。
コーティング剤の選択に当たっては、1種である必要が無く、見かけ上の物性が上記を満たせば2種以上の混合物であってもよい。
被覆量は、入浴剤に対し0.1〜10質量%、好ましくは0.5〜5質量%である。
【0015】
[流動化剤]
本発明において流動化剤は、入浴剤の流動性を良好に維持するものであり、凝集しにくく、吸湿によっても粘性を生じにくく、かつ前記粘性被覆剤に難溶であるものが好ましい。
具体的にはシクロデキストリン、無水ケイ酸などが例示される。
被覆量は、入浴剤に対し0.1〜20質量%、好ましくは0.1〜5質量%である。
[その他の成分]
以上の構成成分のほかに、嗜好性を高めるための着色剤や、親油性成分を浴槽中に均一に分散させるための界面活性剤や、化粧品に用いられる保湿成分や抗炎症成分などを、本発明の構成成分と事前に混合したり、本発明の構成成分に溶解あるいは分散させたりすることができる。
【0016】
以上のようにして形成された入浴剤が図1に示されている。
同図に示すように、入浴剤粒10は、核粒子である粒塩12に粘性被覆剤14が薄く膜形成されており、該粘性被覆剤に小径粒子16が付着している。したがって、核粒子12と小径粒子16は所定割合で一体となっており、両者が比重差、あるいは粒径差により分離してしまうことはない。小径粒子16の層の上には、さらにコーティング層18が形成されている。このコーティング層18は常温で固体であるため、前記小径粒子16の保持をしっかりとし、かつ粘性被覆剤による凝集を防止することができる。
【0017】
さらに、コーティング層18上に流動化剤を被覆することで、入浴剤の流動性が良好に維持され、容器より取り出しやすくなる。そして、流動化剤に吸湿性を併せ持つものを採用することで、浴室など、高湿度下で一時的に容器の開封が行われてもただちに使用不能となることはない。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように本発明にかかる入浴剤によれば、大径の水溶性核粒子と、小径粒子とを粘性被覆層で結合させたので、容器中で水溶性核粒子と小径粒子が分離してしまうことはなく、容器上部、容器底部にかかわらず、均質な入浴剤を取り出すことができる。しかも、コーティング層、および流動化層の存在により、通常入浴剤が保管され、使用される環境下では、凝集を生じることなく使いきることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明にかかる入浴剤の粒子構造の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
まず、本発明者らは、次のような試験を行った。
なお、各試験例の評価は次のように行った。
【0021】
[小径粒子付着の均一性]
製造した直後の入浴剤の数箇所から5gずつサンプリングし、それを1Lのお湯に分散し、白濁度について比較評価した。
サンプリング箇所によらず白濁度に差がなかったもの … ○
サンプリング箇所により白濁度にやや差があったもの … △
サンプリング箇所により白濁度に差があったもの … ×
【0022】
[容器内での分離]
500ml容円筒容器に入浴剤を80%容程度入れ、30分間バイブレーターで振動をかけ、その後の容器上部と容器下部での酸化チタンの分布について検証した。
分離がほとんど認められなかったもの … ○
振動によりやや分離が認められたもの … △
明らかに分離が認められたもの … ×
【0023】
[入浴剤の流動性]
前記同様に入浴剤を容器に入れ、その取り出しの容易性について評価した。
取り出しに何ら不都合のないもの … ○
流動性がやや低く、適量の取り出しがやや困難なもの … △
流動性が低く、適量の取り出しが困難なもの … ×
【0024】
[凝集の発生]
前記同様に入浴剤を容器に入れ、凝集の発生を評価した。
なお、浴室内での1か月貯蔵を前提とし、湿度90%、室温30℃の環境下(浴室内環境を想定)で30分間(一日1分の解放で30日間分)容器のふたを解放した状態で放置した後、ふたをしめ、30℃で1日放置して凝集の発生確認を行った。
凝集の発生が認められなかったもの … ○
凝固の発生がやや認められたもの … △
凝固の発生が認められたもの … ×
【0025】
【表1−1】

【0026】
【表1−2】

【0027】
製法
混合攪拌機に粒塩を投入する。この後、粘性被覆剤、小径粒子、コーティング剤、流動化剤を順次、投入し、入浴剤を得る。
上記表1−1及び表1−2に示す結果より明らかなように、粒塩と酸化チタンを単に混合しただけでは、容器内で分離してしまう(試験例1−1)。このため、たとえば一回使用量のみを個装するなどの対応が必要となる。
【0028】
一方、粒塩に対して酸化チタンを付着させるため、グリセリンを用いた場合には、酸化チタンは粒塩に付着するため、充填直後には容器内での分離は認められなくなるが、振動の付加により酸化チタンの若干の分離が認められた。さらに、グリセリンの粘着性により、入浴剤の流動性悪化、強度の凝集の発生が認められた(試験例1−2)。グリセリンの代わりに、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール200、香料やビタミンEを用いても同様な結果が得られた(試験例1−3、1−4、1−6、1−7)。しかしながら、常温で固体ないし半固体のポリエチレングリコール2000を加熱溶融して用いた場合には、核粒子上で酸化チタンがむら付きし、好ましくない(試練例1−5)。
【0029】
また、グリセリンや、ポリエチレングリコール200、香料の配合量を減らしても、酸化チタンの配合量をそれに応じて減少させれば、酸化チタンが均一に付着した入浴剤が得られた(試験例1−8、1−10、1−12)。さらに、グリセリンや、ポリエチレングリコール200、香料の配合量を2倍に増やしても、同様なものが得られた(試験例1−9、1−11、1−13)。
【0030】
次に、グリセリンにより酸化チタンを付着させ、さらにコーティング剤としてポリエチレングリコール1500やポリエチレングリコール300と1540の混合物を被覆した場合には、分離はほとんど生じず、しかも流動性、凝集の発生にかなりの効果が認められた(試験例1−15、1−16)。
【0031】
しかしながら、常温で液体のポリエチレングリコール300を用いた場合、コーティング剤として機能せず、容器内で分離が認められ、流動性も悪かった(試験例1−14)。また、コーティング剤としてポリエチレングリコール6000を用いた場合、凝固点が高いため、均一にコーティングされる前に固化してしまい、容器内での酸化チタンの分離が認められた(試験例1−17)。
また、ポリエチレングリコール300と1540の混合物の配合量を増減させても、容器内で分離せず、流動性や凝集の発生において改善されたものが得られた(試験例1−18、1−19)。
【0032】
これに対し、流動化剤を付着することにより、いずれの評価項目でも高い評価が得られた(試験例1−20)。しかも、このものは、特に乾燥工程などを経ることなく、そのまま入浴剤として容器投入を行うことが可能である。
以下、本実施形態にかかる入浴剤の具体的な配合例を示す。
【0033】
[配合例1]
水溶性核粒子
粒塩 89.950%
赤色227号 0.050%
粘性被覆剤
グリセリン 0.400
1,3−BG 1.000
小径粒子
酸化チタン 5.000
コーティング剤
ポリエチレングリコール注1) 1.600
流動化剤
β−シクロデキストリン 2.000

製法
混合攪拌機に粒塩を投入し、さらに赤色227号を投入して着色する。この後、粘性被覆剤、小径粒子、液状化したコーティング剤、流動化剤を順次、投入し、入浴剤を得る。
【0034】
[配合例2]
水溶性核粒子
粒塩 88.650%
赤色227号 0.050%
粘性被覆剤
香料 1.600
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート 0.100
小径粒子
酸化チタン 5.000
コーティング剤
ポリエチレングリコール注1) 1.600
流動化剤
β−シクロデキストリン 3.000
製法
配合例1に準じた。
【0035】
[配合例3]
水溶性核粒子
粒塩 89.890%
赤色227号 0.050%
粘性被覆剤
グリセリン 0.200
1,3−BG 0.500
香料 0.700
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート 0.060
小径粒子
酸化チタン 5.000
コーティング剤
ポリエチレングリコール注1) 1.600
流動化剤
β−シクロデキストリン 2.000

製法
配合例1に準じた。
【0036】
[配合例4]
水溶性核粒子
粒塩 90.890%
赤色227号 0.050%
粘性被覆剤
グリセリン 0.200
1,3−BG 0.500
香料 0.700
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート 0.060
小径粒子
酸化チタン/酸化ケイ素被覆マイカ 5.000
コーティング剤
ポリエチレングリコール注1) 1.600
流動化剤
β−シクロデキストリン 1.000

製法
配合例1に準じた。
【0037】
[配合例5]
水溶性核粒子
粒塩 89.890%
赤色227号 0.050%
粘性被覆剤
グリセリン 0.200
1,3−BG 0.500
香料 0.700
ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート 0.060
小径粒子
蜂蜜パウダー(蜂蜜+デキストリン) 5.000
コーティング剤
ポリエチレングリコール注1) 1.600
流動化剤
β−シクロデキストリン 2.000

製法
配合例1に準じた。

注1) ポリエチレングリコール300とポリエチレングリコール1540の混合物


【特許請求の範囲】
【請求項1】
水溶性核粒子と、
該核粒子に被覆され、常温で液状の粘性被覆剤と、
前記粘性被覆剤層に付着され、前記水溶性核粒子と同等ないしそれ以下の径を有する小径粒子と、
前記小径粒子上に被覆された、常温で固体もしくは半固体で加熱溶融性を有し、温水に可溶なコーティング剤と、
前記コーティング剤層上に付着された、流動化剤と、
を備えたことを特徴とする顆粒状入浴剤。
【請求項2】
請求項1記載の粒状入浴剤において、
水溶性核粒子は平均粒子径1〜10mmの粒塩であり、かつ入浴剤中80〜99質量%であり、
粘性被覆剤は、ポリオール、親水性高分子、油剤からなる群より選択される一種又は二種以上であり、かつ入浴剤中0.1〜5質量%であり、
小径粒子は、白濁剤、パール剤、生薬成分からなる群より選択される一種又は二種以上であり、かつ入浴剤中0.1〜15質量%であり、
コーティング剤は、ポリエチレングリコールであり、かつ入浴剤中0.1〜10質量%であり、
流動化剤は、シクロデキストリンであり、かつ入浴剤中0.1〜10質量%であることを特徴とする顆粒状入浴剤。


【図1】
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【公開番号】特開2011−231076(P2011−231076A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104748(P2010−104748)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【出願人】(595017931)株式会社クロイスターズ (4)
【Fターム(参考)】