説明

顆粒状固体ワックス粒子

【課題】巨大輸送船舶の船倉でばら積で船輸送することのできる顆粒状固体ワックス粒子を提供する。
【解決手段】427℃未満の低T10沸点を有する高パラフィン系ワックス及び無機粉末コーティングを含み、場合により、低T10沸点を有する高パラフィン系ワックス上の高沸点ワックスの層、及び高沸点ワックスの層上の無機粉末コーティングを有する顆粒状固体ワックス粒子。別々の実施形態において、427℃未満のT10沸点を有する高パラフィン系ワックス又は25℃で3mm/10を超える針侵入度を有する高パラフィン系ワックスは、熱滴下ワックステストでワックスによりカプセル化されずにワックスを吸着する粉末で被覆される。又、顆粒状固体ワックス粒子として、427℃未満のT10沸点を有する高パラフィン系ワックスを輸送するための方法。及び、遠隔地から輸送された顆粒状固体ワックス粒子から基油を作製する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、巨大輸送船舶で輸送するのに適した顆粒状固体ワックス粒子の組成物、顆粒状固体ワックス粒子の輸送方法、及び輸送された固体ワックス粒子から基油を作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高パラフィン系ワックスは多数の異なる精製方法により作製される。高パラフィン系ワックスは、その他の所望の炭化水素生成物、例えば、燃料、潤滑油、及び化学品等にさらに改良されてもよい。ワックス改良装置は製造業者にとっては高価であり、現在存在している多数の精油所で利用されているワックス改良プラントが存在するので、ワックスを1つの場所で製造し、更なる改良のためにワックスを遠隔地に船輸送することが多くの場合望まれる。問題は、ワックスが取り扱い難く、特に大量に取り扱うのが困難であることである。
【0003】
或る人々は、ワックスを溶融し、ワックスを溶融形態で輸送し、ワックスの高沸点画分を選択し、硬い固体ペレットを作製し、固体ワックスペレットを作製し、これらを別の炭化水素液体に懸濁し、水中でワックスのエマルションを形成することによりワックスを船輸送した。これらの以前の船輸送方法の多くは、2004年9月28日出願の米国特許出願第10/950,662号に記載されている。幾つかの状態においては、顆粒状固体の船輸送は溶融ワックス又はスラリーの船輸送よりも好ましいと言える。その1つは、受け取り場所が既に顆粒状固体を取り扱うための設備を有する場合である。
【0004】
又、或る人々はワックスを固体粒子として船輸送したが、これらのワックスは800°Fよりも十分高い沸点を有していて、ワックスは硬く、粉砕するのに手間が掛かった。高沸点画分が選択される場合は、改良できる低沸点ワックスの無駄な損失が存在する。一般的にこれらの固体ワックス粒子は、パレット上でボックス又はバッグで船輸送されており、パレットは、パレット当たり約2000lbまで積載されているに過ぎない。以前の固体ワックス粒子の大部分は25℃で低い針侵入度を有していた。これらの針侵入度は25℃で2mm/10未満であるか、又はこれらは、その重みで砕けたり凝集したりしない様に小さなコンテナーで船輸送する制限を受けていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
所望されているのは、低沸点画分を有するか、又は凝集したり砕けたりせずに巨大輸送船舶の船倉でばら積で船輸送することのできる、ASTM D1321による高い針侵入度を有する顆粒状固体ワックス粒子である。大きな船倉を有する船舶、例えば原油タンカー等が顆粒状固体ワックス粒子を船輸送するのに利用されることが特に望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、427℃(800°F)未満のT10沸点を有する高パラフィン系ワックス及び無機粉末コーティングを含む顆粒状固体ワックス粒子を見出した。この顆粒状固体ワックス粒子は巨大輸送船舶の船倉でばら積で容易に輸送することができる。
【0007】
別の実施形態においては、本発明者らは、25℃で3mm/10を超える、ASTM D1321による針侵入度を有するワックス及び熱滴下ワックステストでワックスによりカプセル化されずにワックスを吸収する無機粉末のコーティングを含む顆粒状固体ワックス粒子を見出した。
【0008】
別個の実施形態において、本発明者らは、a)427℃(800°F)未満のT10沸点を有する第1の高パラフィン系ワックス、b)第1の高パラフィン系ワックス上に置かれた510℃(950°F)を超えるT10沸点を有する第2の高パラフィン系ワックスの層、及びc)第2の高パラフィン系ワックスの外側上の無機粉末コーティング、を含む顆粒状固体ワックス粒子を見出した。
【0009】
又、本発明者らは、427℃(800°F)未満のT10沸点を有するワックス及び熱滴下ワックステストでワックスによりカプセル化されずにワックスを吸着する粉末のコーティングを含む顆粒状固体ワックス粒子を見出した。
【0010】
さらに、本発明者らは、a)(i)427℃(800°F)未満のT10沸点を有する高パラフィン系ワックスを選択する工程、(ii)ワックスを最長方向において0.1〜50mmの直径の固体粒子に形成する工程、及び(iii)ワックス粒子を無機粉末でコーティングする工程により顆粒状固体ワックス粒子を生成する工程、b)顆粒状固体ワックス粒子を輸送船舶に積み込む工程、c)積み込んだ顆粒状固体ワックス粒子を輸送する工程、並びにd)顆粒状固体ワックス粒子を荷降ろしする工程、を含むワックスの輸送方法を見出した。
【0011】
別個の実施形態において、本発明者らは、a)427℃(800°F)未満のT10沸点を有する高パラフィン系ワックス又は25℃で3mm/10を超える、ASTM D1321による針侵入度を有する高パラフィン系ワックス及び無機粉末コーティングで作製された、輸送船舶において7.5メートルを超える高さの顆粒状固体ワックス粒子を遠隔地に輸送する工程、及びb)顆粒状固体ワックス粒子を水素化処理して1つ又は複数の基油を生成する工程を含む、遠隔地から輸送されたワックスから基油を作製する方法を見出した。
【発明を実施するための形態】
【0012】
顆粒状固体粒子の船輸送は液体炭化水素を船輸送するのに比べて比較的費用が掛かる場合があるが、多くの一般の製品はこの方法で船輸送される。顆粒状固体粒子として経済的に船輸送される製品の例は、穀物、水素化処理触媒、石炭、及び顆粒洗剤である。固体粒子が砕けたり凝集したりしない限り、これらは広範囲の方法を使用して顆粒状固体として容易に輸送することができる。
【0013】
Sasol社、Shell社及びその他のワックス製造業者は、顆粒状固体ワックスのペレット、フレーク、粒子、又は粒状の形状のものを現在市販している。これらは、一般的に、製品の重量で固体粒子が砕けたり凝集したりするのを防ぐために小さい包みで販売及び輸送されている。さらに、本発明までは、市販の顆粒状固体ワックス粒子は800°Fを超えるT10沸点を有していた。高パラフィン系フィッシャー−トロプシュ由来顆粒状固体ワックス粒子の幾つかの例を以下に示す。
【0014】
【表1】

【0015】
顆粒状固体ワックス粒子は、本開示の文脈においては自由流動固体である。「自由流動」の意味は、途切れることなく流動し、又は流れることができることである。その他の自由流動固体の例としては、穀物、水素化処理触媒、石炭、顆粒洗剤が挙げられる。本発明の顆粒状固体ワックス粒子は、最長方向で0.1mmを超える粒径を有する。好ましくは、これらは最長方向の直径で0.3〜50mmの粒径、さらに好ましくは最長方向の直径で1〜30mmの粒径のものである。本発明において最も有用な顆粒状固体ワックス粒子は次の1つから選択される形状を有する:粒状、錠剤状、楕円状、円筒状、球状、卵形及び本質的に球状。本質的に球状とは、粒子が約1.3未満のアスペクト比を有するほぼ丸い形状を有することを意味する。本明細書で使用される「アスペクト比」は、粒子の最大投影の値を粒子の幅の値で除したものとして定義される幾何学用語である。「最大投影」は、最大の可能な粒子投影である。これは、時々、最大キャリパー(caliper)寸法と呼ばれ、粒子の最大断面における最大寸法である。粒子の「幅」は、最大投影に垂直な粒子投影であり、最大投影に垂直な粒子の最大寸法である。アスペクト比が粒子の集合で決定される場合は、アスペクト比は、2〜3の代表的な粒子について測定して、結果を平均してもよい。代表的な粒子はASTM D5680−95a(2001年に再認可された)により試料採取されるべきである。ワックスは、成型、小球化、ロール掛け、プレス、回転造粒、押出し、ハイドロホーミング、及びロートホーミング(rotoforming)を含めた多数の方法で固体粒子に形成することができる。例えば、Sandvik Process Systems社(Shanghai)は、本発明において有用と考えられるパラフィン系ワックスの自由流動香剤を製造するための巨大なロートホーミング装置を開発した。
【0016】
高パラフィン系ワックスは、この開示の文脈においては、直鎖パラフィン(n−パラフィン)の高含有量を有するワックスである。本発明の方法の枠組みの実施において有用な高パラフィン系ワックスは、一般的に、少なくとも40重量%のn−パラフィン、好ましくは、50重量%を超えるn−パラフィン、さらに好ましくは75重量%を超えるn−パラフィンを含む。n−パラフィンの重量%は、2004年7月22日出願の米国特許出願第10/897,906号において詳細に記載されているガスクロマトグラフィーにより一般的に決定される。
【0017】
本発明で使用されてもよい高パラフィン系ワックスの例としては、スラックワックス、脱油スラックワックス、精製フートオイル、ワックス状潤滑ラフィネート、n−パラフィンワックス、NAOワックス、化学プラント工程で製造されたワックス、脱油石油由来ワックス、微結晶ワックス、フィッシャー−トロプシュ由来ワックス、及びこれらの混合物が挙げられる。本発明の実施において使用される高パラフィン系ワックスの流動点は、一般的に、約50℃を超え、通常約60℃を超える。「フィッシャー−トロプシュ由来」と言う用語は、生成物、画分、又は供給物が、フィッシャー−トロプシュ法による幾つかの段階で発生するか又は生成されることを意味する。フィッシャー−トロプシュ方法に対する供給物は、天然ガス、石炭、頁岩油、石油、都市ゴミ、これらの由来のもの、及びこれらの組合せを含めて、広範囲の炭化水素質源から得られてもよい。
【0018】
本発明の顆粒状固体ワックス粒子の組成物において有用な高パラフィン系ワックスは、低T10沸点を有する。本発明以前は、その様な低T10沸点を有する顆粒状固体ワックスは柔らか過ぎて、これらはばら積輸送中に圧力で凝集してしまうであろう。好ましい実施形態においては、本発明の顆粒状固体ワックスは、又、広い沸点を有する。広い沸点の顆粒状固体ワックス粒子は、例えば、沸点が広ければ広いほど顆粒状固体ワックス粒子の粉砕抵抗が増大し、広範囲の最終製品、好ましくは1つ又は複数の品位の基油を含めた最終製品がそれから製造可能であるので望ましい。この開示における全ての沸騰範囲分布及び沸点は、別途言及されない限りASTM D6352の模擬蒸留合計沸点(SIMDIST TBP)標準分析方法又はその同等方法を使用して測定される。本明細書で使用されるASTM D6352と同等の分析方法とは、標準方法と実質的に同じ結果を与える任意の分析方法を意味する。T10沸点は、その温度でワックスの10重量%が沸騰する温度である。T90沸点は、その温度でワックスの90重量%が沸騰する温度である。本発明における使用に適した高パラフィン系ワックスは、427℃(800°F)未満のT10沸点を有する。好ましくは、高パラフィン系ワックスは、343℃(650°F)未満のT10沸点を有する。さらに、本発明における使用に適した高パラフィン系ワックスは、538℃(1000°F)を超えるT90沸点を有する。好ましくは、高パラフィン系ワックスの最終沸点は約620℃(約1150°F)を超える。高パラフィン系ワックスの約10重量%未満は、好ましくは約260℃(約500°F)より下で沸騰する。高パラフィン系ワックスの広い沸騰範囲により、T10沸点及びT90沸点間の差は、好ましくは約275℃(約500°F)を超える。
【0019】
別の実施形態においては、本発明の顆粒状固体ワックス粒子の組成物において有用な高パラフィン系ワックスは、25℃で高い針侵入度を有する。針侵入度は、ASTM D1321−04により決定される。針侵入度は、25℃で3mm/10を超え、好ましくは5を超える。本発明以前は、この高さの針侵入度を有するワックスは、凝集することなく巨大輸送コンテナーで船輸送するには柔らか過ぎた。
【0020】
本発明の顆粒状固体ワックス粒子は、上述の高パラフィン系ワックス及び無機粉末コーティングを含む。本発明で有用な無機粉末化合物は室温で固体でなければならず、非吸湿性でなければならず、従来の粒子製造方法により微細なミクロン又はサブミクロンサイズまで小さくすることができなければならない。有用な無機粉末化合物としては、周期律表(IUPAC 1997年)の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、及び/又は14族元素の酸化物、水酸化物、炭酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩、及びこれらの組合せが挙げられるがこれらに限定されない。当技術分野において有用なさらに好ましい無機化合物は簡単に入手することができ且つ低価格でなければならない。これらは、アルミナ、リン酸アルミニウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、酸化鉄、シリカ、ケイ酸塩、並びに種々の粘土及び鉱物、例えば、カオリン、アタパルガイト、スピオライト、タルク、長石、橄欖石、ドロマイト、アパタイト等を含むがこれらに限定されない。粉末コーティングの価格及び利便性は重要であるが、当技術分野において有用な最も好ましい化合物は、熱滴下ワックステストでワックスによりカプセル化されずにワックスを吸着する粉末物質である。
【0021】
本発明者らは、80℃で熱溶融したワックスの小滴(目薬の容器から)を、ワックスと同じ温度に加熱された粉末の平らな堆積物上に滴下する、本明細書で「熱滴下ワックステスト」と称する簡単なテストを発見した。最も有用な粉末では、ワックスは粉末によって直ちに吸着され、得られる粉末コーティングは濡れを示さず、冷却によって、ワックス含浸粉末は容易に広がることができ、例えば、人の指の間でワックス含浸粉末を転がすことによって分散させることができる。好ましくない粉末では、溶融ワックス小滴は2〜3秒間表面上に残存し、次いで、粉末をゆっくりと浸透して著しく湿って見える領域を生み出す。冷却によって、ワックス含浸した好ましくない粉末は、ワックスが好ましくない粉末をカプセル化したことを示している粉末を有する「ボタン」を形成する。熱滴下ワックステストでワックスによりカプセル化されずにワックスを吸着する幾つかの最も有用な粉末としては、γ−アルミナ、α−アルミナ、酸化チタン、及びこれらの混合物が挙げられるがこれらに限定されない。吸着は、或る物質が別の物質の中に化学的に結合される(これは吸収である)のではなく、物理的結合によって別の物質の内側に保持される場合に生起する。
【0022】
粉末の粒径は、これらが適用される高パラフィン系ワックス粒子のサイズよりも常に実質的に小さい。従って、粉末コーティングの粒径は直径100ミクロン未満、さらに好ましくは直径10ミクロン未満であるべきである。粒径及び表面汚染物質は熱ワックス滴下テストに影響を及ぼす。従って、熱滴下ワックステストにおいて許容される性能を発揮するサイズまで粉末コーティング材料を粉砕することが重要である。
【0023】
ワックス粒子全体の比率としての粉末の量は、明らかに、ワックス粒子の表面対容量比及びワックス粒子に対する粉末コーティングの固着係数に依存する。しかしならが、価格及び取扱いの問題によって、粉末コーティングは、被覆ワックス粒子全体の重量当たり8重量%未満を占めることが望ましい。さらに好ましくは、粉末は、輸送中に固着したり凝集したりするのを防ぐためにワックス粒子の表面上に適当な量の粉末が存在することを保証するために、被覆ワックス粒子全体の0.1〜5重量%の重量、なおさらに好ましくは0.1〜3重量%又は0.5〜3重量%の重量である。
【0024】
粉末コーティングは、溶剤又は揮発性担体を必要とせずに固体ワックス粒子の外側表面に適用することのできる乾燥コーティングである。粉末コーティングを適用するために使用されてもよい装置の例は、スプレーガン、回転ドラム混合機、及び振動コンベヤーである。
【0025】
破壊又は凝集化の可能性は、輸送船舶の船倉におけるワックスの高さが高ければ高い程一層高まると言える。本発明の顆粒状固体ワックス粒子は相当の荷重の下でも凝集したり又は砕けたりしない。一般的に、これらは450g/cmを超え、さらに好ましくは600g/cmを超え、なおさらに好ましくは650g/cmを超える荷重に耐える。690g/cmの荷重は、上から下に向けて押圧する凡そ12メートルの固体ワックス粒子の力に相当する。本発明の顆粒状固体ワックス粒子は、これらが7.5メートルを超える高さ、好ましくは12メートルを超える高さまで輸送船舶に積み込まれた場合に輸送船舶で遠隔地へ輸送されてもよい。
【0026】
本発明の顆粒状固体ワックス粒子のある実施形態は、427℃(800°F)未満のT10沸点を有する高パラフィン系ワックスと粉末コーティングとの間に硬いワックスの層を有する。硬いワックスは510℃(950°F)を超えるT10沸点を有し、粒子にさらに破砕抵抗を与える。硬いワックスの層は、浸漬、霧化、噴霧、標準パン、又はその他のコーティング方法により適用することができる。
【0027】
顆粒状固体ワックス粒子は、ベルトコンベヤー、スクリューコンベヤー、空気圧コンベヤー、チュービング、スクープローダー、ブロワー、真空−圧搾積載システム、及びホッパーローダーを含めた広範囲のばら固体取扱い装置を使用して輸送船舶に積み込まれてもよい。ワックス粒子の取扱い中及び輸送中に発生する粉塵により、微細な空気伝播粒子を捕捉する1つ又は複数の方法、例えば、エアフィルター、サイクロン、静電集塵器又は当該技術分野において知られている任意のその他の方法等を岸壁又は船舶に取付けることが必要な場合もある。本発明の顆粒状固体ワックス粒子は破砕及び固着することが恐らく少ないので、これらは従来の装置で比較的簡単に取り扱うことができる。これらは、好ましくは、7.5メートルを超える高さ、好ましくは12メートルを超える高さまで積み込まれ、大容量が、巨大輸送船舶の船倉でばらの状態で輸送されてもよい。好ましい輸送船舶は原油タンカーである。
【0028】
好ましい実施形態においては、顆粒状固体ワックス粒子を運ぶ積載輸送船舶は、顆粒状固体ワックス粒子が更なる加工処理のために荷降ろしされる遠隔地まで輸送される。輸送船舶に積載するのに使用されたのと同じ方法が輸送船舶から顆粒状固体ワックス粒子を荷降ろしするために使用することができる。再度、粉末コーティングの摩耗により、粒子フィルター、サイクロン、静電集塵器等の粉塵を捕捉するための設備を設けることが必要な場合もある。或いは又、荷降ろしの直前に顆粒状固体ワックス粒子のスラリーを船舶において作製し、ワックスを液体スラリーとして船舶からポンプ輸送することもできるであろう。使用に適したスラリー方法は、本明細書に組み込まれる、2004年9月28日出願の米国特許出願第10/950,653号、第10/950,654号、及び第10/950,662号に記載されている。液体/ワックススラリーの創生に有用な液体としては、水、アルコール、軽質蒸留物、中品位蒸留物、真空ガスオイル、及び/又はその他の精油流又はこれらの組合せが挙げられる。低硫黄液体は、ワックスの硫黄汚染が問題とされる用途では好ましい。或いは又、得られた生成物を従来の水素添加分解装置又は潤滑油水素添加分解装置へ送ることができるであろう幾つかの精油所では、真空ガスオイル等の液体炭化水素供給物を輸送船舶の船倉にポンプ輸送して、スラリーとして輸送船舶からワックスを取り出すことも可能と考えられる。
【0029】
1つの実施形態においては、輸送船舶から固体ワックス粒子を荷降ろしするのに空気圧システムを使用してもよいであろう。サイクロンはワックスを回収するのに使用され、ワックスは更なる加工処理のために油相中に置かれる。サイクロンの条件は、粉末の少なくとも一部が固体ワックス粒子から分離される様に設定されるであろう。粉末は、従来の空気ろ過系(バッグハウス)、できれば静電集塵器付きの空気ろ過系で空気から捕捉することができる。場合により、回収された粉末の少なくとも一部は顆粒状固体ワックス粒子製造場所に戻すことができる。
【0030】
本発明の文脈においては、遠隔地は、少なくとも10マイル離れた場所であり、好ましくは、少なくとも100マイル離れた場所である。遠隔地は精油所であってもよく、或いはさらに具体的に言えば、基油製造プラントであってもよい。更なる加工処理としては、溶融、顆粒状固体ワックス粒子からの粉末コーティングの除去、真空蒸留、水素化処理、溶剤脱ろう、粘土処理、及びブレンドが挙げられる。
【0031】
ワックスのその後の加工処理を妨げる可能性のある粉末コーティングの除去は、次の1つ又は複数:摩擦、空気吹き付け、水洗、酸洗浄により、又はさらに好ましくは、ワックスを溶融することにより達成されてもよい。ワックスの溶融により、さらに濃密な粉末コーティングが、殆どの場合、タンク又は船舶の底に単純に定着するが、これは集めて販売するか、又は単純に再加工処理して、顆粒状固体ワックス粒子の製造場所へ戻すことができる。非常に微細な粉末コーティングに対しては、溶融ワックスから無機成分を分離するために清澄剤又は添加剤を添加するか、ハイドロサイクロンを使用することが必要な場合もある。或いは又、溶融ワックスは、ろ過又は蒸留により精製することもできる。
【0032】
特に好ましい更なる加工処理の選択手段であって、低沸点高パラフィン系ワックスが優れた性質を有する選択手段は、1つ又は複数の基油を製造するための顆粒状固体ワックス粒子の水素化処理である。水素化処理の選択手段としては、水素化処理、水素化分解、水素異性化、及び水素化精製が挙げられる。軽質生成物、例えば、ディーゼル及びナフサは、又、低沸点高パラフィン系ワックスの水素化処理による副生成物として製造することができる。低沸点高パラフィン系ワックスを伴う使用に適した水素化処理工程の例は、本明細書に完全に組み込まれる、2003年12月23日出願の米国特許出願第10/744,870号に記載されている。
【0033】
1つの実施形態においては、粉末は、水素化処理が上流へ流れる水素化処理条件下で行われる場合は、ワックスの水素化処理後に除去されることが可能である。ワックスの、上流へ流れる水素化処理にとって好ましい方法は、本明細書に組み込まれる米国特許第6,359,018号に記載されている。粉末を水素化処理生成物の液体から除去するのに使用されてもよい方法の例は、ろ過、蒸留、遠心分離、及びこれらの組合せである。或る場合においては、水素化処理生成物の液体から粉末を除去することは、水素化処理前の顆粒状固体ワックス粒子からそれらを除去するよりも容易である場合もある。
【0034】
以下の実施例は本発明をさらに例示するために役立つものであって、本発明の範囲を限定しようとするものではない。
【実施例】
【0035】
(実施例1)
共同支持体フィッシャー−トロプシュ触媒を使用して作製されたフィッシャー−トロプシュワックスのサンプルを分析し、表Iで示される性質を有することが分かった。
【0036】
【表2】

【0037】
(実施例2)
実施例1に記載されたワックスを、真鍮ダイで溶融ワックスを成型することにより直径約10mmの実質的に球状の粒子に形成した。15gのワックス粒子を直径2インチの真鍮/青銅ペレットプレスで単一層にした。ペレットプレスのプランジャーに大きな錘をゆっくりと且つ均等に置いて690g/cmの荷重をワックス粒子に付加した。690g/cmの荷重は、40%の空隙率を有する0.936g/cmのワックス密度と仮定して、上から下に向けて押圧する凡そ12メートル(40フィート)の固体ワックス粒子の力に相当する。粒子は20℃の温度で荷重下で貯蔵される。1週間後に、荷重を取り除き、ペレットプレス上のプランジャーを注意深くゆっくりと動かしてワックス粒子を押出す。未被覆ワックス粒子は固着して単独の固体の塊になったことが観察された。圧縮されたワックスの塊をペトリ皿に置き、次いで傾けた場合、ワックスはさらに1つの大きな塊として固着した。これは、旅の終わりには船倉からワックスを取り出すことが極めて困難であり費用が掛かるので、未被覆ワックスが巨大輸送船舶の船倉において船輸送することができないことを証明した。
【0038】
(実施例3)
実施例2に記載された直径10mmのワックス粒子を、粒子をプラスチックバッグの中で次の粉末の1つと一緒に振動させることにより被覆した:1.8重量%の二酸化チタン(JT Baker社)、0.7重量%のγ−アルミナ(Buehler社の0.05ミクロン)、2.8重量%の炭酸カルシウム(JT Baker社)、1.0重量%の白色小麦粉(Gold Medal社)、1.0重量%の粉砂糖(C&H社)、又は0.1重量%の活性炭(Darco KB−B、Aldrich社)。この様にして、各タイプの15gの被覆粒子を、直径2インチの真鍮/青銅ペレットプレスの中に個々に置き、20℃の温度で1週間、被覆ワックス粒子に690g/cmの荷重を付加した。付加した荷重を取り除き、次いで、ワックス粒子をペレットプレスから注意深く取り出した。次いで、被覆ワックス粒子をペトリ皿に置き、次いで、粒子の流動の仕方を観察するために約30度傾けた。実施例2及び3からの観察は以下の表IIに纏められる。
【0039】
【表3】

【0040】
二酸化チタン及びγ−アルミナ粉末コーティングは、付加された荷重下でワックス粒子が凝集するのを防いだ。炭酸カルシウムのコーティングは有効性が低いが、荷重が小さければ多分有効に働くことができる。活性炭コーティングは、コーティングの中で最低の効力であった。しかしながら、効果に乏しい粉末コーティングでも兎に角コーティングなしよりは良好であることは明らかである。
【0041】
(実施例4)
有効性に乏しいものと高度に有効な粉末コーティング材料を区別するために、本発明者らは、加熱溶融したワックスの小滴が同じ温度に加熱されたテスト粉末と如何に相互に作用するのかを観察することにより、実施例2及び3で使用された加圧テストでの粉末コーティングの性能を予測することが可能であることを見出した。従って、80℃に加熱された実施例1のフィッシャー−トロプシュワックス(FTワックス)の一滴を、へらで平らにされた約3gのテスト粉末の上に置き、又80℃に加熱した。次いで、ワックス及びテスト粉末を20℃に冷却した。観察を、80℃において及び20℃に冷却した後で行った。この観察は以下の表IIIに纏められる。
【0042】
【表4】

【0043】
これらの結果は、或る種の粉末コーティング、例えば、二酸化チタン等はフィッシャー−トロプシュワックスと非常に異なる相互反応をして、ワックスによりカプセル化されることがなく、従って、固体の「ボタン」を形成しないことを証明する。明らかに、800°F未満のT10沸点を有する高パラフィン系ワックスを含む2つのワックス粒子は、ワックスの12メートルに相当する圧力に掛けられる場合、接触点表面は変形する。粉末コーティングは、1つの粒子から次の粒子へのワックスの相互拡散を阻止することを助ける。従って、粒子は簡単に分離することができる。ワックスによりカプセル化することができる粉末は、ワックスに容易に吸着されるように見える粉末ほど有効性のあるものではない。ワックス含浸二酸化チタン粉末は流動し、純粋な出発物質同様に殆どが粉々に壊れる。これは、本発明者らがテストしたその他の粉末、例えば、炭酸カルシウム及び活性炭等の室温で「ボタン」を形成した粉末に対する場合とは異なる。
【0044】
これらの結果は、二酸化チタン粉末等の粉末で被覆された、800°F未満のT10沸点を有する高パラフィン系ワックスを含む固体ワックス粒子は、巨大輸送船舶、例えば原油タンカーの船倉において長距離を船輸送するのに理想的であろうことを証明する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.427℃(800°F)未満のT10沸点を有する高パラフィン系ワックス、及び
b.無機粉末コーティング
を含む顆粒状固体ワックス粒子。
【請求項2】
前記高パラフィン系ワックスが、538℃(1000°F)を超えるT90沸点をさらに有する、請求項1に記載の顆粒状固体ワックス粒子。
【請求項3】
前記顆粒状固体ワックス粒子のサイズが最長方向において0.3〜50mmである、請求項1に記載の顆粒状固体ワックス粒子。
【請求項4】
前記顆粒状固体ワックス粒子の形状が、粒状、錠剤状、楕円状、円筒状、球状、卵形及び本質的に球状の群から選択される、請求項1に記載の顆粒状固体ワックス粒子。
【請求項5】
前記無機粉末が、酸化物、水酸化物、炭酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩、及びこれらの組合せの群から選択される、請求項1に記載の顆粒状固体ワックス粒子。
【請求項6】
前記無機粉末が、周期律表(IUPAC 1997年)の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、又は14族の1つ又は複数の元素を含む、請求項5に記載の顆粒状固体ワックス粒子。
【請求項7】
前記無機粉末が、γ−アルミナ、α−アルミナ、酸化チタン、及びこれらの混合物の群から選択される、請求項1に記載の顆粒状固体ワックス粒子。
【請求項8】
顆粒状固体ワックス粒子全体に対する百分率としての無機粉末コーティングの量が0.1〜5重量%である、請求項1に記載の顆粒状固体ワックス粒子。
【請求項9】
前記高パラフィン系ワックスがフィッシャー−トロプシュ由来のものである、請求項1に記載の顆粒状固体ワックス粒子。
【請求項10】
a.343℃(650°F)未満のT10沸点及び538℃(1000°F)を超えるT90沸点を有する高パラフィン系ワックス、及び
b.前記顆粒状固体ワックス粒子の組成物全体の0.1〜5重量%の量の無機粉末コーティング
を含む、請求項1に記載の顆粒状固体ワックス粒子。
【請求項11】
a.427℃(800°F)未満のT10沸点を有する第1の高パラフィン系ワックス、
b.前記第1の高パラフィン系ワックス上に置かれた510℃(950°F)を超えるT10沸点を有する第2の高パラフィン系ワックスの層、及び
c.前記第2の高パラフィン系ワックスの外側上の無機粉末コーティング
を含む顆粒状固体ワックス粒子。
【請求項12】
a.427℃(800°F)未満のT10沸点を有するワックス、及び
b.熱滴下ワックステストで前記ワックスによりカプセル化されずに前記ワックスを吸着する粉末のコーティング
を含む顆粒状固体ワックス粒子。
【請求項13】
前記粉末が、酸化物、水酸化物、炭酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩、及びこれらの組合せからなる群から選択される無機粉末である、請求項12に記載の顆粒状固体ワックス粒子。
【請求項14】
前記粉末が、周期律表(IUPAC 1997年)の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13及び14族の1つ又は複数の元素を含む、請求項12に記載の顆粒状固体ワックス粒子。
【請求項15】
前記粉末が、γ−アルミナ、α−アルミナ、酸化チタン、及びこれらの混合物の群から選択される、請求項12に記載の顆粒状固体ワックス粒子。
【請求項16】
a.(i)427℃(800°F)未満のT10沸点を有する高パラフィン系ワックスを選択する工程、
(ii)前記ワックスを最長方向において0.1〜50mmの直径の固体粒子に形成する工程、
(iii)前記ワックス粒子を無機粉末でコーティングする工程
により顆粒状固体ワックス粒子を生成する工程、
b.前記顆粒状固体ワックス粒子を輸送船舶に積み込む工程、
c.前記積み込んだ顆粒状固体ワックス粒子を輸送する工程、及び
d.前記積み込んだ顆粒状固体ワックス粒子を荷降ろしする工程
を含む、ワックスの輸送方法。
【請求項17】
前記輸送船舶における前記積み込んだ顆粒状固体ワックス粒子の高さが7.5メートルを超える、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記顆粒状固体ワックス粒子の水素化処理工程をさらに含む、前記顆粒状固体ワックス粒子を基油製造プラントまで輸送するための請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記高パラフィン系ワックスが、538℃(1000°F)を超えるT90沸点をさらに有する、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記輸送船舶が原油タンカーである、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
前記高パラフィン系ワックスがフィッシャー−トロプシュ由来のものである、請求項16に記載の方法。
【請求項22】
前記顆粒状固体ワックス粒子から前記無機粉末コーティングを除去する工程をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項23】
前記除去工程が、摩擦、空気吹き付け、ろ過、粘土処理、水洗、酸洗浄、蒸留、溶融、又はこれらの組合せにより行われる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
荷降ろし前に前記顆粒状固体ワックス粒子のスラリーを形成する工程をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項25】
a.(i)1)427℃(800°F)未満のT10沸点、又は
2)25℃で3mm/10を超える、ASTM D1321による針侵入度
を有する高パラフィン系ワックス、及び
(ii)粉末コーティング
を含む顆粒状固体ワックス粒子を、輸送船舶において7.5メートルを超える高さで、遠隔地に輸送する工程、及び
b.前記顆粒状固体ワックス粒子を水素化処理して1つ又は複数の基油を生成する工程
を含む、遠隔地から輸送されたワックスから基油を作製する方法。
【請求項26】
前記高パラフィン系ワックスがフィッシャー−トロプシュ由来のものである、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記粉末コーティングの粉末が、熱滴下ワックステストで前記ワックスによりカプセル化されずに前記ワックスを吸着する、請求項25に記載の方法。
【請求項28】
水素化処理工程前に前記顆粒状固体ワックス粒子から前記粉末コーティングを除去する工程をさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記水素化処理工程の1つ又は複数の液体生成物から前記粉末コーティングを除去する工程をさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項30】
a.25℃で3mm/10を超える、ASTM D1321による針侵入度を有するワックス、及び
b.熱滴下ワックステストで前記ワックスによりカプセル化されずに前記ワックスを吸着する無機粉末のコーティング
を含む顆粒状固体ワックス粒子。

【公開番号】特開2012−162746(P2012−162746A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−120470(P2012−120470)
【出願日】平成24年5月28日(2012.5.28)
【分割の表示】特願2008−504104(P2008−504104)の分割
【原出願日】平成18年3月1日(2006.3.1)
【出願人】(503148834)シェブロン ユー.エス.エー. インコーポレイテッド (258)
【Fターム(参考)】