説明

顔料分散剤及びそれを用いたオフセット印刷インキ組成物

【構成】 酸価が10〜60の範囲にある遊離のカルボキシル基含有ポリエステルと、窒素原子を3〜6個含有するポリアルキレンイミンとを、ポリエステルのカルボキシル基の1当量に対しポリアルキレンイミンの活性水素を有するアミノ基の当量として0.8〜1.0の範囲で反応せしめた顔料分散剤ならびに該分散剤を顔料に対して0.1〜100重量%の範囲で含有したオフセット印刷インキ組成物が開示され、上記ポリエステルは12−ヒドロキシステアリン酸の脱水重縮合により得られたものを使用するのが好ましい。
【効果】 本発明の分散剤を非水系の塗料や印刷インキに使用することにより、顔料を従来より高濃度でかつ安定にビヒクル中に分散できるので、特にオフセット印刷インキ中に使用する場合、優れた印刷適性を維持しつつ、高濃度ベースインキの調製が可能である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、無機あるいは有機顔料を非水系の有機媒体中で高濃度かつ安定に分散させるための顔料分散剤に関するものであり、特にオフセット印刷インキ中に使用した場合、優れた印刷適性を発揮することができる顔料分散剤を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】一般に印刷インキや塗料等の被覆剤は、主としてバインダー樹脂及び溶剤から成るビヒクル中に着色剤としての顔料を微細に分散することにより調製される。そして、得られた顔料分散物は、長期間保存しても顔料の再凝集を起こすことなく安定であり、その塗膜は良好な光沢を有し、かつ発色性に優れていることが要求される。一方このような顔料の微細な分散体を得ることは困難であり、また作業効率の面から顔料濃度を高くしようとすると往々にして、高粘度を呈したり、分散機からの取出しや混合、撹拌、あるいは移送等の作業において取扱いが困難になることがあり、分散体中の顔料濃度を高くできないという制約もあった。それゆえ、ビヒクル中に顔料を高濃度で安定に分散でき、かつその分散体の粘度を低くする方法が求められてきた。これにはヒビクルの顔料分散性を上げることが必要であり、ヒビクルを構成するバインダー樹脂の改良に関わる研究が数多く行われてきている。しかし、バインダー樹脂には被覆形成剤としての諸機能を持たせなければならない関係上、顔料分散性を大幅に改善することが困難なことが多く、現実的にはこれらの樹脂中に顔料分散剤を併用する方法が一般的に行われている。
【0003】従来、顔料分散剤として、例えば、USP3996059,特開昭61−163977等には、ヒドロキシカルボン酸を脱水縮合したポリエステルと特定のアミン類との反応により合成される、末端に遊離のアミノ基を持つ化合物が提案されている。
【0004】また、USP4224212,USP4415705,USP3882088などには、分子量が数万、低くても500を超えるポリアルキレンイミンを上記のようなポリエステルと直接、あるいは間接的に反応させた生成物が記載されている。さらに、特開昭64−79279、特開平2−99132等にはポリアミンと脂肪酸や酸無水物との反応生成物が、特公平1−54378等にはポリアミンをポリイソシアネートで変性した化合物がそれぞれ提案されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】これらの各種の試みは、非水分散系における顔料の高濃度化、分散の安定化という点において、一応の効果は認められるが、未だ十分なものではない。その上、オフセット印刷インキで分散剤として使用した場合に、インキの乳化特性に少なからず悪影響をもたらし、満足な印刷物が得られないという問題を有するものであった。すなわち、湿し水と呼ばれる水成分と、油性インキとの界面化学的な反発を利用して画像形成をするオフセット印刷方式においては、湿し水に対するインキの乳化特性を適当なバランスをもって維持することが重要である。湿し水に対するインキの乳化特性に悪影響をもたらすような顔料分散剤の使用は非画像部にインキが転移する、いわゆる“汚れ”現象が発生するなど、印刷適性に関わる種々の問題を生じる結果となる。◎ このように、顔料分散剤は顔料の高濃度分散を可能にするという基本性能の他に、インキの乳化適性などの印刷適性を良好に維持することが要求される。
【0006】これを解決するために、本出願人は特開平1−311177にメチルイミノビスプロピルアミンのごときアミンを用いた分散剤を既に提案している。これは、立体効果を高めたことにより顔料分散性が向上し、また、遊離アミノ基の濃度を下げることにより上述の印刷適性を改善しようとするものである。しかし、上記顔料分散剤においても、印刷特性が十分なものとは言えず、より高い顔料分散を有し、かつ十分な印刷適性を保持した顔料分散剤の開発が必要であった。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記の問題点に鑑み鋭意研究を重ねた結果、非水分散系において顔料を高濃度に、かつ安定に分散するとともに、オフセット印刷インキに適用した場合でも、その印刷適性を損なうことのない、有用な新規分散剤を見いだした。すなわち、本発明は、遊離のカルボキシル基を有して酸価が10〜60の範囲のポリエステルと、窒素原子を3〜6個含有するポリアルキレンイミンとを、カルボキシル基の1当量に対して活性水素を有するアミノ基の当量として0.8〜1.0の範囲で反応させた反応生成物(請求項1)である顔料分散剤を提供するものである。また本発明は、前記のカルボキシル基含有ポリエステルが、12−ヒドロキシステアリン酸の脱水重縮合により得られる顔料分散剤(請求項2)を提供するものである。さらに本発明は、顔料、樹脂、及び有機溶剤を主成分とするオフセット印刷インキ組成物において、請求項1,2のいずれかに記載の顔料分散剤を当該顔料に対して0.1〜100重量%の範囲で含有せしめたオフセット印刷インキ組成物(請求項3)を提供するものである。
【0008】次に、本発明に係る分散剤と従来技術のそれを具体的に比較すると以下のようになる。
【0009】前述のUSP3996059,特開昭61−163977等の明細書に記載された、ヒドロキシカルボン酸から誘導されるポリエステルとアミン類との反応生成物では、顔料に対する吸着活性点を持たせる目的で末端に遊離のアミノ基が導入されており、かつ1分子中にポリエステル連鎖を1つ持つ構造である。従って、この分散剤では、いわゆる立体効果が少なく、十分な分散効果が得られなかった。また、親水性の高いアミノ基の濃度を高くした結果、インキの乳化特性等の印刷適性に対しては悪影響をおよぼすといった問題があった。これを解決するために、本出願人が提案した特開平1−311177に記載の分散剤は、立体効果を高めたことにより顔料分散性が向上し、また、遊離アミノ基の濃度を下げたことにより印刷適性の改善を計ることができたものである。しかし、印刷適性をさらに改善するためには、もっと遊離アミノ基濃度を下げる必要があった。本発明の分散剤は、この点について更に改良がなされたものである。先ず、本発明の分散剤は、通常3つ以上のポリエステル連鎖がポリアルキレンイミンと反応していて立体効果がこれら先行例よりも大きく、優れた分散安定効果を発揮する。また、先行例では分散性を付与するために意図的に導入され、インキの乳化特性等に対しては悪影響をおよぼしていた遊離アミノ基の濃度をごく低く抑えてあり、印刷適性が改善されている。すなわち、遊離のアミノ基ではなく、ポリアミド構造によっても吸着活性を付与できたことが先行例と大きく異なる点である。これにより、顔料分散性を維持しつつ印刷適性を改善できたといえる。
【0010】また、USP4224212,USP4415705,USP3882088などに記載されているポリアルキレンイミンとヒドロキシカルボン酸のポリエステルとを直接、あるいは間接的に反応させた生成物では、ポリアルキレンイミンの分子量が数万、低くても500を超え、ポリアルキレンイミンから誘導された比較的極性の高い部位が1分子中で大きな役割を占める。従って、非水系中で用いた場合に相溶性が低下して顔料分散が十分に達成されなかったり、たとえ溶解したとしてもインキ中では乳化特性に好ましくない影響を与えるものである。これに対して、本発明の分散剤は窒素原子を3〜6個含有するポリアルキレンイミンを原料としているので、上述のような問題はなく、目的とする分散性能、印刷適性を発揮するものである。
【0011】さらに、特開昭64−79279、特開平2−99132等に記載されている、ポリアミンと脂肪酸や酸無水物との反応生成物には顔料を高濃度に分散するために有用な立体効果を持つ重合体鎖がないのに対し、本発明では3本以上のポリエステル連鎖を持つため十分な顔料分散性が得られるのである。
【0012】また、特公平1−54378に見られるポリアミンをポリイソシアネートで変性した化合物では、反応により生成したウレタン結合が一般に有機溶剤に溶解しにくく、非水系で用いるには溶剤の選択等に制約があるのに対して、本分散剤ではこのようなことはない。
【0013】
【作用】以上、従来の分散剤との具体的比較を行った上で、以下に本発明に係る分散剤の構成について説明する。
【0014】本発明で使用するポリエステルとしては、カルボキシル基を有する化合物とヒドロキシル基を有する化合物とのポリ縮合により合成されるポリエステルであって、末端に遊離のカルボキシル基を有するものが使用できる。
【0015】目的の遊離のカルボキシル基を有するポリエステルを得るための材料の1つであるジカルボン酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,12−ドデカンジカルボン酸、1,2−,または1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸等が例示でき、他の材料であるジオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のジオールが例示できる。これらの材料を用いてモル数を考慮し、エステル化反応させることによって、目的とするポリエステルを得ることができる。
【0016】なお、本発明の分散剤を得るに際して、ヒドロキシル基を有する脂肪酸のボリ重合により得られるポリエステルが特に好適である。ヒドロキシル基を有する脂肪酸としては、リシノール酸、12−ヒドロキシステアリン酸、あるいは少量の飽和または不飽和脂肪酸との混合物である市販のひまし油脂肪酸、およびその水添加物が挙げられる。
【0017】これらの材料を用いて目的とするポリエステルを得るには、エステル化触媒の存在または非存在下に、160〜220℃に加熱して生成する水を除去しつつ、所定の酸価になるまで反応すればよい。ポリエステルの酸価としては、10〜60、好ましくは20〜50の範囲が望ましい。酸価が60を超えるとポリエステル鎖の長さが十分でないため、分子量効果による分散安定化が不十分となり、また、ヒドロキシル基等の極性基濃度が高くなり過ぎるためにオフセット印刷適性が損なわれることとなる。逆に酸価が10を下回ると吸着活性点の濃度が低くなり、顔料表面に対する吸着力が弱くなり、分散剤として十分な効果が得られ難くなる。
【0018】また、本発明で使用することのできる、窒素原子数が3〜6個のポリアルキレンイミンの具体例としては、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ジプロピレントリアミン、トリプロピレンテトラミン、テトラプロピレンペンタミン、ペンタプロピレンヘキサンなどが挙げられる。これらのアミン化合物とポリエステルとの反応は、ポリエステルの遊離のカルボキシル基に対してアミンの活性水素を有するアミノ基の当量比が0.8〜1.0の範囲であることが最適である。両者の反応は、前記のポリエステル化の反応が完了した後、内容物を100℃前後に冷却し、所定量のアミンを添加し、160〜180℃に再加熱して、アミド化により生成する水を回収することによって行うことでがきる。
【0019】本発明の分散剤を使用するに際し、適当な溶媒としては、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、酢酸ブチル、セロソルブアセテート等のエステル類、さらには、脂肪族炭化水素を主成分とする鉱物油等が挙げられる。
【0020】本発明の分散剤の主たる用途であるオフセット印刷インキに使用する場合は、鉱物油などオフセット印刷インキに使用されている通常の溶剤が望ましい溶媒となる。
【0021】またインキに使用する顔料としては、一般に使用されている無色あるいは有色の顔料が例示でき、具体的には、二酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、磁性酸化鉄等の無機顔料や、アゾ顔料、レーキ顔料、フタロシアニン顔料、イソインドリン顔料、キナクリドン顔料等の有機顔料、またカーボンブラック等が挙げられる。
【0022】なお、オフセット印刷インキの分野では、顔料の含水ケーキ中の水をフラッシング手法を用いて油性ビヒクルと置換することによって、ベースインキを調製することが一般に行われている。従来、特に黄色のアゾ系顔料ベースを得るための好適な分散剤がなかったのであるが、本発明の分散剤はかかる場合においても優れた効果を発揮するものである。
【0023】また分散剤の使用量は、上記の各種顔料を基準として0.1〜100重量%、好ましくは、1.0〜20重量%の範囲である。ただし、これは各顔料の性質、特にその表面積や表面官能基濃度に応じて変化するものであり、それぞれの場合において適値を定めることが必要である。
【0024】なお、本発明に係る分散剤を使用したオフセット印刷インキの製造に際しては、公知のバインダー樹脂、すなわち、各種アルキッド樹脂、各種フェノール樹脂、石油樹脂、ロジンエステル樹脂、ポリエステル樹脂等が使用でき、必要に応じてその他の添加剤を用いることができる。
【0025】また、本発明に係る分散剤をオフセット印刷以外のインキもしくは塗料の分散剤として使用する場合は、従来よりそれらの分野で使用されていた各種樹脂、各種有機溶剤を用いて調製することができるものである。
【0026】
【実施例】以下、本発明を実施例により説明するが、本発明の主旨と適用範囲を逸脱しない限り、これらの実施例によって制限されるものではない。なお記述中「部」は重量部を示す。
ポリエステルの製造例1冷却管、水分分離管を備えたフラスコに市販の12−ヒドロキシステアリン酸(水酸基価=160mgKOH/g、酸価=180mgKOH/g)700部を入れ、100℃前後に加熱して溶融し、これにキシレン70部、触媒としてテトラ−n−ブチルチタネート1.0部を加え、180〜200℃で窒素気流下に生成する水を分離回収しながら12時間損拌した。得られた重合物は淡褐色で粘性があり、不揮発分90%、固形分の酸価は35mgKOH/gであった(ポリエステルaという)。
ポリエステルの製造例2市販のひまし油脂肪酸(水酸基価=160mgKOH/g、酸価=180mgKOH/g)を用いた他はポリエステルaの場合と同様の手順で10時間エステル化反応を行い、不揮発分90%、固形分の酸価が44mgKOH/gの重合物を得た(ポリエステルbという)。
【0027】[実施例1]上記と同様の反応容器にポリエステルaの150部とジエチレントリアミン(市販品、活性水素を有するアミノ基の濃度は27mmol/g)の2.8部(これはポリエステルの遊離カルボキシル基に対してジエチレントリアミンの活性水素を有するアミノ基が0.90当量であることに相当する)を入れ、窒素気流下に160〜180℃で生成する水を分離回収しながら3時間攪拌し、ついでキシレンを減圧留去して分散剤aを得た。これは淡褐色の粘性体であり、GPCによる重量平均分子量は7500、アミン価は5.0mgKOH/g、酸価は8.0mgKOH/gであった。
【0028】[実施例2]ポリエステルbの150部とトリエチレンテトラミン(市販品、活性水素を有するアミノ基の濃度は23mmol/g)の4.1部(遊離カルボキシル基に対して活性水素を有するアミノ基が0.90当量であることに相当する)を混合し、実施例1と同様の操作により分散剤bを得た。これは淡褐色の粘性体であり、重量平均分子量は7300、アミン価は5.6mgKOH/g、酸価は8.4mgKOH/gであった。
【0029】[実施例3]ポリエステルaの150部とテトラエチレンペンタミン(市販品、活性水素を有するアミノ基の濃度は19mmol/g)の4.0部(遊離カルボキシル基に対して活性水素を有するアミノ基が0.90当量であることに相当する)を混合し、上記と同様の操作により分散剤cを得た。これは淡褐色の粘性体であり、重量平均分子量は9500、アミン価は8.0mgKOH/g、酸価は7.9mgKOH/gであった。
【0030】[実施例4]ポリエステルbの150部とペンタエチレンヘキサミン(市販品、活性水素を有するアミノ基の濃度は15mmol/g)の6.4部(遊離カルボキシル基に対して活性水素を有するアミノ基が0.90当量であることに相当する)を混合し、同様の操作を行い分散剤dを得た。これは淡褐色の粘性体であり、重量平均分子量は9100、アミン価は10.0mgKOH/g、酸価は8.2mgKOH/gであった。
【0031】[比較例1]ポリエステルaの150部と3,3′−メチルイミノビスプロピルアミン(市販品、1級のアミノ基の濃度は13.7mmol/g)の5.5部(ポリエステルの遊離カルボキシル基に対してメチルイミノビスプロピルアミンの1級アミノ基が0.90当量であることに相当する)を混合し、上記の実施例1と同様の操作により、淡褐色の粘性体である分散剤eを得た。重量平均分子量は5300、アミン価は15mgKOH/g、酸価は7.7mgKOH/gであった。
【0032】[比較例2]ポリエステルaの150部とN,N′−ジメチルアミノ−1,3プロパンジアミン(市販品、1級アミノ基の濃度は9.79mmol/g)の7.7部(遊離カルボキシル基に対して1級アミノ基が0.90当量であることに相当する)を混合し、同様の操作により淡褐色ワックス状の分散剤fを得た。重量平均分子量は2200、アミン価は27mgKOH/g、酸価は8.4mgKOH/gであった。
【0033】[比較例3]上記と同様の反応装置にポリエチレンイミンの30%水溶液(市販品、分子量約30000、活性水素を持つアミノ基の濃度は、水溶液の状態で2.53mmol/g)の30.0部とトルエン10.0部を入れ、窒素気流下に100〜120℃で撹拌し、約20部の水を分離回収した。ここに、ポリエステルaの150部(遊離カルボキシル基に対して活性アミノ基が0.90当量であることに相当する)を加え、さらに、窒素気流下に160〜180℃で生成する水を回収しながら3時間撹拌した。ついでキシレンを減圧留去して高粘ちょうの淡褐色物である分散剤gを得た。アミン価は28mgKOH/g、酸価は9.0mgKOH/gであった。
【0034】[比較例4]同様の反応装置に、分子量約600のポリエチレンイミン(市販品、活性水素を持つアミノ基の濃度は8.50mmol/g)の8.9部、およびポリエステルaの150部(遊離カルボキシル基に対して活性アミノ基が0.90当量であることに相当する)を加え、窒素気流下に160〜180℃で生成する水を分離回収しながら3時間撹拌した。ついでキシレンを減圧留去して粘ちょうの淡褐色物である分散剤hを得た。アミン価は25mgKOH/g、酸価は8.7mgKOH/gであった。
【0035】性能評価試験実施例1〜4および比較例1〜4で得た各分散剤を用いて、以下に示す処方でオフセット印刷インキ用マスターベース、及びオフセットインキを調製し、それらの性状と性能を比較した。結果を表1と表2に示した。
【0036】藍系のマスターベース:フタロシアニンブルー 50部分散剤 5部アルキッド樹脂 10部ロジン変性フェノール樹脂ワニス 10部5号ソルベント(日本石油製) 25部墨系のマスターベース:カーボンブラック 50部分散剤 5部アルキッド樹脂 10部ロジン変性フェノール樹脂ワニス 10部5号ソルベント 25部上記組織物を十分混合し、3本ロールミルを用いて練肉を行い、ベースインキを調製した。また、以下の配合によってオフセットインキを得た。
【0037】
マスターベース 35部ロジン変性フェノール樹脂ワニス 50部フッソワックス 2部ナフテン酸コバルト(Co:6%) 1部5号ソルベント 12部なお、上記ワニスは、ロジン変性フェノール樹脂(日立化成製、ヒタノール27A)40部、亜麻仁油25部、および5号ソルベント35部を220℃で均一に加熱溶解して調製したものである。
【0038】
【表1】
【0039】
藍インキにおける評価結果 分散剤 ベースインキ インキ 粘度 着色力 貯蔵安定性 光 沢 印刷適性 1 a 245 115 優 優 優 実 2 b 255 116 優 優 優 施 3 c 230 114 優 優 優 例 4 d 265 116 優 優 優 1 e 250 115 優 優 良 比 2 f 680 105 良 良 可 較 3 g 720 103 可 良 不可 例 4 h 750 103 可 良 不可 参考例 なし 練肉不可 100 不 可 良 良
【0040】
【表2】
【0041】
墨インキにおける評価結果 分散剤 ベースインキ インキ 粘度 着色力 貯蔵安定性 光 沢 印刷適性 1 a 155 109 優 優 優 実 2 b 145 108 優 優 優 施 3 c 140 108 優 優 優 例 4 d 150 107 優 優 優 1 e 170 108 優 優 良 比 2 f 375 103 良 良 可 較 3 g 660 101 可 良 不可 例 4 h 690 102 可 良 不可 参考例 なし 練肉不可 100 不 可 良 良なお、分散剤を使用しない参考例の場合では、相当量をアルキッド樹脂で置き換えたものであるが、マスターベースの練肉ができなかった。したがって顔料濃度を25%まで低下させてベースインキを調製しインキ化を行っている。
【0042】なお、各評価項目は以下の方法で行った。粘度 ラレー粘度計を使用し、25℃における粘度(ポイズ)を測定した。着色力 白ベースインキを各ベースインキで着色し、顔料分散剤を使用しないベースインキの着色力を100として、%で示した。貯蔵安定性 ベースインキを25℃の恒温槽に1ケ月間保存し、調製時との粘度差により判定した(優は最も優れているもの、良は良好なもの、可は十分でないもの、不可は安定性のないものである)。光沢 印刷物の光沢を目視により判定した。印刷安定性 三菱重工業製のオフセット枚葉印刷機により実際の印刷を行い、水巾適性、インキ転移性、汚れ等を総合的に判定した(優は最も優れているもの、良は良好なもの、可は十分でないもの、不可は適性のないものである)。表に見られるように、本発明の分散剤a〜dを用いた場合にのみ高い顔料分散性と印刷適性が得られ、特開平1−311177の分散剤eに比較しても印刷適性が改善されている。一方比較例に挙げた分散剤f〜hでは分散性、印刷適性ともに十分ではない。
【0043】
【発明の効果】本発明の分散剤を非水系の塗料や印刷インキに使用することにより、顔料を従来よりも高濃度でビヒクル中に分散することが可能となり、得られた分散体は高い着色力と貯蔵安定性を示す結果、作業効率の大幅な向上と在庫コストや輸送コストの削減が計れることとなる。また、従来の分散剤では印刷適性に悪影響があるためにオフセット印刷インキ中での使用に問題があったものが、本発明の分散剤は、かかる懸念なく、高い印刷適性を維持しつつ高濃度ベースインキの調製が可能となるのである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 酸価が10〜60の範囲にある遊離のカルボキシル基含有ポリエステルと、窒素原子を3〜6個含有するポリアルキレンイミンとを、前記ポリエステルのカルボキシル基の1当量に対して前記ポリアルキレンイミノの活性水素を有するアミノ基の当量として0.8〜1.0の範囲で反応せしめたことを特徴とする顔料分散剤。
【請求項2】 前記ポリエステルが12−ヒドロキシステアリン酸の脱水重縮合により得られるものである請求項1記載の顔料分散剤。
【請求項3】 顔料、樹脂、及び有機溶剤を主成分とするオフセット印刷インキ組成物において、請求項1,2のいずれかに記載の顔料分散剤を前記顔料に対して、0.1〜100重量%の範囲で含有したオフセット印刷インキ組成物。