説明

顆粒球−コロニー刺激因子を含む安定な薬剤組成物

本発明は、顆粒球−コロニー刺激因子(G−CSF)の新しい安定な薬剤組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顆粒球−コロニー刺激因子(G−CSF)を含む安定な薬剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトG−CSFは、好中球の形成に決定的な役割を有する造血成長因子に属する。G−CSFは、血液学及び腫瘍学の分野における医薬品に使用される。現在、臨床用G−CSFの2つの形式、すなわち、グリコシル化され、哺乳動物細胞、特にCHO細胞系中で産生されるレノグラスチム(Holloway CJ (1994) Eur J Cancer 30A Suppl 3:S2−S6;欧州特許第169566号)と非グリコシル化され、細菌E.コリ(E.coli)中で産生されるフィルグラスチム(欧州特許第237545号)が市販されている。
【0003】
特にG−CSFの非グリコシル化体は、CHO細胞から得られるG−CSFのグリコシル化体よりもインビトロで特に不安定であることが文献から知られている(Oh−eda et al(1990) J Biol Chem 265(20):11432−35)。グリコシル化と非グリコシル化G−CSFの安定性が異なるために、薬剤として許容される安定なG−CSFを調製する従来技術手法はグリコシル化の存在/非存在によって異なる。特に、疎水性タンパク質である非グリコシル化G−CSFの場合には、より長い保存期間、医学的応用に対して薬剤タンパク質の安定性を支える、薬剤として許容される安定な組成物の調製は困難な課題であり、特別な難題であり、特別に選択された対策を必要とする。
【0004】
非グリコシル化G−CSFの安定化組成物は、欧州特許第373679号に記載されており、低伝導率で2.75から4.0の範囲の酸性pH値でG−CSF安定性を有利にもたらす本質的な特徴を有する。しかし、G−CSF安定性を向上させるためにさまざまな糖又は糖アルコール、アミノ酸、ポリマー及び洗浄剤を添加することができる。特に、その組成物のpHは、凝集体形成を抑制し、G−CSF安定性を高めるために4未満とすべきであることが強調される。欧州特許第373679号に記載された凝集体形成及びG−CSFを含む薬剤組成物の4.0を超えるpHにおける安定性低下は、従来技術文献から得られた結果と一致する(Kuzniar et al (2001) Pharm Dev Technol 6(3):441−7; Bartkowski et al (2002) J Protein Chem 21(3): 137−43; Narhi et al (1991) J Protein Chem 10(4): 359−367; Wang W (1999) Int J Pharmaceut 185: 129−188。
【0005】
G−CSFを安定化するさまざまな手法が他の特許及び科学文献に記載されている。欧州特許第1129720号は、5から8の範囲のpHを有し、濃度約0.01Mから約1.0Mの硫酸イオンを含む塩を含む非グリコシル化ウシG−CSFの安定な水系組成物を開示する。
【0006】
欧州特許第607156号においては、注入及び注射用のG−CSFを含む薬剤組成物が開示される。G−CSFの安定化は、G−CSFに有利な酸性pH値を設定し、さまざまな防腐剤、異なるアミノ酸及び安定剤としての界面活性剤の混合物を添加することによって達成される。G−CSFのグリコシル化体又は非グリコシル化体のどちらが使用されたかは記述からは不明である。
【0007】
欧州特許第674525号は、クエン酸塩、マレイン酸塩、リン酸塩とクエン酸塩の混合物及びアルギニンの塩からなる群から選択される緩衝剤中で安定化されたG−CSFの水系薬剤組成物を開示する。また、少なくとも1個の界面活性剤がG−CSFを安定化するために添加される。G−CSFのグリコシル化体又は非グリコシル化体のどちらが使用されたかは記述では不明である。
【0008】
英国特許第2193621号は、7から7.5の範囲のpHを有し、薬剤として許容される界面活性剤、糖類、タンパク質及び高分子量化合物からなる群から選択される少なくとも1個の物質を含むグリコシル化G−CSFの組成物を開示する。適切な高分子量化合物としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。特に、界面活性剤を含む組成物が有利である。
【0009】
欧州特許第1060746号においては、pH約6.5を有するグリコシル化G−CSFを含む薬剤組成物が、薬剤として許容される少なくとも1個の界面活性剤の存在下で記載されている。この明細書は、pHに応じた脱シアル酸G−CSFの安定性の測定を開示する。その結果、約5.0から約7.0の範囲のpHにおける脱シアル酸G−CSFの安定性がきわめて低いことが示された。
【0010】
欧州特許第0988861号は、G−CSF安定性が、HEPES、TRIS、TRICINEなどの安定化緩衝剤を濃度約1Mで添加することによって得られる、G−CSF、特にウシG−CSFの薬剤組成物を開示する。
【0011】
マルトース、セロビオース、ゲンチオビオース、イソマルトース、ラフィノース、トレハロース又はアミノ糖の添加によって安定化されるG−CSFの凍結乾燥薬剤組成物が欧州特許第0674524号に記載されている。
【0012】
pH約6.5で1個以上のアミノ酸を含むグリコシル化G−CSF組成物が欧州特許第1197221号、欧州特許第1260230号及び欧州特許第1329224号に記載されており、アミノ酸で安定化された凍結乾燥組成物が欧州特許第0975335号に記載されている。
【0013】
界面活性剤がG−CSF水溶性溶液中に存在することを特徴とするG−CSFの薬理効果期間を延長する方法が日本国特許第2002371009号に記載されている。
【0014】
欧州特許第0459795号に記載されたG−CSFの経口剤形は、界面活性剤、脂肪酸及び腸溶性材料を用いた安定化に基づく。メチオニンの添加によって長期間安定化された組成物はWO51629に記載されている。
【0015】
低イオン強度はG−CSFの薬剤組成物に優先的なものであるが、特許及び科学文献のほぼすべての場合において、包装材料表面でのG−CSFの凝集及び変性を防止するために非イオン性、陰イオン性又は天然界面活性剤のさまざまな界面活性剤が添加される。しかし、G−CSF組成物中の界面活性剤は、医学的観点からは好ましくは回避されるべきである。というのは、界面活性剤は、局所的刺激を生じる恐れがあり、きわめて慎重に制御されなければならない毒性不純物を含むことがあり、さらに、どのように代謝され、排泄されるかが必ずしも明確でないからである。また、自動酸化し易いある種の界面活性剤はタンパク質を損なう恐れがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、界面活性剤並びにヒト及び/又は動物起源に由来する添加剤を添加することなしに、薬剤としてのG−CSFの適切な使用を可能にすることができる非グリコシル化G−CSFの安定な液状薬剤組成物を提供することである。特に、本発明の薬剤組成物は、品質保持期間が長く、生理学的に忍容性が良好であり、使用が簡単であり、正確に投与することができる。
【0017】
本発明の目的は、G−CSFを有利に安定化することができる非グリコシル化G−CSFの薬剤組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、請求項1に記載のG−CSFの新しい安定な薬剤組成物を提供する。好ましい実施態様はサブクレームに記載されている。本発明は、請求項17に記載のプロセス並びに請求項18及び19に記載の使用も提供する。
【0019】
本発明の薬剤組成物は、4.0を超えるpHで好ましくは処方される。G−CSFの安定化は酸の存在下で達成される一方で、本発明の組成物は、好ましくは、界面活性剤を含まず、G−CSF以外のヒト及び/又は動物起源に由来する添加剤(例えば、血清タンパク質)を含まない。
【0020】
本薬剤組成物は、ポリオール及び/又はpH緩衝系及び/又は1個以上の薬剤として許容される賦形剤を場合によってはさらに含んでいてもよい。本発明の薬剤組成物は、ヒト及び獣医学における使用に適切であり、特に非経口用、例えば、筋肉内、皮下及び/又は静脈内用に適切な投与剤形で薬剤として許容される。特に好ましい実施態様においては、本発明の薬剤組成物は液体であり、より好ましくは水溶液の形である。
【0021】
界面活性剤を含まず、好ましくは4.0を超えるpHである薬剤組成物中に非グリコシル化G−CSFを有利に安定化できることが驚くべきことに見出された。
【0022】
本発明は、
(a)G−CSFの治療有効量と、
(b)酸と
を含む、G−CSFの薬剤組成物を提供し、
好ましくは界面活性剤を含まない。
【0023】
本発明の組成物は、4.0を超えるpHで好ましくは調製される。
【0024】
本発明は、成分(a)−(b)に加えて、
(c)ポリオール及び/又は
(d)pH緩衝系及び/又は
(e)1個以上の薬剤として許容される賦形剤
を場合によってはさらに含んでいてもよいG−CSFの薬剤組成物も提供する。
【0025】
本明細書では「顆粒球−コロニー刺激因子(G−CSF)という用語は、造血性前駆細胞の分化及び増殖並びに造血系の成熟細胞の活性化を促進することができ、ヒトG−CSF並びに以下に定義される誘導体及びアナログを含む群から選択されるG−CSFを指す。G−CSFは、E.コリ中での発現によって得られる組換えヒトG−CSFに関係することが好ましい。
【0026】
本明細書では「G−CSFの治療有効量」という用語は、G−CSFの治療効果を可能にするG−CSF量を指す。
【0027】
本明細書では「ポリオール」という用語は、任意の多価アルコール、すなわち1分子当たり2個以上のヒドロキシル基を含む化学物質を指す。
【0028】
本明細書では「界面活性剤」という用語は、臨界ミセル濃度として知られるある濃度で生じる両親媒性(界面活性剤)分子のコロイド状凝集体を指す。ミセル中の凝集分子の典型的な数(凝集数)は50から100である。
【0029】
本明細書では「界面活性剤を含まない」という用語は、界面活性剤が組成物中に存在しない状態又は検出限界未満の量で存在する状態を指す。
【0030】
本明細書では「G−CSF安定剤」という用語は、G−CSFに対して安定化効果を有し、薬剤として許容される賦形剤を指す。
【0031】
本明細書では「G−CSF安定性」という用語は、G−CSF含有量の維持及びG−CSF生物活性の維持を指す。G−CSF安定性は、以下のプロセス、すなわち、容器壁へのG−CSFの吸着、G−CSFの変性又は分解並びに例えばG−CSF2量体及び/又はG−CSF多量体及び/又はより高分子量の類似の分子の凝集体形成によってとりわけ影響を受けることがある。これらのプロセスは、異なる条件、例えば、高温、不適当な容器、誤ったG−CSF安定剤の使用、日光、不適当な保存方法、解凍/凍結及び/又は不適当な単離手順に試料を曝したために起こる。
【0032】
本明細書では「ヒト及び/又は動物起源に由来する添加剤を含まない」という用語は、ゼラチン、人血清アルブミン又はウシ血清アルブミンのような血清タンパク質などのヒト及び/又は動物から生じG−CSFとは異なる添加剤が組成物に意図的に添加されない状態を指す。
【0033】
本発明の薬剤組成物中でG−CSFを処方することによって、冷蔵庫温度(例えば、2から8℃)を超える温度で、かつ室温(すなわち25℃未満)でも、さらにはそれより高温(例えば、約40℃)でその安定性が改善されることが驚くべきことに見出された。これは、本組成物が、冷蔵庫よりも高い温度で長期間及び/又はより高温で一定の期間、多量の活性を失わず、かつさほど分解せずに保存できることを意味する。
【0034】
従来技術文献に記載された薬剤組成物においては、非グリコシル化G−CSFは、低伝導率及び低酸性値で又は異なる安定剤の存在下で、4.0未満のpHで優先的に安定化される。一方、4.0を超えるpH値で安定化される従来技術G−CSF組成物のすべては、異なる安定剤を含み、とりわけ界面活性剤が最も好ましい。また、従来技術文献からは、グリコシル化G−CSF又は非グリコシル化G−CSFのどちらがG−CSF安定性試験に使用されたかが不明なことが多い。4.0を超えるpH値におけるG−CSF安定性の従来技術試験は、低伝導率で、界面活性剤を添加せずに実施され、凝集体が形成された。従来技術文献において4.0を超えるpH値におけるG−CSFを安定化する他の手法は、界面活性剤又はさまざまな他の賦形剤の添加を含む。
【0035】
従来技術文献に記載された手法及び結果にもかかわらず、4.0を超えるpH値においてでも界面活性剤を添加せずにG−CSF安定性が得られることが本発明で驚くべきことに示された。また、本発明のG−CSF安定性は、G−CSFを有利に安定化するのに適切な環境を提供する唯一の賦形剤として酸を用いて得ることができる。したがって、このような方法に限定されるものではないが、G−CSF安定剤、例えば、薬剤として許容される賦形剤が、本発明のG−CSFを安定化するのにそれ以上は不要となり得る。薬剤組成物中の薬剤として許容される賦形剤は、毒性不純物を回避するために厳格に制御されなければならないので、これは有利である。不純物は、ヒト又は動物の体において制御が困難な物質の投与を回避するために除去する必要がある。一方、副作用を回避するためにやはり考慮する必要がある、薬剤として許容される賦形剤が体内でいかに代謝及び排泄されるかは不明である。
【0036】
従来技術から知られる一部の薬剤組成物においては、非イオン性洗浄剤、例えば、ポリソルベートのような界面活性剤が使用される。G−CSF組成物に自動酸化しやすい界面活性剤を使用することは問題が多いと考えられ、タンパク質を損ない得るOH基をそれは形成し得るので好ましくは回避されるべきである。界面活性剤の添加は、投与部位において局所的刺激も生じることがある。界面活性剤は、不純物、例えば、SEC(分析)法によって求められる凝集体の測定も妨害することがある。したがって、G−CSFの薬剤組成物が界面活性剤を含まず、できるだけ簡単であり、追加の賦形剤の使用を回避し、組成物のpHを患者への投与に適切に維持することが有利である。
【0037】
界面活性剤を好ましくは含まない本発明のG−CSF組成物は、経済的観点からも優れている。本組成物がより容易に実施されるほど、経費はより安く、本組成物はより時間がかからず、患者は組織体中により少ない添加剤を受け入れることになる。皮下投与は、使用されるpH値が低過ぎるために患者において局所的不耐性をもたらし得るので、4.0を超えるpH値は4未満のpH値よりも良好である。
【0038】
したがって、このような方法に限定されるものではないが、本発明の薬剤組成物は、好ましくは、上述の構成要素a.−b.のみからなり、場合によってはa.−c.、a.−c.+e、a.−d.、a.−d.+e.、a.−b.+e.又はa.−b.+d.−e.からなることができる。
【0039】
本発明の薬剤組成物は、好ましくは、長期保存においてG−CSF活性を維持する液体、特に水系薬剤組成物である。かかる液体組成物は、G−CSF生物活性を低下させ、さらには失わせ得る再構成、希釈又は追加の調製段階なしに、皮下、静脈内、筋肉内用などの非経口用途に直接使用することができ、適用時に発生するさらなる技術的問題を回避するのに寄与することもできる。したがって、液状薬剤組成物の使用は、凍結乾燥組成物の使用としてより実用的である。G−CSFの液体、特に水系組成物は、G−CSFの臨床組成物を調製するのに凍結乾燥組成物よりも一般に好ましい。というのは、凍結乾燥組成物の再構成プロセスは時間がかかり、タンパク質組成物を不適当に取扱うリスクがあり、又は不適当に再構成される恐れがあり、薬物の十分な活性を保持するために安定剤などのある種の添加剤が通常は必要とされるからである。
【0040】
本発明の薬剤組成物は、G−CSF安定剤として血清アルブミン、精製ゼラチンなどのヒト及び/又は動物起源に由来する添加剤を実質的に含まないことが好ましい。
【0041】
本発明の薬剤組成物に使用されるG−CSFは、任意の非グリコシル化高純度ヒトG−CSFとすることができる。具体的には、それは、哺乳動物、特にヒトのG−CSFのそれと実質的に同じ生物活性を有する限り、自然源に由来することができ、又は遺伝子改変することができる。遺伝子改変G−CSFは、未変性G−CSF又は1個以上のアミノ酸の欠失、置換若しくは付加を含むことができるそのアナログと同じアミノ酸配列を有することができる。同じ又は改善された生物活性を示すPEGなどで化学修飾されたG−CSFも含まれる。本発明の薬剤組成物に使用されるG−CSFは、任意のプロセスによって調製することができる。例えば、それは、E.コリなどの細菌細胞の培養物から、また、遺伝子改変酵母又は他の適切な生物中の細胞内で、さまざまな技術によって抽出し、単離し、精製することができる。
【0042】
本発明の薬剤組成物に使用されるG−CSFは、E.コリ中での発現によって最も好ましく産生され、好ましくは非グリコシル化される。
【0043】
本発明の薬剤組成物は、G−CSFの治療量を含むことができる。市販G−CSFの現行治療量は0.3から0.96mg/mlであるが、これは本発明のG−CSF組成物の制約にはならない。
【0044】
本発明のG−CSF組成物のpH値は4.0を超え、約4.0から約5.0の範囲が好ましく、約4.2から約4.8がより好ましく、約4.4のpH値が最も好ましい。
【0045】
好ましいpH値範囲は、好ましくは、酢酸を使用することによって得られる。4.0を超える所望のpH値を得て維持するために適切な他の酸としては、HCl、メタンスルホン酸、マレイン酸、クエン酸、グルタミン酸、マロン酸、乳酸、硫酸、リン酸、他の薬剤として許容される酸又はこれらの混合物などが挙げられるが、これらだけに限定されない。本組成物中の酸濃度は、該組成物の所望のpH値によって決まる。
【0046】
別の実施態様においては、所望のpH値は、酢酸 クエン酸、リン酸及び他の適切な酸を含む群から選択される異なる酸を用いることによって得ることができる。ここで、最終pH値の微調整は、NaOH、TRIS又は任意の他の適切な塩基を含む群から選択されるpH調節剤を添加することによってなされる。上述の酸及び塩基を添加することによって、適切なpH緩衝系、例えば、酢酸/酢酸塩、クエン酸/クエン酸塩、グルタミン酸/グルタミン酸塩、リン酸/リン酸塩又は任意の他の適切なpH緩衝系が得られる。とりわけ、最も好ましいpH緩衝系は酢酸/酢酸塩であり、適切には、約0.15mMから約15mMの酢酸濃度、最も好ましくは1.5mMから10mMの濃度範囲で使用される。
【0047】
本発明の薬剤組成物は、ソルビトール、マンニトール、イノシトール及びグリセリンを含む群から選択されるポリオールを場合によってはさらに含んでいてもよい。とりわけ、ソルビトールが特に好ましく、適切には、濃度約1%から約10%(m/v)で使用され、大部分は濃度3%から8%(m/v)が好ましい。
【0048】
本発明の薬剤組成物は、1個以上の薬剤として許容される賦形剤を場合によってはさらに含んでいてもよい。薬剤として許容される適切な賦形剤は、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、ヒドロキシプロピルセルロース−β−シクロデキストリン、ポロクサマー、スクロース、トレハロースなどの糖、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、マクロゴールエステル及びエーテル、グリコールエステル、グリセリンエステル及び/又はさまざまなアミノ酸を含む群から選択することができる。
【0049】
本発明の薬剤組成物は、アンプル、注射シリンジ、補充注射シリンジ、複数回投与カートリッジ及びバイアルに充填することができる。これらは、これだけに限定されないが0.2から2ml/回の範囲とすることができる適切な範囲の体積での適用を可能にする。
【0050】
本発明の薬剤組成物中で安定化された生物活性G−CSFは、好中球減少及び好中球減少に関係する臨床の続発症、化学療法後の熱性好中球減少による入院の減少、ドナー白血球注入の代替としての造血性前駆細胞の動員、慢性好中球減少、好中球減少及び非好中球減少感染、移植レシピエント、慢性炎症性症状、敗血症及び敗血症ショック、好中球減少及び非好中球減少感染におけるリスト(rist)、罹患率、死亡率、入院日数の減少、好中球減少及び非好中球減少患者における感染及び感染関連合併症の予防、院内感染の予防並びに院内感染の死亡率及び度数率を抑制すること、新生児における経腸投与、新生児における免疫系の増強、集中治療室患者及び危篤患者における臨床結果の改善、創傷/皮膚潰よう/火傷治癒及び治療、化学療法及び/又は放射線治療の強化、汎血球減少症、抗炎症性サイトカインの増加、フィルグラスチムの予防的使用による高用量化学療法間隔の短縮、光線力学的治療の抗腫よう効果の増強、異なる大脳機能不全に起因する疾病の予防及び治療、血栓性疾病及びその合併症の治療、並びに赤血球形成の照射後回復を含む群から選択される疾患の治療に使用することができる。
【0051】
それは、G−CSFに対して示される他のすべての疾病の治療にも使用することができる。
【0052】
以下の実施例は本発明を説明するものであるが、それを限定するものではない。
実施例
分析方法
以下の分析方法が本発明の薬剤組成物の分析に使用された:サイズ排除HPLC(SE−HPLC)、逆相HPLC(RP−HPLC)、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)、UV検出による融点温度(Tm)測定、等電点電気泳動(IEF)及びインビトロ生物活性アッセイ。
【0053】
SE−HPLC
SE−HPLCは、G−CSF凝集体、特に2量体及び2量体を超える凝集体の濃度を測定するために使用された。2量体及び2量体を超える凝集体の検出限界は0.01%である。
【0054】
高速液体クロマトグラフ(HPLC)システムは以下のとおりであった:UV検出器、オンライン脱気装置、バイナリーポンプモジュール及び恒温自動試料採取装置(例えば、Waters Alliance HPLC systems)。分析は以下の条件で実施された。
クロマトグラフィー条件:
カラム:TSK G3000 SW、10μm、300×7.5mm ID
カラム温度:30℃
移動相:リン酸緩衝液pH7.0(5mMリン酸ナトリウム、50mM NaCl)
流量:0.8mL/min、無勾配モード
検出:UV検出器、波長215nm
注入体積:20μl(タンパク質注入量は6から12μgである)
自動試料採取装置温度:+2から+8℃
運転時間:20分間
【0055】
RP−HPLC
RP−HPLCは、G−CSF含有量を測定し、その疎水性によって分離された不純物を定量するために使用された。
【0056】
高速液体クロマトグラフシステムは以下のとおり使用された:オンライン脱気装置を備えたUV検出器、バイナリーポンプモジュール、恒温自動試料採取装置及び恒温カラム部(例えば、Waters Alliance HPLC systems)。分析は以下の条件で実施された。
クロマトグラフィー条件:
カラム:YMC−Pack ODS−AQ、200Å、球状、3μm、150×4.6mm i.d.
カラム温度:65℃
移動相:A相:0.1%トリフルオロ酢酸(TFA)及び50%アセトニトリル(ACN)の水溶液
B相:HPLC用0.1%TFA及び95%ACNの水溶液
流量:1.0mL/min、以下のスキームによる勾配モード:
【0057】
【表1】

【0058】
UV検出によるTm測定
Tmは、タンパク質高次構造安定性を推定するために使用された。高いTmは、ある組成物においてタンパク質安定性が高いことを示す。G−CSF安定性は、ある種の賦形剤を添加することによって一般に改善される。
【0059】
ペルチェ冷却加熱システム(DBS、PTP−1)を備えたUV分光光度計:Perkin Elmer Lambda BIO 40分光光度計が使用された。分析は以下の条件で実施された。
【0060】
温度範囲:50−70℃
温度速度:1℃/min
検出:波長280nm.
試料体積:1.0mL(タンパク質濃度:0.3−0.6mg/ml)
自動試料採取装置温度:+2から+8℃
【0061】
SDS−PAGE
SDS−PAGEは、タンパク質2量体及び他の凝集体(3量体及びそれ以上の高分子量体)の出現を視覚的に検出するために使用された。
【0062】
添加試料は、還元剤を含まないローディングバッファー中で調製された。垂直SDS−PAGEが使用された:ゲルNuPAGE Bis−TRIS 12%、8×8cm、厚さ1.0mm、MOPS SDS電気泳動緩衝剤(Invitrogen)中15レーン(Invitrogen)。電気泳動は、200Vの定電圧で運転された。試料は、Commassie blue(0.1%Phast Gel Blue R 350の30%メタノール溶液)で染色することによって分析された。
【0063】
インビトロG−CSF生物活性アッセイ
G−CSFの生物活性は、公知の方法(Hammerling U et al(1995) J Pharm Biomed Anal 13:9−20)を用い、国際標準のヒト組換えG−CSF(88/502、誘導酵母細胞(yeast cell derived);NIBSC Potters Bar,Hertfordshire,UK);(Mire−Sluis AR et al(1995) J Immunol Methods 179,117−126)を使用して、細胞増殖(NFS−60細胞)の刺激に基づく方法によって求められた。
【0064】
pH値測定
pH値は、MA 5741(Iskra)pHメータ及びBiotrode(Hamilton)電極を用いて測定された。pHメータは、適切な新しい較正緩衝剤を用いてpH3.0からpH5.0の範囲のpH値に較正された。pHは25℃で測定された。pH測定値の標準偏差は、pH値の0.003(0.3%)である。
【0065】
薬剤組成物中のG−CSF安定性を試験する条件
4℃:冷蔵庫に冷蔵庫温度(+4℃から+6℃の範囲)で保存
40℃:40℃±2℃で保存
25℃:Vibromix 314EVT振とう機上で75RPMで振とうすることによって1mL補充シリンジ中で25℃から30℃の範囲の室温で保存
【実施例1】
【0066】
安定性試験
以下のG−CSFの薬剤組成物が調製された。
【0067】
S18:1.5mg/ml G−CSF、pHは酢酸によって4.4に調節された
B1a(0.3):0.3mg/ml G−CSF、1.5mM酢酸、5%(w/v)ソルビトール、pHはNaOH希釈溶液を用いて4.2に調節された
B1b(0.3):0.3mg/ml G−CSF、1.5mM酢酸、5%(w/v)ソルビトール、pHはNaOH希釈溶液を用いて4.4に調節された
B1c(0.3):0.3mg/ml G−CSF、1.5mM酢酸、5%(w/v)ソルビトール、pHはNaOH希釈溶液を用いて4.6に調節された
B1d(0.3):0.3mg/ml G−CSF、1.5mM酢酸、5%(w/v)ソルビトール、pHはNaOH希釈溶液を用いて4.8に調節された
B1e(0.3):0.3mg/ml G−CSF、0.13mM酢酸、5%(w/v)ソルビトール、pH4.4
B−1e−3(0.3):0.3mg/ml G−CSF、0.13mMクエン酸、5%(w/v)ソルビトール、pH4.4
B−1e−4(0.3):0.3mg/ml G−CSF、0.13mMマレイン酸、5%(w/v)ソルビトール、pH4.4
B1f(0.3):0.3mg/ml G−CSF、1.5mM酢酸、5%(w/v)ソルビトール、pHはTRISを用いて4.4に調節された
B1b(0.6):0.6mg/ml G−CSF、1.5mM酢酸、8%(w/v)ソルビトール、pHはNaOH希釈溶液を用いて4.4に調節された
B−1e(0.6):0.6mg/ml G−CSF、0.13mM酢酸、8%(w/v)ソルビトール、pH4.4
B−1e−2(0.6):0.6mg/ml G−CSF、1.5mM酢酸、8%(w/v)ソルビトール、0.004%Tween 80、pHはNaOH希釈溶液を用いて4.4に調節された
B−1e−3(0.6):0.6mg/ml G−CSF、0.13mMクエン酸、8%(w/v)ソルビトール、pH4.4
B−1e−4(0.6):0.6mg/ml G−CSF、0.13mMマレイン酸、8%(w/v)ソルビトール、pH4.4
B−1g(0.6):0.6mg/ml G−CSF、0.04mM HCl、8%(w/v)ソルビトール、pH4.4
B2a(0.3):0.3mg mL G−CSF、1.5mM酢酸、3%(w/v)ソルビトール、pHはNaOH希釈溶液を用いて4.2に調節された
B2b(0.3):0.3mg/ml G−CSF、1.5mM酢酸、3%(w/v)ソルビトール、pHはNaOH希釈溶液を用いて4.4に調節された
B−3b(0.3):0.3mg/ml G−CSF、0.04mMメタンスルホン酸、5%(w/v)ソルビトール、pH4.4
B−4a(0.3):0.3mg/ml G−CSF、1.5mM酢酸、5%(w/v)グリセリン、pH4.4
B−4c(0.3):0.3mg/ml G−CSF、1.5mM酢酸、5%(w/v)グリセリン、0.1%Poloxamer 188、pH4.4
B−5a(0.6):0.6mg/ml G−CSF、1.5mM酢酸、8%(w/v)ソルビトール、0.1%Tween 20、pHはNaOH希釈溶液を用いて4.4に調節された
B−6a(0.3):0.3mg/ml G−CSF、1.5mM酢酸、5%(w/v)ソルビトール、0.05%Poloxamer 188、pH4.4
B−6b(0.3):0.3mg/ml G−CSF、1.5mM酢酸、5%(w/v)ソルビトール、0.1%Poloxamer 188、pH4.4
B−6d(0.3):0.3mg/ml G−CSF、1.5mM酢酸、5%(w/v)ソルビトール、1.0%Poloxamer 188、pH4.4
D2a(0.3):0.3mg/ml G−CSF、0.04mMメタンスルホン酸、5%(w/v)ソルビトール、0.1%Poloxamer 188、pH4.4
D2b(0.3):0.3mg/ml G−CSF、10mMメタンスルホン酸、5%(w/v)ソルビトール、0.1%Poloxamer 188、pHはNaOH希釈溶液を用いて4.4に調節された
S12:1.0mg/ml G−CSF、10mM酢酸、5%(m/v)ソルビトール、pHはNaOHを用いて4.0に調節された
基準組成物
A(S16−10ACT):0.3mg/ml G−CSF、10mM酢酸、5%(m/v)ソルビトール、0.004%Tween 80、pHはNaOHを用いて4.0に調節された(Neupogen様)
B(S16−10ACT):0.3mg/ml G−CSF、1.5mM酢酸、5%(m/v)ソルビトール、0.004%Tween 80、pHはHClを用いて3.8に調節された
N:市場で入手可能なNeupogen組成物(G−CSF濃度0.6mg/ml)
それぞれのG−CSF含有量が1.5mg/mlである試料S18は、4℃で3ヵ月間保存された。試料はSE−HPLCによって分析された;G−CSF12μgがカラムに充填された。図1に結果を示す(AU=吸収単位)。
【0068】
それぞれのG−CSF含有量が0.3mg/mlである試料は、40℃で1ヵ月間保存された。試料はSE−HPLCによって分析された;G−CSF6μgがカラムに充填された。図2に選択された結果を示す(AU=吸収単位)。
【0069】
図2の凡例:
B−1e(0.3)
Na B−1b(0.3)
TRIS B−1f(0.3)
【0070】
図3に、それぞれのG−CSF含有量が0.6mg/mlであり、40℃で1ヵ月間保存された一部の試料のSE−HPLCを示す。G−CSF 12μgがカラムに充填された。(AU=吸収単位)
図3の凡例:
B−1e(0.6)の2量体を超える凝集体
Na B−1b(0.6)の2量体を超える凝集体
Tween 80 B−1e−2(0.6)の2量体を超える凝集体
Tween 20 B−5a(0.6)の2量体を超える凝集体
A 2量体を超える凝集体
B Tween 20を含むプラセボの応答
C 2量体
D G−CSFモノマー
E Tween 20を含むプラセボの応答
【0071】
図4に、それぞれのG−CSF含有量が0.6mg/mlであり、40℃で1ヵ月間保存された本発明の試料及び基準試料のSDS−PAGE分析を示す。基準対照として使用されたN(0.3mg/ml)は、同じ条件で保存された。各ラインに1μlが充填された。
図4の凡例:
レーン1:低分子量タンパク質標準(0.79μg)
レーン2:N(1μg)
レーン3:B−1e(0.6)
レーン4:B−1b(0.6)
レーン5:B−1e−2(0.6)
レーン6:B−5a(0.6)
【0072】
図5に、それぞれのG−CSF含有量が0.3mg/mlであり、40℃(±2℃)で1ヵ月間(40)保存された一部の試料のSE−HPLCを示す。12μgがカラムに充填された。
図5の凡例:
B−1e(0.3)の2量体を超える凝集体
Na B−1b(0.3)の2量体を超える凝集体
Poloxamer B−6b(0.3)の2量体を超える凝集体
【0073】
安定性試験結果:
4℃で2ヵ月及び3ヵ月保存された試料S18のSE−HPLC分析によれば、2量体及び2量体を超える凝集体は検出されず、又は少量しか検出されない(表1、図1)。
【0074】
これらの結果は、市場で入手可能なG−CSF組成物(Neupogen(G−CSF=0.3mg/ml)、非グリコシル化G−CSF)と同一であるG−CSF組成物(AS16−10ACT)中のG−CSF安定性と類似している(表1)。
【0075】
試料S18のTmはAS16−10ACTのTmと類似しており、S18中のG−CSF安定性がAS16−10ACT中のG−CSF安定性と類似していると予想できることを示している。これは、+4℃における安定性試験によって確認される(表1)。
【0076】
また、G−CSF安定性は、SDS−PAGE分析によっても確認された(結果示さず)。また、RP−HPLC分析は、保存期間後の不純物又はタンパク質含有量の大きな変化を示さなかった(結果示さず)。本発明の組成物に使用されるG−CSFのインビトロでの生物活性は、国際標準(Cat. No. 88/502;NIBSC,UK)のレベルであった。数ヵ月保存後、組成物S18中で保存されたG−CSFの生物活性は変わらなかった。
【0077】
【表2】

【0078】
これらの結果によれば、適切な条件で数ヵ月保存後(長期安定性試験の初期の部分)、試料S18中での完全なG−CSF安定性が得られる。S18中でのG−CSF安定性は試料AS16−10ACTよりも良好か同等であるが、S18では追加のG−CSF安定剤(例えば、界面活性剤)が添加されず、G−CSF濃度は5倍高く、保存期間がより長く、pH値は4.0を十分超える(4.4)。
【0079】
異なる緩衝系の影響は、異なる塩基(NaOH、TRIS)によってpH値が4.4に調節された1.5mM酢酸を含む一連の組成物及びpH値4.4が酢酸のみで得られた組成物において試験された。分析結果を表2及び図2に示す。
【0080】
【表3】

【0081】
結果は、さまざまな陽イオンが使用されたときのTm及び2量体を超える凝集体含有量の差を示す。純粋な酸を含む組成物のTmは、Na及びTRIS陽イオンを含む組成物よりも高い。それと一致して、凝集体含有量は、Na及びTRIS陽イオンを含む組成物よりも純粋な酸を含む組成物において最低である。また、RP−HPLC分析は、保存期間後の不純物の含有量及び概要の大きな変化を示さない(結果示さず)。これらの結果は、純粋な酸(H)がTRIS及びNaよりもG−CSF安定性に優先されることを示している。
【0082】
G−CSF安定性に対するpHの影響は、1.5mM酢酸/酢酸塩緩衝系を含む一連の組成物においてpH値4.2、4.4、4.6及び4.8で試験された。SE−HPLC分析結果を表3に示す。
【0083】
【表4】

【0084】
4.2から4.8のpH範囲において、2量体出現率の基本的差は40℃で検出されない。
【0085】
G−CSF安定性に対するポリソルベート(界面活性剤)の影響は、0.6mg/ml G−CSFを含む組成物を用いて試験された。結果を表4並びに図3及び4に示す。
【0086】
【表5】

【0087】
表4の結果によれば、界面活性剤ポリソルベート20(Tween 20)又はポリソルベート80(Tween 80)の添加によってG−CSF安定性は改善されない。この結果によれば、G−CSF安定性は、界面活性剤を添加せずに達成される。また、タンパク質含有量のRP−HPLC分析によれば、ポリソルベートを含む組成物においてタンパク質含有量はより低い。
【0088】
G−CSF安定性に対するポロクサマー(ブロック共重合体)の影響は、0.3mg/ml G−CSFを含む組成物を用いて試験された。結果を表5及び6並びに図5に示す。
【0089】
【表6】

【0090】
表5の結果によれば、ポロクサマー188の添加によってTmは減少する。
【0091】
【表7】

【0092】
表6の結果によれば、ブロック共重合体ポロクサマー188の添加によって、G−CSF安定性は改善されない。
【0093】
表4、5及び6の結果によれば、ポリソルベート及びポロクサマーは、G−CSF薬剤組成物中のG−CSF安定性を維持するのに適切な賦形剤ではない。
【0094】
G−CSF安定性に対する異なる酸の影響は、酢酸、マレイン酸、クエン酸及びメタンスルホン酸を含む一連の組成物において試験された。結果を表7に示す。
【0095】
【表8】


【0096】
使用されたさまざまな酸を含む組成物の結果は類似しており、酢酸がわずかに優れたG−CSF安定性を示す。
【0097】
G−CSF安定性に対するポリオール選択及びその濃度の影響は、ソルビトール及びグリセリンを含む一連の組成物において試験された。結果を表8に示す。
【0098】
【表9】

【0099】
表8の結果によれば、ソルビトールもグリセリンも効率的G−CSF安定性のために使用することができる。RP−HPLC分析結果は、表8の組成物間では大差ない(結果示さず)。
【実施例2】
【0100】
本発明のG−CSF薬剤組成物の組成
本発明の薬剤組成物の組成を表9に示す。
【0101】
【表10】

【0102】
バルク濃縮物の調製
G−CSFのバルク濃縮物の調製に使用されるG−CSFの出発材料は、E.コリ中での発現によって産生された(非グリコシル化G−CSF)。
【0103】
G−CSFのバルク濃縮物は、pH値4.4、G−CSF濃度1.5mg/mlで純粋な酸(酢酸又はHCl)の溶液中で調製された。バルク濃縮物のSE−HPLC分析によれば、2量体及び2量体を超える凝集体の含有量は検出限界以下であった。RP−HPLC分析において観察された不純物の含有量は2から4%の範囲であった。(新しいNeupogen試料の分析は、RP−HPLC分析において観察された不純物の類似又はより高いレベルを示した。)
【0104】
賦形剤の品質:
酢酸:pH Eur品質;HCl:Merck 分析用32%;マレイン酸:USP品質;クエン酸:Merck、分析用;メタンスルホン酸;Fluka;NaOH:pH Eur品質;ソルビトール:pH Eur品質;グリセリン:Merck;分析用;Poloxamer 188:BASF、Pluronic F68、NFグレード;Tween 20:Sigma、低パーオキシド、低カルボニル、酸化防止剤としてBHTを含む;Tween 80(Sigma、低パーオキシド、酸化防止剤としてBHTを含む);注射用水:pH Eur品質;分析用水(水):Milli−Q(Millipore)
【0105】
基準薬剤組成物の調製:
A(S16−10ACT):G−CSFのバルク濃縮物(1.5mg/ml)は、NaOH希釈溶液を用いてpH4.0に調節された12.5mM酢酸、6.25%ソルビトール及び0.005%(w/v)Tween 80を含む緩衝剤で5倍希釈された。最終組成物のpH値は4.0±0.1であった。
A(S16−1.5ACT):G−CSFのバルク濃縮物は、NaOH希釈溶液を用いてpH4.0に調節された1.875mM酢酸、6.25%(w/v)ソルビトール及び0.005%(w/v)Tween 80を含む緩衝剤で5倍希釈された。最終組成物のpHは4.0±0.1であった。
【0106】
本発明の薬剤組成物の調製:
一般に:
本発明の薬剤組成物は、0.2 PES/Nalgeneフィルターに通してあらかじめろ過された適切な無菌緩衝液を用いてG−CSFの無菌バルク濃縮物を希釈することによって調製された。G−CSFの最終濃度はそれぞれ0.3mg/ml又は0.6mg/mlであった。ろ過溶液は、2mLバイアル(無色管状ガラス加水分解1型のバイアル)に充填され、洗浄され、滅菌され、臭化ブチル(brombutyl)ゴム製弾性蓋で閉じられ、アルミニウムキャップで密閉された。
【0107】
S18:最後の精製段階後、タンパク質溶液は、酢酸で酸性化された水(pH4.4)に対して限外ろ過された。3個のPellicon XL Ultracell−5PLCCC/Milliporeフィルターを備えた実験室規模のTFF System/Milliporeが使用された。G−CSF溶液の限外ろ過は、0.2 PES/Nalgeneに通してあらかじめろ過された酸性水10体積に対して実施された。伝導率及びpHが測定された。最終G−CSF濃度は1.5mg/mlであった。無菌0.22μm PVDFフィルターによるタンパク質溶液の無菌ろ過はその後に実施された。
【0108】
B−1e(0.3):G−CSFのバルク濃縮物は、0.16mM酢酸、6.25%(w/v)ソルビトールを含有する溶液で5倍希釈された。組成物B−1e−4(0.3)、B−1e−3(0.3)、B−3b(0.3)において、類似の組成物においてpH4.4を達成するために他の酸、例えば、クエン酸、マレイン酸 メタンスルホン酸の適切な量が使用された。最終組成物のpHは4.4±0.1であった。
【0109】
B−1a(0.3)、B−1b(0.3)、B−1c(0.3)、B−1d(0.3):G−CSFのバルク濃縮物は、NaOH希釈溶液を用いてpH4.2(4.4、4.6、4.8)に調節された1.875mM酢酸及び6.25%(w/v)ソルビトールを含む緩衝剤を用いて5倍希釈された。最終組成物のpHは、4.2±0.1(それぞれ4.4±0.1;4.6±0.1;4.8±0.1)であった。
【0110】
B−1b(0.6):G−CSFのバルク濃縮物(1.5mg/ml)は、NaOH希釈溶液を用いてpH4.4に調節された2.5mM酢酸及び13.3%(w/v)ソルビトールで2.5倍希釈された。最終組成物のpHは4.4±0.1であった。
【0111】
B−1e(0.6)、B−1e−3(0.6)、B−1e−4(0.6)、B−1g(0.6):G−CSFのバルク濃縮物(1.5mg/ml)は、0.22mM酢酸、13.3%(w/v)ソルビトールを含有する溶液で2.5倍希釈された。他の場合においては、類似の組成物においてpH4.4を達成するために、他の酸、例えば、クエン酸又はマレイン酸の適切な量が使用された。最終組成物のpHは4.4±0.1であった。
【0112】
B−2a(0.3)、B−2b(0.3):G−CSFのバルク濃縮物は、NaOH希釈溶液を用いてpH4.2又は4.4に調節された1.875mM酢酸及び3.75%(w/v)ソルビトールを含む緩衝剤で5倍希釈された。最終組成物のpHはそれぞれ4.2±0.1又は4.4±0.1であった。
【0113】
B−4a(0.3):G−CSFのバルク濃縮物は、NaOH希釈溶液を用いてpH4.4に調節された1.875mM酢酸及び6.25%(w/v)グリセリンを含む緩衝剤で5倍希釈された。最終組成物のpHは4.4±0.1であった。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】4℃で3ヵ月間保存された後のG−CSFを含む本発明の試料のSE−HPLC分析を示すグラフである。
【図2】40℃で1ヵ月間保存された後のG−CSFを含む本発明の試料及び基準試料のSE−HPLC分析を示すグラフである。
【図3】40℃で1ヵ月間保存された後のG−CSFを含む本発明の試料及び基準試料のSE−HPLC分析を示すグラフである。
【図4】40℃で1ヵ月間保存された後のG−CSFを含む本発明の試料及び基準試料のSDS−PAGE分析を示す図である。
【図5】40℃で1ヵ月間保存された後のG−CSFを含む本発明の試料及び基準試料のSE−HPLC分析を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
4.0を超えるpH値を有し、
G−CSFの治療有効量と
酸とを含み、界面活性剤を含まない、
顆粒球−コロニー刺激因子(G−CSF)の安定な薬剤組成物。
【請求項2】
前記組成物のpH値が4.2から4.8の範囲である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物のpHが約4.4である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
a.ポリオール及び/又は
b.pH緩衝系及び/又は
c.薬剤として許容される1個以上の賦形剤
を場合によってはさらに含んでいてもよい、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
G−CSFが非グリコシル化されている、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
前記組成物が水溶液である、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
前記酸が、酢酸、HCl、マレイン酸、グルタミン酸、メタンスルホン酸及びクエン酸を含む群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記酸が酢酸及びHClを含む群から選択される、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記ポリオールが、ソルビトール、グリセリン、イノシトール及びマンニトールを含む群から選択される、請求項4に記載の組成物。
【請求項10】
選択された前記ポリオールがソルビトールである、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
ソルビトールが約1%から約10%の範囲で含まれている、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
ソルビトールが約3%から約8%の範囲で含まれている、請求項10に記載の組成物。
【請求項13】
前記pH緩衝系が、酢酸/酢酸塩及びリン酸/リン酸塩を含む群から選択される、請求項1から11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
選択された前記pH緩衝系が酢酸/酢酸塩である、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
酢酸濃度が約0.15mMから約15mMの範囲で含まれている、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
酢酸濃度が約1.5mMから約10mMの範囲で含まれている、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
請求項1から16のいずれかに記載の組成物が調製される、G−CSFを含む組成物を調製するプロセス。
【請求項18】
G−CSFが適応症である疾患の治療用及び/又は予防用医薬品を調製するための請求項1から17のいずれか一項に記載の組成物の使用。
【請求項19】
G−CSFが適応症である疾患の治療用及び/又は予防のための請求項1から17のいずれか一項に記載の組成物の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2007−527357(P2007−527357A)
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−510116(P2005−510116)
【出願日】平成15年11月4日(2003.11.4)
【国際出願番号】PCT/IB2003/005575
【国際公開番号】WO2005/042024
【国際公開日】平成17年5月12日(2005.5.12)
【出願人】(504359293)レツク・フアーマシユーテイカルズ・デー・デー (60)
【Fターム(参考)】