説明

顔料分散液及び該顔料分散液を含有する塗被紙用組成物

【課題】 白紙光沢、白色度、不透明度及び平滑性に優れ、かつ、印刷光沢及びドライピック強度に優れた塗被紙を与える、流動性の良好な塗被紙用組成物、並びに耐沈降性に優れた顔料分散液を提供すること。
【解決手段】 平均粒子径0.3〜3.0μmの中空重合体粒子(A)と、共役ジエン系単量体単位を特定量含み、且つ0.06〜1.5μmの密実重合体粒子(B)とを含有してなり、好ましくは、中空重合体粒子(A)と密実重合体粒子(B)の比率が20/80〜80/20であり、さらに、共役ジエン系単量体単位の含有量が20重量%以上、B型粘度計により測定した粘度が200mPa・s以上である平均粒子径0.13μm以下の密実重合体粒子(C)を含有する顔料分散液、及びこれを含む塗被紙用組成物が上記課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料分散液及び該顔料分散液を含有してなる塗被紙用組成物に関し、さらに詳しくは、白紙光沢、白色度、不透明度及び平滑性に優れ、かつ、印刷光沢及びドライピック強度に優れた塗被紙を与える、流動性の良好な塗被紙用組成物、並びに耐沈降性に優れた顔料分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、書籍、雑誌などの出版物や、チラシ、パンフレット、ポスターなどの商業広告物等の印刷用途が急速に拡大するに伴い、それらの印刷方法も多種多様化し、それに応じ、用いられる塗被紙にはより多くの品質が要求されるようになってきた。即ち、広範な用途において単色印刷および多色印刷に適するために、塗被紙には、白紙光沢、白色度、不透明度及び平滑性に優れ、かつ、印刷光沢及びドライピック強度に優れることが求められている。
【0003】
従来、白紙光沢、白色度、不透明度及び平滑性の高い印刷用塗被紙を製造する方法として、中空重合体粒子を含有する塗被紙用組成物が使用されてきた。しかしながら、該中空重合体粒子は分散液中では粒子内部に水を含むため、固形分濃度を高くすると粒子外の水分濃度が低くなって流動性が低下してしまい、また、分散液を放置しておくと中空重合体粒子が沈降することが知られていた。
【0004】
この問題に対し、例えば特許文献1には、粒子径が0.3〜5.0μmである第一の粒子群と、それよりも小さい0.05〜0.3μmの粒子径を有する第二の粒子群とからなる塗被紙用粒子組成物が提案され、第一粒子群は中空重合体粒子であり、第二粒子群は粒子径D’が第一粒子群の粒子径Dに対してD’<D/2である旨開示されている。しかしながら、このような粒子は流動性は改善されるものの、白紙光沢、印刷光沢、白色度及び不透明度とドライピック強度とのバランスに劣る問題があった。
【0005】
また、特許文献2には、50〜100重量部の炭酸カルシウムを含む顔料と、固形分1〜25重量部の高分子分散液を含む塗被紙用組成物であって、該高分子分散液が、平均粒子径0.15〜3μmのエマルジョンポリマー(a)と、平均粒子径0.04〜0.6μmのエマルジョンポリマー(b)とを特定量含み、少なくとも(a)は中空重合体粒子であり、かつ(a)または(b)のエマルジョンポリマーは、もう一方のエマルジョンポリマーの存在下で調整される、紙塗被用組成物が開示されている。しかしながら、このような高分子分散液は製造が複雑であり、かつ、塗被紙用組成物は白紙光沢、印刷光沢、白色度及び不透明度とドライピック強度とのバランスに劣り、耐沈降性も不十分であった。
【0006】
【特許文献1】特許第3217417号公報
【特許文献2】特開第2001−323223号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、上記事情に鑑み、白紙光沢、白色度、不透明度及び平滑性に優れ、かつ、印刷光沢及びドライピック強度に優れた塗被紙を与える、流動性の良好な塗被紙用組成物、並びに耐沈降性に優れた顔料分散液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、特定粒子径を有する中空重合体粒子(A)と、共役ジエン系単量体単位を特定量含み、且つ特定粒子径を有する密実重合体粒子(B)とを含有する顔料分散液が耐沈降性に優れ、さらに該顔料分散液を含んでなる塗被紙用組成物は流動性が高く、白紙光沢、白色度、不透明度及び平滑性に優れ、かつ、印刷光沢及びドライピック強度に優れた塗被紙を与えることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0009】
かくして、本発明によれば、以下の1〜4の発明が提供される。
1. 平均粒子径0.3〜3.0μmの中空重合体粒子(A)と、共役ジエン系単量体単位の含有量が5〜20重量%である平均粒子径0.06〜1.5μmの密実重合体粒子(B)とを含有してなる顔料分散液。
2. 前記中空重合体粒子(A)と前記密実重合体粒子(B)のそれぞれの固形分の重量比率が20/80〜80/20である前記1記載の顔料分散液。
3. 共役ジエン系単量体単位の含有量が20重量%より多く、固形分濃度50重量%において、B型粘度計により測定した粘度が200mPa・s以上である平均粒子径0.13μm以下の密実重合体粒子(C)をさらに含有してなる前記1または2に記載の顔料分散液。
4. 前記1〜3のいずれか一に記載の顔料分散液を含有してなる塗被紙用組成物。
【発明の効果】
【0010】
本発明により、白紙光沢、白色度、不透明度及び平滑性に優れ、かつ、印刷光沢及びドライピック強度に優れた塗被紙を与える、流動性の良好な塗被紙用組成物、並びに耐沈降性に優れた顔料分散液が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の顔料分散液は、平均粒子径0.3〜3.0μmの中空重合体粒子(A)(以降、中空粒子(A)と略記する場合がある。)と、共役ジエン系単量体単位の含有量が5〜20重量%である平均粒子径0.06〜1.5μmの密実重合体粒子(B)とを含有してなることを特徴とする。
【0012】
<中空重合体粒子(A)>
本発明で用いる中空粒子(A)は、平均粒子径0.3〜3.0μmであり、有機単量体を重合して得られる、内部に空隙を有する高分子粒子である。中空粒子(A)は、無機顔料、非中空重合体粒子即ち密実重合体粒子に比べて比重が小さいので塗被紙用組成物の被覆性を向上させ、不透明度の高い嵩高の塗被紙を得るのに有効である。また、中空粒子(A)は易変形性に富むため塗被紙表面は小さな加圧で平滑化されるので高い白紙光沢を容易に得ることが可能である。
【0013】
中空粒子(A)の平均粒子径は0.3〜3.0μmであることが必要であり、好ましくは0.3〜1.5μm、より好ましくは0.4〜1.3μm、特に好ましくは0.5〜1.1μmである。中空粒子(A)の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡を用いた観察により測定することができる。
中空粒子(A)の平均粒子径が小さすぎると得られる塗被紙の白色度、白紙光沢、不透明度、平滑性および印刷光沢が低下する傾向にあり、逆に、大きすぎると塗被紙用組成物の流動性が低下する傾向にある。
【0014】
前記中空粒子(A)の空隙率は、好ましくは10〜75%、より好ましくは20〜65%、特に好ましくは25〜60%である。
【0015】
中空粒子(A)を構成する重合体の組成は限定されないが、ガラス転移温度(Tg)が25℃以上の重合体が好ましい。中空粒子(A)の好ましい重合体組成は、芳香族ビニル化合物の単量体単位及びエチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体単位を必須の繰り返し単位として含有し、必要に応じてこれらと共重合可能な他の単量体の単位を含むものである。
【0016】
前記芳香族ビニル化合物としては、スチレン、メチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレン、ヒドロキシメチルスチレン等が挙げられ、スチレン及びα―メチルスチレンが好ましく、特にスチレンが好ましい。
【0017】
また、エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸−2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸テトラフルオロプロピル、マレイン酸ジブチル、フマル酸ジブチル、マレイン酸ジエチル、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸シアノメチル、(メタ)アクリル酸2−シアノエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル等が挙げられる。なかでも、メタクリル酸メチルが好適である。
【0018】
上記必要に応じて使用される共重合可能な他の単量体としては、エチレン性不飽和ニトリル単量体、エチレン性不飽和カルボン酸単量体、エチレン性不飽和カルボン酸アミド単量体、共役ジエン系単量体、架橋性単量体及び酢酸ビニル単量体等から選ばれた少なくとも1種が挙げられる。
【0019】
エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、例えば、(メタ)アクリロニトリル、フマロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−シアノエチルアクリロニトリル、アクリロニトリル、などが挙げられ、特にアクリロニトリルが好ましい。
【0020】
エチレン性不飽和カルボン酸単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのエチレン性不飽和モノカルボン酸;フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、ブテントリカルボン酸などのエチレン性不飽和多価カルボン酸;マレイン酸モノエチル、イタコン酸モノメチルなどのエチレン性不飽和多価カルボン酸の部分エステル化物などが挙げられる。
エチレン性不飽和カルボン酸アミド単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0021】
共役ジエン系単量体としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン及びクロロプレン等を挙げることができる。
【0022】
架橋性単量体としては、例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、アリルメタクリレートなどのジビニル系単量体あるいはトリビニル系単量体を例示することができ、特にジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレートおよびトリメチロールプロパントリメタクリレートが好ましい。アルキル(メタ)アクリルアミド系単量体としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどが挙げられる。
【0023】
中空粒子(A)の製造方法としては、平均粒子径が0.3〜3.0μmである中空重合体粒子が得られれば限定はなく、例えば特開昭64−1704号公報、特開平5−279409号公報、特開平6−248012号公報、特開平10−110018号公報、特開平10−182761号公報等に記載された方法を含む、次の(1)〜(7)の方法が例示される。
(1)重合体粒子中に発泡剤を含有するラテックスの前記発泡剤を発泡させる方法、(2)重合体粒子中にブタン等の揮発性物質が封入されたラテックスの前記揮発性物質をガス化膨脹させる方法、(3)重合体粒子を溶融させ、これに空気等の気体ジェットを吹付け、気泡を封入する方法、(4)重合体粒子の内部にアルカリ膨潤性の物質を含有させておき、この粒子にアルカリ性液体を浸透させてアルカリ膨潤性の物質を膨脹させる方法、(5)ポリメチルメタクリレートの種粒子の存在下にスチレンを乳化重合する方法、(6)重合性モノマー成分を水中に微分散させて水中油滴型エマルジョンを作成し、重合を行なう方法、(7)架橋性モノマーと親水性モノマーを含む重合性モノマーを、このモノマー組成とは異なるモノマーから重合された異種ポリマーの微粒子存在下に水性重合する方法。
これらの中でも(4)(特開平10−182761号報参照)の方法が好ましい。
中空重合体粒子の平均粒子径を本発明で規定する範囲にする方法は特に限定はなく、乳化重合において従来公知の方法を採用でき、例えば、乳化重合に用いる乳化剤の種類と量を適宜選択する方法が挙げられる。
【0024】
<密実重合体粒子(B)>
本発明の顔料分散液に用いる密実重合体粒子(B)(以降、密実粒子(B)と略記する場合がある。)は、共役ジエン系単量体単位の含有量が5〜20重量%であることが必須であり、6〜18重量%が好ましく、7〜16重量%がより好ましい。共役ジエン系単量体単位の量が少な過ぎると塗被紙の印刷光沢及びドライピック強度に劣り、逆に多過ぎると塗被紙の白紙光沢、白色度及び不透明度に劣る。
【0025】
密実粒子(B)は、共役ジエン系単量体5〜20重量%、および共役ジエン系単量体と共重合可能なその他の単量体80〜95重量%からなる単量体混合物100重量部を乳化重合して得ることが好ましい。
【0026】
共役ジエン系単量体としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン及びクロロプレン等を挙げることができ、これらは単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。なかでも、1,3−ブタジエンが好ましい。
共役ジエン系単量体の使用量は、全単量体混合物の5〜20重量%であり、好ましくは6〜18重量%、さらに好ましくは7〜16重量%である。共役ジエン系単量体の量が少な過ぎると塗被紙の印刷光沢及びドライピック強度に劣り、逆に多過ぎると塗被紙の白紙光沢、白色度及び不透明度に劣る場合がある。
【0027】
共役ジエン系単量体と共重合可能な他の単量体としては、例えば、芳香族ビニル単量体、エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体、エチレン性不飽和ニトリル単量体、エチレン性不飽和カルボン酸単量体、エチレン性不飽和カルボン酸アミド単量体、架橋性単量体及びエチレン性不飽和カルボン酸単量体以外のエチレン性不飽和酸単量体などが挙げられる。
【0028】
前記他の単量体としては、中空粒子(A)で挙げたものと同じ単量体を例示することができる。
【0029】
芳香族ビニル単量体としては、なかでも、スチレンが好適であり、エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、なかでも、(メタ)アクリロニトリルは好適であり、エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体としては、なかでも、メタクリル酸メチルが好適であり、エチレン性不飽和カルボン酸アミド単量体としては、なかでも、(メタ)アクリルアミドが好適である。
【0030】
エチレン性不飽和カルボン酸単量体としては、これらのエチレン性不飽和カルボン酸単量体のうち、イタコン酸、アクリル酸およびメタクリル酸が好適である。
エチレン性不飽和カルボン酸単量体の使用量は、全単量体に対して、好ましくは0.5〜10重量%、より好ましくは1〜5重量%である。この量が少な過ぎると、乳化重合の際に粗大凝集物が多量に発生する問題があり、逆に多過ぎる、密実粒子(B)を含む顔料分散液の粘度が高くなり過ぎて取り扱い難くなったり、白紙光沢が低下したりする場合がある。
【0031】
エチレン性不飽和カルボン酸単量体以外のエチレン性不飽和酸単量体としては、例えば、ビニルスルホン酸、メチルビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸、(メタ)アクリル酸-2-スルホン酸エチル、アクリルアミド-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸などのスルホン酸基含有単量体;(メタ)アクリル酸-3-クロロ-2-リン酸プロピル、(メタ)アクリル酸-2-リン酸エチル、3-アリロキシ-2-ヒドロキシプロパンリン酸などのリン酸基含有単量体;などが挙げられる。
【0032】
これらの共役ジエン系単量体と共重合可能な他の単量体は、単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。これらの他の単量体のうち、芳香族ビニル単量体、エチレン性不飽和ニトリル単量体、エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体およびエチレン性不飽和カルボン酸アミド単量体が好ましく使用される。
【0033】
他の単量体の使用量は、全単量体混合物の80〜95重量%、好ましくは82〜94重量%、より好ましくは84〜93重量%である。この使用量が少な過ぎると塗被紙の白紙光沢、白色度に劣り、逆に多過ぎると塗被紙のドライピック強度に劣る場合がる。
【0034】
本発明に用いる密実粒子(B)の粒子径は、0.06〜1.5μmであることが必要であり、好ましくは0.08〜1.3μm、より好ましくは0.1〜1.1μmである。この粒子径が小さすぎても大きすぎても、塗被紙の白紙光沢及び印刷光沢とドライピック強度とのバランスが低下する。
【0035】
前記の単量体混合物を乳化重合する方法としては、粒子径が0.06〜1.5μmである密実粒子(B)が得られれば特に限定はなく、乳化重合において従来公知の方法を採用できる。例えば、乳化重合時にシード粒子を用いたり、使用する単量体、乳化剤、分散剤、無機塩及び重合開始剤の種類や量、重合温度、重合濃度などを適宜選択する、従来公知の方法により所望の値に制御できる。
【0036】
本発明に用いる密実粒子(B)は、テトラヒドロフラン不溶解分が、好ましくは40重量%以上、より好ましくは50〜95重量%である。この量が少なすぎると、塗被紙の不透明度および耐ブロッキング性が低下する傾向にある。逆にテトラヒドロフラン不溶解分が多すぎると、印刷光沢が低下したり、ドライピック強度が低下したりする傾向にある。
【0037】
単量体の添加方法としては、例えば、使用する単量体を反応器に一括して添加する方法、重合の進行に従って連続的または断続的に添加する方法、単量体の一部を添加して特定の重合転化率まで反応させ、その後、残りの単量体を連続的または断続的に添加して重合する方法等が挙げられ、いずれの方法を採用してもよい。
【0038】
乳化重合にあたり、通常用いられる、分子量調整剤、キレート剤、脱酸素剤、pH調整剤などの重合副資材を使用することができる。
【0039】
乳化剤の種類としては、特に限定されないが、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、両性界面活性剤等が挙げられる。なかでも、アニオン性乳化剤が好適である。
乳化剤の使用量は、重合に使用する単量体混合物全量100重量部に対して、通常、0.05〜5重量部、好ましくは0.05〜2重量部である。
【0040】
重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、無機過酸化物、有機過酸化物、アゾ化合物などが挙げられる。なかでも、無機過酸化物が好ましく使用できる。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて使用することができる。また、過酸化物開始剤は、重亜硫酸ナトリウム等の還元剤と組み合わせて、レドックス系重合開始剤として使用することもできる。
重合開始剤の使用量は、重合に使用する単量体混合物全量100重量部に対して、通常、0.1〜5重量部であり、好ましくは0.3〜2重量部である。
【0041】
密実粒子(B)のテトラヒドロフラン不溶解分を調節する目的で、分子量調整剤を用いることが好ましい。
分子量調整剤としては、例えば、α−メチルスチレンダイマー、メルカプタン類、ハロゲン化炭化水素、含硫黄化合物等が挙げられる。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種類以上組み合わせて併用することもできる。これらの分子量調整剤の中でも、メルカプタン類およびα−メチルスチレンダイマーを併用することが好ましく、メルカプタン類としては、t−ドデシルメルカプタンが好ましく使用できる。
分子量調整剤の使用量は、重合に使用する単量体混合物全量100重量部あたり、通常、0.5〜5重量部、好ましくは1〜4重量部である。
【0042】
乳化重合に用いる水の使用量は特に限定されないが、重合に使用する単量体混合物全量100重量部あたり、通常、70〜300重量部、好ましくは85〜150重量部である。
【0043】
重合温度は、通常、0〜100℃、好ましくは50〜95℃の範囲である。
重合を開始した後、所定の重合転化率で、重合系を冷却したり、重合停止剤を添加したりして、重合反応を停止する。重合反応を停止する際の重合転化率は、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上である。
【0044】
以上のようにして乳化共重合した後、所望により、未反応単量体を除去して、密実粒子(B)を含有する水分散液を得る。
【0045】
密実粒子(B)のガラス転移温度は、用いる単量体の種類に大きく影響されるものであるが、好ましくは40〜95℃、より好ましくは50〜90℃である。ガラス転移温度が上記範囲にあると、白紙光沢とドライピック強度とのバランスにより優れる塗被紙が得られる。
【0046】
本発明の顔料分散液に含まれる中空粒子(A)と密実粒子(B)のそれぞれの固形分の重量比率は、20/80〜80/20であることが好ましく、30/70〜70/30であることがさらに好ましい。ここで、前記比率は水を含まない固形分の重量比率である。この比率が前記範囲にあると、白紙光沢、白色度、不透明度、平滑性、及び印刷光沢、ドライピック強度とのバランスに優れた塗被紙が得られ、さらに塗被紙用組成物の流動性、並びに顔料分散液の耐沈降性にも優れる。
【0047】
本発明の顔料分散液には、さらに、必要に応じて、分散剤、pH調整剤、消泡剤、防腐剤、抗菌剤、老化防止剤、紫外線吸収剤などの添加剤を配合することができる。これらは種類、使用量とも特に限定されない。
【0048】
<密実重合体粒子(C)>
本発明の顔料分散液は、共役ジエン系単量体単位の含有量が20重量%より多く、固形分濃度50重量%において、B型粘度計で測定した粘度が200mPa・s以上である平均粒子計0.13μm以下の密実重合体粒子(C)(以降、密実粒子(C)と略記する場合がある。)をさらに含有してなることが好ましい。
【0049】
本発明に用いる密実粒子(C)は、共役ジエン系単量体単位の含有量が20重量%より多いことが必要であり、25〜55重量%が好ましく、30〜50重量%がさらに好ましい。共役ジエン系単量体単位の量が少な過ぎると塗被紙のドライピック強度が劣る場合がある。
【0050】
密実粒子(C)は、共役ジエン系単量体を20重量%より多い量、及び共役ジエン系単量体と共重合可能なその他の単量体を80重量%以下、それぞれからなる単量体混合物100重量部を乳化重合して得ることが好ましい。
【0051】
共役ジエン系単量体としては、前記密実粒子(B)で挙げた共役ジエン系単量体と同じものが挙げられ、それらは単独で、又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。なかでも、1,3−ブタジエンが好ましい。
【0052】
共役ジエン系単量体の使用量は、全単量体混合物の20重量%よりも多いことが好ましく、25〜55重量%がさらに好ましく、30〜50重量%が特に好ましい。共役ジエン系単量体の量が少な過ぎると塗被紙のドライピック強度に劣る場合がある。
【0053】
共役ジエン系単量体と共重合可能な他の単量体としては、密実粒子(B)で用いられる共役ジエン系単量体と共重合可能な他の単量体と同様の単量体が挙げられる。また、好ましく用いられる単量体も密実粒子(B)と同様の単量体が挙げられる。
【0054】
本発明で用いる密実粒子(C)は、固形分濃度50重量%において、B型粘度計で測定した粘度が200mPa・s以上であり、200〜600mPa・sの範囲にあることが好ましく、250〜500mPa・sの範囲にあることがさらに好ましい。ここで、粘度測定時における密実粒子(C)の分散液のpH値は8.5である。
この粘度が前記範囲にあると、顔料分散液の耐沈降性に優れ、塗被紙用組成物の流動性が良好であり、得られる塗被紙のドライピック強度にも優れる。
【0055】
密実粒子(C)の、pH8.5、固形分濃度50重量%におけるB型粘度を前記範囲に調整する方法としては、重合に用いる単量体、及び界面活性剤の種類と量、並びに重合時の固形分濃度を調整することが挙げられる。
単量体の種類としては、親水性の高い単量体の使用量を調整する方法が挙げられ、なかでも、エチレン性不飽和カルボン酸単量体の種類と量を調整する方法が挙げられる。
エチレン性不飽和酸単量体の量としては、1〜15重量%であることが好ましく、2〜13重量%がさらに好ましく、3〜10重量%が特に好ましい。
【0056】
本発明で用いる密実粒子(C)の平均粒子径は0.13μm以下であり、0.05〜0.12μmであることが好ましく、0.08〜0.1μmであることがさらに好ましい。
この粒子径を前記範囲に調整する方法は特に限定されず、前記密実粒子(B)の粒子径を調整する方法と同様の、従来公知の方法により所望の値に制御することができる。
【0057】
密実粒子(C)の製造方法には、前記密実粒子(B)と同様の乳化重合方法を採用することができる。
【0058】
<顔料分散液>
本発明の顔料分散液が密実重合体粒子(C)をさらに含有する場合における、中空粒子(A)、密実粒子(B)及び(C)の含有量は、それぞれ特定の固形分比率であることが好ましい。中空粒子(A)の顔料分散液中の含有量は、好ましくは20〜78重量%、より好ましくは20〜75重量%であり、特に好ましくは20〜70重量%である。密実粒子(B)の含有量は、好ましくは20〜78重量%であり、より好ましくは20〜75重量%であり、特に好ましくは20〜70重量%である。密実粒子(C)の含有量は、好ましくは2〜35重量%であり、より好ましくは5〜30重量%であり、特に好ましくは10〜25重量%である。
【0059】
本発明の顔料分散液の、中空粒子(A)、密実粒子(B)及び密実粒子(C)の混合方法及び混合する順序は、各粒子が均一に混合できれば特に限定はない。また、本発明の顔料分散液のpHも流動性及び耐沈降性を損なわない範囲であれば限定は無く、好ましくは7〜10、更に好ましくは8〜9である。顔料分散液の固形分濃度も特に限定はないが、好ましくは20〜50重量%、更に好ましくは30〜45重量%である。
【0060】
<塗被紙用組成物>
本発明の塗被紙用組成物は、前記の中空粒子(A)及び密実粒子(B)を含有してなる顔料分散液を含んでなるものであり、前記顔料分散液はさらに密実粒子(C)を含んでなるものであることが好ましい。
本発明の塗被紙用組成物はまた、前記顔料分散液に、バインダーを含有してなるものが好ましく、さらに無機顔料を含んでなるものがより好ましい。
【0061】
本発明の塗被紙用組成物は、無機顔料100重量部に対して、本発明の顔料分散液を固形分で3〜50重量部を含み、さらにバインダーとして、ガラス転移温度−50〜+30℃の共重合体ラテックスを、固形分で3〜20重量部を配合してなることが好ましい。
【0062】
本発明組成物で用いるバインダーとしては、一般に紙に塗被するための塗被紙用組成物に含有されるバインダーと同様のものが使用でき、例えば、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体などの共役ジエン系共重合体ラテックス;アクリル系共重合体ラテックス;エチレン−酢酸ビニル共重合体などのα−オレフィン系共重合体ラテックス;これらの共重合体を酸モノマーで変性した変性共重合体ラテックス;などの共重合体ラテックスが好ましく挙げられる。また、ポリビニルアルコールなどの合成樹脂接着剤;澱粉、カチオン化澱粉、エステル化澱粉、酸化澱粉などの澱粉類;カゼイン、大豆蛋白、合成蛋白等の蛋白類;カルボキシメチルセルロースやメチルセルロースなどのセルロース誘導体;などの水溶性接着剤も使用可能である。本発明においては、これらのバインダーを一種単独で又は二種以上併せて使用することができる。なかでもスチレン−ブタジエン−酸モノマー変性共重合体ラテックスが好ましい。
【0063】
バインダーとしての前記共重合体ラテックスの製造方法に限定はなく、例えば、スチレン−ブタジエン−酸モノマー変性共重合体ラテックスの製造方法としては特開2004−27034号公報、特開2002−53602号公報などに記載の方法が好ましく例示される。
【0064】
バインダーとして共重合体ラテックスを使用する場合は、レーザ回折散乱法粒度分布測定装置で測定したラテックス粒子の重量平均粒子径が、好ましくは30〜200nm、より好ましくは50〜150nmである。この粒子径が小さすぎると塗被紙は白紙光沢、白色度、不透明度に劣る傾向があり、逆に、大きすぎるとドライピック強度に劣る傾向がある。
【0065】
バインダーの共重合体ラテックスを構成する共重合体のガラス転移温度は、好ましくは−50℃〜+30℃、より好ましくは−40〜+25℃である。ガラス転移温度が低すぎると塗被紙は耐ブロッキング性に劣る傾向があり、逆に、高すぎるとドライピック強度に劣る傾向がある。
【0066】
バインダーの使用量は、無機顔料100重量部に対する固形分換算で、好ましくは2〜16重量部、より好ましくは4〜13重量部である。この使用量が少なすぎると塗被紙はドライピック強度に劣る傾向があり、逆に、多すぎると耐ブロッキング性およびインクセット性に劣る傾向がある。
【0067】
本発明の塗被紙用組成物は水系分散液である。通常、水は前記の顔料分散液やバインダーの分散媒がそのまま利用され、必要に応じて蒸留水、脱イオン水などが追加される。
【0068】
本発明組成物で用いる無機顔料としては、炭酸カルシウム、クレイ、硫酸バリウム、タルク、酸化チタン、サチンホワイト、水酸化アルミニウム、シリカ、雲母などから1種もしくは2種以上を0〜50重量%含有してもよい。
【0069】
塗被紙用組成物の固形分濃度は、好ましくは40〜75重量%、より好ましくは50〜70重量%である。塗被紙用組成物の固形分濃度が低すぎると得られる塗被紙のドライピック強度が低下する傾向があり、さらに、乾燥負荷が高くなって塗被紙の生産性を低下させる場合がある。逆に、高すぎると塗被紙用組成物の流動性が低下して塗被紙の生産性を損なう場合がある。
【0070】
本発明の塗被紙用組成物には、必要に応じて、pH調整剤、分散剤、耐水化剤、消泡剤、染料、滑剤、増粘剤、保水剤、酸化防止剤、防腐剤、抗菌剤、導電処理剤、紫外線吸収剤、撥水剤などの任意配合剤を適宜配合することができる。
【0071】
本発明の塗被紙用組成物の調製方法は限定されないが、例えば、攪拌機を備えた容器内で無機顔料を十分に水中に分散させ、次いで本発明の顔料分散液やバインダーの分散液、任意配合剤などを混合する方法が採られる。
【0072】
本発明の塗被紙用組成物を原紙に塗被して表面塗被層を形成させることにより、塗被紙を得ることができる。該表面塗被層は原紙に直に接する単層であってもよいし、他の下塗り層の上の最上層であってもよい。
原紙としては、特に限定されず、機械パルプ、化学パルプ、古紙パルプ等のパルプからなる原紙を用いることができる。また、原紙の坪量は特に限定されず、通常、40〜220g/mである。
【0073】
本発明において、塗被層の形成には、通常の塗被方式を用いればよく、例えば、ブレードコーター、ロール転写コーター、エアナイフコーター、バーコーター、ロッドブレードコーター、ショートドゥエルコーター、カーテンコーター、ビルブレードコーター、ダイコーター等、従来公知の塗被手段を用いて原紙上に塗工することができる。これらの内、ブレードコーター、エアナイフコーター、カーテンコーター、ビルブレードコーター等の高速塗被に適した塗工方式を用いることが好ましい。塗被量は、塗被紙用組成物が固形分換算で片面あたり、好ましくは3〜30g/m、より好ましくは5〜25g/mになる範囲である。
【0074】
塗被紙の製造においては、塗被層形成後、これを乾燥する。乾燥温度、乾燥時間は、塗工速度等によって異なるが、通常、80〜180℃で、0.03〜10秒程度である。
前記方法によって得られた塗被紙は、必要に応じてカレンダー処理を経て仕上げられることにより、白紙光沢をより高くすることができる。カレンダー処理をする際の装置は特に限定されるものではなく、スーパーカレンダー、グロスカレンダー、ソフトカレンダー等の各種カレンダー装置により処理される。カレンダーの条件は、特に限定されず、通常、30〜200℃、線圧50〜200kg/cmである。
【0075】
本発明の塗被紙は、白色度、不透明度、白紙光沢、平滑性、印刷光沢さらにはドライピック強度に優れるので、書籍、雑誌などの出版物やチラシ、パンフレット、ポスターなどの商業広告物用に好適である。
【実施例】
【0076】
以下に実施例を示して、本発明をさらに具体的に説明する。以下において「部」及び「%」は特に断りのない限り重量基準である。各特性の試験、評価は、下記のようにして行った。
【0077】
(平均粒子径)
透過型電子顕微鏡を用いて中空粒子又は密実粒子のそれぞれ200個につき各々の最大粒子径を測定し、それらを算術平均して重量平均粒子径を求めた。
【0078】
(B型粘度)
得られた密実粒子を、イオン交換水及び10%水酸化ナトリウム水溶液を用いて、固形分濃度50%、pH8.5に調整して粘度測定用サンプルとし、B型粘度計(株式会社東京計器製)で密実粒子の分散液の粘度を測定する。
【0079】
(耐沈降性)
100mlメスシリンダーに顔料分散液を100ml入れ、30日間静置する。次いで、注射器を用いて、顔料分散液の上端面より3mmの位置から顔料分散液を1.5ml採取し、上部の固形分濃度を測定する。静置後の上部の固形分濃度と、該顔料分散液全体の固形分濃度との差の絶対値を下記の基準で評価する。この差が小さいほど耐沈降性に優れる。
0.1未満 :◎
0.4%未満 :○
1.0%未満 :△
1%以上 :×
【0080】
(塗被紙用組成物の流動性)
固形分濃度62%の塗被紙用組成物の高シア下における粘度であるハイシア粘度を、ハイシア回転粘度計(PM−9000HV:ボブF、エスエムテー社製)を用いて回転数8800rpmで測定した。この値が小さいほど流動性に優れる。
【0081】
(白紙光沢)
塗被紙について、グロスメーター(GM−26D、村上色彩社製)を用いて、入射角75度、反射角75度の条件で塗被紙表面の光の反射率(%)を測定した。数値が大きい程白紙光沢に優れている。
【0082】
(白色度)
JIS P8148−1993規定の方法により、分光色彩白色度計(PF10:日本電色工業社製)を用いてISO白色度を測定した(単位:%)。数値が大きい方が白色度に優れている。
【0083】
(不透明度)
JIS P8138−1976規定の方法により、分光色彩白色度計(PF10:日本電色工業社製)を用いて測定した(単位:%)。数値が大きい程不透明度に優れている。
【0084】
(平滑性)
JIS B 0601規定の方法により、万能表面形状測定器(SE−3C:株式会社小坂研究所製)を用いて測定した(単位:μm)。数値が小さい程平滑性に優れている。
【0085】
(印刷光沢)
藍、紅及び黄の三色のプロセスインク(東洋インク社製、TKマークV)を各々異なるゴムロールに付着させたRIテスターを用いて、塗被紙にべた刷りし、20℃、65%R.H.の恒温恒湿室に24時間放置した後、光沢度計(GM−26D:村上色彩技術研究所製)を用いて入射角60度の条件で光沢度を測定した。数値が高いほど印刷光沢に優れる。
【0086】
(ドライピック強度)
印刷インク(タック値20)0.4cmをRIテスター(明石製作所製)のゴムロールに付着させた後、このRIテスターを用いて塗被紙に4回重ね刷りした。紙面の剥がれ(ピッキング)状態を観察して剥がれがないものを5点とした、5点法で評価した。点数の高いものほどドライピック強度が高い。
【0087】
(中空重合体粒子:A)
(製造例1)
攪拌装置を備えた耐圧容器に、メタクリル酸メチル(MMA)50部、アクリル酸ブチル(BA)10部、メタクリル酸(MAA)40部、界面活性剤1としてポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム(アルキル基C1235、エチレンオキサイド付加数18)0.9部、トリポリリン酸ナトリウム0.15部およびイオン交換水80部を攪拌して、芯重合体形成用の単量体混合物(a)の乳化物を調製した。
攪拌装置を備えた耐圧反応器に、イオン交換水40部およびシードラテックス(体積平均粒径82nmのメタクリル酸メチル重合体粒子)0.28部を添加し、85℃に昇温した。
次いで、過硫酸カリウム3%水溶液1.63部を添加し、上記の乳化物の7%を、3時間に亘り、反応器に連続的に添加した後、さらに1時間反応させた。
その後、イオン交換水250部および過硫酸カリウム3%水溶液18.6部を添加し、反応温度を85℃に維持しながら、上記の乳化物の残部を、3時間に亘り、反応器に連続的に添加した。単量体乳化物の連続添加を完了した後、さらに2時間反応を継続して、アルカリ膨潤性物質である芯重合体を得た。重合転化率は99%であった。
【0088】
攪拌装置を備えた耐圧容器に、MMA7.8部、BA1.6部、MAA0.6部、t-ドデシルメルカプタン(TDM)0.03部、界面活性剤1を0.02部およびイオン交換水16部を入れ、攪拌、混合して単量体混合物(b)の乳化物を調製した。別に、スチレン(ST)79.44部、MAA0.56部、界面活性剤1を0.4部およびイオン交換水130部を攪拌、混合して単量体混合物(c)の乳化物を調製した。
攪拌装置を備えた耐圧反応器に、イオン交換水130部および上記の芯重合体7部を含有する水性分散液を添加し、85℃に昇温した。
次いで、4%過硫酸カリウム水溶液10部を添加し、上記の単量体混合物(b)の乳化物を20分間に亘り、反応器に連続的に添加した。その後、上記単量体混合物(c)の乳化物を120分間に亘り反応器に連続的に添加した。
単量体混合物(c)の乳化物の連続添加を完了した直後、5%アンモニア水25部を添加し、反応温度を90℃に上昇させた。1時間塩基処理して前記芯重合体を膨潤させ、内部に水を吸収させて水含有空隙を形成させた後、4%過硫酸カリウム水溶液10部を添加し、さらに2時間反応を継続した。重合転化率は99%であった。
重合系を室温まで冷却して、中空重合体粒子A1を含有する水性分散液を得た。
得られた中空重合体粒子(A1)の重量平均粒子径は1.0μm、空隙率は50%、中空重合体粒子(A1)の水分散液の固形分濃度は26.5%であった。
【0089】
(製造例2)
製造例1において、シードラテックスの使用量を0.28部に代えて、4.5部に変更した以外は、製造例1と同様にして、平均粒子径0.5μm、空隙率50%である中空重合体粒子(A2)を得た。
【0090】
(密実重合体粒子:B)
(製造例3)
攪拌装置を備えた耐圧反応容器に、スチレン40部、ブタジエン55部、イタコン酸3部、メタクリル酸2部からなる単量体(d)、及びt−ドデシルメルカプタン0.15部、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ4部、過硫酸カリウム0.3部及びイオン交換水150部を仕込んだ後、攪拌しながら60℃に加熱し、60℃を維持して重合した。次に重合転化率が70%を越えた時点で70℃に加熱し、70℃を維持して重合を続けた。60℃に加熱した時から12時間経過後、室温に冷却して重合体を得た。重合体の重合転化率は96%以上であった。
次に、別の装置を備えた耐圧反応容器にイオン交換水50部、前記重合体の15部、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.1部、過硫酸カリウム0.51部を仕込み、80℃に加熱した。次に、反応容器内を80℃に維持した状態で、スチレン75部、ブタジエン5部、メタクリル酸メチル14部及びメタクリル酸6部からなる単量体(e)、及びドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ0.16部と、イオン交換水50部とからなる乳化物を4時間かけて連続的に反応容器に添加した。乳化物の添加終了後、さらに4時間重合させ、室温に冷却して密実重合体粒子(B1)の水分散液を得た。単量体(e)の重合における重合転化率は96%以上であった。密実重合体粒子(B1)のテトラヒドロフラン不溶解分は65%であった。
【0091】
(製造例4)
製造例3における単量体組成を表1に示すように変更した以外は、製造例3と同様に密実重合体粒子(B2)を製造した。
【0092】
(製造例5)
製造例3における単量体組成を表1に示すように変更した以外は、製造例4と同様に密実重合体粒子(B3)を製造した。
【0093】
(密実重合体粒子:C)
(製造例6)
撹拌装置を備えた耐圧容器に、イオン交換水27部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩0.2部、スチレン33部、メタクリル酸メチル10部、アクリロニトリル15部、1,3−ブタジエン39部、アクリル酸2部、t−ドデシルメルカプタン(以降、「TDM」と略記する場合がある。)0.7部およびα−メチルスチレンダイマー(以降、「MSD」と略記する場合がある。)1部を添加し、撹拌して単量体混合物(f)を調製した。
撹拌装置を備えた耐圧反応器に、イオン交換水95部、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩0.1部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩1.2部、イタコン酸1部、および過硫酸カリウム0.4部を添加し、撹拌しながら65℃に昇温した。
重合温度を65℃に保持しながら、上記の単量体混合物(f)を、270分間に亘り、反応容器に連続的に添加した。単量体混合物(f)の添加を完了した後、重合温度を80℃に昇温して、重合転化率が96%に達するまで反応した。その後、室温まで冷却して重合反応を停止した。
【0094】
得られた重合体分散液に水酸化ナトリウム水溶液を加えてpH8.5に調整した後、水蒸気蒸留により未反応単量体を除去した。次いで、固形分濃度50%、pH8.5に調整し、密実重合体粒子(C1)を得た。密実粒子(C1)のpH8.5、固形分濃度50%におけるB型粘度計で測定した粘度は300mPa・sであり、平均粒子径は0.09μmであった。
【0095】
(製造例7)
製造例4において、単量体組成のブタジエンをスチレンに変更した以外は、製造例4と同様にして、平均粒子径0.2μmである密実重合体粒子(D1)を得た。
【0096】
【表1】

【0097】
(実施例1)
製造例1で製造した中空粒子(A1)と製造例3で製造した密実粒子(B1)を、固形分比率が50/50になるように混合して、固形分濃度35%の顔料分散液Iを得た。得られた顔料分散液の耐沈降性を測定し、その結果を表2に示す。
カオリンクレイ(アストラコート:イメリスミネラルズ・ジャパン社製)60部と炭酸カルシウム(FMT90:ファイマテック社製)40部とからなる無機顔料100部に、滑剤としてステアリン酸カルシウム(ノプコートC−104HS:サンノプコ社製)0.5部、燐酸エステル化澱粉(MS−4600:日本食品化工社製)2部、カルボキシ変性スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(Nipol LX407F:日本ゼオン社製)9部を添加後、顔料分散液Iを固形分で8部とイオン交換水とを加えて混合・攪拌して固形分濃度62%の塗被紙用組成物Iを得た。
次に、得られた塗被紙用組成物を坪量65g/m原紙上に、片面10g/mにて両面塗布し、120℃で乾燥して塗被紙を得た。塗被紙用組成物の流動性、塗被紙の白紙光沢、白色度、不透明度、平滑性、印刷光沢及びドライピック強度を試験、評価した。その結果を表2に記載する。
【0098】
(実施例2)
実施例1で用いた中空重合体粒子(A1)の代わりに、中空重合体粒子(A2)を使用した以外は、実施例1と同様にして顔料分散液IIを得、各種物性を測定、評価した。その結果を表2に示す。
【0099】
(実施例3)
実施例1で用いた密実重合体粒子(B1)の代わりに、密実重合体粒子(B2)を使用した以外は、実施例1と同様にして顔料分散液IIIを得、各種物性を測定、評価した。その結果を表2に示す。
【0100】
(実施例4)
中空重合体粒子(A1)、密実重合体粒子(B1)及び密実重合体粒子(C1)のそれぞれの固形分の比率を、50/25/25になるように混合して、固形分濃度35%の顔料分散液IVを得た。得られた顔料分散液IVの耐沈降性を測定し、その結果を表2に示す。
実施例1で用いた顔料分散液Iの代わりに、顔料分散液IVを使用した以外は、実施例1と同様にして各種物性を測定、評価した。その結果を表2に示す。
【0101】
(実施例5)
実施例4で用いた中空重合体粒子(A1)の代わりに、中空重合体粒子(A2)を使用した以外は、実施例4と同様にして顔料分散液Vを得、各種物性を測定、評価した。その結果を表2に示す。
【0102】
(比較例1)
製造例1で製造した中空重合体粒子(A1)を単独で用いて、密実重合体粒子を含まない比較顔料分散液Iを得た。実施例1で用いた顔料分散液Iの代わりに、比較顔料分散液Iを使用した以外は、実施例1と同様にして各種物性を測定、評価した。その結果を表2に示す。
【0103】
(比較例2)
密実重合体粒子(B1)と密実重合体粒子(C1)の固形分の比率が50/50になるように混合して、固形分濃度50%の比較顔料分散液IIを得た。得られた比較顔料分散液IIの耐沈降性を測定し、その結果を表2に示す。
また、実施例1で用いた顔料分散液Iの代わりに、比較顔料分散液IIを使用した以外は、実施例1と同様にして各種物性を測定、評価した。その結果を表2に示す。
【0104】
(比較例3)
中空重合体粒子(A1)と密実重合体粒子(D1)の固形分の比率が50/50になるように混合して、固形分濃度35%の比較顔料分散液IIIを得た。得られた比較顔料分散液IIIの耐沈降性を測定し、その結果を表2に示す。
また、実施例1で用いた顔料分散液Iの代わりに、比較顔料分散液IIIを使用した以外は、実施例1と同様にして各種物性を測定、評価した。その結果を表2に示す。
【0105】
(比較例4)
中空重合体粒子(A1)と密実重合体粒子(B3)の固形分の比率が50/50になるように混合して、固形分濃度35%の比較顔料分散液IVを得た。得られた比較顔料分散液IVの耐沈降性を測定し、その結果を表2に示す。
また、実施例1で用いた顔料分散液Iの代わりに、比較顔料分散液IVを使用した以外は、実施例1と同様にして各種物性を測定、評価した。その結果を表2に示す。
【0106】
【表2】

【0107】
表2より、以下のようなことが分かる。
密実重合体粒子(B)を含まない比較顔料分散液Iは耐沈降性に劣り、塗被紙用組成物の流動性が低く、ドライピック強度にも劣っている(比較例1)。
中空重合体粒子(A)を含まない比較顔料分散液IIは、耐沈降性及び塗被紙用組成物の流動性に優れるものの、得られる塗被紙の白紙光沢、白色度、不透明度及び印刷光沢に劣っている(比較例2)。
共役ジエン系単量体単位を特定量含む密実重合体粒子の代わりに、共役ジエン重合体を含まない密実重合体粒子を含む比較顔料分散液IIIを用いると、ドライピック強度が低下している(比較例3)。
共役ジエン系単量体単位の含有量が本発明規定範囲よりも多い密実重合体粒子(B3)を用いると、白紙光沢、白色度及び不透明度が劣っている。(比較例4)。
これに対し、中空重合体粒子(A)及び密実重合体粒子(B)を含んでなる本願規定の顔料分散液I〜Vは耐沈降性に優れ、塗被紙用組成物の流動性が良好であり、それを用いて得られた塗被紙は、白紙光沢、白色度、不透明度、平滑性に優れ、且つ印刷光沢及びドライピック強度にも優れている(実施例1〜5)。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径0.3〜3.0μmの中空重合体粒子(A)と、共役ジエン系単量体単位の含有量が5〜20重量%である平均粒子径0.06〜1.5μmの密実重合体粒子(B)とを含有してなる顔料分散液。
【請求項2】
前記中空重合体粒子(A)と前記密実重合体粒子(B)のそれぞれの固形分の重量比率が20/80〜80/20である請求項1記載の顔料分散液。
【請求項3】
共役ジエン系単量体単位の含有量が20重量%より多く、固形分濃度50重量%において、B型粘度計により測定した粘度が200mPa・s以上である平均粒子径0.13μm以下の密実重合体粒子(C)をさらに含有してなる請求項1または2に記載の顔料分散液。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一に記載の顔料分散液を含有してなる塗被紙用組成物。


【公開番号】特開2006−299253(P2006−299253A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−79849(P2006−79849)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(000229117)日本ゼオン株式会社 (1,870)
【Fターム(参考)】