説明

顆粒状点火器用発火薬組成物及びそれを用いた点火器

【課題】発火感度を維持しながら、摩擦感度を低減することが可能な顆粒状点火器用発火薬組成物を提供する。
【解決手段】金属粉末、過塩素酸カリウム及び硝酸カリウムを含有してなることを特徴とする顆粒状点火器用発火薬組成物である。ここで、本発明の顆粒状点火器用発火薬組成物は、前記金属粉末を40〜80質量%、前記過塩素酸カリウムを5〜55質量%、及び前記硝酸カリウムを5〜30質量%含有することが好ましい。また、前記金属粉末が、ジルコニウム粉末、又はジルコニウム粉末及びタングステン粉末を含有することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顆粒状点火器用発火薬組成物及び該発火薬組成物を用いた点火器に関し、特に発火感度を維持しつつ、摩擦感度を低減した顆粒状点火器用発火薬組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
エアバックやシートベルトプリテンショナー等の自動車の安全装置に使用されるガス発生器に搭載される点火器として、従来から種々の点火器が開発されている。このような点火器には、一般に微小なエネルギーで発火が可能な発火薬が要求されており、具体的には、ジルコニウム粉末及び過塩素酸カリウムの混合物(ZPP)や、ジルコニウム粉末、タングステン粉末及び過塩素酸カリウムの混合物(ZWPP)を点火器用発火薬組成物として用いる手法が行われている。
【0003】
例えば、特開平9−227266号公報には、ZPPやZWPPからなる発火薬組成物に、更に酸化マグネシウム等の塩基性物質を配合することにより、過塩素酸アルカリ塩の金属に対する腐食性を改善する技術が開示されている。なお、特開平9−227266号には、酸化剤として硝酸カリウムの使用が記載されているが、過塩素酸アルカリ塩と硝酸カリウムとを併用することについて、一切記載されていない。
【0004】
また、特開2004−115001号公報には、火工材料として、溶媒中に燃料成分と酸化剤成分を含んでなる火工材料スラリーを充填し、乾燥したものを用いるインフレータ用点火器が開示されている。ここで、酸化剤成分としては、過塩素酸カリウム等の過塩素酸塩、硝酸カリウム等の硝酸塩、及びこれらの混合物からなる群から選択される粉末が例示されている。そして、かかる酸化剤成分は、火工材料スラリー中に均一に分散させて使用される。従って、特開2004−115001号公報では、燃料成分と酸化剤成分とを溶媒中に分散させることで、粉末状態では感度が高い火工材料の取り扱い時の安全性を高めており、具体的には、燃焼成分としてジルコニウムを使用する場合、その粉末は非常に感度が高く、発火しやすいことから、溶媒に分散させた状態で点火器に充填することにより製造時の安全性を高めることができると記載されている。しかしながら、特開2004−115001号公報には、粉末状態での火工材料における取り扱い時の安全性について検討されておらず、また、過塩素酸カリウムと硝酸カリウムを併用したという具体例は記載されていない。
【0005】
ところで、点火器用発火薬組成物に用いることができる金属粉末は、一般に微細化するほど発火感度が向上することが知られるが、その一方で製造時の取り扱いにおける自然発火の危険性が増し、その安全性の低下が問題となっていた。特に、好適な金属粉末として使用されるジルコニウム粉末は、発火性能に優れる反面、製造時の取り扱いにおける自然発火の危険性が高いことが知られている。
【0006】
このような問題に対して、特開2001−348291号公報には、金属粉末を形成する金属粒子の形状を鱗片形状とすることで、発火感度を維持しつつ、取り扱い時の安全性の低下を抑制する技術が開示されている。
【0007】
【特許文献1】特開平9−227266号公報
【特許文献2】特開2004−115001号公報
【特許文献3】特開2001−348291号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特開2001−348291号公報に開示の技術は、金属粉末を特殊な形状とすることが必要であり、製造コストが高くなるという欠点がある。
【0009】
そこで、本発明の目的は、上記従来技術の問題を解決し、発火感度を維持しながら、摩擦感度を低減することが可能な顆粒状点火器用発火薬組成物を提供することにある。また、本発明の他の目的は、かかる顆粒状点火器用発火薬組成物を用いた点火器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、金属粉末及び過塩素酸カリウムを含有してなる点火器用発火薬組成物に、更に硝酸カリウムを配合し顆粒状とすることで、顆粒状点火器用発火薬組成物の発火感度を維持しながら、摩擦感度を低減することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
即ち、本発明の顆粒状点火器用発火薬組成物は、金属粉末、過塩素酸カリウム及び硝酸カリウムを含有してなることを特徴とする。
【0012】
本発明の顆粒状点火器用発火薬組成物の好適例においては、前記金属粉末が、ジルコニウム粉末、又はジルコニウム粉末及びタングステン粉末を含有する。
【0013】
本発明の顆粒状点火器用発火薬組成物は、前記金属粉末を40〜80質量%、前記過塩素酸カリウムを5〜55質量%、及び前記硝酸カリウムを5〜30質量%含有することが好ましい。
【0014】
本発明の顆粒状点火器用発火薬組成物において、前記金属粉末がジルコニウム粉末、又はジルコニウム粉末及びタングステン粉末を含有する場合、前記ジルコニウム粉末及び前記タングステン粉末の合計中のジルコニウム粉末の含有率は15〜99質量%であり、タングステン粉末の含有率は1〜85質量%であることが好ましい。
【0015】
また、本発明の点火器は、上記の顆粒状点火器用発火薬組成物を用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、金属粉末及び過塩素酸カリウムに対し、硝酸カリウムを配合することで、発火感度を維持しながら、摩擦感度を低減することが可能な顆粒状点火器用発火薬組成物を提供することができる。また、かかる顆粒状点火器用発火薬組成物を用いた点火器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
<顆粒状点火器用発火薬組成物>
以下に、本発明の顆粒状点火器用発火薬組成物を更に詳細に説明する。本発明の顆粒状点火器用発火薬組成物は、金属粉末、過塩素酸カリウム及び硝酸カリウムを含有してなることを特徴とする。通常、顆粒状点火器用発火薬組成物を製造する際にその取り扱い上の安全性を向上させるためには、摩擦感度を低減し、顆粒状点火器用発火薬組成物を鈍感化させることになる。しかしながら、顆粒状点火器用発火薬組成物の摩擦感度を低減した場合、その発火感度をも低減してしまうことが問題であった。このような問題に対し、本発明の顆粒状点火器用発火薬組成物は、燃料成分として金属粉末を用い、酸化剤として過塩素酸カリウムを用いる成分系に、更に酸化剤として硝酸カリウムを配合することで、発火感度を維持しながら、摩擦感度を低減することができる。このため、本発明の顆粒状点火器用発火薬組成物は、発火感度の向上に伴い問題となっていた製造時の事故を防ぐことができる。また、本発明の顆粒状点火器用発火薬組成物は、酸化剤として硝酸カリウムを含有するため、過塩素酸カリウムの含有量を低減し、塩素の排出を抑制することができる。
【0018】
本発明の顆粒状点火器用発火薬組成物に用いる金属粉末は、燃料成分として機能し、具体例としては、ジルコニウム粉末、タングステン粉末、アルミニウム粉末、マグネシウム粉末、チタン粉末等が挙げられる。これら金属粉末は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。また、上記金属粉末は、発火性能に優れる観点から、ジルコニウム粉末を単独で使用することが好ましく、摩擦感度を低減し、製造時の取り扱いを容易にする観点から、ジルコニウム粉末及びタングステン粉末を混合して使用することが好ましい。なお、金属粉末は、公知の方法により形成され、例えば、ガスアトマイズ法により得られる球状形状が好適に使用される。
【0019】
本発明の顆粒状点火器用発火薬組成物に用いる金属粉末の含有率は、顆粒状点火器用発火薬組成物中、40〜80質量%の範囲であることが好ましく、55〜70質量%の範囲であることが更に好ましい。金属粉末の含有率が40質量%未満では、発火感度が低下するおそれがあり、一方、80質量%を超えても、発火感度が低下するおそれがある。
【0020】
また、本発明の顆粒状点火器用発火薬組成物に用いる金属粉末が、ジルコニウム粉末、又はジルコニウム粉末及びタングステン粉末を含有する場合、ジルコニウム粉末及びタングステン粉末の合計中のジルコニウム粉末の含有率は15〜99質量%であり、タングステン粉末の含有率は1〜85質量%であることが好ましく、ジルコニウム粉末及びタングステン粉末の合計中のジルコニウム粉末の含有率は15〜90質量%であり、タングステン粉末の含有率は10〜85質量%であることが更に好ましい。上記ジルコニウム粉末の含有率が99質量%を超えると(タングステン粉末の含有率が1質量%未満では)、かさ密度が低くなり充填性が悪くなる。一方、上記ジルコニウム粉末の含有率が15質量%未満では(上記タングステン粉末の含有率が85質量%を超えると)、威力が低下するおそれがある。
【0021】
上記金属粉末は、粒径が1〜5μmであることが好ましい。金属粉末の粒径が1μm未満では、発火感度が必要以上に高まり、顆粒状点火器用発火薬組成物の製造時の取り扱いにおける安全性が低下するおそれがあり、一方、5μmを超えると、発火感度が低下するおそれがある。
【0022】
本発明の顆粒状点火器用発火薬組成物に用いる過塩素酸カリウムは、酸化剤として機能することを特徴とする。過塩素酸カリウムの含有率は、顆粒状点火器用発火薬組成物中、5〜55質量%が好ましく、20〜40質量%が更に好ましい。過塩素酸カリウムの含有率が5質量%未満では、発火感度が低下するおそれがあり、一方、55質量%を超えても、発火感度が低下するおそれがある。
【0023】
本発明の顆粒状点火器用発火薬組成物に用いる硝酸カリウムは、酸化剤として機能し、更には、金属粉末との反応性を低下させるため、顆粒状点火器用発火薬組成物の発火感度を維持しつつ、摩擦感度を低減することができる。また、硝酸カリウムの含有率は、顆粒状点火器用発火薬組成物中、5〜30質量%が好ましい。硝酸カリウムの含有率が5質量%未満では、摩擦感度が高くなるおそれがあり、一方、30質量%を超えると、発火感度が低下するおそれがある。
【0024】
本発明の顆粒状点火器用発火薬組成物は、過塩素酸カリウム及び硝酸カリウムを含有するが、過塩素酸カリウム(A)と硝酸カリウム(B)の質量比(A/B)は、1/10〜10/1の範囲が好ましい。該質量比(A/B)が1/10より小さいと(即ち、過塩素酸カリウムの割合が低減すると)、発火感度が低下するおそれがあり、一方、質量比(A/B)が10/1より大きいと(即ち、過塩素酸カリウムの割合が増加すると)、塩素の排出の抑制効果が十分に得られない。
【0025】
また、本発明の顆粒状点火器用発火薬組成物は、過塩素酸カリウム及び硝酸カリウムの他に、他の酸化剤を含有することができる。他の酸化剤として、具体的には、塩素酸ナトリウム、過塩素酸ナトリウム、塩素酸カリウム、過塩素酸アンモニウム、硝酸ナトリウム等が挙げられる。これら他の酸化剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。なお、他の酸化剤の含有率は、顆粒状点火器用発火薬組成物中、1〜5質量%が好ましい。
【0026】
本発明の顆粒状点火器用発火薬組成物は、更に塩基性物質を含有することが好ましい。本発明の顆粒状点火器用発火薬組成物においては、塩基性物質を配合することで、点火器の金属部分の腐食を抑制することができる。本発明の顆粒状点火器用発火薬組成物に用いることができる塩基性物質として、具体的には、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、水酸化バリウム、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物;酸化リチウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化ルビジウム、酸化セシウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、酸化亜鉛、酸化タリウム、酸化セシウム等の金属酸化物;過酸化リチウム、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過酸化ルビジウム、過酸化セシウム、過酸化マグネシウム、過酸化カルシウム、過酸化ストロンチウム、過酸化バリウム等の金属過酸化物;炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ルビジウム、炭酸セシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ストロンチウム、炭酸バリウム等の金属炭酸塩等が挙げられ、これらの中でも、酸化マグネシウムが特に好ましい。これら塩基性物質は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。また、これらの塩基性物質は、水溶性であってもよいし、非水溶性であってもよい。なお、塩基性物質の含有率は、顆粒状点火器用発火薬組成物中、0.01〜10質量%であることが好ましく、0.05〜5質量%であることが更に好ましい。
【0027】
本発明の顆粒状点火器用発火薬組成物は、更にバインダを含有することが好ましい。本発明の顆粒状点火器用発火薬組成物においては、バインダを配合することで、顆粒状点火器用発火薬組成物を成形体とする際に破壊強度及びその他の機械的性質を改善することができる、本発明の顆粒状点火器用発火薬組成物に用いることができるバインダとして、具体的には、カルボキシメチルセルロースの金属塩、ヒドロキシエチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、ニトロセルロース、グアガム、ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、デンプンなどの多糖誘導体、ステアリン酸塩、フッ素ゴム、SBSゴム等の有機バインダが挙げられる。これらバインダは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。なお、バインダの含有率は、顆粒状点火器用発火薬組成物中、0.05〜5質量%であることが好ましい。
【0028】
本発明の顆粒状点火器用発火薬組成物には、上記金属粉末、過塩素酸カリウム、硝酸カリウム、他の酸化剤、塩基性物質、バインダの他に、本発明の目的を害しない範囲で、従来から発火薬に使用される配合剤を適宜選択して配合することができる。これら配合剤としては、市販品を好適に使用することができる。本発明の顆粒状点火器用発火薬組成物は、金属粉末、過塩素酸カリウム及び硝酸カリウムに、必要に応じて適宜選択した各種配合剤を配合して、混合、造粒等することにより製造することができる。
【0029】
本発明の顆粒状点火器用発火薬組成物の製造方法において、混合方法の一例としては、バインダ、溶剤、金属粉末を混合機にて混合し、その後過塩素酸カリウム及び硝酸カリウムを添加し、さらに混合して、これらの混合物を得る方法が挙げられる。また、造粒方法の一例としては、混合工程を経て得られる混合物をパレット上にとり風晒した後、メッシュに通して顆粒を得る方法が挙げられる。得られる顆粒の粒径はメッシュのサイズにより決定されるが、本発明の顆粒状点火器用発火薬組成物においては、その粒径が1.0mm以下の範囲であることが好ましく、0.7mm以下の範囲であることが更に好ましい。また、顆粒をある容積に計量する場合においては、粒径が揃っていることが好ましいが、メッシュが粗すぎると粒径が揃わず、メッシュが細かすぎると混合物がパスしにくい。よって、メッシュのサイズはこのことを考慮して決めるべきである。
【0030】
<点火器>
本発明の点火器は、上述した顆粒状点火器用発火薬組成物を用いることを特徴とする。本発明の点火器は、上記顆粒状点火器用発火薬組成物を用いる以外、特に制限はなく、公知の方法により製造することができる。
【0031】
以下に、図1を参照して本発明の点火器を詳細に説明する。図1は、本発明の点火器を用いたシートベルトプリテンショナー用ガス発生器の一例の断面図である。図示例のガス発生器1は、燃焼によりガスを発生するガス発生剤2を格納するカップ体3と、カップ体3の内側に配置され、通電によりガス発生剤2を着火させる点火器4と、カップ体3と点火器4を固定するホルダー5とを備える。なお、ガス発生器1は、更にガス発生器に通常用いられる公知の部品を備えることができる。また、図示例の点火器4は、発火薬組成物6を格納するカップ体7と、外部と電気的に接続するための電極ピン8が絶縁体9により固定された塞栓10と、各電極ピン8間に接続され発火薬組成物6に接する電橋線11とを備える。なお、本発明の点火器は、更に点火器に通常用いられる公知の部品を備えることができる。ここで、本発明の点火器は、発火薬組成物6に、上述した本発明の顆粒状点火器用発火薬組成物を用いることを要する。
【0032】
図示例のガス発生器1の作動について説明する。センサー(図示せず)が衝突を感知すると、コントロールユニット(作動器)(図示せず)に信号を送り、この信号を検知したコントロールユニットから電極ピン8に通電することにより、電橋線11がジュール熱を発し、この熱によって発火薬組成物6が発火し、この火炎によりガス発生剤2が燃焼して多量のガスを発生させる。発生した多量のガスは、シートベルトプリテンショナー(図示せず)に導入され、シートベルトプリテンショナー内の圧力を上昇させることにより、シートベルトプリテンショナーが作動し、シートベルトを締め付ける。
【実施例】
【0033】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0034】
(実施例1)
酢酸イソアミル中にバインダ(BNC社製,HIG−120)を溶解し、バインダ濃度2質量%の酢酸イソアミル溶液を調製した。次に、ジルコニウム粉末(粒径:2μm)6g及びタングステン粉末(粒径:0.7μm)7gの混合物に、上記酢酸イソアミル溶液(バインダ濃度:2質量%)1.1ccを添加した後、さらに酢酸イソアミル1.8ccを添加し、混合機にて混合した。その後、得られた混合物に、過塩素酸カリウム5.6g、硝酸カリウム1.4g及び酸化マグネシウム0.1gを添加し、さらに酢酸イソアミル2.4ccを添加して、再度混合機にて混合した。混合を終了した後、得られた混合物をパレット上に広げ、風晒した。風晒した後、メッシュを通して造粒を行い、その造粒物を乾燥機に入れ、60℃で乾燥させ、顆粒状点火器用発火薬組成物(約20g,粒径0.6mm)を得た。
【0035】
(実施例2〜4及び比較例1)
過塩素酸カリウム及び硝酸カリウムの使用量を変えた以外は、実施例1と同様にして、表1に示す配合処方の顆粒状点火器用発火薬組成物を調製した。なお、配合量は、組成物全体基準での質量%である。
【0036】
【表1】

【0037】
次に、得られた顆粒状点火器用発火薬組成物に対し、下記の方法により、摩擦感度試験及び発火感度試験を行った。結果を表2に示す。
【0038】
(1)摩擦感度試験(JIS K 4810)
BAM式摩擦感度試験機に取り付けた磁器製の摩擦棒と摩擦板の間に少量の試料をはさみ、荷重をかけた状態で摩擦板を水平に動かすことにより、摩擦感度試験を行った。荷重と爆発の成否との関係から摩擦感度の度合いを調べるが、その度合いについては、同一荷重で連続して試験を6回行い、1回だけ爆発するか、又は1回だけ爆発すると推定される1/6爆点の荷重を求めることにより、判断した。
【0039】
(2)発火感度試験
最小発火電流及び最大不発火電流を計算するための統計的な手法として、ブルーストーン法を用い、発火感度を評価した。簡単に説明すると、通電電流について等間隔で分けた複数のレベルを設定し、通電による試料の発火、不発火に応じて通電電流のレベルを変えていく。これを40回行い、最終的に統計処理をして最小発火電流及び最大不発火電流の平均値及び標準偏差を算出し、そこから所望の信頼度における最小発火電流及び最大不発火電流を求める。(なお、最小発火電流値及び最大不発火電流値の信頼水準を95%とし、信頼度を99.9999%とした。)
【0040】
【表2】

【0041】
*1 荷重75gfで2回の爆発を起こし,荷重50gfでは爆発が起きなかったことから,荷重50〜75gfの間に1/6爆点の荷重が存在すると判断した.
【0042】
表2から、実施例1〜4の顆粒状点火器用発火薬組成物は、硝酸カリウムを含有するため、比較例1の顆粒状点火器用発火薬組成物に比べて1/6爆点の荷重が大きく、摩擦感度が低下し、鈍感化にシフトしていることが分かる。また、実施例1及び3〜4の顆粒状点火器用発火薬組成物は、硝酸カリウムを5〜30質量%含有するため、摩擦感度を大幅に低減できることが分かる。
【0043】
一方、発火感度については、最小発火電流及び最大不発火電流の値に変化はあるものの、実施例1〜4の顆粒状点火器用発火薬組成物はいずれも使用に際して問題ないレベルにあることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の点火器を用いたシートベルトプリテンショナー用ガス発生器の一例の断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 ガス発生器
2 ガス発生剤
3 カップ体
4 点火器
5 ホルダー
6 発火薬組成物
7 カップ体
8 電極ピン
9 絶縁体
10 塞栓
11 電橋線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属粉末、過塩素酸カリウム及び硝酸カリウムを含有してなることを特徴とする顆粒状点火器用発火薬組成物。
【請求項2】
前記金属粉末が、ジルコニウム粉末、又はジルコニウム粉末及びタングステン粉末を含有することを特徴とする請求項1に記載の顆粒状点火器用発火薬組成物。
【請求項3】
前記金属粉末を40〜80質量%、前記過塩素酸カリウムを5〜55質量%、及び前記硝酸カリウムを5〜30質量%含有してなることを特徴とする請求項1に記載の顆粒状点火器用発火薬組成物。
【請求項4】
前記ジルコニウム粉末及び前記タングステン粉末の合計中のジルコニウム粉末の含有率が15〜99質量%であり、タングステン粉末の含有率が1〜85質量%であることを特徴とする請求項2に記載の顆粒状点火器用発火薬組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の顆粒状点火器用発火薬組成物を用いたことを特徴とする点火器。

【図1】
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【公開番号】特開2009−120424(P2009−120424A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−294569(P2007−294569)
【出願日】平成19年11月13日(2007.11.13)
【出願人】(000004086)日本化薬株式会社 (921)