説明

額型植物育成装置

【課題】培養液の中にエアーを供給することに伴い発生する騒音を低減するとともに、額内で植物を容易に育成しながらその鑑賞を楽しめるようにする。
【解決手段】床21及び蓋22の横幅方向両端部には孔が形成されており、これらにエアーパイプ25が通され、その栽培槽底面に沿った部分には、上方の穴221及び222のそれぞれに対応して、気泡吐出孔251及び252が形成されている。エアーパイプ25の両端部は、中枠11の対向する側面の孔に取着されたジョイント26及び27の内端部に接続されている。中枠11内の上面中央部には、排気ファン30が配設され、ダクト31を介して箱形額10の排気口311に接続されている。排気ファン30をオンにすると、中枠11内が負圧になって、吸気口261及び271から外気がエアーパイプ25内へ流入し、孔251及び252から気泡が吐出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、箱形額内で植物を育成する額型植物育成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
額は、これに入れられる絵画や写真を引き立たせる。
【0003】
そこで、下記特許文献1には、台の上に花瓶や水盤を配置し、額を通して花瓶等が見えるようにすることが提案されている。また、下記特許文献2には、額内に水皿をいれ、梅の枝や花などを切り取って、水皿上の剣山に挿し、壁掛型にするものが提案されている。
【0004】
しかし、これらはいずれも、植物を育成しながら鑑賞を楽しむためのものではない。
【0005】
額内で植物を育成するためには、水や養分を容易に与えることができるようにするとともに、根腐れが生じない環境を植物に与える必要がある。
【0006】
一方、水耕栽培装置では、エアーポンプとエアーストーンとの間をパイプで接続し、このエアーストーンを水中に配置して気泡を発生させることにより、根腐れを防止するとともに、培養液を攪拌させている(下記特許文献3)。
【0007】
また、箱形額内で植物を育成する場合、植物の蒸散作用によりに箱形額内の湿度が高くなって、蒸散が妨げられるので、換気を行う必要がある。
【特許文献1】特開平09−140532号公報
【特許文献2】特開平中枠11-179141号公報
【特許文献3】特許第27716315号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このため、箱形額内で植物を育成するには、根腐れ防止用エアーポンプと、換気用排気装置とが必要になり、部品点数が増えるとともに、騒音が大きくなる。特に、エアーポンプではエアーを圧縮するための直線加速往復運動に起因して振動が生ずるので、エアーポンプを額に取着すると、額に振動が伝達するとともに、騒音が比較的大きく、実用的でない。
【0009】
本発明は、本発明者によるこのような着眼点に基づき案出されたものであり、その目的とするところは、部品点数を少なくして構成を簡単化できる額型植物育成装置を提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、根へのエアー供給及び額内換気により生ずる騒音を低減するとともに、額内で植物を容易に育成しながらその鑑賞を楽しむことができる額型植物育成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による額型植物育成装置の第1態様では、
培養液を貯える栽培槽と、
正面に窓口が形成され、該窓口が透明板で封止され、下部に該栽培槽が配置され、吸気口及び排気口が設けられた箱形額と、
該吸気口から該栽培槽内まで外気を導く空気流路と、
該箱形額内の空気を該排気口から排気させる排気手段とを有し、該排気手段により該箱形額内の空気を該排気口から排気させることにより、該箱形額内を負圧にして該吸気口から外気を導入させ該栽培槽内の培養液の中に気泡を吐出させる。
【0012】
本発明による額型植物育成装置の第2態様では、第1態様において、該排気手段は、該箱形額内の上部に配置された排気ファンと、該排気ファンの排気口と該箱形額の排気口との間に接続されたパイプとを有する。
【0013】
本発明による額型植物育成装置の第3態様では、第1態様において、該排気手段は、該箱形額の外部に配置された排気装置と、該排気装置の吸気口と該箱形額の該排気口との間に接続されたパイプとを有する。
【0014】
本発明による額型植物育成装置の第4態様では、第1乃至3態様のいずれか1つにおいて、
該栽培槽内の中間部に、上面が該栽培槽の底面と平行に配置され、該上面に複数の孔が形成された床部材と、
該栽培槽の上面開口部を覆い、植物が通る開口が形成された蓋部材とをさらに有し、該床部材と該蓋部材の間に培土を貯える空間が在る。
【0015】
本発明による額型植物育成装置の第5態様では、第1乃至4態様のいずれか1つにおいて、
該箱形額は、
中枠部と該中枠部の背面を閉じる背板部とを有する箱部と、
該中枠部の前面に取着される額縁と、該額縁の窓口を封止する該透明板とを有する。
【0016】
本発明による額型植物育成装置の第6態様では、第1乃至5態様のいずれか1つにおいて、
該箱形額の対向する側面の対向する位置にそれぞれ第1及び第2の該吸気口が形成され、
該空気流路は、該第1の吸気口と該第2の吸気口との間を連通するパイプを有し、
該パイプの該栽培槽の底面に沿った部分に気泡吐出孔が形成されている。
【0017】
本発明による額型植物育成装置の第7態様では、第4乃至6態様のいずれか1つにおいて、該気泡吐出孔と該蓋部材の開口とが上下に対応した位置に形成され、該床部材に形成された複数の孔は、該気泡吐出孔と該蓋部材の開口との間に対応した部分に形成されたものの径が他の部分に形成されたものの径よりも大きい。
【0018】
本発明による額型植物育成装置の第8態様では、第1乃至7態様のいずれか1つにおいて、該箱形額の前面の該窓口の下方が不透明部であり、該不透明部の上辺高さ位置が該栽培槽の上端より高く、該不透明部の水平方向一端部に覗き孔が形成され、該栽培槽が透明部材で形成されている。
【0019】
本発明による額型植物育成装置の第9態様では、第1乃至8態様のいずれか1つにおいて、
該箱形額にはさらに、該箱形額の外部から内部へ二酸化炭素ガスを流入させるガス添加口が備えられ、該ガス添加口と通じる流路に開度調整弁が介装され、
該排気手段により該箱形額内の空気を該排気口から排気させることにより、該箱形額内を負圧にして該吸気口から該箱形額の内部へ外気を流入させるとともに該ガス添加口を介して該箱形額の内部へ二酸化炭素ガスを流入させる。
【0020】
本発明による額型植物育成装置の第10態様では、第1乃至9態様のいずれか1つにおいて、該箱形額内の両側部の各々又は上部に照明灯が配設されている。
【発明の効果】
【0021】
上記第1態様の構成によれば、排気手段により箱形額内の空気を排気口から排気させることにより、該箱形額内を負圧にして吸気口から外気を導入させ、栽培槽内の培養液の中に気泡を吐出させるので、エアーポンプを用いることなく、培養液を攪拌するとともに植物の根に空気を供給して根腐れを防止しつつ植物の育成を助長でき、しかも、箱形額内を排気して植物の蒸散作用が妨げられるのを防止することができるという効果を奏する。
【0022】
しかも、根の酸素呼吸により生じた二酸化炭素が略密閉された箱形額内で排気手段により上昇して効率よく葉に与えられ、光合成が助長されるという効果を奏する。
【0023】
また、エアーポンプを用いる必要がないので、部品点数を低減できるとともに、騒音を低減することができ、額型植物育成装置を壁に掛けたり置物にしたりしても室内滞在者に不快感を与えることが殆どないという効果を奏する。
【0024】
これらのことから、容易に好環境で植物を育成可能となり、実用的な額型植物育成装置を提供することができるという効果を奏する。
【0025】
上記第2態様の構成によれば、該箱形額内の上部に排気ファンが配置されているので、箱形額の外部に排気ファンを取着する場合よりも見栄えがよいという効果を奏する。
【0026】
上記第3態様の構成によれば、排気装置を該箱形額の外部に配置し、該排気装置の吸気口と該箱形額の該排気口との間をパイプで接続するので、複数の額型植物育成装置に対し1つの排気装置を用いればよく、かつ、排気装置を室外などの外部に配置することができるという効果を奏する。
【0027】
上記第4態様の構成によれば、床部材と蓋部材の間に培土を貯えることができ、また、該床部材の上面に複数の孔が形成されているので、該複数の孔を通して培養液を培土にその隙間での毛細管現象により徐々に与えることができるという効果を奏する。また、該蓋部材を備えているので、見栄えが向上するという効果を奏する。
【0028】
上記第6態様の構成によれば、該箱形額の対向する側面の対向する位置にそれぞれ第1及び第2の該吸気口が形成され、該空気流路は、該第1の吸気口と該第2の吸気口との間を連通するパイプを有し、該パイプの該栽培槽の底面に沿った部分に気泡吐出孔が形成されているので、吸気口から流入したエアーの流れが箱形額内において略左右対称となり、左右に植えられた植物への影響が対称的になって、パワーが比較的小さい排気手段を用いることが可能となる(エアーの流れが非対称になった場合には、流れが少ない方にも充分な空気の流れを与える必要があるため、パワーが比較的大きい排気手段を備えなければならない。)。
【0029】
また、左右に植えられた植物の一方がより成長してアンバランスになり見栄えが悪化するのを防止できる。
【0030】
上記第7態様の構成によれば、該床部材に形成された複数の孔は、該気泡吐出孔と該蓋部材の開口との間に対応した部分に形成されたものの径が他の部分に形成されたものの径よりも大きいので、気泡が植物の根の付近をより多く通ることになり、植物の根にエアーを効率よく与えることが可能となるという効果を奏する。
【0031】
上記第8態様の構成によれば、該箱形額の前面の該窓口の下方が不透明部であり、該不透明部の上辺高さ位置が該栽培槽の上端より高く、該不透明部の水平方向一端部に覗き孔が形成され、該栽培槽が透明部材で形成されているので、見栄えを悪化させることなく、該栽培槽内を確認することができるという効果を奏する。
【0032】
上記第9態様の構成によれば、該排気手段により該箱形額内の空気を該排気口から排気させることにより、該箱形額内を負圧にして該吸気口から該箱形額の内部へ外気を流入させるとともにガス添加口を介して該箱形額の内部へ二酸化炭素ガスを流入させるので、エアーポンプと排気装置を用いた場合と比較して、該箱形額内への二酸化炭素の流入が円滑に行われるという効果を奏する。
【0033】
上記第10態様の構成によれば、該箱形額内の両側部の各々又は上部に照明灯が配設されているので、鑑賞効果を高めたり、光合成を活発化させたりすることができるという効果を奏する。この場合、該箱形額内の空気を排気しなければ該箱形額の略密閉構造によりその中に熱がこもることになるが、排気手段により熱も排気され、さらに、培養液の水分蒸発による気化熱で該箱形額内の温度上昇が妨げられる。
【0034】
本発明の他の目的、構成及び効果は以下の説明から明らかになる。
【実施例1】
【0035】
図5は、栽培槽が収容される箱形額10の概略構成を示す分解斜視図である。図6は、この箱形額10を組み立てた状態の正面中央を通る縦断面図である。
【0036】
箱形額10は、縦断面矩形の中枠11を備え、その前面の段差部111に、シール部材121を介して額縁13の段差部131が嵌合される。額縁13には、窓口132が形成され、その縁部に形成された段差部133に、シール部材122を介して透明板14が嵌合される。額縁13の前面には、窓口132の四隅の各々に対応して、止め板15がピン16(図3参照)により回動自在に支持され、止め板15を回動させることにより、止め板15の板ばね作用で透明板14がシール部材122を介し窓口132側へ押圧されて、窓口132が封止される。
【0037】
中枠11の背面には段差部111と同様な段差部112が形成され、これに、シール部材123を介して背板17の周囲の段差部171が嵌合される。背板17及び額縁13は、不図示のねじにより中枠11に螺着されて、箱形額10の組立が完了する。
【0038】
後述の培土や培養液を取り扱う関係上、中枠11、額縁13及び背板17は、耐腐食性材料、例えばステンレススチール、アルミニウム、アルミニウム合金または合成樹脂等で形成するのが好ましい。また、透明板14は、シール性及び透明性の観点から、ガラス板が好ましい。
【0039】
次に、図1、図2及び図4を参照して、主に箱形額10の内部構造を説明する。
【0040】
図1は、中枠11の内部構造を示す、正面に平行な面に沿った一部縦断面図であり、図2は、図1の構成において植物を育成している状態を示す一部縦断面図であり、図4は、中枠11に収容される栽培槽20とこれに関係した部分を示す斜視図である。
【0041】
栽培槽20には、縦断面コ字型の床部材としての床21が挿入され、床21の床板部の対向辺から下方へ延びた脚部211及び212の下端が、栽培槽20の底面に接して、床21と栽培槽20の底面との間に空間が形成される。栽培槽20の上端開口には、蓋部材としての蓋22が載置される。床21と蓋22の間の空間には、図2に示すように、培土23が貯えられ、これに対し下方の空間には、培養液24が貯えられる。
【0042】
培土23には多数の小さな隙間があり、培養液24が培土23内に毛細管現象で浸透する。この浸透を適度に維持するためには、床21の上面から数ミリ程度上まで培養液24が貯えられていることが好ましい。
【0043】
蓋22には、培土23に植設される植物が通るための穴221及び222が形成されている。一方、床21の床板部には、培養液24を通すための、多数の透過孔213、214及び215が形成されている。透過孔214及び215はそれぞれ、上方の穴221及び222に対応する位置に形成され、その他の部分に形成された透過孔213よりも径が大きくて、後述の気泡が通り易くなっている。床21の上面には濾紙FPが敷設されており、培土23の一部が透過孔213〜215から培養液24中に落下するのが防止される。
【0044】
ここで、額縁13の下部かつ隅部には、覗き穴134が形成されている。覗き穴134から栽培槽20の内部を確認できるようにするため、栽培槽20及び床21は透明部材、例えばアクリル樹脂で形成されている。これに対し蓋22は、見栄え上と耐腐食性とから、ステンレススチール、アルミニウム、アルミニウム合金又は合成樹脂などで形成するのが好ましい。
【0045】
次に、上記気泡を生成するための構成について説明する。
【0046】
床21及び蓋22の横幅方向両端部には孔が形成されており、これらにエアーパイプ25が通されて、エアーパイプ25がU字形になっている。エアーパイプ25は、例えばフレキシブル合成樹脂で形成されている。このエアーパイプ25も、覗き孔134から内部を確認できるように、透明部材で形成されている。エアーパイプ25の、栽培槽底面に沿った部分には、上方の穴221及び222のそれぞれに対応して、気泡吐出孔251及び252が形成されている。
【0047】
エアーパイプ25の両端部は、図1に示す如く、中枠11の対向する側面の孔に取着されたジョイント26及び27の内端部に接続されている。ジョイント26及び27の外端開口はそれぞれ、エアー吸気口261及び271を構成している。
【0048】
一方、中枠11内の上面中央部には、ローラーベアリングを用いた騒音が比較的少ない排気ファン30が配設されている。排気ファン30の排気口に対応して、中枠11の一方の側面に孔が形成され、この孔と排気ファン30の排気口との間がダクト31で連結されている。このダクト31の外端開口は、箱形額10の排気口311となっている。
【0049】
見栄え上、排気ファン30やその配線が透明板14を通して外部から視認されないようにするために、透明板14の上辺高さ位置に対応して、仕切板32が中枠11内に架設されている。仕切板32の中央部には、排気ファン30に対応した穴が形成され、この穴に整流筒33が嵌入され、その上端部が排気ファン30の吸気口に接続されている。整流筒33の下端開口には、ごみ等が排気ファン30内に入らないように、エアーフィルタ34が取着されている。エアーフィルタ34は、見栄え上、中枠11と同一材料、例えばステンレススチールのメッシュで構成されている。
【0050】
中枠11内にはさらに、その両側面に、蛍光管式照明装置40及び41が対向して配設され、その長手方向が中枠11の高さ方向と平行になっている。蛍光管式照明装置40及び41は、見栄え上、透明板14の両サイドよりも外側に位置している。
【0051】
次に、上記の如く構成された本実施例の額型植物育成装置の作用を説明する。
【0052】
図2に示すように、培土23に植物を植え、額縁13の窓口132を透明板14により封止した状態で、排気ファン30に電源を投入する。
【0053】
箱形額10は、吸気口261、271、排気口311以外が密閉構造となっているので、排気ファン30により中枠11内の空気がダクト31を介し外部へ排出されると、中枠11内が負圧になって、吸気口261及び271から外気がエアーパイプ25内へ流入し、孔251及び252から気泡が吐出される。
【0054】
これにより、培養液24が攪拌されるとともに、気泡が主に透過孔214及び215を通り、さらに穴221及び222並びに培土23内の隙間を通って上昇する。したがって、植物の根に空気が与えられ、根の酸素呼吸が充分なものとなって、根腐れが防止されるとともに植物の育成が助長される。この酸素呼吸により二酸化炭素が生成されるが、これは上昇して葉に与えられ、光合成が助長される。上昇した空気は、排気ファン30を通って外部に排気される。図2中の矢印は、空気の流れを示している。
【0055】
本実施例1によれば、箱形額10内の空気を排気ファン30で排気させることにより箱形額10内を負圧にして、吸気口261及び262から外気を流入させ、栽培槽20内の培養液24内に気泡を吐出させるので、エアーポンプを用いることなく、培養液24を攪拌するとともに植物の根に空気を供給して根腐れを防止しつつ植物の育成を助長でき、しかも、箱形額10内を排気して植物の蒸散作用が妨げられるのを防止することができる。
【0056】
また、エアーポンプを用いる必要がないので、部品点数を低減できるとともに、騒音を低減することができ、額型植物育成装置を壁に掛けたり置物にしたりしても室内滞在者に不快感を与えることが殆どない。
【0057】
しかも、培土23の下部に培養液24を配置して毛細管現象で培土23内に培養液24を徐々に浸透させることができる。
【0058】
これらのことから、容易に好環境で植物を育成可能となり、実用的な額型植物育成装置を提供することができる。
【0059】
また、図3に示す如く、額縁13の下部の隅部に覗き孔134を形成するとともに、透明の栽培槽20を用いているので、見栄えを悪化させることなく、栽培槽20内を確認することができる。
【0060】
さらに、額型植物育成装置を正面から見てエアーパイプ25が左右対称に配置され、気泡吐出孔251及び252も左右対称に形成され、その上方の透過孔214及び215並びに穴221及び222についても左右対称に形成され、さらに排気ファン30が上面中央部に配設されているので、吸気口261及び271から流入したエアーの流れも中枠11内において略左右対称となり、左右に植えられた植物への影響が対称的になる。これにより、パワーが比較的小さい排気ファン30を用いることができる(エアーの流れが非対称になった場合には、流れが少ない方にも充分な空気の流れを与える必要があるため、パワーが比較的大きい排気ファン30を備えなければならない。)。
【0061】
また、蛍光管式照明装置40及び41を点灯させて、鑑賞効果を高めたり、光合成を活発化させたりすることができる。この場合、中枠11内の空気を排気しなければ箱形額10の密閉構造により箱形額10内に熱がこもることになるが、排気ファン30により熱も排気され、さらに、培養液24の水分蒸発による気化熱で中枠11内の温度上昇が妨げられる。
【0062】
本実施例1の試作品の概略数値例は、次の通りであった。
【0063】
箱形額10:横幅450mm、高さ600mm、奥行80mm
エアーパイプ25:外径7mm、内径6mm、気泡吐出孔の直径3〜4mm
排気ファン:DC12V、0.3A、最大風量0.29m3 /min
【実施例2】
【0064】
図7は、本発明の実施例2の額型植物育成装置の、正面に平行な面に沿った一部縦断面図である。
【0065】
この例では、中枠11の対向する側面に、上述と同じ理由で、二酸化炭素添加用ジョイント50と51とが対称的に取着されている。ジョイント50及び51の、中枠11から外側の部分にはそれぞれ、開度調整バルブ53及び54が設けられている。開度調整バルブ53及び54の吸気口531及び541にはそれぞれ、カートリッジ型二酸化炭素ボンベ55及び56のノズルが接続されている。
【0066】
開度調整バルブ53及び54を操作して流路を開くと、カートリッジ型二酸化炭素ボンベ55及び56から二酸化炭素がそれぞれジョイント50及び51を介して中枠11内に流入し、植物の光合成に利用される。排気ファン30により中枠11内が負圧になるので、カートリッジ型二酸化炭素ボンベ55及び56から中枠11内への二酸化炭素の流入が円滑に行われ、その流量は、開度調整バルブ53及び54により調節される。
【0067】
他の点は、上記実施例1と同一である。
【実施例3】
【0068】
図8は、本発明の実施例3の、主に排気構成を示す、複数の額型植物育成装置の正面図である。
【0069】
この例では、排気手段を構成する排気ファンを箱形額10A内に設ける代わりに、複数の箱形額10Aに対し外部に1つの排気装置30Aを配置し、複数の箱形額10Aの各排気口311と排気装置30Aとの間をダクト31A及び31Bで接続している。排気装置30Aは、室外に配置することができる。排気装置30Aは、簡単な構成で騒音を防止するためには排気ファンであることが好ましいが、小型防音室に配置することもできるので、排気装置30Aとして、真空ポンプ等の排気手段を用いることも可能である。
【0070】
他の点は、上記実施例1と同一である。
【0071】
なお、本発明には外にも種々の変形例が含まれる。
【0072】
例えば、箱形額10は、中枠11と背板17とが熔着又は一体形成され、又は、中枠11と額縁13とが熔着又は一体形成された構成であってもよい。
【0073】
また、上記実施例では植物の根を培土23に植える場合を説明したが、植物をロックウール等に根付かせて培養液24中に浸す水耕栽培にも本発明を適用可能であることは明らかである。
【0074】
また、気泡吐出孔251及び252に対応して、排気ファン30を中枠11の上部2箇所に左右対称に配設する構成であってもよい。吸気口から栽培槽内まで外気を導く空気流路はエアーパイプに限定されず、例えば、装飾品内に形成された空気流路であってもよい。気泡吐出孔は一箇所以上であればよく、エアーパイプ25を1つのジョイントに接続し、気泡吐出孔がパイプ解放端又はエアーストーンの多数の孔である構成であってもよい。また、気泡吐出孔を下向きに配置して気泡を下側へ吐出させる構成であってもよい。
【0075】
さらに、吸気口261及び271は、中枠11の上面又は背板17側に設けてもよい。背板17側に設ける場合、背板17をその正面から見て、背板17に屈曲凸部を形成し、この部分に吸気口261及び271を設けて、外気が入り易くするようにしてもよい。吸気口261、271及び排気口311は、中枠11の孔自体であってもよい。
【0076】
また、培養液24として水を用いてもよい。この場合、例えば養分を培土23に含ませることにより、養分を含む培養液を用いた場合と同様の効果が得られる。さらに、蓋部材は見栄えをよくするためのものであるので、なくてもよい。
【0077】
また、本発明の額型植物育成装置は、壁に掛けるものに限定されず、縦置き型デスクトップコンピュータ本体を起立安定させる不図示のスタンド(脚体)のようなものに載置される置物であってもよい。
【0078】
照明灯の配設位置は、箱形額内の両側部に限定されず、上部であってもよいことは勿論である。
【0079】
さらに、植物の成長期には透明板14の代わりにミラーを用い、蛍光管式照明装置40及び41からの光を該ミラーで反射させて植物に当て、光合成をより促進させるようにしてもよい。ハーブのような、鑑賞ではなく育成を主目的とする場合には、このミラーを用いるとともに、上記実施例2で述べた二酸化炭素添加を行うのが好ましい。
【0080】
また、培養液24の液位を検出して自動的に培養液24を補給したり、中枠11内の室温を検出し、その温度に応じて、排気ファン30へ供給する電源電圧や交流周波数などを変えたり、複数個の排気ファン30のうちオンにする個数を変えることにより、該温度を設定範囲内に制御する構成であってもよい。
【0081】
上記実施例2においてこのように排気ファン30のパワーを変えるとともにサイリスタ等で蛍光管式照明装置40及び41のパワーを変える構成にすれば、該パワーに応じて二酸化炭素添加量が自動的に好ましく変化することになる。実施例2と3の組み合わせにおいて、二酸化炭素ボンベも外部の離れた位置に配置する構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】箱形額の中枠の内部構造を示す、正面に平行な面に沿った一部縦断面図である。
【図2】図1の構成において植物を育成している状態を示す一部縦断面図である。
【図3】植物を育成している状態を示す、額型植物育成装置の正面図である。
【図4】中枠に収容される栽培槽とこれに直接関係した部分を示す斜視図である。
【図5】栽培槽が収容される箱形額の概略構成を示す分解斜視図である。
【図6】この箱形額を組み立てた状態の正面中央を通る縦断面図である。
【図7】本発明の実施例2の額型植物育成装置の、正面に平行な面に沿った一部縦断面図である。
【図8】本発明の実施例3の、主に排気構成を示す、複数の額型植物育成装置の正面図である。
【符号の説明】
【0083】
10、10A 箱形額
11 中枠
111、133、171 段差部
121〜123 シール部材
13 額縁
132 窓口
134 覗き孔
14 透明板
15 止め板
16 ピン
17 背板
18 ボルト
20 栽培槽
21 床
211、212 脚部
213、214、215 透過孔
22 蓋
221、222 穴
23 培土
24 培養液
25 エアーパイプ
251、252 気泡吐出孔
26、27、50、51 ジョイント
261、271、531、541 吸気口
30 排気ファン
30A 排気装置
31、31A、31B ダクト
311 排気口
32 仕切板
33 整流筒
34 エアーフィルタ
40、41 蛍光管式照明装置
53、54 開度調整バルブ
55、56 カートリッジ型二酸化炭素ボンベ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
培養液を貯える栽培槽と、
正面に窓口が形成され、該窓口が透明板で封止され、下部に該栽培槽が配置され、吸気口及び排気口が設けられた箱形額と、
該吸気口から該栽培槽内まで外気を導く空気流路と、
該箱形額内の空気を該排気口から排気させる排気手段と、
を有し、該排気手段により該箱形額内の空気を該排気口から排気させることにより、該箱形額内を負圧にして該吸気口から外気を導入させ該栽培槽内の培養液の中に気泡を吐出させることを特徴とする額型植物育成装置。
【請求項2】
該排気手段は、該箱形額内の上部に配置された排気ファンと、該排気ファンの排気口と該箱形額の排気口との間に接続されたダクトとを有することを特徴とする請求項1に記載の額型植物育成装置。
【請求項3】
該排気手段は、該箱形額の外部に配置された排気装置と、該排気装置の吸気口と該箱形額の該排気口との間に接続されたパイプとを有することを特徴とする請求項1に記載の額型植物育成装置。
【請求項4】
該栽培槽内の中間部に、上面が該栽培槽の底面と平行に配置され、該上面に複数の孔が形成された床部材と、
該栽培槽の上面開口部を覆い、植物が通る開口が形成された蓋部材と、
をさらに有し、該床部材と該蓋部材の間に培土を貯える空間が在ることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1つに記載の額型植物育成装置。
【請求項5】
該箱形額は、
中枠部と該中枠部の背面を閉じる背板部とを有する箱部と、
該中枠部の前面に取着される額縁と、該額縁の窓口を封止する該透明板と、
を有することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1つに記載の額型植物育成装置。
【請求項6】
該箱形額の対向する側面の対向する位置にそれぞれ第1及び第2の該吸気口が形成され、
該空気流路は、該第1の吸気口と該第2の吸気口との間を連通するパイプを有し、
該パイプの該栽培槽の底面に沿った部分に気泡吐出孔が形成されている、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1つに記載の額型植物育成装置。
【請求項7】
該気泡吐出孔と該蓋部材の開口とが上下に対応した位置に形成され、該床部材に形成された複数の孔は、該気泡吐出孔と該蓋部材の開口との間に対応した部分に形成されたものの径が他の部分に形成されたものの径よりも大きいことを特徴とする請求項4乃至6のいずれか1つに記載の額型植物育成装置。
【請求項8】
該箱形額の前面の該窓口の下方が不透明部であり、該不透明部の上辺高さ位置が該栽培槽の上端より高く、該不透明部の水平方向一端部に覗き孔が形成され、該栽培槽が透明部材で形成されていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1つに記載の額型植物育成装置。
【請求項9】
該箱形額にはさらに、該箱形額の外部から内部へ二酸化炭素ガスを流入させるガス添加口が備えられ、該ガス添加口と通じる流路に開度調整弁が介装され、
該排気手段により該箱形額内の空気を該排気口から排気させることにより、該箱形額内を負圧にして該吸気口から該箱形額の内部へ外気を流入させるとともに該ガス添加口を介して該箱形額の内部へ二酸化炭素ガスを流入させる、
ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1つに記載の額型植物育成装置。
【請求項10】
該箱形額内の両側部の各々又は上部に照明灯が配設されていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1つに記載の額型植物育成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2007−174965(P2007−174965A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−376815(P2005−376815)
【出願日】平成17年12月28日(2005.12.28)
【出願人】(506002557)
【Fターム(参考)】