説明

顔料分散体及び該顔料分散体を用いたインク組成物、カラーフィルター用黄色レジスト組成物

【課題】分散性に優れた顔料分散体、また、該顔料分散体を用いた、明度が高く黄色の色相に優れ、分光特性および表示コントラストが高い画像表示を可能とするカラーフィルター用黄色レジスト組成物、インク組成物を提供する。
【解決手段】少なくとも、分散媒体中、一般式(1)


で表される化合物とベンゾピロール基を有するイエロー顔料を含む事を特徴とする顔料分散体。[一般式(1)において、R1、R2、R3、及びR’1、R’2、R’3は、各々独立して、水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表す。]

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料、インキ、トナー、カラーフィルター、樹脂成型品等の製造工程において用いられる顔料分散体に関する。更に、該顔料分散体を着色剤とするインク組成物及びカラーフィルター用黄色レジスト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、カラー画像の普及によって、カラー画像の高画質化への要求が高まっている。デジタルフルカラー複写機やプリンターにおいては、色画像原稿をブルー、グリーン、レッドの各色フィルターで色分解した後、オリジナル画像に対応した潜像をイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色現像剤を用いて現像する。そのため、各色の現像剤中の着色剤が持つ着色力が画質に大きな影響を与えることになる。しかし一般に、顔料の各種媒体への分散においては、顔料を十分に微細化させることや、均一に分散させることが困難である。
【0003】
透明性と着色力が高く、耐候性に優れるイエロー顔料の例として、C.I.Pigment Yellow 185のようなイソインドリン骨格を有する顔料がある。しかしながら、この様な顔料は自己凝集が起こりやすく、十分な分散状態が得られない。そのため、透明性や彩度において、顔料のもつ本来の性能を十分に発揮できないという課題があった。
【0004】
特許文献1では、上記の問題を改善するために、イソインドリン系顔料にスルホン酸基を導入した顔料誘導体を含有する顔料分散液が記載されている。しかしながら、顔料の分散性においては、依然改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−112919号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、顔料分散性に優れた顔料分散体を提供することを目的とする。また、該顔料分散体を用いたインク組成物及びカラーフィルター用黄色レジスト組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、分散媒体中に、一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表されるイエロー顔料とを含有する顔料分散体に関する。また、顔料分散体を含有するインク組成物、カラーフィルター用黄色レジスト組成物に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、分散性に優れた顔料分散体を提供することができる。更に、該顔料分散体を用いる事で、良好な黄色の色調を有するインク組成物、カラーフィルター用レジスト組成物を提供する事が出来る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】一般式(1)で表される化合物(7)のDMSO−d中、室温、400MHzにおけるH NMRスペクトルを表す図である。
【図2】実施例における顔料分散体(4)のSEM写真を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明者らは、前記した従来技術の課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、分散媒体中に一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表されるイエロー顔料とを含有した顔料分散体であれば、優れた顔料分散性が得られる事を見出した。また、該顔料分散体を、インク組成物やカラーフィルター用レジスト組成物に使用すれば、良好な黄色の色調が得られることを見出した。
【0011】
【化1】

【0012】
【化2】

【0013】
一般式(1)において、R〜R、およびR’〜R’は、各々独立して、水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表し、
アルキル基、アリール基及びアラルキル基は、置換基を有していても良い。
【0014】
一般式(1)中のR〜R、およびR’〜R’におけるアルキル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチル基、ブチル基、オクチル基、ドデシル基、ノナデシル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、エチルヘキシル基等の直鎖、分岐又は環状の炭素数1〜20個のアルキル基が挙げられる。
【0015】
一般式(1)中のR〜R、およびR’〜R’におけるアリール基としては、特に限定されるものではないが、例えば、フェニル基、ナフチル基等の6〜14員環の単環式又は多環式アリール基が挙げられる。
【0016】
一般式(1)中のR〜R、およびR’〜R’におけるアラルキル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
【0017】
一般式(1)中のR〜R、およびR’〜R’は上記したような官能基を表すが、化合物の安定性を著しく阻害するものでなければ、これらの官能基は更に置換基を有しても良い。この場合、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基;フェニル基等のアリール基;メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基等のアルコキシ基;メチルアミノ基、プロピルアミノ基等のモノ置換アミノ基;ジメチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、N−エチル−N−フェニル基等のジ置換アミノ基;カルボキシル基等が挙げられる。
【0018】
一般式(1)において、R、R及びRが同一の官能基であり、R’、R’及びR’が同一の官能基であることが好ましい。R、R及びRが同一の官能基であり、R’、R’及びR’が同一の官能基であることによって、一般式(1)で示される化合物の製造が容易となり、コスト削減が見込まれるためである。
【0019】
一般式(1)におけるR〜Rがアルキル基である場合が好ましい。これは、一般式(1)で表される化合物の溶剤等への溶解性が向上し、顔料の分散性を向上させることができるためである。特に、一般式(1)におけるR〜Rが、シクロヘキシル基、メチルシクロヘキシル基、エチルヘキシル基等の分岐した又は環状である置換基を有する場合や、ブトキシプロピル基等のような構造を有する場合が好ましい。また、一般式(1)において、R’〜R’が水素原子であることが好ましい。
【0020】
以下に、本発明で用いられる一般式(1)で表される化合物の具体例を示す。なお、一般式(1)で表される化合物は、下記の例に限定されるものではない。
【0021】
【化3】

【0022】
一般式(1)中のR〜Rとして、化合物(1)や化合物(2)のように環構造を有するアルキル基を有する場合、化合物(5)のような分岐構造を有するアルキル基を有する場合、化合物(7)のような配位性のヘテロ原子(酸素原子など)を有するアルキル基を有する場合、特に高い効果が得られる。
【0023】
次に、一般式(1)で表される化合物の製造方法について、一態様を以下に示す。すなわち、化合物Aとアミン、あるいはアミン誘導体とを縮合させることで、化合物Bを得る事が出来る。化合物Bに、更に前記と同一の、あるいは異なるアミン、あるいはアミン誘導体とを縮合させることで、化合物Cを得ることができる。また、必要に応じて、各化合物の官能基に対して、公知の保護・脱保護反応、加水分解等の反応を追加することができる。なお、一般式(1)で表される化合物の製造方法はこれに限定されない。
【0024】
【化4】

【0025】
前記一般式(2)において、R〜Rは、各々独立して、水素原子、ハロゲン原子、スルホン酸、スルホン酸エステル基、スルホン酸アミド基、スルホン酸塩、カルボン酸、カルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基又はカルボン酸塩を表し、R、Rは、各々独立して、水素原子、シアノ基、カルボン酸、カルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、カルボン酸塩又はヘテロ環基を表し、RとRは互いに結合して環を形成しても良く、RとRは、互いに結合して環を形成しても良い。
【0026】
前記一般式(2)において、R〜Rにおけるハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等が挙げられる。
【0027】
前記一般式(2)において、R〜Rにおけるスルホン酸エステル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、スルホン酸メチルエステル基、スルホン酸エチルエステル基、スルホン酸プロピルエステル基、スルホン酸ブチルエステル基等が挙げられる。
【0028】
前記一般式(2)において、R〜Rにおけるスルホン酸アミド基としては、特に限定されるものではないが、例えば、スルファモイル基、スルホン酸メチルアミド基、スルホン酸ブチルアミド基、スルホン酸ヘキシルアミド基、スルホン酸フェニルアミド基等のモノ置換アミド基;スルホン酸ジメチルアミド基、スルホン酸ジフェニルアミド基、スルホン酸メチルプロピルアミド基等のジ置換アミド基等が挙げられる。
【0029】
前記一般式(2)において、R〜Rにおけるスルホン酸塩としては、特に限定されるものではないが、例えば、ナトリウム塩、又はカリウム塩等のアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩等のようなアルカリ土類塩;アンモニウム塩、ピリジニウム塩、ピペリジニウム塩、トリエチルアンモニウム塩等のアミン塩;トリプトファン塩、リジン塩、ロイシン塩、フェニルアラニン塩、バリン塩、アルギニン塩等のアミノ酸塩が挙げられる。
【0030】
前記一般式(2)において、R〜Rにおけるカルボン酸エステル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、カルボン酸メチルエステル基、カルボン酸エチルエステル基、カルボン酸プロピルエステル基、カルボン酸ブチルエステル基等が挙げられる。
【0031】
前記一般式(2)において、R〜Rにおけるカルボン酸アミド基としては、特に限定されるものではないが、例えば、カルバモイル基、カルボン酸メチルアミド基、カルボン酸ブチルアミド基、カルボン酸ヘキシルアミド基、カルボン酸フェニルアミド基等のモノ置換アミド基;カルボン酸ジメチルアミド基、カルボン酸ジフェニルアミド基、カルボン酸メチルプロピルアミド基等のジ置換アミド基等が挙げられる。
【0032】
前記一般式(2)において、R〜Rにおけるカルボン酸塩としては、特に限定されるものではないが、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩;マグネシウム塩、カルシウム塩等のようなアルカリ土類塩;アンモニウム塩、ピリジニウム塩、ピペリジニウム塩、トリエチルアンモニウム塩等のアミン塩;トリプトファン塩、リジン塩、ロイシン塩、フェニルアラニン塩、バリン塩、アルギニン塩等のアミノ酸塩が挙げられる。
【0033】
前記一般式(2)において、R、Rにおけるヘテロ環基としては、特に限定されるものではないが、例えば、4〜10員環の単環式又は二環式の窒素、酸素及び硫黄から選択される1〜4個の原子を含有するヘテロ環基が挙げられる。具体的なヘテロ環基としては、例えば、ピリジル基、ピラジニル基、ピリミジニル基、ピロリル基、チエニル基、フリル基、ピラニル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、トリアゾリル基、テトラゾリル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、モルホリニル基、チオモルホリニル基、ピペリジニル基、ピペラジニル基、キノリル基、イソキノリル基、インドリル基、イソインドリル基、ベンゾフリル基、ベンゾチエニル基等が挙げられる。
【0034】
本発明で用いられる一般式(2)で表されるイエロー顔料としては、C.I.Pigment Yellow 139及びC.I.Pigment Yellow 185からなる群より選ばれる1種以上のイエロー顔料であることが好ましい。特に、着色力が高いことから、C.I.Pigment Yellow 185が特に好ましい。これらのイエロー顔料は、それぞれ単独で、あるいは公知のイエロー顔料又は染料を組み合わせて用いることができる。
【0035】
<顔料分散体について>
本発明の顔料分散体について説明する。本発明で言う分散媒体とは、水、有機溶剤又はそれらの混合物の事を指す。
【0036】
本発明の顔料分散体は、分散媒体中に、一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表されるイエロー顔料を分散処理することで得られる。具体的には、例えば以下の方法が挙げられる。分散媒体中に一般式(1)表される化合物と、必要に応じて樹脂を溶かし込み、撹拌しながら、一般式(2)で表される顔料粉末を分散媒体中に除々に加え、十分に分散媒体になじませる。さらに、ボールミル、ペイントシェーカー、ディゾルバー、アトライター、サンドミル、ハイスピードミル等の分散機により機械的せん断力を加えることで、顔料を安定に均一な微粒子状に微分散することができる。
【0037】
顔料分散体中のイエロー顔料の量は、分散媒体100質量部に対して1.0〜30.0質量部であることが好ましい。より好ましくは2.0〜20.0質量部、特に好ましくは3.0〜15.0質量部である。イエロー顔料の含有量が上記の範囲内であれば、粘度の上昇や顔料分散性の悪化を防止することができ、良好な着色力を発揮することができる。
【0038】
一般式(1)で表される化合物の含有量は、一般式(2)で表されるイエロー顔料100質量部に対して、0.05〜10質量部であることが好ましく、0.1〜5質量部であることがより好ましい。
【0039】
顔料分散体は乳化剤を用いて水に分散させる事が出来る。乳化剤としては、例えば、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤が挙げられる。カチオン界面活性剤としては、ドデシルアンモニウムクロライド、ドデシルアンモニウムブロマイド、ドデシルトリメチルアンモニウムブロマイド、ドデシルピリジニウムクロライド、ドデシルピリジニウムブロマイド、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロマイド等が挙げられる。アニオン界面活性剤としては、ステアリン酸ナトリウム、ドデカン酸ナトリウム等の脂肪酸石鹸、ドデシル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼン硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。ノニオン界面活性剤としては、ドデシルポリオキシエチレンエーテル、ヘキサデシルポリオキシエチレンエーテル、ノニルフェニルポリオキシエチレンエーテル、ラウリルポリオキシエチレンエーテル、ソルビタンモノオレアートポリオキシエチレンエーテル、モノデカノイルショ糖等が挙げられる。
【0040】
分散媒体として用いられ得る有機溶剤としては、以下のものが挙げられる。メチルアルコール、エチルアルコール、変成エチルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−アミルアルコール、3−ペンタノール、オクチルアルコール、ベンジルアルコール、シクロヘキサノール等のアルコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のグリコール類;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸エチル、セロソルブアセテート等のエステル類;ヘキサン、オクタン、石油エーテル、シクロヘキサン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶剤;四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラブロムエタン等のハロゲン化炭化水素系溶剤;ジエチルエーテル、ジメチルグリコール、トリオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;メチラール、ジエチルアセタール等のアセタール類;ギ酸、酢酸、プロピオン酸等の有機酸類;ニトロベンゼン、ジメチルアミン、モノエタノールアミン、ピリジン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の硫黄・窒素含有有機化合物類。
【0041】
また、有機溶剤として、重合性単量体を用いることもできる。重合性単量体は、付加重合性あるいは縮重合性単量体であり、好ましくは、付加重合性単量体である。具体的には、以下のものが挙げられる。スチレン、o−(m−、p−)メチルスチレン、o−(m−、p−)エチルスチレン等のスチレン系単量体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ベヘニル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジエチルアミノエチル、アクリロニトリル、アクリル酸アミド等のアクリレート系単量体;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ベヘニル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリロニトリル、メタクリル酸アミド等のメタクリレート系単量体;エチレン、プロピレン、ブチレン、ブタジエン、イソプレン、イソブチレン、シクロヘキセン等のオレフィン系単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、ヨウ化ビニル等のハロゲン化ビニル類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、メチルイソプロペニルケトン等のビニルケトン化合物を挙げることができる。これらは使用用途に応じて、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。本発明の顔料分散体を用いて、重合トナーを作製する場合には、上記重合性単量体の中でも、スチレン又はスチレン系単量体を、単独もしくは他の重合性単量体と混合して使用することが好ましい。特に扱い易さから、スチレンが好ましい。
【0042】
顔料分散体には、さらに樹脂を加えてもよい。具体的には、以下のものが挙げられる。ポリスチレン樹脂、スチレン共重合体、ポリアクリル酸樹脂、ポリメタクリル酸樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリメタクリル酸エステル樹脂、アクリル酸系共重合体、メタクリル酸系共重合体、ポリエステル樹脂、ポリビニルエーテル樹脂、ポリビニルメチルエーテル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリペプチド樹脂。これらの樹脂は単独、あるいは2種以上混合して用いることができる。
【0043】
本発明の顔料分散体においては、分散性を阻害しない限りは、他の着色剤を併用することできる。併用できる着色剤としては、縮合アゾ化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物等、様々なものが挙げられる。
【0044】
<インクについて>
本発明の顔料分散体は、鮮やかな色調を有し、その優れた分光特性により、イエローの着色剤、好ましくは画像情報の記録用材料として用いる事ができる。例えば、分散媒体が水系の場合には、インクジェット用インク、印刷用水性インク、水性塗料、筆記具用水性インク等の着色剤に用いる事が出来る。また、分散媒体が有機溶剤系の場合には、カラーフィルター用レジスト組成物、印刷用油性インク、油性塗料、筆記具用油性インク等の着色剤に用いる事が出来る。
【0045】
本発明の顔料分散体をインク組成物に用いる場合、顔料分散体に含有される分散媒体は、水系媒体であることが好ましい。水系媒体は、水であっても良いし、水と水溶性有機溶剤との混合溶媒であっても良い。水溶性有機溶剤は、水溶性を示すものであれば制限はなく、例えば、アルコール、多価アルコール、ポリエチレングリコール、グリコールエーテル、含窒素極性溶剤、含硫黄極性溶剤などが挙げられる。
【0046】
本発明の顔料分散体を含有するインクを製造する場合に、インクのpHは特に限定されるものではないが、安全性の面を考慮すると、pH4.0〜11.0の範囲内のものが好ましい。また、インクジェット用のインクを作成する場合には、インクの保持性維持のために、尿素、尿素誘導体、トリメチロールプロパンなどの保湿性固形分をインクの成分として用いても良い。保湿性固形分のインク中の含有量は、一般的には、インクに対して0.1質量%以上20.0質量%以下の範囲が好ましく、より好ましくは、3.0質量%以上10.0質量%以下の範囲である。
【0047】
更に、インクには、前記成分以外にも、必要に応じて、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防カビ剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤、水溶性ポリマー等、種々の添加剤を含有させてもよい。
【0048】
本発明の顔料分散体を含有するインクは、熱エネルギーの作用により液滴を吐出させて記録を行うインクジェット記録方式にとりわけ好適に用いられる。また、他のインクジェット記録方法に適用するインクや、一般の筆記用具等の材料としても使用できる。
【0049】
<カラーフィルター用黄色レジスト組成物について>
本発明の顔料分散体は、鮮やかな黄色の色調を有しており、その分光特性により黄色用色材、好ましくは、カラーフィルター用着色剤として用いる事が出来る。黄色レジスト組成物は、一般に、バインダー樹脂、光重合性モノマー、光重合開始剤、溶剤、本発明の顔料分散体を含有する。
【0050】
基板上に異なる分光特性を持つ二種以上の画素が隣接して配列されてなるカラーフィルターにおいては、その複数の画素(例えば、赤、緑、青)のうち、少なくとも1つに本発明の顔料分散体を用いることによって、高透明で高色純度な画素を得ることができる。更に、染料を混合することで分光特性を改善することもできるため、本発明の顔料分散体と染料との混合物を用いてもよい。染料は、要望の色相を得るために2種類以上を混合して用いても構わない。
【0051】
本発明に用いられる一般式(2)で表わされる顔料の含有量としては、バインダー樹脂の質量に対して、0.1〜400質量%であることが好ましく、1〜200質量%であることがより好ましい。
【0052】
本発明のカラーフィルター用の黄色レジスト組成物に使用できるバインダー樹脂としては、光照射部、あるいは、遮光部が有機溶剤、アルカリ水溶液、水、または市販の現像液によって溶解可能なものであればよく、特に限定されるものではない。更に、作業性、廃棄物処理などの観点からは水あるいはアルカリ現像可能な組成を有すものがより望ましい。
【0053】
このような樹脂としては、一般にアクリル酸やメタクリル酸、2−ヒドロキシエチル、アクリルアミド、N−ビニルピロリドンやアンモニウム塩を有するモノマーなどに代表されるような親水性のモノマーとアクリル酸エステルやメタクリル酸エステル、酢酸ビニル、スチレン、N−ビニルカルバゾールなどに代表されるような親油性のモノマーとを適度な混合比で既知の手法で共重合したバインダー樹脂が知られている。これらのバインダー樹脂はエチレン性の不飽和基を有するラジカル重合性のモノマーやオキシラン環、あるいは、オキセタン環を有するカチオン重合性のモノマー、ラジカル発生剤或いは酸発生剤や塩基発生剤との組み合わせによってネガ型、即ち遮光部分が現像によって除去されるタイプのレジストとして用いることができる。
【0054】
また、ポリヒドロキシスチレンのtert−ブチル炭酸エステル、tert−ブチルエステル、テトラヒドロキシピラニルエステル、あるいは、テトラヒドロキシピラニルエーテルなどに代表されるバインダー樹脂を使用することもできる。この種のバインダー樹脂は、酸発生剤との組み合わせによってポジ型、即ち光照射部分が現像によって除去されるタイプのレジストとして用いることができる
本発明のカラーフィルター用黄色レジスト組成物は、光の照射によって付加重合するエチレン性不飽和二重結合を有するモノマーとして、エチレン性不飽和二重結合を1個以上有する光重合性モノマーを含有することが好ましい。前記光重合性モノマーとしては、分子中に少なくとも1個の付加重合可能なエチレン性不飽和基を有し、沸点が常圧で100℃以上の化合物が挙げられる。例えば、ポリエチレングリコールモノアクリレート、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノアクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、フェノキシエチルアクリレートフェノキシエチルメタクリレート等の単官能アクリレート;ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、トリメチロールエタントリアクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパンジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)シアヌレート、グリセリントリアクリレート、グリセリントリメタクリレートなどの多官能アクリレートおよびメタクリレート;トリメチロールプロパンやグリセリンなどの多官能アルコールにエチレンオキシドやプロピレンオキシドを付加した後アクリレート化またはメタクリレート化したものなどの多官能アクリレートや多官能メタクリレートを挙げることができる。
【0055】
さらに、ウレタンアクリレート類、ポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂とアクリル酸またはメタクリル酸の反応生成物であるエポキシアクリレート類などの多官能アクリレートやメタクリレートも挙げられる。上記の中でも、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレートが好ましい。
【0056】
上記光重合性モノマーは、単独で用いても2種類以上を混合して用いても良い。上記光重合性モノマーの含有量としては、着色感光性組成物の質量(全固形分)の5〜50質量%が一般的であり、特に10〜40質量%が好ましい。
【0057】
カラーフィルター用黄色レジスト組成物は、紫外線硬化性である場合には、光重合開始剤を含有して構成される。該光重合開始剤としては、ビシナールポリケトアルドニル化合物、α−カルボニル化合物、アシロインエーテル、多岐キノン化合物、トリアリルイミダゾールダイマー/p−アミノフェニルケトンの組み合わせ、トリオキサジアゾール化合物などが挙げられ、好ましくは、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)ブタノン(イルガキュア369:商品名、チバスペシャルティケミカルズ社製)が挙げられる。なお、着色レジストによる画素の形成に際し、電子線を用いる場合には、上記光重合開始剤は必須ではない。
【0058】
カラーフィルター用の黄色レジスト組成物は上記バインダー樹脂、光重合性モノマー、光重合開始剤、着色剤などを溶解若しくは分散させるための溶剤を含有する。使用できる溶剤としては、シクロヘキサノン、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、エチルベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、エチレングリコールジエチルエーテル、キシレン、エチルセロソルブ、メチル−n−アミルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、トルエン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノール、イソブチルケトン、石油系溶剤などが挙げられる。これらは単独若しくは混合して用いる事ができる。
【実施例】
【0059】
実施例において、「部」及び「%」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。得られた反応生成物の同定は、H及び13C核磁気共鳴分光分析(ECA−400、日本電子(株)製)、及びLC/TOF MS(LC/MSD TOF、Agilent Technologies社製)により行った。
【0060】
[一般式(1)で表される化合物の製造]
一般式(1)で表される化合物として、化合物(1)、(4)、(5)、(7)を、下記の様にして得た。なお、本実施例における化合物(1)、(4)、(5)、(7)は、前述した一般式(1)で表される化合物の具体例における化合物(1)、(4)、(5)、(7)と対応している。
【0061】
化合物(1)として、商品名「リカクリア PC1」(新日本理化株式会社製)を入手し、これを用いた。
【0062】
<化合物(4)の製造例>
クレゾール13.0g(120mmol)、1,2,3−プロパントリカルボン酸7.0g(40mmol)、三酸化二ホウ素1.0g(14.4mmol)のキシレン150mL溶液にn−ドデシルアミン44.5g(240mmol)を添加し、6時間加熱還流させ脱水させた。反応終了後、減圧下濃縮した後、アセトニトリル150mLで、50℃で1時間攪拌させ懸濁洗浄を行った。固体をろ過し、化合物(4)10.0g(収率37%)を得た。
【0063】
<化合物(4)についての分析結果>
[1]H NMR(400MHz、DMSO−d、室温):δ[ppm]=0.85(t、9H、J=6.64Hz)、1.17(m、60H)、2.50(t、11H、J=1.83Hz)、7.64(s、1H)、8.03(s、1H)、10.8(s、1H)
[2]質量分析(ESI−TOF):m/z=676.6414(M−H)
<化合物(5)の製造例>
製造例1における化合物(1)のn−ドデシルアミンを、2−エチルヘキシルアミンに変更したこと以外は、製造例1と同様に製造し、化合物(5)7.3g(収率36%)を得た。
【0064】
<化合物(5)についての分析結果>
[1]H NMR(400MHz、DMSO−d、室温):δ[ppm]=0.80(td、9H、J=7.44、3.51Hz)、0.86(t、9H、J=6.87Hz)、1.2(t、24H、8.47Hz)、1.32(dd、3H、J=11.7、5.72Hz)、2.10(dd、2H、J=14.7、6.87Hz)、2.32(dd、2H、J=14.9、8.01Hz)、2.50(t、1H、J=1.83Hz)、2.96(dtd、6H、J=39.1、13.1、6.41Hz)、7.60(t、1H、6.00Hz)、7.68(t、2H、6.00Hz)
[2]質量分析(ESI−TOF):m/z=508.4524(M−H)
<化合物(7)の製造例>
製造例1における化合物(1)のn−ドデシルアミンを、3−ブトキシプロピルアミンに変更したこと以外は、製造例1と同様に製造し、化合物(7)4.8g(収率23%)を得た。
【0065】
<化合物(7)についての分析結果>
[1]H NMR(400MHz、DMSO−d、室温):δ[ppm]=0.92−0.82(m、9H)、1.3(td、6H、J=14.9、7.48Hz)、1.46(dt、6H、J=15.7、5.95Hz)、1.57(td、6H、J=13.3、6.4Hz)、2.07(dd、2H、J=14.7、6.41Hz)、2.28(dd、2H、J=14.7、7.79Hz)、2.5(t、1H、J=1.60Hz)、2.99(tt、7H、J=22.4、7.56Hz)、3.36−3.30(m、12H)、7.72(dt、3H、J=29.5、5.61Hz)
[2]質量分析(ESI−TOF):m/z=514.3906(M−H)
<化合物(11)の製造例>
1,2,3−プロパントリカルボン酸3.5g(20mmol)のジメチルホルムアミド0.2mL溶液に塩化チオニル7.3mL(100mmol)を滴下した後、90℃で2時間撹拌した。減圧下濃縮した後、ジクロロメタン40mLで希釈した。この溶液をトリエチルアミン10mL及びジブチルアミン12.2mL(72mmol)のジクロロメタン100mL溶液に滴下し、5日間撹拌した。反応終了後、ジクロロメタン400mLで希釈した後、水、1mol/L塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄した。有機層を減圧下濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物(11)7.37g(収率72%)を得た。
【0066】
<化合物(11)の分析結果>
[1]H NMR(400MHz、CDCl、室温):δ[ppm]=0.99−0.84(m、18H)、1.69−1.23(m、24H)、2.53−2.45(m、2H)、2.63−2.55(m、2H)、3.31−3.12(m、10H)、3.46(t、2H、J=8.01Hz)、3.75−3.68(m、1H)
[2]質量分析(ESI−TOF):m/z=510.4699(M+H)
<化合物(12)の製造例>
β−アラニン塩酸塩19.4g(126.3mmol)をジクロロメタン150mLに懸濁させ、1,2,3−プロパントリカルボン酸5.56g(31.6mmol)、N−メチルモルホリン13.9mL(126.3mmol)及び1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDCI)24.2g(126.3mmol)を加え、室温で一晩撹拌した。反応溶液をジクロロメタン450mLで希釈した後、水、1mol/L塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、飽和食塩水で洗浄した。有機層を減圧下濃縮した後、残渣をエタノール及びジエチルエーテルで洗浄することで、化合物(12)11.2g(収率75%)を得た。
【0067】
<化合物(12)の分析結果>
[1]H NMR(400MHz、CDCl、室温):δ[ppm]=2.07(dd、2H、J=14.88、6.64Hz)、2.31(ddd、8H、J=32.06、15.57、8.70Hz)、2.96−2.88(m、1H)、3.20(tt、6H、J=19.23、6.56Hz)、7.75(t、1H、J=5.72Hz)、7.85(t、2H、J=5.50Hz)、12.19(s、3H)
[2]質量分析(ESI−TOF):m/z=388.1697(M+H)
<化合物(13)の製造例>
1,2,3−プロパントリカルボン酸3.5g(20mmol)のメタノール80mL溶液に、N,N−ジエチル−1,3−ジアミノプロパン12.6mL(80mL)及び4−(4,6−ジメトキシ−1,3,5−トリアジン−2−イル)−4−メチルモルホリニウムクロリド(DMT−MM)22.1g(80mmol)を加え、室温で3日間撹拌した。反応溶液を減圧下濃縮した後、シリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製して、化合物(13)2.1g(収率20%)を得た。
【0068】
<化合物(13)の分析結果>
[1]H NMR(400MHz、CDCl、室温):δ[ppm]=1.02(tt、18H、J=15.57、6.49Hz)、1.62(dt、6H、J=17.71、5.38Hz)、2.17(s、2H)、2.35(dd、2H、J=14.65、5.04Hz)、2.54−2.44(m、18H)、3.14−3.10(m、1H)、3.28(dq、6H、J=25.87、6.56Hz)、7.56(3H、t、J=5.27Hz)
[2]質量分析(ESI−TOF):m/z=513.4603(M+H)
[顔料分散体の製造]
<実施例1>
C.I.Pigment Yellow 185(BASF社製、商品名「PALIOTOL Yellow D1155」)6部と化合物(1)0.06部の混合物にポリエステル樹脂48部と酢酸エチル120部を混合し、アトライター(三井鉱山社製)により3時間分散させて、顔料分散体(1)を得た。
【0069】
<実施例2〜3>
実施例1において、酢酸エチルをそれぞれトルエン、エチルメチルケトンに変更したこと以外は実施例1と同様にして、顔料分散体(2)、(3)を得た。
【0070】
<実施例4>
C.I.Pigment Yellow 185(BASF社製、商品名「PALIOTOL Yellow D1155」)12部と化合物(1)0.12部の混合物にスチレン120部を混合し、アトライター(三井鉱山社製)により3時間分散させて、顔料分散体(4)を得た。
【0071】
<実施例5〜7>
実施例4において、化合物(1)の使用量を、それぞれ0.36部、0.60部、1.2部に変更し、それ以外は実施例4と同様にして、顔料分散体(5)〜(7)を得た。
【0072】
<実施例8>
実施例4において、スチレンをシクロヘキサノンに変更し、それ以外は実施例4と同様にして、顔料分散体(8)を得た。
【0073】
<実施例9>
実施例1において、C.I.Pigment Yellow 185を用いる代わりに、C.I.Pigment Yellow 139を用い、酢酸エチルをトルエンに変更し、それ以外は実施例1と同様にして、顔料分散体(9)を得た。
【0074】
<実施例10〜15>
実施例4において、化合物(1)を用いる代わりに、それぞれ化合物(4)、化合物(5)、化合物(7)、化合物(11)、化合物(12)、化合物(13)を用い、それ以外は実施例4と同様にして、顔料分散体(10)〜(15)を得た。
【0075】
<実施例16>
C.I.Pigment Yellow 185(BASF社製、商品名「PALIOTOL Yellow D1155」)6部、化合物(1)0.06部、ドデシル硫酸ナトリウム1.2部の混合物に水60部を混合し、アトライター(三井鉱山社製)により3時間分散させて、顔料分散体(16)を得た。
【0076】
<実施例17、18>
実施例16において、化合物(1)を用いる代わりに、化合物(11)、化合物(13)を用い、それ以外は実施例16と同様にして、顔料分散体(17)、(18)を得た。
【0077】
<実施例19>
実施例4において、スチレンを用いる代わりに、酢酸エチル/トルエン(60部/60部)混合物を用い、それ以外は実施例4と同様にして、顔料分散体(19)を得た。
【0078】
<実施例20、21>
実施例19において、化合物(1)を用いる代わりに、化合物(5)、化合物(12)を用い、それ以外は実施例19と同様にして、顔料分散体(20)、(21)を得た。
【0079】
<実施例22>
実施例4において、化合物(1)を用いる代わりに化合物(7)を用い、スチレンを用いる代わりにスチレン/キシレン(70部/50部)混合物を用い、それ以外は実施例4と同様にして顔料分散体(22)を得た。
【0080】
<比較例1〜3>
実施例1〜3において、化合物(1)を加えないこと以外は、それぞれ実施例1〜3と同様にして顔料分散体(23)〜(25)を得た。
【0081】
<比較例4>
実施例4において、化合物(1)を加えないこと以外は、実施例4と同様にして、顔料分散体(26)を得た。
【0082】
<比較例5>
実施例8において、化合物(1)を加えないこと以外は、実施例8と同様にして、顔料分散体(27)を得た。
【0083】
<比較例6>
実施例9において、化合物(1)を加えないこと以外は、実施例9と同様にして、顔料分散体(28)を得た。
【0084】
<比較例7>
実施例16において、化合物(1)を加えないこと以外は、実施例16と同様にして、顔料分散体(29)を得た。
【0085】
<比較例8>
実施例19において、化合物(1)を加えないこと以外は、それぞれ実施例19と同様にして、顔料分散体(30)を得た。
【0086】
<比較例9>
実施例22において、化合物(7)を加えないこと以外は、それぞれ実施例22と同様にして、顔料分散体(31)を得た。
【0087】
<評価>
顔料分散体(1)〜(31)について、下記の様な評価を行った。
【0088】
[分散性]
顔料分散体の分散性について、評価を行った。粒度測定器(グラインドメーター)(テスター産業株式会社)を用い、顔料の組織粒の大きさを測定する事によって決定した。
A:顔料の組織粒の大きさが2.5μm未満である。(分散性が非常に良い)
B:顔料の組織粒の大きさが2.5μm以上4.5μm未満である。(分散性が良い)
C:顔料の組織粒の大きさが4.5μm以上である。(分散性が悪い)
また、前記顔料分散体をアルミ基板上に展開し、溶媒を自然乾燥によって除去したサンプルを走査電子顕微鏡 S−4800(日立製作所社製)によって100,000倍に拡大観察して分散性を確認した。顔料分散体(4)について、この方法で観察した際のSEM写真を図2に示す。
【0089】
上記、顔料分散体の実施例、及び、顔料分散体の比較例の評価結果を表1にまとめた。表1において、PY185、PY139はそれぞれ、C.I.Pigment Yellow 185、C.I.Pigment Yellow 139を表す。
【0090】
【表1】

【0091】
表1より明らかなように、実施例1〜22の顔料分散体は、対応する比較例の顔料分散体よりも、分散性に優れている。
【0092】
<インクの調製例>
<実施例23>
実施例16で得られた顔料分散体(16)74.0部にアセチレノールEH(川研ファインケミカル(株)製)1.0部、エチレングリコール7.5部、グリセリン7.5部、及び尿素7.5部を加え、十分に撹拌させてインク(1)を作製した。インク(1)を5日間静置した後、目視により均一な状態が保たれている事を確認した。
【0093】
<実施例24、25>
実施例23において、顔料分散体(16)を用いる代わりに、顔料分散体(17)、(18)を用いた以外は実施例23と同様にして、インク(2)、(3)を作成した。インク(2)、(3)をそれぞれ5日間静置した後、目視により均一な状態が保たれている事を確認した。
【0094】
<比較用インク(1)の調製例>
実施例23において、顔料分散体(16)を顔料分散体(29)に変更した以外は実施例23と同様にして、比較用インク(1)を得た。比較用インク(1)を5日間静置した後、目視により黄色固形物の沈降が認められた。
【0095】
以上より、明らかなように、本発明のインク(1)は、対応する比較用インク(1)と比較して、分散性が優れている。
【0096】
<黄色レジスト組成物の調製例>
<実施例26>
n−ブチルメタクリレート40質量%、アクリル酸30質量%、ヒドロキシエチルメタクリレート30質量%の比率からなるアクリル共重合組成物(重量平均分子量10,000)6.7部、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート1.3部、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(光重合開始剤)0.4部のシクロヘキサノン96部の溶液に、実施例8で得られた顔料分散体(8)22部をゆっくり加え室温で3時間攪拌した。これを1.5μmフィルターで濾過することで、黄色レジスト組成物(1)を得た。
【0097】
上記で得られた黄色レジスト組成物を、ガラス上にスピンコートし、その後これを90℃で3分間乾燥させ全面露光し、180℃でポストキュアして目視で均一な塗布サンプルを作成する事が出来た。
【0098】
<実施例27>
C.I.Pigment Yellow 185(BASF社製、商品名「PALIOTOL Yellow D1155」)12部と化合物(13)0.12部の混合物にシクロヘキサノン120部を混合し、アトライター(三井鉱山社製)により3時間分散させて、顔料分散体(32)を得た。実施例26において、顔料分散体(8)を用いる代わりに顔料分散体(32)を用いる以外は同様にして、黄色レジスト組成物(2)を得た。
【0099】
上記で得られた黄色レジスト組成物を、ガラス上にスピンコートし、その後これを90℃で3分間乾燥させ全面露光し、180℃でポストキュアして目視で均一な塗布サンプルを作成する事が出来た。
【0100】
均一な塗布サンプルを作成できたことから、黄色レジスト組成物(1)〜(2)中において、顔料が良好に分散していたことがわかる。
【0101】
<比較用黄色レジスト組成物(1)の調製例>
実施例26において、顔料分散体(8)を顔料分散体(27)に変更した以外は、実施例26と同様な操作を行ったが、1.5μmのフィルターに目詰まりし、黄色レジスト組成物を得る事が出来なかった。
【0102】
フィルターに目詰まりしたことから、顔料の分散性に劣っていたことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明によれば、分散媒中での着色剤の分散性に優れた顔料分散体を得ることができる。この顔料分散体を使用することによって顔料の発色性、塗膜の仕上がり外観、耐候性及び物理的性質等の塗膜性能に優れ、しかも顔料の分散安定性が良好で高顔料濃度化可能な塗料組成物を得ることができる。更に、この顔料分散体を使用することによって、顔料の発色性、分散安定性が良好で、鮮明性、透明性、発色性などに優れたインキ組成物を得ることができる。また、トナー、インクジェットインク、感熱転写記録シート、カラーフィルター用の着色剤、光記録媒体用の色素としても使用することができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散媒体中に、一般式(1)で表される化合物と一般式(2)で表されるイエロー顔料とを含有する顔料分散体。
【化1】


[一般式(1)において、R、R、R、及びR’、R’、R’は、各々独立して、水素原子、アルキル基、アリール基又はアラルキル基を表し、
アルキル基、アリール基及びアラルキル基は、置換基を有していても良い。]
【化2】


[一般式(2)において、R〜Rは各々独立して水素原子、ハロゲン原子、スルホン酸、スルホン酸エステル基、スルホン酸アミド基、スルホン酸塩、カルボン酸、カルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、カルボン酸塩を表し、R、Rは各々独立して水素原子、シアノ基、カルボン酸、カルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、カルボン酸塩、ヘテロ環基を表し、RとRとは互いに結合して環を形成しても良く、RとRは互いに結合して環を形成しても良い。]
【請求項2】
前記一般式(1)において、R、R及びRが同一の官能基であり、R’、R’及びR’が同一の官能基である請求項1に記載の顔料分散体。
【請求項3】
前記一般式(1)において、R、R及びRがアルキル基、R’、R’及びR’が水素原子である請求項1又は2に記載の顔料分散体。
【請求項4】
一般式(2)で表されるイエロー顔料が、C.I.Pigment Yellow 139及びC.I.Pigment Yellow 185からなる群より選ばれる1種以上のイエロー顔料である請求項1〜3の何れか1項に記載の顔料分散体。
【請求項5】
一般式(2)で表されるイエロー顔料が、C.I.Pigment Yellow 185である請求項1〜3の何れか1項に記載の顔料分散体。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか1項に記載の顔料分散体を含有することを特徴とするインク組成物。
【請求項7】
請求項1〜5の何れか1項に記載の顔料分散体を含有することを特徴とするカラーフィルター用黄色レジスト組成物。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−251135(P2012−251135A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−100960(P2012−100960)
【出願日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】