説明

顔料インク用インクジェット記録用紙

【課題】顔料インクで印字した場合の印字濃度が高く、印字ムラのない顔料インク用インクジェット記録用紙を提供すること。
【解決手段】支持体と、その支持体上に形成されたインク受容層と、そのインク受容層上に形成された光沢層とを備えている。インクジェット記録用紙4を水3に浸漬して0.5秒後の超音波5透過強度は90%以上であり、同記録用紙を水に浸漬して1秒後の超音波透過強度は60%以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料インクで印字した場合の印字濃度が高く、印字ムラのない顔料インク用インクジェット記録用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット記録方式は、インクの微小液滴を種々の作動原理により飛翔させて紙等の記録シートに付着させ、画像・文字等の記録を行うものであるが、高速、低騒音で、多色化が容易であり、記録パターンの融通性が大きくて、現像および定着が不要であるなどの特徴があり、各種図形およびカラー画像等の記録装置として種々の用途において急速に普及している。
【0003】
インクジェット方式で画像を形成して記録を行うための記録媒体としては、普通紙の他、支持体上にインク受容層を設けた記録媒体、さらに、表面に光沢層を設けた記録媒体などが用いられている。特に、近年、より高解像度で鮮明なカラー画像が得られること、および得られた画像が長期間鮮明であることが望まれているため、光沢層を有する記録媒体が、特に写真などの画像記録用に広く用いられている。
【0004】
このインクジェット方式用のインクとしては、染料インクと顔料インクがある。染料インクは、発色性の点では優れているものの、経時により紫外線やオゾン等により酸化され、画像が褪色して見栄えが悪くなるという問題がある。
【0005】
一方、顔料インクは光劣化も少なく、顔料粒子が水に溶解せず分散した状態で存在するので、耐候性や画像の保存安定性の点で優れているが、染料インクと比較すると、発色濃度および彩度の画像品質面において、やや劣るという欠点がある。よって、画像形成に使用されるインク量は染料インクに比べて多くなる傾向にあり、特にインク量の多い重色部間での境界滲み(ブリーディング)やベタ印字部での濃度ムラが発生しやすい傾向にある。
【0006】
そこで、顔料インクを使用した場合において画像品質の低下を抑制することができる顔料インク用インクジェット記録媒体として、以下の特許文献1〜3に開示されたものが知られている。
【0007】
特許文献1には、支持体上に、気相法アルミナと親水性樹脂を主成分とするインク受理層を1層以上有し、前記インク受理層上にカチオン性樹脂を主成分とするオーバー層を有する顔料インク用インクジェット記録媒体が開示されている。
【0008】
また、特許文献2には、インク受容層が、顔料インク内の溶媒を吸収することのできる溶媒吸収層の上に、顔料を担持することのできる顔料定着層を有する顔料インク用インクジェット記録媒体が開示されている。
【0009】
さらに、特許文献3には、基材と、該基材上に形成されたインク受理層と、該インク受理層上に形成された光沢層とを備え、色材として顔料を用いたインクにより、インクジェット方式で所望の記録を行う際に用いられる顔料インク用記録媒体において、前記光沢層は、その構成成分としてアルミナ又はシリカを含有してなり、前記アルミナ又は前記シリカは、その平均粒子径が、8〜100nmである顔料インク用インクジェット記録媒体が開示されている。
【特許文献1】特開2004−216614号公報
【特許文献2】特開2000−127613号公報
【特許文献3】特開2002−211113号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、顔料インクは染料インクに比べて分子量が非常に大きく、そのため、にじみの制御等の定着機構も低分子レベルの染料の反応とは大きく異なっており、顔料インクを使用して画質の向上を図るには、そのような点にも留意する必要がある。特許文献1ないし3に開示されたインクジェット記録媒体によれば、従来のものより画像の質は向上する。しかし、現在では、より高度な画像の質が求められており、しかも、光沢調の記録紙は表面が平滑であることから、顔料インクのインク粒子が表面に定着し難いので、耐擦性に劣り、印字ムラが発生しやすいという問題がある。この点で、特許文献1ないし3に開示されたものは、現在要求されているレベルの高い光沢感を伴った写真調の画像が得られる記録媒体ではないというのが実情である。
【0011】
本発明は従来の技術の有するこのような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、顔料インクで印字した場合の印字濃度が高く、印字ムラのない顔料インク用インクジェット記録用紙を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために本発明の顔料インク用インクジェット記録用紙は、支持体と、その支持体上に形成された少なくとも1層のインク受容層と、そのインク受容層上に形成された光沢層とを備え、顔料インクによりインクジェット方式で記録を行う顔料インク用インクジェット記録用紙において、インクジェット記録用紙を水に浸漬して0.5秒後の超音波透過強度は90%以上であり、同記録用紙を水に浸漬して1秒後の超音波透過強度は60%以上であることを特徴としている。
【0013】
本明細書においてインクジェット記録用紙の超音波透過強度とは、インクジェット記録用紙を透過した超音波の強度を透過前の超音波の強度で除した数値の百分率(%)をいう。
【0014】
紙が水を吸収すると、紙による超音波の透過性は影響を受ける。すなわち、図1に示すように、一方の側に超音波信号発信子1を備え、他方の側に超音波信号受信子2を備えた装置に水3を蓄え、インクジェット記録用紙4を水に浸漬して、装置の一方の側の超音波信号発信子1からインクジェット記録用紙4に向けて超音波信号5を発信すると、その記録用紙を透過した超音波信号5は装置の他方の側にある超音波信号受信子2で受信される。その超音波透過強度を測定することにより、紙の印刷適性を評価することができる。
【0015】
すなわち、超音波が音源から発信されると、異なった密度および弾性率を有する媒質の境界面にぶつかった時に反射や屈折が起こる。また、超音波は障害物のまわりで曲がって、いわゆる回折現象をもたらす。回折を引き起こす障害物が多数含まれている場合には、散乱と呼ばれる。
【0016】
このようにして、超音波が音源を出て媒質中を通過するとき、その強度は音源からの距離とともに減少する。これは吸収として知られている。反射、屈折および散乱などは、ある方向に伝搬する超音波の見かけの吸収を増加させるように働く。媒質そのものは、超音波のエネルギーの一部を熱に変える形で、その吸収を引き起こす。吸収があれば、超音波の強度Iは音波の経路に沿った距離rに対して次式の形をとる。
【0017】
I=I0-αr
0はr=0での初期強度、αは吸収係数である。 一般に、水中での吸収係数は空気中での吸収係数よりはるかに小さい。一方、固体での超音波の吸収は、例えば、熱の流れ、内部粘性、温度、磁気および転位など様々な要因に依存する。
【0018】
このような原理により、インクジェット記録用紙が水で濡れると、超音波透過強度が変化するのであり、記録用紙が水で濡れると、記録用紙と水の界面での超音波の反射の減少によって受信信号が増加する。しかしながら、記録用紙内に不均一に水が浸透すると、記録用紙内に局所的に取り残された気泡によって超音波の散乱が増加し、受信信号が減少する。やがて、記録用紙の細孔が水で完全に満たされると、受信信号は再び増加する。
【0019】
従って、インクジェット記録用紙を水に浸漬してからの超音波透過強度の経時の数値を知ると、その記録用紙の印刷適性を評価することができる。インクジェット記録用紙を水に浸漬して0.5秒後の超音波透過強度が高いということは、 記録用紙への水の浸透が速やかに起こったことを示す。一方、水の浸透速度に比較して用紙内の気泡と水との置換速度は緩やかであり、用紙内にトラップされた気泡によって散乱される超音波によって、超音波透過強度は減少するようになる。その減少代は、用紙内にトラップされた気泡の量が多いほど大きくなるので、インクジェット記録用紙を水に浸漬して1.0秒後の超音波透過強度が高いということは、水と気泡の置換が速やかに起こったことを示す。
【0020】
そこで、本発明に従って、インクジェット記録用紙を水に浸漬して0.5秒後と1秒後の超音波透過強度を、それぞれ90%以上と60%以上とすることにより、顔料インクで印字した場合に、インク中の水分は速やかにインク受容層に吸収される一方、顔料は表面付近に滞留するので、印字濃度が高くなり、印字ムラが発生しにくくなる。本発明の効果を発現するためには、超音波透過強度は高い方が好ましい。
【0021】
一般に、光沢感を付与するためには、粒子径の小さな顔料であるシリカなどのコロイド粒子とバインダーを用いることが好ましい。また、アルミナ水和物は正電荷を有しているため、インク材料の定着がよいので、発色性が高く、しかも、高光沢性の画像が得やすいという利点がある。
【0022】
しかしながら、シリカまたはアルミナの平均一次粒子径が25nm未満では、一次粒子間の空隙が著しく小さくなり、インクを吸収する能力が大幅に低下し、ブリードが発生しやすく、所望の鮮明な画像が得られない。
【0023】
一方、シリカまたはアルミナの平均一次粒子径が50nmより大きくなると、凝集した二次粒子径が大きくなりすぎ、インク受容層の透明度が低下し、所望の光沢度(例えば、JIS Z8741で規定される75度鏡面光沢度が40%以上)が達成されなくなり、光沢感が不足し、光沢を備えた写真調の印字物が得られない。
【0024】
そこで、本発明の効果を発現するためには、光沢層の顔料として、平均一次粒子径が25〜50nmのコロイダルシリカまたはアルミナを使用するのが好ましい。なお、ここでいう平均一次粒子径とは、粉体状態での一次粒子径をいう。
【0025】
後記する理由により、光沢層は、顔料100重量部に対してバインダー10〜20重量部を含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、顔料インクで印字した場合の印字濃度が高く、印字ムラのない顔料インク用インクジェット記録用紙を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の顔料インク用インクジェット記録用紙は、支持体と、その支持体上に形成された少なくとも1層のインク受容層と、そのインク受容層上に形成された光沢層とを備えており、具体的な実施形態について以下に説明する。
【0028】
本発明の顔料インク用インクジェット記録用紙の支持体の原料としては、例えば、広葉樹クラフトパルプ、天然パルプ、合成パルプ等が挙げられる。天然パルプとしては、通常に製紙用に用いられるパルプであれば、いずれも使用可能である。すなわち、広葉樹晒クラフトパルプ、針葉樹晒クラフトパルプ、広葉樹未晒クラフトパルプ、針葉樹未晒クラフトパルプ、広葉樹亜硫酸パルプ、針葉樹亜硫酸パルプ等が挙げられる。また、木材繊維を含む主原料として、化学的に処理されたパルプ、木材以外の繊維原料であるケナフ、麻、葦等非木材繊維を主原料として化学的に処理されたパルプやチップを機械的にパルプ化したグランドパルプ、木材またはチップに化学薬品を添加しながら機械的にパルプ化したケミグランドパルプ、及びチップを軟らかくなるまで蒸解した後、レファイナー等でパルプ化したセミケミカルパルプ等のバージンパルプ等が挙げられる。また、必要に応じて、合成パルプ、合成繊維、無機繊維等の各種繊維状物質を原料として用いることができる。また、新聞古紙、雑誌古紙、段ボール古紙等を原料として製造された古紙パルプを配合することもできる。
【0029】
本発明の顔料インク用インクジェット記録用紙の支持体は、上記原料を用いて抄紙して製造することができる。抄紙は、例えば、長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、オントップ抄紙機、ハイブリッド抄紙機または丸網抄紙機等の抄紙機を用いて抄紙することができる。抄紙する際には、パルプに、インクジェット記録用紙を製造する際に通常用いられる添加剤を添加することができる。このような添加剤としては、例えば、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール系高分子化合物、尿素樹脂、メラミン樹脂、澱粉等の紙力増強剤:硫酸バンド等の薬品定着剤:ポリアクリルアミド、アクリルアミド−アミノメチルアクリルアミドの共重合体の塩、カチオン化澱粉、ポリエチレンイミン、ポリエチレンオキサイド、アクリルアミド−アクリル酸ナトリウムの共重合物等の濾水性あるいは歩留まり向上剤:ロジンサイズ、アルキルケテンダイマー(AKD)、アルケニル無水コハク酸(ASA)等のサイズ剤:ポリアミド、ポリアミン、エピクロルヒドリン等の耐水化剤:消泡剤、タルク等の填料:染料:色顔料:抗菌剤:紫外線吸収剤:pH調整剤等を挙げることができる。
【0030】
本発明の顔料インク用インクジェット記録用紙のインク受容層は、インクを吸収して乾燥するための層であり、顔料を含んでいる。その顔料としては、非晶質シリカ、アルミナ、クレー、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、炭酸マグネシウム、過硫酸バリウム、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、コロイダルシリカ、アルミナとシリカの複合体、ゼオライト、珪藻土、水酸化マグネシウム、ハイドロキシアパタイト、マイカ、二酸化チタン、酸化亜鉛、チタン酸鉛等を挙げることができる。中でも、インク吸収性を向上させる観点から、非晶質シリカを主成分とするものが好ましい。顔料は、その平均粒径が0.01〜9.0μmのものが好ましく、0.01〜8.0μmのものがさらに好ましい。また、そのBET比表面積は100〜400m2/g であることが好ましく、100〜300m2/g であることがさらに好ましい。上記顔料は、単独で用いてもよく、または2種以上を混合して用いてもよい。
【0031】
光沢層に用いられる顔料としては、平均一次粒子径が25〜50nmのコロイダルシリカとアルミナが好ましく用いられる。コロイダルシリカまたはアルミナの平均一次粒子径が25nmより小さくなると、顔料インク吸収性が低下し、ブリードが発生しやすくなる。また、コロイダルシリカもしくはアルミナの平均一次粒子径が50nmより大きくなると、光沢度が低下するという不都合な点がある。
【0032】
さらに、平均一次粒子径が30〜40nmであることが、顔料インク吸収性を向上するために好ましい。
【0033】
なお、本発明の効果を損なわない範囲で、光沢層の顔料として、コロイダルシリカとアルミナ以外の物質を混合することも可能である。具体的な例としては、水酸化アルミニウム、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、二酸化チタン、クレー、酸化亜鉛等を挙げることができる。
【0034】
インク受容層および光沢層にはバインダーが含有されていることが好ましく、このようなバインダーとしては、例えば、ポリビニルアルコール、酢酸ビニル、スチレン−ブタジエン共重合体、ポリビニルアセタール、酸化澱粉、エーテル化澱粉、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カゼイン、ゼラチン、大豆蛋白、ポリエチレンイミド系樹脂、ポリビニルヒドリン系樹脂、ポリアクリル酸またはその共重合体、無水マレイン酸共重合体、アクリルアミド系樹脂、アクリル酸エステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリビニルブチラール系樹脂、アルキド樹脂、エポキシ系樹脂、エピクロルヒドリン系樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステルの重合体または共重合体等のアクリル系重合体ラテックス類、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のビニル系重合体ラテックス類の樹脂類等を挙げることができる。上記バインダーは単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0035】
本発明の顔料インク用インクジェット記録用紙の最表層は、光沢層である。光沢層を形成する方法としては、インク受容層上に塗工した塗工層を加熱された金属ロールに圧着して乾燥することにより、強光沢を付与することができる。具体的な光沢形成手段としては、その塗工層が湿潤状態にある間に加熱された金属ロールに圧着して乾燥することにより仕上げる方法(ウエットキャスト方式)、またはその塗工層を一旦乾燥させた後、再湿潤し、加熱された金属ロールに圧着して乾燥することにより仕上げる方法(リウエットキャスト方式)、または、加熱された金属ロールに光沢層形成用塗工液を直接塗工して、その塗工層がある程度湿潤状態にある間にインク受容層に圧着して乾燥することにより仕上げる方法(プレキャスト方式)を採用することもできる。
【0036】
インク受容層および光沢層を形成するために用いられる塗工液は、上記顔料およびバインダーを含有している。顔料100重量部に対するバインダーの割合は、10〜20重量部であることが好ましい。バインダーが10重量部未満であると、塗工層の強度が不足する場合がある。一方、バインダーが20重量部を超えると、インク吸収性が損なわれ、印字ムラが発生する場合がある。
【0037】
上記塗工液には、必要に応じて種々の助剤を添加することができる。助剤としては、例えば、分散剤、保水剤、増粘剤、消泡剤、防腐剤、染料、耐水化剤、蛍光染料、保存剤、紫外線吸収剤、離型剤、潤滑剤、架橋剤および有機カチオン剤等を挙げることができる。
【0038】
塗工液の塗布方法としては、例えば、エアーナイフ、ロールコーター、バーコーター、コンマコーター、ブレードコーター等の公知の塗工機を用いて塗工することができる。塗工液の塗布量は、固形分換算で、好ましくは5〜40g/m2であり、さらに好ましくは10〜30g/m2である。塗工液の塗布量が5g/m2未満であると、高光沢を得られない場合があり、一方、40g/m2を超えると、塗工層強度が不足したり、キャスト方式で光沢処理する際、金属ロール上での乾燥性が悪化し、最表層にピンホールが発生することがある。
【実施例】
【0039】
以下に本発明の実施例を説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものでなく、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲において適宜変更と修正が可能である。
【0040】
1.支持体の製造
広葉樹晒クラフトパルプ100重量部に対して、硫酸バンド30重量部、サイズ剤10重量部およびタルク10重量部を配合し、長網抄紙機にて抄造し、サイズプレスにて紙面に澱粉を塗布し、米坪160g/m2 の支持体を得た。
【0041】
2.インク受容層形成用塗工液の調製
(1)成分の配合(重量部:固形分換算)
シリカ((株)トクヤマ製の商品名シリカファインシールX45) 100部
ポリビニルアルコール(クラレ(株)製の商品名PVA117、重合度1700)
30部
カチオン化樹脂(住友化学(株)製の商品名SR1001) 10部(2)塗工液の調製
上記シリカをホモジナイザーにて固形分が18重量%となるように分散後、残りの薬剤を順次混合し、混合液全体の濃度が17重量%となるように蒸留水で希釈し、インク受容層形成用塗工液を調製した。
【0042】
3.光沢層形成用塗工液の調製
(1)成分の配合(重量部:固形分換算)
《実施例1》
アルミナ(サソール社製の商品名ディスペラルHP30、平均一次粒子径=30nm)
100部ポリエチレングリコール(東邦化学工業(株)製の商品名PEG200、分子量=200) 10部ポリビニルアルコール(クラレ(株)製の商品名PVA117、重合度1700) 20部
《実施例2》
アルミナ(サソール社製の商品名ディスペラルHP30、平均一次粒子径=30nm)
100部ポリエチレングリコール(東邦化学工業(株)製の商品名PEG200、分子量=200) 10部ポリビニルアルコール(クラレ(株)製の商品名PVA117、重合度1700) 15部
《実施例3》
アルミナ(サソール社製の商品名ディスペラルHP30、平均一次粒子径=30nm)
100部ポリエチレングリコール(東邦化学工業(株)製の商品名PEG200、分子量=200) 10部ポリビニルアルコール(クラレ(株)製の商品名PVA117、重合度1700) 10部
《比較例1》
アルミナ(サソール社製の商品名ディスペラルHP14、平均一次粒子径=14nm)
100部ポリエチレングリコール(東邦化学工業(株)製の商品名PEG200、分子量=200) 10部ポリビニルアルコール(クラレ(株)製の商品名PVA117、重合度1700) 10部
《比較例2》
アルミナ(サソール社製の商品名ディスペラルHP30、平均一次粒子径=30nm)
100部ポリエチレングリコール(東邦化学工業(株)製の商品名PEG200、分子量=200) 10部ポリビニルアルコール(クラレ(株)製の商品名PVA117、重合度1700) 25部
(2)塗工液の調製
各実施例および各比較例の重量配合比率において、それぞれラボスターラーにて上記薬剤を混合し、混合液全体の濃度が20重量%となるように蒸留水で希釈し、光沢層形成用塗工液を調製した。
【0043】
4.顔料インク用インクジェット記録用紙サンプルの製造
上記インク受容層形成用塗工液を、ワイヤーバーを用いて上記のようにして得られた支持体上に絶乾塗工量10g/m2 で塗工し、スキャッフドライヤーにて乾燥し、インク受 容層を得た。次ぎに、上記光沢層形成用塗工液を、ワイヤーバーを用いてインク受容層上に絶乾塗工量10g/m2 で塗工し、スキャッフドライヤーにて乾燥し、次いで、その乾 燥面を水で再湿潤し、湿潤状態にある間に、クロムメッキを施した100℃に加熱したキャストドラムに圧着して乾燥させて高光沢の鏡面仕上げを行い、実施例1〜3および比較例1〜2のインクジェット記録用紙サンプルを得た。
【0044】
5.特性の評価
上記のようにして得たインクジェット記録用紙サンプルの「超音波透過強度」と「印字濃度」と「印字ムラ」に関する評価を下記の表1に示す。その評価は、下記方法により行った。
【0045】
評価に用いたプリンターはセイコーエプソン社製の顔料インクプリンターPX−7000、顔料インクはPX−7000純正インク、評価時の温度は23℃、湿度は50%である。
【0046】
《超音波透過強度》 図1に示す測定原理で超音波透過強度を測定することができる、emtec Electronic GmbH社(ドイツ国)製の動的吸液性測定装置PDA.C02を 使用し、インクジェット記録用紙サンプル4を水3に浸漬し、超音波信号発信子1から発信されてその記録用紙サンプル4を透過した超音波5を超音波信号受信子2で受信して図示しない変換器により透過超音波の強度I2(W/cm2)を求め、超音波信号発信子1から発信された超音波の強度I1(W/cm2)を同上変換器により求め、その変換器で求めた超音波の強度データをパソコンに転送して超音波透過強度((I2/I1)×100(%))を算出した。
【0047】
《印字濃度》 ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各色を上記プリンターにより各インクジェット記録用紙サンプルにベタ印字し(大きさ3.0cm×3.0cm)、印字30分経過後に、マクベス社製の反射濃度計(商品名=RD−19I)により各色の濃度を測定し、得られた測定値の合計により評価した。実用上、印字濃度合計は4.5以上であることが好ましい。
【0048】
《印字ムラ》 ブラック、シアン、マゼンタ、イエローの各色を上記のようにしてベタ印字したインクジェット記録用紙サンプルについて、印字30分経過後の印字部を目視にて観察し、以下の基準にて評価した。
【0049】
◎=印字部にムラは全く見られなかった。
【0050】
○=印字部にムラは僅かにあったが、気にならない程度であった。実用上、問題のないレベルである。
【0051】
×=印字部のムラが大きかった。実用は不可である。
【0052】
【表1】

【0053】
表1に明らかなように、本発明の実施例1〜3に係るものは、超音波透過強度が高く、印字濃度が良好で、印字ムラに関する問題もない。
【0054】
しかし、比較例1は、光沢層形成顔料であるアルミナの粒径が小さいので、超音波透過強度および印字濃度が低く、印字ムラが見られた。
【0055】
また、比較例2は、光沢層のバインダー配合量が多いので、超音波透過強度が低く、印字ムラが見られた。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】超音波透過強度の測定原理を説明するための図である。
【符号の説明】
【0057】
1 超音波信号発信子
2 超音波信号受信子
3 水
4 インクジェット記録用紙
5 超音波信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体と、その支持体上に形成された少なくとも1層のインク受容層と、そのインク受容層上に形成された光沢層とを備え、顔料インクによりインクジェット方式で記録を行う顔料インク用インクジェット記録用紙において、インクジェット記録用紙を水に浸漬して0.5秒後の超音波透過強度は90%以上であり、同記録用紙を水に浸漬して1秒後の超音波透過強度は60%以上であることを特徴とする顔料インク用インクジェット記録用紙。
【請求項2】
光沢層の顔料構成成分としてアルミナまたはシリカを有し、アルミナまたはシリカの平均一次粒子径が25〜50nmであることを特徴とする請求項1記載の顔料インク用インクジェット記録用紙。
【請求項3】
光沢層は、顔料100重量部に対してバインダー10〜20重量部を含有することを特徴とする請求項1または2記載の顔料インク用インクジェット記録用紙。

【図1】
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