説明

顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)産生抑制剤I

【課題】本発明の課題は、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎等、種々の皮膚疾患による肌荒れ症状や炎症、アレルギー症状の他、健常人の肌荒れ、敏感肌に対する予防、及び改善に優れた効果を有するGM-CSF産生抑制剤及びそれを有効成分として含むアトピー性皮膚炎等のアトピー性皮膚炎治療剤、食品、化粧品、肌荒れ防止・改善用皮膚外用剤組成物の提供。
【解決の手段】イポルル(Euphorbiaceae Alchornea)の抽出物を有効成分とするGM-CSF産生抑制剤及び前記GM-CSF産生抑制剤の一種以上を配合したアトピー性皮膚炎治療剤、化粧料、食品及び皮膚外用剤の提供。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)産生抑制剤に関し、詳しくは、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎等、種々の皮膚疾患による肌荒れ症状や炎症、アレルギー症状の他、健常人の肌荒れ、敏感肌に対する予防、及び改善に有効な、並びにそのGM-CSF産生抑制剤を配合したアトピー性皮膚炎治療剤、化粧料、食品及び皮膚外用剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アトピー性皮膚炎の病態形成には浸潤していくTh2細胞、好酸球、肥満細胞はもちろんのこと、ランゲルハンス細胞やケラチノサイトなど皮膚に局在する種々の細胞が総合的に複雑に関与していることが報告されている(非特許文献1・2)。
また、Pastoreらにより、アトピー性皮膚炎患者のケラチノサイトがin vivo においてもin vitroにおいてもGM-CSF(Granulocyte/Macrophage colony
stimulating
factor)の産生が亢進していることが、1997年に初めて報告された(非特許文献3)。アトピー性皮膚炎の表皮ではケラチノサイトからのGM-CSF産生が亢進し、そのため樹状細胞(LC:ランゲルハンス細胞)の活性化が引き起こされ、炎症が常に惹起されやすい状態におかれていることが報告されている(非特許文献4)。単離したLCを用いた検討で、GM-CSFがLCからのTh1反応を誘導するIL-12産生を抑制することが報告されている(非特許文献5)。これらのことからアトピー性皮膚炎患者の皮膚において、ケラチノサイトから過剰に産生されたGM-CSFがLCの強い活性化とTh2反応へのシフトを促し、その病態形成に関与していると考えられる(非特許文献6)。
また、紫外線の照射によりケラチノサイトからIL-1が産生放出され、IL-1を介する刺激によりGM-CSFが過剰に産生されることが報告されており(非特許文献7)、日常的に紫外線を浴びることによってアトピー肌、健常人の肌、敏感肌の皮膚状態が悪化していることが予想される。
従来のアトピー性皮膚炎の治療は、主に免疫担当細胞をターゲットとした治療薬としてステロイド軟膏、免疫抑制剤が用いられているが、その効果や副作用の発現を考慮すると、新たにケラチノサイトをターゲットにした治療薬が望まれる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Mebio,19:44-49(2002)
【非特許文献2】小児内科,32:993-997(2000)
【非特許文献3】J.Clin.Invest.,99:3009-3017(1997)
【非特許文献4】香粧会誌,28(3):183-186(2004)
【非特許文献5】J .Immunol.,164:5113-9(2000)
【非特許文献6】感染・炎症・免疫,33(1):34-40(2003)
【非特許文献7】皮膚臨床,35(8):1193-1200(1993)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎等、種々の皮膚疾患による肌荒れ症状や炎症、アレルギー症状の他、健常人の肌荒れ、敏感肌に対する予防、及び改善に優れた効果を有するGM-CSF産生抑制剤及びそれを有効成分として含むアトピー性皮膚炎等のアトピー性皮膚炎治療剤、食品、化粧品、肌荒れ防止・改善用皮膚外用剤組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような現状に鑑み、本発明者は、GM-CSF産生抑制物質が様々な炎症性・アレルギー性皮膚疾患や健常人の肌荒れ、荒れ性等の改善に有効であると考え、広く種々の物質についてGM-CSF産生抑制作用を調べた結果、フジ属(Wisteria 属)植物の葉及び/又は蔓の抽出物、イポルル(Euphorbiaceae Alchornea)の抽出物、胡麻(Sesamum indicum)の抽出物、メカブ(Undraia pinnatifida)の抽出物、リシン‐バリン‐リシンであるトリペプチド及び/又はその誘導体に強いGM-CSF産生抑制作用があることを見出した。
【0006】
本発明は、イポルル(Euphorbiaceae Alchornea)の抽出物を有効成分として配合することを特徴とするGM-CSF産生抑制剤、及び前記GM-CSF産生抑制剤の一種以上を配合したアトピー性皮膚炎治療剤、化粧料、食品及び皮膚外用剤である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ケラチノサイトが産生するGM-CSFを抑制することで、過剰なGM-CSFによってランゲルハンス細胞が活性化され、炎症が常に惹起されやすい状態、すなわち、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎等、種々の皮膚疾患による肌荒れ症状や炎症、アレルギー症状の他、健常人の肌荒れ、敏感肌に対する予防、及び改善できるGM-CSF産生抑制剤、並びにそのGM-CSF産生抑制剤を配合したアトピー性皮膚炎治療剤、化粧料、食品及び皮膚外用剤等を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明に用いられるマメ科フジ属植物は、例えば、フジ属(Wisteria属 )植物のノダフジ(Wisteria floribunda)、ヤマフジ(Wisteria brachbotrys)が挙げられるが、フジ属に属する植物であれば特にこの植物に限定されるものではない。
また、本発明で用いるフジ属(Wisteria 属)植物の葉及び/又は蔓の抽出物は、ヤマフジ(Wisteria
brachybotrys)及びノダフジ(Wisteria
floribunda)が好ましい。
【0009】
本発明に用いられるイポルル(Euphorbiaceae Alchornea)は、ペルー及びブラジルの奥地が原産のユーポービアセア科(和名:トウダイグサ科)アルコルネア属の植物で、イポルル、イポロニ、イポルノ、マコクフィア等の一般名で呼ばれている。
また、使用する植物の部位は、全草又はそれらの花、葉、樹皮、幹、茎、根、種子、地上部のうち1又は2以上を用いることができ、樹皮を抽出材料として用いることが好ましい。
【0010】
本発明に用いられる胡麻(Sesamum indicum)は、ゴマ科ゴマ属の植物であり、使用する植物の部位は、全草又はそれらの花、葉、樹皮、幹、茎、根、種子、地上部のうち1又は2以上を用いることができ、花を抽出材料として用いることが好ましい。
【0011】
本発明で用いる抽出物とは、それぞれの植物の全草又はそれらの花、葉、蔓、樹皮、幹、茎、根、果実、種子、地上部のうち1又は2以上の箇所を乾燥し、又は乾燥することなく粉砕した後、低温又は室温ないし加温下に溶媒により抽出するか、又はソックスレー抽出器などの抽出器具を用いて抽出することにより得られる各種溶媒抽出液、その希釈液、その濃縮液、あるいはその乾燥末を意味するものである。
【0012】
本発明に用いられるメカブ(Undraia pinnatifida)は、コンブ目チガイソ科の褐藻である(Undraia
pinnatifida)の胞子葉のことである。
また、本発明で用いるメカブの抽出物とは、ワカメ(Undraia pinnatifida)の胞子葉(メカブ)を乾燥し、又は乾燥することなく粉砕した後、低温又は室温ないし加温下に溶媒により抽出するか、又はソックスレー抽出器などの抽出器具を用いて抽出することにより得られる各種溶媒抽出液、その希釈液、その濃縮液、あるいはその乾燥末を意味するものである。
【0013】
本発明で用いるリシン‐バリン‐リシンであるトリペプチド又はその誘導体とは、INCI名がパルミトイルトリペプチド‐3であり、Palm-Lys-Val-Lys-OH結合を持つパルミトイルトリペプチドであるが、Lys-Val-Lys結合を持ったトリペプシド誘導体であれば、同様の効果は期待できるので、Lys-Val-Lys結合を持ったトリペプシド誘導体であれば、限定されるものではない。
【0014】
上記の抽出溶媒としては、例えば水、メタノール、エタノールなどの低級1価アルコール、グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール等の液状多価アルコール、含水アルコール類等の1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。好ましい抽出方法の例としては、含水濃度20〜80容量%のエタノール又は水又は1,3−ブチレングリコールを用いる。
【0015】
本発明に用いる植物抽出物は、生のままあるいは乾燥した植物体を重量比で1〜1000倍量、特に10〜100倍量の溶媒を用い、室温または加熱抽出を行ったのち、濾過する方法が挙げられる。特に室温にて1〜5日間、又は室温〜95℃で1時間以上、抽出するのが好ましい。
【0016】
本発明の各GM-CSF産生抑制剤のアレルギー性皮膚疾患治療薬、化粧品、食品及び皮膚外用剤におけるフジ属(Wisteria 属)植物の葉及び/又は蔓の抽出物、イポルル(Euphorbiaceae Alchornea)の抽出物、胡麻(Sesamum indicum)の抽出物、メカブ(Undraia pinnatifida)の抽出物、リシン‐バリン‐リシンであるトリペプチド及び/又はその誘導体への配合量は、乾燥固形物重量(複数の抽出物を含む場合はその合計量)として、総量中に0.00001〜20.0重量%が好ましく、0.00005〜5.0重量%がより好ましい。
【0017】
本発明のアレルギー性皮膚疾患治療薬、化粧品、食品及び皮膚外用剤は、前記必須成分のほか、水性成分、油性成分、植物抽出物、動物抽出物、粉末、賦形剤、界面活性剤、油剤、アルコール、pH調整剤、防腐剤、酸化防止剤、増粘剤、甘味剤、色素、香料等を必要に応じて混合して適宜配合することができる。
また、本発明のアトピー性皮膚疾患治療薬、化粧料、食品及び皮膚外用剤の剤型は特に限定されず、化粧水、乳液、クリーム、パック、パウダー、スプレー、軟膏、分散液、洗浄料、および液体状、ペースト状、カプセル状、粉末状、錠剤等種々の剤型に調製することができるが、ここに挙げた例に限定されるものではない。
【実施例】
【0018】
以下、実施例を挙げて、本発明を具体的に説明するが、本発明は何ら実施例に限定されるものではない。
【0019】
〔植物抽出物の調製例〕
(1)ヤマフジ(Wisteria brachybotrys)の葉を乾燥して細かく砕いたもの5gに、含水濃度50容量%エタノール100gを加える。次に60℃で8時間加熱抽出を行った後、濾過することによって、ヤマフジの葉の抽出物を得た。このとき、乾燥固形物量は、0.59重量%であった。この溶液を希釈して濃度を調整し、これを用いて以下の実験を行った。
【0020】
(2)ヤマフジ(Wisteria brachybotrys)の蔓を乾燥して細かく砕いたもの5gに、含水濃度50容量%エタノール100gを加える。次に60℃で8時間加熱抽出を行った後、濾過することによって、ヤマフジの蔓の抽出物を得た。このとき、乾燥固形物量は、0.52重量%であった。この溶液を希釈して濃度を調整し、これを用いて以下の実験を行った。
【0021】
(3)ノダフジ(Wisteria floribunda)の葉を乾燥して細かく砕いたもの5gに、含水濃度50容量%エタノール100gを加える。次に60℃で8時間加熱抽出を行った後、濾過することによって、ノダフジの葉の抽出物を得た。このとき、乾燥固形物量は、0.55重量%であった。この溶液を希釈して濃度を調整し、これを用いて以下の実験を行った。
【0022】
(4)ノダフジ(Wisteria floribunda)の蔓を乾燥したもの5gに、含水濃度50容量%エタノール100gを加える。次に60℃で8時間加熱抽出を行った後、濾過することによって、ノダフジの蔓の抽出物を得た。このとき、乾燥固形物量は、0.48重量%であった。この溶液を希釈して濃度を調整し、これを用いて以下の実験を行った。
【0023】
(5)イポルル(Euphorbiaceae Alchornea)の樹皮を乾燥して細かく砕いたもの5gに、含水濃度50容量%エタノール100gを加える。次に60℃で8時間加熱抽出を行った後、濾過することによって、イポルルの抽出物を得た。このとき、乾燥固形物量は、2.53重量%であった。この溶液を希釈して濃度を調整し、これを用いて以下の実験を行った。
【0024】
(6)胡麻(Sesamum indicum)の花を乾燥したもの5gに、含水濃度50容量%エタノール100gを加える。次に60℃で8時間加熱抽出を行った後、濾過することによって、胡麻の抽出物を得た。このとき、乾燥固形物量は、1.40重量%であった。この溶液を希釈して濃度を調整し、これを用いて以下の実験を行った。
【0025】
(7)メカブを乾燥して細かく砕いたもの0.5gに、水5gを加えてメカブの抽出物を得た。濃度は、1.00重量%であった。この溶液を希釈して濃度を調整し、これを用いて以下の実験を行った。
【0026】
(8)リシン‐バリン‐リシンであるトリペプチド誘導体は、ペンタファーム社製のSYN-COLLを使用した。
【0027】
次に、正常ヒト新生児包皮表皮角化細胞(ケラチノサイト)を用いたGM-CSF産生抑制試験及びその結果を示す。
【0028】
〔試験方法〕
正常ヒト新生児包皮表皮角化細胞(ケラチノサイト)は、Epilife-EDGS培地(クラボウ社製)で37℃、5%CO2 下培養した。その懸濁液を1ウェルあたり0.5mlずつ24ウェルマイクロプレート(IWAKI 製)に分注した。5日培養後、コンフルエントになったところで培地を捨て、PBS(-)で洗浄し、20mJ/cm2UV-Bを細胞に照射した(コントロールとして0mJ/cm2(非照射)群も準備した)。その後培地をハイドロコルチゾン(HC)フリーのEpilife-KGS2に変え、試料溶液をそれぞれのウェルに添加し、表1記載の濃度になるようにした。試料添加55hrs後の培養上清中のGM-CSF量をELISA法(R&D
SYSTEMS社製)で定量した。増殖した細胞のタンパク量はBCA法により定量した。
また、GM-CSF産生抑制効果は、培養上清中のGM-CSF量(pg/ml)/細胞のタンパク濃度(mg/ml)の数値で評価し、その結果を表1に示す。
【0029】
【表1】

【0030】
表1に示すように、UV-B非照射のケラチノサイトが産生する培養上清中のGM-CSF量/タンパク量(pg/mg)は、442であるのに対して、20mJ/cm2のUV-Bを照射したケラチノサイトの培養上清中のGM-CSF量/タンパク量(pg/mg)は、1284と過剰にGM-CSFが産生されていることがわかる。その過剰なGM-CSFの産生抑制効果を各試料を添加した場合の培養上清中のGM-CSF量/タンパク量(pg/mg)を測定し評価した。陽性対照としては、GM-CSF抑制剤で知られるU0126を10μg/ml添加した試料を用い、GM-CSF/タンパク(pg/mg)は、215であった。
本発明のヤマフジ(Wisteria brachybotrys)の葉の抽出物及びノダフジ(Wisteria floribunda)の葉の抽出物は、陽性対照のU0126とほぼ同程度のGM-CSFの産生抑制効果を示し、非常に強いGM-CSFの産生抑制効果を有することがわかる。また、ヤマフジ(Wisteria brachybotrys)の蔓の抽出物及びノダフジ(Wisteria floribunda)の蔓の抽出物も陽性対照のU0126の数値にはおよばないものの非照射コントロールの値よりも低い数値を示し、強いGM-CSFの産生抑制効果を有することがわかる。そして、イポルルの樹皮の抽出物、胡麻の花の抽出物、メカブの抽出物及びリシン‐バリン‐リシンについてもUV-B照射コントロールと比較して低い値を示すことからGM-CSFの産生抑制効果が見られる。
【0031】
(1)塗布および飲用によるアトピー性皮膚炎患者での効果確認試験
被験者として、軽度から中程度の皮膚炎症症状を呈したアトピー性皮膚炎患者14名(年齢:20〜40歳)を7名ずつ2群に分け、実施例1は、段落0042で示した化粧料および段落0048で示したドリンク剤を用い、比較例1は段落0042に示した化粧料からGM-CSF抑制剤としてのヤマフジの葉の抽出物を除いた化粧料および段落0048に示したドリンク剤からGM-CSF抑制剤としてのヤマフジの蔓の抽出物とノダフジの蔓の抽出物とリシン-バリン-リシンであるトリペプチド誘導体を除いたドリンク剤を作成し、それぞれの群で実施例1又は比較例1を1日1回、2ヶ月間塗布および飲用させてその併用効果について調べた。2ヶ月後に、皮膚炎症状態を観察し、試験開始前と比較した。なお、判定基準は、著効、有効、やや有効、無効及び悪化の5段階とし、結果を表2に示す。
【0032】
【表2】

【0033】
(2)塗布によるヒトでの効果確認試験
被験者として、各試料ごとに30〜60歳の肌荒れの気になる女性10名に1日2回(朝、夜)連続1ヵ月間、本発明の実施例2と比較例2のそれぞれを顔面に別々に使用させ、塗布部位の状態を試験前後で比較し、改善効果を調べた。実施例2は、段落0041で示した化粧料を用い、比較例2は段落0041に示した化粧料からGM-CSF抑制剤 としてのメカブの抽出物を除いた化粧料を作成し、その塗布による効果について調べた。 本発明の有効成分を配合した化粧料を毎日塗布しながら肌荒れの改善の状態を塗布開始前及び1ヶ月塗布後におけるアンケートで集計し、効果の確認を行った。
結果は表3に示す。表3からも明らかなように、実施例2の評価の合計点が36点であった。一方、比較例2は22点であり、本発明である実施例の高い効果が認められた。
【0034】
【表3】

【0035】
(3)塗布および飲用によるヒトでの併用効果確認試験
被験者として、各試料ごとに30〜60歳の肌荒れの気になる女性10名づつのパネラーに1日2回(朝、夜)連続1ヵ月間、本発明からなる実施例3と比較例3のそれぞれを塗布および飲用してもらい、皮膚の状態を試験前後で比較し、塗布および飲用の併用による改善効果を調べた。実施例3は、段落0041、段落0047で示した化粧料およびカプセルを用い、比較例3は段落0041に示した化粧料からGM-CSF抑制剤 としてのメカブの抽出物を除いた化粧料および段落0047の対照品としてグルコースのみを配合したカプセルを作成しその併用効果について調べた。本発明の有効成分を配合した食品を毎日飲用しながら肌の状態を試験開始前及び1ヶ月後におけるアンケートで集計し、効果の確認を行った。
結果は表4に示す。本発明からなる実施例3を塗布および飲用した試験群の評点は43点および比較例3を塗布および飲用した試験群の評点は24点であり、表3で実施した塗布だけの実施例2の評点36点、および比較例2の評点22点と比較しても併用による高い効果が認められた。
【0036】
【表4】

【0037】
次に本発明の各種成分を配合した化粧料、皮膚外用剤の処方例および食品、アトピー性皮膚炎治療剤の例を示すが本発明はこれに限定されるものでない。
化粧料の処方例
【0038】
(1)化粧用クリーム1(重量%)
a)ミツロウ・・・2.0
b)ステアリルアルコール・・・5.0
c)ステアリン酸・・・8.0
d)スクワラン・・・10.0
e)自己乳化型グリセリルモノステアレート・・・3.0
f)ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.)・・・1.0
g)ヤマフジの葉の抽出物・・・0.00001
h)ヤマフジの蔓の抽出物・・・0.0001
i)ノダフジの葉の抽出物・・・0.001
j)ノダフジの蔓の抽出物・・・0.01
k)水酸化カリウム・・・0.3
l)防腐剤・酸化防止剤・・・適量
m)1,3-ブチレングリコール・・・5.0
n)精製水・・・残部
<製法>
a)〜f)までを加熱溶解し、80℃に保つ。g)〜n)まで(kを除く)を加熱溶解し、
80℃に保ち、a)〜f)に加えて乳化し、k)を加える。40℃まで撹拌しながら冷却する。
【0039】
(2)化粧用クリーム2(重量%)
a)ミツロウ・・・2.0
b)ステアリルアルコール・・・5.0
c)ステアリン酸・・・8.0
d)スクワラン・・・10.0
e)自己乳化型グリセリルモノステアレート・・・3.0
f)ポリオキシエチレンセチルエーテル(20E.O.)・・・1.0
g)イポルルの樹皮の抽出物・・・0.1
h)水酸化カリウム・・・0.3
i)防腐剤・酸化防止剤・・・適量
j)1,3-ブチレングリコール・・・5.0
k)精製水・・・残部
<製法>
a)〜f)までを加熱溶解し、80℃に保つ。g)〜l)まで(kを除く)を加熱溶解し、
80℃に保ち、a)〜f)に加えて乳化し、k)を加える。40℃まで撹拌しながら冷却する。
【0040】
(3)乳液1(重量%)
a)ミツロウ・・・0.5
b)ワセリン・・・2.0
c)スクワラン・・・8.0
d)ソルビタンセスキオレエート・・・0.8
e)ポリオキシエチレンオレイルエーテル(20E.O.)・・・1.2
f)胡麻の花の抽出物・・・1.0
g)カルボキシビニルポリマー・・・0.2
h)水酸化カリウム・・・0.1
i)1,3-ブチレングリコール・・・7.0
j)精製水・・・残部
k)防腐剤・酸化防止剤・・・適量
l)エタノール・・・7.0
<製法>
a)〜e)までを加熱溶解し、80℃に保つ。f)〜k)まで(hを除く)を加熱溶解し、
80℃に保ち、a)〜e)に加えて乳化し、h)を加える。50℃まで撹拌しながら冷却する。 50℃でl)を添加し、40℃まで冷却する。
【0041】
(4)乳液2(重量%)
a)ミツロウ・・・0.5
b)ワセリン・・・2.0
c)スクワラン・・・8.0
d)ソルビタンセスキオレエート・・・0.8
e)ポリオキシエチレンオレイルエーテル(20E.O.)・・・1.2
f)メカブの抽出物・・・0.00005
g)カルボキシビニルポリマー・・・0.2
h)水酸化カリウム・・・0.1
i)
1,3-ブチレングリコール・・・7.0
j)精製水・・・残部
k)防腐剤・酸化防止剤・・・適量
l)エタノール・・・7.0
<製法>
a)〜e)までを加熱溶解し、80℃に保つ。f)〜k)まで(hを除く)を加熱溶解し、
80℃に保ち、a)〜e)に加えて乳化し、h)を加える。50℃まで撹拌しながら冷却する。
50℃でl)を添加し、40℃まで冷却する。
【0042】
(5)化粧水1(重量%)
a)ヤマフジの葉の抽出物・・・5.0
b)グリセリン・・・5.0
c)ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(20E.O.)・・・0.5
d)防腐剤・酸化防止剤・・・適量
e)精製水・・・残部
<製法>
a)〜e)までを混合し、均一に溶解する。
【0043】
(6)化粧水2(重量%)
a)リシン-バリン-リシンであるトリペプチド誘導体・・・0.00001
b)グリセリン・・・5.0
c)ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(20E.O.)・・・1.0
d)エタノール・・・6.0
e)香料・・・適量
f)防腐剤・酸化防止剤・・・適量
g)精製水・・・残部
<製法>
a)〜g)までを混合し、均一に溶解する。
【0044】
(7)パック剤1(重量%)
a)メカブの抽出物・・・0.001
b)ヤマフジの葉の抽出物・・・1.0
c)酢酸ビニル樹脂エマルジョン・・・15.0
d)ポリビニルアルコール・・・10.0
e)オリーブ油・・・3.0
f)グリセリン・・・5.0
g)酸化チタン・・・8.0
h)カオリン・・・7.0
i)エタノール・・・8.0
j)香料・・・適量
k)防腐剤・酸化防止剤・・・適量
l)精製水・・・残部
<製法>
a)〜l)までを混合し、よく撹拌、分散させ均一にする。
【0045】
(8)パック剤2(重量%)
a)エタノール・・・8.0
b)ノダフジの葉の抽出物・・・5.0
c)リシン-バリン-リシンであるトリペプチド誘導体・・・0.5
d)酢酸ビニル樹脂エマルジョン・・・15.0
e)ポリビニルアルコール・・・10.0
f)オリーブ油・・・3.0
g)グリセリン・・・5.0
h)酸化チタン・・・8.0
i)カオリン・・・7.0
j)香料・・・適量
k)防腐剤・酸化防止剤・・・適量
l)精製水・・・残部
<製法>
a)〜l)までを混合し、よく撹拌、分散させ均一にする。
【0046】
(9)軟膏(重量%)
a)アスコルビン酸パルミテート・・・2.0
b)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油(60E.O.)・・・10.0
c)ポリオキシエチレンセチルエーテル(2E.O.)・・・10.0
d)ステアリルアルコール・・・10.0
e)プロピレングリコール・・・30.0
f)グリセリン・・・36.8
g)イポルルの樹皮の抽出物・・・20.0
h)ヤマフジの蔓の抽出物・・・0.00001
i)ノダフジの蔓の抽出物・・・0.00001
j)パラベン・・・0.2
<製法>
a)〜j)を加熱溶解し、35℃まで攪拌しながら冷却する。
【0047】
(10)カプセル(重量%)
a)イポルルの樹皮の抽出物・・・5.0
b)ヤマフジの葉の抽出物・・・20.0
c)胡麻の花の抽出物・・・0.00005
d)メカブの抽出物・・・0.00001
e)グルコース・・・残部
<製法>
a)〜e)までを良く混合し、カプセルに成形する。
【0048】
(11)ドリンク剤(重量%)
a)ヤマフジの蔓の抽出物・・・1.0
b)ノダフジの蔓の抽出物・・・1.0
c) リシン-バリン-リシンであるトリペプチド誘導体・・・0.05
d)L−アスコルビン酸ナトリウム・・・0.1
e)香料・・・適量
f)防腐剤・酸化防止剤・・・適量
g)精製水・・・適量
<製法>
a)〜g)を混合し溶解させる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明のイポルル(Euphorbiaceae Alchornea)の抽出物は、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎等、種々の皮膚疾患による肌荒れ症状や炎症、アレルギー症状の他、日常の生活で紫外線にあたっている健常人の肌荒れ、敏感肌に対する予防、及び改善できるGM-CSF産生抑制剤として、アトピー性皮膚炎治療剤、化粧料、食品、皮膚外用剤に広く応用が期待できる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
イポルル(Euphorbiaceae Alchornea)の抽出物を有効成分として配合することを特徴とする顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)産生抑制剤。
【請求項2】
請求項1記載の顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)産生抑制剤の一種以上を配合することを特徴とするアトピー性皮膚炎治療剤。
【請求項3】
請求項1記載の顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)産生抑制剤の一種以上を配合することを特徴とする食品。
【請求項4】
請求項1記載の顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)産生抑制剤の一種以上を配合することを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項5】
請求項1記載の顆粒球・マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)産生抑制剤の一種以上を配合することを特徴とする化粧料。


【公開番号】特開2012−176951(P2012−176951A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−82447(P2012−82447)
【出願日】平成24年3月30日(2012.3.30)
【分割の表示】特願2006−58125(P2006−58125)の分割
【原出願日】平成18年3月3日(2006.3.3)
【出願人】(591230619)株式会社ナリス化粧品 (200)
【Fターム(参考)】