説明

顔料をペイント中に樹脂ビーズの形成体によって組み込むための方法

塗料組成物は、少なくとも60℃のTgを有する付加ポリマーを、封入された顔料粒子を形成するために実質的に一次凝集粒子を有する粒状顔料の存在下で重合し、封入された顔料生成物を分離及び乾燥し、そして乾燥させた封入された顔料生成物を塗料ビヒクルで結合することによって製造される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料組成物を着色するための、及び被覆された物品を製造するための方法に関する。
【0002】
発明の背景
幅広い種類の顔料は、その独特な構造及び特性をそれぞれ有する、ペイント及び塗料組成物において使用される。従って、それぞれ種々の顔料は、塗料組成物においてわずかに異なった挙動をする傾向がある。顔料の種々の挙動、例えば塗料組成物のレオロジー及び粘性に対する顔料の効果は、塗料組成物を配合すること及び製造することにおいて特殊な考慮を必要とする。さらに、塗料組成物中の顔料の安定した分散を保ち、沈殿及び退色を防ぐことに注意せねばならない。
【0003】
一般的に、工業及び自動車塗装は、顔料分散液中で予め分散されている乾燥顔料を使用して着色される。該顔料分散液は、顔料凝塊物を一次顔料凝集粒子までばらばらに破壊し、かつ樹脂を顔料粒子の表面と密接に会合するために、剪断によって、乾いた、液状樹脂系において凝塊された顔料を製造する。それらの作用は、塗料中の顔料の適切な発色のために必要である。該顔料分散液は、貯蔵中の沈殿及び種むら、並びにペイントの物理的特性、例えばレオロジー及び粘性に影響を及ぼす相互作用を含む、特定の問題を依然、呈しうる。
【0004】
封入された顔料の分散液は、特定の使用のために示唆されてきた。例えば、GB 1 156 653号は、顔料をポリマー及び安定剤の溶液中で磨砕又は粉砕する工程、有機液体を非溶剤に交換するために分散液を改質する工程、そして分散粒子を有機液体に不溶性である二次ポリマーの分散重合により形成されたポリマーによって封入する工程によって製造された被覆された顔料粒子の分散液を開示している。有機液体の交換は、ポリマーについて非溶剤である液体を添加することによって又は、該液体が溶剤と非溶剤との混合物である場合に、溶剤成分の一部を除去する事によって、例えば蒸発又は分配することによって実施されてよい。GB 1 156 653号に記載された方法は、難しく、かつ複雑にされている。液体媒体中の有機溶剤から有機非溶剤への交換は、条件が注意深く制御されない場合に顔料が不安定化になりうる工程であるだけではなく、該工程が大量の有機液体を使用する。従って、その方法は、ハイソリッドの塗料又は水性塗料の配合物を介して有機液体を制限する現代の塗装には向いていない。1960年代半ばにおけるGB 1 156 653号の当時の塗料は、揮発性有機化合物83〜85質量%を有していて良かったが、今日の塗料は、一般に、揮発性有機化合物30質量%未満を有する。最終的に、有機液体中で分散させた顔料を顔料塗料に使用することは、従来の顔料ペーストが有さない貯蔵上及び製造上の問題を導き、中でも特筆すべきは、顔料と一緒により大量の有機液体を貯蔵することと、顔料に加えて塗料組成物中へのそれら大量の有機液体を導入することである。
【0005】
米国特許番号3849152号は、顔料を有機溶剤中で分散すること、ポリシロキサンポリマーを該溶剤中で重合すること、そして封入された顔料粒子を得るために分散液を噴霧乾燥することによる特定の無機顔料の封入を記載している。該無機顔料は、ポリシロキサンポリマーと反応性のヒドロキシル基を有してよい。
【0006】
米国特許番号3826670号は、イオン架橋されたポリマー塩、例えばα,β−エチレン性不飽和酸のポリマーの多価金属塩の中間層、及びケイ素、ジルコニウム又はチタンの密な、水化物の、非結晶の酸化物の外面層を有する封入された有機顔料の製造を記載している。前記の封入された顔料は、優れた分散性と共に化学的に不活性であると報告されている。
【0007】
米国特許番号4771086号は、水性媒体中で、顔料(例えばTiO2)、水不溶性モノマー、及び水溶性の非イオン界面活性剤を懸濁することを記載している。該モノマーは、開始剤を使用して付加重合される。封入された顔料の懸濁液は、通常のラテックスペイントと比較して改良された隠蔽性及び色を有するペイントとして使用されうる。米国特許番号3849152号は、例えばアセトン、ヘキサン又はトリクロロエチレン中でスラリー化された顔料を開示しており、該顔料は、固体の形に重合されて顔料を封入するポリシロキサンの液体で完全に覆われている。該顔料は、有利には、ポリシロキサンと反応性のヒドロキシ基を有する。前記スラリーは、噴霧乾燥され、かつ被覆された顔料粒子は、標準サイクロン集塵機中で収集され、そして封入ポリシロキサンフィルムの硬化を完了するまで100℃で空気乾燥させる。
【0008】
WO 01/92359号の要約は、10nm〜1mmの平均直径を有する、リン酸、ホスホン酸、スルホン酸スルホネート、アミノ又はカルボキシレート基の活性基を含む化合物と最初に反応された表面を有する粒子から製造された塗料のための重合的にマイクロカプセル化させた顔料を開示しており、そして該表面に結合させた活性基は、脱離基を含む開始剤と反応し、かつ最終的に、ATRPグラフト重合が、少なくとも1つのオレフィン性不飽和モノマーを用いて開始剤によって実施される。
【0009】
封入された顔料は、インクジェットインクにおいて使用するために製造されてきた。米国特許番号6057384号は、コアシェルポリマーと会合させた着色剤を含む水性インクジェットインクを開示している。一次ポリマーのモノマーは、着色剤への付着を高めるために選択され、一方で二次ポリマーのモノマーは、乾燥中の塗膜形成能力と、乾燥後に耐久性のある膜を与えるために選択される。該ポリマーは、26〜35段中の実施例中のように、又はポリマー及び一次ポリマーの溶剤での"熱撹拌"法、並びに二次ポリマーを有する液相中での粉砕によって液相中で直接粉砕することによって着色剤と会合される。粉砕された顔料は、水で希釈され、最終のインクを製造する。
【0010】
JP 2000 281951号は、油溶性溶剤中での着色剤の溶解又は分散、そして水中での該着色剤の乳化を記載している。そのエマルジョン及び樹脂は、水不溶性有機溶剤中で溶解され、水性エマルジョンに相反転されて、着色剤、エチレンオキシド鎖を有する界面活性剤、及びカチオン樹脂を含有する0.01〜2.0ミクロンの平均粒子サイズを有する粒子を提供する。該インクは、掻き傷、マーカー及び水に対して画像の耐性を与える。JP 1111 6881号は、水中で乳化性である親水性樹脂、及び水中で乳化性ではない疎水性樹脂中で封入された顔料を含有するインクジェットインクを記載している。該インクは、インクジェットノズルを詰まらせず、かつ耐候性及び耐水性である。米国特許番号2003/097961号は、顔料と有機溶剤中で溶解されたポリマーとを共に粉砕すること、架橋剤を添加すること、水中で混合物を乳化すること、有機溶剤を除去すること、かつ乳化相中でポリマーと架橋剤とを架橋することを開示している。その生成物は、架橋されたポリマー中で封じ込められた顔料のエマルジョンであると言われる。インクは、他のインク成分を含有する水性媒体を着色剤の分散液に徐々に添加することによって製造される。
【0011】
しかしながら、それらのインクジェットインクの刊行物は、連続的な、塗装層の保護、塗装層の平滑性、塗料組成物の適用及び硬化中に要求される複雑な流動学的挙動、並びに製造の問題を有する、工業及び自動車塗装において生じる多くの問題を扱わない。
【0012】
従って、それらは、種々の顔料の塗装材料の特性に対する影響を均一にする又は中立化するであろう着色剤の中間形成体を製造するであろう方法が必要とされ続けている。これは、ペイントの製造において要求される多くの加工工程を減少することができる、よりよい取り扱い及び貯蔵の特徴を有する中間体の使用を可能にする。
【0013】
発明の詳細な説明
本発明は、熱硬化性塗料組成物中に、少なくとも約60℃ガラス転移温度を有する付加ポリマー中で封入された固体の粒状顔料を取り込む工程を含む熱硬化性塗料組成物を製造するための方法を提供する。その顔料粒子は、実質的に一次凝集粒子である。一次凝集のサイズは、従来の顔料分散技術、例えば粉砕を介して到達できるおおよそ最も小さい凝集サイズである顔料粒子に関連している。塗料において使用される顔料の一次凝集のための典型的な平均粒子サイズは、約0.05ミクロン〜約2.0ミクロンである。付加ポリマー中で封入された固体の粒状顔料は、有利には約2〜約5ミクロンの平均粒子サイズを有してよい。
【0014】
さらに本発明は、本発明の熱硬化性塗料組成物で下地を被覆する方法、及び硬化された、適用された組成物から連続的な塗装層を形成する方法を提供する。一実施態様において、封入付加コポリマーは、硬化中に、塗料組成物のビヒクルの他の成分と反応する。"ビヒクル"は、塗料組成物中のあらゆる溶剤及び/又は分散液に加えて塗膜形成樹脂及びポリマーに関連している。
【0015】
本発明は、ペイント及び塗料の製造を、他の着色剤中へ顔料を取り込むため、及び特に、レオロジー及び粘性に関して、顔料含量中でだけ変化する塗料組成物間のより均一の挙動を得るためのよりよい方法で達成することを可能にする。本発明の1つの側面は、顔料及び着色剤が、球面形に近いビーズ又は粒子形で捕獲されることである。そのような粒子は、長期間の貯蔵性を可能にし、かつペイント系の範囲内での塗料の製造又は適用中の化学及び物理の相互作用の減少又は除去を助ける。これは、塗料中への取り込みのための顔料の大量製造を可能し、かつ塗料中への着色剤のより正確な及び/又は計測供給された計量分配を可能し、それによって色付け作業を減少又は除く。本発明による方法によって製造された生成物は、ペイント又はコーティング中への、塗料製造のペイントのために使用される望ましい方法に依存している湿潤の又は乾燥の形での着色剤の提供を可能にする。
【0016】
このように着色された顔料ビーズは、多様な方法及び材料から製造されることができる。好ましい例は、特に、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂又はUV硬化樹脂を含む。種々の構成体は、種々の物理的特性、例えばペイント系における均一性、化学的相互作用に対する耐性、及び塗料の結合性、耐久性又は色のためになってよい他の特性を占めている。本発明は、樹脂の設計の可能性、又はペイント系と匹敵するように設計された様々な特性を示す顔料を封入するために使用される樹脂の組み合わせを可能にする。かかる特性は、塗装系の範囲内でほとんど溶解するものから、非常に硬くかつ耐薬品性のある樹脂までの様々なものを含む。例えば、ビーズ形成のための非常に硬く、耐薬品性のある樹脂は、中間体の材料管理及び貯蔵のための最も良い特性を提供してよい。
【0017】
本発明による樹脂中への顔料の取り込みは、通常の分散を含む多様な方法、及び着色剤の製造方法、又は他の種類のエネルギー、希釈、蒸留、もしくは例えば熱の抵抗力を利用するために計画された他の方法によって実施される。
【0018】
特に、全ての着色剤の製造を含むペイントの製造分野における本発明による方法からの利点は、特に、塗料の特性に対する同一の中立の効果を有するあらゆる着色剤を製造し、該着色剤の体積測定又は質量測定によって色の製造を可能にし、塗装技術の多様性において使用され、いくつかの色及び物理的特性を有する着色剤のより多い量、よりよい品質管理、より長い貯蔵安定性、より大きな融通性での着色剤の前製造における着色剤の予め製造することを有する。本発明の1つの側面において、封入された顔料は、乾いた状態で注入することができた。かかる顔料は、特に粒子サイズによって選別され、かつ着色された顔料の最新の形よりも梱包及び処理されることができた。
【0019】
本明細書で使用される単数形は、その物が"少なくとも1つ"存在することを示し;可能であれば、複数のそのような物が存在してよい。値に適用された場合の"約"は、計算又は測定が値においていくらかのわずかな不正確さを見込むことを示す(値における正確さにいくらか近づいて;近似的に、又は適度に値に近い;ほぼ)。何らかの理由で、"約"によって提供された不正確さが、さもなければ当該技術分野においてこの普通の意味で理解されなければ、その時、本明細書で使用される"約"は、その値における5%までの差異の可能性を示す。
【0020】
本発明のさらなる適用範囲は、以下で提供される詳細な説明から明白となる。詳細な説明及び特定の実施例は、本発明の好ましい実施態様を示す一方で、例証の目的のためのみを意図し、本発明の趣旨を制限することを意図しない。
【0021】
好ましい実施態様の詳細な説明
次の好ましい実施態様の説明は、単に例示をする性質のものであって、決して本発明、その応用、又は使用の制限を意図する方法ではない。
【0022】
熱硬化性塗料組成物は、熱硬化性のビヒクルと、少なくとも約60℃のガラス転移温度を有する付加ポリマー中で封入された少なくとも1つの固体顔料粒子とを合することによって製造される。封入された顔料粒子の生成物の平均粒子サイズは、有利には約2ミクロン〜約5ミクロンである。封入された粒子中に含まれる顔料は、有利には、顔料の一次凝集物であり、約0.5〜約2ミクロンであってよい。
【0023】
使用される顔料は、金属酸化物、クロメート、モリブデート、ホスフェート及びシリケートを含む無機顔料であってよい。使用されることができる無機顔料及び充填剤の例は、二酸化チタン、硫酸バリウム、カーボンブラック、オーカー、シエンナ、アンバー、ヘマタイト、褐鉄鉱、赤色酸化鉄、透明な赤色酸化鉄、黒色酸化鉄、褐色酸化鉄、酸化クロムグリーン、クロム酸ストロンチウム、リン酸亜鉛、シリカ、例えばヒュームドシリカ、炭酸カルシウム、タルク、バライト、フェロシアン化アンモニウム第二鉄(プルシアンブルー)、ウルトラマリン、クロム酸鉛、モリブデン酸鉛及びマイカフレーク顔料である。その方法は、有機顔料と共に特に有益的に使用される。有用な有機顔料の例は、金属化された及び非金属化されたアゾレッド、キナクリドンレッド及びバイオレット、ペリレンレッド、銅フタロシアニンブルー及びグリーン、カルバゾールバイオレット、モノアリリド(monoarylide)及びジアリリド(diarylide)イエロー、ベンズイミダゾロンイエロー、トリルオレンジ、ナフトールオレンジ等である。
【0024】
付加ポリマーは、少なくとも約60℃、有利には少なくとも約100℃のガラス転移温度を有する。特に、該付加ポリマーのガラス転移温度は、貯蔵中に固体の、封入された顔料の焼結を妨げるために選択される。その封入された顔料は、有利には、易流動性粒子の物質として有用である。この理由で、一般的に、封入された顔料の集塊を生じる強い相互作用をもたらしうる、付加ポリマーの官能性を妨げる事が、利点でもある。一方で、該ポリマーは、湿った特徴の良い顔料を有するべきである。
【0025】
1つの好ましい方法において、封入付加ポリマーは、解凝集された、有利にはその一次凝集の粒子サイズまで減少させた顔料の分散液中で付加重合可能なモノマーを乳化すること、そして該モノマーの乳化重合を実施することによって、形成されてよい。その封入された顔料粒子は、水性媒体から適切な方法、例えば空気乾燥又はフィルタリングによって分離させてよい。顔料粒子を封入させた生成物は、有利には、約2〜約5ミクロンの平均直径を有する。
【0026】
エマルジョンポリマーは、有利には、架橋官能性、例えば、制限されることなく、活性水素基、オキシラン基、カルボジイミド基及びアセトアセトキシ基を含有する。該エマルジョンポリマーは、活性水素−官能性モノマーを含有し、かつ活性水素−官能性モノマーが酸−官能性モノマーではない場合に、有利には酸−官能性モノマーも含有するモノマー混合物から重合されうる。活性水素−官能性モノマーの例は、制限されることなく、ヒドロキシル−官能性モノマー、例えばヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート及びヒドロキシブチルメタクリレート;アクリル酸、メタクリル酸及びクロトン酸を含有する酸−官能性モノマー;並びにカルバメート−及び尿素−官能性モノマー又は重合後にカルバメートもしくは尿素基に転化される官能基を有するモノマー、例えば、制限されることなく、米国の特許5,866,259号の、"Primer Coating Compositions Containing Carbamate−Functional Acrylic Polymers"で開示され、参照をもって本明細書に取り入れられた全体の開示されたものを含む。架橋官能性を提供するために使用されうる他のモノマーの例は、制限されることなく、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アセトアセトキシブチルメタクリレート、アセトアセトキシエチルアクリレート及びカルボジイミドメタクリレートを含む。有利には、活性水素−官能性モノマーの十分な量は、1000グラム/当量以下、より有利には800グラム/当量以下、さらにより有利には600グラム/当量以下の当量をもたらすために含まれる。
【0027】
好ましい一実施態様において、エマルジョンポリマーは、アニオン性分散液を形成する。好適な酸−官能性モノマーの例は、制限されることなく、3〜5個の炭素原子を含有するα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸、4〜6個の炭素原子及び無水物を含有するα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸、並びにそれらのモノエステルを含む。例は、制限されることなく、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸又は無水マレイン酸、イタコン酸又は無水イタコン酸等を含む。酸−官能性モノマーの十分な量は、少なくとも約1の酸価を有するエマルジョンポリマーを製造するために含有され、かつ有利には該エマルジョンポリマーは、約1〜約10の酸価を有する。
【0028】
第三級の酸のグリシジルエステルの1つ以上の重合可能なエステルに加えて、1つ以上の他のエチレン性不飽和モノマーが、コモノマーとして本発明のエマルジョンポリマーの形成中に使用される。かかる共重合可能なモノマーの例は、制限されることなく、α,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸のエステル、ニトリル又はアミドを含有し、3〜5個の炭素原子を含有するα,β−エチレン性不飽和モノカルボン酸の誘導体;4〜6個の炭素原子を含有するα,β−エチレン性不飽和ジカルボン酸のジエステル;ビニルエステル、ビニルエーテル、ビニルケトン、ビニルアミド、及び芳香族の又はヘテロ環式脂肪族のビニル化合物を含む。アクリル及びメタクリル酸アミド並びにアミノアルキルアミドの代表的な例は、制限されることなく、アクリルアミド、N−(1,1−ジメチル−3−オキソブチル)−アクリルアミド、N−アルコキシアミド、例えばメチロールアミド;N−アルコキシアクリルアミド、例えばn−ブトキシアクリルアミド;N−アミノアルキルアクリルアミド又はメタクリルアミド、例えばアミノメチルアクリルアミド、1−アミノエチル−2−アクリルアミド、1−アミノプロリル−2−アクリルアミド、1−アミノプロピル−2−メタクリルアミド、N−1−(N−ブチルアミノ)プロピル−(3)−アクリルアミド及び1−アミノヘキシル−(6)−アクリルアミド、並びに1−(N,N−ジメチルアミノ)−エチル−(2)−メタクリルアミド、1−(N,N−ジメチルアミノ)−プロピル−(3)−アクリルアミド及び1−(N,N−ジメチルアミノ)−ヘキシル−(6)−メタクリルアミドのような化合物を含む。
【0029】
アクリル酸、メタクリル酸及びクロトン酸のエステルの代表的な例は、制限されることなく、飽和脂肪族と1〜20個の炭素原子を含有する脂環式アルコールとの反応からのそれらのエステル、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、2−エチルヘキシル、ラウリル、ステアリル、シクロヘキシル、トリメチルシクロヘキシル、テトラヒドロフルフリル、ステアリル、スルホエチル、並びにイソボルニルアクリレート、メタクリレート及びクロトネート;並びにポリアルキレングリコールアクリレート及びメタクリレートを含む。
【0030】
共重合されうるビニルモノマーの代表的な例は、制限されることなく、ビニルアセテート、ビニルプロピオネート、ビニルエーテル、例えばビニルエチルエーテル、ハロゲン化ビニル及びビニリデン、並びにビニルエチルケトンのような化合物を含む。芳香族の又はヘテロ環式脂肪族のビニル化合物は、制限されることなく、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、tert−ブチルスチレン及び2−ビニルピロリドンを含む。
【0031】
他のエチレン性不飽和の重合可能なモノマーの代表的な例は、制限されることなく、無水フマル酸、無水マレイン酸及び無水イタコン酸(エマルジョンポリマー中の酸官能性を提供しうる)、モノエステル(同じく酸官能性を提供する)、並びにジエステルのような化合物を含む。また多官能性モノマーは、部分的に架橋された分散液を提供するためにも含まれてよい。多官能性化合物の例は、制限されることなく、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート及びジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート及びジメタクリレート、ジビニルベンゼン、トリメチロールプロパントリアクリレート及びトリメタクリレート、ペンタエリトリトールテトラアクリレート及びテトラメタクリレート等を含む。
【0032】
一実施態様において、封入ポリマーは、スチレンのホモポリマー又はコポリマーである。
【0033】
前記モノマーは、1工程又は2工程のよく知られた方法による重合で重合されたエマルジョンであってよい。2工程の重合において、第一工程のモノマーが、水性媒体中に最初に添加され、かつ重合され、次に第二工程のモノマーの添加及び重合が行われる。該水性媒体は、有機溶剤の一部を含んでよいが、しかし有利には、水性媒体の約5%未満が有機溶剤であり、及び有利には、有機溶剤は水性媒体中に含まれない。水混和性の有機溶剤の好適な例は、制限されることなく、エステル、アルキレングリコールエーテル、アルキレングリコールエーテルエステル、低分子量の脂肪族アルコール等を含む。
【0034】
イオン又は両性の界面活性剤、例えば硫酸ラウリルナトリウム、ポリエトキシル化アルコール又はポリエトキシ−ポリアルコキシブロックコポリマーに基づく非イオン界面活性剤、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル硫酸エステル、ドデシルベンゼンスルホン酸のアミノ及びアルカリ塩、例えばドデシルベンゼンスルホン酸とナトリウムドデシルベンゼンスルホン酸とのジメチルエタノールアミン塩、及びジオクチルスルホコハク酸ナトリウムが、有利には含まれる。その反応容器は、水と界面活性剤で満たされる。第一及び第二工程で重合されたアニオン界面活性剤のモノマーの合計質量に対して、約0.08質量%〜約0.5質量%、有利には約0.15質量%〜0.35質量%を装入することが好ましい。それぞれの工程で重合されるモノマーの組合せは、水及びモノマーの質量に対する界面活性剤1質量%〜5質量%中で、反応容器に添加される前に、予め乳化されてよい。エマルジョンポリマーは、有利には、非イオン又はアニオン界面活性剤の存在下で実施される。好適な界面活性剤は、制限されることなく、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル硫酸エスエル、ドデシルベンゼンスルホン酸のアミノ又はアルキル塩、例えばドデシルベンゼンスルホン酸とナトリウムドデシルベンゼンスルホン酸とのジメチルエタノールアミン塩、及びジオクチルスルホコハク酸ナトリウムを含む。
【0035】
一般的に、重合は、約30℃〜約95℃、有利には約50℃〜約90℃の温度で実施される。
【0036】
遊離基を製造することができる好適な開始剤は、重合において使用される。好適な開始剤の例は、制限されることなく、アゾ化合物及びペルオキシ化合物、例えばアゾジイソブチロニトリル、4,4−アゾビス(4−シアノバレリアン酸)、ベンゾイルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、ジイソプロピルジカーボネート、t−ブチルペルオキシ−2−エチルヘキサノエート、ペルオキシイソピバレート、過硫酸塩の開始剤、例えば過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム及び過硫酸ナトリウム、並びにアルカリ金属ペルオキシジホスフェート、場合により、還元剤、例えば二亜硫酸ナトリウム、ヒドラジン、ヒドロキシルアミンと、促進剤、例えば鉄、コバルト、セリウム及びバナジル塩の触媒量とを合して、有利にはアルキル金属又はペルオキシ二硫酸アンモニウムを含む。連鎖移動剤は、所望される場合に、分子量を調整するために添加される。典型的な連鎖移動剤は、制限されることなく、メルカプタン化合物、例えばアルキルメルカプタン、例えばオクチルメルカプタン及びドデシルメルカプタン、メルカプトプロピオン酸、並びにメルカプトプロピオン酸のエステルを含む。重合は、典型的に、遊離基重合によって進行する。遊離基源は、典型的に、酸化還元開始剤によって、又は有機ペルオキシドもしくはアゾ化合物によって供給される。有用な開始剤は、制限されることなく、ペルオキシ二硫酸アンモニウム、ペルオキシ二硫酸カリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム、過酸化水素、t−ブチルヒドロペルオキシド、ジラウリルペルオキシド、t−ブチルペルオキシベンゾエート、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、並びに酸化還元開始剤、例えば硫酸第一鉄アンモニウムを有するペルオキシ二硫酸アンモニウム及びメタ重亜硫酸ナトリウムを含む。典型的な連鎖移動剤は、メルカプタン、例えばオクチルメルカプタン、n−又はtert−ドデシルメルカプタン、チオサリチル酸、メルカプト酢酸及びメルカプトエタノール;ハロゲン化化合物;並びに二量体のアルファ−メチルスチレンを含む。
【0037】
顔料に対する封入ポリマーの質量比は、封入された顔料生成物のためにかなり変動してよい。例えば、黒色顔料は、0.02ミクロン未満の極めて小さい一次凝集サイズを有するが、しかし平均粒子サイズ約2ミクロン未満を有する封入された顔料生成物は、処理することがより難しい。この結果、封入された黒色顔料は、比較的高い比の封入付加ポリマーを用いて製造されてよい。対照的に、二酸化チタン顔料は、おそらく、約1ミクロンの一次凝集の粒子サイズを有し、その結果、平均粒子サイズ約2ミクロンを有する封入された二酸化チタン生成物は、低い比の付加ポリマーを有しうる。
【0038】
典型的にエマルジョンポリマーは、約5000〜約1000000の質量平均分子量を有しうる。ある実施態様において、該エマルジョンポリマーは、約10000〜約100000の質量平均分子量を有する。
【0039】
エマルジョンポリマーの理論ガラス転移温度は、コモノマーの選択及び配分を通して、当業者によく知られている方法によって調整されうる。前記封入ポリマーは、封入された顔料材料のための適切な貯蔵性を提供するために選択される。前記封入ポリマーは、封入された顔料材料が貯蔵中にあまり焼結しないほど十分に高いガラス転移温度又は軟化点を有すべきである。一般的に、該封入ポリマーは、貯蔵温度よりも高い、有利には少なくとも約60℃、より有利には少なくとも約100℃のガラス転移温度又は軟化点を有さなければならない。該封入ポリマーは、適用された塗装層の硬化又は焼付け中に合体して塗膜となってもならなくてもよい。
【0040】
塗料組成物に添加された封入された顔料の量は、所望の色の特徴に依存して、かなり変化してよい。その封入された顔料は、塗料組成物において、塗料組成物の合計量に対して、典型的に顔料40質量%までの量で使用される。微粒子の顔料を封入する付加ポリマーは、塗料溶剤中で溶解しない。しかしながら、本発明のいくつかの実施態様において、封入付加ポリマーのある程度の部分的な又は完全な溶解は、該塗料組成物から製造された塗装層における所望された色の特徴を提供してよい。
【0041】
添加剤、例えばヒンダードアミン光安定剤、紫外光吸収剤、抗酸化剤、界面活性剤、安定剤、湿潤剤、レオロジー調整剤、分散剤、定着剤等は、塗料組成物中に取り込まれてよい。かかる添加剤は、よく知られており、かつ塗料組成物に関して典型的に使用される量で含まれてよい。
【0042】
塗料組成物は、当業者によく知られているあらゆる多くの技術による物品に対して被覆されうる。それらは、例えばスプレー塗装、浸し塗り、ロール塗工、カーテン塗工等を含む。自動車の車体板に関して、スプレー塗装が好適である。
【0043】
該塗料組成物は、金属下地、例えば裸鋼、リン酸化鋼、亜鉛メッキ鋼又はアルミニウム;並びに非金属下地、例えばプラスチック及び複合材料を含む、多くの種々の下地上に適用されうる。該下地は、その上に、既に別の塗装の層、例えば電着プライマー又はプライマーサーフェーサーの層を有するあらゆるそれらの材料であってもよい。
【0044】
該塗料組成物は、1回以上の工程で典型的に硬化後の膜の厚さ約20〜約100ミクロンを提供するために適用されうる。下地に着色塗料組成物の適用後、適用された塗装層は、クリアコート塗料組成物の層で、着色層の硬化前又は硬化後に、しかし有利には、着色塗装層及びクリアコート塗装層が、業界標準の"ウェット−オン−ウエット"法で同時に硬化する前に、上塗りされる。
【0045】
該塗料は、有利には、反応物を生じ不溶性ポリマーの網状構造を形成するために十分な温度で及び時間の長さの間、加熱することによって硬化される。硬化温度は、通常、約105℃〜約175℃であり、かつ硬化の長さは、通常、約15分〜約60分である。有利には、該塗料は、約120℃〜約150℃で、約20〜約30分間、硬化される。加熱は、例えば、赤外炉及び/又は対流炉中で行われうる。
【0046】
本発明を、次の実施例においてさらに説明する。それらの実施例は、単に説明を目的とするものであり、発明の詳細な説明及び特許請求の範囲に記載された発明の範囲をあらゆる方法で制限するものではない。
【0047】
実施例
スラリーを、二酸化チタン100グラムを脱イオン水400グラム中で混合することによって製造する。該スラリーを、Cowlesの分散機中で約30分間、スラリーの粒子が10ミクロン未満の小ささになるまで混合する。
【0048】
該スラリーに、モノマー混合液(スチレン20質量%、ヒドロキシエチルメタクリレート30質量%、ブチルメタクリレート45質量%及びアクリル酸5質量%)20グラムを添加し、乳化重合し、ABEX EP 110(Rhodia社から入手可能なアニオン界面活性剤)で安定化する。その重合反応は、過硫酸アンモニウムによって開始される。乳化ポリマーは、顔料粒子の表面上に形成する。生成スラリーを、濾過し、顔料を分離する。該顔料を、脱イオン水で洗浄し、そして乾燥して封入された顔料生成物を生じる。
【0049】
塗料を、その封入された顔料生成物を使用して製造する。無着色の塗料混合液(固形の結合剤としてアニオン性アクリル70%とヘキサ(メトキシメチル)メラミン30%を含む固形分30%)20質量部と顔料分散液(ポリエステル樹脂2質量部とプロピレングリコールn−プロピルエーテルとの組み合わせにおいて封入された顔料生成物6質量部をスラリー化し、そして20%アミン水溶液0.44質量部を添加することによって製造される)10質量部を急速に撹拌する。撹拌を、約30分間続ける。
【0050】
得られた塗料組成物中の顔料は、安定である。
【0051】
該塗料組成物を、(予め下塗りされた)金属下地上に噴霧することによって適用する。適用されたコーティングを、被覆された下地を20分間265゜Fで焼き付けすることによって硬化する。
【0052】
本発明の詳細な説明は、単に例示を性質とするものであるため、本発明の要旨から逸脱しない変更は、本発明の範囲内であることとする。かかる変更は、本発明の趣旨及び範囲から逸脱したものとみなされるべきでない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料組成物を製造する方法において、
(a)水、付加重合可能な1つ又は複数のモノマーの一部、及び実質的に一次凝集粒子を有する粒状顔料の混合物を製造すること、
(b)付加重合可能な1つ又は複数のモノマーの一部を乳化重合し、付加ポリマーを製造すること、
その際、付加重合可能な1つ又は複数のモノマーの一部は、付加ポリマーが、少なくとも約60℃のガラス転移温度を有し、かつ顔料粒子を少なくとも実質的に封入して封入された顔料粒子を形成するように選択される、
(c)封入された顔料粒子を水から取り除き、乾いた、粒状の、封入された顔料生成物を形成すること、かつ
(d)顔料生成物と少なくとも1つの樹脂、該樹脂のための少なくとも1つの架橋剤及び少なくとも1つの水及び有機液体からなる群から選択される要素を含むビヒクルとを合して、塗料組成物を形成すること
を含む方法。
【請求項2】
前記顔料粒子が、約0.1ミクロン〜約5ミクロンの平均粒子サイズを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記付加ポリマーが、少なくとも約100℃のガラス転移温度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
該付加ポリマーが、スチレンのホモポリマー又はコポリマーである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記塗料組成物を下地に適用し、かつ硬化させて塗膜を形成する場合に、該付加ポリマーが、塗膜の一部を形成する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
該付加ポリマーが、下地に適用された前記組成物が硬化される場合に、ビヒクルの構成成分と反応する、請求項5に記載の方法。

【公表番号】特表2009−521583(P2009−521583A)
【公表日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−547689(P2008−547689)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際出願番号】PCT/US2006/062057
【国際公開番号】WO2007/102910
【国際公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【出願人】(591020700)ビー・エイ・エス・エフ、コーポレーション (53)
【氏名又は名称原語表記】BASF Corporation
【住所又は居所原語表記】100 Campus Drive, Florham Park, New Jersey 07932, USA
【Fターム(参考)】