説明

顔料分散液、記録用インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録装置

【課題】インクジェット用として好適であり、記録用インクに用いると普通紙に記録した場合にも高い画像濃度が得られ、保存安定性に優れる顔料分散液の提供。
【解決手段】水及び顔料を含有してなり、前記顔料が、オゾンにより酸化処理されたオゾン酸化カーボンブラックを含み、前記オゾン酸化カーボンブラックの揮発分の含有量が10質量%〜20質量%であり、かつBET比表面積が90m/g〜150m/gであり、前記顔料の含有量が17.0質量%、かつ、アルカリ金属水酸化物でpHを6〜8に調整したときの電気伝導率が0.6mS/cm〜1.5mS/cmである顔料分散液である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料分散液、該顔料分散液を用いた記録用インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インクジェット記録方式は、産業用途としての需要が高まり高速化印字、様々な記録媒体(紙等のメディア)に対する対応性が望まれている。高速化に伴ってラインヘッドを搭載したインクジェット記録装置も必要となっている。また、環境面及び安全面から水系インクに対する要望が高くなっている。
しかし、水系インクは、記録媒体の影響を受け易く、形成された画像に種々の問題が生じている。このことは、記録媒体として非平滑性の普通紙を使用する場合に顕著である。水系インクは、乾燥までに時間を要し、紙への浸透性が高く、特に、未コーティングの比較的非平滑な普通紙の場合、色材が普通紙中に浸透することで、形成された画像の色濃度が低下してしまうという溶剤系インクではみられなかった問題がある。
【0003】
一方、高速印字化に対応するため、記録媒体に付着したインクの乾燥速度を速める目的で、インクに浸透剤を添加して溶媒である水を記録媒体に浸透させることが試みられている。しかし、インクに浸透剤を添加すると、水だけでなく色材の記録媒体への浸透性も向上し、画像濃度が低下してしまうという問題がある。
そこで、画像濃度を向上させる方法として、酸性カーボンブラックを次亜塩素酸で酸化処理し、酸化カーボンブラックの表面官能基量/比表面積の比をコントロールすることが提案されている(特許文献1参照)。しかし、この提案の次亜塩素酸塩を用いた酸化処理は湿式法であるため、脱水、洗浄等が必要となり高コストを招いてしまうという問題がある。また、洗浄しても塩等が残留するため、インクに使用すると保存安定性が満足できるものではなかった。更に、非平滑な普通紙を用いた場合には画像濃度の点でも十分満足できるものではなかった。
また、分散安定性を向上させる目的で、カーボンブラックをペルオキソ2硫酸塩で酸化処理し、酸化カーボンブラックの表面官能基量、比表面積、又はその他の特性を規定することが提案されている(特許文献2参照)。しかし、この提案のペルオキソ2硫酸塩を用いた酸化処理は湿式法であるため、上記特許文献1と同様の理由から、インクの保存安定性及び画像濃度において十分満足できるものではなかった。
【0004】
また、カーボンブラックを水の存在下でオゾンにより酸化処理して得られたDBP吸油量と酸性基を規定したファーネスブラック、及び水性インクが提案されている(特許文献3参照)。しかし、ファーネスブラックで所望のDBP吸収量を得るためには比表面積が大きいものを使用しなければならず、酸性基を酸化により増加させても実際のカーボンブラック表面に存在する有効な酸性基は少なく、インクに使用した場合の保存安定性及び画像濃度は満足できるものではなかった。
また、オゾン酸化したカーボンブラックの揮発分の含有量が25質量%以上であるカーボンブラックを含む分散液が提案されている(特許文献4参照)。しかし、この提案のようにカーボンブラックの揮発分の含有量が高いと水への濡れ性が向上し水分散性は向上するが、酸化処理時の不純物増加によるインクの保存安定性の低下が生じる。また、水への相溶性が高くなりすぎ、水とともに紙への顔料の染み込みが発生しやすくなり十分な画像濃度が得られないという問題がある。
【0005】
したがって、オゾンにより酸化処理されたオゾン酸化カーボンブラックを含みインクジェット用として好適な顔料分散液、該顔料分散液を用いた普通紙に記録した場合にも高い画像濃度が得られ、保存安定性に優れた記録用インクの開発が望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、インクジェット用として好適であり、記録用インクに用いると普通紙に記録した場合にも高い画像濃度が得られ、保存安定性に優れる顔料分散液を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、以下の知見を得た。即ち、カーボンブラックの揮発分の含有量が多くなると、その理由は不明であるが、紙表面へのカーボンブラックの留まりが向上し、画像濃度が向上する傾向がある。この画像濃度の向上効果はカーボンブラックの揮発分の含有量が20質量%を超えるところから認められ、揮発分の含有量の上昇に伴って飽和となる。一方、カーボンブラックの揮発分の含有量が多くなると、カーボンブラックの親水性が高くなり分散性は向上するが、揮発分の多いカーボンブラックを酸化処理すると不純物が発生し、インクの経時安定性が悪くなり、画像濃度とインクの保存安定性を両立することが困難となる。更に、カーボンブラックのBET比表面積と、揮発分の含有量との比率についても検討したが、高い画像濃度とインクの保存安定性の両立を図ることは困難であるという知見である。
そこで、前記知見に基づき本発明者らが更に鋭意検討を重ねた結果、カーボンブラックの酸化を不純物発生の少ないオゾン酸化処理で行い、オゾン酸化カーボンブラックの揮発分の含有量を画像濃度向上効果がまだ現れない10質量%〜20質量%とし、カーボンブラックのBET比表面積を90m/g〜150m/gにすることで、意外にも、高い画像濃度とインクの保存安定性が両立できると共に、前記顔料の濃度が17.0質量%であり、かつアルカリ金属水酸化物でpHを6〜8に調整したときの顔料分散液の電気伝導率が0.6mS/cm〜1.5mS/cmであることにより、画像濃度が更に向上することを知見した。
【0008】
本発明は、本発明者らによる前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
本発明の顔料分散液は、水及び顔料を含有してなり、
前記顔料が、オゾンにより酸化処理されたオゾン酸化カーボンブラックを含み、
前記オゾン酸化カーボンブラックの揮発分の含有量が10質量%〜20質量%であり、かつBET比表面積が90m/g〜150m/gであり、
前記顔料の含有量が17.0質量%、かつ、
アルカリ金属水酸化物でpHを6〜8に調整したときの電気伝導率が0.6mS/cm〜1.5mS/cmであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、インクジェット用として好適であり、記録用インクに用いると普通紙に記録した場合にも高い画像濃度が得られ、保存安定性に優れる顔料分散液を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、インクカートリッジの一例を示す外観斜視図である。
【図2】図2は、インクカートリッジの一例を示す正断面図である。
【図3】図3は、本発明のインクジェット記録装置の一例を示す概略図である。
【図4】図4は、インクジェット記録装置における記録ヘッドの一例を示す模式図である。
【図5】図5は、インクジェット記録装置における記録ヘッドの他の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(顔料分散液)
本発明の顔料分散液は、顔料と水を含有し、アルカリ金属水酸化物、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
【0012】
<顔料>
前記顔料としては、オゾンにより酸化処理されたオゾン酸化カーボンブラックを含む。
前記オゾン酸化カーボンブラックの揮発分の含有量は、10質量%〜20質量%であり、12質量%〜18質量%が好ましい。前記含有量が、10質量%未満であると、普通紙に記録したときの画像濃度が低くなることがあり、20質量%を超えると、インクの保存安定性が悪くなることがある。
前記オゾン酸化カーボンブラックの揮発分とは、オゾン酸化カーボンブラックを高温に加熱した際の揮発(減量)分であり、カーボンブラックに化学吸着している酸素含有基の揮発量を意味する。高温で加熱している間に化学吸着している酸素含有基は分解されて、二酸化炭素、一酸化炭素、水分などがガスとして揮発する。
ここで、前記カーボンブラックの揮発分の含有量は、例えば、DIN 53 552に記載の方法により、測定することができる。具体的には、カーボンブラックの乾燥試料を、白金坩堝又はそれと同形、同容量の落とし蓋付き磁器坩堝に、蓋下2mmを超えない程度まで打振して詰め、質量(WD)を量る。次いで、坩堝に蓋をして電気炉に入れ、950℃±25℃で正確に7分間加熱した後、取り出し、デジケーター中で室温(25℃)になるまで放冷して加熱後の質量(WR)を量る。これらの質量を次の式に代入して得られる値(V)が揮発分の含有量(質量%)である。
【数1】

ただし、前記式中、Vは、カーボンブラックの揮発分の含有量(質量%)、Wは、乾燥試料の質量(g)、Wは、加熱後の試料の質量(g)を表す。
前記オゾン酸化カーボンブラックのBET比表面積は、90m/g〜150m/gであり、100m/g〜130m/gが好ましい。前記BET比表面積が、90m/g未満であると、画像濃度が低くなることがあり、150m/gを超えると、インクの保存安定性が悪くなることがある。
ここで、前記カーボンブラックのBET比表面積は、例えば、窒素吸着によるBET法(DIN 66132)により測定することができる。
【0013】
このようなオゾン酸化カーボンブラックは、BET比表面積が90m/g〜150m/gのカーボンブラックをオゾン酸化処理して、カーボンブラックの揮発分の含有量を10質量%〜20質量%に調整することにより製造できる。なお、オゾン酸化処理によりカーボンブラックのBET比表面積は変化しない。
前記カーボンブラックのオゾン酸化処理の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、カーボンブラックにオゾンガスを流通させて行う乾式法が、酸化処理能力が高い点から好ましい。水を介した湿式のオゾン酸化処理では、水とオゾンの反応が生じるため、十分な酸化ができないことがある。
前記オゾン酸化カーボンブラックの揮発分の含有量は、オゾン発生量と酸化処理時間を調整することによりコントロール可能であり、オゾン発生量(濃度)を上げる、又は酸化処理時間を長くすることで、より高い揮発分を含有するオゾン酸化カーボンブラックが得られる。
ここで、酸化処理時間とカーボンブラック揮発分の含有量との関係は、ほぼ直線(リニアー)であるが、ある時間を超えると飽和に達する(カーボンブラック揮発分の含有量が上がらない)ので、カーボンブラックの揮発分の含有量を確認しながら酸化処理時間を調整することが好ましい。また、オゾン酸化処理する前のカーボンブラックの特性や不純物の量等に応じてオゾン酸化処理の条件は異なるので、便宜調整することが好ましい。なお、オゾンは、空気又は酸素をオゾン発生装置に通すことで得られる。
カーボンブラックがオゾン酸化処理されているか否かについては、例えば、オゾン酸化処理の前後で、表面官能基、吸着物質などを測定し、それらの増減を分析することにより、オゾン酸化処理されているか否かを推測することができる。
【0014】
オゾン酸化処理に用いられるカーボンブラックとしては、BET比表面積が90m/g〜150m/gであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、画像濃度の点から、DBP吸油量(DIN ISO 787/5法)が230ml/100g以上のものが好ましい。
ここで、前記DBP吸油量は、カーボンブラックにDBP(ジブチルフタレート)を滴下し、カーボンの空隙に進入させ、カーボンブラック100g当たりの隙間を埋めるのに必要なDBP量より求めることができる。
前記オゾン酸化処理に用いられるカーボンブラックとしては、例えば、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ガスブラックなどが挙げられる。これらの中でも、画像濃度の点からガスブラックが好ましい。また、カーボンブラック表面を酸化処理又はアルカリ処理したものも用いることができる。なお、樹脂で被覆したり、グラフト処理、又はカプセル化処理したカーボンブラックも使用可能であるが、樹脂被覆等の処理がされていないものが好ましい。
前記オゾン酸化処理に用いられるカーボンブラックとしては、市販品を用いることができ、該市販品としては、例えば、#45L、MCF88、#990、MA600、#850(いずれも、三菱化学株式会社製);NIPEX90、NIPEX150、NIPEX160、NIPEX170、NIPEX180、Color Black FW200、PRINTEX25、PRINTEX35、PRINTEX−U、PRINTEX140、Special Black250(いずれも、デグサ社製);REGAL400R、REGAL600R、MOGUL L(いずれも、キャボット社製)などが挙げられる。
【0015】
前記顔料分散液における顔料(カーボンブラック)の含有量(濃度)は、顔料分散液全体に対して5質量%〜25質量%が好ましく、10質量%〜20質量%がより好ましい。前記顔料濃度が、5質量%以上であれば生産性が劣るこがなく、25質量%以下であれば、顔料分散液の粘度が高くなりすぎて顔料の分散が困難になることもない。
【0016】
<水>
前記水としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、又は超純水などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0017】
<アルカリ金属水酸化物>
本発明の顔料分散液は、pH調整剤として、アルカリ金属水酸化物を含有する。
前記アルカリ金属水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記アルカリ金属水酸化物の前記顔料分散液における添加量は、前記顔料分散液のpHを6〜8に調整できる量である。
【0018】
<その他の成分>
本発明の顔料分散液は、顔料、水、アルカリ金属水酸化物以外にも、必要に応じて分散剤、水溶性有機溶剤、防腐剤等の各種添加剤を添加することができる。
【0019】
−分散剤−
前記分散剤としては、例えば、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤等の界面活性剤、高分子分散剤などが挙げられる。
【0020】
前記アニオン界面活性剤としては、例えば、アルキルスルホカルボン酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、N−アシルアミノ酸又はその塩、N−アシルメチルタウリン塩、アルキル硫酸塩ポリオキシアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸塩、ロジン酸石鹸、ヒマシ油硫酸エステル塩、ラウリルアルコール硫酸エステル塩、アルキルフェノール型燐酸エステル、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、アルキル型燐酸エステル、アルキルアリルスルホン塩酸、ジエチルスルホ琥珀酸塩、ジエチルヘキシルスルホ琥珀酸、ジオクチルスルホ琥珀酸塩などが挙げられる。
【0021】
前記カチオン界面活性剤としては、例えば、2−ビニルピリジン誘導体、ポリ−4−ビニルピリジン誘導体などが挙げられる。
前記両性界面活性剤としては、例えば、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ポリオクチルポリアミノエチルグリシン、又はこれらのイミダゾリン誘導体などが挙げられる。
【0022】
前記ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアリルキルアルキルエーテル等のエーテル系ノニオン界面活性剤;ポリオキシエチレンオレイン酸、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンジステアリン酸エステル、ソルビタンラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンステアレート等のエステル系ノニオン界面活性剤;2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオール、3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール等のアセチレングリコール系ノニオン界面活性剤などが挙げられる。
前記高分子分散剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水溶性スチレンアクリル樹脂、水溶性ウレタン樹脂などが挙げられる。
【0023】
−水溶性有機溶剤−
前記水溶性有機溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール等のアルコール;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール;N−メチルピロリドン、2−ピロリドン等のピロリドン誘導体;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルカノールアミンなどが挙げられる。
【0024】
<顔料分散液の製造方法>
本発明の顔料分散液は、顔料、水、アルカリ金属水酸化物、及び必要に応じて各種添加剤を、サンドミル、ボールミル、ロールミル、ビーズミル、ナノマイザー、ホモジナイザー等の分散機を用いて、湿式分散方式により製造することができる。
【0025】
本発明の顔料分散液は、前記顔料(カーボンブラック)の濃度が17.0質量%であり、かつpHが6〜8であるときの電気伝導率が0.6mS/cm〜1.5mS/cmであり、0.6mS/cm〜1.3mS/cmが好ましい。
前記顔料分散液の電気伝導率が、1.5mS/cmを超えると、本発明の顔料分散液を用いた記録用インクの保存安定性が低下し、インク粘度の上昇、分散安定性が低下することがある。一方、前記顔料分散液の電気伝導率が、0.6mS/cm未満であると、普通紙に記録した際に画像濃度が低くなることがある。
【0026】
湿式分散処理された顔料分散液は、電気透析、分離膜(例えば、逆浸透膜、限外濾過膜、ナノ濾過膜(「ルーズR.O」)等)、吸着剤、又はイオン交換樹脂により顔料分散液中の電解質が除去され、顔料分散液の電気伝導率は低くなる。これらの処理によって、顔料分散液の電気伝導率を0.6mS/cm〜1.5mS/cmに調整してもよい。これらの処理により、電気伝導率を0.5mS/cm以下、好ましくは0.2mS/cm以下にした後、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物を添加して顔料分散液のpHを6〜8に調整することにより、顔料分散液の電気伝導率を0.6mS/cm〜1.5mS/cmとすることができる。
前記吸着剤としては、不純物を吸着剤の表面に吸着できる性能を有していれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、活性炭、ゼオライト、アルミナ、シリカゲル、活性白土、吸着用合成樹脂、キレート樹脂などが挙げられる。
前記イオン交換樹脂は、再生処理により繰り返し使用できるので、経済的にも環境保全の観点からも有利であり、陽イオン交換樹脂のみでもよいが、陽イオン交換樹脂と陰イオン交換樹脂とを併用することが好ましい。
ここで、前記顔料分散液の電気伝導率は、例えば、JIS K0130に準拠した方法で測定することができ、温度25℃における電気伝導率は電気伝導率計(CM−30R型、東亜ディーケーケー株式会社製)を用いて測定することができる。
【0027】
本発明の顔料分散液は、顔料の体積平均粒子径(D50)が70nm〜180nm、該顔料の粒度分布における粒子径標準偏差を前記D50の1/2以下とすることが好ましい。これにより、記録用インクに用いたときに、画像濃度が高く、吐出安定性及び保存安定性が良好な顔料分散液を提供できる。
前記顔料の体積平均粒子径は、例えば、粒度分布計(日機装株式会社製、UPA−EX150)を用い、23℃、55%RHの環境下で測定することができる。
【0028】
本発明の顔料分散液は、記録用インクに用いたときに、画像濃度が高く、保存安定性が良好となるので、各種記録用インクに用いることができるが、インクジェット記録用インクとして特に好適に使用することができる。
【0029】
(記録用インク)
本発明の記録用インクは、本発明の前記顔料分散液を含有し、水、湿潤剤、界面活性剤、浸透剤、樹脂を含有することが好ましく、更に必要に応じてpH調整剤、防腐防黴剤、キレート試薬、防錆剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、酸素吸収剤、光安定化剤等のその他の成分を含有してなる。
【0030】
<湿潤剤>
前記湿潤剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類、多価アルコールアリールエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類、プロピレンカーボネート、炭酸エチレン、その他の湿潤剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0031】
前記多価アルコール類としては、例えば、グリセリン、ジエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、エチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、ペトリオールなどが挙げられる。
前記多価アルコールアルキルエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどが挙げられる。
前記多価アルコールアリールエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテルなどが挙げられる。
【0032】
前記含窒素複素環化合物としては、例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミイダゾリジノン、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクトンなどが挙げられる。
前記アミド類としては、例えば、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。
前記アミン類としては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミンなどが挙げられる。
前記含硫黄化合物類としては、例えば、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノールなどが挙げられる。
【0033】
前記その他の湿潤剤としては、例えば、糖類などが挙げられる。前記糖類としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類(三糖類、四糖類を含む)、多糖類などが挙げられる。
前記糖類としては、例えば、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオースなどが挙げられる。
前記多糖類とは、広義の糖を意味し、α−シクロデキストリン、セルロースなど自然界に広く存在する物質を含む意味である。
前記糖類の誘導体としては、前記糖類の還元糖〔例えば、一般式:HOCH(CHOH)CHOH(n=2〜5の整数)で表される糖アルコール等〕、酸化糖(例えば、アルドン酸、ウロン酸等)、アミノ酸、チオ酸などが挙げられる。これらの中でも、糖アルコールが特に好ましい。
前記糖アルコールとしては、例えば、マルチトール、ソルビットなどが挙げられる。
前記湿潤剤の中でも、保存安定性及び吐出安定性の点から、グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドンが特に好ましい。
【0034】
前記顔料と前記湿潤剤との配合比は、ヘッドからのインクの吐出安定性に非常に影響がある。顔料固形分が多いのに湿潤剤の配合量が少ないと、ノズルのインクメニスカス付近の水分蒸発が進み、吐出不良をもたらすことがある。
前記湿潤剤の前記記録用インクにおける含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、20質量%〜35質量%が好ましく、22.5質量%〜32.5質量%がより好ましい。この範囲であれば、インクの乾燥性、保存安定性、信頼性などの結果が非常に良好である。前記含有量が、20質量%未満であると、ノズル面上でインクが乾燥し易くなって吐出不良が生じることがあり、35質量%を超えると、紙面上での乾燥性に劣るため、普通紙上の文字品位が低下することがある。
【0035】
<界面活性剤>
前記界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などが挙げられる。これらの中でも、フッ素系界面活性剤が特に好ましい。
前記フッ素系界面活性剤としては、フッ素置換炭素数が2〜16のものが好ましく、4〜16のものがより好ましい。前記フッ素置換炭素数が、2未満であると、フッ素の効果が得られないことがあり、16を超えると、インク保存性の問題が生じることがある。
前記フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物などが挙げられる。これらの中でも、起泡性が少ない点から、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物が特に好ましい。
【0036】
前記パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、パーフルオロアルキルスルホン酸塩などが挙げられる。
前記パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、パーフルオロアルキルカルボン酸塩などが挙げられる。
前記パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルリン酸エステルの塩などが挙げられる。
前記パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩などが挙げられる。
前記フッ素系界面活性剤における塩の対イオンとしては、例えば、Li、Na、K、NH、NHCHCHOH、NH(CHCHOH)、NH(CHCHOH)などが挙げられる。
前記フッ素系界面活性剤としては、適宜合成したものを用いても、市販品を用いてもよい。前記市販品としては、例えば、DuPont社製のFS−300、ネオス社製のFT−110、FT−250、FT−251、FT−400S、FT−150、FT−400SW、オムノバ社製のPF−151Nなどが挙げられる。
【0037】
前記シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、高pHでも分解しないものが好ましく、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられる。これらの中でも、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが水系界面活性剤として良好な性質を示す点で特に好ましい。
前記シリコーン系界面活性剤としては、適宜合成したものを用いても市販品を用いてもよい。前記市販品としては、例えば、ビックケミー社、信越シリコーン社、東レ・ダウコーニング・シリコーン社などから容易に入手できる。
前記界面活性剤の前記記録用インクにおける含有量は、0.01質量%〜3質量%が好ましく、0.5質量%〜2.5質量%がより好ましい。前記含有量が、0.01質量%未満であると、界面活性剤を添加した効果が得られないことがあり、3質量%を超えると、記録媒体への浸透性が必要以上に高くなり、画像濃度の低下、裏抜けが発生することがある。
【0038】
<浸透剤>
前記浸透剤としては、20℃の水に対する溶解度が0.2質量%〜5.0質量%のポリオール化合物の少なくとも1種を含有することが好ましい。
前記ポリオール化合物としては、例えば、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、3,3−ジメチル−1,2−ブタンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−2−プロピル−1,3−プロパンジオール、2,4−ジメチル−2,4−ペンタンジオール、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサンジオール、5−ヘキセン−1,2−ジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール等の脂肪族ジオールなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールが特に好ましい。
【0039】
その他の併用できる浸透剤としては、記録用インク中に溶解し、所望の物性に調整できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ジエチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノアリルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールクロロフェニルエーテル等の多価アルコールのアルキル及びアリールエーテル類;エタノール等の低級アルコール類などが挙げられる。
前記浸透剤の前記記録用インクにおける含有量は、0.1質量%〜4質量%が好ましい。前記含有量が、0.1質量%未満であると、速乾性が得られず滲んだ画像となることがあり、4質量%を超えると、顔料の分散安定性が損なわれ、ノズルが目詰まりしやすくなったり、記録媒体への浸透性が必要以上に高くなり、画像濃度の低下や裏抜けが発生することがある。
【0040】
<樹脂>
前記樹脂としては、例えば、アクリル系樹脂、酢酸ビニル系樹脂、スチレン−ブタジエン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、アクリル−スチレン系樹脂、アクリルシリコーン系樹脂、シリコーン変性アクリル樹脂、ブタジエン系樹脂、スチレン系樹脂、ウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂などが挙げられる。
【0041】
<その他の成分>
−pH調整剤−
前記pH調整剤としては、調合される記録用インクに悪影響を及ぼさずにpHを調整できるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、アルコールアミン類、アルカリ金属水酸化物、アンモニウム水酸化物、ホスホニウム水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、などが挙げられる。
前記アルコールアミン類としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオールなどが挙げられる。
前記アルカリ金属水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。
前記アンモニウム水酸化物としては、例えば、水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物、第4級ホスホニウム水酸化物などが挙げられる。
前記アルカリ金属炭酸塩としては、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどが挙げられる。
【0042】
−防腐防黴剤−
前記防腐防黴剤としては、例えば、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウムなどが挙げられる。
【0043】
−キレート試薬−
前記キレート試薬としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラミル二酢酸ナトリウムなどが挙げられる。
【0044】
−防錆剤−
前記防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライトなどが挙げられる。
【0045】
−酸化防止剤−
前記酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む)、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤などが挙げられる。
前記フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む)としては、例えば、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]−2,4,8,10−テトライキサスピロ[5,5]ウンデカン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどが挙げられる。
【0046】
前記アミン系酸化防止剤としては、例えば、フェニル−β−ナフチルアミン、α−ナフチルアミン、N,N’−ジ−sec−ブチル−p−フェニレンジアミン、フェノチアジン、N,N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール、2,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2,4−ジメチル−6−tert−ブチル−フェノール、ブチルヒドロキシアニソール、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、テトラキス[メチレン−3(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ジヒドロキフェニル)プロピオネート]メタン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタンなどが挙げられる。
【0047】
前記硫黄系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネート、ジミリスチル−3,3’−チオジプロピオネート、ジステアリル−β,β’−チオジプロピオネート、2−メルカプトベンゾイミダゾール、ジラウリルサルファイドなどが挙げられる。
前記リン系酸化防止剤としては、例えば、トリフェニルフォスファイト、オクタデシルフォスファイト、トリイソデシルフォスファイト、トリラウリルトリチオフォスファイト、トリノニルフェニルフォスファイトなどが挙げられる。
【0048】
−紫外線吸収剤−
前記紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、ニッケル錯塩系紫外線吸収剤などが挙げられる。
前記ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
前記ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4’−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
前記サリチレート系紫外線吸収剤としては、例えば、フェニルサリチレート、p−tert−ブチルフェニルサリチレート、p−オクチルフェニルサリチレートなどが挙げられる。
前記シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、例えば、エチル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、メチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレート、ブチル−2−シアノ−3−メチル−3−(p−メトキシフェニル)アクリレートなどが挙げられる。
前記ニッケル錯塩系紫外線吸収剤としては、例えば、ニッケルビス(オクチルフェニル)サルファイド、2,2’−チオビス(4−tert−オクチルフェレート)−n−ブチルアミンニッケル(II)、2,2’−チオビス(4−tert−オクチルフェレート)−2−エチルヘキシルアミンニッケル(II)、2,2’−チオビス(4−tert−オクチルフェレート)トリエタノールアミンニッケル(II)などが挙げられる。
【0049】
<記録用インクの製造方法>
本発明の記録用インクは、特に制限はなく、公知の方法により製造することができ、例えば、本発明の前記顔料分散液、水、湿潤剤、界面活性剤、必要に応じてその他の成分を、例えば、サンドミル、ボールミル、ロールミル、ビーズミル、ナノマイザー、ホモジナイザー、超音波分散機等を用いて攪拌混合し、フィルター、遠心分離装置などで粗大粒子をろ過し、必要に応じて脱気することによって製造される。
前記記録用インク中の顔料濃度は、前記記録用インク全量に対して1質量%〜20質量%が好ましい。前記顔料濃度が、1質量%未満であると、画像濃度が低いため印字の鮮明さに欠けることがあり、20質量%を超えると、インクの粘度が高くなり、ノズルの目詰まりが発生しやすくなることがある。
【0050】
本発明の記録用インクは、各種分野において好適に使用することができるが、インクジェット記録装置において好適に使用することができ、以下のインクカートリッジ、インク記録物、インクジェット記録装置、インクジェット記録方法に特に好適に使用することができる。
【0051】
(インクカートリッジ)
本発明のインクカートリッジは、本発明の前記記録用インクを容器内に収容してなる。
前記容器としては、特に制限はなく、目的に応じてその形状、構造、大きさ、材質等を適宜選択することができ、例えば、アルミニウムラミネートフィルム、樹脂フィルム等で形成されたインク袋、プラスチックケース、などが挙げられる。
ここで、図1は、本発明のインクカートリッジの概略構成を示す外観斜視図、図2は、インクカートリッジの概略内部構成を示す正断面図である。
インクカートリッジ7は、図1及び図2に示すように、カートリッジ筐体41内にインク吸収体42を収容している。前記インク吸収体42は、多孔質体からなり、本発明の記録用インクを吸収している。前記カートリッジ筐体41には、上部に広い開口を有するケース43の上部開口に上蓋部材44が形成されている。Aは空間を示す。更に前記上蓋部材44には、溝48形状の大気開放口47、カートリッジ着脱用突起部81が設けられている。符号55は、前記大気開放口47のシール部材である。また、前記カートリッジ筐体41のケース43底部には、記録ヘッド(不図示)へ各液を供給するための液供給口45が形成されており、前記液供給口45内周辺にはシーリング46が嵌着されている。前記カートリッジ筐体41には、インクジェット記録装置に装填する前の状態において液の漏洩を防止するため、前記液供給口45を塞ぐための液漏れ防止用突部51を設けたキャップ部材50が装着されている。なお、53はキャップ部材、71はカートリッジ位置決め部、81aはカートリッジ着脱用指掛け部、82はカートリッジ着脱用窪み部を示す。
【0052】
本発明のインクカートリッジは、容器内に本発明の前記記録用インクを収容してなり、各種インクジェット記録装置に着脱可能に装着して用いることができるが、後述する本発明のインクジェット記録装置に着脱可能に装着して用いるのが特に好ましい。
【0053】
(インクジェット記録装置及びインクジェット記録方法)
本発明のインクジェット記録装置は、本発明の前記記録用インクに刺激を印加し、該記録用インクを飛翔させて画像を記録するインク飛翔手段を少なくとも有し、更に必要に応じてその他の手段を有してなる。
本発明で用いられるインクジェット記録方法は、本発明の前記記録用インクに刺激を印加し、該記録用インクを飛翔させて画像を記録するインク飛翔工程を少なくとも含み、更に必要に応じてその他の工程を含んでなる。
【0054】
前記インク飛翔手段としては、連続噴射型又はオンデマンド型が挙げられる。前記オンデマンド型としては、ピエゾ方式、サーマル方式、静電方式等が挙げられる。これらの中でも、ピエゾ方式、サーマル方式が特に好ましい。
前記ピエゾ方式は、インク流路内のインクを加圧する圧力発生手段として圧電素子を用いてインク流路の壁面を形成する振動板を変形させてインク流路内容積を変化させてインク滴を吐出させるものである(特開平2−51734号公報参照)。
前記サーマル方式は、発熱抵抗体を用いてインク流路内でインクを加熱して気泡を発生させてインク滴を吐出させるものである(特開昭61−59911号公報参照)。
前記静電方式は、インク流路の壁面を形成する振動板と電極とを対向配置し、振動板と電極との間に発生させる静電力によって振動板を変形させることで、インク流路内容積を変化させてインク滴を吐出させるものである(特開平6−71882号公報参照)。
【0055】
前記刺激としては、例えば、刺激発生手段により発生させることができ、該刺激としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、熱(温度)、圧力、振動、光などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、熱、圧力が好適に挙げられる。
【0056】
前記刺激発生手段としては、例えば、加熱装置、加圧装置、圧電素子、振動発生装置、超音波発振器、ライトなどが挙げられる。具体的には、圧電素子等の圧電アクチュエータ、発熱抵抗体等の電気熱変換素子を用いて液体の膜沸騰による相変化を利用するサーマルアクチュエータ、温度変化による金属相変化を用いる形状記憶合金アクチュエータ、静電力を用いる静電アクチュエータなどが挙げられる。
【0057】
前記記録用インクの飛翔の態様としては、特に制限はなく、前記刺激の種類等応じて異なり、例えば、前記刺激が「熱」の場合、記録ヘッド内の前記記録用インクに対し、記録信号に対応した熱エネルギーを例えばサーマルヘッド等を用いて付与し、該熱エネルギーにより前記記録用インクに気泡を発生させ、該気泡の圧力により、該記録ヘッドのノズル孔から該記録用インクを液滴として吐出噴射させる方法、などが挙げられる。また、前記刺激が「圧力」の場合、例えば記録ヘッド内のインク流路内にある圧力室と呼ばれる位置に接着された圧電素子に電圧を印加することにより、圧電素子が撓み、圧力室の容積が縮小して、前記記録ヘッドのノズル孔から該記録用インクを液滴として吐出噴射させる方法、などが挙げられる。
【0058】
本発明の記録用インクを収容したインクカートリッジを装着した本発明のインクジェット記録装置を用いて記録媒体上に画像を記録すると、オンデマンドで記録媒体上にインク記録物が得られる。また、記録用インクの補充はインクカートリッジ単位で取り替えることが可能である。
【0059】
ここで、本発明のインクジェット記録装置について、図3を参照して説明する。
図3において、本発明の前記記録用インクが収容されるインクカートリッジ20は、キャリッジ18内に収納される。ここで、インクカートリッジ20は便宜上複数設けられているが、複数である必要はない。このような状態で記録用インクが、インクカートリッジ20からキャリッジ18に搭載された液滴吐出ヘッド18aに供給される。なお、図3において、吐出ノズル面は下方向を向いた状態であるため見えない状態であるが、この吐出ノズル18aから記録用インクが吐出される。
キャリッジ18に搭載された液滴吐出ヘッド18aは、主走査モーター24で駆動されるタイミングベルト23によってガイドシャフト21、22にガイドされて移動する。一方、記録媒体はプラテン19によって液滴吐出ヘッド18aと対面する位置に置かれる。なお、図3中1はインクジェット記録装置、2は本体筐体、16はギア機構、17は副走査モーター、25及び27はギア機構、26は主走査モーターをそれぞれ示す。
【0060】
図4は、インクジェット記録装置における記録ヘッドのノズル面の拡大図である。この図4の記録ヘッドのノズル31、32、33、及び34から、イエローインク、マゼンタインク、シアンインク、及びブラックインクがそれぞれ吐出される。
また、図5に示すように、インクジェット記録装置における記録ヘッドのノズルを全て横方向に並べて構成することも可能である。図5中のノズル36、37、38、及び39から、イエローインク、マゼンタインク、シアンインク、及びブラックインクがそれぞれ吐出される。
【0061】
<インク記録物>
本発明で用いられるインク記録物は、記録媒体上に本発明の前記記録用インクを用いて形成された画像を有してなる。
【0062】
前記記録媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、紙等の記録用インクに対して吸収性を有するもの、記録用インクに対して実質的に非吸収性のもののいずれであっても好適に用いられる。
前記記録媒体としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリサルフォン、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル等を基材とするプラスチックシート;黄銅、鉄、アルミニウム、ステンレススチール(SUS)、銅等の金属表面又は非金属の基材に蒸着等の手法により金属コーティング処理をした記録媒体;紙を基材として撥水処理などがなされた記録媒体、無機質の材料を高温で焼成した、いわゆるセラミックス材料からなる記録媒体などが挙げられる。これらの中でも、紙が経済性の点と画像の自然さの点で特に好ましい。
【実施例】
【0063】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、下記の実施例において、カーボンブラック及び顔料分散液の諸物性については、以下のようにして測定した。
【0064】
<カーボンブラックの平均一次粒子径>
カーボンブラックの平均一次粒子径は、電子顕微鏡を用いてカーボンブラック粒子を撮影し、撮影画像のカーボンブラック粒子の粒子径と数から算出して測定した。
【0065】
<カーボンブラックのBET比表面積>
カーボンブラックのBET比表面積は、窒素吸着によるBET法(DIN 66132)によって測定した。
【0066】
<カーボンブラックの揮発分の含有量>
カーボンブラックの揮発分の含有量は、DIN 53 552に記載の方法により、測定した。具体的には、カーボンブラックの乾燥試料を、白金坩堝又はそれと同形、同容量の落とし蓋付き磁器坩堝に、蓋下2mmを超えない程度まで打振して詰め、質量(W)を量った。次いで、坩堝に蓋をして電気炉に入れ、950℃±25℃で正確に7分間加熱した後、取り出し、デジケーター中で室温(25℃)になるまで放冷して加熱後の質量(W)を量った。これらの質量を次の式に代入して得られる値(V)が揮発分の含有量(質量%)である。
【数2】

ただし、前記式中、Vは、カーボンブラックの揮発分の含有量(質量%)、Wは、乾燥試料の質量(g)、Wは、加熱後の試料の質量(g)を表す。
【0067】
<カーボンブラックのpH>
カーボンブラックのpHは、JIS K6220−1の方法に基づき測定した。
【0068】
<顔料分散液の電気伝導率>
顔料分散液の電気伝導率は、JIS K0130に準拠した方法で測定した。顔料の含有量が17.0質量%、かつアルカリ金属水酸化物でpHを6〜8に調整したときの温度25℃における電気伝導率を電気伝導率計(CM−30R型、東亜ディーケーケー株式会社製)を用いて測定した。
【0069】
<顔料分散液の体積平均粒径及び標準偏差>
顔料分散液の体積平均粒径(D50)及び標準偏差を、23℃、55%RHの環境下で粒度分析計(日機装株式会社製、UPA150EX)により測定した。
【0070】
<顔料分散液のpH>
顔料分散液のpHは、JIS Z8802のpH測定方法に基づき測定した。
【0071】
(合成例1)
−シリコーン変性アクリル樹脂エマルジョンの合成−
機械式攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流管、及び滴下ロートを備えたフラスコ内を十分に窒素ガスで置換した後、アクアロンRN−20(第一工業製薬株式会社製)10g、過硫酸カリウム1g、及び純水286gを仕込み、65℃に昇温した。次に、メタクリル酸メチル150g、アクリル酸2エチルヘキシル100g、アクリル酸20g、ビニルトリエトキシシラン20g、アクアロンRN−20(第一工業製薬株式会社製)10g、過硫酸カリウム4g、及び純水398.3gの混合溶液を2.5時間かけてフラスコ内に滴下した。80℃で更に3時間加熱熟成した後冷却し、水酸化カリウムでpHを7〜8に調整し、固形分濃度30質量%のシリコーン変性アクリル樹脂エマルジョンを合成した。
【0072】
(実施例1)
<酸化カーボンブラック1の作製>
カーボンブラック(デグサ社製、PRINTEX−U)200gを筒状のオゾン処理器に入れ、オゾン発生器(コトヒラ工業株式会社製、KQS−120)でオゾンを6g/hr発生させ、オゾン雰囲気下、処理温度を30℃に保ち2.5時間オゾン酸化処理を行い、酸化カーボンブラック1を得た。
得られた酸化カーボンブラック1の揮発分の含有量は10質量%、BET比表面積は110m/g、pHは3.0であった。
【0073】
<顔料分散液1の作製>
〔顔料分散液1の処方〕
・酸化カーボンブラック1・・・20.0質量部
・蒸留水・・・80.0質量部
上記処方の材料をプレミックスした後、ディスクタイプのビーズミル(シンマルエンタープライゼス社製、KDL型バッチ式)により、直径0.3mmジルコニアビーズを用いて周速10m/s、液温10℃で10分間分散した。
遠心分離機(久保田商事株式会社製、Model−3600)により粗大粒子を分離し、体積平均粒子径120nm、標準偏差58.6nmの顔料分散液を得た。カーボンブラックの濃度は19.2質量%であった。
得られた顔料分散液のカーボンブラックの濃度を17.0質量%に調整した時の電気伝導率は、4.5mS/cmであった。
次に、内径30mmのガラス製クロマト管に180mLの陰イオン交換樹脂(SA10A、三菱化学株式会社製)を充填したカラム、及び内径30mmのガラス製クロマト管に180mLの陽イオン交換樹脂(WK40、三菱化学株式会社製)を充填したカラムに、顔料分散液を順次通液させた。
得られた顔料分散液のカーボンブラックの濃度は18.9質量%であった。この顔料分散液のカーボンブラックの濃度を17.0質量%に調整した時の電気伝導率は0.15mS/cmであった。
この顔料分散液に、NaOHの20質量%水溶液、及びイオン交換水を加えて、カーボンブラックの濃度を17.0質量%、pHを7.0に調整し、超音波分散機で5分間分散した。得られた顔料分散液1の電気伝導率は、1.1mS/cmであった。
【0074】
<実施例1の記録用インクの作製>
得られた顔料分散液1を用いて下記処方を、30分間攪拌した後、孔径0.8μmのメンブランフィルターでろ過し、真空脱気して、実施例1の記録用インクを作製した。
〔インク処方〕
・顔料分散液1(顔料濃度17質量%)・・・47.1質量%
・グリセリン・・・8.5質量%
・3−メチル−1,3−ブタンジオール・・・17.0質量%
・2−エチル−1,3−ヘキサンジオール・・・2.0質量%
・2−ピロリドン・・・2.0質量%
・合成例1のシリコーン変性アクリル樹脂エマルジョン(固形分濃度30質量%)・・・10.0質量%
・フッ素系界面活性剤(FS−300、DuPont社製、有効成分40質量%)・・・2.5質量%
・防腐防カビ剤(プロキセルLV、アベシア社製)・・・0.05質量%
・トリエタノールアミン・・・0.6質量%
・純水・・・残部
【0075】
(実施例2〜9)
<酸化カーボンブラック2〜9の作製>
実施例1において、カーボンブラック(デグサ社製、PRINTEX−U)をそれぞれ表1−1に示す酸化前カーボンブラックに変更し、表1−1に示すオゾン発生量、及びオゾン酸化処理時間に調整した以外は、実施例1と同様にして、酸化カーボンブラック2〜9を作製した。
得られた酸化カーボンブラック2〜9の揮発分の含有量、BET比表面積、及びpHを表1−2に示す。
【0076】
<実施例2〜9の顔料分散液の作製>
実施例1において、酸化カーボンブラック1を、酸化カーボンブラック2〜9にそれぞれ代え、NaOH水溶液の添加量を変えて顔料分散液のpHを7に調整した以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜9の顔料分散液を作製した。
得られた実施例2〜9の顔料分散液の電気伝導率、及びpHを表1−3に示す。
【0077】
<実施例2〜9の記録用インクの作製>
実施例1において、実施例1の顔料分散液(顔料濃度17.0質量%)を、実施例2〜9の顔料分散液(顔料濃度17.0質量%)にそれぞれ代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例2〜9の記録用インクを作製した。
【0078】
(実施例10)
<実施例10の顔料分散液の作製>
実施例1において、酸化カーボンブラック1を酸化カーボンブラック2に代え、NaOH水溶液の添加量を変えて顔料分散液のpHを6に調整した以外は、実施例1と同様にして、実施例10の顔料分散液を作製した。
得られた実施例10の顔料分散液の電気伝導率、及びpHを表1−3に示す。
【0079】
<実施例10の記録用インクの作製>
実施例1において、実施例1の顔料分散液(顔料濃度17.0質量%)を、実施例10の顔料分散液(顔料濃度17.0質量%)に代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例10の記録用インクを作製した。
【0080】
(実施例11)
<実施例11の顔料分散液の作製>
実施例1において、酸化カーボンブラック1を酸化カーボンブラック2に代え、NaOH水溶液の添加量を変えて顔料分散液のpHを8に調整した以外は、実施例1と同様にして、実施例11の顔料分散液を作製した。
得られた実施例11の顔料分散液の電気伝導率、及びpHを表1−3に示す。
【0081】
<実施例11の記録用インクの作製>
実施例1において、実施例1の顔料分散液(顔料濃度17.0質量%)を、実施例11の顔料分散液(顔料濃度17.0質量%)に代えた以外は、実施例1と同様にして、実施例11の記録用インクを作製した。
【0082】
(比較例1〜10)
<酸化カーボンブラック10〜19の作製>
実施例1において、カーボンブラック(デグサ社製、PRINTEX−U)をそれぞれ表2−1に示す酸化前カーボンブラックに変更し、表2−1に示すオゾン発生量、及びオゾン酸化処理時間に調整した以外は、実施例1と同様にして、酸化カーボンブラック10〜19を作製した。
得られた酸化カーボンブラック10〜19の揮発分の含有量、BET比表面積、及びpHを表2−2に示す。
【0083】
<比較例1〜10の顔料分散液の作製>
実施例1において、酸化カーボンブラック1を酸化カーボンブラック10〜19にそれぞれ代え、イオン交換樹脂による処理を行わずに、NaOH水溶液の添加量を変えて顔料分散液のpHを7に調整した以外は、実施例1と同様にして、比較例1〜10の顔料分散液を作製した。
得られた比較例1〜10の顔料分散液の電気伝導率、及びpHを表2−3に示す。
【0084】
<比較例1〜10の記録用インクの作製>
実施例1において、実施例1の顔料分散液(顔料濃度17.0質量%)を、比較例1〜10の顔料分散液(顔料濃度17.0質量%)にそれぞれ代えた以外は、実施例1と同様にして、比較例1〜10の記録用インクを作製した。
【0085】
(比較例11)
<酸化カーボンブラック20の作製>
カーボンブラック(デグサ社製、PRINTEX−U)100gを蒸留水500gに混合し、撹拌しながら次亜塩素酸Na液(12質量%)1,000gを滴下し6時間煮沸し、湿式酸化を行った。その後、ガラス繊維ろ過膜でろ過し、更に蒸留水にて洗浄して100℃の恒温槽にて乾燥させた。
得られた酸化カーボンブラック20の揮発分の含有量は13質量%、BET比表面積は110m/g、pHは2.5であった。
【0086】
<比較例11の顔料分散液の作製>
実施例1において、酸化カーボンブラック1を酸化カーボンブラック20に代え、イオン交換樹脂による処理を行わずに、NaOH水溶液の添加量を変えて顔料分散液のpHを7に調整した以外は、実施例1と同様にして、比較例11の顔料分散液を作製した。
得られた比較例11の顔料分散液の電気伝導率、及びpHを表2−3に示す。
【0087】
<比較例11の記録用インクの作製>
実施例1において、実施例1の顔料分散液(顔料濃度17.0質量%)を、比較例11の顔料分散液(顔料濃度17.0質量%)に代えた以外は、実施例1と同様にして、比較例11の記録用インクを作製した。
【0088】
(比較例12)
<酸化カーボンブラック21の作製>
カーボンブラック(デグサ社製、PRINTEX−U)100gを、蒸留水500gに混合し、撹拌しながら、ペルオキソ2硫酸Na液(10質量%)600gを滴下し、6時間煮沸し湿式酸化を行った。その後、ガラス繊維ろ過膜でろ過し、更に蒸留水にて洗浄し、100℃の恒温槽にて乾燥させた。
得られたカーボンブラック21の揮発分の含有量は13質量%、BET比表面積は110m/g、pHは2.6であった。
【0089】
<比較例12の顔料分散液の作製>
実施例1において、酸化カーボンブラック1を酸化カーボンブラック21に代え、イオン交換樹脂による処理を行わずに、NaOH水溶液の添加量を変えて顔料分散液のpHを7に調整した以外は、実施例1と同様にして、比較例12の顔料分散液を作製した。
得られた比較例12の顔料分散液の電気伝導率、及びpHを表2−3に示す。
【0090】
<比較例12の記録用インクの作製>
実施例1において、実施例1の顔料分散液(顔料濃度17.0質量%)を、比較例12の顔料分散液(顔料濃度17.0質量%)に代えた以外は、実施例1と同様にして、比較例12の記録用インクを作製した。
【0091】
(比較例13)
<比較例13の顔料分散液の作製>
実施例1において、酸化カーボンブラック1を酸化カーボンブラック2に代え、イオン交換樹脂による処理を行わずに、NaOH水溶液の添加量を変えて顔料分散液のpHを5に調整した以外は、実施例1と同様にして、比較例13の顔料分散液を作製した。
得られた比較例13の顔料分散液の電気伝導率、及びpHを表2−3に示す。
【0092】
<比較例13の記録用インクの作製>
実施例1において、実施例1の顔料分散体(顔料濃度17.0質量%)を、比較例13の顔料分散液(顔料濃度17.0質量%)に代えた以外は、実施例1と同様にして、比較例13の記録用インクを作製した。
【0093】
(比較例14)
<比較例14の顔料分散液の作製>
実施例1において、酸化カーボンブラック1を酸化カーボンブラック2に代え、イオン交換樹脂による処理を行わずに、NaOH水溶液の添加量を変えて顔料分散液のpHを9に調整した以外は、実施例1と同様にして、比較例14の顔料分散液を作製した。
得られた比較例14の顔料分散液の電気伝導率、及びpHを表2−3に示す。
【0094】
<比較例14の記録用インクの作製>
実施例1において、実施例1の顔料分散体(顔料濃度17.0質量%)を、比較例14の顔料分散液(顔料濃度17.0質量%)に代えた以外は、実施例1と同様にして、比較例14の記録用インクを作製した。
【0095】
(比較例15)
<比較例15の顔料分散液の作製>
実施例1において、酸化カーボンブラック1を酸化カーボンブラック2に代え、陰イオン交換樹脂(SA10A、三菱化学株式会社製)の充填量を250mL、陽イオン交換樹脂(WK40、三菱化学株式会社製)の充填量を250mLとし、NaOH水溶液の添加量を変えて顔料分散液のpHを6に調整した以外は、実施例1と同様にして、比較例15の顔料分散液を作製した。
得られた比較例15の顔料分散液の電気伝導率、及びpHを表2−3に示す。
【0096】
<比較例15の記録用インクの作製>
実施例1において、実施例1の顔料分散液(顔料濃度17.0質量%)を、比較例15の顔料分散液(顔料濃度17.0質量%)に代えた以外は、実施例1と同様にして、比較例15の記録用インクを作製した。
【0097】
(比較例16)
<比較例16の顔料分散液の作製>
実施例1において、酸化カーボンブラック1を酸化カーボンブラック2に代え、陰イオン交換樹脂(SA10A、三菱化学株式会社製)の充填量を120mL、陽イオン交換樹脂(WK40、三菱化学株式会社製)の充填量を120mLとし、NaOH水溶液の添加量を変えて顔料分散液のpHを8に調整した以外は、実施例1と同様にして、比較例16の顔料分散液を作製した。
得られた比較例16の顔料分散液の電気伝導率、及びpHを表2−3に示す。
【0098】
<比較例16の記録用インクの作製>
実施例1において、実施例1の顔料分散液(顔料濃度17.0質量%)を、比較例16の顔料分散液(顔料濃度17.0質量%)に代えた以外は、実施例1と同様にして、比較例16の記録用インクを作製した。
【0099】
次に、作製した実施例及び比較例の記録用インクについて、以下のようにして、画像濃度を測定し、保存安定性を評価した。結果を表1−3及び表2−3に示す。
【0100】
<画像濃度>
各記録用インクをカートリッジに充填し、図3に示すインクジェット記録装置に装着して、ゼロックス株式会社製PPC用紙4200紙(普通紙)にベタ画像を印字し、画像濃度をXrite濃度計938で測定した。画像濃度の数値が大きい方が良好である。
【0101】
<保存安定性>
各記録用インクをポリエチレン容器に入れて密封し、70℃で2週間保存した前後の平均粒子径、表面張力、及び粘度をそれぞれ測定し、初期と70℃で2週間保存した後との変化率をそれぞれ求め、下記基準で評価した。
なお、各記録用インクの平均粒子径は、粒度分析計(日機装株式会社製、UPA150EX)により測定した。各記録用インクの表面張力は、全自動表面張力計(協和界面科学株式会社製、CBVP−Z型)により測定した。各記録用インクの粘度は、25℃で、東機産業株式会社製、RE500L型粘度計により測定した。
〔評価基準〕
◎:平均粒子径、表面張力、及び粘度の全ての項目で変化率が5%未満であった場合。
○:平均粒子径、表面張力、及び粘度の全ての項目で変化率が10%未満であった場合。
△:平均粒子径、表面張力、及び粘度の全ての項目で変化率が30%未満であった場合。
×:平均粒子径、表面張力、及び粘度の少なくとも1つの項目で変化率が30%以上であった場合。
【0102】
【表1−1】

*カーボンブラック(NIPEX160、デグサ社製)
*カーボンブラック(PRINTEX140、デグサ社製)
【表1−2】

【表1−3】

【0103】
【表2−1】

*カーボンブラック(PRINTEX35、デグサ社製)
*カーボンブラック(NIPEX170、デグサ社製)
【表2−2】

【表2−3】

【符号の説明】
【0104】
1 インクジェット記録装置
2 本体筐体
7 インクカートリッジ
16 ギア機構
17 副走査モーター
18 キャリッジ
18a 液滴吐出ヘッド
19 プラテン
20 インクカートリッジ
21 ガイドシャフト
22 ガイドシャフト
23 タイミングベルト
24 主走査モーター
25 ギア機構
26 主走査モーター
27 ギア機構
31 ノズル
32 ノズル
33 ノズル
34 ノズル
36 ノズル
37 ノズル
38 ノズル
39 ノズル
41 カートリッジ筐体
42 インク吸収体
43 ケース
44 上蓋部材
45 液供給口
46 シールリング
47 大気開放口
48 溝
50 キャップ部材
51 液漏れ防止用突部
53 キャップ部材
55 シール部材
71 カートリッジ位置決め部
81 カートリッジ着脱用突状部
81a カートリッジ着脱用指掛け部
82 カートリッジ着脱用窪み部
A 空間
【先行技術文献】
【特許文献】
【0105】
【特許文献1】特開2000−319572号公報
【特許文献2】特開2004−224955号公報
【特許文献3】特開平10−324818号公報
【特許文献4】特開2001−164148号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水及び顔料を含有してなり、
前記顔料が、オゾンにより酸化処理されたオゾン酸化カーボンブラックを含み、
前記オゾン酸化カーボンブラックの揮発分の含有量が10質量%〜20質量%であり、かつBET比表面積が90m/g〜150m/gであり、
前記顔料の含有量が17.0質量%、かつ、
アルカリ金属水酸化物でpHを6〜8に調整したときの電気伝導率が0.6mS/cm〜1.5mS/cmであることを特徴とする顔料分散液。
【請求項2】
請求項1に記載の顔料分散液を含有することを特徴とする記録用インク。
【請求項3】
請求項2に記載の記録用インクを容器内に収容してなることを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項4】
請求項2に記載の記録用インクに刺激を印加し、該記録用インクを飛翔させて画像を記録するインク飛翔手段を少なくとも有することを特徴とするインクジェット記録装置。

【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−56965(P2013−56965A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194895(P2011−194895)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】