説明

顔料分散剤及び顔料分散体

【課題】 顔料を凝集させずに該顔料の安定かつ良好な分散性、保存安定性を実現でき、着色力が高く、カラーフィルタの製造などに好適に使用し得る顔料分散剤を提供する。
【解決手段】 ポリアリルアミンのアミノ基に、アミノ基と反応する官能基を片末端に有するビニル共重合体(A)と、アミノ基と反応する官能基を片末端に有するビニル共重合体であって、アミノ基と反応する官能基量、共重合体組成又は共重合体組成比が前記ビニル共重合体(A)と異なるビニル共重合体(B)、ポリアルキレングリコール鎖を有する(メタ)アクリレート(C)、アミノ基と反応する官能基を片末端に有するポリエステル、アミノ基と反応する官能基を片末端に有するポリアミド又はアミノ基と反応する官能基を片末端に有するポリエステルアミド(D)、又はモノカルボン酸又は(メタ)アクリレートとを反応させてなる変性ポリアリルアミンを主成分とする顔料分散剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特にカラーフィルター用に適した顔料分散剤及び顔料分散体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶カラーディスプレイや撮像素子などの製造に使用されるカラーフィルター(以下CFと称する)は、耐光性、耐熱性に優れる顔料を着色剤とする顔料分散法と呼ばれる方法で製造することが主流となっている。しかし、一般に顔料を分散したカラーフィルターは、顔料による光の散乱等により、液晶が制御した偏光度合いを乱してしまうという問題がある。すなわち、光を遮断しなければならないとき(OFF状態)に光が漏れたり、光を透過しなければならないとき(ON状態)に透過光が減衰したりするため、ON状態とOFF状態における表示装置上の輝度の比(コントラスト比)が低いという問題がある。
【0003】
このため、着色画素の透明性の改善や、着色画素の透過光のコントラストのアップや、着色画素の顔料濃度を高める必要が生じてきた。しかしながら、通常の顔料の分散で得られたCF用塗布液では、顔料の分散性向上による着色画素の透明性の改良や、顔料濃度が高くなることによる粘度の増大および貯蔵安定性の低下を防止することは困難であり、これらの改善が要望されている。
【0004】
カラーフィルターの高輝度化、高コントラスト化を実現させるため、着色層中に含まれる顔料を微細化することや、顔料や顔料分散剤を最適化することが検討されてきた。例えば一次粒子の集合体からなる顔料において、粒径0.1μm以下の一次粒子の個数割合が全粒子の95%以上で、粒径0.1μmを超える一次粒子の個数割合が全粒子数の5%未満であることを特徴とする微細化顔料が開示されている。(例えば特許文献1参照)
しかしながら、ここで開示されている顔料粒径は、製造された顔料そのものの粒径である。一次粒子の微細化が進行した顔料は一般に凝集し易く、微細化された顔料を用いても、樹脂組成物中に実際に分散された顔料の粒径としては粗大な粒子として存在したり、微細化が進行し過ぎた場合には巨大な塊状の顔料固形物を形成してしまうなど、安定な着色組成物を得ることは一般に困難である。その結果、顔料が分散されたビヒクルの粘度の上昇、あるいは該顔料が分散されたビヒクルを使用したインキや塗料の着色力の低下や塗膜のグロスの低下などを生ずることがあった。
【0005】
一方、顔料分散剤を最適化する例として、1級あるいは2級アミノ基を有する繰り返し単位を有する重合体と、片末端にエチレン性不飽和二重結合を有する重合体との付加反応により生成するグラフト型重合体と有機顔料とを有機溶媒中に分散させた顔料分散組成物をカラーフィルター用の着色感光性組成物に使用する例が知られている(例えば特許文献1参照)。
しかしながら顔料分散剤として性能を制御する分散媒に対する分散安定性と顔料に対する吸着を制御するためにはグラフト側鎖とアミノ基の設計が重要となるが、マクロモノマーを用いたグラフト側鎖のみでは塩基性とのバランスをとることが困難であり、顔料種によっては顔料に対する親和性が強すぎることにより分散性が劣ることがあった。
【0006】
一方、CFの製造に使用される主な顔料としては、緑色顔料はフタロシアニングリーン、例えば、C.I.ピグメントグリーン(以下PGと称す)36、PG7など;赤色顔料はジケトピロロピロール(以下DPPと称す)系レッド、例えば、C.I.ピグメントレッド(以下PRと称す)254、アンスラキノン系レッド、例えば、PR177、アゾ系レッド、例えば、PR242など;青色顔料はフタロシアニンブルー、例えば、C.I.ピグメントブルー(以下PBと称す)15:6などが一般的に用いられる。これらの顔料の色相と液晶ディスプレイに要求される色特性には差があり、緑色顔料および赤色顔料には黄色顔料、例えば、C.I.ピグメントイエロー(以下PYと称す)138、PY139、PY150などが補色として少量併用され、青色顔料には紫色顔料、例えば、C.I.ピグメントバイオレット(以下PVと称す)23などが補色として少量使用されている。
【0007】
補色顔料用の顔料分散剤の場合、主顔料の分散性に影響を与えないことが必要であり、特に一つの分散剤で主顔料と補色顔料を両方分散できることは色度調整時の性能低下を防止できる点からも有利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−89756号公報
【特許文献2】特開2002−226587号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、顔料を凝集させずに該顔料の安定かつ良好な分散性、保存安定性を実現でき、着色力が高く、塗料、印刷インキ、カラー表示板、カラープルーフ等、基体上の多色画像の形成や、液晶カラーディスプレイ等に使用されるカラーフィルタの製造などに好適に使用し得る顔料分散剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、顔料分散剤の性能は顔料に吸着するアンカー部位と溶剤に親和性のある部位と凝集防止のための構造が必要であることを見出した。そして、溶剤に親和性のある部位として、低分子量成分や溶剤親和性成分を導入し、且つ、凝集防止のための構造として高分子量成分を導入したポリマーが、前記課題を解決すること見出し、課題を解決した。
【0011】
即ち、本発明は、ポリアリルアミンのアミノ基に、アミノ基と反応する官能基を片末端に有するビニル共重合体(A)と、下記(B)〜(E)からなる群から選択される一つまたはそれ以上の化合物とを反応させてなる変性ポリアリルアミンを主成分とする顔料分散剤を提供する。
(1)アミノ基と反応する官能基を片末端に有するビニル共重合体であって、アミノ基と反応する官能基量、共重合体組成又は共重合体組成比が前記ビニル共重合体(A)と異なるビニル共重合体(B)。
(2)ポリアルキレングリコール鎖を有する(メタ)アクリレート(C)。
(3)アミノ基と反応する官能基を片末端に有するポリエステル、アミノ基と反応する官能基を片末端に有するポリアミド又はアミノ基と反応する官能基を片末端に有するポリエステルアミド(D)。
(4)モノカルボン酸又は(メタ)アクリレート(E)。
【0012】
また本発明は、前記顔料分散剤を使用する顔料分散体を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、顔料を凝集させずに該顔料の安定かつ良好な分散性、保存安定性を実現でき、着色力が高く、塗料、印刷インキ、カラー表示板、カラープルーフ等、基体上の多色画像の形成や、液晶カラーディスプレイ等に使用されるカラーフィルタの製造などに好適に使用し得る顔料分散剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の顔料分散剤は、変性ポリアリルアミンを主成分とする。具体的には、ポリアリルアミンのアミノ基に、アミノ基と反応する官能基を片末端に有するビニル共重合体(A)(以下、アミノ基と反応する官能基を片末端に有するビニル共重合体(A)を「ビニル共重合体(A)」と称する)と、下記(B)〜(E)からなる群から選択される一つまたはそれ以上の化合物とを反応させてなる、変性ポリアリルアミンを主成分とする。
【0015】
(1)アミノ基と反応する官能基を片末端に有するビニル共重合体であって、アミノ基と反応する官能基量、共重合体組成又は共重合体組成比が前記ビニル共重合体(A)と異なるビニル共重合体(B)。
【0016】
前記ビニル共重合体(B)として、ビニル共重合体(B1)が好ましい。ビニル共重合体(B1)は、前記ビニル共重合体(A)の片末端にあるアミノ基と反応する官能基の重量%と、前記ビニル共重合体(B1)の片末端にあるアミノ基と反応する官能基の重量%の比率が、0.4〜0.8の範囲であり、且つ前記ビニル共重合体(A)とのモル比率(A)/(B1)が、(A)/(B1)=0.25〜4.0であるように、変性ポリアリルアミンと反応していることが好ましい。(以下ビニル共重合体(B1)と称する)
【0017】
また、前記ビニル共重合体(B)として、ビニル共重合体(B2)が好ましい。ビニル共重合体(B2)は複数のビニルモノマーを重合させてなるビニル共重合体であり、前記ビニル共重合体(A)のTgと前記ビニル共重合体(B2)のTgの差が20℃以上あり、且つ、前記ビニル共重合体(A)と前記ビニル共重合体(B2)とのモル比率(A)/(B2)が、(A)/(B2)=0.25〜4.0であるように、変性ポリアリルアミンと反応していることが好ましい。(以下ビニル共重合体(B2)と称する)
【0018】
(2)ポリアルキレングリコール鎖を有する(メタ)アクリレート(C)。(以下(メタ)アクリレート(C)と称する)。中でも前記ポリアルキレングリコール鎖を分子全体に対して1〜30重量%の割合で有するように、変性ポリアリルアミンと反応していることが好ましい。
【0019】
(3)アミノ基と反応する官能基を片末端に有するポリエステル、アミノ基と反応する官能基を片末端に有するポリアミド又はアミノ基と反応する官能基を片末端に有するポリエステルアミド(D)(以下ポリマー(D)と称する)。中でも前記変性ポリアリルアミンが、これらの残基を分子全体に対して1〜50重量%の割合で有するように、変性ポリアリルアミンと反応していることが好ましい。
【0020】
(4)モノカルボン酸又は(メタ)アクリレート(E)。中でもこれら残基を分子全体に対して1〜30重量%の割合で有するように、変性ポリアリルアミンと反応していることが好ましい。
【0021】
即ち、ポリアリルアミンのアミノ基に、アミノ基と反応する官能基を片末端に有するビニル共重合体(A)と、アミノ基と反応する官能基を片末端に有し、且つ前記ビニル共重合体(A)とは異なるビニル共重合体(B1)とを反応させてなる変性ポリアリルアミンを主成分とする顔料分散剤であって、
前記ビニル共重合体(A)の片末端にあるアミノ基と反応する官能基の重量%と、前記ビニル共重合体(B1)の片末端にあるアミノ基と反応する官能基の重量%の比率が、0.4〜0.8の範囲であり、且つ前記ビニル共重合体(A)と前記ビニル共重合体(B1)とのモル比率(A)/(B1)が、(A)/(B1)=0.25〜4.0である顔料分散剤が好ましい。
【0022】
また、ポリアリルアミンのアミノ基に、アミノ基と反応する官能基を片末端に有するビニル共重合体(A)と、アミノ基と反応する官能基を片末端に有し、且つ前記ビニル共重合体(A)とは異なるビニル共重合体(B2)とを反応させてなる変性ポリアリルアミンを主成分とする顔料分散剤であって、
前記ビニル共重合体(B2)が、複数のビニルモノマーを重合させてなるビニル共重合体であり、前記ビニル共重合体(A)のTgと前記ビニル共重合体(B2)のTgの差が20℃以上あり、且つ、前記ビニル共重合体(A)と前記ビニル共重合体(B2)とのモル比率(A)/(B2)が、(A)/(B2)=0.25〜4.0である顔料分散剤が好ましい。
【0023】
また、ポリアリルアミンのアミノ基に、アミノ基と反応する官能基を片末端に有するビニル共重合体(A)と、アミノ基と反応する官能基を有する化合物とを反応させてなる変性ポリアリルアミンを主成分とする顔料分散剤であって、
前記化合物がポリアルキレングリコール鎖を有する(メタ)アクリレート(C)であり、前記変性ポリアリルアミンが、前記ポリアルキレングリコール鎖を分子全体に対して1〜30重量%の割合で有する顔料分散剤が好ましい。
【0024】
また、ポリアリルアミンのアミノ基に、アミノ基と反応する官能基を片末端に有するビニル共重合体(A)と、アミノ基と反応する官能基を有する化合物とを反応させてなる変性ポリアリルアミンを主成分とする顔料分散剤であって、
前記化合物が、アミノ基と反応する官能基を片末端に有するポリエステル、アミノ基と反応する官能基を片末端に有するポリアミド又はアミノ基と反応する官能基を片末端に有するポリエステルアミド(D)であり、
前記変性ポリアリルアミンが、これらの残基を分子全体に対して1〜50重量%の割合で有する顔料分散剤が好ましい。
【0025】
また、ポリアリルアミンのアミノ基に、アミノ基と反応する官能基を片末端に有するビニル共重合体(A)と、アミノ基と反応する官能基を有する化合物とを反応させてなる変性ポリアリルアミンを主成分とする顔料分散剤であって、
前記化合物がモノカルボン酸又は(メタ)アクリレート(E)であり、
前記変性ポリアリルアミンが、これらの残基を分子全体に対して1〜30重量%の割合で有する顔料分散剤が好ましい。
【0026】
(ポリアリルアミン)
本発明で使用するポリアリルアミンは、アリルアミンを重合開始剤の存在下、場合によっては連鎖移動触媒存在下で公知の方法により重合させて得てもよいし、市販品を用いてもよい。市販品としては、例えば、日東紡績株式会社よりPAA−01、PAA−03、PAA−05、PAA−15、PAA−10C等のポリアリルアミンシリーズとして市販されている。
【0027】
前記ポリアリルアミンの数平均分子量は、好ましくは150〜100,000であり、より好ましくは600〜20,000である。本発明で用いるポリアリルアミンの数平均分子量が150未満であると、顔料に対する吸着力が不足して顔料分散が困難となるおそれがあり、一方100,000を越える量ではビニル重合体との反応時に粘度の上昇やゲル化を起こすことがある上、顔料分散剤全体の分子量が大きくなりすぎ、顔料同士の凝集により分散性が低下するおそれがある。
【0028】
(顔料分散剤 ビニル重合体(A))
本発明で使用するビニル重合体(A)において、アミノ基と反応しアミド結合を形成する官能基としては、カルボキシル基、クロロホルミル基などのハロホルミル基、メトキシカルボニル基などのオキシカルボニル基が挙げられる。中でもカルボキシル基がビニル共重合体に容易に導入することができ好ましい。
片末端にカルボキシル基を有するビニル共重合体を得るには、例えば、重合時にカルボキシル基を有する連鎖移動剤と共存させる方法が挙げられる。カルボキシル基を有する連鎖移動剤としては、例えば、メルカプト酢酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸などのチオカルボン酸類が挙げられる。また、4,4’−アゾビス−4−シアノペンタン酸などカルボキシル基を有する重合開始剤を用いて重合性単量体をリビングラジカル重合法により合成する方法によっても得ることができる。
【0029】
ビニル重合体(A)の原料となる重合性単量体は、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルのホモポリマー、または、これらのエステル同士あるいはこれらのエステルと、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のアルケニルベンゼン、さらには酢酸ビニル、ビニルピリジン、アクリルアミド、メタクリルアミド、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル等とのコポリマーが挙げられる。これらのうち1種または2種以上を使用することができる。
但し、アミノ基と反応しアミド結合を形成する官能基、例えばカルボキシル基と同等あるいはそれ以上にアミノ基との反応性が高い官能基を有する重合性単量体は、使用しないことが好ましい。該重合性単量体を原料に含んだビニル重合体は、該ビニル共重合体の末端だけでなく、共重合体の主鎖にランダムに該官能基がグラフトされるので、ポリアリルアミンとの反応中にゲル化したり、得られる顔料分散剤の性能が低下するおそれがある。具体的には、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、無水マレイン酸等の重合性単量体は、アミノ基に対して高い反応性をもつ基を有するので、ビニル重合体(A)の原料としては使用しないことが好ましい。
【0030】
ビニル重合体(A)は、前記各種重合性単量体を、重合開始剤の存在下、反応容器中で加熱、必要により熟成することにより得ることが出来る。反応条件としては例えば、重合開始剤及び溶媒によって異なるが、反応温度が30〜150℃、好ましくは60〜120℃である。重合は、非反応性溶剤の存在下で行っても差し支えない。
【0031】
重合開始剤としては、例えばt−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシド、クメンパーヒドロキシド、アセチルパーオキシド、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド等の如き過酸化物;アゾビスイソブチルニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル等の如きアゾ化合物などが挙げられる。
【0032】
非反応性溶剤としては、例えばヘキサン、ミネラルスピリット等の如き脂肪族炭化水素系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン等の如き芳香族炭化水素系溶剤;酢酸ブチル等の如きエステル系溶剤;メタノール、ブタノール等の如きアルコール系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、ピリジン等の如き非プロトン性極性溶剤などが挙げられる。これらの溶剤を併用してもよい。これらの溶剤は、得られるビニル重合体(A)が溶解するものを適宜選択して使用することができる。
【0033】
本発明で用いるビニル重合体(A)の分子量は、数平均分子量500〜100000の範囲であることが好ましく、1000〜20000の範囲であることがなお好ましい。数平均分子量が500未満では顔料分散剤としての十分な立体反発効果を保持できないことがあり、また100000を越えるとビニル重合体の粘度の上昇や溶剤溶解性の低下を起こし、いずれも得られる顔料分散剤の性能が低下する場合がある。
【0034】
(ポリアリルアミンとビニル重合体(A))との反応)
ポリアリルアミンとビニル重合体(A))との反応は、例えば、窒素ガス気流下、200℃以下で行うことが出来る。反応にはスズ系やチタン系などの公知の重合触媒を使ってもよい。また必要に応じて、反応に関与しないトルエン、キシレン、ソルベッソ等の非反応性溶剤を使用することができる。使用した溶剤は必ずしも除去する必要はなく、そのまま顔料分散剤の1成分として使用することも可能である。
【0035】
ポリアリルアミンに対するビニル重合体(A)のグラフト率は、およそ20〜80%の範囲であることが好ましく、30〜70%の範囲であることが、前記(B)〜(E)からなる群から選択される一つまたはそれ以上の化合物とポリアリルアミンとの反応部位を確保することと、希釈溶剤や造膜樹脂との親和性と、顔料との親和性のバランスに優れており特に好ましい。なおここでグラフト率とは、ポリアリルアミンが有するアミノ基の総量に対するビニル重合体(A)のカルボキシル基の反応量を表すものであり、本発明の変性ポリアリルアミンが有する、アミド結合を介したビニル重合体(A)残鎖(ここでいうビニル重合体(A)残鎖とは、カルボキシル基が反応した残りの部分をいう)の%を表す。該値は、具体的には、式(1)から算出され、AMの値が0.2〜0.80となるようにAM1及びAM2を設定することで得られる。
【0036】
【数1】

【0037】
式中、AM1はポリアリルアミンとアミノ基と反応しアミド結合を形成する官能基を片末端に有するビニル共重合体との総重量に対するアミン価(KOHmg/g)を表し、AM2は、変性ポリアリルアミンのアミン価を表す。
アミン価AM1は、原料として用いるポリアリルアミンのアミン価を反応に用いるビニル重合体(A)とポリアリルアミンの総重量で除することで算出できる。アミン価AM2は、反応後のアミン価を実測することで得ることができる。
【0038】
前記変性ポリアリルアミンが有する前記ビニル重合体(A)残鎖が20%未満であると、顔料同士の凝集が起こりやすく、粘度低下効果の不足やインキ皮膜に影響が生じることがある。また、前記変性ポリアリルアミンが有する前記ビニル重合体(A)残鎖が80%を越えると、前記(B)〜(E)からなる群から選択される一つまたはそれ以上の化合物とポリアリルアミンとの反応部位が不足することと、顔料と吸着する官能基であるアミノ基が不足し、顔料によっては分散安定性が低下する傾向にあり、やはり粘度低下効果の不足やインキ皮膜に不具合を生じることがある。
【0039】
(1)ビニル共重合体(B))
本発明で使用するビニル共重合体(B)は、アミノ基と反応する官能基を片末端に有し、且つ前記ビニル共重合体(A)とは異なる共重合体である。「ビニル共重合体(A)とは異なる」とは、具体的には、原料となる重合性単量体組成が異なるもの、あるいはアミノ基と反応しアミド結合を形成する官能基の含有量が異なるもの、あるいは使用する連鎖移動剤の含有量が異なるものを指す。
【0040】
ビニル共重合体(B)において、アミノ基と反応しアミド結合を形成する官能基としては、カルボキシル基、クロロホルミル基などのハロホルミル基、メトキシカルボニル基などのオキシカルボニル基が挙げられる。中でもカルボキシル基がビニル共重合体に容易に導入することができ好ましい。
片末端にカルボキシル基を有するビニル共重合体を得るには、例えば、重合時にカルボキシル基を有する連鎖移動剤の共存させる方法が挙げられる。カルボキシル基を有する連鎖移動剤としては、例えば、メルカプト酢酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸などのチオカルボン酸類が挙げられる。また、4,4’−アゾビス−4−シアノペンタン酸などカルボキシル基を有する重合開始剤を用いて重合性単量体をリビングラジカル重合法により合成する方法によっても得ることができる。
【0041】
ビニル共重合体(B)の原料となる重合性単量体、及び、ビニル共重合体(B)の製造方法は、前述のビニル共重合体(A)に記載の原料及び製造方法を参照することができる。なお、各々の選択は、前述の好ましいビニル共重合体(B)の例としてあげている(B1)または(B2)を満たすように選択することが好ましい。
導入するビニル共重合体(B)は単独であっても複数であっても構わないが、ビニル重合体(B)残鎖(ここでいうビニル重合体(B)残鎖とは、カルボキシル基が反応した残りの部分をいう)とビニル重合体(A)残鎖の合算値が95%を越えると、顔料と吸着する官能基であるアミノ基が不足し、顔料によっては分散安定性が低下するため好ましくない。
【0042】
(ビニル共重合体(B1))
ビニル共重合体(B1)は、アミノ基と反応する官能基を片末端に有し、且つ前記ビニル共重合体(A)とは異なる共重合体であり、前記ビニル共重合体(A)の片末端にあるアミノ基と反応する官能基の重量%と、前記ビニル共重合体(B1)の片末端にあるアミノ基と反応する官能基の重量%の比率が、0.4〜0.8の範囲であり、且つ前記ビニル共重合体(A)とのモル比率(A)/(B1)が、(A)/(B1)=0.25〜4.0であるように、変性ポリアリルアミンと反応していることが好ましい。
具体的にはビニル共重合体(B1)は、カルボキシル基を有するビニル共重合体であって、且つ前記ビニル共重合体(A)と分子量が異なる共重合体である。分子量の調整はビニル共重合体の片末端にあるカルボキシル基の含有量によって行い、ビニル共重合体におけるカルボキシル基の重量%は1から10の範囲であるのが好ましく、且つ前記ビニル共重合体(A)の片末端にあるカルボキシル基の重量%と、前記ビニル共重合体(B1)の片末端にあるカルボキシル基の重量%の比率が、0.4〜0.8の範囲であるのが好ましい。(但しこのときの前記ビニル共重合体(B1)は前記ビニル共重合体(A)に比べて分子量が大きいとする。)
またビニル重合体(B1)残鎖(ここでいうビニル重合体(B1)残鎖とは、カルボキシル基が反応した残りの部分をいう)とビニル重合体(A)残鎖の比率は前記ビニル共重合体(A)とのモル比率(A)/(B1)が、(A)/(B1)=0.25〜4.0であることが好ましい。
【0043】
(ビニル共重合体(B2))
ビニル共重合体(B2)は複数のビニルモノマーを重合させてなり、且つ前記ビニル共重合体(A)のTgと前記ビニル共重合体(B2)のTgの差が20℃以上であるビニル共重合体である。なおここでTgとはDSC(示差走査熱量測定)または動的粘弾性のtanδピークにより測定される値で定義される。
前述の通り、前記ビニル共重合体(A)と前記ビニル共重合体(B2)とのモル比率(A)/(B2)が、(A)/(B2)=0.25〜4.0であるように、変性ポリアリルアミンと反応していることが好ましい。
具体的には、ビニル共重合体(B2)のTgは100℃から−50℃であるのが好ましく、ビニル共重合体(A)のTgによっても異なるが、Tgは60℃から−50℃であるのが特に好ましい。
【0044】
((2)(メタ)アクリレート(C))
本発明で使用する(メタ)アクリレート(C)において、ポリアルキレングリコール鎖を有するとは、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートの状態を示す。ポリアルキレングリコールは、具体的には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、およびそれらの混合物等であり、中でもポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールが好ましい。
(メタ)アクリレート(C)は、前記ポリアルキレングリコール鎖を分子全体に対して1〜30重量%の割合で有するように、変性ポリアリルアミンと反応していることが好ましい。
【0045】
((3)ポリマー(D))
本発明で使用するポリマー(D)は、具体的には、下記(3−1)〜(3−3)のいずれかのポリマーである。
(3−1)アミノ基と反応する官能基を片末端に有するポリエステル、
(3−2)アミノ基と反応する官能基を片末端に有するポリアミド
(3−3)アミノ基と反応する官能基を片末端に有するポリエステルアミド
【0046】
(3−1)アミノ基と反応する官能基を片末端に有するポリエステルとは、具体的には末端にカルボキシル基を有するポリエステルである。これは、次のような種々な方法で合成することができる。
(a)モノカルボン酸化合物へラクトン化合物を付加させる付加反応、(b)ヒドロキシカルボン酸化合物へラクトン化合物を付加させる付加反応、(c)モノカルボン酸化合物、ヒドロキシカルボン酸化合物およびラクトン化合物の3成分を縮合させる縮合反応、などを挙げることができる。
【0047】
(3−2)アミノ基と反応する官能基を片末端に有するポリアミドとは、具体的には末端にカルボキシル基を有するポリアミドである。これは、ε−カプロラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタムやアミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸などのアミノカルボン酸を原料にして作成される。
【0048】
(3−3)アミノ基と反応する官能基を片末端に有するポリエステルアミドとは具体的には末端にカルボキシル基を有するエステルとアミドの共縮合物である。これは前記のポリエステル及びポリアミドの製造に用いたヒドロキシカルボン酸、ラクトンなどと、アミノカルボン酸、ラクタムなどを共縮合させることにより作成できる。
【0049】
前記ポリマー(D)は、これらの残基を分子全体に対して1〜50重量%の割合で有するように、変性ポリアリルアミンと反応していることが好ましい。ここで残基とは、カルボキシル基が反応した残りのポリマー部分を表す。
【0050】
((4)モノカルボン酸又は(メタ)アクリレート(E))
本発明に使用するモノカルボン酸は、1分子中に1つのカルボン酸基を有する化合物であれば特に限定はなく、具体的には酢酸、プロピオン酸、カプリル酸、ノナン酸、カプリン酸、オクチル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、イソノナン酸、アラキン酸などの脂肪族モノカルボン酸、安息香酸、p−ブチル安息香酸などの芳香族モノカルボン酸が挙げられる。
【0051】
また、本発明に使用する(メタ)アクリレートは、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等の(メタ)アクリル酸アルキルエステルのホモポリマー、または、これらのエステル同士あるいはこれらのエステルと、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のアルケニルベンゼン、さらには酢酸ビニル、ビニルピリジン、アクリルアミド、メタクリルアミド、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、N−メチロールアクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸−2−ヒドロキシプロピル等とのコポリマーが挙げられる。
前記モノカルボン酸や前記(メタ)アクリレートは、中でもこれら残基を分子全体に対して1〜30重量%の割合で有するように、変性ポリアリルアミンと反応していることが好ましい。ここで残基とは、カルボキシル基が反応した残りのモノカルボン酸又は(メタ)アクリレートを表す。
【0052】
(ポリアリルアミンと前記(B)〜(E)からなる群から選択される一つまたはそれ以上の化合物との反応)
ポリアリルアミンと前記(B)〜(E)からなる群から選択される一つまたはそれ以上の化合物との反応は、例えば、窒素ガス気流下、200℃以下で行うことが出来る。反応にはスズ系やチタン系などの公知の重合触媒を使ってもよい。また必要に応じて、反応に関与しないトルエン、キシレン、ソルベッソ等の非反応性溶剤を使用することができる。使用した溶剤は必ずしも除去する必要はなく、そのまま顔料分散剤の1成分として使用することも可能である。
ポリアリルアミンと前記(B)〜(E)からなる群から選択される一つまたはそれ以上の化合物との反応は、ビニル共重合体(A)と同時であっても順次行っても構わない。
【0053】
本願の顔料分散剤において、前記ビニル共重合体(A)は、高分子量成分または溶剤親和性成分を想定し、前記ビニル共重合体(B1)は低分子量成分または溶剤親和性成分を想定し、前記ビニル共重合体(B2)は低分子量成分を想定し、(メタ)アクリレート(C)は低分子量成分または溶剤親和性成分を想定し、ポリマー(D)は低分子量成分または溶剤親和性成分を想定し、モノカルボン酸又は(メタ)アクリレート(E)は低分子量成分を想定している。これらを組み合わせることにより、溶剤に親和性のある部位として、低分子量成分や溶剤親和性成分を導入し、且つ、凝集防止のための構造として高分子量成分を導入した顔料分散剤を得ることができる。
【0054】
(顔料分散剤 その他の成分)
本発明の顔料分散剤は、変性ポリアリルアミンの製造時に用いた非反応性溶剤を含有していても良く、また製造時に用いた非反応性溶剤を留去した後に別の溶剤を新たに加えてもかまわない。
また、本発明の顔料分散剤には、本発明の効果を損なわない範囲内であれば、前記変性ポリアリルアミン以外の成分を若干含んでいても構わない。本発明において「主成分」とは、本発明で使用する変性ポリアリルアミンを本発明の効果が得られる範囲で含んでいればよいことを示す。具体的には、固形分成分として前記変性ポリアリルアミンの含有量が90%以上であれば、変性ポリアリルアミンと顔料並びに溶剤との親和性が強固であるため、他の成分を含んでいても本発明の効果を十分発揮することができる。他の成分としては、例えば、前記変性ポリアリルアミンを製造時に生じる副生成物や、あるいは、非反応性熱可塑性樹脂等が挙げられる。
【0055】
(顔料組成物)
本発明の顔料組成物は、前記顔料分散剤および顔料を含む。本発明の顔料分散剤は、通常、顔料に対して顔料分散剤(変性ポリアリルアミン)換算にて1〜200重量%使用される。
前記顔料組成物に含まれる顔料としては、一般にインキまたは塗料に使用可能なすべての有機顔料、無機顔料およびカーボンブラックが使用できる。有機顔料としては、特に限定はないが、例えばキナクリドン系顔料、キナクリドンキノン系顔料、ジオキサジン系顔料、フタロシアニン系顔料、アントラピリミジン系顔料、アンサンスロン系顔料、インダンスロン系顔料、フラバンスロン系顔料、ペリレン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ペリノン系顔料、キノフタロン系顔料、アントラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、ベンツイミダゾロン系顔料、アゾ系顔料等が挙げられる。無機顔料としては二酸化チタン、酸化鉄、硫化カドミウム、炭酸カルシウム、炭酸バリウム、硫酸バリウム、クレー、タルク、黄鉛などが挙げられる。 カーボンブラックとしては、アセチレンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック等が挙げられる。
【0056】
本発明の顔料分散剤は、カラーフィルター用の顔料分散組成物用の顔料分散剤として特に適している。
カラーフィルタ用の顔料分散組成物は、具体的には、顔料分散剤と、顔料とを、有機溶剤中に分散してなる。
【0057】
(顔料分散剤)
本発明の顔料分散剤は、前記変性ポリアリルアミンのみを含んでいてもよいし、必要に応じて適宜選択したその他の成分を更に含んでいてもよい。前記その他の成分としては、公知の分散剤が挙げられ、具体的には、ノナノアミド、デカンアミド、ドデカンアミド、N−ドデシルヘキサデカンアミド、N−オクタデシルプロピオアミド、N,N−ジメチルドデカンアミド及びN,N−ジヘキシルアセトアミド等のアミド化合物、ジエチルアミン、ジヘプチルアミン、ジブチルヘキサデシルアミン、N,N,N’,N’−テトラメチルメタンアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン及びトリオクチルアミン等のアミン化合物、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N,N’,N’−(テトラヒドロキシエチル)−1,2−ジアミノエタン、N,N,N’−トリ(ヒドロキシエチル)−1,2−ジアミノエタン、N,N,N’,N’−テトラ(ヒドロキシエチルポリオキシエチレン)−1,2−ジアミノエタン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン及び1−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジシ等のヒドロキシ基を有するアミン、その他、ペコタミド、イソニペコタミド、ニコチン酸アミド等の化合物、などが挙げられる。これらは、市販品であってもよいし、適宜合成したものであってもよく、該市販品としては、例えばシゲノックス−105(商品名、ハッコールケミカル社製)などが挙げられる。
【0058】
前記その他の成分の前記顔料分散剤における含有量としては、1重量%から90重量%が好ましく、1重量%から70重量%がより好ましい。前記含有量が、1重量%から90重量%であれば、顔料分散剤としての性能も十分に発揮されると共に、顔料分散組成物の粘度上昇が抑制できる。
【0059】
また、本発明の顔料分散剤は、各種界面活性剤を含有していてもよく、該界面活性剤を含有していると分散安定性の向上に有効である。該界面活性剤としては、例えば、アルキルナフタレンスルホン酸塩、燐酸エステル塩に代表されるアニオン系界面活性剤、アミン塩に代表されるカチオン系界面活性剤、アミノカルボン酸、ベタイン型に代表される両性界面活性剤、などが挙げられる。
【0060】
本発明の顔料分散剤による分散とは、二次粒子の状態で一般に存在する顔料粒子をほぐして一次粒子の状態にし、再凝集を防止することを意味する。本発明の顔料分散剤は、顔料への吸着部位と、該顔料が一次粒子の形態に分散された後での再凝集を防ぐ立体反発部位とを有するグラフト型分散剤であり、単独で使用しても十分に優れた分散効果を発揮する。また、本発明の顔料分散剤による顔料の分散は、該顔料分散剤と、顔料との直接の混合により効果的に達成され、顔料以外に分散され得る粒子ができるだけ存在しない状態で行なうのが好ましい。このような状態で顔料の分散を行なうと、本発明の顔料分散剤が該顔料粒子の周囲に瞬時に吸着し、該顔料粒子が良好に分散し、良好に流動し、該顔料粒子同士の凝集が効果的に抑制される。一方、顔料粒子以外に分散され得る粒子が存在した状態で顔料の分散を行なうと、本発明の顔料分散剤が、目的とする顔料粒子の表面に吸着せず、他の粒子表面に吸着し、該顔料分散剤の顔料分散効果が損なわれることがある。したがって、例えば、感光材料等を製造する場合等において、顔料を良好に分散させた状態で該感光材料等中に含有させるには、該顔料と本発明の顔料分散剤とを早い時期に混合しておくのが好ましく、感光層用塗布液等の調製時等の遅い時期に本発明の顔料分散剤を添加・混合するのは好ましくない。
【0061】
本発明の顔料分散剤は、公知の顔料の分散に好適に使用することができ、本発明の顔料分散体及び後述する着色感光性組成物に特に好適に使用することができる。
【0062】
(有機顔料)
顔料としては、有機顔料が挙げられる。該有機顔料としては、例えば、黄色顔料、オレンジ顔料、赤色顔料、バイオレット顔料、青色顔料、緑色顔料、ブラウン顔料、黒色顔料、などが挙げられる。
【0063】
前記黄色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー20、C.I.ピグメントイエロー24、C.I.ピグメントイエロー12、C.Iピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー83,C.I.ピグメントイエロー86、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー117、C.I.ピグメントイエロー125、C.I.ピグメントイエロー137、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー185、C.I.ピグメントイエロー147、C.I.ピグメントイエロー148、C.Iピグメントイエロー153、C.I.ピグメントイエロー、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー166、C.I.ピグメントイエロー168、C.I.ピグメントイエロー185、などが挙げられる。
【0064】
オレンジ顔料としては、例えば、C.I.ピグメントオレンジ36、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントオレンジ51、C.I.ピグメントオレンジ55、C.I.ピグメントオレンジ59、C.I.ピグメントオレンジ61、C.I.ピグメントオレンジ71、などが挙げられる。
【0065】
前記赤色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントレッド9、C.I.ピグメントレッド97、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド168、C.I.ピクメントレッド177、C.I.ピグメントレッド180、C.I.ピグメントレッド192、C.I.ピグメントレッド215、C.I.ピグメントレッド216、C.I.ピグメントレッド217、C.I.ピグメントレッド220、C.I.ピグメンレッド223、C.I.ピグメントレッド224、C.I.ピグメントレッド226、C.I.ピグメントレッド227、C.I.ピグメントレッド228、C.I.ピグメントレッド240、C.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド11、C.I.ピグメントレッド81、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド213、C.I.ピグメントレッド272、C.I.ピグメントレッド270、C.I.ピグメントレッド255、C.I.ピグメントレッド264、C.I.ピグメントレッド254、などが挙げられる。
【0066】
前記バイオレット顔料としては、例えば、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット29、C.I.ピグメントバイオレット30、C.I.ピグメントバイオレット37、C.I.ピクメンドバイオレット40、C.I.ピグメントバイオレット50、などが挙げられる。
【0067】
前記青色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントブルー22、C、I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントブルー64、などが挙げられる。
【0068】
前記緑色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピクメントグリーン36、などが挙げられる。前記ブラウン顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブラウン23、C.I.ピグメントブラウン25、C.I.ピグメントブラウン26、などが挙げられる。前記黒色顔料としては、例えば、C.I.ピグメントブラック7、などが挙げられる。
【0069】
これらの顔料は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。本発明においては、これらの中でも、ピグメントイエロー138、ピグメントイエロー139、ピグメントイエロー185、ピグメントイエロー83、などの酸性基を有する顔料が好ましく、ピグメントイエロー138、ピグメントイエロー139、ピグメントイエロー185、ピグメントレッド254、ピグメントグリーン36、ピグメントブルー15などが特に好ましい。
【0070】
(有機溶剤)
また分散の際に使用する有機溶剤としては、特に制限はなく、公知のものの中から適宜選択することができ、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル及びこれらの酢酸エステル類、例えば、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、1−エトキシ−2−プロピルアセテート等;酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸i−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル等の酢酸エステル類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等のアルコール類、などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、アルキレングリコールモノアルキルエーテル類、及びその酢酸エステル類、酢酸エステル類、メチルエチルケトン、などが好ましい。
【0071】
前記顔料の顔料分散体における含有量としては、通常5重量%から80重量%であり、10重量%から70重量%が好ましい。前記含有量が、5重量%から80重量%であれば、顔料分散体の粘度の上昇を伴わずに、十分な着色力を得ることができる。
【0072】
前記顔料分散剤の顔料分散体における含有量としては、前記顔料100重量部に対し、通常、0.1重量部から200重量部であり、1重量部から50重量部が好ましい。前記含有量が、0.1重量部から200であれば、顔料分散体の粘度の上昇を伴うことが無く、また、カラーフィルター等の作製の際において、色度を得るための塗布膜の厚みの調整も容易に行える。
【0073】
前記有機溶剤の顔料分散体における含有量としては、前記顔料100重量部に対し、通常、10重量部から2000重量部であり、20重量部から1000重量部が好ましい。前記含有量が、10重量部から2000重量部であれば、顔料分散体の粘度が上昇することもなく、また、貯蔵時のスペースも小さくてすむ。
【0074】
本発明の顔料分散体は、例えば、以下の方法により調製することができる。
1)前記顔料と本発明の顔料分散剤とを予め混合して得られる組成物を、前記有機溶剤(又はビヒクル)に添加して分散させる方法。
2)前記有機溶剤(又はビヒクル)に、前記顔料と前記顔料分散剤とを別々に添加して分散させる方法。
3)前記顔料と本発明の顔料分散剤とを予め別々に前記有機溶剤(又はビヒクル)に分散し、得られた分散体を混合する方法(この場合、前記顔料分散剤を前記有機溶剤のみで分散してもよい)。
4)前記有機溶剤(又はビヒクル)に前記顔料を分散した後、得られた分散体に本発明の顔料分散剤を添加する方法。
【0075】
前記ビヒクルとは、塗料が液体状態にあるときに顔料を分散させている媒質の部分をいい、液状であって前記顔料と結合して塗膜を固める成分(バインダ)と、これを溶解希釈する成分(前記有機溶剤)とを含む。
【0076】
前記顔料を分散させる際に使用する分散機としては、特に制限はなく、例えば、ニーダー、ロールミル、アトライタ、スーパーミル、ディゾルバ、ホモミキサー、サンドミル、などの公知の分散機が挙げられる。
【0077】
本発明の顔料分散体を用いた着色画像の形成は、例えば、該顔料分散体を含む塗布液を、支持体上に塗布、乾燥して該顔料分散体の層を形成し、あるいは仮支持体上に形成されたこの顔料分散体の層を支持体上に転写し、その上に公知のポジ型又はネガ型の感光性樹脂組成物の層を形成し、露光、現像し、次いで未露光の前記感光性樹脂組成物の層と共に同じ領域の前記顔料分散体の層を除去する方法などに行なうことができる。
【0078】
本発明の顔料分散体は、従来公知の方法でカラーフィルター画素部の形成に使用することができる。この顔料分散体を使用してカラーフィルター画素部を製造するに当たっては、顔料分散法が好適である。
【0079】
この方法で代表的な方法としては、フォトリソグラフィー法であり、これは、本発明の顔料分散体と、光硬化性化合物とを必須成分とし、必要に応じて有機溶剤と熱可塑性樹脂とを併用し、これらを混合することで調製した光硬化性組成物を、カラーフィルター用の透明基板のブラックマトリックスを設けた側の面に塗布、加熱乾燥(プリベーク)した後、フォトマスクを介して紫外線を照射することでパターン露光を行って、画素部に対応する箇所の光硬化性化合物を硬化させた後、未露光部分を現像液で現像し、非画素部を除去して画素部を透明基板に固着させる方法である。この方法では、光硬化性組成物の硬化着色皮膜からなる画素部が透明基板上に形成される。これを赤色、緑色、青色の色ごとに、操作を繰り返すことにより、所定の位置に赤色、緑色、青色の着色画素部を有するカラーフィルターを製造することができる。
【0080】
また他の方法としては、基板表面にインクジェット方式でインクを吹き付けて画素部を形成する方法がある。これは、本発明の顔料分散体と、熱硬化性化合物とを必須成分とし、必要に応じて有機溶剤と光硬化性樹脂とを併用し、これらを混合することで調製したカラーフィルター用インクジェットインク組成物を、カラーフィルターの透明基板上のブラックマトリックスを設けた側の面の所定領域にインクジェット方式により選択的に付着させて所定パターンのインク層を形成した後、当該インク層を加熱して硬化させることによって、画素部を透明基板に固着させる方法である。この方法では、熱硬化性組成物の硬化着色皮膜からなる画素部が透明基板上に形成される。
【0081】
顔料分散法のうち、フォトリソグラフィー法、インクジェット法によるカラーフィルター画素部の製造方法について詳記したが、前記顔料分散体を使用して調製されたカラーフィター画素部は、その他の電着法、転写法、ミセル電解法、PVED(Photovoltaic Electrodeposition)法、反転印刷法、熱硬化法等の方法で各色画素部を形成して、カラーフィルターを製造してもよい。
【0082】
カラーフィルターは、前記顔料分散体を使用して得た各色の硬化性組成物を使用し、平行な一対の透明電極間に液晶材料を封入し、透明電極を不連続な微細区間に分割すると共に、この透明電極上のブラックマトリクスにより格子状に区分けされた微細区間のそれぞれに、赤(R)、緑(G)および青(B)のいずれか1色から選ばれたカラーフィルター着色画素部を交互にパターン状に設ける方法、あるいは基板上にカラーフィルター着色画素部を形成した後、透明電極を設ける様にすることで得ることができる。
【実施例】
【0083】
以下、実施例にて本発明を詳細に説明するが、これらの実施例は本発明を具体的に説明するものであり、実施の態様がこれにより限定されるものではない。
また、合成例、実施例及び比較例において、「部」及び「%」は、いずれも重量換算である。
【0084】
[合成例1]ビニル重合体Aの合成例(X1)
キシレン100部を、窒素気流中80℃に保ち、攪拌しながらメタクリル酸エチル68部、メタクリル酸2−エチルヘキシル29部、チオグリコール酸3部、および重合開始剤(「パーブチル(登録商標)O」〔有効成分ペルオキシ2−エチルヘキサン酸t−ブチル、日本油脂(株)製〕)0.2部からなる0混合物を4時間かけて滴下した。滴下終了後、4時間ごとに「パーブチル(登録商標)O」0.5部を添加し、80℃で12時間攪拌した。反応終了後不揮発分調整のためキシレンを加え、不揮発分50%の、片末端にカルボキシル基を有するビニル共重合体(X1)のキシレン溶液を得た。該樹脂の重量平均分子量は7000、酸価は18.0mgKOH/g、ガラス転移温度Tgは38℃であった。
【0085】
[合成例2]ビニル共重合体の合成例(X2)
キシレン100部を、窒素気流中80℃に保ち、攪拌しながらメタクリル酸エチル66部、メタクリル酸2−エチルヘキシル28部、チオグリコール酸6部、および重合開始剤(「パーブチル(登録商標)O」〔有効成分ペルオキシ2−エチルヘキサン酸t−ブチル、日本油脂(株)製〕)0.3部からなる混合物を4時間かけて滴下した。滴下終了後、4時間ごとに「パーブチル(登録商標)O」0.5部を添加し、80℃で12時間攪拌した。反応終了後、不揮発分調整のため適宜量のキシレンを添加し、不揮発分50%の、片末端にカルボキシル基を有するビニル共重合体(X2)のキシレン溶液を得た。該樹脂の重量平均分子量は4000、酸価は36.0mgKOH/g、ガラス転移温度Tgは38℃であった。
【0086】
[合成例3]ビニル共重合体の合成例(X3)
キシレン150部を、窒素気流中80℃に保ち、攪拌しながらメタクリル酸エチル64部、メタクリル酸2−エチルヘキシル27部、チオグリコール酸8部、および重合開始剤(「パーブチル(登録商標)O」〔有効成分ペルオキシ2−エチルヘキサン酸t−ブチル、日本油脂(株)製〕)0.4部からなる混合物を4時間かけて滴下した。滴下終了後、4時間ごとに「パーブチル(登録商標)O」0.5部を添加し、80℃で12時間攪拌した。反応終了後、不揮発分調整のため適宜量のキシレンを添加し、不揮発分40%の、片末端にカルボキシル基を有するビニル共重合体(X3)のキシレン溶液を得た。該樹脂の重量平均分子量は3000、酸価は48.0mgKOH/g、ガラス転移温度Tgは38℃であった。
【0087】
[合成例4]ビニル共重合体の合成例(X4)
キシレン100部を、窒素気流中80℃に保ち、攪拌しながらメタクリル酸エチル28部、メタクリル酸2−エチルヘキシル66部、チオグリコール酸6部、および重合開始剤(「パーブチル(登録商標)O」〔有効成分ペルオキシ2−エチルヘキサン酸t−ブチル、日本油脂(株)製〕)0.3部からなる混合物を4時間かけて滴下した。滴下終了後、4時間ごとに「パーブチル(登録商標)O」0.5部を添加し、80℃で12時間攪拌した。反応終了後、不揮発分調整のため適宜量のキシレンを添加し、不揮発分50%の、片末端にカルボキシル基を有するビニル共重合体(X4)のキシレン溶液を得た。該樹脂の重量平均分子量は4000、酸価は36.0mgKOH/g、ガラス転移温度Tgは8℃であった。
【0088】
[合成例5]ビニル重合体Aの合成例(X5)
キシレン100部を、窒素気流中80℃に保ち、攪拌しながらメタクリル酸2−エチルヘキシル68部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル29部、チオグリコール酸3部、および重合開始剤(「パーブチル(登録商標)O」〔有効成分ペルオキシ2−エチルヘキサン酸t−ブチル、日本油脂(株)製〕)0.2部からなる混合物を4時間かけて滴下した。滴下終了後、4時間ごとに「パーブチル(登録商標)O」0.5部を添加し、80℃で12時間攪拌した。反応終了後不揮発分調整のためキシレンを加え、不揮発分50%の、片末端にカルボキシル基を有するビニル共重合体(X5)のキシレン溶液を得た。該樹脂の重量平均分子量は7000、酸価は18.0mgKOH/g、ガラス転移温度Tgは10℃であった。
【0089】
[合成例6]ビニル共重合体の合成例(X6)
キシレン100部を、窒素気流中80℃に保ち、攪拌しながらメタクリル酸エチル66部、メタクリル酸ジシクロペンタニル28部、チオグリコール酸6部、および重合開始剤(「パーブチル(登録商標)O」〔有効成分ペルオキシ2−エチルヘキサン酸t−ブチル、日本油脂(株)製〕)0.3部からなる混合物を4時間かけて滴下した。滴下終了後、4時間ごとに「パーブチル(登録商標)O」0.5部を添加し、80℃で12時間攪拌した。反応終了後、不揮発分調整のため適宜量のキシレンを添加し、不揮発分50%の、片末端にカルボキシル基を有するビニル共重合体(X6)のキシレン溶液を得た。該樹脂の重量平均分子量は4000、酸価は36.0mgKOH/g、ガラス転移温度Tgは60℃であった。
【0090】
[合成例7]ビニル共重合体の合成例(X7)
キシレン100部を、窒素気流中80℃に保ち、攪拌しながらアクリル酸エチル66部、アクリル酸2−エチルヘキシル28部、チオグリコール酸6部、および重合開始剤(「パーブチル(登録商標)O」〔有効成分ペルオキシ2−エチルヘキサン酸t−ブチル、日本油脂(株)製〕)0.3部からなる混合物を4時間かけて滴下した。滴下終了後、4時間ごとに「パーブチル(登録商標)O」0.5部を添加し、80℃で12時間攪拌した。反応終了後、不揮発分調整のため適宜量のキシレンを添加し、不揮発分50%の、片末端にカルボキシル基を有するビニル共重合体(X7)のキシレン溶液を得た。該樹脂の重量平均分子量は4500、酸価は36.0mgKOH/g、ガラス転移温度Tgは−38℃であった。
【0091】
<実施例1>
撹拌機,還流冷却器,窒素吹込み管、温度計を備えたフラスコに、キシレン54.5部、合成例1で得たビニル共重合体(X1)(本願におけるビニル共重合体(A)として使用)19.0部、合成例2で得たビニル共重合体(X2)(本願におけるビニル共重合体(B1)として使用)38.0部、およびポリアリルアミン20%水溶液(日東紡績(株)製「PAA−05」、数平均分子量約5,000)7.5部からなる混合物を仕込み、窒素気流下撹拌しながら140℃で撹拌し、分離装置を使用して水を溜去すると共に、キシレンを反応溶液に返流しながら8時間140℃で反応を行った。
反応終了後、不揮発分調整のため適宜量のキシレンを添加し、不揮発分40%の、顔料分散剤(1)を得た。該樹脂の重量平均分子量は10,000、アミン価は22.0mg KOH/gであった。
ついで当該顔料分散剤(1)18.7部、FASTOGEN GREEN A110(商品名:DIC(株)製、C.I.Pigment Green 58、塩素化臭素化亜鉛フタロシアニン顔料、顔料粒径40nm)15部、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMAc)66.3部を、0.5mmφジルコンビーズ200部と共にペイントコンディショナーで4時間分散させて顔料分散液(1−1)を得た。
またC.I.Pigment Green 58の代わりにC.I.Pigment Yellow 150(顔料粒径50nm)15部を添加したこと以外は顔料分散液(1−1)と同様にして顔料分散液(1−2)を得た。
【0092】
<実施例2>
撹拌機,還流冷却器,窒素吹込み管、温度計を備えたフラスコに、キシレン26.5部、合成例2で得たビニル共重合体(X2)(本願におけるビニル共重合体(A)として使用)24.0部、合成例3で得たビニル共重合体(X3)(本願におけるビニル共重合体(B1)として使用)40.5部、およびポリアリルアミン20%水溶液(日東紡績(株)製「PAA−03」、数平均分子量約3,000)9.0部からなる混合物を仕込み、窒素気流下撹拌しながら140℃で撹拌し、分離装置を使用して水を溜去すると共に、キシレンを反応溶液に返流しながら8時間140℃で反応を行った。反応終了後、不揮発分調整のため適宜量のキシレンを添加し、不揮発分40%の、顔料分散剤(2)を得た。該樹脂の重量平均分子量は8,000、アミン価は16.0mg KOH/gであった。
次いで、実施例1において、顔料分散剤(1)の重合体を前記顔料分散剤(2)に代えた外は、実施例1と同様にして顔料分散液(2−1)および顔料分散液(2−2)を得た。
【0093】
<実施例3>
撹拌機,還流冷却器,窒素吹込み管、温度計を備えたフラスコに、ポリアリルアミン20%水溶液「PAA−03」5.4部とポリエチレングリコールモノメタクリレート(日油(株)製「ブレンマーPE350」、平均エチレングリコール鎖数8)(本願における(メタ)アクリレート(C)として使用)0.7部を仕込み、窒素気流下撹拌しながら50℃で撹拌し、3時間反応させた。次いでキシレン37.5部、合成例1で得たビニル共重合体(X1)(本願におけるビニル共重合体(A)として使用)56.4部を仕込み、窒素気流下撹拌しながら140℃で撹拌し、分離装置を使用して水を溜去すると共に、キシレンを反応溶液に返流しながら8時間140℃で反応を行った。反応終了後、不揮発分調整のため適宜量のキシレンを添加し、不揮発分40%の、顔料分散剤(3)を得た。該樹脂の重量平均分子量は13,000、アミン価は16.0mg KOH/gであった。
次いで、実施例1において、顔料分散剤(1)の重合体を前記顔料分散剤(3)に代えた外は、実施例1と同様にして顔料分散液(3−1)および顔料分散液(3−2)を得た。
【0094】
<実施例4>
撹拌機,還流冷却器,窒素吹込み管、温度計を備えたフラスコに、ポリアリルアミン20%水溶液「PAA−03」10.5部とポリエチレングリコール−ポリプロピレングリコールモノメタクリレート(日油(株)製「ブレンマー70PEP−350B」、平均エチレングリコール鎖数5、平均プロピレングリコール鎖数2)(本願における(メタ)アクリレート(C)として使用)1.5部を仕込み、窒素気流下撹拌しながら50℃で撹拌し、3時間反応させた。次いでキシレン35.2部、合成例2で得たビニル共重合体(X2)(本願におけるビニル共重合体(A)として使用)52.8部を仕込み、窒素気流下撹拌しながら140℃で撹拌し、分離装置を使用して水を溜去すると共に、キシレンを反応溶液に返流しながら8時間140℃で反応を行った。反応終了後、不揮発分調整のため適宜量のキシレンを添加し、不揮発分40%の、顔料分散剤(4)を得た。該樹脂の重量平均分子量は8,000、アミン価は31.0mg KOH/gであった。
次いで、実施例1において、顔料分散剤(1)の重合体を前記顔料分散剤(4)に代えた外は、実施例1と同様にして顔料分散液(4−1)および顔料分散液(4−2)を得た。
【0095】
<実施例5>
実施例1において、ビニル共重合体(X2)を合成例4で得たビニル共重合体(X4)(本願におけるビニル共重合体(B1)またはビニル共重合体(B2)として使用)に代えた以外は、実施例1と同様にして不揮発分40%の、顔料分散剤(5)を得た。該樹脂の重量平均分子量は11,000、アミン価は23.0mg KOH/gであった。
次いで、実施例1において、顔料分散剤(1)の重合体を前記顔料分散剤(5)に代えた外は、実施例1と同様にして顔料分散液(5−1)および顔料分散液(5−2)を得た。
【0096】
<実施例6>
実施例2において、ビニル共重合体(X3)を合成例5で得たビニル共重合体(X5)(本願におけるビニル共重合体(B1)またはビニル共重合体(B2)として使用)に代えた以外は、実施例2と同様にして不揮発分40%の、顔料分散剤(6)を得た。該樹脂の重量平均分子量は10,000、アミン価は21.0mg KOH/gであった。
次いで、実施例1において、顔料分散剤(1)の重合体を前記顔料分散剤(6)に代えた外は、実施例1と同様にして顔料分散液(6−1)および顔料分散液(6−2)を得た。
【0097】
<実施例7>
撹拌機,還流冷却器,窒素吹込み管、温度計を備えたフラスコに、キシレン34.6部、合成例6で得たビニル共重合体(X6)(本願におけるビニル共重合体(A)として使用)33.6部、合成例7で得たビニル共重合体(X7)(本願におけるビニル共重合体(B2)として使用)22.8部、およびポリアリルアミン20%水溶液(日東紡績(株)製「PAA−03」、数平均分子量約3,000)9.0部からなる混合物を仕込み、窒素気流下撹拌しながら140℃で撹拌し、分離装置を使用して水を溜去すると共に、キシレンを反応溶液に返流しながら8時間140℃で反応を行った。反応終了後、不揮発分調整のため適宜量のキシレンを添加し、不揮発分40%の、顔料分散剤(7)を得た。該樹脂の重量平均分子量は8,000、アミン価は27.0mg KOH/gであった。
次いで、実施例1において、顔料分散剤(1)の重合体を前記顔料分散剤(7)に代えた外は、実施例1と同様にして顔料分散液(7−1)および顔料分散液(7−2)を得た。
【0098】
<実施例8>
撹拌機,還流冷却器,窒素吹込み管、温度計を備えたフラスコに、キシレン46.7部、合成例1で得たビニル共重合体(X1)(本願におけるビニル共重合体(A)として使用)40.5部、12−ヒドロキシステアリン酸とε−カプロラクトンを常法により重合して得た末端にカルボキシル基を有するポリエステル(本願におけるポリマー(D)として使用)(数平均分子量3000,酸価18.5)9.0部、およびポリアリルアミン20%水溶液「PAA−03」3.8部からなる混合物を仕込み、窒素気流下撹拌しながら140℃で撹拌し、分離装置を使用して水を溜去すると共に、キシレンを反応溶液に返流しながら8時間140℃で反応を行った。反応終了後、不揮発分調整のため適宜量のキシレンを添加し、不揮発分40%の、顔料分散剤(8)を得た。該樹脂の重量平均分子量は12,000、アミン価は4.0mg KOH/gであった。
次いで、実施例1において、顔料分散剤(1)の重合体を前記顔料分散剤(8)に代えた外は、実施例1と同様にして顔料分散液(8−1)および顔料分散液(8−2)を得た。
【0099】
<実施例9>
撹拌機,還流冷却器,窒素吹込み管、温度計を備えたフラスコに、キシレン46.7部、合成例1で得たビニル共重合体(X1))(本願におけるビニル共重合体(A)として使用)55.7部、ステアリン酸(本願におけるモノカルボン酸又は(メタ)アクリレート(E)として使用)1.1部、およびポリアリルアミン20%水溶液「PAA−03」5.1部からなる混合物を仕込み、窒素気流下撹拌しながら140℃で撹拌し、分離装置を使用して水を溜去すると共に、キシレンを反応溶液に返流しながら8時間140℃で反応を行った。反応終了後、不揮発分調整のため適宜量のキシレンを添加し、不揮発分40%の、顔料分散剤(9)を得た。該樹脂の重量平均分子量は11,000、アミン価は4.5mg KOH/gであった。
次いで、実施例1において、顔料分散剤(1)の重合体を前記顔料分散剤(9)に代えた外は、実施例1と同様にして顔料分散液(9−1)および顔料分散液(9−2)を得た。
【0100】
<比較例1>
撹拌機,還流冷却器,窒素吹込み管、温度計を備えたフラスコに、キシレン36.8部、合成例1で得たビニル共重合体(X1)57.9部、ポリアリルアミン20%水溶液「PAA−03」5.3部からなる混合物を仕込み、窒素気流下撹拌しながら140℃で撹拌し、分離装置を使用して水を溜去すると共に、キシレンを反応溶液に返流しながら8時間140℃で反応を行った。反応終了後、不揮発分調整のため適宜量のキシレンを添加し、不揮発分40%の、顔料分散剤(比−1)を得た。該樹脂の重量平均分子量は8,000、アミン価は16.0mg KOH/gであった。
次いで、実施例1において、顔料分散剤(1)の重合体を前記顔料分散剤(比−1)に代えた外は、実施例1と同様にして顔料分散液(比−1−1)および顔料分散液(比−1−2)を得た。
【0101】
<比較例2>
撹拌機,還流冷却器,窒素吹込み管、温度計を備えたフラスコに、キシレン36.8部、合成例1で得たビニル共重合体(X2)57.9部、ポリアリルアミン20%水溶液「PAA−03」5.3部からなる混合物を仕込み、窒素気流下撹拌しながら140℃で撹拌し、分離装置を使用して水を溜去すると共に、キシレンを反応溶液に返流しながら8時間140℃で反応を行った。反応終了後、不揮発分調整のため適宜量のキシレンを添加し、不揮発分40%の、顔料分散剤(比−2)を得た。該樹脂の重量平均分子量は8,000、アミン価は20.0mg KOH/gであった。
次いで、実施例1において、顔料分散剤(1)の重合体を前記顔料分散剤(比−2)に代えた外は、実施例1と同様にして顔料分散液(比−2−1)および顔料分散液(比−2−2)を得た。
【0102】
<性能試験および評価基準>
(顔料粒子径判定)
顔料分散体にPGMAcを加えて1000倍に希釈した後、粒度分析計(大塚電子社製「FPAR−1000」)を使用して、分散している顔料の粒子径を測定し、初期粒子径とし、次の3段階の基準で判定した。
○ 粒径100nm未満。
△ 粒径100nm以上130nm未満。
× 粒径130nm以上。
【0103】
(顔料分散体の保存安定性)
顔料分散体を40℃で7日間静置した後、前記粒度分析計を使用して、試料中に分散している顔料の粒子径を測定した。
測定値の初期粒子径に対する変化率が10%以下のものを「○」、10%を超えるものを「×」と評価した
【0104】
(塗膜作成)
顔料分散液75.00部とポリエステルアクリレート樹脂(アロニックスM7100、東亜合成化学工業株式会社製)8.50部、PGMAc16.5部を混合し、孔径1.0μmのフィルターで濾過し、カラーフィルター用インキを得た。カラーフィルター用インキは1mm厚ガラスに乾燥膜厚1μmとなるようにスピンコーターを用いて塗布し、その後90℃で5分間予備乾燥して塗膜を形成させた。次いで得られた塗膜を230℃で15分間加熱処理して、カラーフィルター画素部とした。
【0105】
(輝度)
輝度(Y値)は、大塚電子(株)製分光光度計MCPD−3000を使用して、F10光源測色で色度座標x値とy値を算出し、両色度座標x、y値を合わせてCIE発色系色度におけるY値を測定した。ここでは、輝度(Y値)が大きいほど視覚明度が高いと評価した。
【0106】
(コントラスト)
当該カラーフィルター青色画素部を2枚の偏光板の間に設置し、一方には光源を、更にその反対側にはCCDカメラを設置して輝度の測定を行った。偏光軸が平行になる時と垂直になる時との輝度(透過光強度)の比より算出した。

【0107】
本発明の顔料分散体の性能試験結果をまとめて表1及び表2に示した。
【0108】
【表1】


【0109】
【表2】

【0110】
表1は、FASTOGEN GREEN A110の顔料分散液である。実施例の顔料分散液は、全てコントラストが7000を超えていた。
比較例1−1−1、1−1−2は分散安定性に劣っており、コントラストも低下した。
【0111】
また表2は、C.I.Pigment Yellow 150の顔料分散液である。実施例の顔料分散液は、全て輝度が86.5を超え、コントラストも5000を超えていた。一方比較例1−2−1、及び1−2−2は粒径が大きくコントラストも低下した。1−2−2は安定性にも劣っていた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアリルアミンのアミノ基に、アミノ基と反応する官能基を片末端に有するビニル共重合体(A)と、下記(B)〜(E)からなる群から選択される一つまたはそれ以上の化合物とを反応させてなる変性ポリアリルアミンを主成分とすることを特徴とする顔料分散剤。
(1)アミノ基と反応する官能基を片末端に有するビニル共重合体であって、アミノ基と反応する官能基量、共重合体組成又は共重合体組成比が前記ビニル共重合体(A)と異なるビニル共重合体(B)。
(2)ポリアルキレングリコール鎖を有する(メタ)アクリレート(C)。
(3)アミノ基と反応する官能基を片末端に有するポリエステル、アミノ基と反応する官能基を片末端に有するポリアミド又はアミノ基と反応する官能基を片末端に有するポリエステルアミド(D)。
(4)モノカルボン酸又は(メタ)アクリレート(E)。
【請求項2】
前記ビニル共重合体(B)が、複数のビニルモノマーを重合させてなるビニル共重合体(B1)であって、前記ビニル共重合体(A)の片末端にあるアミノ基と反応する官能基の重量%と、前記ビニル共重合体(B1)の片末端にあるアミノ基と反応する官能基の重量%の比率が、0.4〜0.8の範囲であり、且つ前記ビニル共重合体(A)と前記ビニル共重合体(B1)とのモル比率(A)/(B1)が、(A)/(B1)=0.25〜4.0である請求項1に記載の顔料分散剤。
【請求項3】
前記変性ポリアリルアミンが、前記ポリアルキレングリコール鎖を有する(メタ)アクリレート(C)を反応させており、前記ポリアルキレングリコール鎖を分子全体に対して1〜30重量%の割合で有する請求項1に記載の顔料分散剤。
【請求項4】
前記ビニル共重合体(B)が、複数のビニルモノマーを重合させてなるビニル共重合体(B2)であって、前記ビニル共重合体(A)のTgと前記ビニル共重合体(B2)のTgの差が20℃以上あり、且つ、前記ビニル共重合体(A)と前記ビニル共重合体(B2)とのモル比率(A)/(B2)が、(A)/(B2)=0.25〜4.0である請求項1に記載の顔料分散剤。
【請求項5】
前記変性ポリアリルアミンが、前記アミノ基と反応する官能基を片末端に有するポリエステル、アミノ基と反応する官能基を片末端に有するポリアミド又はアミノ基と反応する官能基を片末端に有するポリエステルアミド(D)の残基を分子全体に対して1〜50重量%の割合で有する請求項1に記載の顔料分散剤。
【請求項6】
前記変性ポリアリルアミンが、前記モノカルボン酸又は(メタ)アクリレート(E)の残基を分子全体に対して1〜30重量%の割合で有する請求項1に記載の顔料分散剤。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の顔料分散剤を使用することを特徴とする顔料分散体。

【公開番号】特開2010−222522(P2010−222522A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−73797(P2009−73797)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】