説明

顔料分散体

【課題】顔料粒子の長期間にわたる分散安定性(長期分散安定性)に優れた顔料分散体を提供すること。
【解決手段】本発明の顔料分散体は、顔料と、溶剤と、分散剤とを含むものであって、前記分散剤として、所定の酸価を有する酸価分散剤と、所定のアミン価を有するアミン価分散剤とを含むことを特徴とする。前記酸価分散剤の酸価は、5〜370KOHmg/gであるのが好ましい。また、前記アミン価分散剤のアミン価は、5〜200KOHmg/gであるのが好ましい。また、顔料分散体中における前記酸価分散剤の含有率をX[wt%]、顔料分散体中における前記アミン価分散剤の含有率をX[wt%]としたとき、0.1≦X/X≦1の関係を満足するのが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料分散体に関する。
【背景技術】
【0002】
顔料は、一般に、染料よりも耐候性等に優れるという特徴を有しており、有機顔料を含む顔料分散体が、塗料の用途等に、広く用いられている。
しかしながら、顔料は、一般に、溶剤に対する分散性が低いため、例えば、均一な着色濃度の塗膜を形成したり、均一な膜厚の塗膜を形成したりすることが困難で、形成される塗膜において色むら、濃度むらが発生する等の問題があった。
上記のような問題を解決する目的で、顔料粉体を、疎水性表面処理剤で処理する等の試みがあるが(例えば、特許文献1参照)、このような疎水性表面処理剤を用いた場合であっても、顔料の分散性を十分に長期間にわたって優れたものとするのが困難であった。
【0003】
【特許文献1】特開2007−197545号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、有機顔料(以下、単に顔料という)粒子の長期間にわたる分散安定性(長期分散安定性)に優れた顔料分散体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
このような目的は下記の本発明により達成される。
本発明の顔料分散体は、顔料と、溶剤と、分散剤とを含む顔料分散体であって、
前記分散剤として、所定の酸価を有する酸価分散剤と、所定のアミン価を有するアミン価分散剤とを含むことを特徴とする。
これにより、顔料粒子の長期間にわたる分散安定性(長期分散安定性)に優れた顔料分散体を提供することができる。
【0006】
本発明の顔料分散体では、前記酸価分散剤の酸価は、5〜370KOHmg/gであることが好ましい。
これにより、顔料分散体中における顔料の長期分散安定性を特に優れたものとすることができる。
本発明の顔料分散体では、前記アミン価分散剤のアミン価は、5〜200KOHmg/gであることが好ましい。
これにより、顔料分散体中における顔料の長期分散安定性を特に優れたものとすることができる。
【0007】
本発明の顔料分散体では、顔料分散体中における前記酸価分散剤の含有率をX[wt%]、顔料分散体中における前記アミン価分散剤の含有率をX[wt%]としたとき、0.1≦X/X≦1の関係を満足することが好ましい。
これにより、顔料分散体中における顔料の長期分散安定性を特に優れたものとすることができる。
【0008】
本発明の顔料分散体では、前記酸価分散剤の酸価をAV[KOHmg/g]、前記アミン価分散剤のアミン価をBV[KOHmg/g]、前記酸価分散剤の含有率をX[wt%]、前記アミン価分散剤の含有率をX[wt%]としたとき、0.01≦(AV×X)/(BV×X)≦1.9の関係を満足することが好ましい。
これにより、顔料分散体中における顔料の長期分散安定性を特に優れたものとすることができる。
本発明の顔料分散体では、前記溶剤が、1,3−ブチレングリコールジアセテートおよび/またはジエチレングリコールジブチルエーテルを含むものであることが好ましい。
これにより、顔料分散体中における顔料の長期分散安定性を特に優れたものとすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、顔料粒子の長期間にわたる分散安定性(長期分散安定性)に優れた顔料分散体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。
まず、本発明の顔料分散体の好適な実施形態について説明する。
≪顔料分散体≫
本発明の顔料分散体は、顔料と、溶剤と、分散剤とを含むものである。
<顔料>
顔料としては、各種有機顔料、各種無機顔料を用いることができるが、有機顔料であるのが好ましい。有機顔料を用いることにより、例えば、顔料分散体を用いて形成される塗膜の発色性を特に優れたものとすることができる。有機顔料としては、例えばカラーインデックス(C.I.;The Society of Dyers and Colourists 社発行) においてピグメント(Pigment)に分類されている化合物、具体的には、下記のようなカラーインデックス(C.I.)番号が付されているものを挙げることができる。より具体的には、有機顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー15、C.I.ピグメントイエロー16、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー20、C.I.ピグメントイエロー24、C.I.ピグメントイエロー31、C.I.ピグメントイエロー55、C.I.ピグメントイエロー60、C.I.ピグメントイエロー61、C.I.ピグメントイエロー65、C.I.ピグメントイエロー71、C.I.ピグメントイエロー73、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー81、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー98、C.I.ピグメントイエロー100、C.I.ピグメントイエロー101、C.I.ピグメントイエロー104、C.I.ピグメントイエロー106、C.I.ピグメントイエロー108、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー113、C.I.ピグメントイエロー114、C.I.ピグメントイエロー116、C.I.ピグメントイエロー117、C.I.ピグメントイエロー119、C.I.ピグメントイエロー120、C.I.ピグメントイエロー126、C.I.ピグメントイエロー127、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー129、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー152、C.I.ピグメントイエロー153、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー156、C.I.ピグメントイエロー166、C.I.ピグメントイエロー168、C.I.ピグメントイエロー175;C.I.ピグメントオレンジ1、C.I.ピグメントオレンジ5、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ14、C.I.ピグメントオレンジ16、C.I.ピグメントオレンジ17、C.I.ピグメントオレンジ24、C.I.ピグメントオレンジ34、C.I.ピグメントオレンジ36、C.I.ピグメントオレンジ38、C.I.ピグメントオレンジ40、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントオレンジ46、C.I.ピグメントオレンジ49、C.I.ピグメントオレンジ51、C.I.ピグメントオレンジ61、C.I.ピグメントオレンジ63、C.I.ピグメントオレンジ64、C.I.ピグメントオレンジ71、C.I.ピグメントオレンジ73;C.I.ピグメントバイオレット1、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット29、C.I.ピグメントバイオレット32、C.I.ピグメントバイオレット36、C.I.ピグメントバイオレット38;C.I.ピグメントレッド1、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド4、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド6、C.I.ピグメントレッド7、C.I.ピグメントレッド8、C.I.ピグメントレッド9、C.I.ピグメントレッド10、C.I.ピグメントレッド11、C.I.ピグメントレッド12、C.I.ピグメントレッド14、C.I.ピグメントレッド15、C.I.ピグメントレッド16、C.I.ピグメントレッド17、C.I.ピグメントレッド18、C.I.ピグメントレッド19、C.I.ピグメントレッド21、C.I.ピグメントレッド22、C.I.ピグメントレッド23、C.I.ピグメントレッド30、C.I.ピグメントレッド31、C.I.ピグメントレッド32、C.I.ピグメントレッド37、C.I.ピグメントレッド38、C.I.ピグメントレッド40、C.I.ピグメントレッド41、C.I.ピグメントレッド42、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド48:2、C.I.ピグメントレッド48:3、C.I.ピグメントレッド48:4、C.I.ピグメントレッド49:1、C.I.ピグメントレッド49:2、C.I.ピグメントレッド50:1、C.I.ピグメントレッド52:1、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントレッド57:2、C.I.ピグメントレッド58:2、C.I.ピグメントレッド58:4、C.I.ピグメントレッド60:1、C.I.ピグメントレッド63:1、C.I.ピグメントレッド63:2、C.I.ピグメントレッド64:1、C.I.ピグメントレッド81:1、C.I.ピグメントレッド83、C.I.ピグメントレッド88、C.I.ピグメントレッド90:1、C.I.ピグメントレッド97、C.I.ピグメントレッド101、C.I.ピグメントレッド102、C.I.ピグメントレッド104、C.I.ピグメントレッド105、C.I.ピグメントレッド106、C.I.ピグメントレッド108、C.I.ピグメントレッド112、C.I.ピグメントレッド113、C.I.ピグメントレッド114、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド144、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド150、C.I.ピグメントレッド151、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド168、C.I.ピグメントレッド170、C.I.ピグメントレッド171、C.I.ピグメントレッド172、C.I.ピグメントレッド174、C.I.ピグメントレッド175、C.I.ピグメントレッド176、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド179、C.I.ピグメントレッド180、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド187、C.I.ピグメントレッド188、C.I.ピグメントレッド190、C.I.ピグメントレッド193、C.I.ピグメントレッド194、C.I.ピグメントレッド202、C.I.ピグメントレッド206、C.I.ピグメントレッド207、C.I.ピグメントレッド208、C.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントレッド215、C.I.ピグメントレッド216、C.I.ピグメントレッド220、C.I.ピグメントレッド224、C.I.ピグメントレッド226、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントレッド243、C.I.ピグメントレッド245、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド255、C.I.ピグメントレッド264、C.I.ピグメントレッド265;C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントブルー60;C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36;C.I.ピグメントグリーン58;C.I.ピグメントブラウン23、C.I.ピグメントブラウン25;C.I.ピグメントブラック1、ピグメントブラック7や、これらの誘導体等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0011】
特に、顔料が、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド177とその誘導体、C.I.ピグメントレッド254、ならびに、C.I.ピグメントレッド254とその誘導体の場合、特に好ましくは、C.I.ピグメントレッド177とその誘導体、ならびに、C.I.ピグメントレッド254とその誘導体の場合、発色性に優れた赤色の顔料分散体を得ることができる。また、顔料がこのような材料で構成されたものであると、後述するような酸価分散剤とアミン価分散剤とを併用することによる本発明の効果が、より顕著に発揮され、顔料分散体中における顔料粒子の長期分散安定性を特に優れたものとすることができる。
また、例えば、顔料(赤色顔料)が、下記式(I)または下記式(II)で示される化合物(誘導体)を含有するものである場合、本発明の製造方法を適用した場合における顔料粒子の微分散の効率を特に優れたものとすることができ、顔料分散体中における顔料粒子の長期分散安定性を特に優れたものとすることができる。
【0012】
【化1】

【0013】
【化2】

【0014】
顔料が、C.I.ピグメントグリーン58(臭素化亜鉛フタロシアニン顔料)、または、C.I.ピグメントグリーン58と他の顔料誘導体(他の化学構造を有する顔料の誘導体)であることにより、発色性に優れた緑色の顔料分散体を得ることができる。また、C.I.ピグメントグリーン58は、明度に優れるという特徴を有しているものの、従来においては、安定的に分散させるのが極めて困難な材料であった。これに対し、本発明では、従来においては安定的に分散させるのが極めて困難であったC.I.ピグメントグリーン58を含む場合であっても、顔料分散体中における長期分散安定性を特に優れたものとすることができる。このような効果は、顔料が、C.I.ピグメントグリーン58(主顔料)と他の顔料誘導体(副顔料)である場合に、特に顕著になる。
【0015】
顔料が、C.I.ピグメントグリーン58と他の顔料誘導体である場合、他の顔料誘導体として、下記式(III)で示される化合物(誘導体)を含有するのが好ましい。これにより、本発明の効果がより顕著に発揮され、顔料分散体中における顔料粒子の長期分散安定性を特に優れたものとすることができる。また、後述するような方法において、微分散工程の効率を特に優れたものとすることができ、短時間で、また、比較的小さなエネルギーで、顔料分散体を製造することができるため、顔料分散体の生産性を特に優れたものとすることができ、生産コストの削減にも寄与することができる。
【0016】
【化3】

【0017】
このように、特定の化学構造を有する顔料誘導体(副顔料)を、C.I.ピグメントグリーン58(主顔料)とともに用いることにより、上記のような優れた効果が得られることは、本発明者が鋭意研究を行った結果、見出したことであり、そのメカニズムの詳細は不明であるが、以下のような理由によるものであると考えられる。
C.I.ピグメントグリーン58を構成する臭素化亜鉛フタロシアニンは、分子全体として、高度な共役系が形成されており、平面的な構造となるのが、エネルギー的に安定している。そして、臭素化亜鉛フタロシアニンは、平面状の各分子が積層されるように(平行に)配置することにより、各分子間が有する共役系のπ電子が重なり合った、安定した状態になる。このため、C.I.ピグメントグリーン58は、本来、凝集し易く、溶剤中に安定的に分散させるのが困難である。
一方、上記のような顔料誘導体では、式(III)中において窒素原子に結合している水素原子は、フタルイミド構造を構成する酸素原子との間で、水素結合を形成する。このようなことから、式(III)中において窒素原子に結合している水素原子は、実体的には、キノリン構造を構成する窒素原子とともに、フタルイミド構造を構成する酸素原子とも強固に結合しており、上記のような顔料誘導体(スルホン化顔料誘導体)では、式(III)中において1〜7の番号を付した7原子による安定的な環構造(7員環構造)が形成されている。このような7員環構造を形成することにより、キノリン構造による平面と、フタルイミド構造による平面とは、非平行状態をとることになる。
このように、キノリン構造による平面と、フタルイミド構造による平面とが、非平行となることにより、C.I.ピグメントグリーン58(臭素化亜鉛フタロシアニン)に対して適度な親和性を有する顔料誘導体(スルホン化顔料誘導体)が、C.I.ピグメントグリーン58の分子間に入り込み、上記のように、本来、凝集し易いC.I.ピグメントグリーン58を凝集しにくいものとすることができる。さらに、上記のような顔料誘導体(スルホン化顔料誘導体)は、分子内にスルホ基を有しているため、後述する溶剤に対する分散性に優れている。以上のようなことが、相乗的に作用し合い、上記のような非常に優れた効果が得られるものと考えられる。
C.I.ピグメントグリーン58と上記のような顔料誘導体(スルホン化顔料誘導体)とを含む場合、顔料分散体中における顔料誘導体(スルホン化顔料誘導体)の含有率は、特に限定されないが、C.I.ピグメントグリーン58(主顔料):100重量部に対して、2〜32重量部であるのが好ましく、7〜28重量部であるのがより好ましい。これにより、顔料分散体中における顔料粒子の長期分散安定性を特に優れたものとすることができるとともに、顔料分散体を用いて形成される塗膜の明度を特に優れたものとすることができる。
【0018】
また、顔料が、C.I.ピグメントブルー15:6、および、C.I.ピグメントブルー15の誘導体であることにより、発色性に優れた青色の顔料分散体を得ることができる。また、顔料分散体中における顔料粒子の長期分散安定性を特に優れたものとすることができる。
顔料分散体中における顔料の含有率は、10wt%以上であるのが好ましく、10〜25wt%であるのがより好ましい。このように、顔料の含有率が十分に高いものであると、例えば、顔料分散体を用いて形成される塗膜の発色濃度を特に高いものとすることができる。また、所定の膜厚、色濃度の塗膜を形成するのに要する顔料分散体の量を少なくすることができ、省資源の観点から有利である。また、塗膜を形成する際における溶媒の揮発量を抑制することができるため、環境に対する負荷を軽減することができる。
【0019】
<溶剤>
溶剤は、顔料分散体において、顔料を分散する分散媒として機能するものである。また、溶剤は、後述するような顔料分散体の製造方法では、分散媒分散液中において、分散樹脂を溶解する溶媒として機能するものである。
本発明では、溶剤としては、水溶性溶媒が好ましく使用される。溶剤として水溶性溶媒を用いることにより、後述するような分散剤の分散性を特に優れたものとすることができる。水溶性溶剤としては、親水性の溶媒を用いることができ、具体的には、例えば、25℃における水100gに対する溶解度が3g以上の液体を用いることができる。
【0020】
水溶性溶剤としては、一般に、水酸基等の親水性の高い官能基を有する化合物や、ポリグリコール骨格を有する化合物等を好適に用いることができる。
水溶性溶剤の具体例としては、エタノール、メタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロパノール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、1−メチル−1−メトキシブタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−iso−プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテル等のグリコールエーテル類、ホルムアミド、アセトアミド、ジメチルスルホキシド、ソルビット、ソルビタン、アセチン、ジアセチン、トリアセチン、スルホラン等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
本発明においては、顔料分散体の保存時等における溶剤の蒸発による不本意な粘度変化等を防止する等の目的で、沸点が180℃以上の高沸点水溶性有機溶剤を用いることができる。
沸点が180℃以上の水溶性有機溶剤の具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ペンタメチレングリコール、トリメチレングリコール、2−ブテン−1,4−ジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルグリコール、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコール、分子量2000以下のポリエチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、イソプロピレングリコール、イソブチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、メソエリスリトール、ペンタエリスリトール、1,3−ブチレングリコールジアセテートおよびジエチレングリコールジブチルエーテル等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。溶剤としては、これらの高沸点有機溶媒の中でも、1,3−ブチレングリコールジアセテートおよび/またはジエチレングリコールジブチルエーテルを用いるが好ましい。これにより、容易に、後に詳述する分散剤(酸価分散剤およびアミン価分散剤)の分散状態を、より好適なものとすることができ、顔料分散体中における顔料粒子の長期分散安定性を特に優れたものとすることができる。また、顔料分散体中における顔料の含有率を高くした場合であっても、顔料の長期分散安定性を十分に優れたものとすることができる。また、後述するような方法で顔料分散体を製造する場合においては、顔料分散体を効率よく製造することができ、顔料分散体の生産性を特に優れたものとすることができる。上記のような効果は、1,3−ブチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジブチルエーテルのうち、1,3−ブチレングリコールジアセテートを用いた場合に特に顕著に発揮される。
【0022】
<分散剤>
分散剤は、顔料分散体中における顔料粒子の分散性を向上させるのに寄与する成分である。
本発明において、顔料分散体は、分散剤として、所定の酸価を有する酸価分散剤と、所定のアミン価を有するアミン価分散剤とを含む。これにより、顔料分散体の粘度を低下させる粘度低減効果を発揮する酸価分散剤による効果と、顔料分散体の粘度を安定化させるアミン価分散剤による効果とが両立され、顔料分散体中における顔料の分散安定性を特に優れたものとすることができる。また、酸価分散剤とアミン価分散剤とを用いることにより、以下のような効果も得られる。すなわち、後述するような方法で顔料分散体を製造する場合、微分散工程において、分散剤分散液中に添加された顔料粒子(微分散されていない比較的粒径の大きい顔料粒子)の表面に、分散剤を効率よく付着(吸着)させ、当該顔料粒子(微分散されていない比較的粒径の大きい顔料粒子)の分散剤分散液中における分散性を優れたものとすることができる。これにより、微分散工程における微分散処理を効率よく行うことができ、顔料分散体の生産性を特に優れたものとすることができるとともに、最終的に得られる顔料分散体中における顔料粒子(微分散された顔料微粒子)の長期分散安定性を特に優れたものとすることができる。また、後述するような方法は、顔料の微分散処理を行うのに先立ち、分散剤と分散樹脂と溶剤とを含む混合物を攪拌することにより、溶剤中に分散剤を分散させた分散剤分散液を得る予備分散工程を有しているが、このような方法において、酸価分散剤とアミン価分散剤とを併用することにより、分散剤の会合(酸価分散剤とアミン価分散剤との会合)を確実に防止し、顔料の分散安定性を特に優れたものとすることができる。
【0023】
[酸価分散剤]
上記のように、酸価分散剤は、所定の酸価(零を除く)を有している。
酸価分散剤の酸価(固形分換算したときの酸価)は、特に限定されないが、5〜370KOHmg/gであるのが好ましく、20〜270KOHmg/gであるのがより好ましく、30〜135KOHmg/gであるのがさらに好ましい。酸価分散剤の酸価が前記範囲内の値であると、アミン価分散剤と併用することによる相乗効果がより顕著に発揮され、顔料の分散安定性を特に優れたものとすることができる。分散剤についての酸価は、例えば、DIN EN ISO 2114に準拠する方法により求めることができる。
なお、酸価分散剤は、所定のアミン価を有していないもの、すなわち、アミン価が零である。
【0024】
酸価分散剤の具体例としては、ディスパービックP104、ディスパービックP104S、ディスパービック220S、ディスパービック110、ディスパービック111、ディスパービック170、ディスパービック171、ディスパービック174、ディスパービック2095(以上、ビックケミー社製);EFKA 5010、EFKA 5065、EFKA 5066、EFKA 5070、EFKA 7500、EFKA 7554(以上、チバスペシャリティ−社製);ソルスパース3000、ソルスパース16000、ソルスパース17000、ソルスパース18000、ソルスパース36000、ソルスパース36600、ソルスパース41000(以上、ルーブリゾール社製)等が挙げられる。なお、本発明に適用される酸価分散剤が、例示されたものに限定されないことは言うまでもない。
【0025】
[アミン価分散剤]
上記のように、アミン価分散剤は、所定のアミン価(零を除く)を有している。
アミン価分散剤のアミン価(固形分換算したときのアミン価)は、特に限定されないが、5〜200KOHmg/gであるのが好ましく、30〜170KOHmg/gであるのがより好ましく、40〜130KOHmg/gであるのがさらに好ましい。アミン価分散剤のアミン価が前記範囲内の値であると、酸価分散剤と併用することによる相乗効果がより顕著に発揮され、顔料の分散安定性を特に優れたものとすることができる。分散剤についてのアミン価は、例えば、DIN 16945に準拠する方法により求めることができる。
なお、アミン価分散剤は、所定の酸価を有していないもの、すなわち、酸価が零である。
【0026】
アミン価分散剤の具体例としては、ディスパービック102、ディスパービック160、ディスパービック161、ディスパービック162、ディスパービック163、ディスパービック164、ディスパービック166、ディスパービック167、ディスパービック168、ディスパービック2150、ディスパービックLPN6919、ディスパービック9075、ディスパービック9077(以上、ビックケミー社製);EFKA 4015、EFKA 4020、EFKA 4046、EFKA 4047、EFKA 4050、EFKA 4055、EFKA 4060、EFKA 4080、EFKA 4300、EFKA 4330、EFKA 4340、EFKA 4400、EFKA 4401、EFKA 4402、EFKA 4403、EFKA 4800(以上、チバスペシャリティ−社製);アジスパーPB711(以上、味の素ファインテクノ社製);Anti−Terra−205(ビックケミー社製)等が挙げられる。なお、本発明に適用されるアミン価分散剤が、例示されたものに限定されないことは言うまでもない。
【0027】
顔料分散体中における酸価分散剤の含有率をX[wt%]、顔料分散体中におけるアミン価分散剤の含有率をX[wt%]としたとき、0.1≦X/X≦1の関係を満足するのが好ましく、0.15≦X/X≦0.5の関係を満足するのがより好ましい。このような関係を満足することにより、酸価分散剤とアミン価分散剤とを併用することによる相乗効果がより顕著に発揮され、顔料の分散安定性を特に優れたものとすることができる。
【0028】
また、酸価分散剤の酸価をAV[KOHmg/g]、アミン価分散剤のアミン価をBV[KOHmg/g]、前記酸価分散剤の含有率をX[wt%]、前記アミン価分散剤の含有率をX[wt%]としたとき、0.01≦(AV×X)/(BV×X)≦1.9の関係を満足するのが好ましく、0.10≦(AV×X)/(BV×X)≦0.95の関係を満足するのがより好ましい。このような関係を満足することにより、酸価分散剤とアミン価分散剤とを併用することによる相乗効果がより顕著に発揮され、顔料の分散安定性を特に優れたものとすることができる。
【0029】
[他の分散剤]
本発明において、顔料分散体は、酸価分散剤、アミン価分散剤以外の分散剤を含むものであってもよい。すなわち、顔料分散体は、酸価およびアミン価がいずれも零である分散剤を含むものであってもよい。
このような分散剤の具体的な例としては、ディスパービック101、ディスパービック103、ディスパービック106、ディスパービック108、ディスパービック109、ディスパービック112、ディスパービック116、ディスパービック140、ディスパービック142、ディスパービック180、ディスパービック182、ディスパービック183、ディスパービック184、ディスパービック185、ディスパービック2000、ディスパービック2001、ディスパービック2050、ディスパービック2070(以上、ビックケミー社製);EFKA 4008、EFKA 4009、EFKA 4010、EFKA 4406、EFKA 4408、EFKA 4015(以上、チバスペシャリティ−社製);ソルスパース9000、ソルスパース13000、ソルスパース20000、ソルスパース21000、ソルスパース24000、ソルスパース26000、ソルスパース27000、ソルスパース28000、ソルスパース32000、ソルスパース32500、ソルスパース32550、ソルスパース33500、ソルスパース35100、ソルスパース35200、ソルスパース38500、ソルスパース41090、ソルスパース20000(以上、ルーブリゾール社製);アジスパーPA111、アジスパーPB821、アジスパーPB822、アジスパーPB824(以上、味の素ファインテクノ社製);ディスパロン1850、ディスパロン1860、ディスパロン2150、ディスパロン7004、ディスパロンDA−100、ディスパロンDA−234、ディスパロンDA−325、ディスパロンDA−375、ディスパロンDA−705、ディスパロンDA−725、ディスパロンPW−36(以上、楠本化成社製);および、フローレン DOPA−14、フローレン DOPA−15B、フローレン DOPA−17、フローレン DOPA−22、フローレン DOPA−44、フローレン TG−710、フローレン D−90(以上、共栄化学社製)等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。ただし、このような分散剤(他の分散剤)を含む場合、その含有率(複数種の「他の分散剤」を含む場合には、その総和)が、酸価分散剤の含有率、および、アミン価分散剤の含有率よりも少ないものであるのが好ましい。これにより、酸価分散剤とアミン価分散剤とを併用することによる効果が、より確実に発揮される。
顔料分散体中における分散剤の含有率(複数種の成分の総和)は、特に限定されないが、7〜28wt%であるのが好ましく、9〜25wt%であるのがより好ましい。
顔料分散体は、上記以外の成分を含むものであってもよい。顔料分散体を構成する顔料、溶剤、分散剤以外の成分としては、例えば、分散樹脂等が挙げられる。
【0030】
<分散樹脂>
分散樹脂は、顔料粒子の分散性を向上させる機能を有しており、成形時に塗膜の一部を形成する。
分散樹脂としては、例えば、アルギン酸類、ポリビニルアルコール、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、スチレン−アクリル酸樹脂、スチレン−アクリル酸−アクリル酸エステル樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂、スチレン−マレイン酸半エステル樹脂、メタクリル酸−メタクリル酸エステル樹脂、アクリル酸−アクリル酸エステル樹脂、イソブチレン−マレイン酸樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ポリビニルピロリドン、アラビアゴムスターチ、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリエチレンイミン等が挙げられ、これらから選択される1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
顔料分散体中における分散樹脂の含有率は、特に限定されないが、4.2〜21wt%であるのが好ましく、6〜19.5wt%であるのがより好ましい。
【0031】
<その他の成分>
本発明の顔料分散体は、上記以外の成分を含むものであってもよい。このような成分としては、例えば、ビヒクル、pH調整剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、防腐剤、防カビ剤等が挙げられる。
本発明の顔料分散体は、顔料粒子が均一に微分散しており、顔料粒子の長期間にわたる分散安定性(長期分散安定性)に優れている。このため、顔料分散体の経時的な特性変化が効果的に防止され、例えば、長期間にわたって、均一な着色濃度の塗膜の形成、均一な膜厚の塗膜の形成等に好適に適用することができ、形成される塗膜における色むら、濃度むらの発生等を効果的に防止することができる。また、顔料粒子が微分散しているため、顔料の発色性に優れており、例えば、明度の高い塗膜の形成に好適に用いることができる。
【0032】
顔料分散体の25℃における粘度(E型粘度計を用いて測定される粘度(動粘度))は、17mPa・s以下であるのが好ましく、12mPa・s以下であるのがより好ましく、8〜11mPa・s以下であるのがさらに好ましい。このように、顔料分散体の粘度(動粘度)が十分に低いものであると、例えば、塗膜の形成の効率を特に優れたものとすることができるとともに、塗膜の厚さの不本意なばらつき等を効果的に防止することができる。なお、顔料分散体の粘度が低すぎると、例えば、顔料分散体を用いて形成する塗膜の膜厚を十分に厚いものとするのが困難になる可能性がある。なお、顔料分散体の粘度(動粘度)の測定は、例えば、E型粘度計(例えば、東機産業社製RE−01)を用いて行うことができ、特に、JIS Z8809に準拠して行うことができる。
【0033】
また、40℃の環境下に、7日間放置した後の、25℃における顔料分散体の粘度(E型粘度計を用いて測定される粘度(動粘度))の変化量は、0.5mPa・s以下であるのが好ましく、0.3mPa・s以下であるのがより好ましい。このように、顔料分散体の特性変化が十分に少ないものである(顔料分散体の耐久性が優れたものである)と、例えば、顔料分散体を用いて塗膜を形成した場合における色むら、濃度むら等の発生を、長期間にわたってより確実に防止することができる。
本発明の顔料分散体は、例えば、各種塗料、オフセット印刷、グラビア印刷等の各種印刷用インク、フィルム用着色剤、レンズのコート材等に用いることができる。なお、用途は、前記例示のものに限定されない。
【0034】
≪塗膜≫
上述したような顔料分散体は、例えば、塗膜の形成に用いることができる。上記のように、本発明の顔料分散体は、顔料粒子が微分散しており、長期間にわたって優れた分散安定性を保持することができるものであるため、顔料分散体中での顔料粒子の偏在を防止することができ、本発明の顔料分散体を用いて形成される塗膜は、膜厚の均一性に優れ、色むら、濃度むら等の発生が確実に防止されたものとなる。また、本発明によれば、このような高品質の塗膜を、長期間にわたって安定的に形成することができる。
塗膜は、例えば、バーコート、スピンコート、ロールコート、スリットコート、刷毛塗り、オフセット印刷、グラビア印刷等の方法により、基材上に顔料分散体を付与し、その後、必要に応じ乾燥(脱溶剤処理)することにより目的の塗膜を形成することができる。
【0035】
≪顔料分散体の製造方法≫
次に、上述したような顔料分散体の製造方法の好適な実施形態について、説明する。
本実施形態の製造方法は、分散剤と、分散樹脂と、溶剤とを含む混合物を攪拌することにより、溶剤中に分散剤を分散させた分散剤分散液を得る予備分散工程と、分散剤分散液に顔料を添加し、無機ビーズを多段で添加して微分散処理を行う微分散工程とを有する。
【0036】
<予備分散工程>
予備分散工程においては、分散剤と、分散樹脂と、溶剤とを含む混合物を攪拌することにより、溶剤中に分散剤を分散させた分散剤分散液を調製する。これにより、分散剤の会合状態を解いた(ほぐした)状態とすることができる。ところで、本発明で用いる酸価分散剤およびアミン価分散剤は、本来、互いに電気的に引き付け合い易いという性質を有しているが、本実施形態のように、顔料の微分散(微分散工程)に先立って予備分散工程を行うことにより、顔料粒子の表面に、酸価分散剤およびアミン価分散剤を、会合状態を十分に解いた状態で、均一かつ安定的に付着させることができ、分散剤同士の凝集、顔料粒子同士の凝集等を確実に防止することができ、顔料の分散安定性を特に優れたものとすることができる。
【0037】
本工程において、分散樹脂を、分散剤および溶剤とともに、混合しておくことにより、後述する微分散工程で、分散剤分散液中に添加された顔料粒子(微分散されていない比較的粒径の大きい顔料粒子)の表面に、分散剤および分散樹脂を付着させ、当該顔料粒子(微分散されていない比較的粒径の大きい顔料粒子)の分散剤分散液中における分散性を優れたものとすることができる。これにより、微分散工程における微分散処理を効率よく行うことができ、顔料分散体の生産性を特に優れたものとすることができるとともに、最終的に得られる顔料分散体中における顔料粒子(微分散された顔料微粒子)の長期分散安定性を優れたものとすることができる。
【0038】
本工程で調製する分散剤分散液中における分散剤の含有率(複数種の分散剤の含有率の総和)は、特に限定されないが、10〜40wt%であるのが好ましく、12〜32wt%であるのがより好ましい。分散剤の含有率が前記範囲内の値であると、前述したような効果がより顕著に発揮される。
また、本工程で調製する分散剤分散液中における分散樹脂の含有率は、特に限定されないが、6〜30wt%であるのが好ましく、8〜26wt%であるのがより好ましい。分散樹脂の含有率が前記範囲内の値であると、前述したような効果がより顕著に発揮される。
また、本工程で調製する分散剤分散液中における溶剤の含有率は、特に限定されないが、40〜80wt%であるのが好ましく、53〜75wt%であるのがより好ましい。溶剤の含有率が前記範囲内の値であると、前述したような効果がより顕著に発揮される。
【0039】
溶剤の使用量は、特に限定されないが、通常、最終的に得られる顔料分散体において、顔料:100重量部に対する溶剤の含有率が、100〜500重量部となるものであるのが好ましく、100〜300重量部となるものであるのがより好ましく、100〜200重量部となるものであるのがさらに好ましい。溶剤の使用量が少なすぎると、後述する微分散工程での顔料微粒子の均一な分散が困難になる可能性がある。一方、溶剤の使用量が多すぎると、最終的に得られる顔料分散体を用いて形成される膜の強度等を十分に優れたものとするのが困難となる。
【0040】
本工程では、各種攪拌機を用いて上記各成分の混合物を攪拌することにより、分散剤分散液を得る。
本工程で用いることのできる攪拌機としては、例えば、ディスパーミル等の一軸または二軸ミキサー等が挙げられる。
攪拌機を用いた攪拌処理時間は、特に限定されないが、1〜30分間であるのが好ましく、3〜20分間であるのがより好ましい。これにより、顔料分散体の生産性を十分に優れたものとしつつ、分散剤の会合状態をより効果的に解くことができ、最終的に得られる顔料分散体中における顔料粒子の分散安定性を特に優れたものとすることができる。
【0041】
また、本工程での攪拌機が有する攪拌翼の回転数は、特に限定されないが、500〜4000rpmであるのが好ましく、800〜3000rpmであるのがより好ましい。これにより、顔料分散体の生産性を十分に優れたものとしつつ、分散剤の会合状態をより効果的に解くことができ、最終的に得られる顔料分散体中における顔料粒子の分散安定性を特に優れたものとすることができる。また、分散樹脂等の熱等による劣化、変性等を確実に防止することができる。
【0042】
<微分散工程>
次に、上記工程で得られた分散剤分散液に顔料を添加し、無機ビーズを多段で添加して微分散処理を行う(微分散工程)。
このように、本実施形態では、顔料を添加するのに先立ち、上記のような予備分散工程を設けるとともに、顔料を微分散させる工程(微分散工程)において無機ビーズを多段で添加する。微分散工程において、無機ビーズを多段で添加することにより、顔料の微粒化の効率を優れたものとすることができ、最終的に得られる顔料分散体中における顔料粒子を十分に小さいものとすることができる。特に、上述したような酸価分散剤およびアミン価分散剤を併用することによる効果と、予備分散工程および多段での微分散工程を有する方法を用いることによる効果とが、相乗的に作用し合い、最終的に得られる顔料分散体は、顔料の分散安定性に非常に優れ、かつ、非常に優れた明度の塗膜の形成に用いることができるもののとなる。
【0043】
これに対し、微分散工程を多段で行わなかった場合には、最終的に得られる顔料分散体中における顔料粒子を十分に小さいものとすることが困難になったり、顔料分散体の生産性が著しく低下する可能性がある。また、微分散工程を多段で行ったとしても、上述したような予備分散工程を省略した場合には、以下のような問題を生じることがある。すなわち、予備分散工程を省略した場合、顔料を添加する際に、分散剤の会合状態が十分に解かれていない(ほぐされていない)ため、微分散工程において、顔料粒子の表面に、分散剤、分散樹脂を均一に付着させるのが困難となる。また、微分散工程における顔料粒子(微分散されていない比較的粒径の大きい顔料粒子)の、溶剤中における分散性を十分に優れたものとすることが困難となる。
【0044】
本工程は、無機ビーズを多段で添加することにより行うものであればよく、3段以上に分けて無機ビーズを添加するものであってもよいが、無機ビーズを2段で添加するのが好ましい。これにより、最終的に得られる顔料分散体中における顔料粒子の長期分散安定性を十分に優れたものとしつつ、顔料分散体の生産性を特に優れたものとすることができる。
【0045】
以下の説明では、無機ビーズを2段で添加する方法、すなわち、微分散工程において、第1の無機ビーズを用いた第1の処理と、第2の無機ビーズを用いた第2の処理とを行う方法について、代表的に説明する。
本工程で用いる無機ビーズ(第1の無機ビーズ、第2の無機ビーズ)は、無機材料で構成されたものであればいかなる材料で構成されたものであってもよいが、無機ビーズの好適な例としては、ジルコニア製のビーズ(例えば、Toray ceram 粉砕ボール(商品名)、株式会社東レ製)等が挙げられる。
【0046】
[第1の処理]
本工程では、まず、前述した予備分散工程で調製した分散剤分散液に顔料を添加し、所定の粒径の第1の無機ビーズを用いて一次微分散する第1の処理を行う。
第1の処理で用いる第1の無機ビーズは、第2の処理で用いる第2の無機ビーズよりも粒径の大きいものであるのが好ましい。これにより、微分散工程全体としての、顔料の微粒化(微分散)の効率を、特に優れたものとすることができる。
【0047】
第1の無機ビーズの平均粒径は、特に限定されないが、通常、0.5〜3.0mmであり、0.5〜2.0mmであるのが好ましく、0.5〜1.2mmであるのがより好ましい。第1の無機ビーズの平均粒径が前記範囲内の値であると、微分散工程全体としての、顔料の微粒化(微分散)の効率を、特に優れたものとすることができる。これに対し、第1の無機ビーズの平均粒径が前記下限値未満であると、顔料の種類等によっては、第1の処理での顔料粒子の微粒化(小粒径化)の効率が著しく低下する傾向が現れる。また、第1の無機ビーズの平均粒径が前記上限値を超えると、第1の処理での顔料粒子の微粒化(小粒径化)の効率は、比較的優れたものとすることができるものの、第2の処理での顔料粒子の微粒化(小粒径化)の効率が低下し、微分散工程全体としての顔料の微粒化(微分散)の効率が低下する。
【0048】
第1の無機ビーズの使用量は、特に限定されないが、分散剤分散液100重量部に対し、100〜600重量部であるのが好ましく、200〜500重量部であるのがより好ましい。
分散剤分散液に添加する顔料の使用量は、特に限定されないが、分散剤分散液100重量部に対し、12重量部以上であるのが好ましく、18〜35重量部であるのがより好ましい。
【0049】
第1の処理は、顔料、第1の無機ビーズを分散剤分散液に添加した状態で、各種攪拌機を用いて攪拌することにより行うことができる。
第1の処理で用いることのできる攪拌機としては、例えば、パールミル等のメディア型分散機や、ディスパーミル等の一軸または二軸ミキサー等が挙げられる。
攪拌機を用いた攪拌処理時間(第1の処理の処理時間)は、特に限定されないが、10〜120分間であるのが好ましく、15〜40分間であるのがより好ましい。これにより、顔料分散体の生産性を低下させることなく、顔料の微粒化(微分散)を効率よく進行させることができる。
【0050】
また、第1の処理での攪拌機が有する攪拌翼の回転数は、特に限定されないが、1000〜5000rpmであるのが好ましく、1200〜3800rpmであるのがより好ましい。これにより、顔料分散体の生産性を低下させることなく、顔料の微粒化(微分散)をより効率よく進行させることができる。また、分散樹脂等の熱等による劣化、変性等を確実に防止することができる。
【0051】
[第2の処理]
第1の処理を行った後、第2の無機ビーズを用いた第2の処理を行う。これにより、顔料粒子が十分に微分散した顔料分散体が得られる。
第2の処理は第1の無機ビーズを含む状態で行うものであってもよいが、第2の処理に先立ち、第1の無機ビーズを除去するのが好ましい。これにより、第2の処理における顔料の微粒化(微分散)の効率を特に優れたものとすることができる。第1の無機ビーズの除去は、例えば、ろ過等の方法により、容易かつ確実に行うことができる。
【0052】
第2の処理で用いる第2の無機ビーズは、第1の処理で用いる第1の無機ビーズよりも粒径の小さいものであるのが好ましい。これにより、最終的に得られる顔料分散体中における顔料を、十分に微粒化(微分散)させたものとすることができ、顔料分散体における顔料粒子の長期間にわたる分散安定性(長期分散安定性)に特に優れたものとすることができる。
【0053】
第2の無機ビーズの平均粒径は、特に限定されないが、0.03〜0.3mmであるのが好ましく、0.05〜0.2mmであるのがより好ましい。第2の無機ビーズの平均粒径が前記範囲内の値であると、微分散工程全体としての、顔料の微粒化(微分散)の効率を、特に優れたものとすることができる。これに対し、第2の無機ビーズの平均粒径が前記下限値未満であると、顔料の種類等によっては、第2の処理での顔料粒子の微粒化(小粒径化)の効率が著しく低下する傾向が現れる。また、第2の無機ビーズの平均粒径が前記上限値を超えると、顔料粒子の微粒化(微分散)を十分に進行させるのが困難になる可能性がある。
【0054】
第2の無機ビーズの使用量は、特に限定されないが、分散剤分散液100重量部に対し、100〜600重量部であるのが好ましく、200〜500重量部であるのがより好ましい。
第2の処理は、各種攪拌機を用いて行うことができる。
第2の処理で用いることのできる攪拌機としては、例えば、パールミル等のメディア型分散機や、ディスパーミル等の一軸または二軸ミキサー等が挙げられる。
攪拌機を用いた攪拌処理時間(第2の処理の処理時間)は、特に限定されないが、10〜120分間であるのが好ましく、15〜40分間であるのがより好ましい。これにより、顔料分散体の生産性を低下させることなく、顔料の微粒化(微分散)を十分に進行させることができる。
【0055】
また、第2の処理での攪拌機が有する攪拌翼の回転数は、特に限定されないが、1000〜5000rpmであるのが好ましく、1200〜3800rpmであるのがより好ましい。これにより、顔料分散体の生産性を低下させることなく、顔料の微粒化(微分散)をより効率よく進行させることができる。また、分散樹脂等の熱等による劣化、変性等を確実に防止することができる。
【0056】
上記の説明では、微分散処理を2段で行う場合について中心的に説明したが、3段以上の処理を行ってもよい。このような場合、後の処理で用いる無機ビーズの方が、先の処理で用いる無機ビーズよりも小粒径であるのが好ましい。言い換えると、n段目の処理で用いる無機ビーズ(第nの無機ビーズ)の平均粒径は、(n−1)段目の処理で用いる無機ビーズ(第(n−1)の無機ビーズ)の平均粒径よりも小さいものであるのが好ましい。このような関係を満足することにより、顔料粒子の微粒化(微分散)の効率を特に優れたものとすることができるとともに、最終的に得られる顔料分散体中の顔料粒子の粒径をより小さいものとすることができる。
なお、微分散工程(例えば、第1の処理、第2の処理)においては、必要に応じて、例えば、溶剤による希釈等の処理を行ってもよい。
【0057】
以上、本発明について、好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。
例えば、本発明の顔料分散体は、いかなる方法で製造されたものであってもよく、前述したような方法を用いて製造されたものに限定されない。例えば、前述した実施形態では、予備分散工程と多段の微分散工程とを有するものとして説明したが、本発明の顔料分散体は、予備分散工程を有していない方法や、多段ではない微分散工程を有する方法により製造されたものであってもよい。
【実施例】
【0058】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.顔料分散体の調製
(実施例1)
酸価分散剤としてのディスパービック111:5.04g(14重量部)と、アミン価分散剤としてのディスパービック166:28.07g(78重量部)と、分散樹脂としてのSPCN−17X(昭和高分子社製):19.53g(54重量部)と、溶剤としての1,3−ブチレングリコールジアセテート:91.14g(253重量部)とを、内容量400ccの攪拌機(一軸ミキサー)に投入し、ディスパーミルで10分間攪拌して予備分散を行うことにより、分散剤分散液を得た(予備分散工程)。このとき、攪拌機が有する攪拌翼の回転数は、2000rpmとなるようにした。
【0059】
次に、以下に述べるようにして、予備分散工程で得られた分散剤分散液に、顔料を添加し、無機ビーズを多段で添加して微分散処理を行う微分散工程を施した。
まず、得られた分散剤分散液に、顔料:35.99g(100重量部)を添加し、10分間攪拌を行った。このとき、攪拌機が有する攪拌翼の回転数は、2000rpmとなるようにした。また、顔料としては、主としてC.I.ピグメントレッド177で構成された粉末で、その表面付近が式(I)で表される顔料誘導体で構成された粉末:17.99gと、主としてC.I.ピグメントレッド254で構成された粉末で、その表面付近が式(II)で表される顔料誘導体で構成された粉末:18.00gとの混合物を用いた。また、このとき、分散剤分散液と顔料との混合物中における顔料の含有率が15wt%となるように、溶剤としての1,3−ブチレングリコールジアセテートで希釈した。
【0060】
次に、平均粒径0.8mmの無機ビーズ(第1の無機ビーズ、ジルコニア製、「Toray ceram 粉砕ボール」(商品名)、東レ株式会社製):720gを添加して、室温下、30分間攪拌し1段目の分散処理(第1の処理)を行った。このとき、攪拌機が有する攪拌翼の回転数は、2000rpmとなるようにした。
次に、フィルター(「PALL HDCII Membrane Filter」、PALL社製)を用いたろ過により、無機ビーズ(第1の無機ビーズ)を除去し、その後、平均粒径0.1mmの無機ビーズ(第2の無機ビーズ、ジルコニア製、「Toray ceram 粉砕ボール」(商品名)、東レ株式会社製):720gを添加し、更に30分間攪拌し第2段目の分散処理(第2の処理)を行った。このとき、攪拌機が有する攪拌翼の回転数は、2000rpmとなるようにした。また、このとき、最終的に得られる顔料分散体中における顔料の含有率が10wt%となるように、溶剤としての1,3−ブチレングリコールジアセテートで希釈した。
その後、フィルター(「PALL HDCII Membrane Filter」(商品名)、PALL社製)を用いたろ過により、無機ビーズ(第2の無機ビーズ)を除去し、目的とする顔料分散体を得た。
(実施例2〜6)
顔料分散体の調製に用いる材料の種類・使用量、微分散工程(第1の処理、第2の処理)の処理条件を表1、表2に示すように変更した以外は、前記実施例1と同様にして顔料分散体を調製した。
【0061】
(比較例1)
ディスパービック166(アミン価分散剤)を用いず、その代わりに、ディスパービック111(酸価分散剤)の使用量を33.10g(92重量部)に変更した以外は、前記実施例1と同様にして顔料分散体を調製した。すなわち、本比較例では、分散剤として、酸価分散剤のみを用い、アミン価分散剤を用いなかった。
【0062】
(比較例2)
ディスパービック111(酸価分散剤)を用いず、その代わりに、ディスパービック166(アミン価分散剤)の使用量を33.14g(92重量部)に変更した以外は、前記実施例1と同様にして顔料分散体を調製した。すなわち、本比較例では、分散剤として、アミン価分散剤のみを用い、酸価分散剤を用いなかった。
【0063】
(比較例3)
ディスパービック166(アミン価分散剤)およびディスパービック111(酸価分散剤)を用いず、その代わりに、ディスパービック2001(酸価とアミン価の両方を持つ分散剤)を33.07g(92重量部)使用した以外は、前記実施例1と同様にして顔料分散体を調製した。
【0064】
前記各実施例および各比較例での分散剤分散液の組成、分散剤分散液に添加した顔料の種類、使用量を表1にまとめて示した。なお、表1中、C.I.ピグメントレッド177を「PR177」、C.I.ピグメントレッド254を「PR254」、C.I.ピグメントグリーン36を「PG36」、C.I.ピグメントグリーン58を「PG58」、C.I.ピグメントブルー15:6を「PB15:6」、主としてC.I.ピグメントレッド177で構成された粉末で、その表面付近が上記式(I)で表される顔料誘導体で構成された粉末を「PR177D」、主としてC.I.ピグメントレッド254で構成された粉末で、その表面付近が上記式(II)で表される顔料誘導体で構成された粉末を「PR254D」、上記式(III)で表される顔料誘導体で構成された粉末を「PYD」、1,3−ブチレングリコールジアセテートを「S1」、ジエチレングリコールジブチルエーテルを「S2」、トリプロピレングリコールモノメチルエーテルを「S3」、ディスパービック111を「DA2」、ディスパービック2095を「DA3」、ディスパービックP104を「DA4」、ディスパービックLPN6919を「DA5」、ディスパービック166を「DA6」、ディスパービック9075を「DA7」、ディスパービック2001を「DA8」、SPCN−17Xを「DR1」で示した。表1には、分散剤の酸価、アミン価(固形分換算したときの酸価、アミン価)もあわせて示した。なお、酸価の欄には、DIN EN ISO 2114に準拠する方法により求めた値を示し、アミン価の欄には、DIN 16945に準拠する方法により求めた値を示した。また、前記各実施例および各比較例の顔料分散体の製造条件を表2にまとめて示した。表2には、第1の処理終了時、および、第2の処理終了時(最終的な顔料分散体)における顔料の含有率もあわせて示した。
【0065】
【表1】

【0066】
【表2】

【0067】
2.顔料分散体についての評価
前記各実施例および各比較例で得られた顔料分散体について、下記に示すような試験による評価を行った。
2−1.粘度
前記各実施例および各比較例の顔料分散体について、粘度(動粘度)の測定を行い、以下の5段階の基準に従い、評価した。粘度の測定は、25℃の環境下、E型粘度計(東機産業社製、RE−01)を用いて、JIS Z8809に準拠して行った。
【0068】
A:粘度が8mPa・s以上11mPa・s未満。
B:粘度が11mPa・s以上12mPa・s未満。
C:粘度が12mPa・s以上17mPa・s未満。
D:粘度が17mPa・s以上20mPa・s未満。
E:粘度が20mPa・s以上。
【0069】
2−2.加熱処理後の外観変化
前記各実施例および各比較例の顔料分散体について、40℃の環境下に、7日間放置した後、目視による観察を行い、以下の4段階の基準に従い、評価した。
A:加熱前からの変化が全く認められない。
B:顔料粒子の凝集・沈降がわずかに認められる。
C:顔料粒子の凝集・沈降がはっきりと認められる。
D:顔料粒子の凝集・沈降が顕著に認められる。
【0070】
2−3.粘度の変化量
前記各実施例および各比較例の顔料分散体について、40℃の環境下に、7日間放置した後の粘度(動粘度)を測定し、製造直後の粘度(上記「2−1.粘度」で求めた粘度)との差を求めた。すなわち、製造直後の粘度をν[mPa・s]、40℃の環境下に、7日間放置した後の粘度をν[mPa・s]としたとき、ν−νで表される値を求めた。このようにして求められた値について、以下の5段階の基準に従い、評価した。粘度の測定は、25℃の環境下、E型粘度計(東機産業社製、RE−01)を用いて、JIS Z8809に準拠して行った。
【0071】
A:ν−νの値が0.2mPa・s未満。
B:ν−νの値が0.2mPa・s以上0.3mPa・s未満。
C:ν−νの値が0.3mPa・s以上0.5mPa・s未満。
D:ν−νの値が0.5mPa・s以上0.7mPa・s未満。
E:ν−νの値が0.7mPa・s以上。
【0072】
3.塗膜の評価
前記各実施例および各比較例で得られた顔料分散体(製造直後の顔料分散体)、および、40℃の環境下に7日間放置した顔料分散体(加熱環境下に放置した顔料分散体)を用いて形成された塗膜について、下記に示すような試験による評価を行った。
【0073】
<評価用シートの作製>
各試験を行うのに先立ち、以下に述べるような方法で、評価用シートを作製した。
まず、厚さ:0.3mmのポリイミドフィルムフィルム(30cm×30cm)を多数枚用意した。
次に、バーコーターにより、上記のポリイミドフィルムフィルムの一方の主面上に、それぞれ、前記各実施例および各比較例の顔料分散体(製造直後の顔料分散体、および、加熱環境下に放置した顔料分散体)を塗布した。
その後、室温で、1.5時間放置することにより、溶剤を除去し、平均膜厚:70μmの塗膜を得た。
なお、塗膜の形成の条件は、各評価用シートで同一となるようにした。
【0074】
3−1.膜厚均一性
前記各実施例および各比較例の評価用シートについて、等間隔の120箇所の点において塗膜の厚さを求め、求められた値から、標準偏差(σ)を求め、以下の5段階の基準に従い、評価した。標準偏差(σ)が小さいほど、膜厚の均一性に優れているといえる。
A:標準偏差(σ)が0.8μm未満。
B:標準偏差(σ)が0.8μm以上1.3μm未満。
C:標準偏差(σ)が1.3μm以上1.8μm未満。
D:標準偏差(σ)が1.8μm以上3.0μm未満。
E:標準偏差(σ)が3.0μm以上。
【0075】
3−2.色むら、濃度むらの発生
前記各実施例および各比較例の評価用シートについて、目視による観察を行い、各部位での色むら、濃度むらの発生状況を、以下の5段階の基準に従い、評価した。
A:色むら、濃度むらが全く認められない。
B:色むら、濃度むらがほとんど認められない。
C:色むら、濃度むらがわずかに認められる。
D:色むら、濃度むらがはっきりと認められる。
E:色むら、濃度むらが顕著に認められる。
【0076】
3−3.明度の評価
前記各実施例および各比較例の評価用シートについて、色度計(ミノルタ社製、CM−3700d)を用いて、xyY表色法による三刺激値を求めた。赤色の塗膜、緑色の塗膜、青色の塗膜について、それぞれ、以下の5段階の基準に従い、評価した。
(赤色の塗膜の評価基準)
A:明度Yが21.0以上。
B:明度Yが20.5以上21.0未満。
C:明度Yが20.0以上20.5未満。
D:明度Yが19.0以上20.0未満。
E:明度Yが19.0未満。
【0077】
(緑色の塗膜の評価基準)
A:明度Yが62.5以上。
B:明度Yが61.5以上62.5未満。
C:明度Yが60.0以上61.5未満。
D:明度Yが58.5以上60.0未満。
E:明度Yが58.5未満。
【0078】
(青色の塗膜の評価基準)
A:明度Yが7.3以上。
B:明度Yが7.1以上7.3未満。
C:明度Yが6.9以上7.1未満。
D:明度Yが6.7以上6.9未満。
E:明度Yが6.7未満。
これらの結果を表3に示す。なお、表中、製造直後の顔料分散体を用いて作製した評価用シートを「加熱前」と示し、40℃の環境下に7日間放置した顔料分散体(加熱環境下に放置した顔料分散体)を用いて作製した評価用シートを「加熱後」と示した。
【0079】
【表3】

【0080】
表3から明らかなように、本発明では、顔料分散体の経時安定性に優れており、加熱条件下に放置した後でも、膜厚の均一性に優れ、色むら、濃度むらのない塗膜を好適に形成することができた。これに対し、各比較例では、満足のいく結果が得られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料と、溶剤と、分散剤とを含む顔料分散体であって、
前記分散剤として、所定の酸価を有する酸価分散剤と、所定のアミン価を有するアミン価分散剤とを含むことを特徴とする顔料分散体。
【請求項2】
前記酸価分散剤の酸価は、5〜370KOHmg/gである請求項1に記載の顔料分散体。
【請求項3】
前記アミン価分散剤のアミン価は、5〜200KOHmg/gである請求項1または2に記載の顔料分散体。
【請求項4】
顔料分散体中における前記酸価分散剤の含有率をX[wt%]、顔料分散体中における前記アミン価分散剤の含有率をX[wt%]としたとき、0.1≦X/X≦1の関係を満足する請求項1ないし3のいずれかに記載の顔料分散体。
【請求項5】
前記酸価分散剤の酸価をAV[KOHmg/g]、前記アミン価分散剤のアミン価をBV[KOHmg/g]、前記酸価分散剤の含有率をX[wt%]、前記アミン価分散剤の含有率をX[wt%]としたとき、0.01≦(AV×X)/(BV×X)≦1.9の関係を満足する請求項1ないし4のいずれかに記載の顔料分散体。
【請求項6】
前記溶剤が、1,3−ブチレングリコールジアセテートおよび/またはジエチレングリコールジブチルエーテルを含むものである請求項1ないし5のいずれかに記載の顔料分散体。

【公開番号】特開2009−126995(P2009−126995A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−305681(P2007−305681)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【出願人】(000180058)山陽色素株式会社 (30)
【Fターム(参考)】