説明

顔料ナノ粒子の製造方法、及び、インクジェット用インクの製造方法

【課題】再分散性の良い顔料ナノ粒子を安定的に且つ大量生産が行える製造方法と、この製造方法によって得られる顔料ナノ粒子を含有するインクジェット用インクの提供を図る。
【解決手段】強制超薄膜回転式反応法を用い、接近・離反可能な相対的に回転する2つの処理用面1、2の間に1mm以下の微小間隔を維持し、この微小間隔に維持された2つの処理用面1、2間を被処理流動体の流路とすることによって、被処理流動体の強制薄膜を形成し、この強制薄膜中において顔料物質の析出を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は顔料ナノ粒子の製造方法及びその製造方法にて得られた顔料ナノ粒子を用いたインクジェット用インクの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
【特許文献1】特開平9−151342号公報
【特許文献2】特開2006−124556号公報
【特許文献3】特開2008−1796号公報
【特許文献4】特開2005−238342号公報
【特許文献5】特開2003−26972号公報
【特許文献6】特開2006−104448号公報
【特許文献7】特開2006−193652号公報
【特許文献8】特開2006−342304号公報
【特許文献9】特開平11−35399号公報
【特許文献10】特開2004−91560号公報
【特許文献11】特開2004−49957号公報
【特許文献12】特開2006−276271号公報
【特許文献13】特開2006−335970号公報
【非特許文献1】ナノテクノロジーハンドブック編集委員会編、「ナノテクノロジーハンドブック」、第1版、株式会社オーム社、平成15年5月、p.13
【0003】
ナノテクノロジーが新たな産業革命を引き起こす科学的技術として大きな注目を浴びている。従来の物質を微粒子化するだけで、その物質に新機能を発現させることが出来るため、産業界全般に渡ってナノ粒子が重要テーマとなり、ナノテクノロジーを前進させる上で、微粒子、特にナノ粒子との関係は当然ながら切り離せるものではない。
【0004】
顔料は、鮮明な色調と高い着色性から、塗料、印刷インク、トナー、インクジェットインク、カラーフィルター等の非常に様々な分野で利用されている。これらの用途でも特に実用上高機能の材料が必要とされている分野として、インクジェット用顔料及びカラーフィルター用顔料が重要視されてきている。
【0005】
また、従来の物質を微粒子化することで、その物質に新たな機能を発現させることが出来るため、産業界全般に渡って物質のナノ粒子化が重要テーマとなっており、ナノテクノロジーを前進させる上で、ナノ粒子化技術への関心が非常に高まっている(非特許文献1)。
【0006】
ナノ粒子化する事による新機能としては様々が知られているが、特に顔料をナノ粒子化した顔料ナノ粒子は染料と同等の彩色性や発色性を得られる事が知られている。
【0007】
インクジェット用インクの色材としては、長期保存安定性、インクジェットノズルからの吐出安定性、優れた彩度と透明性の面から、染料が主として使用されてきた。しかしながら、染料には耐光性及び耐水性の面で問題があった。
【0008】
顔料を色材として用いた顔料分散インクは、その耐光性や耐水性が染料インクに比べて大幅に向上することが知られており、バブルジェット(登録商標)方式、サーマルジェット方式やピエゾ方式等のインクジェットプリンター用のインクや、水性ボールペン、万年筆、水性サインペン、水性マーカー等の筆記用具を製造するための材料として有用であるが、紙表面の間隙に染み込むことが可能なナノサイズに均一に微細化することが難しく、紙への密着性や演色性に劣るという問題点があった。またOHPフィルムに代表されるような透過原稿への記録においても、これまでは顔料系の記録液を用いると、顔料粒子による散乱が生じるため透明性が低くなり、発色もくすんでしまう問題がある。これらの色材としての顔料粒子には、その粒子径が性能に大きな影響を及ぼすことが分かっており、顔料ナノ粒子を単分散かつ安定に製造する技術が望まれていた(特許文献1)。また、カラーフィルター製造においてもインクジェット方式が採用される場合もある。
【0009】
液晶モニター、有機ELモニター、デジタルカメラ等の高画素化、高コントラスト化に伴い、これらに用いられるカラーフィルターには薄層化、高コントラスト化、高透過率化が望まれている。カラーフィルターには顔料が用いられているが、フィルターの厚みや、コントラスト、透過率には用いられている顔料の粒子径が大きく影響しており、顔料ナノ粒子を単分散かつ安定に製造する技術が望まれていた(特許文献3)。
【0010】
これらに用いられる顔料粒子は、顔料のバルク原料をボールミルやビーズミルなどの分散機を用いて機械的に微粉砕する工程により得ることが多いが、一般的には、微粉砕工程後の顔料粒子の平均粒子径は、100nm(0.1μm)程度で、さらに粒度分布が比較的広い(80〜180nm程度)という問題点があった(特許文献2)。
【0011】
さらに、粉砕法で作製した微粒子は粉砕の結果、その破断面に活性部位を生じるため、粉砕した微粒子が再凝集し、粗大な粒子を生成したり、分散系全体の粘度増加などを引き起こす場合があり、粉砕法そのものが持つ問題も多い。
【0012】
また、特許文献4に示すレーザーアブレーション法のように固体粒子にフェムト秒レーザーを照射する方法があるが、レーザーアブレーション法については非常に強いレーザー光を利用するため分子レベルでの分解の可能性が否定できず、さらに生産量が現状では0.1mg/h程度と、産業的に実用レベルには達していない。
【0013】
粉砕法以外の製造方法として、成長法を用いる場合がある。有機顔料を溶解した溶液を水性媒体と徐々に接触させ顔料を析出させる方法(共沈法或いは再沈法と呼ばれる)において、どちらかの溶液に分散剤を共存させることにより安定な微粒子を作製する方法が知られている(特許文献5)。この方法では、サブミクロンから数十nm程度までの粒子が比較的容易に製造できるが、スケールアップにより粒子サイズにバラツキを生じたり、球形以外の不定形の粒子が生成しやすいため、インクジェット用インク等に用いる色材としては適切ではなかった。
【0014】
また、マイクロ化学プロセスとして知られている、マイクロリアクターやマイクロミキサーを、前記の共沈法等の顔料析出反応や、顔料の合成や結晶化などの顔料分散物の製造工程として組み合わせることにより、顔料ナノ粒子を生成する方法が知られている(特許文献6、7、8、12、13)。これらの方法で析出や結晶化を伴う反応の場合、生成物や反応によって生ずる泡や副生成物が流路に詰まることによってマイクロ流路の閉鎖が起こる可能性が高いことや、基本的には分子の拡散だけで反応を進行させるため、全ての反応に対して適応可能ではなかった。また、マイクロ化学プロセスでは、平行して反応器を並べるナンバリングアップというスケールアップ法を用いるが、一つの反応器の製造能力が小さく、大きなスケールアップが現実的でないことや、また各々の反応器の性能を揃えることが難しく、均一な生成物を得られない等の問題があった。さらに、粘度の高い反応液や、粘度上昇を伴うような反応では微小な流路を流通させるためには非常に高い圧力が必要であり、使用できるポンプが限られることや、高圧にさらされるため装置からの漏れが解決出来ないという問題点があった。
【0015】
他の成長法としては、特許文献9のような装置を用いた高真空中でのプラズマを用いた気相法を利用する場合がある。
【0016】
しかし、気相法については一度に得られるナノ粒子の生成量が少なく、原料を蒸発させるためにも電子ビーム、プラズマ、レーザー、誘導加熱などの装置が必要であり、生産コスト上の問題もあるので大量生産にあまり適していない。しかもこれらの気相法により得られるナノ粒子は純粋物質の微粒子であるので凝集しやすく、また粒子の大きさがばらつくという問題がある。
【0017】
一方、最近報告されている方法として、顔料を超臨界・亜臨界状態の流体に溶解した後、急速冷却を行い結晶化させる方法が知られている(特許文献10)。この方法では非常に高い温度、高い圧力下で反応を行うものであり、その為には極めて高い温度、圧力を実現できる装置が必要であることから安全性やコストの問題からも実用上不向きであり、特に大量生産には不向きであって、またそのような条件下では顔料のような有機物は分解しやすいという問題点もあった。
【0018】
さらに、上記に挙げたような方法を実現するための装置全般の課題として、対象物が顔料の為、装置の洗浄が必須であるにもかかわらず、装置の洗浄性が悪いという問題点がある。また異物の混入や、菌対策も考慮に入れると、実際に顔料ナノ粒子を得るための装置、製造方法としては、実用レベルには達していない。
【0019】
粉砕して製造された顔料ナノ粒子に比較して、粉砕処理を施していない顔料ナノ粒子は、顔料表面に破砕による荒れた面を有していないため、このような顔料ナノ粒子は凝集の速度が遅く、その結果粒子が沈降しにくく分散安定性に優れており、保存安定性も高い。しかしながら、顔料表面に荒れた面を有していない顔料ナノ粒子を安定的、且つ工業的に大量生産が行える製造方法が存在しないため、その製造方法の確立が望まれている。
【0020】
近年、化学反応を効率的に行えることから、前述にあるマイクロリアクターやマイクロミキサーと呼ばれる、微小な流路からなる反応路を用いて化学反応を行う技術「マイクロ化学プロセス技術」が非常に注目されている。一般的にマイクロ加工技術などにより固体基板上に幅数μm〜数百μmの流路を形成し、このマイクロ流路内にて起こる化学・物理化学反応を利用した化学分析、物質製造法が「マイクロ化学プロセス技術」である。しかしながら、これらのマイクロリアクターやマイクロミキサーを実際の製造技術として実現しようとすると、幅数μmの流路に反応液や反応物を流通させるために非常に高圧のポンプが必要であったり、生成物によりマイクロ流路の閉塞が起こり、反応器が使用不能になったりする等の問題点が多く、現実的には数百μmから数mmの流路幅のリアクターが必要となり、「マイクロ化学プロセス技術」と呼ぶのは相応しくない技術が跋扈しているのが現状であると言わざるを得ない。
【発明の開示】
【0021】
本願は、従来の「マイクロ化学プロセス技術」と呼ばれていた技術の課題や問題点を解決した、全く新しいコンセプトのマイクロ化学プロセス技術に基づき、より詳しくは、本願出願人によって出願された特許文献11に示す装置の原理を用いて行う、微小流路の攪拌・瞬間的な均一混合を用いた反応法(強制超薄膜回転式反応法)を提供することを目的とする。この装置はメカニカルシールの原理を利用し、接近・離反可能な相対的に変位する処理用面の間に被処理流動体の薄膜流体を形成して、回転する処理用面の間に被処理流動体を供給し、当該流体の供給圧と回転する処理用面の間にかかる圧力との圧力バランスによって処理用面間の距離を微小間隔とする事を実現する。上記原理における方法より以前の方法では、その処理用面間の距離を機械的に調節するなどの方法であり、回転により発生する熱とそれにより生じる変形、又は芯ぶれなどを吸収できず、微小な処理用面間の距離、少なくともその距離を10μm以下にするのは実質的に不可能であった。つまり、上記特許文献11の装置の原理を利用して、微小流路中において瞬間的な化学的・物理化学的反応を実現する事を可能とし、本願発明者らは鋭意研究の成果により、驚くべきことに0.1〜10μmの微小流路中での瞬間的な攪拌・混合・反応を可能とした。そしてこの発明によって本質的に「マイクロ化学プロセス技術」と呼べる、理想的な反応場及び反応条件を生み出した。さらに本願は、上記の製造方法を用いて再分散性の良い顔料ナノ粒子を安定的に且つ大量生産が行える製造方法を提供することを目的とする。より詳しくは、接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面の間にできる薄膜流体中で反応を行う方法を用いて、顔料ナノ粒子を製造することを目的とする。
【0022】
本願の請求項1に係る発明は、
接近・離反可能な相対的に回転する2つの処理用面間に1mm以下の微小間隔を維持し、この微小間隔に維持された2つの処理用面間を被処理流動体の流路とすることによって、被処理流動体の強制薄膜を形成し、この強制薄膜中において顔料物質の析出を行うことを特徴とする顔料ナノ粒子の製造方法を提供する。
本願の請求項2に係る発明は、
接近・離反可能な相対的に変位する処理用面の間に被処理流動体を供給し、当該流動体の供給圧と回転する処理用面の間にかかる圧力とを含む接近方向への力と離反方向への力との圧のバランスによって処理用面間の距離を微小間隔に維持し、この微小間隔に維持された2つの処理用面間を被処理流動体の流路とすることによって、被処理流動体の強制薄膜を形成し、この強制薄膜中において顔料物質の析出を行うことを特徴とする顔料ナノ粒子の製造方法を提供する。
本願の請求項3に係る発明は、
接近・離反可能、且つ相対的に変位する第1処理用面と第2処理用面との間に被処理流動体を供給し、
当該流動体の供給圧と回転する上記両処理用面の間にかかる圧力とを含む接近方向への力と離反方向への力との圧のバランスによって上記両処理用面間の距離を微小間隔に維持し、
この微小間隔に維持された2つの処理用面間を上記被処理流動体の流路とすることによって、上記被処理流動体が薄膜流体を形成し、
上記の薄膜流体中において顔料物質の析出を行う顔料ナノ粒子の製造方法において、
上記第1処理用面と上記第2処理用面のうちの少なくとも何れか一方の処理用面には、その上流から下流に向けて伸びる凹部が形成され、この凹部は上記被処理流動体のうち一種の被処理流動体を上記第1処理用面と第2処理用面との間に導くものであり、
上記一種の被処理流動体とは異なる他の一種の被処理流動体が通される独立した別途の導入路を備え、この導入路に通じる少なくとも一つの開口部が上記第1処理用面と第2処理用面の少なくとも何れか一方に設けられ、この導入路から上記の他の一種の被処理流動体を、上記両処理用面間に導入し、
上記一種の被処理流動体と他の一種の被処理流動体とを、上記薄膜流体中で混合するものであり、
上記凹部よりも下流側に、上記開口部が設置されたものであることを特徴とする、顔料ナノ粒子の製造方法を提供する。
本願の請求項4に係るはつめいは、
接近・離反可能、且つ相対的に変位する第1処理用面と第2処理用面との間に被処理流動体を供給し、
当該流動体の供給圧と回転する上記両処理用面の間にかかる圧力とを含む接近方向への力と離反方向への力との圧のバランスによって上記両処理用面間の距離を微小間隔に維持し、
この微小間隔に維持された2つの処理用面間を上記被処理流動体の流路とすることによって、上記被処理流動体が薄膜流体を形成し、
上記の薄膜流体中において顔料物質の析出を行う顔料ナノ粒子の製造方法において、
上記第1処理用面と上記第2処理用面のうちの少なくとも何れか一方の処理用面には、その上流から下流に向けて伸びる凹部が形成され、この凹部は上記被処理流動体のうち一種の被処理流動体を上記第1処理用面と第2処理用面との間に導くものであり、
上記一種の被処理流動体とは異なる他の一種の被処理流動体が通される独立した別途の導入路を備え、この導入路に通じる少なくとも一つの開口部が上記第1処理用面と第2処理用面の少なくとも何れか一方に設けられ、この導入路から上記の他の一種の被処理流動体を、上記両処理用面間に導入し、
上記一種の被処理流動体と他の一種の被処理流動体とを、上記薄膜流体中で混合するものであり、
上記開口部からの上記の他の一種の被処理流動体の導入方向が第2処理用面2に対して傾斜していることを特徴とする、顔料ナノ粒子の製造方法を提供する。
本願の請求項5に係る発明は、
接近・離反可能、且つ相対的に変位する第1処理用面と第2処理用面との間に被処理流動体を供給し、
当該流動体の供給圧と回転する上記両処理用面の間にかかる圧力とを含む接近方向への力と離反方向への力との圧のバランスによって上記両処理用面間の距離を微小間隔に維持し、
この微小間隔に維持された2つの処理用面間を上記被処理流動体の流路とすることによって、上記被処理流動体が薄膜流体を形成し、
上記の薄膜流体中において顔料物質の析出を行う顔料ナノ粒子の製造方法において、
上記第1処理用面と上記第2処理用面のうちの少なくとも何れか一方の処理用面には、その上流から下流に向けて伸びる凹部が形成され、この凹部は上記被処理流動体のうち一種の被処理流動体を上記第1処理用面と第2処理用面との間に導くものであり、
上記一種の被処理流動体とは異なる他の一種の被処理流動体が通される独立した別途の導入路を備え、この導入路に通じる少なくとも一つの開口部が上記第1処理用面と第2処理用面の少なくとも何れか一方に設けられ、この導入路から上記の他の一種の被処理流動体を、上記両処理用面間に導入し、
上記一種の被処理流動体と他の一種の被処理流動体とを、上記薄膜流体中で混合するものであり、
上記開口部からの上記の他の一種の被処理流動体の導入方向が、上記第2処理用面2に沿う平面において、方向性を有するものであることを特徴とする、顔料ナノ粒子の製造方法を提供する。
本願の請求項6に係る発明は、
上記開口部からの上記の他の一種の被処理流動体の導入方向が、上記第2処理用面の半径方向の成分にあっては中心から遠ざかる外方向であって、且つ、回転する処理用面間における流体の回転方向に対しての成分にあっては順方向であることを特徴とする、請求項5記載の顔料ナノ粒子の製造方法を提供する。
【0023】
また、本願発明は、上記反応が、顔料物質を硫酸、硝酸、塩酸などの強酸に溶解し調整された顔料酸性溶液を、水を含む溶液と混合して顔料粒子を得るアシッドペースティング法であることを特徴とするものとして実施できる。
【0024】
また、本願発明は、上記反応が、顔料物質を有機溶媒に溶解し調整された顔料溶液を、前記顔料に対しては貧溶媒であり、かつ前記溶液の調整に使用された有機溶媒には相溶性である貧溶媒中に投入して顔料粒子を析出させる再沈法であることを特徴とするものとして実施できる。
【0025】
また、本願発明は、上記反応が、酸性またはアルカリ性であるpH調整溶液、或いは、前記pH調整溶液と有機溶媒との混合溶液のいずれかに、少なくとも1種類の顔料物質を溶解した顔料溶液と、前記顔料溶液に含まれる顔料に溶解性を示さない、若しくは、前記顔料溶液に含まれる溶媒よりも前記顔料に対する溶解性が小さい、前記顔料溶液のpHを変化させる顔料析出用溶液とを混合して顔料粒子を析出させるpH調整法であることを特徴とするものとして実施できる。
【0026】
また、本願発明は、上記反応物を含む被処理流動体の少なくとも1つがブロック共重合体や高分子ポリマー、界面活性剤などの分散剤を含むことを特徴とするものとして実施できる。
【0027】
また、本願発明は、上記処理用面間を冷却又は加温することを特徴とするものとして実施できる。
【0028】
また、本願発明は、上記製造方法を減圧・真空状態を確保できる容器内で行い、処理後流体が吐出される2次側を減圧、真空状態とすることで、反応中に発生するガス並びに処理用部より吐出されたガスの脱気、もしくは脱溶剤を行うことを特徴とするものとして実施できる。
【0029】
また、本願発明は、得られる顔料ナノ粒子の粒度分布における体積平均粒子径が1nm〜200nmであることを特徴とするものとして実施できる。
【0030】
強制超薄膜回転式反応法を用いて、上記接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面の間にできる薄膜流体中で上記の各流体を合流させ、前記薄膜流体中で顔料ナノ粒子を析出させる事で以下の効果が得られる。
【0031】
上記製造方法においては、処理用面間微小流路の攪拌条件を自由に変化させる事が可能であるため、微小反応流路である処理用面間の流体を瞬間的に均一に攪拌・混合し、反応を促進する事ができる。加えてその微小流路中の流体のレイノルズ数を自由に変化させる事が可能であるため、粒子径、粒子形状、結晶型など、目的に応じて単分散で再分散性の良い顔料ナノ粒子が作製出来る。しかもその自己排出性により、析出を伴う反応の場合であっても生成物による流路の閉塞も無く、反応液を流動させるのに大きな圧力を必要としない。ゆえに、安定的に顔料ナノ粒子を作製可能である。また安全性に優れ、ビーズミル法に代表されるような、製造装置、方法に由来する不純物の混入も無く、その洗浄性も良いという優れた特徴を持っている。さらに目的の生産量に応じて容易に反応器を大きくすることでスケールアップ可能であるため、生産性も高い顔料ナノ粒子の製造方法を提供可能とした。
【0032】
さらに、運転条件によっては、反応時に機械的な磨砕力、せん断応力を必要とする場合にも対応できる。
【0033】
また、強制超薄膜回転式反応法はその微小流路である、相対的に変位する、相対する処理用面において、処理用面間の距離を厳密に固定し、所望の反応状態を与える事ができ、その固定された微小な流路幅である微小反応流路において反応を行えるため、微小流路内での分子拡散による迅速な混合・反応に加え、化学反応におけるパラメータである、濃度勾配の面からも理想的な反応が実施可能であり、酸−アルカリによる中和反応や顔料の再結晶に伴う発熱が均一化され、顔料の結晶型や粒子径を一層精度よく且つ効率的に制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】(A)は本願発明の実施に用いる装置の概念を示す略縦断面図であり、(B)は上記装置の他の実施の形態の概念を示す略縦断面図であり、(C)は上記装置のまた他の実施の形態の概念を示す略縦断面図であり、(D)は上記装置の更に他の実施の形態の概念を示す略縦断面図である。
【図2】(A)〜(D)は、夫々、図1に示す装置の更に他の実施の形態の概念を示す略縦断面図である。
【図3】(A)は図2(C)に示す装置の要部略底面図であり、(B)は上記装置の他の実施の形態の要部略底面図であり、(C)はまた他の実施の形態の要部略底面図であり、(D)は上記装置の更に他の実施の形態の概念を示す略底面図であり、(E)は上記装置のまた更に他の実施の形態の概念を示す略底面図であり、(F)は上記装置の更にまた他の実施の形態の概念を示す略底面図である。
【図4】(A)〜(D)は、夫々、図1に示す装置の更に他の実施の形態の概念を示す略縦断面図である。
【図5】(A)〜(D)は、夫々、図1に示す装置の更に他の実施の形態の概念を示す略縦断面図である。
【図6】(A)〜(D)は、夫々、図1に示す装置の更に他の実施の形態の概念を示す略縦断面図である。
【図7】(A)〜(D)は、夫々、図1に示す装置の更に他の実施の形態の概念を示す略縦断面図である。
【図8】(A)〜(D)は、夫々、図1に示す装置の更に他の実施の形態の概念を示す略縦断面図である。
【図9】(A)〜(C)は、夫々、図1に示す装置の更に他の実施の形態の概念を示す略縦断面図である。
【図10】(A)〜(D)は、夫々、図1に示す装置の更に他の実施の形態の概念を示す略縦断面図である。
【図11】(A)及び(B)は、夫々、図1に示す装置の更に他の実施の形態の概念を示す略縦断面図であり、(C)は図1(A)に示す装置の要部略底面図である。
【図12】(A)は図1(A)に示す装置の受圧面について、他の実施の形態を示す要部略縦断面図であり、(B)は当該装置の更に他の実施の形態の要部略縦断面図である。
【図13】図12(A)に示す装置の接面圧付与機構について、他の実施の形態の要部略縦断面である。
【図14】図12(A)に示す装置に、温度調整用ジャケットを設けた、他の実施の形態の要部略縦断面図である。
【図15】図12(A)に示す装置の接面圧付与機構について、更に他の実施の形態の要部略縦断面図である。
【図16】(A)は図12(A)に示す装置の更に他の実施の形態の要部略横断面であり、(B)(C)(E)〜(G)は当該装置のまた他の実施の形態の要部略横断面図であり、(D)は当該装置のまた他の実施の形態の一部切欠要部略縦断面図である。
【図17】図12(A)に示す装置の更に他の実施の形態の要部略縦断面図である。
【図18】(A)は本願発明の実施に用いる装置の更に他の実施の形態の概念を示す略縦断面図であり、(B)は当該装置の一部切欠要部説明図である。
【図19】(A)は図12に示す上記装置の第1処理用部の平面図であり、(B)はその要部縦断面図である。
【図20】(A)は図12に示す装置の第1及び第2処理用部の要部縦断面図であり、(B)は微小間隔が開けられた上記第1及び第2処理用部の要部縦断面図である。
【図21】(A)は上記第1処理用部の他の実施の形態の平面図であり、(B)はその要部略縦断面図である。
【図22】(A)は上記第1処理用部の、更に他の実施の形態の平面図であり、(B)はその要部略縦断面図である。
【図23】(A)は第1処理用部のまた他の実施の形態の平面図であり、(B)は第1処理用部の更にまた他の実施の形態の平面図である。
【図24】(A)(B)(C)は、夫々、処理後の被処理物の分離方法について、上記以外の実施の形態を示す説明図である。
【図25】本願発明の装置の概要を説明するための縦断面の概略図である。
【図26】(A)は図25に示す装置の第1処理用面の略平面図であり、(B)は図25に示す装置の第1処理用面の要部拡大図である。
【図27】(A)は第2導入路の断面図であり、(B)は第2導入路を説明するための処理用面の要部拡大図である。
【図28】(A)及び(B)は、夫々、処理用部に設けられた傾斜面を説明するための要部拡大断面図である。
【図29】処理用部に設けられた受圧面を説明するための図であり、(A)は第2処理用部の底面図、(B)は要部拡大断面図である。
【図30】顔料ナノ粒子の電子顕微鏡写真である。
【図31】顔料ナノ粒子の電子顕微鏡写真である。
【図32】顔料ナノ粒子の電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明は、本願出願人による特開2004-49957号公報(特許文献11)に記載のものと同原理である装置を用い、強制超薄膜回転式反応法にて析出、沈殿または結晶化を行う事によって得られる顔料ナノ粒子の製造を行う事で、例えば図30に示すように、粒度分布における平均粒子径が200nm以下、好ましくは1nm〜100nm、より好ましくは5nm〜50nmであり、再分散性の良い顔料ナノ粒子を得る事が出来る。
【0036】
以下、この方法の実施に適した流体処理装置について説明する。
図1(A)へ示す通り、この装置は、対向する第1及び第2の、2つの処理用部10,20を備え、少なくとも一方の処理用部が回転する。両処理用部10,20の対向する面が、夫々処理用面1,2として、両処理用面間にて、被処理流動体の処理を行う。第1処理用部10は第1処理用面1を備え、第2処理用部20は第2処理用面2を備える。
両処理用面1,2は、被処理流動体の流路に接続され、被処理流動体の流路の一部を構成する。
より詳しくは、この装置は、少なくとも2つの被処理流動体の流路を構成すると共に、各流路を、合流させる。
即ち、この装置は、第1の被処理流動体の流路に接続され、当該第1被処理流動体の流路の一部を形成すると共に、第1被処理流動体とは別の、第2被処理流動体の流路の一部を形成する。そして、この装置は、両流路を合流させて、処理用面1,2間において、両流動体を混合し、反応させる。図1(A)へ示す実施の形態において、上記の各流路は、密閉されたものであり、液密(被処理流動体が液体の場合)・気密(被処理流動体が気体の場合)とされている。
【0037】
具体的に説明すると、図1(A)に示す通り、この装置は、上記の第1処理用部10と、上記の第2処理用部20と、第1処理用部10を保持する第1ホルダ11と、第2処理用部20を保持する第2ホルダ21と、接面圧付与機構4と、回転駆動部と、第1導入部d1と、第2導入部d2と、流体圧付与機構p1と、第2流体供給部p2と、ケース3とを備える。
尚、回転駆動部は図示を省略する。
第1処理用部10と第2処理用部20とは、少なくとも何れか一方が、少なくとも何れか他方に、接近・離反可能となっており、両処理用面1,2は、接近・離反できる。
この実施の形態では、第1処理用部10に対して、第2処理用部20が接近・離反する。但し、これとは、逆に、第1処理用部10が、第2処理用部20に対して接近・離反するものであってもよく、両処理用部10,20が互いに接近・離反するものであってもよい。
【0038】
第2処理用部20は、第1処理用部10の上方に配置されており、第2処理用部20の、下方を臨む面即ち下面が、上記の第2処理用面2であり、第1処理用部10の、上方を臨む面即ち上面が、上記の第1処理用面1である。
図1(A)へ示す通り、この実施の形態において、第1処理用部10及び第2処理用部20は、夫々環状体、即ちリングである。以下、必要に応じて第1処理用部10を第1リング10と呼び、第2処理用部20を第2リング20と呼ぶ。
この実施の形態において、両リング10,20は、金属製の一端が鏡面研磨された部材であり、当該鏡面を第1処理用面1及び第2処理用面2とする。即ち、第1リング10の上端面が第1処理用面1として、鏡面研磨されており、第2リング20の下端面が第2処理用面2として、鏡面研磨されている。
【0039】
少なくとも一方のホルダは、回転駆動部にて、他方のホルダに対して相対的に回転することができる。図1(A)の50は、回転駆動部の回転軸を示している。回転駆動部には電動機を採用することができる。回転駆動部にて、一方のリングの処理用面に対して、他方のリングの処理用面を相対的に回転させることができる。
この実施の形態において、第1ホルダ11は、回転軸50にて、回転駆動部から駆動力を受けて、第2ホルダ21に対して回転するものであり、これにて、第1ホルダ11と一体となっている第1リング10が第2リング20に対して回転する。第1リング10の内側において、回転軸50は、平面視、円形の第1リング10の中心と同心となるように、第1ホルダ11に設けられている。
第1リング10の回転は、第1リング10の軸心を中心とする。図示はしないが、軸心は、第1リング10の中心線を指し、仮想線である。
【0040】
上記の通り、この実施の形態において、第1ホルダ11は、第1リング10の第1処理用面1を上方に向けて、第1リング10を保持し、第2ホルダ21は、第2リング20の第2処理用面2を下方に向けて、第2リング20を保持している。
具体的には、第1及び第2ホルダ11,21は、夫々は、凹状のリング収容部を備える。この実施の形態において、第1ホルダ11のリング収容部に、第1リング10が嵌合し、第1ホルダ11のリング収容部から出没しないように、第1リング10はリング収容部に固定されている。
【0041】
即ち、上記の第1処理用面1は、第1ホルダ11から露出して、第2ホルダ21側を臨む。
第1リング10の材質は、金属の他、セラミックや焼結金属、耐磨耗鋼、その他金属に硬化処理を施したものや、硬質材をライニングやコーティング、メッキなどを施工したものを採用する。特に、回転するため、軽量な素材にて第1処理用部10を形成するのが望ましい。第2リング20の材質についても、第1リング10と同様のものを採用して実施すればよい。
【0042】
一方、第2ホルダ21が備えるリング収容部41は、第2リング20の処理用面2を出没可能に収容する。
この第2ホルダ21が備えるリング収容部41は、第2リング20の、主として処理用面2側と反対側の部位を収容する凹部であり、平面視において、円を呈する、即ち環状に形成された、溝である。
リング収容部41は、第2リング20の寸法より大きく形成され、第2リング20との間に十分なクリアランスを持って、第2リング20を収容する。
このクリアランスにより、当該第2リング20は、このリング収容部41内にて、環状のリング収容部41の軸方向について、更に、当該軸方向と交差する方向について、変位することができる。言い換えれば、このクリアランスにより、当該第2リング20は、リング収容部41に対して、第2リング20の中心線を、上記リング収容部41の軸方向と平行の関係を崩すようにも変位できる。
以下、第2ホルダ21の、第2リング20に囲まれた部位を、中央部分22と呼ぶ。
上記について、換言すると、当該第2リング20は、このリング収容部41内にて、リング収容部41のスラスト方向即ち上記出没する方向について、更に、リング収容部41の中心に対して偏心する方向について、変位することが可能に収容されている。また、リング収容部41に対して、第2リング20の周方向の各位置にて、リング収容部41からの出没の幅が夫々異なるようにも変位可能に即ち芯振れ可能に、当該第2リング20は収容されている。
【0043】
上記の3つの変位の自由度、即ち、リング収容部41に対する第2リング20の、軸方向、偏心方向、芯振れ方向についての自由度を備えつつも、第2リング20は、第1リング10の回転に追従しないように第2ホルダ21に保持される。図示しないが、この点については、リング収容部41と第2リング20との夫々に、リング収容部41に対してその周方向に対する回転を規制する適当な当たりを設けて実施すればよい。但し、当該当たりは、上記3つの変位の自由度を損なうものであってはならない。
【0044】
上記の接面圧付与機構4は、第1処理用面1と第2処理用面2とを接近させる方向に作用させる力を、処理用部に付与する。この実施の形態では、接面圧付与機構4は、第2ホルダ21に設けられ、第2リング20を第1リング10に向けて付勢する。
接面圧付与機構4は、第2リング20の周方向の各位置即ち第2処理用面2の各位置を均等に、第1リング10へ向けて付勢する。接面圧付与機構4の具体的な構成については、後に詳述する。
図1(A)へ示す通り、上記のケース3は、両リング10,20外周面の外側に配置されたものであり、処理用面1,2間にて生成され、両リング10,20の外側に排出される生成物を収容する。ケース3は、図1(A)へ示すように、第1ホルダ11と第2ホルダ21を、収容する液密な容器である。但し、第2ホルダ21は、当該ケース3の一部としてケース3と一体に形成されたものとして実施することができる。
上記の通り、ケース3の一部とされる場合は勿論、ケース3と別体に形成される場合も、第2ホルダ21は、両リング10,20間の間隔、即ち、両処理用面1,2間の間隔に影響を与えるようには可動となっていない。言い換えると、第2ホルダ21は、両処理用面1,2間の間隔に影響を与えない。
ケース3には、ケース3の外側に生成物を排出するための排出口32が設けられている。
【0045】
第1導入部d1は、両処理用面1,2間に、第1の被処理流動体を供給する。
上記の流体圧付与機構p1は、直接或いは間接的に、この第1導入部d1に接続されて、第1被処理流動体に、流体圧を付与する。流体圧付与機構p1には、コンプレッサやその他のポンプを採用することができる。
この実施の形態において、第1導入部d1は、第2ホルダ21の上記中央部分22の内部に設けられた流体の通路であり、その一端が、第2ホルダ21の、第2リング20が平面視において呈する円の中心位置にて、開口する。また、第1導入部d1の他の一端は、第2ホルダ21の外部即ちケース3の外部において、上記流体圧付与機構p1と接続されている。
【0046】
第2導入部d2は、第1の被処理流動体と、反応させる第2の流動体を処理用面1,2間へ供給する。この実施の形態において、第2導入部は、第2リング20の内部に設けられた流体の通路であり、その一端が、第2処理用面2にて開口し、他の一端に、第2流体供給部p2が接続されている。
第2流体供給部p2には、コンプレッサ、その他のポンプを採用することができる。
【0047】
流体圧付与機構p1により、加圧されている、第1の被処理流動体は、第1導入部d1から、両リング10,20の内側の空間に導入され、第1処理用面1と第2処理用面2との間を通り、両リング10,20の外側に通り抜けようとする。
このとき、第1被処理流動体の送圧を受けた、第2リング20は、接面圧付与機構4の付勢に抗して、第1リング10から遠ざかり、両処理用面間に微小な間隔を開ける。両処理用面1,2の接近・離反による、両面1,2間の間隔について、後に詳述する。
両処理用面1,2間において、第2導入部d2から第2の被処理流動体が供給され、第1の被処理流動体と合流し、処理用面の回転により、反応が促進される。そして、両流動体の反応による反応生成物が両処理用面1,2から、両リング10,20の外側に排出される。両リング10,20の外側に排出された反応生成物は、最終的に、ケース3の排出口32からケース3の外部に排出される。
上記の被処理流動体の混合及び反応は、第2処理用部20に対する第1処理用部10の駆動部5による回転にて、第1処理用面1と第2処理用面2とによって行われる。
第1及び第2の処理用面1,2間において、第2導入部d2の開口部m2の下流側が、上記の第1の被処理流動体と第2の被処理流動体とを反応させる反応室となる。具体的には、両処理用面1,2間において、第2リング20の底面を示す図11(C)にて、斜線で示す、第2リング20の径の内外方向r1について、第2導入部の開口部m2即ち第2開口部m2の外側の領域Hが、上記の処理室即ち反応室として機能する。従って、この反応室は、両処理用面1,2間において、第1導入部d1と第2導入部d2の両開口部m1,m2の下流側に位置する。
第1開口部m1からリングの内側の空間を経て両処理用面1,2間へ導入された第1の被処理流動体に対して、第2開口部m2から、両処理用面1,2間に導入された第2の被処理流動体が、上記反応室となる領域Hにて、混合され、両被処理流動体は反応する。流体圧付与機構p1により送圧を受けて、流動体は、両処理用面1,2間の微小な隙間にて、リングの外側に移動しようとするが、第1リング10は回転しているので、上記反応の領域Hにおいて、混合された流動体は、リングの径の内外方向について内側から外側へ直線的に移動するのではなく、処理用面を平面視した状態において、リングの回転軸を中心として、渦巻き状にリングの内側から外側へ移動する。このように、混合されて反応を行う領域Hにて、渦巻状に内側から外側へ移動することによって、両処理用面1,2間の微小間隔にて、十分な反応に要する区間を確保することができ、均一な反応を促進することができる。
また、反応にて生ずる生成物は、上記の微小な第1及び第2の処理用面1,2間にて、均質な生成物となり、特に晶析や析出の場合微粒子となる。
少なくとも、上記の流体圧付与機構p1が負荷する送圧と、上記の接面圧付与機構4の付勢力と、リングの回転による遠心力のバランスの上に、両処理用面1,2間の間隔を好ましい微小な間隔にバランスさせることができ、更に、流体圧付与機構p1が負荷する送圧とリングの回転による遠心力を受けた被処理流動体が、上記の処理用面1,2間の微小な隙間を、渦巻き状に移動して、反応が促進される。
上記の反応は、流体圧付与機構p1が負荷する送圧やリングの回転により、強制的に行われる。即ち、反応は、接近・離反可能に互いに対向して配設され且つ少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面1,2間で、強制的に均一混合しながら起こる。
従って、特に、反応による生成物の晶出又は析出は、流体圧付与機構p1が負荷する送圧の調整や、リングの回転速度即ちリングの回転数の調整という、比較的コントロールし易い方法により、制御できる。
このように、この処理装置は、送圧や遠心力の調整にて、生成物の大きさに影響を与える処理用面1,2間の間隔の制御を行え、更に、生成物の均一な生成に影響を与える上記反応の領域Hにて移動する距離の制御が行える点で、優れたものである。
また、上記の反応処理は、生成物が、析出するものに限らず、液体の場合も含む。
尚、回転軸50は、鉛直に配置されたものに限定するものではなく、水平方向に配位されたものであってもよく、傾斜して配位されたものであってよい。処理中、両処理用面1,2間の微細な間隔にて反応がなされるものであり、実質的に重力の影響を排除できるからである。
図1(A)にあっては、第1導入部d1は、第2ホルダ21において、第2リング20の軸心と一致し、上下に鉛直に伸びたものを示している。但し、第1導入部d1は、第2リング20の軸心と一致しているものに限定するものではなく、両リング10,20に囲まれた空間に、第1被処理流動体を供給できるものであれば、第2ホルダ21の中央部分22の他の位置に設けられていてもよく、更に、鉛直でなく、斜めに伸びるものであってもよい。
【0048】
図12(A)へ、上記装置のより好ましい実施の形態を示す。図示の通り、第2処理用部20は、上記の第2処理用面2と共に、第2処理用面2の内側に位置して当該第2処理用面2に隣接する受圧面23とを備える。以下この受圧面23を離反用調整面23とも呼ぶ。図示の通り、この離反用調整面23は、傾斜面である。
前述の通り、第2ホルダ21の底部即ち下部には、リング収容部41が形成され、そのリング収容部41内に、第2処理用部20が受容されている。また、図示はしないが、回り止めにて、第2処理用部20は、第2ホルダ21に対して回転しないよう、受容されている。上記の第2処理用面2は、第2ホルダ21から露出する。
この実施の形態において、処理用面1,2間の、第1処理用部10及び第2処理用部20の内側が、被処理物の流入部であり、第1処理用部10及び第2処理用部20の外側が、被処理物の流出部である。
【0049】
前記の接面圧力付与機構4は、第1処理用面1に対して第2処理用面2を、圧接又は近接した状態に押圧するものであり、この接面圧力と流体圧力などの両処理用面1、2間を離反させる力との均衡によって、所定膜厚の薄膜流体を形成する。言い換えれば、上記力の均衡によって、両処理用面1、2間の間隔を所定の微小間隔に保つ。
具体的には、この実施の形態において、接面圧力付与機構4は、上記のリング収容部41と、リング収容部41の奥に即ちリング収容部41の最深部に設けられた発条受容部42と、スプリング43と、エア導入部44とにて構成されている。
但し、接面圧力付与機構4は、上記リング収容部41と、上記発条受容部42と、スプリング43と、エア導入部44の少なくとも、何れか1つを備えるものであればよい。
【0050】
リング収容部41は、リング収容部41内の第2処理用部20の位置を深く或いは浅く、即ち上下に、変位することが可能なように、第2処理用部20を遊嵌している。
上記のスプリング43の一端は、発条受容部42の奥に当接し、スプリング43の他端は、リング収容部41内の第2処理用部20の前部即ち上部と当接する。図1において、スプリング43は、1つしか現れていないが、複数のスプリング43にて、第2処理用部20の各部を押圧するものとするのが好ましい。即ち、スプリング43の数を増やすことによって、より均等な押圧力を第2処理用部20に与えることができるからである。従って、第2ホルダ21については、スプリング43が数本から数十本取付けられたマルチ型とするのが好ましい。
【0051】
この実施の形態において、上記エア導入部44にて他から、空気をリング収容部41内に導入することを可能としている。このような空気の導入により、リング収容部41と第2処理用部20との間を加圧室として、スプリング43と共に、空気圧を押圧力として第2処理用部20に与えることができる。従って、エア導入部44から導入する空気圧を調整することにて、運転中に第1処理用面1に対する第2処理用面2の接面圧力を調整することが可能である。尚空気圧を利用するエア導入部44の代わりに、油圧などの他の流体圧にて押圧力を発生させる機構を利用しても実施可能である。
接面圧力付与機構4は、上記の押圧力即ち接面圧力の一部を供給し調節する他、変位調整機構と、緩衝機構とを兼ねる。
詳しくは、接面圧力付与機構4は、変位調整機構として、始動時や運転中の軸方向への伸びや磨耗による軸方向変位にも、空気圧の調整によって追従し、当初の押圧力を維持できる。また、接面圧力付与機構4は、上記の通り、第2処理用部20を変位可能に保持するフローティング機構を採用することによって、微振動や回転アライメントの緩衝機構としても機能するのである。
【0052】
次に、上記の構成を採る処理装置の使用の状態について、図1(A)に基づいて説明する。
まず、第1の被処理流動体が、流体圧付与機構p1からの送圧を受けて、密閉されたケースの内部空間へ、第1導入部d1より導入される。他方、回転駆動部による回転軸50の回転によって、第1処理用部10が回転する。これにより、第1処理用面1と第2処理用面2とは微小間隔を保った状態で相対的に回転する。
第1の被処理流動体は、微小間隔を保った両処理用面1,2間で、薄膜流体となり、第2導入部d2から導入された第2被処理流動体は、両処理用面1,2間において、当該薄膜流体と合流して、同様に薄膜流体の一部を構成する。この合流により、第1及び第2の被処理流動体が混合され、両流動体が反応して、均一な反応が促進されて、その反応生成物が形成される。これにより、析出を伴う場合にあっては比較的均一で微細な粒子の生成が可能となり、析出を伴わない場合にあっても、均一な反応が実現される。なお、析出した反応生成物は、第1処理用面1の回転により第2処理用面2との間で剪断を受けることにて、さらに微細化される場合もあると考えられる。ここで、第1処理用面1と第2処理用面2とは、1μmから1mm、特に1μmから10μmの微小間隔に調整されることにより、均一な反応を実現すると共に、数nm単位の超微粒子の生成をも可能とする。
生成物は、両処理用面1,2間から出て、ケース3の排出口32からケース外部へ排出される。排出された生成物は、周知の減圧装置にて、真空或いは減圧された雰囲気内にて霧状にされ、雰囲気内の他に当たることによって流動体として流れ落ちたものが脱気後の液状物として回収することができる。
尚、この実施の形態において、処理装置は、ケースを備えるものとしたが、このようなケースを設けずに実施することもできる。例えば、脱気するための減圧タンク即ち真空タンクを設け、そのタンク内部に、処理装置を配置して、実施することが可能である。その場合、当然上記の排出口は、処理装置には備えられない。
【0053】
上記のように、第1処理用面1と第2処理用面2とは、機械的なクリアランスの設定では不可能とされたμm単位の微小間隔に調整され得るものであるが、そのメカニズムを次に説明する。
第1処理用面1と第2処理用面2とは、相対的に接近離反可能であり、且つ相対的に回転する。この例では、第1処理用面1が回転し、第2処理用面2が軸方向に摺動して第1処理用面1に対して接近離反する。
よって、この例では、第2処理用面2の軸方向位置が、力即ち、前述の接面圧力と離反力のバランスによって、μm単位の精度で設定されることにより、両処理用面1,2間の微小間隔の設定がなされる。
【0054】
図12(A)へ示す通り、接面圧力としては、接面圧力付与機構4において、エア導入部44から空気圧即ち正圧を付与した場合の当該圧力、スプリング43の押圧力を挙げることができる。
尚、図12〜15、17に示す実施の形態において、図面の煩雑を避けるため、第2導入部d2は、省略して描いてある。この点について、第2導入部d2が設けられていない位置の断面と考えればよい。また、図中、Uは上方を、Sは下方を、夫々示している。
他方、離反力としては、離反側の受圧面、即ち第2処理用面2及び離反用調整面23に作用する流体圧と、第1処理用部10の回転による遠心力と、エア導入部44に負圧を掛けた場合の当該負圧とを挙げることができる。
尚、装置を洗浄するに際して、上記のエア導入部44に掛ける負圧を大きくすることにより、両処理用面1,2を大きく離反させることができ、洗浄を容易に行うことができる。
そして、これらの力の均衡によって、第2処理用面2が第1処理用面1に対して所定の微小間隔を隔てた位置にて安定することにより、μm単位の精度での設定が実現する。
【0055】
離反力をさらに詳しく説明する。
まず、流体圧に関しては、密閉された流路中にある第2処理用部20は、流体圧付与機構p1から被処理流動体の送り込み圧力即ち流体圧を受ける。その際、流路中の第1処理用面に対向する面、即ち第2処理用面2と離反用調整面23が離反側の受圧面となり、この受圧面に流体圧が作用して、流体圧による離反力が発生する。
次に、遠心力に関しては、第1処理用部10が高速に回転すると、流体に遠心力が作用し、この遠心力の一部は両処理用面1,2を互いに遠ざける方向に作用する離反力となる。
更に、上記のエア導入部44から負圧を第2処理用部20へ与えた場合には、当該負圧が離反力として作用する。
以上、本願の説明においては、第1第2の処理用面1,2を互いに離反させる力を離反力として説明するものであり、上記に示した力を離反力から排除するものではない。
【0056】
上述のように、密閉された被処理流動体の流路において、処理用面1,2間の被処理流動体を介し、離反力と、接面圧力付与機構4が奏する接面圧力とが均衡した状態を形成することにより、両処理用面1,2間に、均一な反応を実現すると共に、微細な反応生成物の晶出・析出を行うのに適した薄膜流体を形成する。このように、この装置は、処理用面1,2間に強制的に薄膜流体を介することにより、従来の機械的な装置では、不可能であった微小な間隔を、両処理用面1,2に維持することを可能として、反応生成物として微粒子を、高精度に生成することを実現したのである。
【0057】
言い換えると処理用面1,2間における薄膜流体の膜厚は、上述の離反力と接面圧力の調整により、所望の厚みに調整し、必要とする均一な反応の実現と、微細な生成物の生成処理を行うことができる。従って、薄膜流体の厚みを小さくしようとする場合、離反力に対して相対的に接面圧力が大きくなるように、接面圧力或いは離反力を調整すればよく、逆に薄膜流体の厚みを大きくしようとすれば、接面圧力に対して相対的に離反力が大きくなるように、離反力或いは接面圧力を調整すればよい。
接面圧力を増加させる場合、接面圧力付与機構4において、エア導入部44から空気圧即ち正圧を付与し、又は、スプリング43を押圧力の大きなものに変更或いはその個数を増加させればよい。
離反力を増加させる場合、流体圧付与機構p1の送り込み圧力を増加させ、或いは第2処理用面2や離反用調整面23の面積を増加させ、またこれに加えて、第1処理用部10の回転を調整して遠心力を増加させ或いはエア導入部44からの圧力を低減すればよい。もしくは負圧を付与すればよい。スプリング43は、伸びる方向に押圧力を発する押し発条としたが、縮む方向に力を発する引き発条として、接面圧力付与機構4の構成の一部又は全部とすることが可能である。
離反力を減少させる場合、流体圧付与機構p1の送り込み圧力を減少させ、或いは第2処理用面2や離反用調整面23の面積を減少させ、またこれに加えて、第1処理用部10の回転を調整して遠心力を減少させ或いはエア導入部44からの圧力を増加させれば良い。もしくは負圧を低減すればよい。
【0058】
さらに、接面圧力及び離反力の増加減少の要素として、上記の他に粘度などの被処理流動体の性状も加えることができ、このような被処理流動体の性状の調整も、上記の要素の調整として、行うことができる。
【0059】
なお、離反力のうち、離反側の受圧面即ち、第2処理用面2及び離反用調整面23に作用する流体圧は、メカニカルシールにおけるオープニングフォースを構成する力として理解される。
メカニカルシールにあっては、第2処理用部20がコンプレッションリングに相当するが、この第2処理用部20に対して流体圧が加えられた場合に、第2処理用部20を第1処理用部10から離反する力が作用する場合、この力がオープニングフォースとされる。
より詳しくは、上記の第1の実施の形態のように、第2処理用部20に離反側の受圧面即ち、第2処理用面2及び離反用調整面23のみが設けられている場合には、送り込み圧力の全てがオープニングフォースを構成する。なお、第2処理用部20の背面側にも受圧面が設けられている場合、具体的には、後述する図12(B)及び図17の場合には、送り込み圧力のうち、離反力として働くものと接面圧力として働くものとの差が、オープニングフォースとなる。
【0060】
ここで、図12(B)を用いて、第2処理用部20の他の実施の形態について説明する。
図12(B)に示す通り、この第2処理用部20のリング収容部41より露出する部位であり且つ内周面側に、第2処理用面2と反対側即ち上方側を臨む近接用調整面24が設けられている。
即ち、この実施の形態において、接面圧力付与機構4は、リング収容部41と、エア導入部44と、上記近接用調整面24とにて構成されている。但し、接面圧力付与機構4は、上記リング収容部41と、上記発条受容部42と、スプリング43と、エア導入部44と、上記近接用調整面24の少なくとも、何れか1つを備えるものであればよい。
【0061】
この近接用調整面24は、被処理流動体に掛けた所定の圧力を受けて第1処理用面1に第2処理用面2を接近させる方向に移動させる力を発生させ、接面圧力付与機構4の一部として、接面圧力の供給側の役目を担う。一方第2処理用面2と前述の離反用調整面23とは、被処理流動体に掛けた所定の圧力を受けて第1処理用面1から第2処理用面2を離反させる方向に移動させる力を発生させ、離反力の一部についての供給側の役目を担うものである。
近接用調整面24と、第2処理用面2及び離反用調整面23とは、共に前述の被処理流動体の送圧を受ける受圧面であり、その向きにより、上記接面圧力の発生と、離反力の発生という異なる作用を奏する。
【0062】
処理用面の接近・離反の方向、即ち第2リング20の出没方向と直交する仮想平面上に投影した近接用調整面24の投影面積A1と、当該仮想平面に投影した第2処理用部20の第2処理用面2及び離反用調整面23との投影面積の合計面積A2との、面積比A1/A2は、バランス比Kと呼ばれ、上記のオープニングフォースの調整に重要である。
近接用調整面24の先端と離反用調整面23の先端とは、共に環状の第2処理用部20の内周面25即ち先端線L1に規定されている。このため、近接用調整面24の基端線L2をどこに置くかの決定で、バランス比の調整が行われる。
即ち、この実施の形態において、被処理用流動体の送り出しの圧力をオープニングフォースとして利用する場合、第2処理用面2及び離反用調整面23との合計投影面積を、近接用調整面24の投影面積より大きいものとすることによって、その面積比率に応じたオープニングフォースを発生させることができる。
【0063】
上記のオープニングフォースについては、上記バランスライン、即ち近接用調整面24の面積A1を変更することで、被処理流動体の圧力、即ち流体圧により調整できる。
摺動面実面圧P、即ち、接面圧力のうち流体圧によるものは次式で計算される。
P=P1×(K−k)+Ps
ここでP1は、被処理流動体の圧力即ち流体圧を示し、Kは上記のバランス比を示し、kはオープニングフォース係数を示し、Psはスプリング及び背圧力を示す。
このバランスラインの調整により摺動面実面圧Pを調整することで処理用面1,2間を所望の微小隙間量にし被処理流動体による薄膜流体を形成させ、生成物を微細とし、また、均一な反応処理を行うのである。
【0064】
通常、両処理用面1,2間の薄膜流体の厚みを小さくすれば、生成物をより細かくすることができる。逆に、当該薄膜流体の厚みを大きくすれば、処理が粗くなり単位時間あたりの処理量が増加する。従って、上記の摺動面実面圧Pの調整により、両処理用面1,2間の隙間を調整して、所望の均一な反応を実現すると共に微細な生成物を得ることができる。以下、摺動面実面圧Pを面圧Pと呼ぶ。
この関係を纏めると、上記の生成物を粗くする場合、バランス比を小さくし、面圧Pを小さくし、上記隙間を大きくして、上記膜厚を大きくすればよい。逆に、上記の生成物をより細かくする場合、バランス比を大きくし、面圧Pを大きくし、上記隙間を小さくし、上記膜厚を小さくする。
このように、接面圧力付与機構4の一部として、近接用調整面24を形成して、そのバランスラインの位置にて、接面圧力の調整、即ち処理用面間の隙間を調整するものとしても実施できる。
【0065】
上記の隙間の調整には、既述の通り、他に、前述のスプリング43の押圧力や、エア導入部44の空気圧を考慮して行う。また、流体圧即ち被処理流動体の送り圧力の調整や、更に、遠心力の調整となる、第1処理用部10即ち第1ホルダ11の回転の調整も、重要な調整の要素である。
上述の通り、この装置は、第2処理用部20と、第2処理用部20に対して回転する第1処理用部10とについて、被処理流動体の送り込み圧力と当該回転遠心力、また接面圧力で圧力バランスを取り両処理用面に所定の薄膜流体を形成させる構成にしている。またリングの少なくとも一方をフローティング構造とし芯振れなどのアライメントを吸収し接触による磨耗などの危険性を排除している。
【0066】
この図12(B)の実施の形態においても、上記の調整用面を備える以外の構成については、図1(A)に示す実施の形態と同様である。
また、図12(B)に示す実施の形態において、図17に示すように、上記の離反用調整面23を設けずに実施することも可能である。
図12(B)や図17に示す実施の形態のように、近接用調整面24を設ける場合、近接用調整面24の面積A1を上記の面積A2よりも大きいものとすることにより、オープニングフォースを発生させずに、逆に、被処理流動体に掛けられた所定の圧力は、全て接面圧力として働くことになる。このような設定も可能であり、この場合、他の離反力を大きくすることにより、両処理用面1,2を均衡させることができる。
上記の面積比にて、流体から受ける力の合力として、第2処理用面2を第1処理用面1から離反させる方向へ作用させる力が定まる。
【0067】
上記の実施の形態において、既述の通り、スプリング43は、摺動面即ち処理用面に均一な応力を与える為に、取付け本数は、多いほどよい。但し、このスプリング43については、図13へ示すように、シングルコイル型スプリングを採用することも可能である。これは、図示の通り、中心を環状の第2処理用部20と同心とする1本のコイル型スプリングである。
第2処理用部20と第2ホルダ21との間は、気密となるようにシールし、当該シールには、周知の手段を採用することができる。
【0068】
図14に示すように、第2ホルダ21には、第2処理用部20を、冷却或いは加熱して、その温度を調整することが可能な温度調整用ジャケット46が設けられている。また、図14の3は、前述のケースを示しており、このケース3にも、同様の目的の温度調整用ジャケット35が設けられている。
第2ホルダ21の温度調整用ジャケット46は、第2ホルダ21内において、リング収容部41の側面に形成された水回り用の空間であり、第2ホルダ21の外部に通じる通路47,48と連絡している。通路47,48は、何れか一方が温度調整用ジャケット46に、冷却用或いは加熱用の媒体を導入し、何れか他方が当該媒体を排出する。
また、ケース3の温度調整用ジャケット35は、ケース3の外周を被覆する被覆部34にて、ケース3の外周面と当該被覆部34との間に設けられた、加熱用水或いは冷却水を通す通路である。
この実施の形態では、第2ホルダ21とケース3とが、上記の温度調整用のジャケットを備えるものとしたが、第1ホルダ11にも、このようなジャケットを設けて実施することが可能である。
【0069】
接面圧力付与機構4の一部として、上記以外に、図15に示すシリンダ機構7を設けて実施することも可能である。
このシリンダ機構7は、第2ホルダ21内に設けられたシリンダ空間部70と、シリンダ空間部70をリング収容部41と連絡する連絡部71と、シリンダ空間部70内に収容され且つ連絡部71を通じて第2処理用部20と連結されたピストン体72と、シリンダ空間部70上部に連絡する第1ノズル73と、シリンダ空間部70下部に連絡する第2ノズル74と、シリンダ空間部70上部とピストン体72との間に介された発条などの押圧体75とを備えたものである。
【0070】
ピストン体72は、シリンダ空間部70内にて上下に摺動可能であり、ピストン体72の当該摺動にて第2処理用部20が上下に摺動して、第1処理用面1と第2処理用面2との間の隙間を変更することができる。
図示はしないが、具体的には、コンプレッサなどの圧力源と第1ノズル73とを接続し、第1ノズル73からシリンダ空間部70内のピストン体72上方に空気圧即ち正圧を掛けることにて、ピストン体72を下方に摺動させ、第1及び第2処理用面1,2間の隙間を狭めることができる。また図示はしないが、コンプレッサなどの圧力源と第2ノズル74とを接続し、第2ノズル74からシリンダ空間部70内のピストン体72下方に空気圧即ち正圧を掛けることにて、ピストン体72を上方に摺動させ、第1及び第2処理用面1,2間の隙間を広げる、即ち開く方向に移動させることができる。このように、ノズル73,74にて得た空気圧で、接面圧力を調整できるのである。
【0071】
リング収容部41内における第2処理用部20の上部と、リング収容部41の最上部との間に余裕があっても、ピストン体72がシリンダ空間部70の最上部70aと当接するよう設定することにより、このシリンダ空間部70の最上部70aが、両処理用面1,2間の隙間の幅の上限を規定する。即ち、ピストン体72とシリンダ空間部70の最上部70aとが、両処理用面1,2の離反を抑止する離反抑止部として、更に言い換えると、両処理用面1,2間の隙間の最大開き量を規制する機構として機能する。
【0072】
また、両処理用面1,2同士が当接していなくても、ピストン体72がシリンダ空間部70の最下部70bと当接するよう設定することにより、このシリンダ空間部70の最下部70bが、両処理用面1,2間の隙間の幅の下限を規定する。即ち、ピストン体72とシリンダ空間部70の最下部70bとが、両処理用面1,2の近接を抑止する近接抑止部として、更に言い換えると、両処理用面1,2間の隙間の最小開き量を規制する機構として機能する。
このように上記隙間の最大及び最小の開き量を規制しつつ、ピストン体72とシリンダ空間部70の最上部70aとの間隔z1、換言するとピストン体72とシリンダ空間部70の最下部70bとの間隔z2を上記ノズル73,74の空気圧にて調整する。
【0073】
ノズル73,74は、別個の圧力源に接続されたものとしてもよく、一つの圧力源を切り換えて或いはつなぎ換えて接続するものとしてもよい。
また圧力源は、正圧を供給するものでも負圧を供給するものでも何れでも実施可能である。真空などの負圧源と、ノズル73,74とを接続する場合、上記の動作は反対になる。
前述の他の接面圧力付与機構4に代え或いは前述の接面圧力付与機構4の一部として、このようなシリンダ機構7を設けて、被処理流動体の粘度や性状によりノズル73,74に接続する圧力源の圧力や間隔z1,z2の設定を行い薄膜流体の厚みを所望値にしせん断力をかけて均一な反応を実現し、微細な粒子を生成させることができる。特に、このようなシリンダ機構7にて、洗浄時や蒸気滅菌時など摺動部の強制開閉を行い洗浄や滅菌の確実性を上昇させることも可能とした。
【0074】
図16(A)〜(C)に示すように、第1処理用部10の第1処理用面1に、第1処理用部10の中心側から外側に向けて、即ち径方向について伸びる溝状の凹部13...13を形成して実施してもよい。この場合、図16(A)へ示すように、凹部13...13は、第1処理用面1上をカーブして或いは渦巻き状に伸びるものとして実施可能であり、図16(B)へ示すように、個々の凹部13がL字状に屈曲するものであっても実施可能であり、また、図16(C)に示すように、凹部13...13は真っ直ぐ放射状に伸びるものであっても実施可能である。
【0075】
また、図16(D)へ示すように、図16(A)〜(C)の凹部13は、第1処理用面1の中心側に向かう程深いものとなるように勾配をつけて実施するのが好ましい。また、溝状の凹部13は、連続したものの他、断続するものであっても実施可能である。
この様な凹部13を形成することにより被処理流動体の吐出量の増加または発熱量の減少への対応や、キャビテーションコントロールや流体軸受けなど効果がある。
上記の図16に示す各実施の形態において、凹部13は、第1処理用面1に形成するものとしたが、第2処理用面2に形成するものとしても実施可能であり、更には、第1及び第2の処理用面1,2の双方に形成するものとしても実施可能である。
【0076】
処理用面に、上記の凹部13やテーパを設けない場合、若しくは、これらを処理用面の一部に偏在させた場合、処理用面1,2の面粗度が被処理流動体に与える影響は、上記凹部13を形成するものに比して、大きいものとなる。従って、このような場合、被処理流動体の粒子が小さくなればなるほど、面粗度を下げる即ちきめの細かいものとする必要がある。特に均一な反応を目的とする場合その処理用面の面粗度については、既述の鏡面即ち鏡面加工を施した面とするほうが均一な反応を実現し、微粒子を得る事を目的とする場合には、微細で単分散な反応生成物の晶出・析出を実現する上で有利である。
図13乃至図17に示す実施の形態においても、特に明示した以外の構成については図1(A)又は図11(C)に示す実施の形態と同様である。
【0077】
また、上記の各実施の形態において、ケース内は全て密封されたものとしたが、この他、第1処理用部10及び第2処理用部20の内側のみ密封され、その外側は開放されたものとしても実施可能である。即ち、第1処理用面1及び第2処理用面2との間を通過するまでは流路は密封され、被処理流動体は送圧を全て受けるものとするが、通過後は、流路は開放され処理後の被処理流動体は送圧を受けないものとしてもよい。
流体圧付与機構p1には、加圧装置として、既述のとおり、コンプレッサを用いて実施するのが好ましいが、常に被処理流動体に所定の圧力を掛けることが可能であれば、他の手段を用いて実施することもできる。例えば、被処理流動体の自重を利用して、常に一定の圧力を被処理流動体に付与するものとしても実施可能である。
【0078】
上記の各実施の形態における処理装置について総括すると、被処理流動体に所定の圧力を付与し、この所定の圧力を受けた被処理流動体が流される密封された流体流路に、第1処理用面1及び第2処理用面2の少なくとも2つの接近離反可能な処理用面を接続し、両処理用面1,2を接近させる接面圧力を付与し、第1処理用面1と第2処理用面2とを相対的に回転させることにより、メカニカルシールにおいてシールに利用される薄膜流体を、被処理流動体を用いて発生させ、メカニカルシールと逆に(薄膜流体をシールに利用するのではなく)、当該薄膜流体を第1処理用面1及び第2処理用面2の間から敢えて漏らして、反応の処理を、両面間1,2にて膜とされた被処理流動体間にて実現し、回収することを特徴とするものである。
このような画期的な方法により、両処理用面1,2間の間隔を1μmから1mmとする調整、特に、1〜10μmとする調整を可能とした。
【0079】
上記の実施の形態において、装置内は密閉された流体の流路を構成するものであり、処理装置の(第1被処理流動体の)導入部側に設けた流体圧付与機構p1にて、被処理流動体は加圧されたものであった。
この他、このような流体圧付与機構p1を用いて加圧するものではなく、被処理流動体の流路は開放されたものであっても実施可能である。
図18乃至図20へ、そのような処理装置の一実施の形態を示す。尚、この実施の形態において、処理装置として、生成されたものから、液体を除去し、目的とする固体(結晶)のみを最終的に確保する機能を備えた装置を例示する。
図18(A)は処理装置の略縦断面図であり、図18(B)はその一部切欠拡大断面図である。図19は、図18に示す処理装置が備える第1処理用部101の平面図である。図20は、上記処理装置の第1及び第2処理用部101,102の一部切欠要部略縦断面図である。
【0080】
この図18乃至図20に示す装置は、上記の通り、大気圧下で、処理の対象となる流体即ち被処理流動体或いはこのような処理の対象物を搬送する流体が投入されるものである。
尚、図18(B)及び図20において、図面の煩雑を避けるため、第2導入部d2は、省略して描いてある(第2導入部d2が設けられていない位置の断面と考えればよい)。
図18(A)に示す通り、この処理装置は、反応装置Gと、減圧ポンプQとを備えたものである。この反応装置Gは、回転する部材である第1処理用部101と、当該処理用部101を保持する第1ホルダ111と、ケースに対して固定された部材である第2処理用部102と、当該第2処理用部102が固定された第2ホルダ121と、付勢機構103と、動圧発生機構104(図19(A))と、第1ホルダ111と共に第1処理用部101を回転させる駆動部と、ハウジング106と、第1被処理流動体を供給(投入する)する第1導入部d1と、流体を減圧ポンプQへ排出する排出部108とを備える。駆動部については図示を省略する。
【0081】
上記の第1処理用部101と第2処理用部102は、夫々、円柱の中心をくり抜いた形状の環状体である。両処理用部101,102は、両処理用部101,102の夫々が呈する円柱の一底面を処理用面110,120とする部材である。
上記の処理用面110,120は、鏡面研磨された平坦部を有する。この実施の形態において、第2処理用部102の処理用面120は、面全体に鏡面研磨が施された平坦面である。また、第1処理用部101の処理用面110は、面全体を第2処理用部102と同様の平坦面とするが、図19(A)へ示す通り、平坦面中に、複数の溝112...112を有する。この溝112... 112は、第1処理用部101が呈する円柱の中心を中心側として円柱の外周方向へ、放射状に伸びる。
上記の第1及び第2の処理用部101,102の処理用面110,120についての、鏡面研磨は、面粗度Ra0.01〜1.0μmとするのが好ましい。この鏡面研磨について、Ra0.03〜0.3μmとするのがより好ましい。
処理用部101,102の材質については、硬質且つ鏡面研磨が可能なものを採用する。処理用部101,102のこの硬さについて、少なくともビッカース硬さ1500以上が好ましい。また、線膨張係数が小さい素材を、若しくは、熱伝導の高い素材を、採用するのが好ましい。処理にて熱を発する部分と他の部分との間で、膨張率の差が大きいと歪みが発生して、適正なクリアランスの確保に影響するからである。
このような処理用部101,102の素材として、特に、SIC即ちシリコンカーバイトでビッカース硬さ2000〜2500、表面にDLC即ちダイヤモンドライクカーボンでビッカース硬さ3000〜4000、コーティングが施されたSIC、WC即ちタングステンカーバイトでビッカース硬さ1800、表面にDLCコーティングが施されたWC、ZrB2 やBTC,B4 Cに代表されるボロン系セラミックでビッカース硬さ4000〜5000などを採用するのが好ましい。
【0082】
図18に示されるハウジング106は、底部の図示は省略するが、有底の筒状体であり、上方が上記の第2ホルダ121に覆われている。第2ホルダ121は、下面に上記第2処理用部102が固定されており、上方に上記導入部d1が設けられている。導入部d1は、外部から流体や被処理物を投入するためのホッパ170を備える。
図示はしないが、上記の駆動部は、電動機などの動力源と、当該動力源から動力の供給を受けて回転するシャフト50とを備える。
図18(A)に示すように、シャフト50は、ハウジング106の内部に配され上下に伸びる。そして、シャフト50の上端部に上記の第1ホルダ111が、設けられている。第1ホルダ111は、第1処理用部101を保持するものであり、上記の通りシャフト50に設けられることにより、第1処理用部101の処理用面110を第2処理用部102の処理用面120に対応させる。
【0083】
第1ホルダ111は、円柱状体であり、上面中央に、第1処理用部101が固定されている。第1処理用部101は、第1ホルダ111と一体となるように、固着され、第1ホルダ111に対してその位置を変えない。
一方、第2ホルダ121の上面中央には、第2処理用部102を受容する受容凹部124が形成されている。
上記の受容凹部124は、環状の横断面を有する。第2処理用部102は、受容凹部124と、同心となるように円柱状の受容凹部124内に収容される。
この受容凹部124の構成は、図1(A)に示す実施の形態と同様である(第1処理用部101は第1リング10と、第1ホルダ111は第1ホルダ11と、第2処理用部102は第2リング20と、第2ホルダ121は第2ホルダ21と対応する)。
【0084】
そして、この第2ホルダ121が、上記の付勢機構103を備える。付勢機構103は、バネなどの弾性体を用いるのが好ましい。付勢機構103は、図1(A)の接面圧付与機構4と対応し、同様の構成を採る。即ち、付勢機構103は、第2処理用部102の処理用面120と反対側の面即ち底面を押圧し、第1処理用部101側即ち下方に第2処理用部102の各位置を均等に付勢する。
【0085】
一方、受容凹部124の内径は、第2処理用部102の外径よりも大きく、これにて、上記の通り同心に配設した際、第2処理用部102の外周面102bと受容凹部124の内周面との間には、図18(B)に示すように、隙間t1が設定される。
同様に、第2処理用部102の内周面102aと受容凹部124の中心部分22の外周面との間には、図18(B)に示すように、隙間t2が設定される。
上記隙間t1、t2の夫々は、振動や偏芯挙動を吸収するためのものであり、動作寸法以上確保され且つシールが可能となる大きさに設定する。例えば、第1処理用部101の直径が100mmから400mmの場合、当該隙間t1、t2の夫々は、0.05〜0.3mmとするのが好ましい。
第1ホルダ111は、シャフト50へ一体に固定され、シャフト50と共に回転する。また、図示しないが、回り止めによって、第2ホルダ121に対して、第2処理用部102は回らない。しかし、両処理用面110,120間に、処理に必要な0.1〜10ミクロンのクリアランス、即ち図20(B)に示す微小な間隔tを確保するため、受容凹部124の底面即ち天部と第2処理用部102の天部124aを臨む面即ち上面との間に隙間t3が設けられる。この隙間t3については、上記のクリアランスと共に、シャフト50の振れや伸びを考慮して設定する。
【0086】
上記のように、隙間t1〜t3の設定により、第2処理用部102は、第1処理用部101に対して接近・離反する方向z1に可変であるのみならず、その処理用面120の中心や、傾き、即ち方向z2についても可変としている。
即ち、この実施の形態において、付勢機構103と、上記隙間t1〜t3とが、フローティング機構を構成し、このフローティング機構によって、少なくとも第2処理用部102の中心や傾きを、数ミクロンから数ミリの程度の僅かな量、可変としている。これにて、回転軸の芯振れ、軸膨張、第1処理用部101の面振れ、振動を吸収する。
【0087】
第1処理用部101の処理用面110が備える前記の溝112について、更に詳しく説明する。溝112の後端は、第1処理用部101の内周面101aに達するものであり、その先端を第1処理用部101の外側y即ち外周面側に向けて伸ばす。この溝112は、図19(A)へ示すように、その横断面積を、環状の第1処理用部101の中心x側から、第1処理用部101の外側y即ち外周面側に向かうにつれて、漸次減少するものとしている。
溝112の左右両側面112a,112bの間隔w1は、第1処理用部101の中心x側から、第1処理用部101の外側y即ち外周面側に向かうにつれて小さくなる。また、溝112の深さw2は、図19(B)へ示すように、第1処理用部101の中心x側から、第1処理用部101の外側y即ち外周面側に向かうにつれて、小さくなる。即ち、溝112の底112cは、第1処理用部101の中心x側から、第1処理用部101の外側y即ち外周面側に向かうにつれて、浅くなる。
このように、溝112は、その幅及び深さの双方を、外側y即ち外周面側に向かうにつれて、漸次減少するものとして、その横断面積を外側yに向けて漸次減少させている。そして、溝112の先端即ちy側は、行き止まりとなっている。即ち、溝112の先端即ちy側は、第1処理用部101の外周面101bに達するものではなく、溝112の先端と外周面101bとの間には、外側平坦面113が介在する。この外側平坦面113は、処理用面110の一部である。
【0088】
この図19へ示す実施の形態において、このような溝112の左右両側面112a,112bと底112cとが流路制限部を構成している。この流路制限部と、第1処理用部101の溝112周囲の平坦部と、第2処理用部102の平坦部とが、動圧発生機構104を構成している。
但し、溝112の幅及び深さの何れか一方についてのみ、上記の構成を採るものとして、断面積を減少させるものとしてよい。
上記の動圧発生機構104は、第1処理用部101の回転時、両処理用部101,102間を通り抜けようとする流体によって、両処理用部101,102の間に所望の微小間隔を確保することを可能とする、両処理用部101,102を離反させる方向に働く力を発生させる。このような動圧の発生により、両処理用面110,120間に、0.1〜10μmの微小間隔を発生させることができる。このような微小間隔は、処理の対象によって、調整し選択すればよいのであるが、1〜6μmとするのが好ましく、より好ましくは、1〜2μmである。この装置においては、上記のような微小間隔による従来にない均一な反応の実現と微細粒子の生成が可能である。
【0089】
溝112...112の夫々は、真っ直ぐ、中心x側から外側yに伸びるものであっても実施可能である。但し、この実施の形態において、図19(A)に示すように、第1処理用部101の回転方向rについて、溝112の中心x側が、溝112の外側yよりも、先行するように即ち前方に位置するように、湾曲して溝112を伸びるものとしている。
このように溝112...112が湾曲して伸びることにより、動圧発生機構104による離反力の発生をより効果的に行うことができる。
【0090】
次に、この装置の動作について説明する。
ホッパ170から投入され、第1導入部d1を通ってくる第1被処理流動体Rは、環状の第2処理用部102の中空部を通る。第1処理用部101の回転による遠心力を受けた第1被処理流動体Rは、両処理用部101,102間に入り、回転する第1処理用部101の処理用面110と、第2処理用部102の処理用面120との間にて、均一な反応と微細粒子の生成処理が行われ、その後、両処理用部101,102の外側に出て、排出部108から減圧ポンプQ側へ排出される。以下必要に応じて第1被処理流動体Rを単に流体Rと呼ぶ。
上記において、環状の第2処理用部102の中空部に入った流体Rは、図20(A)へ示すように、先ず、回転する第1処理用部101の溝112に入る。一方、鏡面研磨された、平坦部である両処理用面110,120は、空気や窒素などの気体を通しても気密性が保たれている。従って、回転による遠心力を受けても、そのままでは、付勢機構103によって、押し合わされた両処理用面110,120の間に、溝112から流体は入り込むことはできない。しかし、流路制限部として形成された溝112の上記両側面112a,112bや底112cに、流体Rは徐々に突き当たり、両処理用面110,120を離反させる方向に働く動圧を発生させる。図20(B)へ示すように、これによって、流体Rが溝112から平坦面に滲み出し、両処理用面110,120の間に微小間隔t即ちクリアランスを確保することができる。そして、このような鏡面研磨された平坦面の間で、均一な反応と微細な粒子の生成処理が行われる。また上述の溝112の湾曲が、より確実に流体へ遠心力を作用させ、上記動圧の発生をより効果的にしている。
このように、この処理装置は、動圧と付勢機構103による付勢力との均衡にて、両鏡面即ち処理用面110,120間に、微細で均一な間隔即ちクリアランスを確保することを可能とした。そして、上記の構成により、当該微小間隔は、1μm以下の超微細なものとすることができる。
また、上記フローティング機構の採用により、処理用面110,120間のアライメントの自動調整が可能となり、回転や発生した熱による各部の物理的な変形に対して、処理用面110,120間の各位置における、クリアランスのばらつきを、抑制し、当該各位置における上記の微小間隔の維持を可能とした。
【0091】
尚、上記の実施の形態において、フローティング機構は、第2ホルダ121にのみ設けられた機構であった。この他、第2ホルダ121に代え、或いは第2ホルダ121と共に、フローティング機構を、第1ホルダ111にも設けるものとして実施することも可能である。
【0092】
図21乃至図23に、上記の溝112について、他の実施の形態を示す。
図21(A)(B)に示すように、溝112は、流路制限部の一部として、先端に平らな壁面112dを備えるものとして実施することができる。また、この実施の形態では、底112cにおいて、第1壁面112dと、内周面101aとの間に段差112eが設けられており、この段差112eも流路制限部の一部を構成する。
図22(A)(B)に示すように、溝112は、複数に分岐する枝部112f...112fを備えるものとし、各枝部112fがその幅を狭めることにより流路制限部を備えるものとしても実施可能である。
これらの実施の形態においても、特に示した以外の構成については、図1(A)、図11(C)、図18乃至図20に示す実施の形態と同様である。
【0093】
また、上記の各実施の形態において、溝112の幅及び深さの少なくとも何れか一方について、第1処理用部101の内側から外側に向けてその寸法を漸次小さくすることにて、流路制限部を構成するものとした。この他、図23(A)や図23(B)へ示す通り、溝112の幅や深さを変化させずに、溝112に終端面112fを設けることによって、このような溝112の終端面112fを流路制限部とすることができる。図19、図21及び図22に示す実施の形態において示した通り、動圧発生は、溝112の幅及び深さを既述の通り変化させることによって溝112の底や両側面を傾斜面とすることで、この傾斜面が流体に対する受圧部になり動圧を発生させた。一方図23(A)(B)に示す実施の形態では、溝112の終端面が流体に対する受圧部になり動圧を発生させる。
また、この図23(A)(B)に示す場合、溝112の幅及び深さの少なくとも何れか一方の寸法を漸次小さくすることも併せて実施することができる。
尚、溝112の構成について、上記の図19、図21乃至図23に示すものに限定するものではなく、他の形状の流路制限部を備えたものとして実施することが可能である。
例えば、図19、図21乃至図23に示すものでは、溝112は、第1処理用部101の外側に突き抜けるものではなかった。即ち、第1処理用部101の外周面と、溝112との間には、外側平坦面113が存在した。しかし、このような実施の形態に限定するものではなく、上述の動圧を発生されることが可能であれば、溝112は、第1処理用部101の外周面側に達するものであっても実施可能である。
例えば、図23(B)に示す第1処理用部101の場合、点線で示すように、溝112の他の部位よりも断面積が小さな部分を、外側平坦面113に形成して実施することができる。
また、溝112を、上記の通り内側から外側へ向けて漸次断面積を小さくするように形成し、溝112の第1処理用部101の外周に達した部分(終端)を、最も断面積が小さいものとすればよい(図示せず)。但し、動圧を効果的に発生させる上で、図19、図21乃至図23に示すように、溝112は、第1処理用部101の外周面側に突き抜けないほうが好ましい。
【0094】
ここで、上記図18乃至図23に示す各実施の形態について、総括する。
この処理装置は、平坦処理用面を有する回転部材と同じく平坦処理用面を有する固定部材とをそれらの平坦処理用面で同心的に相対向させ、回転部材の回転下に固定部材の開口部より被反応原料を供給しながら両部材の対向平面処理用面間にて反応処理する処理装置において機械的にクリアランスを調整するのではなく、回転部材に増圧機構を設けてその圧力発生によりクリアランスを保持しかつ機械的クリアランス調整では、不可能であった1〜6μmの微小クリアランスを可能とし生成粒子の微細化及び反応の均一化の能力が著しく向上出来たものである。
即ち、この処理装置は、回転部材と固定部材がその外周部に平坦処理用面を有しその平坦処理用面において、面上の密封機能を有することで、流体静力学的な即ちハイドロスタティックな力、流体動力学的即ちハイドロダイナミックな力、或いは、エアロスタティック−エアロダイナミックな力を発生させる高速回転式の処理装置を提供しようとするものである。上記の力は、上記密封面間に僅かな間隙を発生させ、また非接触で機械的に安全で高度な微細化及び反応の均一化の機能を有した反応処理装置を提供することができる。この僅かな隙間が形成されうる要因は、一つは、回転部材の回転速度によるものであり、もう一つは、被処理物(流体)の投入側と排出側の圧力差によるものである。投入側に圧力付与機構が付設されていない場合即ち大気圧下で被処理物(流体)を投入される場合、圧力差が無いわけであるから回転部材の回転速度だけで密封面間の分離を生じさせる必要がある。これは、ハイドロダイナミックもしくはエアロダイナミック力として知られている。
【0095】
図18(A)に示す装置において、減圧ポンプQを上記反応装置Gの排出部に接続したものを示したが、既述の通りハウジング106を設けず、また減圧ポンプQを設けずに、図24(A)に示すように処理装置を減圧用のタンクTとして、当該タンクTの中に、反応装置Gを配設することにて実施することが可能である。
この場合、タンクT内を真空或いは真空に近い状態に減圧することにて、反応装置Gにて生成された被処理物をタンクT内に霧状に噴射せしめ、タンクTの内壁にぶつかって流れ落ちる被処理物を回収すること、或いはこのような流れ落ちる被処理物に対して気体(蒸気)として分離されタンクT内上部に充満するものを回収することにて、処理後の目的物を得ることができる。
また、減圧ポンプQを用いる場合も、図24(B)へ示すように、処理装置Gに、減圧ポンプQを介して、気密なタンクTを接続することにより、当該タンクT内にて、処理後の被処理物を霧状にして、目的物の分離・抽出を行うことができる。
更に、図24(C)へ示すように、減圧ポンプQを直接タンクTに接続し、当該タンクTに、減圧ポンプQと、減圧ポンプQとは別の流体Rの排出部とを接続して、目的物の分離を行うことができる。この場合、気化部については、減圧ポンプQに吸いよせられ、液体R(液状部)は排出部より、気化部とは別に排出される。
【0096】
上述してきた各実施の形態では、第1及び第2の2つの被処理流動体を、夫々第2ホルダ21,121及び第2リング20,102から、導入して、混合し反応させるものを示した。
次に、装置への被処理流動体の導入に関する他の実施の形態について、順に説明する。
【0097】
図1(B)へ示す通り、図1(A)へ示す処理装置に、第3導入部d3を設けて第3の被処理流動体を、両処理用面1,2間へ導入して、第2被処理流動体と同様第1被処理流動体へ混合し反応させるものとしても実施できる。
第3導入部d3は、第1の被処理流動体と、混合させる第3の流動体を処理用面1,2へ供給する。この実施の形態において、第3導入部d3は、第2リング20の内部に設けられた流体の通路であり、その一端が、第2処理用面2にて開口し、他の一端に、第3流体供給部p3が接続されている。
第3流体供給部p3には、コンプレッサ、その他のポンプを採用することができる。
第3導入部d3の第2処理用面2における開口部は、第2導入部d2の開口部よりも、第1処理用面1の回転の中心の外側に位置する。即ち、第2処理用面2において、第3導入部d3の開口部は、第2導入部d2の開口部よりも、下流側に位置する。第3導入部d3の開口部と第2導入部d2の開口部との間には、第2リング20の径の内外方向について、間隔が開けられている。
この図1(B)へ示す装置も、第3導入部d3以外の構成については、図1(A)へ示す実施の形態と同様である。尚、この図1(B)、更に、以下に説明する、図1(C)、図1(D)、図2〜図11において、図面の煩雑を避けるため、ケース3を省略する。尚、図9(B)(C)、図10、図11(A)(B)において、ケース3の一部は、描いてある。
【0098】
更に、図1(C)へ示すように、図1(B)へ示す処理装置に、第4導入部d4を設けて第4の被処理流動体を、両処理用面1,2間へ導入して、第2及び第3の被処理流動体と同様第1被処理流動体へ混合し反応させるものとしても実施できる。
第4導入部d4は、第1の被処理流動体と、混合させる第4の流動体を処理用面1,2へ供給する。この実施の形態において、第4導入部d4は、第2リング20の内部に設けられた流体の通路であり、その一端が、第2処理用面2にて開口し、他の一端に、第4流体供給部p4が接続されている。
第4流体供給部p4には、コンプレッサ、その他のポンプを採用することができる。
第4導入部d4の第2処理用面2における開口部は、第3導入部d3の開口部よりも、第1処理用面1の回転の中心の外側に位置する。即ち、第2処理用面2において、第4導入部d4の開口部は、第3導入部d3の開口部よりも、下流側に位置する。
この図1(C)へ示す装置について、第4導入部d4以外の構成については、図1(B)へ示す実施の形態と同様である。
また、図示はしないが、更に、第5導入部や、第6導入部など、5つ以上の導入部を設けて、夫々5種以上の被処理流動体を、混合し反応させるものとしても実施できる。
【0099】
また、図1(D)へ示す通り、図1(A)の装置では、第2ホルダ21に設けられていた第1導入部d1を、第2ホルダ21に設ける代わりに、第2導入部d2同様、第2処理用面2に設けて実施することができる。この場合、第2処理用面2において、第1導入部d1の開口部は、第2導入部d2よりも、回転の中心側即ち上流側に位置する。
上記の図1(D)へ示す装置では、第2導入部d2の開口部と、第3導入部d3の開口部は、共に第2リング20の第2処理用面2に配置されるものであった。しかし、導入部の開口部は、このような処理用面に対する配置に限定するもではない。特に、図2(A)へ示す通り、第2導入部d2の開口部を、第2リング20の内周面の、第2処理用面2に隣接する位置に設けて実施することもできる。この図2(A)へ示す装置において、第3導入部d3の開口部は、図1(B)へ示す装置と同様第2処理用面2に配置されているが、第2導入部d2の開口部を、このように第2処理用面2の内側であって、第2処理用面2へ隣接する位置に配置することによって、第2の被処理流動体を処理用面に直ちに導入できる。
【0100】
このように第1導入部d1の開口部を第2ホルダ21に設け、第2導入部d2の開口部を第2処理用面2の内側であって、第2処理用面2へ隣接する位置に配置することで(この場合、上記第3導入部d3を設けることは必須ではない)、特に複数の被処理流動体を反応させる場合において、第1導入部d1から導入される被処理流動体と第2導入部d2から導入される被処理流動体とを反応させない状態で両処理用面1,2間へ導入し、両処理用面1,2間において両者を初めて反応させることができる。よって、上記構成は、特に反応性の高い被処理流動体を用いる場合に適している。
【0101】
なお、上記の「隣接」とは、第2導入部d2の開口部を、図2(A)に示すように第2リング20の内側側面に接するようにして設けた場合に限られるものではない。第2リング20から第2導入部d2の開口部までの距離が、複数の被処理流動体が両処理用面1,2間へ導入される前に混合・反応が完全になされない程度とされていれば良く、例えば、第2ホルダ21の第2リング20に近い位置に設けたものであっても良い。また、第2導入部d2の開口部を第1リング10あるいは第1ホルダ11の側に設けても良い。
【0102】
更に、上記の図1(B)へ示す装置において、第3導入部d3の開口部と第2導入部d2の開口部との間には、第2リング20の径の内外方向について、間隔が開けられていたが、図2(B)へ示す通り、そのような間隔を設けずに、両処理用面1,2間に第2及び第3の被処理流動体を導入されると直ちに両流動体が合流するものとしても実施できる。処理の対象によって、このような図2(B)へ示す装置を選択すればよい。
また、上記の図1(D)へ示す装置についても、第1導入部d1の開口部と第2導入部d2の開口部との間には、第2リング20の径の内外方向について、間隔が開けられていたが、そのような間隔を設けずに、両処理用面1,2間に第1及び第2の被処理流動体を導入すると直ちに両流動体が合流するものとしても実施できる。処理の対象によって、このような開口部の配置を選択すればよい。
上記の図1(B)及び図1(C)に示す実施の形態では、第2処理用面2において、第3導入部d3の開口部を、第2導入部d2の開口部の下流側、言い換えると、第2リング20の径の内外方向について第2導入部d2の開口部の外側に配置するものとした。この他、図2(C)及び図3(A)へ示す通り、第2処理用面2において、第3導入部d3の開口部を、第2導入部d2の開口部と、第2リング20の周方向r0について異なる位置に配置するものとしても実施できる。図3において、m1は第1導入部d1の開口部即ち第1開口部を、m2は第2導入部d2の開口部即ち第2開口部を、m3は第3導入部d3の開口部即ち第3開口部を、r1はリングの径の内外方向を、夫々、示している。
また、第1導入部d1を、第2リング20に設ける場合も、図2(D)へ示す通り、第2処理用面2において、第1導入部d1の開口部を、第2導入部d2の開口部と、第2リング20の周方向について異なる位置に配置するものとしても実施できる。
【0103】
上記の図2(C)へ示す装置では、第2リング20の処理用面2において、周方向r0の異なる位置に2つの導入部の開口部が配置されたものを示したが、図3(B)へ示す通り、リングの周方向r0の異なる位置に3つの導入部の開口部を配置し、或いは図3(C)へ示す通り、リングの周方向r0の異なる位置に4つの導入部の開口部を配置して実施することもできる。尚、図3(B)(C)において、m4は、第4導入部の開口部を示し、図3(C)においてm5は第5導入部の開口部を示している。また、図示はしないが、導入部の開口部を、リングの周方向r0の異なる位置に5つ以上設けて実施することもできる。
上記の図2(B)(D)、及び、図3(A)〜(C)に示す装置において、第2導入部乃至第5導入部は、夫々異なる被処理流動体即ち、第2、第3、第4、第5の被処理流動体を、導入することができる。一方、第2〜第5の開口部m2〜m5から、全て同種の即ち、第2被処理流動体を処理用面間に導入するものとしても実施できる。図示はしないが、この場合、第2導入部乃至第5導入部は、リング内部にて連絡しており、一つの流体供給部、即ち第2流体供給部p2に接続されているものとして実施できる。
また、リングの周方向r0の異なる位置に導入部の開口部を複数設けたものと、リングの径方向即ち径の内外方向r1の異なる位置に導入部の開口部を複数設けたものを、複合して実施することもできる。
例えば、図3(D)へ示す通り、第2処理用面2に8つの導入部の開口部m2〜m9が設けられており、そのうち4つm2〜m5は、リングの周方向r0の異なる位置であり且つ径方向r1について同じ位置に設けられたものであり、他の4つm6〜m9はリングの周方向r0の異なる位置であり且つ径方向r1について同じ位置に設けられている。そして、当該他の開口部m5〜m8は、径方向r1について、上記4つの開口部m6〜m9の径方向の外側に配置されている。また、この外側の開口部は、夫々、内側の開口部と、リングの周方向r0について、同じ位置に設けてもよいが、リングの回転を考慮して、図3(D)へ示すように、リングの周方向r0の異なる位置に設けて実施することもできる。また、その場合も、開口部について、図3(D)に示す配置や数に限定するものではない。
例えば、図3(E)へ示す通り、径方向外側の開口部が多角形の頂点位置、即ちこの場合四角形の頂点位置に配置され、当該多角形の辺上に、径方向内側の開口部が位置するように配置することもできる。勿論この他の配置を採ることもできる。
また、第1開口部m1以外の開口部は、何れも第2被処理流動体を処理用面間に導入するものとした場合、各第2被処理流動体を導入する当該開口部を、処理用面の周方向r0について、点在させるのではなく、図3(F)へ示す通り、周方向r0について、連続する開口部として実施することもできる。
【0104】
尚、処理の対象によっては、図4(A)へ示す通り、図1(A)に示す装置において、第2リング20に設けていた第2導入部d2を、第1導入部d1と同様、第2ホルダ21の中央部分22へ設け実施することもできる。この場合、第2リング20の中心に位置する第1導入部d1の開口部に対し、その外側に、間隔を開けて、第2導入部d2の開口部が位置する。また、図4(B)へ示す通り、図4(A)へ示す装置について、第2リング20に第3導入部d3を設けて実施することもできる。図4(C)へ示す通り、図4(A)へ示す装置において、第1導入部d1の開口部と第2導入部d2の開口部との間に間隔を設けず、第2リング20の内側の空間へ第1及び第2の被処理流動体を導入されると直ちに両流動体が合流するものとしても実施できる。更にまた、処理の対象によっては、図4(D)へ示す通り、図4(A)へ示す装置において、第2導入部d2同様、第3導入部d3も第2ホルダ21に設けて実施することができる。図示はしないが、4つ以上の導入部を第2ホルダ21に設けて実施することもできる。
また、処理の対象によっては、図5(A)へ示す通り、図4(D)へ示す装置において、第2リング20に第4導入部d4を設けて第4の被処理流動体を両処理用面1,2間へ導入するものとしても実施できる。
【0105】
図5(B)へ示す通り、図1(A)へ示す装置において、第2導入部d2を、第1リング10へ設け、第1処理用面1に第2導入部d2の開口部を備えるものとしても実施できる。
図5(C)へ示す通り、図5(B)へ示す装置において、第1リング10に第3導入部d3を設けて、第1処理用面1において、第3導入部d3の開口部を、第2導入部d2の開口部と、第1リング10の周方向について異なる位置に配置するものとしても実施できる。
図5(D)へ示す通り、図5(B)へ示す装置において、第2ホルダ21へ第1導入部d1を設ける代わりに、第2リング20へ第1導入部d1を設け、第2処理用面2に、第1導入部d1の開口部を配置するものとしても実施できる。この場合、第1及び第2の導入部d1,d2の両開口部は、リングの径の内外方向について、同じ位置に配置されている。
【0106】
また、図6(A)へ示す通り、図1(A)へ示す装置において、第3導入部d3を、第1リング10へ設け、第1処理用面1へ第3導入部d3の開口部を配置するものとしても実施できる。この場合、第2及び第3の導入部d2,d3の両開口部は、リングの径の内外方向について、同じ位置に配置されている。但し、上記の両開口部を、リングの径の内外方向について、異なる位置に配置するものとしてもよい。
図5(C)へ示す装置において、第2及び第3導入部d2,d3の両開口部を第1リング10の径の内外方向について同じ位置に設けると共に、第1リング10の周方向即ち回転方向について異なる位置に設けたが、当該装置において、図6(B)へ示す通り、第2及び第3導入部d2,d3の両開口部を、第1リング10の径の内外方向について異なる位置に設けて実施することができる。この場合図6(B)へ示す通り、第2及び第3導入部d2,d3の両開口部の間には、第1リング10の径の内外方向に間隔を開けておくものとしても実施でき、または図示はしないが、当該間隔を開けずに直ちに、第2被処理流動体と第3被処理流動体とが合流するものとしても実施できる。
また、図6(C)へ示す通り、第2ホルダ21へ第1導入部d1を設ける代わりに、第2導入部d2と共に、第1リング10へ第1導入部d1を設けて実施することもできる。この場合、第1処理用面1において、第1導入部d1の開口部を、第2導入部d2の開口部の、上流側(第1リング10の径の内外方向について内側)に設ける。第1導入部d1の開口部と第2導入部d2の開口部との間には、第1リング10の径の内外方向について、間隔を開けておく。但し図示はしないが、このような間隔を開けずに実施することもできる。
また、図6(D)へ示す通り、図6(C)へ示す装置の第1処理用面1にあって、第1リング10の周方向の異なる位置に、第1導入部d1と第2導入部d2夫々の開口部を配置するものとして実施することができる。
また、図示はしないが、図6(C)(D)へ示す実施の形態において、第1リング10へ3つ以上の導入部を設けて、第2処理用面2において、周方向の異なる位置に、或いは、リングの径の内外方向の異なる位置に、各開口部を配置するものとして実施することもできる。例えば、第2処理用面2において採った、図3(B)〜図3(F)に示す開口部の配置を第1処理用面1においても採用することができる。
【0107】
図7(A)へ示す通り、図1(A)へ示す装置において、第2導入部d2を第2リング20へ設ける代わりに、第1ホルダ11へ設けて実施することができる。この場合、第1ホルダ11上面の第1リング10に囲まれた部位において、第1リング10の回転の中心軸の中心に第2導入部d2の開口部を配置するのが好ましい。
図7(B)へ示す通り、図7(A)へ示す実施の形態において、第3導入部d3を、第2リング20へ設けて、第3導入部d3の開口部を第2処理用面2へ配置することができる。
また、図7(C)へ示す通り、第1導入部d1を第2ホルダ21へ設ける代わりに、第1ホルダ11へ設けて実施することができる。この場合、第1ホルダ11上面の第1リング10に囲まれた部位において、第1リング10の回転の中心軸に第1導入部d1の開口部を配置するのが好ましい。また、この場合、図示の通り、第2導入部d2を第1リング10へ設けて、第1処理用面1へ、その開口部を配置することができる。また、図示はしないが、この場合、第2導入部d2を第2リング20へ設けて、第2処理用面2へ、その開口部を配置することができる。
更に、図7(D)へ示す通り、図7(C)へ示す第2導入部d2を、第1導入部d1と共に、第1ホルダ11へ設けて実施することもできる。この場合、第1ホルダ11上面の第1リング10に囲まれた部位において、第2導入部d2の開口部を配置する。また、この場合、図7(C)において、第2リング20へ設けた第2導入部d2を、第3導入部d3とすればよい。
【0108】
上記の図1〜図7に示す各実施の形態において、第1ホルダ11及び第1リング10が、第2ホルダ21及び第2リング20に対して回転するものとした。この他、図8(A)へ示す通り、図1(A)へ示す装置において、第2ホルダ21に、回転駆動部から回転力を受けて回転する回転軸51を設けて、第1ホルダ11の逆方向に、第2ホルダ21を回転させるものとしても実施できる。回転駆動部は、第1ホルダ11の回転軸50を回転させるものと別に設けるものとしてもよく、或いはギアなどの動力伝達手段により、第1ホルダ11の回転軸50を回転させる駆動部から、動力を受けるものとしても実施できる。この場合、第2ホルダ21は、前述のケースと別体に形成されて、第1ホルダ11と同様、当該ケース内に回転可能に収容されたものとする。
また、図8(B)へ示す通り、図8(A)に示す装置において、第2リング20に第2導入部d2を設ける代わりに、図7(B)の装置と同様に第1ホルダ11に第2導入部d2を設けて実施することができる。
また、図示はしないが、図8(B)へ示す装置において、第2導入部d2を、第1ホルダ11に代え第2ホルダ21へ設けて実施することもできる。この場合、第2導入部d2は、図4(A)の装置と同様である。図8(C)へ示す通り、図8(B)へ示す装置において、第2リング20に第3導入部d3を設けて、当該導入部d3の開口部を、第2処理用面2に配置して実施することもできる。
更に、図8(D)へ示す通り、第1ホルダ11を回転させずに、第2ホルダ21のみを回転させるものとしても実施できる。図示はしないが、図1(B)〜図7に示す装置においても、第1ホルダ11と共に第2ホルダ21を、或いは第2ホルダ21のみ単独で回転させるものとしても実施できる。
【0109】
図9(A)へ示すように、第2処理用部20は、リングとし、第1処理用部10を、リングでなく、他の実施の形態の第1ホルダ11と同様の、直接回転軸50を備えて回転する部材とすることができる。この場合、第1処理用部10の上面を、第1処理用面1とし、当該処理用面は、環状でなく、即ち中空部分を備えない、一様に平らな面とする。また、この図9(A)に示す装置において、図1(A)の装置と同様、第2導入部d2を、第2リング20に設け、その開口部を第2処理用面2に配置している。
【0110】
図9(B)へ示す通り、図9(A)へ示す装置において、第2ホルダ21を、ケース3と独立したものとし、ケース3と当該第2ホルダ21との間に、第2リング20が設けられた第1処理用部10へ接近・離反させる弾性体などの接面圧付与機構4を設けて実施することもできる。この場合、図9(C)へ示すように、第2処理用部20をリングとするのではなく、上記の第2ホルダ21に相当する部材とし、当該部材の下面を第2処理用面2として形成することができる。更に、図10(A)へ示す通り、図9(C)へ示す装置において、第1処理用部10もリングとするのではなく、図9(A)(B)へ示す装置と同様他の実施の形態において第1ホルダ11に相当する部位を第1処理用部10とし、その上面を第1処理用面1として実施することができる。
【0111】
上記の各実施の形態において、少なくとも第1の被処理流動体は、第1処理用部10と第2処理用部20即ち、第1リング10と第2リング20の中心部から供給され、他の被処理流動体による処理、即ち混合及び反応後、その径の内外方向について外側へ排出されるものとした。
この他、図10(B)へ示す通り、第1リング10及び第2リング20の外側から、内側に向けて、第1の被処理流動体を供給するものとしても実施できる。この場合、図示の通り、第1ホルダ11及び第2ホルダ21の外側をケース3にて密閉し、第1導入部d1を当該ケース3に直接設けて、ケースの内側であって、両リング10,20の突合せ位置と対応する部位に、当該導入部の開口部を配置する。そして、図1(A)の装置において第1導入部d1が設けられていた位置、即ち第1ホルダ11におけるリング1の中心となる位置に、排出部36を設ける。また、ホルダの回転の中心軸を挟んで、ケースの当該開口部の反対側に、第2導入部d2の開口部を配置する。但し、第2導入部d2の開口部は、第1導入部d1の開口部と同様、ケースの内側であって、両リング10,20の突合せ位置と対応する部位に配置するものであればよく、上記のように、第1導入部d1の開口部の反対側に形成するのに限定するものではない。
処理後の生成物の排出部36を設けておく。この場合、両リング10,20の径の外側が、上流となり、両リング10,20の内側が下流側となる。
図10(C)に示す通り、図10(B)へ示す装置において、ケース3の側部に設けた第2導入部d2を、当該位置に代え、第1リング10に設けて、その開口部を第1処理用面1に配置するものとしても実施できる。この場合において、図10(D)に示す通り、第1処理用部10をリングとして形成するのでなく、図9(A)、図9(B)や図10(A)に示す装置と同様、他の実施の形態において、第1ホルダ11に相当する部位を、第1処理用部10とし、その上面を第1処理用面1とし、更に、当該第1処理用部10内に第2導入部d2を設けて、その開口部を第1処理用面1に配置するものとして実施できる。
【0112】
図11(A)へ示す通り、図10(D)へ示す装置において、第2処理用部20もリングとして形成するのではなく、他の実施の形態において第2ホルダ21に相当する部材を、第2処理用部20とし、その下面を第2処理用面2として実施することができる。そして、第2処理用部20を、ケース3と独立した部材とし、ケース3と第2処理用部20との間に、図9(B)(C)、図10(A)に示す装置と同じ接面圧付与機構4を設けて実施することができる。
また、図11(B)へ示す通り、図11(A)に示す装置の第2導入部d2を第3導入部d3とし、別途第2導入部d2を設けるものとしても実施できる。この場合、第2処理用面2において第2導入部d2の開口部を第3導入部d3の開口部よりも下流側に配置する。
前述の図4に示す各装置、図5(A)図7(A)(B)(D)、図8(B)(C)に示す装置は、処理用面1,2間に達する前に、第1の被処理流動体に対して、他の被処理流動体が合流するものであり、晶出や析出の反応の速いものには適さない。しかし、反応速度の遅いものについては、このような装置を採用することもできる。
【0113】
本願発明に係る方法の発明の実施に適した処理装置について、以下に纏めておく。
前述の通り、この処理装置は、被処理流動体に所定の圧力を付与する流体圧付与機構と、この所定圧力の被処理流動体が流される密封された流体流路に設けられた第1処理用部10と第1処理用部10に対して相対的に接近離反可能な第2処理用部20の少なくとも2つの処理用部と、これらの処理用部10,20において互いに対向する位置に設けられた第1処理用面1及び第2処理用面2の少なくとも2つの処理用面と、第1処理用部10と第2処理用部20とを相対的に回転させる回転駆動機構とを備え、両処理用面1,2間にて、少なくとも2種の被処理流動体の混合・反応の処理を行うものである。第1処理用部10と第2処理用部20のうち少なくとも第2処理用部20は、受圧面を備えるものであり、且つ、この受圧面の少なくとも一部が第2処理用面2により構成され、受圧面は、流体圧付与機構が被処理流動体の少なくとも一方に付与する圧力を受けて第1処理用面1から第2処理用面2を離反させる方向に移動させる力を発生させる。そして、この装置にあって、接近離反可能且つ相対的に回転する第1処理用面1と第2処理用面2との間に上記の圧力を受けた被処理流動体が通されることにより、各被処理流動体が所定膜厚の薄膜流体を形成しながら両処理用面1,2間を通過することで、当該被処理流動体間において、所望の反応が生じる。
【0114】
また、この処理装置において、第1処理用面1及び第2処理用面2の少なくとも一方の、微振動やアライメントを調整する緩衝機構を備えたものを採用するのが好ましい。
【0115】
また、この処理装置において、第1処理用面1及び第2処理用面2 の一方又は双方の、磨耗などによる軸方向の変位を調整して、両処理用面1,2間の薄膜流体の膜厚を維持することを可能とする変位調整機構を備えたものを採用するのが好ましい。
【0116】
更に、この処理装置にあっては、上記の流体圧付与機構として、被処理流動体に対して一定の送り込み圧を掛けるコンプレッサなどの加圧装置を採用することができる。
尚、上記の加圧装置は、送り込み圧の増減の調整を行えるものを採用する。この加圧装置は、設定した圧力を一定に保つことができる必要があるが、処理用面間の間隔を調整するパラメータとして、調整を行える必要があるからである。
【0117】
また、この処理装置には、上記の第1処理用面1と第2処理用面2との間の最大間隔を規定し、それ以上の両処理用面1,2の離反を抑止する離反抑止部を備えるものを採用することができる。
【0118】
更にまた、この処理装置には、上記の第1処理用面1と第2処理用面2との間の最小間隔を規定し、それ以上の両処理用面1,2の近接を抑止する近接抑止部を備えたものを採用することができる。
【0119】
更に、この処理装置には、第1処理用面1と第2処理用面2の双方が、互いに逆の方向に回転するものを採用することができる。
【0120】
また、この処理装置には、上記第1処理用面1と第2処理用面2の一方或いは双方の温度を調整する、温度調整用のジャケットを備えたものを採用することができる。
【0121】
また更に、この処理装置には、上記第1処理用面1及び第2処理用面2の一方或いは双方の少なくとも一部は、鏡面加工されたものを採用するのが好ましい。
【0122】
この処理装置には、上記第1処理用面1及び第2処理用面2の一方或いは双方は、凹部を備えたものを採用することができる。
【0123】
更に、この処理装置には、一方の被処理流動体に反応させる他方の被処理流動体の供給手段として、一方の被処理流動体の通路とは独立した別途の導入路を備え、上記第1処理用面と第2処理用面の少なくとも何れ一方に、上記の別途の導入路に通じる開口部を備え、当該別途の導入路から送られてきた他方の被処理流動体を、上記一方の被処理流動体に導入することができるものを採用するのが好ましい。
【0124】
また、本願発明を実施する処理装置として、被処理流動体に所定の圧力を付与する流体圧付与機構と、この所定圧力の被処理流動体が流される密封された流体流路に接続された第1処理用面1及び第2処理用面2の少なくとも2つの相対的に接近離反可能な処理用面と、両処理用面1,2間に接面圧力を付与する接面圧力付与機構と、第1処理用面1と第2処理用面2とを相対的に回転させる回転駆動機構と、を備えることにより、両処理用面1,2 間にて、少なくとも2種の被処理流動体の反応処理を行うものであって、接面圧力が付与されつつ相対的に回転する第1処理用面1と第2処理用面2との間に、流体圧付与機構から圧力を付与された少なくとも一種の被処理流動体が通され、更に、他の一種の被処理流動体が通されることにより、流体圧付与機構から圧力を付与された上記一種の被処理流動体が所定膜厚の薄膜流体を形成しながら両処理用面1,2間を通過する際に、当該他の一種の被処理流動体が混合され、被処理流動体間にて、所望の反応を生じさせるものを採用することができる。
この接面圧付与機構が、前述の装置における、微振動やアライメントを調整する緩衝機構や、変位調整機構を構成するものとして実施することができる。
【0125】
更に、本願発明を実施する処理装置として、反応させる2種の被処理流動体のうち少なくとも一方の被処理流動体を当該装置に導入する第1導入部と、第1導入部に接続されて当該一方の被処理流動体に圧力を付与する流体圧付与機構pと、反応させる2種の被処理流動体のうち少なくとも他の一方を当該装置に導入する第2導入部と、当該一方の被処理流動体が流される密封された流体流路に設けられた第1処理用部10と第1処理用部10に対して相対的に接近離反可能な第2処理用部20の少なくとも2つの処理用部と、これらの処理用部10,20において互いに対向する位置に設けられた第1処理用面1及び第2処理用面2の少なくとも2つの処理用面と、第2処理用面2が露出するように第2処理用部20を受容するホルダ21と、第1処理用部10と第2処理用部20とを相対的に回転させる回転駆動機構と、第1処理用面1に対して第2処理用面2を圧接又は近接した状態に第2処理用部20を押圧する接面圧付与機構4とを備え、両処理用面1,2間にて、被処理流動体間の反応処理を行い、上記ホルダ21が、上記第1導入部の開口部を備えると共に、処理用面1,2間の隙間に影響を与えるようには可動でないものであり、第1処理用部10と第2導入部20の少なくとも一方が、上記第2導入部の開口部を備え、第2処理用部20が、環状体であり、第2処理用面2がホルダ21に対して摺動して第1処理用面1に接近離反するものであり、第2処理用部20が受圧面を備え、受圧面は、流体圧付与機構pが被処理流動体に付与する圧力を受けて第1処理用面1 から第2処理用面2を離反させる方向に移動させる力を発生させ、上記受圧面の少なくとも一部は、第2処理用面2にて構成され、接近離反可能且つ相対的に回転する第1処理用面1と第2処理用面2との間に圧力が付与された一方の被処理流動体が通されると共に、他の一方の被処理流動体が、両処理用面1,2間に供給されることにより、両被処理流動体が所定膜厚の薄膜流体を形成しながら両処理用面1,2間を通過し、通過中の被処理流動体が混合させることで、被処理流動体間における、所望の反応を促進させるものであり、接面圧力付与機構4の接面圧力と、流体圧付与機構pが付与する流体圧力の両処理用面1,2間を離反させる力との均衡によって、上記の所定膜厚の薄膜流体を発生させる微小間隔を両処理用面1,2間に保つものを採用することができる。
【0126】
この処理装置において、第2導入部も、第1導入部に接続されたのと同様の、別途の流体圧付与機構に接続されて、加圧されるものとしても実施できる。また、第2導入部から導入される被処理流動体は、別途の流体圧付与機構にて加圧されるのではなく、第1導入部にて導入される被処理流動体の流体圧にて第2導入部内に生じる負圧により、両処理用面1,2間に吸引されて供給されるものとしても実施できる。更に、当該他方の被処理流動体は、第2導入部内を、自重にて移動即ち上方より下方に流れて、処理用面1,2間に供給されるものとしても実施できる。
上記のように、一方の被処理流動体の装置内への供給口となる第1導入部の開口部を第2ホルダに設けるものに限定するものではなく、第1導入部の当該開口部を第1ホルダに設けるものとしてもよい。また、第1導入部の当該開口部を、両処理用面の少なくとも一方に形成して実施することもできる。但し、反応によって、先に処理用面1,2間に導入しておく必要のある被処理流動体を、第1導入部から供給する必要がある場合において、他方の被処理流動体の装置内への供給口となる第2導入部の開口部は、何れかの処理用面において、上記第1導入部の開口部よりも、下流側に配置する必要がある。
【0127】
更に、本願発明の実施に用いる処理装置として、次のものを採用することができる。
この処理装置は、反応させる2種以上の被処理流動体を別々に導入する複数の導入部と、当該2種以上の被処理流動体の少なくとも一つに圧力を付与する流体圧付与機構pと、この被処理流動体が流される密封された流体流路に設けられた第1処理用部10と第1処理用部10に対して相対的に接近離反可能な第2処理用部20の少なくとも2つの処理用部と、これらの処理用部10,20において互いに対向する位置に設けられた第1処理用面1及び第2処理用面2の少なくとも2つの処理用面1,2と、第1処理用部10と第2処理用部20とを相対的に回転させる回転駆動機構とを備え、両処理用面1,2間にて、被処理流動体間の反応処理を行うものであって、第1処理用部10と第2処理用部20のうち少なくとも第2処理用部20は、受圧面を備えるものであり、且つ、この受圧面の少なくとも一部が第2処理用面2により構成され、受圧面は、流体圧付与機構が被処理流動体に付与する圧力を受けて第1処理用面1から第2処理用面2を離反させる方向に移動させる力を発生させ、更に、第2処理用部20は、第2処理用面2と反対側を向く近接用調整面24を備えるものであり、近接用調整面24は、被処理流動体に掛けた所定の圧力を受けて第1処理用面1に第2処理用面2を接近させる方向に移動させる力を発生させ、上記近接用調整面24の接近離反方向の投影面積と、上記受圧面の接近離反方向の投影面積との面積比により、被処理流動体から受ける全圧力の合力として、第1処理用面1に対する第2処理用面2の離反方向へ移動する力が決まるものであり、接近離反可能且つ相対的に回転する第1処理用面1と第2処理用面2との間に圧力が付与された被処理流動体が通され、当該被処理流動体に反応させる他の被処理流動体が両処理用面間において混合され、混合された被処理流動体が所定膜厚の薄膜流体を形成しながら両処理用面1,2間を通過することで、処理用面間の通過中に所望の反応生成物を得るものである。
【0128】
また、本願発明に係る処理方法について纏めると、この処理方法は、第1の被処理流動体に所定の圧力を付与し、この所定の圧力を受けた被処理流動体が流される密封された流体流路へ、第1処理用面1及び第2処理用面2の少なくとも2つの相対的に接近離反可能な処理用面を接続し、両処理用面1,2を接近させる接面圧力を付与し、第1処理用面1と第2処理用面2とを相対的に回転させ且つこれらの処理用面1,2間に被処理流動体を導入するものであり、当該被処理流動体と反応する第2の被処理流動体を上記と別途の流路により、上記処理用面1,2間に導入し、両被処理流動体を反応させるものであり、少なくとも第1の被処理流動体に付与した上記の所定の圧力を両処理用面1,2を離反させる離反力とし、当該離反力と上記接面圧力とを、処理用面1,2間の被処理流動体を介して均衡させることにより、両処理用面1,2間を所定の微小間隔に維持し、被処理流動体を所定の厚みの薄膜流体として両処理用面1,2間を通過させて、この通過中に両被処理流動体の反応を均一に行い、析出を伴う反応の場合にあっては所望の反応生成物を晶出または析出させるものである。
【0129】
以下、本願発明のその他の実施形態について説明する。図25は接近・離反可能な少なくとも一方が他方に対して相対的に回転する処理用面の間で反応物を反応させる反応装置の略断面図である。図26の(A)は図25に示す装置の第1処理用面の略平面図であり、(B)は図25に示す装置の処理用面の要部拡大図である。図27の(A)は第2導入路の断面図であり、(B)は第2導入路を説明するための処理用面の要部拡大図である。
図25においてUは上方を、Sは下方をそれぞれ示している。
図26(A)、図27(B)においてRは回転方向を示している。
図27(B)においてCは遠心力方向(半径方向)を示している。
【0130】
この装置は、少なくとも2種類の流体を用いるものであり、そのうちで少なくとも1種類の流体については反応物を少なくとも1種類含むものであり、接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面の間で上記の各流体を合流させて薄膜流体とするものであり、当該薄膜流体中において上記の反応物を反応させる装置である。
【0131】
図25に示す通り、この装置は、第1ホルダ11と第1ホルダ11の上方に配置された第2ホルダ21と共に流体圧付与機構Pと接面圧付与機構とを備える。接面圧力付与機構は、スプリング43と、エア導入部44とにて構成されている。
第1ホルダ11には第1処理用部10と回転軸50が設けられている。第1処理用部10はメインティングリングと呼ばれる環状体であり鏡面加工された第1処理用面1を備える。回転軸50は第1ホルダ11の中心にボルトなどの固定具81にて固定されたものであり、その後端が電動機などの回転駆動装置82(回転駆動機構)と接続され、回転駆動装置82の駆動力を第1ホルダ1に伝えて当該第1ホルダ11を回転させる。第1処理用部10は上記第1ホルダ11と一体となって回転する。
【0132】
第1ホルダ11の上部には、第1処理用部10を受容する事が可能な受容部が設けられており、当該受容部内にはめ込む事にて、第1ホルダ11への第1処理用部10の上記取り付けが行われている。さらに第1処理用部10は回り止めピン83にて第1ホルダ11に対して回転しないように固定されている。ただし、回り止めピン83に代え、焼き嵌めなどの方法にて回転しないように固定するものとしても良い。
上記の第1処理用面1は、第1ホルダ11から露出して、第2ホルダ21を臨む。第1処理用面の材質は、セラミックや焼結金属、対磨耗鋼、その他金属に硬化処理を施したものや、硬質材をライニングやコーティング、鍍金などを施工したものを採用する。
【0133】
第2ホルダ21には、第2処理用部20と、処理用部内側より流体が導入する第1導入部d1と、接面圧力付与機構としてスプリング43と、エア導入部44とが設けられている。
【0134】
第2処理用部20は、コンプレッションリングと呼ばれる環状体であり、鏡面加工された第2処理用面2と、第2処理用面2の内側に位置して当該第2処理用面2に隣接する受圧面23(以下離反用調整面23と呼ぶ。)とを備える。図示の通り、この離反用調整面23は、傾斜面である。第2処理用面2に施す鏡面加工は、第1処理用面1と同様の方法を採用する。また、第2処理用部20の素材についても、第1処理用部10と同様のものを採用する。離反用調整面23は、環状の第2処理用部20の内周面25と隣接する。
【0135】
第2ホルダ21の底部(下部)には、リング収容部41が形成され、そのリング収容部41内に、Oリングと共に第2処理用部20が受容されている。また、回り止め84にて、第2処理用部20は、第2ホルダ21に対して回転しないよう、受容されている。上記の第2処理用面2は、第2ホルダ21から露出する。この状態において、第2処理用面2は、第1処理用部10の第1処理用面1と対面する。
この第2ホルダ21が備えるリング収容部41は、第2リング20の、主として処理用面2側と反対側の部位を収容する凹部であり、平面視において、環状に形成された、溝である。
リング収容部41は、第2リング20の寸法より大きく形成され、第2リング20との間に十分なクリアランスを持って、第2リング20を収容する。
【0136】
このクリアランスにより、当該第2処理用部20はこのリング収容部41内にて収容部41の軸方向について、さらに、当該軸方向と交差する方向について変位する事ができるように収容されている。またリング収容部41に対して第2処理用部20の中心線(軸方向)を上記リング収容部41の軸方向と平行ではなくなるように変位可能に当該第2処理用部20は収容されている。
少なくとも第2ホルダ21のリング収容部41には処理用部付勢部としてスプリング43が設けられている。スプリング43は第2処理用部20を第1処理用部10に向けて付勢する。さらに他の付勢方法として、空気導入部44などの空気圧またはその他の流体圧を供給する加圧手段を用いて第2ホルダ21が保持する第2処理用部20を第1処理用部10へ近づける方向に付勢する方法でもよい。
スプリング43及び空気導入部44などの接面圧付与機構は第2処理用部20の周方向の各位置(処理用面の各位置)を均等に、第1処理用部10へ向けて付勢する。
この第2ホルダ21の中央に上記の第1導入部d1が設けられ、第1導入部d1から処理用部外周側へ圧送されてくる流体は、まず当該第2ホルダ21が保持する第2処理用部20と第1処理用部10と当該第1処理用部10を保持する第1ホルダ11とに囲まれた空間内に導かれる。そして第1処理用部10から第2処理用部20を付勢部の付勢に抗して離反させる方向に、第2処理用部20に設けられた受圧面23に流体圧付与機構Pによる上記流体の送圧(供給圧)を受ける。
なお、他の箇所においては説明を簡略にするため、受圧面23についてのみ説明をしているが、正確に言えば、図29(A)(B)に示すように、上記の受圧面23と共に、後述する溝状の凹部13の第2処理用部20に対する軸方向投影面のうちで、上記受圧面23が設けられていない部分23Xも受圧面として、流体圧付与機構Pによる上記流体の送圧(供給圧)を受ける。
【0137】
上記受圧面23を設けずに実施する事もできる。その場合、図26(A)に示されたように、接面圧力付与機構が機能するように形成された溝状の凹部13を備えた第1処理用面1が回転する事によって得られる処理用面間への被処理流動体の導入効果(マイクロポンプ効果)を用いても良い。ここでのマイクロポンプ効果とは第1処理用面1が回転する事で凹部内の流体が凹部の外周方向先端へと速度を持って進み、次に凹部13の先端に送り込まれた流体がさらに凹部13の内周方向からの圧力を受け、最終的に処理用面を離反させる方向への圧力となり、同時に流体が処理用面間に導入される効果である。さらに回転していない場合であっても第1処理用面1に設けられた凹部13内の流体が受けた圧力は最終的に離反側に作用する受圧面として第2処理用面2に作用する。
処理用面に設けられた凹部13については、反応物及び反応生成物を含む流体の物性に対応してその深さ、処理用面に対して水平方向への総面積、本数、及び形状を実施できる。
なお、上記受圧面23と上記凹部13とを一装置内に共に設けても実施できる。
【0138】
この凹部13は、深さについては1μm〜50μm、さらに好ましくは3μm〜20μmとし、前記処理用面に設けられた凹部であって、処理用面に対して水平方向への総面積が処理用面全体に対して5%〜50%、好ましくは15%〜25%とし、さらにその本数が3〜50本、好ましくは8〜24本とし、形状が処理用面上をカーブ、もしくは渦巻状で伸びるもの、またはL字状に屈曲するものとする。さらに深さに勾配を持たせる事で高粘度域から低粘度域まで、またマイクロポンプ効果を用いて導入する流体が固体を含む場合にも安定的に処理用面間に流体を導入できる。また、処理用面に設けられた凹部13は導入側つまり処理用面内側で各凹部同士がつながっていても良いし、分断されていても良い。
【0139】
上記のように受圧面23は傾斜面とされている。この傾斜面(受圧面23)は、被処理流動体の流れ方向を基準とした上流側端部での、凹部13が設けられた処理用部の処理用面に対する軸方向における距離が、下流側端部での同距離に比べて大きくなるように形成される。そしてこの傾斜面は、被処理流動体の流れ方向を基準とした下流側端部が上記凹部13の軸方向投影面上に設置されたものとすることが好ましい。
【0140】
具体的には図28(A)に示すように、上記傾斜面(受圧面23)の下流側端部60が上記凹部13の軸方向投影面上となるように設置する。上記傾斜面の第2処理用面2に対する角度θ1は0.1°から85°の範囲である事が好ましく、10°から55°の範囲がより好ましく、15°から45°の範囲がさらに好ましい。この角度θ1は、被処理物の処理前の性状によって適宜変更できる。また、上記傾斜面の下流側端部60は、第1処理用面1に設けられた凹部13の上流側端部13−bから下流側に0.01mm離れた位置より、下流側端部13−cから上流側に0.5mm離れた位置までの領域内に設けられる。より好ましくは、上流側端部13−bから下流側に0.05mm離れた位置より、下流側端部13−cから上流側に1.0mm離れた位置までの領域内に設けられる。上記傾斜面の角度と同様、この下流側端部60の位置についても、被処理物の性状に応じて適宜変更できる。また、図28(B)に示すように、傾斜面(受圧面23)をアール面としても実施できる。これにより、被処理物の導入をさらに均一に行うことができる。
【0141】
凹部13は上記のように連続したものの他、断続するものであっても実施可能である。断続する場合にあっては、断続する凹部13の、第1処理用面1の最も内周側における上流側端部が上記13−bとなり、同じく第1処理用面1の最も外周側における上流側端部が上記13−cとなる。
【0142】
また、上記では凹部13を第1処理用面1に形成するものとし、受圧面23を第2処理用面2に形成するものとしたが、逆に、凹部13を、第2処理用面2に形成するものとし、受圧面23を第1処理用面1に形成するものとしても実施可能である。
【0143】
更には、凹部13を第1処理用面1と第2処理用面2の両方に形成し、凹部13と受圧面23を各処理用面1,2の周方向に交互に設けることによって、第1処理用面1に形成した凹部13と第2処理用面2に形成した受圧面23とが対向し、同時に、第1処理用面1に形成した受圧面23と第2処理用面2に形成した凹部13とが対向するものとすることも可能である。
【0144】
処理用面に、凹部13とは異なる溝を施す事もできる。具体的な例としては図16(F)や図16(G)のように凹部13よりも径方向外側(図16(F))もしくは径方向内側(図16(G))に、放射状に伸びる新規な凹部14を施す事ができる。これは、処理用面間の滞留時間を延ばしたい場合や、高粘稠物の流体を処理する場合に有利である。
尚、凹部13とは異なる溝については、形状、面積、本数、深さに関しては特に限定されない。目的に応じて当該溝を施す事ができる。
【0145】
上記の第2処理用部20には上記処理用面に導入された流体の流路とは独立し、処理用面間に通じる開口部d20を備える第2導入部d2が形成されている。
具体的には、第2導入部d2は、図27(A)に示すように、上記の第2処理用面2の開口部d20からの導入方向が、第2処理用面2に対して所定の仰角(θ1)で傾斜している。この仰角(θ1)は、0度を超えて90度未満に設定されており、さらに反応速度が速い反応の場合には1度以上45度以下で設置されるのが好ましい。
また、図27(B)に示すように、上記の第2処理用面2の開口部d20からの導入方向が、上記の第2処理用面2に沿う平面において、方向性を有するものである。この第2流体の導入方向は、処理用面の半径方向の成分にあっては中心から遠ざかる外方向であって、且つ、回転する処理用面間における流体の回転方向に対しての成分にあっては順方向である。言い換えると、開口部d20を通る半径方向であって外方向の線分を基準線gとして、この基準線gから回転方向Rへの所定の角度(θ2)を有するものである。
この仰角(θ1)は、0度を超えて90度未満に設定されており、さらに反応速度が速い反応の場合には1度以上45度以下で設置されるのが好ましい。
また、角度(θ2)についても、0度を超えて90度未満に設定されており、図27(B)の網かけ部分に向けて開口部d20から吐出される。さらに反応速度が速い反応の場合には、当該角度(θ2)は小さいものであってもよく、反応速度が遅い場合には、当該角度(θ2)も大きく設定することが好ましい。また、この角度は、流体の種類、反応速度、粘度、処理用面の回転速度などの種々の条件に応じて、変更して実施することができる。
【0146】
開口部d20の口径は、好ましくは0.2μm〜3000μm、より好ましくは10μm〜1000μmとする。また、開口部d20の口径は比較的大きくとも、第2導入部d2の径が0.2μm〜3000μm、より好ましくは10μm〜1000μmとされており、実質的には、開口部d20の径が流体の流れに影響を及ばさない場合には、第2導入部d2の径が当該範囲内に設定されればよい。また、直進性を求める場合と、拡散性を求める場合とで、開口部d20の形状などを変化することも好ましく、これらは流体の種類、反応速度、粘度、処理用面の回転速度などの種々の条件に応じて、変更して実施することができる。
【0147】
さらに、前記別流路における開口部d20は、第1処理用面1に設けられた凹部からマイクロポンプ効果によって導入される際の流れ方向が処理用面間で形成されるスパイラル状で層流の流れ方向に変換される点よりも外径側に設置すればよい。つまり図26(B)において、第1処理用面1に設けられた凹部の最も処理用面径方向外側から径方向外側への距離nを0.5 mm以上とするのが好ましい。さらに開口部を同じ流体に対して複数個設ける場合には同心円上に設置するのが好ましい。また、開口部を異なる流体に対して複数個設ける場合には半径の異なる同心円上に設置するのが好ましい。(1) A+B→C (2) C+D→Eのような反応が順番どおり実行され、A+B+C→F のような本来同時反応すべきでは無い反応や反応物が効率よく接触せず、反応が実行されないというような問題を回避するのに効果的である。
また上記処理用部を流体中に浸し、上記処理用面間にて反応させて得られた流体を直接処理用部の外部にある液体、もしくは空気以外の気体に投入して実施できる。
さらに処理用面間もしくは処理用面から吐出された直後の被処理物に超音波エネルギーを付加する事もできる。
【0148】
次に、上記第1処理用面1と第2処理用面2との間、つまり処理用面間に温度差を生じさせるために、第1処理用部10及び第2処理用部20の少なくとも一つに温調機構(温度調整機構)J1,J2を設けた場合について説明する。
この温調機構は特に限定されないが、冷却が目的の場合には処理用部10,20に冷却部を設ける。具体的には、温調用媒体としての氷水や各種の冷媒を通す配管、あるいはペルチェ素子などの、電気的もしくは化学的に冷却作用をなすことのできる冷却素子を処理用部10,20に取り付ける。
加熱が目的の場合には処理用部10,20に加熱部を設ける。具体的には、温調用媒体としてのスチームや各種の温媒を通す配管、あるいは電気ヒーターなどの、電気的もしくは化学的に発熱作用をなすことのできる発熱素子を処理用部10,20に取り付ける。
また、リング収容部に処理用部と直接接する事の出来る新たな温調用媒体用の収容部を設けても良い。それらにより、処理用部の熱伝導を用いて処理用面を温調する事ができる。また、処理用部10,20の中に冷却素子や発熱素子を埋め込んで通電させたり、冷温媒通過用通路を埋め込んでその通路に温調用媒体(冷温媒)を通す事で、内側より処理用面を温調する事もできる。なお、図25に示した温調機構J1,J2は、その一例であって、各処理用部10,20の内部に設けられた温調用媒体を通す配管(ジャケット)である。
【0149】
上記温調機構J1,J2を利用して、一方の処理用面が他方の処理用面よりも温度が高いものとし、処理用面間に温度差を発生させる。例えば、第1処理用部10を上記いずれかの方法で60℃に加温し、第2処理用部20を上記いずれかの方法で15℃とする。この際、処理用面間に導入された流体の温度は第1処理用面1から第2処理用面2に向かって60℃から15℃に変化する。つまり、この処理用面間における流体に温度勾配が発生する。そして、処理用面間の流体はその温度勾配によって対流し始め、処理用面に対して垂直方向の流れが発生する事になる。なお、上記「垂直方向の流れ」とは、流れの方向成分に、少なくとも上記処理用面に対して垂直方向の成分が含まれるものを指す。
【0150】
第1処理用面1もしくは第2処理用面2が回転している場合にも、その処理用面に対して垂直方向の流れは継続されるので、処理用面が回転する事による処理用面間のスパイラル状で層流の流れに、垂直方向の流れを付加する事ができる。この処理用面間の温度差は1℃〜400℃、好ましくは5℃〜100℃で実施できる。
【0151】
尚、本装置における回転軸50は、鉛直に配置されたものに限定するものではない。例えば斜めに配置されていてもよい。処理中、両処理用面1,2間に形成される流体の薄膜により、実質的に重力の影響を排除できるからである。図25に示す通り、第1導入部d1は、第2ホルダ21において、第2リング20の軸心と一致し、上下に鉛直に伸びる。但し、第1導入部d1は、第2リング20の軸心と一致しているものに限定するものではなく、両リング10,20に囲まれた空間に、第1被処理流動体を供給できるものであれば、第2ホルダ21の中央部分22において、上記軸心以外の位置に設けられていてもよく、更に、鉛直でなく、斜めに伸びるものであってもよい。そのどの配置角度の場合であっても、処理用面間の温度勾配によって処理用面に対して垂直な流れを発生させる事を可能としている。
【0152】
上記処理用面間における流体の温度勾配において、その温度勾配が小さければ流体に熱伝導が行われるだけであるが、温度勾配がある臨界値を越えると、流体中にベナール対流という現象が発生する。その現象は、処理用面間の距離をL、重力の加速度をg、流体の体積熱膨張率をβ、流体の動粘性率をν、流体の温度伝導率をα、処理用面間の温度差をΔTとするとき、
Ra=L3・g・β・ΔT/(α・ν)
で定義される無次元数であるレイリー数Raによって支配される。ベナール対流が生じ始める臨界レイリー数は処理用面と被処理物流体との境界面の性質によって異なるが約1700とされている。それより大きな値ではベナール対流が発生する。さらに、そのレイリー数Raが1010付近より大きな値の条件となると流体は乱流状態となる。つまり、その処理用面間の温度差ΔTもしくは処理用面の距離Lを、レイリー数Raが1700以上になるようにして本装置を調節する事で、処理用面間に処理用面に対して垂直方向の流れを発生する事ができ、上記反応操作を実施できる。
【0153】
しかし上記ベナール対流は、1〜10μm程度の処理用面間の距離においては発生しにくい。厳密には10μm以下の間隔中の流体に上記レイリー数を適用し、ベナール対流発生条件を検討すると、水の場合でその温度差に数千℃以上を必要とする事になり、現実的には難しい。ベナール対流は流体の温度勾配における密度差による対流、つまり重力に関係する対流である。10μm以下の処理用面の間は微小重力場である可能性が高く、そのような場所では浮力対流は抑制される。つまり、この装置で現実的にベナール対流が発生するのは、処理用面間の距離が10μmを超える場合である。
【0154】
処理用面間の距離が1〜10μm程度では、密度差による対流ではなく、温度勾配による流体の表面張力差によって対流が発生している。そのような対流がマランゴニ対流であり、処理用面間の距離をL、流体の動粘性率をν、流体の温度伝導率をα、処理用面間の温度差をΔT、流体の密度をρ、表面張力の温度係数(表面張力の温度勾配)をσとするとき、
Ma=σ・ΔT・L/(ρ・ν・α)
で定義される無次元数であるマランゴニ数によって支配される。マランゴニ対流が発生し始める臨界マランゴニ数は80付近であり、その値よりも大きな値となる条件ではマランゴニ対流が発生する。つまり、その処理用面間の温度差ΔTもしくは処理用面の距離Lを、マランゴニ数Ma が80以上になるようにして本装置を調節する事で、10μm以下の微小流路であっても処理用面間に処理用面に対して垂直方向の流れを発生させる事ができ、上記反応操作を実施できる。
【0155】
レイリー数の計算には以下の式を用いた。
【数1】

L:処理用面間の距離[m], β:体積熱膨張率[1/K], g:重力加速度[m/s2]
ν:動粘性率[m2/s], α:温度伝導率[(m2/s)], ΔT:処理用面間の温度差[K]
ρ:密度[kg/m3], Cp:定圧比熱[J/kg・K], k:熱伝導率[W/m・K]
T1:処理用面における高温側の温度[K], T0:処理用面における低温側の温度[K]
【0156】
ベナール対流の発生し始めるときのレイリー数を臨界レイリー数RaCとした場合、そのときの温度差ΔTC1は以下のように求められる。
【数2】

【0157】
マランゴニ数の計算には以下の式を用いた。
【数3】

L:処理用面間の距離[m], ν:動粘性率[m2/s], α:温度伝導率[(m2/s)]
ΔT:処理用面間の温度差[K], ρ:密度[kg/m3], Cp:定圧比熱[J/kg・K]
k:熱伝導率[W/m・K], σ:表面張力温度係数[N/m・K]
T1:処理用面における高温側の温度[K], T0:処理用面における低温側の温度[K]
【0158】
マランゴニ対流の発生し始めるマランゴニ数を臨界マランゴニ数MaCとした場合、そのときの温度差ΔTC2は以下のように求められる。
【数4】

【0159】
接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面1,2の材質は、特に制限されないが、セラミックや焼結金属、耐磨耗鋼、その他金属もしくは、金属に硬化処理を施したものや、硬質材をライニングやコーティング、メッキなどにより施工したもの等で作成することが出来る。本発明での、接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面1,2間の距離は、0.1μm〜100μmであり、特に1〜10μmが好ましい。
【0160】
析出・沈殿または結晶化のような反応が、図1(A)に示すように、接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面1,2の間で強制的に均一混合しながら起こる。顔料ナノ粒子の粒子径や単分散度の制御、並びに結晶型の種類は処理用部10,20の回転数や流速及び処理用面間の距離や、原料濃度等を変えることにより、調節することができる。
【0161】
以下に、強制超薄膜回転式反応法を用いて顔料ナノ粒子が生成する反応をより詳細に説明する。
【0162】
(アシッドペースティング法)
強制超薄膜回転式反応法をアシッドペースティング法に用いる場合にはまず、一つの流路である第1導入部d1より、第1流体として水又はアルカリ性溶液を、接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面1,2間に導入して、この処理用面間に第1流体から構成された薄膜流体を形成する。
【0163】
次いで別流路である第2導入部d2より、第2流体として、反応物である顔料物質を溶解した酸を含む流体(顔料酸性溶液)を、上記第1流体から構成された薄膜流体に直接導入する。
【0164】
上記のように、流体の供給圧と回転する処理用面の間にかかる圧力との圧力バランスによって距離を固定された処理用面1,2間にて、第1流体と第2流体とが超薄膜状態を維持したまま、瞬間的に混合され、顔料粒子が生成する反応を行う事が出来る。
【0165】
なお、処理用面1,2間にて上記反応を行う事が出来れば良いので、上記とは逆に、第1導入部d1より第2流体を導入し、第2導入部d2より第1流体を導入するものであっても良い。つまり、各溶媒における第1、第2という表現は、複数存在する溶媒の第n番目であるという、識別のための意味合いを持つに過ぎないものであり、第3以上の溶媒も存在し得る。
【0166】
第1流体は前述どおり、水、又はアルカリ性溶液を含む溶液である。水としてはイオン交換水、純水、または蒸留水などの精製した水が好ましい。また、アルカリ性溶液としては、アンモニア水、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液などが例として挙げられる。
【0167】
第2流体に用いられる強酸としては、顔料に対する溶解性を示せば問題なく、特に限定されないが、例えば酸性水溶液の場合は硫酸、塩酸、硝酸、トリフルオロ酢酸を用いる事ができる。好ましくは強酸、特に95%以上の濃硫酸を用いる事ができる。
【0168】
さらに、第1流体もしくは第2流体に、顔料の結晶型の制御や顔料の品質コントロールなどの目的のために有機溶剤を混合してもよい。有機溶剤としては公知のものが使用できる。また、有機溶剤以外にも、ブロック共重合体や高分子ポリマー、界面活性剤などの分散剤を含んでもよい。
【0169】
(再沈法)
次に、強制超薄膜回転式反応法を再沈法に用いる場合にはまず、一つの流路である第1導入部d1より、第1流体として顔料に対して貧溶媒となり、後記溶媒とは相溶性である溶媒を、接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面1,2間に導入して、この処理用面1,2間に第1流体から構成された薄膜流体を形成する。
【0170】
次いで別流路である第2導入部d2より、第2流体として顔料物質を溶解した有機溶媒を含む流体を、上記第1流体から構成された薄膜流体に直接導入する。
【0171】
上記のように、流体の供給圧と処理用面1,2の間にかかる圧力との圧力バランスによって距離を固定された処理用面1,2間にて第1流体と第2流体が超薄膜状態を維持したまま、瞬間的に混合され、顔料粒子が生成する反応を行う事が出来る。
【0172】
なお、処理用面1,2間にて上記反応を行う事が出来れば良いので、上記とは逆に、第1導入部d1より第2流体を導入し、第2導入部d2より第1流体を導入するものであっても良い。つまり、各溶媒における第1、第2という表現は、複数存在する溶媒の第n番目であるという、識別のための意味合いを持つに過ぎないものであり、第3以上の溶媒も存在し得る。
【0173】
第1流体としては前述どおり、顔料に対して貧溶媒で第2流体を形成する顔料を溶解する溶媒とは相溶性であれば特に限定されないが、水、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒、芳香族系溶媒、二硫化炭素、脂肪族系溶媒、ニトリル系溶媒、スルホキシド系溶媒、ハロゲン系溶媒、エステル系溶媒、イオン性溶液、またはこれら2種以上の混合溶媒から選択されることが好ましい。
【0174】
第2流体に用いられる有機溶媒としては顔料に対する溶解性を示せば問題なく、特に限定されないが、好ましくは1−メチル−2−ピロリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、2−ピロリジノン、ε−カプロラクタム、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロパンアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミドのようなアミド系溶媒を用いる事ができる。
【0175】
さらに、第1流体もしくは第2流体に、ブロック共重合体や高分子ポリマー、界面活性剤などの分散剤を含んでもよい。
【0176】
(pH調整法)
次に、強制超薄膜回転式反応法をpH調整法に用いる場合にはまず、一つの流路である第1導入部d1より、第1流体として、pHを変化させる顔料析出用溶液を、上記の回転する処理用面1,2間に導入して、この処理用面間に第1流体から構成された薄膜流体を形成する。
【0177】
次いで別流路である第2導入部d2より、第2流体として、酸性またはアルカリ性であるpH調整溶液或いは前記pH調整溶液と有機溶媒との混合溶液のいずれかに、少なくとも1種類の顔料を溶解した顔料溶液を、上記第1流体から構成された薄膜流体に直接導入する。
【0178】
上記のように、流体の供給圧と回転する処理用面1,2の間にかかる圧力との圧力バランスによって距離を制御された処理用面1,2間にて、第1流体と第2流体とが薄膜状態を維持したまま、瞬間的に混合され、顔料粒子が生成する反応を行う事が出来る。
【0179】
具体的には、例えば、ある有機溶媒にほとんど溶解しない有機顔料を、前記の有機溶媒にアルカリの物質を加えたアルカリ性の溶液に加えることで溶解させて有機顔料溶液(第2流体)とし、その有機顔料溶液を水、若しくは他の有機溶媒、若しくは前記アルカリの物質を含まない有機溶媒、若しくは酸を含む溶媒が用いられた顔料析出用溶液(第1流体)に加える事で、有機顔料溶液のpHが変化し、顔料が析出する反応を処理用面1,2間にて行う事が出来る。この場合、加えられる酸とアルカリは、顔料種に応じて、顔料を溶解するために加えるか、析出させるために加えるかを選択すればよい。
【0180】
なお、処理用面1,2間にて上記反応を行う事が出来れば良いので、上記とは逆に、第1導入部d1より第2流体を導入し、第2導入部d2より第1流体を導入するものであっても良い。つまり、各流体における第1、第2という表現は、複数存在する流体の第n番目であるという、識別のための意味合いを持つに過ぎないものであり、第3以上の流体も存在し得る。
【0181】
第1流体とされた顔料析出用溶液は前述どおり、前記顔料溶液のpHを変化させることのできる溶液であり、析出を目的とする顔料に溶解性を示さない、若しくは、第2流体とされた顔料溶液に含まれる溶媒よりも顔料に対する溶解性が小さいものであれば特に限定されないが、水もしくは有機溶媒、若しくはそれらの混合物からなる。水としてはイオン交換水、純水、または蒸留水などの精製された水が好ましい。有機溶媒としては、特に限定されないが、メタノール、エタノール、イソプロパノール、t−ブタノールに代表される一価のアルコール系溶媒、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、チオジグリコール、ジチオジグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、アセチレングリコール誘導体、グリセリン、もしくはトリメチロールプロパン等に代表される多価アルコール系溶媒、1−メチル−2−ピロリジノン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、2−ピロリジノン、ε−カプロラクタム、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルプロパンアミド、ヘキサメチルホスホリックトリアミド、尿素、もしくはテトラメチル尿素等のようなアミド系溶媒、その他、エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、もしくはトリエチレングリコールモノエチル(又はブチル)エーテル等の多価アルコールの低級モノアルキルエーテル系溶媒、エチレングリコールジメチルエーテル(モノグライム)、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグライム)、もしくはトリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグライム)等のポリエーテル系溶媒、スルホラン、ジメチルスルホキシド、もしくは3−スルホレン等の含イオウ系溶媒、ジアセトンアルコール、ジエタノールアミン等の多官能系溶媒、酢酸、マレイン酸、ドコサヘキサエン酸、トリクロロ酢酸、もしくはトリフルオロ酢酸等のカルボン酸系溶媒、メタンスルホン酸、もしくはトリフルオロスルホン酸等のスルホン酸系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等のベンゼン系溶媒等が挙げられる。
【0182】
さらに、溶媒に酸又はアルカリであるpH調整物質を加えた、酸性またはアルカリ性であるpH調整溶液としても実施できる。その場合のpH調整物質は特に限定されないが、アルカリの場合は、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、もしくは水酸化バリウムなどの無機塩基、またはトリアルキルアミン、ジアザビシクロウンデセン、金属アルコキシドなどの有機アルカリである。酸の場合には、ギ酸、硝酸、硫酸、塩酸、もしくは燐酸などの無機酸、または酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、メタンスルホン酸、もしくはトリフルオロメタンスルホン酸などの有機酸である。それらを固体状態で加えても良いし、水溶液や有機溶媒溶液として加えても実施できる。
【0183】
第2流体とされた顔料溶液に用いられる溶媒としても、第1流体と同様の溶媒を用いることができる。ただし、第1流体に含まれる溶媒よりも顔料に対する溶解性が大きいものを選択するのが好ましい。そして、pH調整物質としても第1流体と同様の物質を加えて実施できる。第2流体が第1流体に含まれる溶媒よりも顔料に対する溶解性が大きくなるように、pH調整物質を選択することが好ましい。
【0184】
さらに、上記の第1流体ならびに第2流体に含まれる溶媒及びpH調整物質の混合溶液(pH調整溶液)は、全ての物質が完全に溶け合った溶液状態であっても、懸濁状態であっても使用できる。
【0185】
さらに、第1流体もしくは第2流体に、顔料の結晶型の制御や顔料の品質コントロールなどの目的のために有機溶剤を混合してもよい。有機溶剤としては公知のものが使用できる。また、有機溶剤以外にも、高分子ポリマー、ブロック共重合体等の分散剤、界面活性剤などを含んでもよい。
【0186】
上記の各方法に用いられる顔料としては特に限定されないが、多環キノン系顔料、ペリレン系顔料、アゾ系顔料、インジゴ顔料、キナクリドン顔料、フタロシアニン顔料などの公知の有機系顔料が挙げられる。
【0187】
また、顔料としては粒状固体、染料化合物のような顔料を含む。顔料の例として、無機の無彩色顔料、有機、無機の有彩色顔料があり、また、無色または淡色の顔料、金属光沢顔料等を使用してもよい。本発明のために、新規に合成した顔料を用いてもよい。以下に顔料の具体例を挙げる。
【0188】
黒色の顔料としては、例えば、以下のものを挙げることができる。即ち、Raven1060 、Raven 1080 、Raven 1170 、Raven 1200 、Raven 1250 、Raven 1255 、Raven 1500 、Raven 2000 、Raven 3500 、Raven 5250 、Raven 5750 、Raven7000 、Raven 5000 ULTRAII 、Raven 1190 ULTRAII (以上、コロンビアン・カーボン社製)である。また、Black PearlsL 、Mogul −L 、Regal 400R 、Regal 660R 、Regal 330R 、Monarch 800 、Monarch 880 、Monarch 900 、Monarch 1000 、Monarch 1300 、Monarch 1400 (以上、キャボット社製)である。また、Color Black FW1 、Color Black FW2 、Color Black FW200 、Color Black 18 、Color Black S160 、Color Black S170 、Special Black 4 ,Special Black 4A ,Special Black 6 ,Printex 35 ,Printex U ,Printex 140U ,Printex V ,Printex 140V (以上デグッサ社製)である。また、No.25 、No .33 、No .40 、No .47 、No .52 、No .900 、No .2300 、MCF −88 、MA600 、MA7 、MA8 、MA100 (以上三菱化学社製)等である。しかしこれらに限定されない。
【0189】
シアン色の顔料としては、以下のものを挙げることができる。即ち、C .I .Pigment Blue −1 、C .I .Pigment Blue −2 、C .I .Pigment Blue −3 である。また、C .I .Pigment Blue −15 、C .I .Pigment Blue −15 :2 、C .I .Pigment Blue −15 :3 、C.I .Pigment Blue −15 :4 である。また、C .I .Pigment Blue −16 、C .I .Pigment Blue −22 、C .I .Pigment Blue −60 等である。
【0190】
マゼンタ色の顔料としては、以下ものを挙げることができる。即ち、C .I .Pigment Red −5 、C .I .Pigment Red −7 、C .I .PigmentRed −12 である。また、C .I .Pigment Red −48 、C .I .Pigment Red −48 :1 、C .I .Pigment Red −57 、C .I .Pigment Red −112 である。また、C .I .Pigment Red −122 、C .I .Pigment Red −123 、C .I .Pigment Red −146 、C .I.Pigment Red −168 である。また、C .I .Pigment Red −184 、C .I .Pigment Red −202 、C .I .Pigment Red −207 等である。
【0191】
黄色の顔料としては、以下のものを挙げることができる。即ち、C .I .Pigment Yellow −12 、C .I .Pigment Yellow −13 、C .I .Pigment Yellow −14 、C .I .Pigment Yellow −16 である。また、C .I .Pigment Yellow −17 、C .I .Pigment Yellow −74 、C .I .Pigment Yellow −83 、C .I .Pigment Yellow −93 である。また、C .I .Pigment Yellow −95 、C .I .Pigment Yellow −97 、C .I .Pigment Yellow−98 、C .I .Pigment Yellow −114 である。また、C .I .Pigment Yellow −128 、C .I .Pigment Yellow −129 、C.I .Pigment Yellow −151 、C .I .Pigment Yellow−154 等である。
【0192】
さらに、上記の黒色、シアン色、マゼンタ色、黄色の顔料以外にも目的の色に応じて様々な顔料を用いる事ができる。代表的にPigment Violet −23のような紫色の顔料やPigment Green −7のような緑色の顔料、Pigment Orange −43のような橙色の顔料などが挙げられるが、顔料としての色を呈するものであれば実施できる。
【0193】
また、本発明においては顔料同様に染料を用いることもできる。例 としては、C .I .ソルベントブルー,−33 ,−38 ,−42 ,−45 ,−53 ,−65 ,−67 ,−70 ,−104 ,−114 ,−115 ,−135 を挙げることができる。また、C .I .ソルベントレッド,−25 ,−31 ,−86 ,−92 ,−97 ,−118 ,−132 ,−160 ,−186 ,−187 ,−219 を挙げることができる。また、C .I .ソルベントイエロー,−1 ,−49 ,−62 ,−74 ,−79 ,−82 ,−83 ,−89 ,−90 ,−120 ,−121 ,−151 ,−153 ,−154 等を挙げることができる。
【0194】
水溶性染料も使用することが出来る。例としては、C .I .ダイレクトブラック,−17 ,−19 ,−22 ,−32 ,−38 ,−51 ,−62 ,−71 ,−108 ,−146 ,−154 ;C .I .ダイレクトイエロー,−12 ,−24 ,−26 ,−44 ,−86 ,−87 ,−98 ,−100 ,−130 ,−142 ;C .I .ダイレクトレッド,−1 ,−4,−13 ,−17 ,−23 ,−28 ,−31 ,−62 ,−79 ,−81 ,−83 ,−89,−227 ,−240 ,−242 ,−243 ;C .I .ダイレクトブルー,−6 ,−22,−25 ,−71 ,−78 ,−86 ,−90 ,−106 ,−199 ;C .I .ダイレクトオレンジ,−34 ,−39 ,−44 ,−46 ,−60 ;C .I .ダイレクトバイオレット,−47 ,−48 ;C .I .ダイレクトブラウン,−109 ;C .I .ダイレクトグリーン,−59 等の直接染料、C .I .アシッドブラック,−2 ,−7 ,−24 ,−26 ,−31 ,−52 ,−63 ,−112 ,−118 ,−168 ,−172 ,−208 ;C .I .アシッドイエロー,−11 ,−17 ,−23 ,−25 ,−29 ,−42 ,−49 ,−61 ,−71 ;C .I .アシッドレッド,−1 ,−6 ,−8 ,−32 ,−37 ,−51 ,−52 ,−80 ,−85 ,−87 ,−92 ,−94 ,−115 ,−180 ,−254 ,−256 ,−289 ,−315,−317 ;C .I .アシッドブルー,−9 ,−22 ,−40 ,−59 ,−93 ,−102 ,−104 ,−113 ,−117 ,−120 ,−167 ,−229 ,−234 ,−254 ;C .I .アシッドオレンジ,−7 ,−19 ;C .I .アシッドバイオレット,−49等の酸性染料、C .I .リアクティブブラック,−1 ,−5 ,−8 ,−13 ,−14 ,−23 ,−31,−34 ,−39 ;C .I .リアクティブイエロー,−2 ,−3 ,−13 ,−15 ,−17 ,−18 ,−23 ,−24 ,−37 ,−42 ,−57 ,−58 ,−64 ,−75 ,−76 ,−77 ,−79 ,−81 ,−84 ,−85 ,−87 ,−88 ,−91 ,−92 ,−93 ,−95 ,−102 ,−111 ,−115 ,−116 ,−130 ,−131 ,−132,−133 ,−135 ,−137 ,−139 ,−140 ,−142 ,−143 ,−144,−145 ,−146 ,−147 ,−148 ,−151 ,−162 ,−163 ;C .I .リアクティブレッド,−3 ,−13 ,−16 ,−21 ,−22 ,−23 ,−24 ,−29,−31 ,−33 ,−35 ,−45 ,−49 ,−55 ,−63 ,−85 ,−106 ,−109 ,−111 ,−112 ,−113 ,−114 ,−118 ,−126 ,−128 ,−130 ,−131 ,−141 ,−151 ,−170 ,−171 ,−174 ,−176 ,−177 ,−183 ,−184 ,−186 ,−187 ,−188 ,−190 ,−193 ,−194 ,−195 ,−196 ,−200 ,−201 ,−202 ,−204 ,−206 ,−218 ,−221 ;C .I .リアクティブブルー,−2 ,−3 ,−5 ,−8 ,−10 ,−13 ,−14 ,−15 ,−18 ,−19 ,−21 ,−25 ,−27 ,−28 ,−38 ,−39 ,−40 ,−41 ,−49 ,−52 ,−63 ,−71 ,−72 ,−74 ,−75 ,−77 ,−78 ,−79 ,−89 ,−100 ,−101 ,−104 ,−105 ,−119 ,−122 ,−147 ,−158 ,−160 ,−162 ,−166 ,−169 ,−170 ,−171 ,−172 ,−173 ,−174 ,−176 ,−179 ,−184 ,−190 ,−191 ,−194 ,−195 ,−198 ,−204 ,−211 ,−216 ,−217 ;C.I .リアクティブオレンジ,−5 ,−7 ,−11 ,−12 ,−13 ,−15 ,−16 ,−35 ,−45 ,−46 ,−56 ,−62 ,−70 ,−72 ,−74 ,−82 ,−84 ,−87 ,−91 ,−92 ,−93 ,−95 ,−97 ,−99 ;C .I .リアクティブバイオレット,−1 ,−4 ,−5 ,−6 ,−22 ,−24 ,−33 ,−36 ,−38 ;C .I.リアクティブグリーン,−5 ,−8 ,−12 ,−15 ,−19 ,−23 ;C .I .リアクティブブラウン,−2 ,−7 ,−8 ,−9 ,−11 ,−16 ,−17 ,−18 ,−21,−24 ,−26 ,−31 ,−32 ,−33 等の反応染料;C .I .ベーシックブラック,−2 ;C .I .ベーシックレッド,−1 ,−2 ,−9 ,−12 ,−13 ,−14 ,−27 ;C .I .ベーシックブルー,−1 ,−3 ,−5 ,−7,−9 ,−24 ,−25 ,−26 ,−28 ,−29 ;C .I .ベーシックバイオレット,−7 ,−14 ,−27 ;C .I .フードブラック,−1 ,−2 等が挙げられる。
【0195】
使用しうる染料は、公知のものでも新規のものでもよい。例えば以下に述べるような直接染料、酸性染料、塩基性染料、反応性染料、食品用色素の水溶性染料、脂溶性(油溶性)染料又は、分散染料の不溶性色素を用いることができる。これらは、固体化した状態で使用しても良い。この点では好ましくは、例えば、油溶性染料を使用し得る。
【0196】
本発明で言う油溶性染料とは、有機溶媒に溶解する染料を言い、脂溶性染料とも呼ばれる。
【0197】
界面活性剤及び分散剤としては顔料の分散用途に用いられる様々な市販品を使用できる。特に限定されないが、例えばネオゲンR−K(第一工業製薬)のようなドデシルベンゼンスルホン酸系や、ソルスパース20000 、ソルスパース24000 、ソルスパース26000 、ソルスパース27000 、ソルスパース28000 、ソルスパース41090 (以上、アビシア社製)、ディスパービック160 、ディスパービック161 、ディスパービック162 、ディスパービック163 、ディスパービック166 、ディスパービック170 、ディスパービック180 、ディスパービック181 、ディスパービック182 、ディスパービック−183 、ディスパービック184 、ディスパービック190 、ディスパービック191 、ディスパービック192 、ディスパービック−2000 、ディスパービック−2001 (以上、ビックケミー社製)、ポリマー1 00 、ポリマー120 、ポリマー150 、ポリマー400 、ポリマー401 、ポリマー402 、ポリマー403 、ポリマー450 、ポリマー451 、ポリマー452 、ポリマー4 53 、EFKA −46 、EFKA −47 、EFKA −48 、EFKA −49 、EFKA−1501 、EFKA −1502 、EFKA −4540 、EFKA −4550 (以上、EF KA ケミカル社製)、フローレンDOPA −158 、フローレンDOPA −22 、フローレンDOPA −17 、フローレンG −700 、フローレンTG −720W 、フローレン−730W 、フローレン−740W 、フローレン−745W 、(以上、共栄社化学社製)、アジスパーPA111 、アジスパーPB711 、アジスパーPB811 、アジスパーPB 821 、アジスパーPW911 (以上、味の素社製)、ジョンクリル678 、ジョンクリル679 、ジョンクリル62 (以上、ジョンソンポリマー社製)等を挙げることができる。これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0198】
また本発明においてブロック共重合体として、具体的な例として以下を挙げることができる。即ち、アクリル系、メタクリル系ブロック共重合体、ポリスチレンと他の付加重合系または縮合重合系のブロック共重合体、ポリオキシエチレン、ポリオキシアルキレンのブロックを有するブロック共重合体等である。そして、従来から知られているブロック共重合体を用いることもできる。本発明に用いられるブロック共重合体は両親媒性であることが好ましい。具体的に好ましい形としては、疎水セグメントと有機酸あるいはそのイオン性塩ユニットを持つ親水セグメントからなるジブロック共重合体を挙げることができる。また、疎水セグメントと有機酸あるいはそのイオン性塩ユニットを持つ親水セグメントとさらに別のセグメントを有するトリブロック共重合体が好ましく用いられる。トリブロックの場合、疎水セグメント、非イオン性の親水セグメント、有機酸あるいはそのイオン性塩ユニットを持つ親水セグメントである形が好ましく用いられ、内包状態の安定化の意味でも好ましい。例えば前述したトリブロック共重合体を使用して、顔料物質と、溶媒として水を使用して分散液を調製すると、顔料をトリブロック共重合体が形成するミセル中に内包させることが可能であり、そのように顔料内包型のインク組成物を形成することも可能となる。また、その分散組成物の粒子の粒子径も非常に揃った均一なものとすることも可能である。さらにはその分散状態を極めて安定なものとすることも可能である。これらの処理を、強制超薄膜回転式反応法を用いて行うと顔料ナノ粒子の粒子径も非常に揃い均一性がさらに向上する。
【0199】
また上記の各方法以外にも、強制超薄膜回転式反応法を用いた顔料ナノ粒子の製造方法として、薄膜流体中で顔料を直接合成してもよい。一例として銅フタロシアニンの合成例の場合には、無水フタル酸またはその誘導体、銅またはその化合物、尿素またはその誘導体及び触媒を有機溶媒中またはその不存在下において反応させる事で、銅フタロシアニン顔料を得る方法に代表されるような、顔料を種々の反応を用いて直接合成しても良い。これにより、これまでの方法では、合成工程によって出来た粗大な顔料粒子を粉砕する工程が必要であったが、これが必要なくなる事や、さらに粉砕工程が必要な場合にも、運転条件によって薄膜流体中にせん断力を与え、粉砕工程を含むことができる。
【0200】
本発明においては、混合流路中での混合は、層流支配下で行なうこともできるし、乱流支配下で行なうこともできる。
【0201】
さらに、処理用面間を加熱、冷却したり、あるいは処理用面間にマイクロウェーブを照射することも可能である。また処理用面間に紫外線(UV)を照射したり、また処理用面間に超音波エネルギーを与えてもかまわない。特に、第1処理用面1と第2処理用面2とで温度差を設けた場合は、薄膜流体中で対流を発生させることができるため、これにより反応を促進させることができるという利点がある。
【0202】
より具体的に、加熱、冷却については、例えば各処理用部10,20の少なくとも一方或いは双方にヒーターや熱媒、冷媒を通すジャケットを設けることにより、薄膜流体を加熱、冷却できるようにする。あるいは、各処理用部10、20の少なくとも一方或いは双方にマイクロウェーブを照射する為の、マグネトロンなどのマイクロ波発生装置を備えることにより、処理流体の加熱、反応促進を行う。また、紫外線(UV)を照射することについては、例えば各処理用部10,20の少なくとも一方或いは双方に紫外線を照射するランプなどの素子を設け、対応する処理用面から薄膜流体に紫外線(UV)を照射できるようにする。また、超音波エネルギーを与えることについては、例えば各処理用部10,20の少なくとも一方或いは双方に超音波発振体を設けることができるし、処理用面間での混合・反応を超音波雰囲気の容器内で行っても実施できる。
【0203】
また、上記析出を減圧または真空状態を確保できる容器内で行い、少なくとも処理後流体が吐出される2次側を減圧または真空状態とする事で、析出反応中に発生するガス並びに上記流体中に含まれるガスの脱気、もしくは上記流体の脱溶剤が行える。それにより、顔料ナノ粒子析出とほぼ同時に脱溶剤処理を行う場合にも、処理用面間で析出した顔料ナノ粒子を含む流体が、処理用面より噴霧状態で吐出するため、その流体の表面積が増大し、脱溶剤効率が非常に高い。そのため、これまでよりも簡単に、実質1工程で顔料ナノ粒子作製処理と脱溶剤処理とが行える。
【0204】
また前述のように、第1導入部d1、第2導入部d2以外に第3導入部d3を処理装置に設けることもできるが、この場合にあっては、例えば上記のアシッドペースティング法では、各導入部から、水又はアルカリ性溶液、顔料を溶解した酸を含む流体、顔料の結晶型の制御や顔料の品質コントロール等の目的のための有機溶剤等をそれぞれ別々に処理装置に導入することが可能である。また、pH調整による場合にあっては、各導入部から、pHを変化させる顔料析出用溶液、顔料溶液を含む流体、顔料の結晶型の制御や顔料の品質コントロール等の目的のための有機溶剤等をそれぞれ別々に処理装置に導入することが可能である。そうすると、各溶液の濃度や圧力を個々に管理することができ、顔料ナノ粒子が生成する反応をより精密に制御することができる。第4以上の導入部を設けた場合も同様であって、このように処理装置へ導入する流体を細分化できる。
【0205】
本願発明における強制超薄膜回転式反応法は、その微小流路のレイノルズ数を自由に変化させる事が可能であるため、粒子径、粒子形状、結晶型など、目的に応じて単分散で再分散性の良い顔料ナノ粒子が作製出来る。しかもその自己排出性により、析出を伴う反応の場合であっても生成物の詰まりも無く、大きな圧力を必要としない。ゆえに、安定的に顔料ナノ粒子を作製でき、また安全性に優れ、不純物の混入もほとんど無く、洗浄性も良い。さらに目的の生産量に応じてスケールアップ可能であるため、その生産性も高い顔料ナノ粒子の製造方法を提供可能である。
【実施例】
【0206】
以下、本発明について実施例を掲げて更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0207】
尚、以下の実施例において、「中央から」というのは、前述した、図1(A)に示す処理装置の「第1導入部d1から」という意味であり、第1流体は、前述の第1被処理流動体を指し、第2流体は、上述した、図1(A)に示す処理装置の第2導入部d2から導入される、前述の第2被処理流動体を指す。
【0208】
図1(A)に示す、強制超薄膜回転式反応法を可能とする装置において、接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面1,2の間にできる、薄膜流体中で均一に攪拌・混合する反応装置を用いて銅フタロシアニンを濃硫酸に溶解したペースト液と分散剤を含む水溶液を薄膜流体中で合流させ、均一混合しながら顔料ナノ粒子を析出させた。
【0209】
(実施例1)
中央から第1流体としてディスパーBYK 184(ビックケミー社製)水溶液を、供給圧力/背圧力=0.02MPa/0.01MPa、回転数1000 rpm、送液温度20℃で送液しながら、第2流体として3%銅フタロシアニン顔料/98%濃硫酸水溶液を10ml/minで処理用面1,2間に導入した。顔料ナノ粒子分散液が処理用面より吐出された。得られた顔料ナノ粒子分散液の粒度分布を、レーザードップラー法を応用した粒度分布測定装置〔日機装(株)製の商品名マイクロトラック UPA150〕を用いて測定したところ、体積平均粒子径は14nmであり、その粒度分布のCV値は13%であった。また、その顔料ナノ粒子分散液を、透析チューブを用いて純水にて24時間透析した後、乾燥し、顔料ナノ粒子粉体を得た。その粉体を再びイオン交換水に投じて、高速撹拌型分散機(商品名:クレアミックス、エム・テクニック社製)にて攪拌したところ、再び顔料ナノ粒子分散液を得、体積平均粒子径は強制超薄膜回転式反応法にて得られた直後と同じ、体積平均粒子径14nmであった。
【0210】
(実施例2)
中央から第1流体としてディスパーBYK 184(ビックケミー社製)水溶液を、供給圧力/背圧力=0.02MPa/0.01MPa、回転数1000 rpm、送液温度20℃で送液しながら、第2流体として3%キナクリドン顔料/98%濃硫酸水溶液を10ml/minで処理用面1,2間に導入した。顔料ナノ粒子分散液が処理用面より吐出された。得られた顔料ナノ粒子分散液の粒度分布を、レーザードップラー法を応用した粒度分布測定装置〔日機装(株)製の商品名マイクロトラック UPA150〕を用いて測定したところ、体積平均粒子径は15nmであり、その粒度分布のCV値は14%であった。また、その顔料ナノ粒子分散液を、透析チューブを用いて純水にて24時間透析した後、乾燥し、顔料ナノ粒子粉体を得た。その粉体を再びイオン交換水に投じて、高速撹拌型分散機(商品名:クレアミックス、エム・テクニック社製)にて攪拌したところ、再び顔料ナノ粒子分散液を得、体積平均粒子径は強制超薄膜回転式反応法にて得られた直後と同じ、体積平均粒子径15nmであった。
【0211】
(比較例1)
ディスパーBYK 184(ビックケミー社製)水溶液20gを、ビーカー内、溶液温度20℃、300rpmで攪拌しながら、3%銅フタロシアニン顔料/98%濃硫酸水溶液を20g投入した。水系の銅フタロシアニン顔料分散体が得られた。得られた顔料粒子分散液の粒度分布を、レーザードップラー法を応用した粒度分布測定装置〔日機装(株)製の商品名マイクロトラック UPA150〕を用いて測定したところ、体積平均粒子径は1345nmであった。また、その顔料粒子分散液を、透析チューブを用いて純水にて24時間透析した後、乾燥し、顔料粒子粉体を得た。その粉体を再びイオン交換水に投じて、高速撹拌型分散機(商品名:クレアミックス、エム・テクニック社製)にて攪拌したところ、再び顔料粒子分散液を得、体積平均粒子径はビーカー中で得られたものよりも大きく、体積平均粒子径2882nmであった。
【0212】
(比較例2)
ディスパーBYK 184(ビックケミー社製)水溶液20gを、ビーカー内、溶液温度20℃、300rpmで攪拌しながら、3%キナクリドン顔料/98%濃硫酸水溶液を20g投入した。水系のキナクリドン顔料粒子分散液が得られた。得られた顔料粒子分散液の粒度分布を、レーザードップラー法を応用した粒度分布測定装置〔日機装(株)製の商品名マイクロトラック UPA150〕を用いて測定したところ、体積平均粒子径は1833nmであった。また、その顔料粒子分散液を、透析チューブを用いて純水にて24時間透析した後、乾燥し、顔料粒子粉体を得た。その粉体を再びイオン交換水に投じて、高速撹拌型分散機(商品名:クレアミックス、エム・テクニック社製)にて攪拌したところ、再び顔料粒子分散液を得、体積平均粒子径はビーカー中で得られたものよりも大きく、体積平均粒子径3345nmであった。
【0213】
(実施例5)
中央から第1流体としてドデシル硫酸ナトリウム水溶液を、供給圧力/背圧力=0.02MPa/0.01MPa、回転数1000 rpm、送液温度20℃で送液しながら、第2流体として1.71w/w% PR―254/82.32w/w% ジメチルスルホキシド(DMSO)/15.97w/w% 8N水酸化カリウム水溶液の混合懸濁溶液を1ml/minで処理用面1,2間に導入した。顔料ナノ粒子分散液が処理用面より吐出された吐出液のpHは11.6であった。得られた顔料ナノ粒子分散液の粒度分布を、レーザードップラー法を応用した粒度分布測定装置〔日機装(株)製の商品名マイクロトラック UPA150〕を用いて測定したところ、体積平均粒子径は13nmであった。また、その顔料ナノ粒子分散液を、透析チューブを用いて純水にて24時間透析し、ドデシル硫酸ナトリウム、DMSO等を除去した後、乾燥し、顔料ナノ粒子粉体を得た。その粉体を再びイオン交換水に投じて、高速撹拌型分散機(商品名:クレアミックス、エム・テクニック社製)にて攪拌したところ、再び顔料ナノ粒子分散液を得、体積平均粒子径は処理用面より吐出された直後と同じ、体積平均粒子径13nmであった。
【0214】
(実施例4)
中央から第1流体としてメタノールを、供給圧力/背圧力=0.01MPa/0.01MPa、回転数1000 rpm、送液温度25℃で送液しながら、第2流体として0.5%非置換直鎖状キナクリドン顔料/1−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液を10ml/minで処理用面1,2間に導入した。顔料ナノ粒子分散液が処理用面より吐出された。得られた顔料ナノ粒子分散液の粒度分布を、レーザードップラー法を応用した粒度分布測定装置〔日機装(株)製の商品名マイクロトラック UPA150〕を用いて測定したところ、体積平均粒子径は20nmであり、その粒度分布のCV値は17%であった。また、その顔料ナノ粒子分散液を、透析チューブを用いて純水にて24時間透析した後、乾燥し、顔料ナノ粒子粉体を得た。粉末X線回折の結果得られたキナクリドン顔料はα型であると考えられた。その粉体を再びイオン交換水に投じて、高速撹拌型分散機(商品名:クレアミックス、エム・テクニック社製)にて攪拌したところ、再び顔料ナノ粒子分散液を得、体積平均粒子径は強制超薄膜回転式反応法にて得られた直後と同じ、体積平均粒子径20nmであった。
【0215】
(比較例3)
イオン交換水20gを、ビーカー内、溶液温度25℃、300rpmで攪拌しながら、0.5%非置換直鎖状キナクリドン顔料/1−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液を20g投入した。水系の顔料粒子分散液が得られた。得られた顔料粒子分散液の粒度分布を、レーザードップラー法を応用した粒度分布測定装置〔日機装(株)製の商品名マイクロトラック UPA150〕を用いて測定したところ、体積平均粒子径は2243nmであった。また、その顔料粒子分散液を、透析チューブを用いて純水にて24時間透析した後、乾燥し、顔料粒子粉体を得た。その粉体を再びイオン交換水に投じて、高速撹拌型分散機(商品名:クレアミックス、エム・テクニック社製)にて攪拌したところ、再び顔料粒子分散液を得、体積平均粒子径はビーカー中で得られたものよりも大きく、体積平均粒子径2882nmであった。
【0216】
(比較例4)
メタノール20gを、ビーカー内、溶液温度25℃、300rpmで攪拌しながら、0.5%非置換直鎖状キナクリドン顔料/1−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液を20g投入した。有機溶媒系の顔料粒子分散液が得られた。得られた顔料粒子分散液の粒度分布を、レーザードップラー法を応用した粒度分布測定装置〔日機装(株)製の商品名マイクロトラック UPA150〕を用いて測定したところ、体積平均粒子径は3321nmであった。また、その顔料粒子分散液を、透析チューブを用いて純水にて24時間透析した後、乾燥し、顔料ナノ粒子粉体を得た。その粉体を再びメタノールに投じて、高速撹拌型分散機(商品名:クレアミックス、エム・テクニック社製)にて攪拌したところ、再び顔料粒子分散液を得、体積平均粒子径はビーカー中で得られたものよりも大きく、体積平均粒子径4211nmであった。
【0217】
上記の結果を表1に示す。
【0218】
【表1】

【0219】
実施例1で得られた顔料ナノ粒子を用いて、以下に示す配合でインクジェット用インクを調製した。
実施例1で得られた顔料:5%
低分子分散剤(サンノプコ社製 ディスパースエイド W-28):1%
0.75%消泡剤(共栄社化学製 アクアレン1435):0.75%
イオン交換水:89.25%
高分子分散剤(ビックケミー社製ディスパーBYK 184):4%
【0220】
上記インクの保存安定性につき、顔料の沈降を遠心沈降法で加速させて評価したが、2年間放置しても顔料がほとんど沈降しないレベルであった。ヘッド目詰まりは、一定量の文字を印字後、キャッピングなどをしない状態で30分間放置した後に印字を再開したが、一文字目から正常に印字できた。印字品質は、文字のにじみ、かすれなどを目視で評価したが、欠陥のないきれいな印字であった。耐候性は、1年間の太陽光照射に相当する条件のウエザーメーターテストを行ったが、テスト後の色の変化が5%以内であった。
【0221】
以上の事から明らかなように、本発明によるインクは、顔料が極めて微粒子にまで分散されているために保存安定性に優れており、またヘッド目詰まりがなく、さらにインクジェット用インクとして耐候性にも優れている事が明らかとなった。
【0222】
次に、以下の実施例においては、図1(A)に示す、接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面1,2の間にできる、薄膜流体中で均一に攪拌・混合する反応装置を用いて、Pigment Red 254(構造名:ジケトピロロピロール、以下、PR―254と記す)を含む溶液と界面活性剤水溶液を薄膜流体中で合流させ、均一混合しながら顔料ナノ粒子を析出させた。
【0223】
(実施例5)
中央から第1流体としてドデシル硫酸ナトリウム水溶液を、供給圧力/背圧力=0.02MPa/0.01MPa、回転数1000 rpm、送液温度20℃で送液しながら、第2流体として1.71w/w% PR―254/82.32w/w% ジメチルスルホキシド(DMSO)/15.97w/w% 8N水酸化カリウム水溶液の混合懸濁溶液を1ml/minで処理用面1,2間に導入した。顔料ナノ粒子分散液が処理用面より吐出された吐出液のpHは11.6であった。得られた顔料ナノ粒子分散液の粒度分布を、レーザードップラー法を応用した粒度分布測定装置〔日機装(株)製の商品名マイクロトラック UPA150〕を用いて測定したところ、体積平均粒子径は13nmであった。また、その顔料ナノ粒子分散液を、透析チューブを用いて純水にて24時間透析し、ドデシル硫酸ナトリウム、DMSO等を除去した後、乾燥し、顔料ナノ粒子粉体を得た。その粉体を再びイオン交換水に投じて、高速撹拌型分散機(商品名:クレアミックス、エム・テクニック社製)にて攪拌したところ、再び顔料ナノ粒子分散液を得、体積平均粒子径は処理用面より吐出された直後と同じ、平均粒子径13nmであった。
【0224】
(実施例6)
中央から第1流体としてドデシル硫酸ナトリウム水溶液を、供給圧力/背圧力=0.02MPa/0.01MPa、回転数500 rpm、送液温度20℃で送液しながら、第2流体として1.71w/w% PR―254/96.70w/w% ジメチルスルホキシド(DMSO)/1.59w/w% 8N水酸化カリウム水溶液の混合溶液を1ml/minで処理用面1,2間に導入した。顔料ナノ粒子分散液が処理用面より吐出された吐出液のpHは11.1であった。得られた顔料ナノ粒子分散液の粒度分布を、レーザードップラー法を応用した粒度分布測定装置〔日機装(株)製の商品名マイクロトラック UPA150〕を用いて測定したところ、体積平均粒子径は12nmであった。また、その顔料ナノ粒子分散液を、透析チューブを用いて純水にて24時間透析し、ドデシル硫酸ナトリウム、DMSO等を除去した後、乾燥し、顔料ナノ粒子粉体を得た。その粉体を再びイオン交換水に投じて、高速撹拌型分散機(商品名:クレアミックス、エム・テクニック社製)にて攪拌したところ、再び顔料ナノ粒子分散液を得、体積平均粒子径は処理用面より吐出された直後と同じ、体積平均粒子径12nmであった。
【0225】
(実施例7)
中央から第1流体としてDisperbyk-190(ビッグケミー製)のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)溶液を、供給圧力/背圧力=0.05MPa/0.01MPa、回転数1000 rpm、送液温度20℃で送液しながら、第2流体として2.55w/w% PR―254/76.55w/w%テトラヒドロフラン(THF)/0.77w/w% ナトリウムエトキシド/20.13w/w% エタノールの混合溶液を1ml/minで処理用面1,2間に導入した。得られた顔料ナノ粒子分散液の粒度分布を、レーザードップラー法を応用した粒度分布測定装置〔日機装(株)製の商品名マイクロトラック UPA150〕を用いて測定したところ、体積平均粒子径は17nmであった。また、その顔料ナノ粒子分散液からナトリウムエトキシド、THF等を除去した後、乾燥し、顔料ナノ粒子粉体を得た。その粉体を再びPGMEAに投じて、高速撹拌型分散機(商品名:クレアミックス、エム・テクニック社製)にて攪拌したところ、再び顔料ナノ粒子分散液を得、体積平均粒子径は処理用面より吐出された直後と同じ、17nmであった。
【0226】
(比較例5)
ドデシル硫酸ナトリウム水溶液100gを、ビーカー内、溶液温度20℃、300rpmで攪拌しながら1.71w/w% PR―254/82.32w/w% ジメチルスルホキシド(DMSO)/15.97w/w% 8N水酸化カリウム水溶液の混合懸濁溶液を20g投入した。顔料粒子分散液が得られた。得られた顔料粒子分散液の粒度分布を、レーザードップラー法を応用した粒度分布測定装置〔日機装(株)製の商品名マイクロトラック UPA150〕を用いて測定したところ、体積平均粒子径は542nmであった。また、その顔料粒子分散液を、透析チューブを用いて純水にて24時間透析し、ドデシル硫酸ナトリウム、DMSO等を除去した後、乾燥し、顔料粒子粉体を得た。その粉体を再びイオン交換水に投じて、高速撹拌型分散機(商品名:クレアミックス、エム・テクニック社製)にて攪拌したところ、再び顔料粒子分散液を得、体積平均粒子径はビーカー中で得られた直後よりも大きく、995nmであった。
【0227】
(比較例6)
ドデシル硫酸ナトリウム水溶液100gを、ビーカー内、溶液温度20℃、300rpmで攪拌しながら1.71w/w% PR―254/96.70w/w% ジメチルスルホキシド(DMSO)/1.59w/w% 8N水酸化カリウム水溶液の混合溶液を20g投入した。顔料粒子分散液が得られた。得られた顔料粒子分散液の粒度分布を、レーザードップラー法を応用した粒度分布測定装置〔日機装(株)製の商品名マイクロトラック UPA150〕を用いて測定したところ、体積平均粒子径は489nmであった。また、その顔料粒子分散液を、透析チューブを用いて純水にて24時間透析し、ドデシル硫酸ナトリウム、DMSO等を除去した後、乾燥し、顔料粒子粉体を得た。その粉体を再びイオン交換水に投じて、高速撹拌型分散機(商品名:クレアミックス、エム・テクニック社製)にて攪拌したところ、再び顔料粒子分散液を得、体積平均粒子径はビーカー中で得られた直後よりも大きく、985nmであった。
【0228】
(比較例7)
Disperbyk-190(ビッグケミー製)のプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)溶液100gを、ビーカー内、溶液温度20℃、300rpmで攪拌しながら2.55w/w% PR―254/76.55w/w%テトラヒドロフラン(THF)/0.77w/w% ナトリウムエトキシド/20.13w/w% エタノールの混合溶液を20g投入した。顔料粒子分散液が得られた。得られた顔料粒子分散液の粒度分布を、レーザードップラー法を応用した粒度分布測定装置〔日機装(株)製の商品名マイクロトラック UPA150〕を用いて測定したところ、体積平均粒子径は791nmであった。また、その顔料粒子分散液からPGMEA、THF等を除去した後、乾燥し、顔料粒子粉体を得た。その粉体を再びPGMEAに投じて、高速撹拌型分散機(商品名:クレアミックス、エム・テクニック社製)にて攪拌したところ、再び顔料粒子分散液を得、体積平均粒子径はビーカー中で得られた直後よりも大きく、1185nmであった。
【0229】
以上の事から、接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面間にできる、薄膜流体中で均一に攪拌・混合する反応装置を用いて得られた顔料ナノ粒子は、ナノサイズの微粒子でありながら再分散性に優れていることが明らかとなった。
【0230】
(実施例8)
次に、図1(A)に示す、接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面1,2の間にできる、薄膜流体中で均一に攪拌・混合する反応装置を用いて、カラーフィルター用途等に用いられるPigment Red 177(構造名:アンスラキノン、以下、PR−177)を含む溶液と界面活性剤水溶液を薄膜流体中で合流させ、均一混合しながら顔料ナノ粒子を析出させた。
中央から第1流体としてアクアロンKH-10(第一工業製薬(株)製)水溶液を、供給圧力/背圧力=0.02MPa/0.01MPa、回転数100 rpm、送液温度20℃で送液しながら、第2流体として3.0w/w% PR−177/97.0w/w% 濃硫酸溶液を1ml/minで処理用面1,2間に導入した。顔料ナノ粒子分散液が処理用面より吐出された。得られた顔料ナノ粒子分散液の粒度分布を、レーザードップラー法を応用した粒度分布測定装置〔日機装(株)製の商品名マイクロトラック UPA150〕を用いて測定したところ、体積平均粒子径は17nmであった。また、その顔料ナノ粒子分散液を、透析チューブを用いて24時間透析し、アクアロンKH−10、硫酸等を除去した後、乾燥し、顔料ナノ粒子粉体を得た。その粉体を再びイオン交換水に投じて、高速撹拌型分散機(商品名:クレアミックス、エム・テクニック社製)にて攪拌したところ、再び顔料ナノ粒子分散液を得、体積平均粒子径は処理用面より吐出された直後と同じ、17nmであった。
得られた顔料ナノ粒子のTEM写真を図31に示す。
【0231】
(実施例9)
次に、同じくカラーフィルター用途等に用いられるPigment Green 7 (以下、PG−7)を含む溶液と界面活性剤水溶液を薄膜流体中で合流させ、均一混合しながら顔料ナノ粒子を析出させた。
中央から第1流体としてアクアロンKH-10(第一工業製薬(株)製)水溶液を、供給圧力/背圧力=0.02MPa/0.01MPa、回転数500 rpm、送液温度20℃で送液しながら、第2流体として0.2w/w% PG−7/99.8w/w% 濃硫酸溶液を5ml/minで処理用面1,2間に導入した。顔料ナノ粒子分散液が処理用面より吐出された。得られた顔料ナノ粒子分散液の粒度分布を、レーザードップラー法を応用した粒度分布測定装置〔日機装(株)製の商品名マイクロトラック UPA150〕を用いて測定したところ、体積平均粒子径は12nmであった。また、その顔料ナノ粒子分散液を、透析チューブを用いて24時間透析し、アクアロンKH-10、硫酸等を除去した後、乾燥し、顔料ナノ粒子粉体を得た。その粉体を再びイオン交換水に投じて、高速撹拌型分散機(商品名:クレアミックス、エム・テクニック社製)にて攪拌したところ、再び顔料ナノ粒子分散液を得、体積平均粒子径は処理用面より吐出された直後と同じ、12nmであった。
【0232】
(実施例10)
次に、インクジェントインク等に用いられるPigment Yellow 128 (以下、PY−128)を含む溶液と界面活性剤水溶液を薄膜流体中で合流させ、均一混合しながら顔料ナノ粒子を析出させた。
中央から第1流体としてドデシル硫酸ナトリウム水溶液を、供給圧力/背圧力=0.05MPa/0.01MPa、回転数1000 rpm、送液温度20℃で送液しながら、第2流体として1.22w/w% PY−128/5.8w/w% 8N−KOH水溶液/87.8w/w% ジメチルスルホキシド(DMSO)/5.1w/w% イオン交換水の混合溶液を1ml/minで処理用面1,2間に導入した。得られた顔料ナノ粒子分散液の粒度分布を、レーザードップラー法を応用した粒度分布測定装置〔日機装(株)製の商品名マイクロトラック UPA150〕を用いて測定したところ、体積平均粒子径は13nmであった。また、その顔料ナノ粒子分散液を透析チューブを用いて24時間透析し、KOH、DMSO等を除去した後、乾燥し、顔料ナノ粒子粉体を得た。その粉体を再びイオン交換水に投じて、高速撹拌型分散機(商品名:クレアミックス、エム・テクニック社製)にて攪拌したところ、再び顔料ナノ粒子分散液を得、体積平均粒子径は処理用面より吐出された直後と同じ、13nmであった。得られた顔料ナノ粒子のTEM写真を図32に示す。
【0233】
(実施例11)
次に、同じくインクジェントインク等に用いられるPigment Red 170 (以下、PR―170)を含む溶液と界面活性剤水溶液を薄膜流体中で合流させ、均一混合しながら顔料ナノ粒子を析出させた。
中央から第1流体としてドデシル硫酸ナトリウム水溶液を、供給圧力/背圧力=0.05MPa/0.01MPa、回転数1000 rpm、送液温度20℃で送液しながら、第2流体として1.59w/w% PR−170/1.70w/w% 8N−KOH水溶液/75.7w/w% ジメチルスルホキシド(DMSO)/21.6w/w% イオン交換水の混合溶液を1ml/minで処理用面1,2間に導入した。得られた顔料ナノ粒子分散液の粒度分布を、レーザードップラー法を応用した粒度分布測定装置〔日機装(株)製の商品名マイクロトラック UPA150〕を用いて測定したところ、体積平均粒子径は14nmであった。また、その顔料ナノ粒子分散液を透析チューブを用いて24時間透析し、KOH、DMSO等を除去した後、乾燥し、顔料ナノ粒子粉体を得た。その粉体を再びイオン交換水に投じて、高速撹拌型分散機(商品名:クレアミックス、エム・テクニック社製)にて攪拌したところ、再び顔料ナノ粒子分散液を得、体積平均粒子径は処理用面より吐出された直後と同じ、14nmであった。
【0234】
(比較例8)
アクアロンKH-10(第一工業製薬(株)製)水溶液100gを、ビーカー内、溶液温度20℃、300rpmで攪拌しながら3.0w/w% PR―177/97.0w/w% 濃硫酸溶液を20g投入した。顔料粒子分散液が得られた。得られた顔料粒子分散液の粒度分布を、レーザードップラー法を応用した粒度分布測定装置〔日機装(株)製の商品名マイクロトラック UPA150〕を用いて測定したところ、体積平均粒子径は442nmであった。また、その顔料粒子分散液を、透析チューブを用いて24時間透析しアクアロンKH−10、硫酸等を除去した後、乾燥し、顔料粒子粉体を得た。その粉体を再びイオン交換水に投じて、高速撹拌型分散機(商品名:クレアミックス、エム・テクニック社製)にて攪拌したところ、再び顔料粒子分散液を得、平均粒子径はビーカー中で得られたものよりも大きく、体積平均粒子径992nmであった。
【0235】
(比較例9)
アクアロンKH-10(第一工業製薬(株)製)水溶液100gを、ビーカー内、溶液温度20℃、300rpmで攪拌しながら0.2w/w% PG−7/99.8w/w% 濃硫酸溶液を20g投入した。顔料粒子分散液が得られた。得られた顔料粒子分散液の粒度分布を、レーザードップラー法を応用した粒度分布測定装置〔日機装(株)製の商品名マイクロトラック UPA150〕を用いて測定したところ、体積平均粒子径は551nmであった。また、その顔料粒子分散液を、透析チューブを用いて24時間透析し、アクアロンKH-10、硫酸等を除去した後、乾燥し、顔料粒子粉体を得た。その粉体を再びイオン交換水に投じて、高速撹拌型分散機(商品名:クレアミックス、エム・テクニック社製)にて攪拌したところ、再び顔料粒子分散液を得、体積平均粒子径はビーカー中で得られたものよりも大きく、972nmであった。
【0236】
(比較例10)
ドデシル硫酸ナトリウム水溶液100gを、ビーカー内、溶液温度20℃、300rpmで攪拌しながら1.22w/w% PY−128/5.8w/w% 8N−KOH水溶液/87.8w/w% ジメチルスルホキシド(DMSO)/5.1w/w% イオン交換水の混合溶液を20g投入した。顔料粒子分散液が得られた。得られた顔料粒子分散液の粒度分布を、レーザードップラー法を応用した粒度分布測定装置〔日機装(株)製の商品名マイクロトラック UPA150〕を用いて測定したところ、体積平均粒子径は641nmであった。また、その顔料粒子分散液を、透析チューブを用いて24時間透析し、ドデシル硫酸ナトリウム、DMSO等を除去した後、乾燥し、顔料粒子粉体を得た。その粉体を再びイオン交換水に投じて、高速撹拌型分散機(商品名:クレアミックス、エム・テクニック社製)にて攪拌したところ、再び顔料粒子分散液を得、体積平均粒子径はビーカー中で得られたものよりも大きく、1122nmであった。
【0237】
(比較例11)
ドデシル硫酸ナトリウム水溶液100gを、ビーカー内、溶液温度20℃、300rpmで攪拌しながら1.59w/w% PR−170/1.70w/w% 8N−KOH水溶液/75.7w/w% ジメチルスルホキシド(DMSO)/21.6w/w% イオン交換水の混合溶液(pH >16)を20g投入した。顔料粒子分散液が得られた。得られた顔料粒子分散液の粒度分布を、レーザードップラー法を応用した粒度分布測定装置〔日機装(株)製の商品名マイクロトラック UPA150〕を用いて測定したところ、体積平均粒子径は448nmであった。また、その顔料粒子分散液を透析チューブを用いて24時間透析し、ドデシル硫酸ナトリウム、DMSO等を除去した後、乾燥し、顔料粒子粉体を得た。その粉体を再びイオン交換水に投じて、高速撹拌型分散機(商品名:クレアミックス、エム・テクニック社製)にて攪拌したところ、再び顔料粒子分散液を得、体積平均粒子径はビーカー中で得られたものよりも大きく、968nmであった。
【0238】
以上の事から、接近・離反可能に互いに対向して配設され、少なくとも一方が他方に対して回転する処理用面間にできる、薄膜流体中で均一に攪拌・混合する反応装置を用いて得られた顔料ナノ粒子は、ナノサイズの微粒子でありながら再分散性に優れていることが明らかとなった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接近・離反可能な相対的に回転する2つの処理用面間に1mm以下の微小間隔を維持し、この微小間隔に維持された2つの処理用面間を被処理流動体の流路とすることによって、被処理流動体の強制薄膜を形成し、この強制薄膜中において顔料物質の析出を行うことを特徴とする顔料ナノ粒子の製造方法。
【請求項2】
接近・離反可能な相対的に変位する処理用面の間に被処理流動体を供給し、当該流動体の供給圧と回転する処理用面の間にかかる圧力とを含む接近方向への力と離反方向への力との圧のバランスによって処理用面間の距離を微小間隔に維持し、この微小間隔に維持された2つの処理用面間を被処理流動体の流路とすることによって、被処理流動体の強制薄膜を形成し、この強制薄膜中において顔料物質の析出を行うことを特徴とする顔料ナノ粒子の製造方法。
【請求項3】
接近・離反可能、且つ相対的に変位する第1処理用面と第2処理用面との間に被処理流動体を供給し、
当該流動体の供給圧と回転する上記両処理用面の間にかかる圧力とを含む接近方向への力と離反方向への力との圧のバランスによって上記両処理用面間の距離を微小間隔に維持し、
この微小間隔に維持された2つの処理用面間を上記被処理流動体の流路とすることによって、上記被処理流動体が薄膜流体を形成し、
上記の薄膜流体中において顔料物質の析出を行う顔料ナノ粒子の製造方法において、
上記第1処理用面と上記第2処理用面のうちの少なくとも何れか一方の処理用面には、その上流から下流に向けて伸びる凹部が形成され、この凹部は上記被処理流動体のうち一種の被処理流動体を上記第1処理用面と第2処理用面との間に導くものであり、
上記一種の被処理流動体とは異なる他の一種の被処理流動体が通される独立した別途の導入路を備え、この導入路に通じる少なくとも一つの開口部が上記第1処理用面と第2処理用面の少なくとも何れか一方に設けられ、この導入路から上記の他の一種の被処理流動体を、上記両処理用面間に導入し、
上記一種の被処理流動体と他の一種の被処理流動体とを、上記薄膜流体中で混合するものであり、
上記凹部よりも下流側に、上記開口部が設置されたものであることを特徴とする、顔料ナノ粒子の製造方法
【請求項4】
接近・離反可能、且つ相対的に変位する第1処理用面と第2処理用面との間に被処理流動体を供給し、
当該流動体の供給圧と回転する上記両処理用面の間にかかる圧力とを含む接近方向への力と離反方向への力との圧のバランスによって上記両処理用面間の距離を微小間隔に維持し、
この微小間隔に維持された2つの処理用面間を上記被処理流動体の流路とすることによって、上記被処理流動体が薄膜流体を形成し、
上記の薄膜流体中において顔料物質の析出を行う顔料ナノ粒子の製造方法において、
上記第1処理用面と上記第2処理用面のうちの少なくとも何れか一方の処理用面には、その上流から下流に向けて伸びる凹部が形成され、この凹部は上記被処理流動体のうち一種の被処理流動体を上記第1処理用面と第2処理用面との間に導くものであり、
上記一種の被処理流動体とは異なる他の一種の被処理流動体が通される独立した別途の導入路を備え、この導入路に通じる少なくとも一つの開口部が上記第1処理用面と第2処理用面の少なくとも何れか一方に設けられ、この導入路から上記の他の一種の被処理流動体を、上記両処理用面間に導入し、
上記一種の被処理流動体と他の一種の被処理流動体とを、上記薄膜流体中で混合するものであり、
上記開口部からの上記の他の一種の被処理流動体の導入方向が第2処理用面2に対して傾斜していることを特徴とする、顔料ナノ粒子の製造方法。
【請求項5】
接近・離反可能、且つ相対的に変位する第1処理用面と第2処理用面との間に被処理流動体を供給し、
当該流動体の供給圧と回転する上記両処理用面の間にかかる圧力とを含む接近方向への力と離反方向への力との圧のバランスによって上記両処理用面間の距離を微小間隔に維持し、
この微小間隔に維持された2つの処理用面間を上記被処理流動体の流路とすることによって、上記被処理流動体が薄膜流体を形成し、
上記の薄膜流体中において顔料物質の析出を行う顔料ナノ粒子の製造方法において、
上記第1処理用面と上記第2処理用面のうちの少なくとも何れか一方の処理用面には、その上流から下流に向けて伸びる凹部が形成され、この凹部は上記被処理流動体のうち一種の被処理流動体を上記第1処理用面と第2処理用面との間に導くものであり、
上記一種の被処理流動体とは異なる他の一種の被処理流動体が通される独立した別途の導入路を備え、この導入路に通じる少なくとも一つの開口部が上記第1処理用面と第2処理用面の少なくとも何れか一方に設けられ、この導入路から上記の他の一種の被処理流動体を、上記両処理用面間に導入し、
上記一種の被処理流動体と他の一種の被処理流動体とを、上記薄膜流体中で混合するものであり、
上記開口部からの上記の他の一種の被処理流動体の導入方向が、上記第2処理用面2に沿う平面において、方向性を有するものであることを特徴とする、顔料ナノ粒子の製造方法
【請求項6】
上記開口部からの上記の他の一種の被処理流動体の導入方向が、上記第2処理用面の半径方向の成分にあっては中心から遠ざかる外方向であって、且つ、回転する処理用面間における流体の回転方向に対しての成分にあっては順方向であることを特徴とする、請求項5記載の顔料ナノ粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2010−189661(P2010−189661A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106424(P2010−106424)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【分割の表示】特願2009−522635(P2009−522635)の分割
【原出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【出願人】(595111804)エム・テクニック株式会社 (38)
【Fターム(参考)】